説明

石製灯籠用扉および石製灯籠

【課題】扉本体の紛失、破損などを確実に防止しながらも扉本体の「左開き」および「右開き」を選択的に実行することができる石製灯籠用扉および石製灯籠を提供する。
【解決手段】上方リンク部材131は、その一方端が上方回動支持部43に対して回動軸RA1回りに回動自在に軸支されるとともに、その他方端が扉本体12の左側端部12Lの上方端に取り付けられた回動支持部124に対して回動軸RA2回りに回動自在に軸支されている。また、もう一方の下方リンク部材132も上方リンク部材131と同様に構成されている。このため、固定部11に対して連結部13を介して扉本体12が常に連結されており、その連結状態を維持したまま扉本体12を「左開き」、「右開き」に回動させたり、「全開き」することが可能となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、寺院の境内や墓前等に設置される石製灯籠、該灯籠に適した扉に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、寺院の境内や墓前等に設置される石製灯籠として、例えば特許文献1に記載されたものが知られている。この石製灯籠では、石柱内部を刳り貫くとともに、その石柱正面に開口部を設けることによって灯籠本体部が形成されている。そして、灯籠本体部の内部に位置するロウソク立てにロウソクを立てることで、ロウソクから放射される光が開口部を介して灯籠本体部の外部に導かれて灯籠本体部の正面側を照らすことが可能となっている。また、上記特許文献1に記載の石製灯籠では、灯籠本体部に対するロウソクの収容および取出しを容易とし、しかもロウソクの火が消えるのを防止するために、石製灯籠用扉が開口部に対して開閉可能に灯籠本体部に装着されている。より具体的には、石製灯籠に対して開口部の周縁部で固定部が固定されるとともに、当該固定部に対して扉本体が回動自在に取り付けられており、扉本体の回動動作によって開口部を開閉する。
【0003】
また、上記した石製灯籠では、開口部に対して石製灯籠用扉が「左開き」、「右開き」で開閉可能となっている。このため、ユーザは風向きに応じて「左開き」と「右開き」とを切り替えて強風時にも確実に、しかも容易にロウソクに点火することができる。また、ユーザは利き腕や荷物の手持ち状況に応じて自分にとって操作しやすい方向に扉本体を開閉することができ、優れた操作性が得られる。また、単一構成で「左開き」と「右開き」とのいずれにも対応することができ、優れた汎用性が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−228445号公報(図3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記特許文献1に記載の石製灯籠では、開口部に対する石製灯籠用扉の開閉方向を選択できるようにするために、次のような構成を採用している。すなわち、扉本体の左側および右側辺部にヒンジピンがそれぞれ設けられるとともに、各ヒンジピンに対応して固定部に左側および右側扉着脱部が設けられている。左側扉着脱部では、左側ヒンジピンが枢支部で係合されて枢支された状態のまま左側ヒンジピンを回動中心として扉本体を回動させることで「左開き」が実行可能となっている。また、右側扉着脱部では、右側ヒンジピンが枢支部で係合されて枢支された係合枢支状態のまま右側ヒンジピンを回動中心として扉本体を回動させることで「右開き」が実行可能となっている。
【0006】
このように構成された石製灯籠用扉では、固定部に対して扉本体はヒンジピンと枢支部との係合のみで連結されており、固定部から扉本体を完全に取り外し可能となっている。このため、ユーザが固定部から取り外した扉本体を元に戻すのを忘れ、扉本体の紛失が発生することがあった。また、扉本体の取外や装着などの作業中にユーザが扉本体を落として損傷させたり、破損させるおそれがある。
【0007】
この発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、扉本体の紛失、破損などを確実に防止しながらも扉本体の「左開き」および「右開き」を選択的に実行することができる石製灯籠用扉および石製灯籠を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明にかかる石製灯籠用扉は、その正面に開口部を有する石製灯籠に装着されて開口部を開閉するものであって、上記目的を達成するため、開口部の周縁部に対して装着自在な固定部と、開口部に対して離接自在に設けられ、開口部に近接することで開口部を覆って閉じる扉本体と、固定部に対して扉本体を連結する連結部とを備え、開口部の左右方向の一方を第1方向とし、他方を第2方向としたとき、連結部は、固定部の第1方向側端部に対して一方端が軸支されるとともに扉本体の第2方向側端部に対して他方端が軸支されたリンク部材を有し、扉本体は、リンク部材の一方端を回動中心として回動可能で、リンク部材の他方端を回動中心として回動可能となっていることを特徴としている。
【0009】
また、この発明にかかる石製灯籠は、上記目的を達成するため、その正面に開口部が形成された灯籠本体部と、請求項1ないし6のいずれか一項に記載の石製灯籠用扉とを備え、固定部が灯籠本体部の開口部の周縁部に装着され、リンク部材の一方端を回動中心として扉本体とリンク部材を一体的に回動させることで第1方向から開口部が開閉され、リンク部材の他方端を回動中心として扉本体を単独で回動させることで第2方向から開口部が開閉されることを特徴としている。
【0010】
ここで、連結部はリンク部材として上方リンク部材と下方リンク部材を有しており、上方リンク部材の一方端は第1方向側端部の上方端に軸支されるとともに、上方リンク部材の他方端は第2方向側端部の上方端に軸支され、下方リンク部材の一方端は第1方向側端部の下方端に軸支されるとともに、下方リンク部材の他方端は第2方向側端部の下方端に軸支されるように構成してもよい。
【0011】
また、固定部の上方端部に対して係脱自在な上方係合部を上方リンク部材に設けたり、固定部の下方端部に対して係脱自在な下方係合部を下方リンク部材に設けてもよい。
【0012】
また、略円筒形状を有する石製灯籠に対して固定部を装着する場合、固定部の上方端部および下方端部を湾曲成形し、上方端部が下方端部に比べて湾曲変形容易となるように構成してもよい。
【0013】
さらに、リンク部材をバネ鋼で構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明にかかる石製灯籠の一実施形態を示す斜視図である。
【図2】図1の石製灯籠の断面図である。
【図3】図1の石製灯籠に装着される石製灯籠用扉を示す斜視図である。
【図4】灯籠本体部への扉の装着手順および扉本体の開閉動作を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は本発明にかかる石製灯籠の一実施形態を示す斜視図であり、図2は図1の石製灯籠の断面図であり、図3は図1の石製灯籠に装着される石製灯籠用扉を示す斜視図である。この実施形態では、石製灯籠用扉1が石製灯籠2の灯籠本体部22に対して着脱自在となっており、灯籠本体部22に装着された状態で石製灯籠2の開口部23に対して水平方向に開閉自在となっている。また、その開閉動作について、「左開き」、「右開き」および「全開き」を選択的に切替可能となっている。なお、この明細書では、扉本体12の正面左側部を回動中心として水平方向に開閉する動作を「左開き」と称し、扉本体12の正面右側部を回動中心として水平方向に開閉する動作を「右開き」と称し、扉本体12を固定部11から完全に離間させる動作を「全開き」と称する。また、水平方向Xのうち図3に示すように正面から見て右側方向(+X)を「第1方向」と称し、左側方向(−X)を「第2方向」と称する。
【0016】
石製灯籠2は、図1および図2に示すように、その下部が径大な基台部21と、この基台部21の上部に連設された略円筒形の灯籠本体部22とで構成されている。そして、灯籠本体部22の正面側(図2の右側)に開口部23が設けられており、灯籠本体部22の内部に位置するロウソク立てに立てられたロウソク(図示省略)から放射される光を石製灯籠2の外部に導いて石製灯籠2の正面側(図2の右側)を照らすことが可能となっている。また、この実施形態においても、灯籠本体部22に対するロウソクの収容および取出しを容易とし、しかもロウソクの火が消えるのを防止するために、開口部23に対して石製灯籠用扉1を装着可能で、しかも石製灯籠2への装着状態で石製灯籠2の開口部23に対して開閉可能となっている。以下、石製灯籠用扉1の構成について詳述する。
【0017】
石製灯籠用扉1は、灯籠本体部22に対して固定可能な固定部11と、灯籠本体部22の略円筒形状に対応して湾曲成形された扉本体12と、固定部11に対して扉本体12を連結する連結部13とを備えている。この扉本体12は例えばステンレス製などの金属製であり、その略中央部には、1つの窓部121が設けられている。そして、この窓部121にガラスなどの耐熱性透明部材14が取着されている。具体的には、扉本体12の上下部に固着された4つの係止爪部122によって、透明部材14は扉本体12に固定されている。また、扉本体12の下部中央にロウソク立て15が支持板16を介して取り付けられている。したがって、必要に応じて扉本体12を後述するように「左開き」、「右開き」に回動させたり、「全開き」することで、扉本体12および透明部材14が一体的に開口部23に対して開閉される。なお、この実施形態では、ロウソク立て15が支持板16の先端部に固着されているが、ロウソク立て15を支持板16に対して着脱自在に構成してもよい。また、支持板16を枠部材4や後述する固定部材52などに対して着脱自在に構成してもよい。なお、このように構成された扉本体12のうち正面左側端部12Lが後述するように連結部13と連結され、本発明の「第2方向側端部」に相当する。
【0018】
一方、固定部11は開口部23の周縁部に着脱自在となっており、中央部に開口部23と同程度または若干狭い開口部41を有する枠部材4と固定機構5とを有している。この枠部材4の開口部41は上下方向Yにおいて扉本体12の高さとほぼ同程度あるいは若干広く、左右方向Xにおいて扉本体12の幅よりも狭くなっている。このため、図1および図2に示すように、扉本体12を固定部11の枠部材4に近接配置させることで扉本体12が枠部材4の開口部41を覆って開口部23を閉じることが可能となっている。より詳しくは、枠部材4は、開口部23の右側端部に当接可能に設けられた右側端部42Rと、開口部23の左側端部に当接可能に設けられた左側端部42Lと、開口部23の上方端部に当接可能に設けられた上方端部42Uと、開口部23の下方端部に当接可能に設けられた下方端部42Dとを有しており、これら4つの端部42R、42L、42U、42Dで取り囲んで開口部41が形成されている。なお、これら端部42R、42L、42U、42Dがそれぞれ本発明の「第1方向側端部」、「第2方向側端部」、「上方端部」、「下方端部」に相当している。
【0019】
固定機構5は2本の固定部材51、52を有している。各固定部材51、52は、帯状片を石製灯籠2の内部に向けて強制湾曲してなる平面視で略U字形状を有しており、強制湾曲状態で固定部材51、52の右側端部が枠部材4の右側端部42Rに連結されるとともに固定部材51、52の左側端部が枠部材4の左側端部42Lに連結されている。各固定部材51、52には、枠部材4との連結部位近傍に係止部位が形成されている。より具体的には、固定部材51、52の一部に各連結部位側より切り込み部を設けるとともに、図3の破線箇所を折り曲げ箇所として切り込み片部を灯籠本体部22の内壁面に向けて折り曲げることで、合計4個の切り込み片部が係止部位53として形成されている。これらの係止部位53は、後述するようにして固定部11が灯籠本体部22に対して装着されると、灯籠本体部22の内壁面と接触して固定部材51、52の変位を防止し、これによって固定部11全体を灯籠本体部22に対してしっかりと固定している。
【0020】
また、各固定部材51、52は、右側端部42Rと左側端部42Lを互いに離間させる方向(水平方向)に付勢力を与えている。なお、この実施形態では枠部材4の下方端部42Dの下方部位を石製灯籠2の内部に折り曲げて下方端部42Dの剛性を上方端部42Uよりも高めている。このため、上方端部42Uと下方端部42Dの湾曲変形の容易さを比較すると、上方端部42Uが下方端部42Dに比べて湾曲変形しやすく、後述するように固定部11を石製灯籠2に装着した際、上方端部42Uが灯籠本体部22の湾曲周面に沿った形状に湾曲して灯籠本体部22の周面との隙間を小さくすることができる。通常では石製灯籠2は墓石の設置面近傍に配置されることが多く、ユーザは上方から石製灯籠2を見下ろすこととなる。したがって、石製灯籠2を見た際に扉1の上方側が石製灯籠2にぴったりと密着している状態をユーザは見ることとなり、ユーザに対して優れた美観を与える。一方、下方端部42Dでは湾曲変形の容易性が上方端部42Uに比べて多少劣るものの、固定部11の剛性が高められて固定部11をしかりと石製灯籠2に固定することができる。
【0021】
さらに、このように固定機構5により灯籠本体部22に固定された枠部材4では、右側端部42Rの上方端および下方端に回動支持部43、44がそれぞれ設けられており、回動支持部43、44に対して連結部13を介して扉本体12が連結されている。
【0022】
この連結部13は、ステンレスバネ鋼(例えばSUS301等)をブーメラン状に成形した2本のリンク部材131、132を有している。これらのうち上方リンク部材131は、その一方端が上方回動支持部43に対してビス6によって回動軸RA1回りに回動自在に軸支されるとともに、その他方端が扉本体12の左側端部12Lの上方端に取り付けられた回動支持部124に対してビス6によって回動軸RA2回りに回動自在に軸支されている。また、もう一方の下方リンク部材132も上方リンク部材131と同様に構成されている。すなわち、下方リンク部材132は、その一方端が下方回動支持部44に対してビス6によって回動軸RA3回りに回動自在に軸支されるとともに、その他方端が扉本体12の左側端部12Lの下方端に取り付けられた回動支持部125に対してビス6によって回動軸RA4回りに回動自在に軸支されている。このため、扉本体12を「左開き」、「右開き」に回動させたり、「全開き」することが可能となっている。なお、この動作については、後で図4を参照しながら詳述する。
【0023】
また、上方リンク部材131の上面には、略半円球状の微小突起133が設けられており、上方リンク部材131が枠部材4側に移動して上方リンク部材131の一部が開口部41内に入り込むときに、微小突起133が上方端部42Uの下方端面を乗り越えて固定機構5側に入り込む。こうして微小突起133が上方端部42Uと係合し、扉本体12に対して所定以上の外力が加わらない限り、上方リンク部材131は静止した状態に維持される。このように本実施形態では、微小突起133が固定部11の上方端部42Uに対して係脱自在となっており、本発明の「上方係合部」として機能している。
【0024】
さらに、下方リンク部材132側にも、上方リンク部材131と同様に、下方リンク部材132に係合部134が設けられている。この係合部134は下方リンク部材132の上面中央部から枠部材4側に設けられており、その先端部が丸フック形状を有しており、その湾曲部分が下方を向くように係合部134は取り付けられている。このため、下方リンク部材132が枠部材4側に移動して係合部134が開口部41内に入り込むときに、その先端湾曲部が下方端部42Dの上方端面を乗り越えて固定機構5側に入り込む。こうして係合部134が下方端部42Dと係合し、扉本体12に対して所定以上の外力が加わらない限り、下方リンク部材132は静止した状態に維持される。このように本実施形態では、係合部134が固定部11の下方端部42Dに対して係脱自在となっており、本発明の「下方係合部」として機能している。
【0025】
次に、図4を参照しつつ灯籠本体部22への扉1の装着手順および扉本体12の開閉動作について説明する。図4は灯籠本体部への扉の装着手順および扉本体の開閉動作を示す図である。なお、ここでは、固定部11に対する扉本体12および/またはリンク部材131、132の動作を理解し易いように、各部を模式的に示している。
【0026】
石製灯籠用扉1を準備した段階(装着前)では、扉本体12は固定部11の枠部材4に近接されて開口部23は閉じられている。このとき、微小突起(上方係合部)133および下方係合部134はそれぞれ上方端部42Uおよび下方端部42Dと係合して扉本体12はしっかりと閉じられた状態となっている。そして、この石製灯籠用扉1の固定機構5を灯籠本体部22の内部に向けた状態で石製灯籠用扉1を図4(a)中の矢印ARで示す方向に移動させる。このとき、ユーザや取付作業者は各固定部材51、52を左右方向から絞り込みながら灯籠本体部22の内部に圧入してもよい。また、各固定部材51、52は外力を受けて一定範囲内で変形可能であるため、各固定部材51、52をそのまま開口部23を介して灯籠本体部22の内部に挿入するようにしてもよい。ここで、圧入時に固定部材51、52が開口部23で弾性変形するが、固定部材51、52を灯籠本体部22の内部に挿入した段階でバネ力により固定部材51、52は広がり、灯籠本体部22の内周面に密着して固定される(図4(b))。
【0027】
そして、扉本体12を左開きする場合には、図4(c)に示すように扉本体12の右側端部12Rを操作して扉本体12のみを回動軸RA2、RA4回りに回動させると、扉本体12が回動しながら開口部23から離れて「左開き」により開口部23が開放される。このとき、微小突起133および下方係合部134はそれぞれ上方端部42Uおよび下方端部42Dと係合して両リンク部材131、132とも固定部11としっかりと一体となっており、「左開き」操作時にリンク部材131、132ががたついたり、リンク部材131、132が飛び出してくるなどの不都合を確実に防止することができる。また、開口部23を閉じる場合には、上記と逆の動作により行うことができる。
【0028】
また、扉本体12を右開きする場合には、図4(d)に示すように扉本体12の左側端部12Lを操作して扉本体12とリンク部材131、132を一体的に回動軸RA1、RA3回りに回動させると、扉本体12が回動しながら開口部23から離れて「右開き」により開口部23が開放される。また、開口部23を閉じる場合には、上記と逆の動作により行うことができる。
【0029】
さらに、同図(e)に示すように、「左開き」操作と「右開き」操作を組み合わせることで扉本体12を大きく正面側(同図の下方側)に移動させることができる(「全開き」)。このように「全開き」では、「左開き」操作と「右開き」操作を少しずつ行ったとしても、ロウソク立て15を正面側に引き出すことができ、特に石製灯籠2が左右に狭小な場所に設置されている場合でもロウソク立て15を確実に引き出し、また容易に元に戻すことができるという作用効果を有している。
【0030】
以上のように、上記実施形態によれば、固定部11に対して連結部13を介して扉本体12が連結されており、上記のように「左開き」操作、「右開き」操作および「全開き」操作のいずれを行う場合であっても、扉本体12が分離されることなく、扉本体12の紛失、破損などを確実に防止することができる。
【0031】
また、上方リンク部材131に微小突起133を上方係合部として設け、また下方リンク部材132に下方係合部134を設けている。このため、石製灯籠2を使用していない間、各係合部133、134がそれぞれ上方端部42Uおよび下方端部42Dと係合して扉本体12はしっかりと閉じられた状態となっており、強風や振動などにより扉本体12が開いたり、破損するなどの事故を確実に防止することができる。また、上記したように「左開き」操作を安定して行うことができる。
【0032】
また、上記実施形態では、「右開き」および「全開き」動作時にリンク部材131、132はそれぞれ回動支持部43、44との連結部で片持ち状態で支持される。したがって、強度面から各リンク部材131、132を厚肉で構成することも考えられるが、この場合、リンク部材131、132の重量増加は避けられない。また、上記実施形態では、図1や図3からわかるように、開口部23を閉じたとき、上下方向において上方端部42Uと扉本体12の間に上方リンク部材131が位置するとともに下方端部42Dと扉本体12の間に下方リンク部材132が位置する。したがって、リンク部材131、132を厚肉化した分だけ扉本体12の上下サイズを縮小する必要がある。これに対し、ステンレスバネ鋼などのバネ鋼によりリンク部材131、132を製造することで、リンク部材131、132のバネ特性が格段に上昇し、リンク部材131、132が多少撓んだとしても、すかさず元の状態に戻る。したがって、リンク部材131、132を厚肉化することなく、「右開き」および「全開き」動作に十分に対応することができる。
【0033】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、上記実施形態では、枠部材4の右側端部42Rと扉本体12の左側端部12Lとをリンク部材131、132を介して連結しているが、枠部材4の左側端部42Lと扉本体12の右側端部12Rとをリンク部材131、132を介して連結してもよく、この場合、左側方向(−X)が本発明の「第1方向」に相当し、右側方向(+X)が本発明の「第2方向」に相当する。
【0034】
また、上記実施形態では、リンク部材131、132の両端を枠部材4および扉本体12に連結する連結部材としてビス6を用いているが、他の連結部材(例えばリベットや丁番など)を用いてもよいことは言うまでもない。
【0035】
また、固定機構5の構成については、上記実施形態の方式に限定されるものではなく、枠部材4を灯籠本体部22に装着可能な任意の方式、例えば特許文献1に記載された固定方式、特許第301200号に記載の固定方式(灯籠本体部22の内壁面に突張部材を押圧して固定する、いわゆる「内周面押圧方式」)、あるいは枠部材4とクリップ部材とで灯籠本体部22の壁を挟み込む「挟み込み方式」などを用いることができる。
【符号の説明】
【0036】
1…石製灯籠用扉
2…石製灯籠
4…枠部材(固定部)
5…固定機構(固定部)
11…固定部
12…扉本体
12L…(扉本体の)左側端部
12R…(扉本体の)右側端部
13…連結部
22…灯籠本体部
23…(石製灯籠の)開口部
42D…(枠部材の)下方端部
42L…(枠部材の)左側端部
42R…(枠部材の)右側端部
42U…(枠部材の)上方端部
51…固定部材
124、125…回動支持部
131…上方リンク部材
132…下方リンク部材
133…微小突起(上方係合部)
134…下方係合部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
その正面に開口部を有する石製灯籠に装着されて前記開口部を開閉する石製灯籠用扉において、
前記開口部の周縁部に対して装着自在な固定部と、
前記開口部に対して離接自在に設けられ、前記開口部に近接することで前記開口部を覆って閉じる扉本体と、
前記固定部に対して前記扉本体を連結する連結部とを備え、
前記開口部の左右方向の一方を第1方向とし、他方を第2方向としたとき、
前記連結部は、前記固定部の第1方向側端部に対して一方端が軸支されるとともに前記扉本体の第2方向側端部に対して他方端が軸支されたリンク部材を有し、
前記扉本体は、前記リンク部材の前記一方端を回動中心として回動可能で、前記リンク部材の前記他方端を回動中心として回動可能となっていることを特徴とする石製灯籠用扉。
【請求項2】
前記連結部は前記リンク部材として上方リンク部材と下方リンク部材を有しており、
前記上方リンク部材の一方端は前記第1方向側端部の上方端に軸支されるとともに、前記上方リンク部材の他方端は前記第2方向側端部の上方端に軸支され、
前記下方リンク部材の一方端は前記第1方向側端部の下方端に軸支されるとともに、前記下方リンク部材の他方端は前記第2方向側端部の下方端に軸支されている請求項1に記載の石製灯籠用扉。
【請求項3】
前記固定部の上方端部に対して係脱自在な上方係合部が前記上方リンク部材に設けられている請求項2に記載の石製灯籠用扉。
【請求項4】
前記固定部の下方端部に対して係脱自在な下方係合部が前記下方リンク部材に設けられている請求項2または3に記載の石製灯籠用扉。
【請求項5】
前記固定部は略円筒形状を有する前記石製灯籠に対して装着可能となっており、
前記固定部の上方端部および下方端部は湾曲成形され、前記上方端部は前記下方端部に比べて湾曲変形容易となっている請求項1ないし4のいずれか一項に記載の石製灯籠用扉。
【請求項6】
前記リンク部材はバネ鋼で構成されている請求項1ないし5のいずれか一項に記載の石製灯籠用扉。
【請求項7】
その正面に開口部が形成された灯籠本体部と、
請求項1ないし6のいずれか一項に記載の石製灯籠用扉とを備え、
前記固定部が前記灯籠本体部の開口部の周縁部に装着され、前記リンク部材の前記一方端を回動中心として前記扉本体と前記リンク部材を一体的に回動させることで前記第1方向から前記開口部が開閉され、前記リンク部材の前記他方端を回動中心として前記扉本体を単独で回動させることで前記第2方向から前記開口部が開閉されることを特徴とする石製灯籠。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−287500(P2010−287500A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−141447(P2009−141447)
【出願日】平成21年6月12日(2009.6.12)
【出願人】(504260416)精和電機産業株式会社 (5)
【Fターム(参考)】