説明

石膏含有床材下敷用の表面強化コーティング

接着剤を受容する床材下敷を作成するためのコーティングであって、水溶性ラテックスポリマー、消泡剤および2機能表面補強剤を含むコーティング。表面補強剤は、接着剤を架橋して、少なくとも2つの機構を使用して下敷表面を硬化させるようにも機能する凝固促進剤を含む。本発明の1つの実施形態は、水に添加したときにコーティングを形成する乾燥混合物である。乾燥混合物は、乾燥重量基準で約10%〜約50%の再分散性ポリマー、約50%〜約90%の表面補強剤および乾燥重量基準で約0.15%〜約0.25%の消泡剤を含む。他の実施形態は、乾燥混合物1体積部に対して約1〜8体積部の水を添加することによって形成される液体コーティングについて述べる。

【発明の詳細な説明】
【背景】
【0001】
本発明は、石膏ベース床材下敷の改良コーティングおよびその調製方法に関するものである。さらに詳細には、コーティングは、床材下敷により硬質の表面を提供し、コーティングの下敷表面へのより優れた付着性を促進する。
【0002】
石膏ベース建築材料は、建築業界において多くの用途で有用である。該材料は、硫酸カルシウム半水和物[焼石膏、プラスター・オブ・パリス(plaster of paris)または硫酸カルシウムセミハイドレート(semihydrate)としても既知]より成るスラリを水に混合して、型に注入して、パネルまたは床材下敷を形成するか、またはスラリを適切な形状へ作成することによって調製する。水は半水和物と反応して、硫酸カルシウム二水和物(石膏としても既知)結晶の結合マトリックスを形成し、スラリを凝固および硬化させる。理想的には、凝集体がスラリ中に存在する場合、それはマトリックスを通じて均一に分散され、生じたマトリックス層に強度および硬度を加える。過剰な水は蒸発させるか、石膏生成物を乾燥させることによって排除される。石膏はコンクリートよりも安価、軽量で、速く凝固する。石膏材料の減音および防火特性は、木材または他のセルロース建築材料よりも優れている。
【0003】
床材下敷として使用する場合、石膏含有組成物をシーラントと共にコーティングする。次にマスチック(mastic)または接着剤をシーラントに塗布して、フローリングをマスチックに当てる。フローリング材料は、ビニル、リノリウム、および下敷に直接接着剤で貼り付けられる他の床用カバーリングを含む。
【0004】
しかしながら石膏ベース床材下敷は、柔らかい表面特徴および下敷表面上またはその近傍の粉末または埃の存在のために、普遍的に許容されるわけではない。一部の状況では、実質的にその中に分散された凝集体を含む二水和物マトリックス層には、マトリックス層の上端を形成する粉末層が載せられる。表面において、埃は外観を損ねるものであり、除去するのに不都合である。表面クラスト(crust)のすぐ下に配置したとき、僅かな摩耗が表面クラストを破損させ、粉末層を露出させる。たとえ粉末層の除去に時間および費用を投入した場合でも、得られた下敷は平坦でない表面を有する。
【0005】
超遅延剤、例えばポリカルボン酸塩が下敷に使用されるときに、粉末層の形成が観察される。凝固遅延剤はスラリ組成物で頻繁に使用され、開放時間として既知であるスラリが作用できる時間を延長する。開放時間の延長は、凝固反応の程度が表面の機能を阻止する前に、床材を注入して、それを水平にして、スクリード処理するための余分の時間を設置者に与える。この場合、解析は、粉末層が主に未反応硫酸カルシウム半水和物と硫酸カルシウム二水和物との混合物であることを示している。
【0006】
ポリカルボン酸塩は遅延剤を凝固させることが知られているが、硫酸カルシウム半水和物スラリの流動性も向上させて、より少ない水量での注入が可能で、そして/あるいは自己水平性組成物を提供する。
【0007】
スラリ中の水量の削減は、生成物の強度を上昇させ、乾燥時間を短縮する。ポリカルボン酸塩をフローリング下敷で使用する利点は、参照によりその全体が本明細書に組み入れられている、2003年3月27日に提出され、米国を指定し、“High Strength Flooring Compositions,”という名称の、同時係属のPatent Cooperation Treaty PCT/US03/09400に開示されている。
【0008】
しかしながら、未反応焼石膏の問題は、遅延剤が使用される場合に限定されない。環境条件、例えば風は、過度の表面乾燥の引き起こす。水を添加し過ぎると、凝固反応が完了する前に凝集体と石膏マトリックスとの分離が生じる。未反応硫酸カルシウム半水和物を生じさせる状況のさらに別の例は、原材料の変化がある場合である。凝集体が湿潤砂から乾燥砂に変化すると、スラリ中の水の有効量が減少し、一部の場合には、半水和物のすべてと反応するには不十分である。それゆえ石膏ベース床材下敷の表面に未反応硫酸カルシウム半水和物に見られる問題は、珍しいものではなく、種々の状況にて発生しうる。
【0009】
下敷表面を処理する従来方法は、未反応半水和物の問題を矯正できない。粉末層に単に水を噴霧することは、未反応半水和物のかなりの部分を水和させるには不十分である。従来のトップコート材料、例えばTOPSEAL(United States Gypsum Company,Chicago,IL)の塗布は、コーティングとカルシウム二水和物結晶の結合マトリックスとの間の埃を一時的に封止するが、この問題の長期間に渡る解決策を提供しない。粉末層が表面クラストの下に生成されるとき、コーティング層は乾燥するにつれてクラストに付着するが、粉末層がクラストを強力マトリックス層に結合させないため、コーティングおよび結合したクラストは下にあるマトリックス層から容易に剥離する。粉末層が薄い場所では、コーティングは、粉末層に浸透して、隔離された場所の二水和物マトリックス構造に結合することができる。しかしながら隔離された結合は、表面全体でコーティングを所定の場所に保持するほど強力ではない。未結合領域上のコーティングが通常の使用で引張って移動するため、結合領域はコーティングの運動によって多くの方向へ押されたり引かれたりする。圧力を変化させると、結合した石膏の小さいパッチを崩壊させることが可能であり、結局、コーティングの全部分または大半の部分の層間剥離が引き起こされる。
【0010】
この問題に取り組む別の方法は、焼石膏スラリへの添加剤の使用によるものである。しかしながらこの技法は、下敷が凝固するときに出現する粉末層の量を事前に正確に推測する必要がある。凝集体の湿気、風条件、温度、使用した凝固遅延剤の種類および量などの変数を考慮する必要があり、そのような添加剤が必要か否かを判定するための複雑なアルゴリズムを生じる。未反応硫酸カルシウム二水和物の量が予測量と異なった場合、または作業半ばで条件が変化した場合、添加剤の量を再考する必要があり、上の変数すべてを再評価する必要がある。このことは設置者が使用を望まない、長く複雑なプロセスを生じさせる。
【0011】
それゆえ当分野では、特に下敷がその表面に、またはその近傍に粉末層を有するときに、床材下敷の表面を強化するコーティングへの要求が生じる。コーティングは、未反応硫酸カルシウム半水和物と反応して、粉末層の強度も向上させる。コーティングは、一般に利用できるツールまたは方法を使用して、容易に塗布される必要がある。
【発明の概要】
【0012】
これらのおよび他の利点は、本発明のコーティングに見出される。コーティングは、未反応硫酸カルシウム半水和物の水和を促進して、硫酸カルシウム二水和物の結合マトリックスを形成するのはもちろんのこと、コーティングの上部に設置されるビニルまたはリノリウムなどの次に続く床仕上げ材への、マスチックまたは接着剤の接着のために強力で安定した表面をも提供する。
【0013】
さらに詳細には、本コーティングは、フィルム形成ポリマー、消泡剤および2つの機能表面を有する補強剤を含む。表面補強剤は、石膏凝固促進剤として作用するが、続いて塗布されるマスチックを架橋するように機能して、少なくとも2つの機構によって下敷の表面を補強する塩を含む。本発明の1つの実施形態は、水に添加したときにコーティングを形成する乾燥混合物である。乾燥混合物は、乾燥重量基準で約10%〜約50%の再分散性ポリマー、約50%〜約90%の表面補強剤、および乾燥重量基準で約0.15%〜約0.25%の消泡剤を含む。他の実施形態としては、水約1〜約8体積部を乾燥混合物1体積部に添加することによって形成される液体コーティングについて述べている。
【0014】
コーティング床材下敷は、水、フィルム形成ラテックスポリマー、表面補強剤および消泡剤を含むコーティングで石膏を含有する未コーティング床材下敷をコーティングすることによって形成される。コーティングを塗布して乾燥した後に、硫酸カルシウム二水和物の結晶性マトリックス内に分散した凝集体粒子を含むマトリックス層と、硫酸カルシウム半水和物、ポリマーおよび硫酸カルシウム二水和物マトリックス内に分散した塩を含む表面層を含む、多層床材下敷が形成される。
【0015】
石膏ベース床材下敷の表面を補強する方法は、凝固および乾燥した床材下敷を提供することを含む。再分散性ポリマーおよび表面補強剤を選択した後に、ポリマーおよび表面補強剤を消泡剤と配合して、混合物を作成する。塗布の時点で、混合物を水と約1:1〜約1:8の体積比で組合せて、次に混合して液体コーティングを作成する。次にコーティングを床材下敷表面に塗布して乾燥させる。
【0016】
本発明のコーティングは凝固石膏ベース下敷に塗布されるため、粉末層が形成されるか否か推測する必要がなく、また、形成された場合であっても存在する未反応カルシウム水和物の量を推測する必要がない。粉末層が形成されない場合は、スラリに追加の化学薬品および費用を追加する必要がない。下敷が実質的に凝固して、粉末層が形成されるか否かが判明した後のみに、粉末層を処理するか否かについて判断する必要がある。粉末層が形成されない場合、下敷を封止するためにより従来的なコーティングが使用できるか、または床にコーティングを使用する必要は全くない。粉末層を処理する必要があるとき、正確なコーティング組成を、または複数のコーティング層を塗布することが好都合か否かを判断するために、さらなる情報が利用できる。
【0017】
コーティング処理の2つの機能性は、極めてより硬質で、凝集体含有硫酸カルシウム二水和物マトリックスの固体層とマスチックとの間により優れた接着を有する表面をもたらす。コーティングが強力な凝集層へより堅固に固定されるため、ビニルまたは他のフローリング製品のマスチックが接着するより安定な表面を提供する。表面硬化剤の作用は、2つの方法で作用する。第一に未反応硫酸カルシウム半水和物の水和を促進して、粉末層内に硫酸カルシウム二水和物の結合結晶のより広範囲に及ぶマトリックスを構築する。このマトリックスは、この三次元構造を持つ粉末層にかなりの強度を加え、二水和物マトリックスが粉末層全体に及んで、凝集層の二水和物マトリックスをコーティングフィルムに結合させる事象を増加させる。
【0018】
第二に金属塩の存在は、下敷表面へのマスチックの結合を改良する。表面解析は、金属塩が表面層内で生成することを示唆する。マスチックがこれらの表面に塗布されるとき、塩はマスチックの架橋およびマスチックと新たに形成された石膏マトリックスとの間の界面結合を促進することは理論付けられている。マスチックの架橋はそれをより硬くして、同時にマスチックと石膏マトリックスとの間の化学結合数の増加は、界面での接着を向上させる。メカニズムにかかわらず、マスチックの下敷への結合が向上される。
【0019】
本発明のコーティングは、請負業者が容易に使用できる。それは長い保存寿命を有する乾燥粉末形で入手可能であり、作業現場へ運搬するのに軽量である。それは現場にて体積基準で水と混合される。コーティングは、特殊な装置を一切使用せずに、標準コーティング技法を使用して塗布される。使用するコーティングの量を決定するために複雑なプロセスは不要であり、コーティングは、粉末層が下敷表面上に形成されない場合でも、改良表面を提供する。
【発明の詳細な説明】
【0020】
本発明は、床材下敷のコーティングまたはコーティング混合物および主題のコーティングによって処理された床材に関するものである。本発明の床材下敷用コーティングまたはコーティング混合物は、フィルム形成ラテックスポリマーと、焼石膏の凝固反応を加速すると共に、マスチックに強力に結合する表面層を形成するために選択された表面補強材と;消泡剤とを含む。水は床材下敷へのコーティングの塗布に必要であるが、コーティングミックスは、下敷へのコーティングの塗布直前に水を添加するという指示と共に、乾燥粉末の形で好都合に提供される。別の実施形態では、コーティングは水とレディミックスされており、塗布準備が整った状態で提供される。以下の説明では、常にコーティング混合物に言及するわけではないが、コーティングがコーティング混合物を水と組合せることによって容易に得られることが理解されるはずである。液体コーティングまたは濃縮物が直接調製されるときは、原材料の選択が乾燥粉末形に限定されないことがさらに考慮される。
【0021】
コーティングの1つの成分は、再分散性ラテックスポリマーである。ポリマーは新しい硫酸カルシウム二水和物マトリックスのあらゆる部分で形成され、マスチックが接着して、次のフローリング層を下敷に結合させる硬く安定な表面を提供する。表面補強剤と適合性であり、表面補強剤とマスチックとの間の相互作用を向上させる、いずれの再分散性ラテックスポリマーも、このコーティングでの使用に関して考慮する。有用なラテックスポリマーの例は、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、スチレン−ブタジエンコポリマー、ビニルアセテートコポリマー、ビニルクロライドコポリマー、ポリブタジエン、およびポリイソプレンを含む。ポリアクリル樹脂およびビニルアセテートコポリマーが好ましい樹脂である。特に好ましい樹脂は、ビニルアセテートエチレンコポリマーおよびビニルアセテート−ビニルベラサテートポリマー、特にELOTEX Flowkit 51(National Starch Co.,Chicago,IL)である。ホモポリマー、コポリマー、ターポリマーなどの、特定の構造の使用も考慮する。
【0022】
ポリマーは、液相中で表面硬化剤と反応しない場合は、表面補強剤と適合性である。ポリマーおよび表面硬化剤が反応して沈殿または不溶性種を形成する場合、コーティングを床材下敷に塗布するときに元の化学種は存在しないことになる。形成されたいずれかの沈殿または新たな種は、コーティングを塗布するときに起こる反応をさらに変化させる。化学反応は、コーティングが粉末層と接触したときに開始する必要性がある。硫酸カルシウム半水和物の水和が水を吸収して、水分が失われて表面で蒸発する。利用可能な水の量が減少すると、ラテックスが凝集を開始し、表面補強剤によって生成された塩が塩析を開始する。これら事象すべての進行は、マトリックスの中に分散したラテックスポリマー、沈殿塩および未反応硫酸カルシウム半水和物を有する、結合硫酸カルシウム二水和物結晶のマトリックスを同時に生成する。
【0023】
ポリマーの選択での別の考慮事項は、表面補強剤と続いて塗布されるマスチックまたはフローリング表面との間の相互作用を向上させるその能力である。ポリマーが下敷とマスチックまたはフローリング表面との間に連続フィルムを形成する場合、表面補強剤は以下で述べるように架橋を促進させるために、マスチックと接触しない。ラテックスポリマーの種類および量は、表面硬化剤の結晶を露出させて、層間の接触および相互作用を向上させるために、少なくとも一部の不連続性がポリマーフィルム内に存在するように選択する。
【0024】
このコーティングでは、ポリマーのいずれの有効量も有用である。有効量は、液相中で表面補強剤と反応せず、表面補強剤とマスチックまたはフローリングとの間の相互作用を向上させる量である。好ましくはポリマーの量は、乾燥固体の重量に基づいて約10%〜約40%である。約15%〜約25%のポリマー濃度がさらに好ましい。
【0025】
表面補強剤は、下敷表面を強化して、乾燥した後のコーティングの剥離を防止し、次に塗布されるマスチックとの結合を促進するために使用される。それはこれらの目標を2つの方法で達成するように機能する。第一に、粉末層中の未反応硫酸カルシウム半水和物を水和させる凝固促進剤として作用する。下敷が凝固した後に未反応のままである硫酸カルシウム半水和物は水和に耐えるため、淡水の粉末層への塗布は無視できるさらなる水和をもたらす。表面補強剤を推奨量で使用する場合、硫酸カルシウム半水和物の約30%がさらに反応して、硫酸カルシウム二水和物を生成する。この程度の反応は、基礎を成すマトリックス層にコーティングを結合させるために十分な数の硫酸カルシウム二水和物結晶を生成する。
【0026】
表面補強剤の第二の機能は、マスチックのコーティングの結合強化である。マスチックとの結合も強化しない石膏凝固促進剤は、表面補強剤としては無効である。マスチックの架橋は、それを形成される二水和物マトリックスと結合させて、その分子量を上昇させ、それをより硬く、層間剥離に対してより耐性にする。フリーラジカルまたは金属イオンは、架橋剤としての使用で既知である。
【0027】
コーティングミックス中の表面補強剤の濃度は、好ましくは乾燥重量基準で約50%〜約90%である。さらに好ましくは、濃度は約75%〜約85%である。表面補強剤を低い濃度で使用する場合、硫酸カルシウム半水和物の比較的一定の変換を維持するために、所望の場合は塗布されたコーティングの量を増加させることができる。
【0028】
これらの機能の両方を実施するいずれの物質も、表面補強剤として有用である。最も有用であることが判明した化合物は、本質的にイオン性である。金属カチオンは、マスチックの架橋を促進するために使用される。カチオンは好ましくは多価、特に2価または3価イオンである。2価または3価金属イオン、例えば亜鉛、マグネシウム、銅、アルミニウム、第一鉄または第二鉄イオンが特に好ましい。1価カチオン、例えばカルシウムまたはナトリウムは、低い活性を有すると思われるが、表面補強剤が液体コーティング中により高い濃度で存在するときに有用である。
【0029】
硫酸塩、硝酸塩および塩化物を含む、凝固促進剤として既知であるいずれのアニオンも、コーティングでの使用について考慮する。好ましい塩はこれに限定されるわけではないが、硫酸カリウム、硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、硫酸銅、硫酸第一鉄、硫酸第二鉄および硫酸アルミニウムを含む。複数のカチオンを含む塩は、硫酸水素ナトリウムおよび硫酸水素カリウムを含めて、同様に有用であることが予想される。硫酸亜鉛は特に好ましい表面補強剤であるが、上述の2つの機能を果たすいずれの物質の使用もこのコーティングでの使用に関して考慮される。Oldbridge Zinc(Harcos Chemicals,Bellesville,NJ)またはSUPER TEL Zinc(Tetra Micronutrients,Fairbury,NE)は、高純度級硫酸亜鉛の好ましい供給源である。
【0030】
消泡剤は、乾燥成分を水と混合したときに起こる発泡を減少させるために使用される。容易に入手可能であり、他の成分と不利に相互作用しない、いずれの消泡剤も使用できる。AGITAN P 823(Ultra Additives,Inc.Paterson,NJ)は好ましい消泡剤であり、粉末形で入手できる。消泡剤は、乾燥重量に基づいて約0.15〜0.25%の濃度で最も有用なコーティングである。好ましくは乾燥重量基準で約0.19〜約0.21%の消泡剤を使用する。
【0031】
水はコーティングの溶媒として、硫酸カルシウム半水和物を水和するために使用する。水の十分量は、反応する硫酸カルシウム半水和物を水和させ、ポリマーを分散させて、表面補強剤を溶解させて、下敷をコーティングして、ポリマーをフィルム中へ凝集させる流動性を有するエマルジョンを形成する量である。十分量を超えたさらなる水の使用は、このコーティングを希釈して、より流動性にするが、乾燥時間も延長する。水の最大量は、接着剤または隣接フローリング層を塗布することを見込んでコーティングを乾燥させるために利用できる時間によって制御できる。ある厚さのコーティングが要求される場合、より少ない量の水を使用するコーティングと比較してコーティングが希釈されているときは、全体的なコーティングがより必要となる。
【0032】
好ましい実施形態において、ポリマー、消泡剤および表面補強剤は、乾燥形でプレミックスされて供給される。作業現場において、乾燥コーティングミックスに水を添加してコーティングを調製する。好ましくは、添加する水の体積は、乾燥コーティングミックスの体積と少なくとも同じである。いくつかの実施形態において、コーティングミックスの水に対する体積比は約1:1〜約1:8である。さらに好ましくは、水は約1:3〜約1:5の体積比で、または約1:4の比で使用する。水を生成時にレディミックス調合物に添加するときは、乾燥固体に対する水の比が同じであることが有用である。レディミックス濃縮物の生成も考慮され、それにより水の一部が生成時に添加され、水の別の一部が塗布の直前に添加される。濃縮物は、大量の水を出荷および保存するコストを低減することにより、さらに経済的であることが期待される。
【0033】
水和される粉末層中の硫酸カルシウム半水和物の部分をさらに増加させるために、複数回処理の使用を行うことも考慮される。ポリマーフィルムが水バリアを形成しない場合、追加コーティングの塗布がフィルムに浸透して、追加の硫酸カルシウム半水和物と反応する。硫酸カルシウム半水和物の十分な量が変換されるまで、またはポリマーの十分な層が形成されてコーティング溶液が浸透しないフィルムを形成するまで、処理を反復する。
【0034】
表面強化コーティングを用いた1回以上の処理の後、コーティング表面の性質が変化する。粉末層は「表面層」になる。マスチックを塗布したときに、この表面層は、マトリックス層とマスチックとの間の移行層として作用し、フローリングを所定の位置に保持する。コーティングを粉末層に塗布したときに、硫酸カルシウム半水和物は水和の水を吸収して、硫酸カルシウム二水和物結晶の結合マトリックスを形成する。塗布時に、水は下敷表面からの蒸発も開始する。水が蒸発するか、または石膏分子と結合するようになると、液体はさらに濃縮されるようになる。水の消失は、ポリマーを凝集させて、水不純物からのイオンの生成を開始し、表面補強剤に塩析を開始させる。
【0035】
生成する塩は、主に表面補強剤のイオンにより構成される。しかしながら液体が濃縮され過ぎて液体中のすべてを保持できないので、存在する他のイオンも塩を形成する。一部の領域では、水は、カルシウムおよびマグネシウムを含む硬水イオンを有しやすい。他の場所は、共通の水成分として錆を有する。表面補強剤を用いたこれらのイオンの塩の包含は、有害でありそうもなく、実際にマスチックの架橋を向上することができる。
【0036】
さらに多くの水が吸収または蒸発されるので、複数の事象が一度に発生している。塩は沈殿し、同時にポリマーが凝集および形成している。実質的に同時に二水和物石膏のマトリックスが生成している。これらの事象が発生しているときに成分を分離させるように作用する力は存在しないため、石膏マトリックスは、マトリックスを通じて分散しているポリマー、塩および未反応硫酸カルシウム半水和物によって形成される。新たに形成された二水和物マトリックスも、マトリックス層の二水和物マトリックスと結合して、2つの層を結合させて、界面分離の傾向を低下させる。
【0037】
コーティングに特定の特性を付与することが望ましい場合、多数の任意の成分をコーティングに添加する。必要な成分と有害な反応を起こさない、下敷またはコーティングのどちらかと共に従来使用されたいずれの添加剤も、表面強化コーティングでの使用に考慮される。
【0038】
コーティングが液体エマルジョンまたはレディミックス形で生成されるときに、好ましくはある任意の添加剤が使用される。例えばプロピレングリコール、エチレングリコールまたは他の成分に有害な影響を及ぼさない他の物質として、不凍剤などの添加が好ましい。不凍剤のいずれの有用な量も考慮されるが、好ましくは約0.5%〜約3%の量で使用する。さらに好ましくは、不凍剤は乾燥固体として約0.8%〜約1%の量で添加する。
【0039】
レディミックス(ready−mix)調合物では殺生物剤の添加も非常に好ましい。いずれの殺生物剤も、それが混合物の他の成分と相互作用しない限り、本コーティングで有用であることが予想される。好ましい殺生物剤は、KATHON LX 1.5(Rohm & Haas,Bristol,PA)。この殺生物剤は、乾燥固体として約0.1%〜約0.2%の量で使用されるときに特に好ましい。
【0040】
湿潤剤の使用は任意であるが、非常に好ましい。好ましい湿潤剤は、ノニルフェノール、Igepal CO−660およびCO−630(GAF Corporation,Wayne,NJ)およびTritronX−100湿潤剤(Rohm & Haas,,Bristol,PA)を含む。適切な湿潤剤は、Rhone−Poloncならびに湿潤剤および洗剤の他のメーカーによっても製造されている。湿潤剤は、好ましくは、乾燥固体の1重量%未満の量で使用される。さらに好ましくは、湿潤剤は乾燥固体基準で約0.2%〜約1%の量で、なおさらに好ましくは約0.5%で存在する。
【0041】
強度向上剤は、半水和物が水和を受けるときに形成される硫酸カルシウム二水和物のマトリックスを強化または補強するために、場合により添加する。寸法安定性および永久歪みへの耐性のために適切な向上剤は、参照によりその全体が本明細書に組み入れられている、米国特許第6,632,550号に開示されている。そこに述べられている強度向上剤は、濃縮リン酸を含み、濃縮リン酸がそれぞれ2つ以上のリン酸単位および濃縮リン酸塩の塩またはイオンを含み、濃縮リン酸塩がそれぞれ2つ以上のリン酸塩単位を含む。他の成分に悪影響を及ぼさないいずれの添加物も使用のために本明細書で考慮されるが、トリメタリン酸ナトリウムが最も好ましい。強度向上剤は、好ましくは、乾燥固体重量に基づいて約0.004%〜約2%の範囲の量で、さらに好ましくは約0.1%未満の量で、または約0.08%の量で添加する。
【0042】
防カビ剤は、乾燥ミックスまたは液体コーティング形のどちらかでの推奨される添加剤である。ピリチオン、例えばナトリウムオマジンまたは亜鉛オマジン(Arch Chemicals,Norwalk,CT)は好ましい防カビ剤であるが、他の成分と有害に相互作用しないいずれの防カビ剤もこのコーティングで使用できることが考慮される。好ましくは、防カビ剤は、乾燥固体として約0.03%〜約0.05%の範囲の量で存在する。
【0043】
下敷が処理されたか否かの、または処理が完了しているか否かの判定を補助するために、可視インジケータを場合によって添加すると、コーティングが塗布されたことの目視確認が可能となる。顔料、蛍光増白剤およびpHインジケータが好ましいが、他の種類の可視インジケータも使用できる。
【0044】
顔料を添加すると可視色変化がコーティングに付与され、その色変化はコーティングが塗布される下敷に見られる。顔料または染料も、外観上も有用である。通例それらは粉末、フレーク、有機または有機金属分子などの形を取る。適切な顔料または染料の例は、酸化鉄、他の金属酸化物、二酸化チタンおよびカーボンブラックを含む。
【0045】
蛍光増白剤は、洗濯用洗剤中に一般に存在し、紫外「UV」光および可視スペクトルの青色領域を吸収する蛍光白色染料である。コーティングに添加すると、明白な色変化は起こらないが、UV光の存在下では蛍光が検出できる。それゆえ下敷へ紫外光を照射すると、下敷に特別な色を付与することなく、下敷が処理され、被覆が完了したことを所有者または設置者が確認できる。蛍光増白剤、例えばTINOPAL SFP(Ciba Specialty Chemicals,Tarrytown,NY)は好ましい可視インジケータである。
【0046】
pHの変化のために一時的に色を変化させるインジケータも、コーティングが塗布された場所を判定するために適切である。例えばフェノールフタレインを含むコーティング上にアンモニアの他の塩基性溶液を塗布すると、コーティングが無色から赤色に変化する。酸の存在下で色を変化させるインジケータを含めて、コーティングの他の成分と有害に相互作用しないいずれのpHインジケータも、本実施形態で使用できる。
【0047】
インジケータの適切な量は、選択したインジケータの種類による。顕著な色変化を生じるが、コーティング組成物の他の成分に悪影響を及ぼさないインジケータのいずれの量も有用である。好ましくは、可視インジケータは乾燥固体として約0.03%〜約2%の量で添加する。顔料を使用する場合、範囲の上限の量が最も満足であることが予想される。ごく少量の蛍光増白剤が必要であり、好ましい範囲の下限近傍の量が使用できる。
【0048】
本発明の一部の実施形態において、コーティングは適切な石膏含有床材下敷に塗布される。「下敷」という用語は、それに付着または取付けられるフローリングを持ち上げまたは支持するいずれの材料も指すものとする。下敷は好ましくは石膏、セメントまたはその混合物を含むが、木材、粘土などの比較的柔らかい表面を有する下敷は、このコーティングの塗布から恩恵を受けやすい。石膏は好ましくは、下敷中に約50%〜約95%の量で存在する。下敷は通例、パネルで供給され、または石膏ベーススラリは、下敷が占めるスペース内に直接注入されて、所定の位置で凝固させられる。しかしながら下敷が供給される形は重要でなく、いずれの形も本発明のコーティングで使用できる。
【0049】
このコーティングで使用するのに好ましい下敷は、高強度フローリング化合物を生成するために水和するスラリを調製するために水と併せて使用される混合物から作成される。混合物は、約30%〜約98重量%の硫酸カルシウム半水和物を含み、少なくとも25%の硫酸カルシウム半水和物をα−焼成形、β−焼成形またはその組合せのいずれかで含む。ポリカルボン酸塩分散物は、混合物中に約0.2%〜約10重量%の量で含まれる。混合物は0.05〜50重量%のセメントまたは石灰のどちらかも含む。乾燥フローリング混合物の重量に基づいて約10%〜約50%の量の水と組合わせたとき、フローリング組成物として有用であるスラリが生成される。この下敷組成物は、参照により以前に組み入れられた、Patent Cooperation Treaty PCT/US03/09400に開示されている。
【0050】
表面補強剤によって架橋できる少なくとも1つの成分を含むマスチックまたは接着剤は、このコーティングによって有用である。未反応半水和物の二水和物への変換およびマスチックの架橋の両方が起こるときに、最適な表面硬度が得られる。コーティング表面と反応して接着剤を架橋させるために利用できる、接着剤のいずれの成分も本明細書では有用である。
【0051】
ビニルシート商品の設置に使用されるフローリング接着剤は普通、粘着樹脂および固体を、場合により無機充填剤と共に含む。粘着樹脂は、普通は独自のものであり、フローリングへの接着剤の初期接着を向上させる。固体は好ましくは、少なくとも50重量パーセントの固体および無機充填剤を有することを特徴とする、高分子量ラテックスポリマーの十分に配合した混合物である。ポリマーが金属イオン、例えば亜鉛、銅、およびアルミニウムと反応して、金属−アクリレート錯体の形成によってマスチックを架橋するため、アクリルタイプのラテックスポリマーを含有する接着剤が好ましい。
【0052】
他の好ましい接着剤では、缶内および機械的安定性のために架橋性安定化コロイドを場合により添加する。スチレン−ブタジエンゴム(SBR)型接着剤の場合、安定化コロイドも金属−カルボキシラート錯体を通じて、亜鉛、銅、およびアルミニウムイオンと反応するであろう。
【0053】
それゆえ亜鉛などの金属イオンを表面層上に有する、本発明のコーティングによって処理された床材下敷はこれらの接着剤と反応して、金属−ポリマー錯体の形成を通じて、接着剤のより多くの成分のうち1つを架橋する。市販の接着剤、例えばCongoleum 3044(Congoleum,Mercerville,NJ)、Mannington V−31(Mannington Mills,Salem,NJ)、Armstrong S−254(Armstrong World Industries,Inc.,Lancaster,PA)、およびTarket FB−1(Tarket Floors,Johnson City,TN)は、接着剤と床材下敷との間の接着を向上させるために、本発明のコーティングによって有用である。
【0054】
コーティングミックスは、乾燥成分を組合せて、それらを配合することによって作成する。好ましい実施形態において、乾燥コーティングミックスは、乾燥再分散性ポリマー、粉末消泡剤および乾燥表面補強剤を混合することによって調製する。これらの成分は好ましくは、実質的に均質な乾燥混合物が得られるまで配合する。任意の成分も混合物中に添加・配合する。次に混合物を場合により包装して、乾燥した形で販売する。
【0055】
作業現場では、乾燥コーティング混合物を水と混合することによってコーティングを調製する。好ましくは乾燥粉末を適切な量の流水中にゆっくりと添加して、少なくとも1または2分間混合する。溶液を好ましくは約15分間静置し、次にさらに1〜2分間再混合する。混合方法は重要ではなく、高品質コーティングの作成では、手作業での攪拌棒による攪拌または機械装置による混合が等しく有効である。
【0056】
液体レディミックス調合物は、包装および販売前に添加された水を有する。それらは水が他の成分と共に包装、出荷および保存されているため、一般に乾燥コーティングミックスよりも高価である。しかしながら一部の状況では、例えば非常に少量を使用する場合、または作業現場で適切な水を入手できない場合、すぐに混合できるコーティングに割増価格を支払うことは正当化できる。構成成分を混合するための同じ技法は、コーティングが完成した後に製品の包装および販売が行われ、すぐに使用できることを除いて、乾燥コーティング混合物と同様に使用される。液体形であるが、レディミックス生成物よりも少ない水を有するレディミックス濃縮物の調製も考慮される。濃縮物は、濃縮物に最適な希釈に十分な量の水を添加して、完全に混合することによって、乾燥混合物と同様の方法で再構成可能である。コーティングは乾燥ミックスから作業現場で調製されるか、または工場にて調製され、レディミックス形で販売されるかにかかわらず、実質的に均一な粘稠度を得るために塗布の直前にコーティングを攪拌することが好ましい。
【0057】
コーティングは、いずれかの既知のコーティング方法によって凝固および乾燥した下敷に塗布する。塗布の好ましい方法は、スプレー、ロール塗布、モップ塗布、スクイージー塗布、バックロール塗布、注入、こて塗布(trowelling)、ブラシ塗布、またはそうでなければ基材表面のコーティングを含む。これらの技法の組合せも有用であり、例えばコーティングを分散させるためにスプレーして、次にさらに均一な仕上げを得るためにコーティングをブラシ塗布する。
【0058】
コーティングの厚さは、特定の基材、コーティング組成物および所望の表面硬度の程度によって変わる。好ましくは、コーティングは1平方フィート当たりコーティング10〜14グラムのコーティング重量となるように塗布する。特定の状況の下ではより厚いまたはより薄いコーティングも有用である。例えばより厚いコーティング塗布は、基材が粗い、または平坦でない場合、粉末層が特に厚い場合、またはコーティング溶液が薄い場合に有益である。
【0059】
塗布後に、接着剤、マスチックまたはビニルフローリングなどの追加フローリング層の施工前に、コーティングを乾燥させる。乾燥時に、コーティング組成物が凝集してフィルムを形成する。好ましくは、コーティングを少なくとも2時間、さらに好ましくは少なくとも4時間乾燥させて、確実に十分に乾燥させる。コーティング厚、周囲温度および湿度、コーティング中に存在する水の量によって、より長いまたはより短い乾燥時間が適切である。最長乾燥時間は、最終フローリングが敷設される間に利用できる時間によってのみ制限される。
【0060】
コーティングは単独で、あるいは他のコーティングまたは耐水性システムと共に有用である。未反応硫酸カルシウム半水和物の変換は、コーティング組成物がコーティング溶液と接触したときのみに起きる。粉末層が存在するとき、本コーティングを粉末層に隣接して配置することが好都合である。水バリアが必要な場合、主題のコーティングとマスチックとの間での従来のシーラントの使用を考慮する。
【0061】
上の議論において、および以下に続く実施例において、パーセンテージで表現されるすべての範囲は、コーティング中に存在する成分の乾燥重量に基づいている。水添加は、乾燥成分体積当たりの水の体積によって測定する。実施例は本発明の制限ではなく、本明細書で述べた実施形態の一部の作成および使用を説明するだけのものである。
【0062】
(実施例1〜3)
コーティング調製物の試験のために、LEVELROCK LR2500(USG Corporation,Chicago,IL)の試験パネルを作成した。1フィート平方および深さ1インチの合板型(30cm×30cm×2.5cm)は、USG Underlayment Primer (USG Corporation,Chicago,IL)をそれらに満たすことによって作成した。LEVELROCK LR2500 Underlaymentをメーカーの指示に従って混合し、型枠に注入した。サンプルを約4週間、または一定の重量に達するまで風乾させた。サンプルを1つの方向で、3つの等しい試験範囲に分割し、各試験範囲は約4”×12”(10cm×30cm)であった。ビニルシートフローリングの複数の細片を切出し、それぞれ試験範囲内に装着した。
【0063】
3つの比較例を調製して、本発明で使用された成分を個別に試験した。水を単独で試験して、安定な二水和物マトリックスを形成するのに十分な量の未反応半水和物を水和するか否かを調べた。硫酸亜鉛およびTOPSEALコーティング(USG Corporation,Chicago,IL)の形のラテックスポリマーをそれぞれ個別に試験した。これらの実施例それぞれの組成物を表Iに示す:
【0064】
【表1】



【0065】
TOPSEALは、床材下敷用の市販のシーラントである。必要な成分に加えて、実施例3および4で使用した市販の調合物は、少量の水も含む液体濃縮物である。USG TOPSEAL調合物の全組成を表IIに示す。
【0066】
【表2】



【0067】
試験範囲1の比較例を、水約3グラムでコーティングして乾燥させた。試験範囲3を、1:4の体積比で脱イオン水と混合することによって調製した市販のTOPSEALコーティング3gでコーティングした。TOPSEALは、標準的な添加剤、例えば消泡剤、湿潤剤、殺生物剤などを少量有するが、表面補強剤を含まないポリマーコーティングである。試験範囲2を硫酸亜鉛の水溶液、表面硬化剤によってコーティングした。各実施例では、コーティングを下敷表面にブラシで塗布した。下敷表面へのコーティングの装填は1平方フィート当たり12グラム(129g/m)または各試験範囲内でコーティング約3グラムであった。コーティングはそれぞれ試験を進める前に、少なくとも2時間、完全に乾燥させた。
【0068】
コーティング塗布の後、マスチックを45度の角度に保持した1/16”(1.6mm)平方の切欠き接着ごて(trowel)を用いてコーティングに均一に塗布した。接着ごての使用により、マスチック34.7グラム/フィート(374g/m)の割合で、一連の均一な厚さの平行チャネルにマスチックが塗布される。ビニルシートのサンプルは、マスチックを塗布した15分後に施工した。幅6インチ(15cm)および重量53ポンド(24Kg)のローラーを各サンプルに当てた。ローラーは、マスチックを均一に分散させるために、均一な圧力をビニルのすべての部分に印加した。剥離試験前に、すべてのサンプルを約24時間に渡って風乾させた。図1は、すべての試験範囲を作成した後の試験パネルを示す。
【0069】
すべてのサンプルが乾燥したときに、サンプルを下敷から除去できる容易さを判定するために剥離試験を実施した。ビニルをマスチックおよび下敷から分離しようと試みて、上向きの圧力を手で加える。下敷/マスチック/ビニル系における結合の1つが作用しなくなるまで、または系が試験者の力を超えるまで、上向きの力を増加させる。最も弱い結合が最初に作用しなくなる。下敷とマスチックとの間の結合が作用しなくなった場合、マスチックはビニルに付着し得る。マスチックとビニルとの間の接着が最も弱い場合、マスチックの縞状のチャネルがはっきりと目視され、下敷に付着している。フローリングサンプル層内で作用不全が生じた場合、マスチックは下敷に付着したままであるが、フローリングの一部がマスチックの縞を覆い隠す。実施例1〜3の剥離試験の結果を図2に示す。
【0070】
水のみを使用する試験範囲1は、いずれのビニルも下敷に付着せず、マスチックの一部のみが下敷に付着したことを示している。実質的にいずれの硫酸カルシウム半水和物も二水和物に変換されず、ビニルおよびマスチックが粉末層にてマトリックス層から容易に剥離される。中央サンプルの硫酸亜鉛溶液は、接着の向上を示している。ビニルの層間剥離は、マスチックおよび下敷間ならびにマスチックおよびビニル間の両方で良好な結合を示している。右側の試験範囲3でのTOPSEALシーラントの使用は、ビニルの一部の層間剥離を示しているが、一部の範囲では、マスチックから明らかに分離したビニルを示す。
【0071】
(実施例4〜5)
本発明のコーティングSEは、表IIIの成分を使用して調製した。最初の2つの乾燥成分をミキサーに入れ、約11/2分間混合した。次に残りの成分を混合物に添加した。混合時に得られた混合物は、白色の自由流動粉末であった。次に乾燥混合物1部:水4部の体積比で乾燥配合を脱イオン水に添加して、混合した。
【0072】
【表3】



【0073】
上の実施例1〜3で述べたように第2の試験パネルを作成して、ほぼ同じサイズの2つの試験範囲に分割した。ビニルシートのサンプルを各試験範囲内に適合するように切断した。実施例3のTOPSEALコーティングをパネル左の試験範囲に塗布して、実施例4とした。SEコーティングが塗布された実施例5は試験パネルの右側に示されている。マスチックを上の実施例1〜3で述べたように塗布して、ローラーを使用して2つのビニルサンプルを接着剤の中へ押込んだ。表VIに試験パネル2の実施例をまとめる。
【0074】
【表4】



【0075】
剥離試験の結果を図3に示す。実施例4は本質的に実施例3の複製である。上述のように、縞になった黄色の範囲は、実質的に接着がないためマスチックが見える部分である。実施例5において示される本発明のコーティングは、接着の顕著な向上を示す。マスチックは、サンプルの右端および左下隅の小規模な範囲のみに見える。実施例5のSE調合物は、サンプルの実質的に全体に渡って、ビニルの強力な接着および層間剥離を示している。
【0076】
より大きいパネル4フィートx4フィートx1インチ(1.2mx1.2mx2.5cm)を作成するために、上述の方法を使用して、追加の試験パネルを作成した。以下に続く実施例6および7では、実施例5のSEコーティングを種々のフローリングサンプルによって試験して、コーティングが異なる組成および構造のフローリングで有効であることを証明した。サンプルは、1つの例外をもって、実施例1に述べたのと同じ方法で作成した。より大きいサンプルサイズのために、重さ103ポンド(46.7Kg)の大型の3セクショナル15インチ(37.5cm)フロアローラー(Beno Gundlach Tools,Belleville,IL)を使用して、ビニルをマスチック内に取付けた。SEコーティングを12グラム/フィート(129g/m)のコーティング重量まで塗布した。
【0077】
(実施例6)
実施例6では、Manningtonビニルシートフローリング(Mannington Mills,Inc.Salem,NJ)をマスチックに施工して、24時間乾燥させた。エッジ効果を最小限に抑えるために、万能ナイフを使用してフローリング片を除去し、下敷からビニルを分離しようとしてビニルに手動で力を印加した。結果を図4に示すように、バッキングがマスチックに付着して、ビニルが層間剥離したことが明らかになっている
【0078】
(実施例7)
Congoleumビニルシートフローリング(Congoleum Corporation,Mercerville,NJ)を使用して実施例6を反復した。ビニルが層間剥離したため、再度、マスチックは見られず、マスチックのビニルへの、そして下敷への堅固な結合が示されている。
【0079】
(実施例8)
本実施例は、SEコーティングを従来のシーラントと共に使用することの実現性を証明する。試験パネルを上の実施例6で述べたように作成した。最初に下敷を実施例5の市販SE調合物12グラム/フィート(129g/m)でコーティングして、約4時間乾燥させた。次に下敷を市販のTOPSEALシーラント約10グラム/フィート(107g/m)でコーティングした。TOPSEALが完全に硬化したときに、マスチックおよびビニルシートのサンプルを表面に施工した。図6は、両方のコーティングを共に使用した場合でさえ、シートビニルの非常に良好な接着を示している。TOPSEALシーラントのSEコーティング上への塗布は、石膏表面の硬化、良好な接着および下敷と仕上げフローリングとの間の水バリアの形成をもたらす。
【0080】
本発明の特定の実施形態を紹介および説明したが、広範な態様にある本発明から逸脱することなしに、以下の請求項で述べるようにそれに対する変更および改良が実施できることが当業者によって理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】実施例1〜3に従って作成した試験パネル1上の、ビニルフローリングの3種類のサンプルを示す。
【図2】試験パネル1および実施例1〜3の剥離試験の結果を示す。
【図3】試験パネル2を実施例4および5の剥離試験の結果で示す。
【図4】試験パネル3および実施例6の剥離試験の結果を示す。
【図5】試験パネル4および実施例7の剥離試験の結果を示す。
【図6】試験パネル5および実施例8の剥離試験の結果を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
床材下敷と接着剤との間のコーティングとして水と共に使用するための混合物であって、
乾燥重量で約10%〜約50%の再分散性ラテックスポリマーと、
乾燥重量で約50%〜約90%の表面補強剤であって、焼石膏用の凝固促進剤および接着剤用の架橋剤の両方として機能させるために選択される前記表面補強剤と、
乾燥重量で約0.15%〜約0.25%の消泡剤と、
を含む前記混合物。
【請求項2】
前記表面補強剤が2価カチオンの硫酸塩および3価カチオンの硫酸塩の少なくとも1つである、請求項1に記載の混合物。
【請求項3】
前記2価カチオンの硫酸塩が硫酸亜鉛を含む、請求項2に記載の混合物。
【請求項4】
さらに湿潤剤を含む、請求項1に記載の混合物。
【請求項5】
前記湿潤剤が乾燥固体として約0.2%〜約1重量%の量で存在する、請求項4に記載の混合物。
【請求項6】
さらに防カビ剤を含む、請求項1に記載の混合物。
【請求項7】
前記防カビ剤が乾燥固体として約0.03%〜約0.05重量%の量で存在する、請求項6に記載の混合物。
【請求項8】
石膏を含む未コーティング床材下敷と、
フィルム形成ラテックスポリマーと、
焼石膏の凝固反応促進および接着剤の架橋の両方を行うために選択された表面補強剤と、
消泡剤と、を含む、
前記下敷の表面に塗布されるコーティングと、を含み、
接着剤を受容するために作成されたコーティング床材下敷。
【請求項9】
前記未コーティング床材下敷が乾燥した凝集体を含まない固体基準で少なくとも50%の石膏を含む、請求項8に記載のコーティング床材下敷。
【請求項10】
前記未コーティング床材下敷が乾燥した凝集体を含まない固体基準で30%までのセメントを含む、請求項8に記載のコーティング床材下敷。
【請求項11】
前記表面補強剤が前記コーティング中に乾燥した凝集体を含まない固体基準で約50%〜約90%の量で存在する、請求項8に記載のコーティング床材下敷。
【請求項12】
前記未コーティング床材下敷が凝集体粒子を含む、請求項8に記載のコーティング床材下敷。
【請求項13】
約1体積部〜約8体積部の水と、
前記コーティング混合物の乾燥固体基準でとして約10%〜約50%の再分散性ポリマーと、
前記コーティング混合物の乾燥重量基準で約50%〜約90%の表面補強剤であって、焼石膏用の凝固促進剤および接着剤用の架橋剤の両方として機能させるために選択された前記表面補強剤と、
前記コーティング混合物の乾燥重量基準で約0.15%〜約0.25%の消泡剤と、を含む、
約1体積部のコーティング混合物と、を含む、
接着剤を受容するための床材下敷を作成するためのコーティング。
【請求項14】
硫酸カルシウム二水和物を含む、結晶性マトリックスに埋め込まれた凝集体粒子を含むマトリックス層と、
ラテックスポリマーと、
金属カチオンと、カルシウム二水和物結晶の結合マトリックスを通じて分散された硫酸カルシウム半水和物と、を含む、
硫酸塩と、を含む、
表面層と、を含む、
多層床材下敷。
【請求項15】
前記硫酸塩が硫酸亜鉛を含む、請求項14に記載の下敷。
【請求項16】
石膏を含む凝固して乾燥した床材下敷を提供するステップと、
硫酸カルシウム半水和物の凝固反応および続いて塗布された接着剤の架橋の両方を加速する表面補強剤を選択するステップと、
混合物を生成するために再分散性ポリマー、表面補強剤および消泡剤を配合するステップと、
コーティングを生成するために混合物を水と約1:1〜約1:8の体積比で組合せるステップと、
前記コーティングを混合する混合ステップと、
床材下敷の表面に塗布する塗布ステップと、
コーティングを乾燥させる乾燥ステップと、を備える、
石膏含有床材下敷の表面強化方法。
【請求項17】
前記混合ステップが、
コーティングを約1分〜約5分間攪拌するステップと、
約10〜約20分間待機するステップと、
コーティングを約1〜約5分間攪拌するステップと、をさらに備える、
請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記塗布ステップが、コーティングをスプレーするステップと、コーティングをローラー塗布するステップと、コーティングをモップで塗布するステップと、コーティングをブラシで塗布するステップのうちのいずれか1つより成る、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記乾燥ステップが、コーティングを少なくとも2時間風乾するステップをさらに備える、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記コーティングが塗布の直前に攪拌される、請求項16に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2007−518006(P2007−518006A)
【公表日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−549477(P2006−549477)
【出願日】平成17年1月10日(2005.1.10)
【国際出願番号】PCT/US2005/000671
【国際公開番号】WO2005/070118
【国際公開日】平成17年8月4日(2005.8.4)
【出願人】(596172325)ユナイテッド・ステイツ・ジプサム・カンパニー (100)
【Fターム(参考)】