説明

研磨ローラ

【課題】芯材の再利用を図ることができ、資源の有効利用や製造コストの低減に寄与できる研磨ローラを提供する。
【解決手段】研磨ローラとしてのバフローラ1は、不織布研磨材により円筒状に形成された研磨筒3と、この研磨筒3の内部に着脱可能に挿入される剛性を有する芯材5とを有している。芯材5は、軸方向に亘るスリット15を有する外筒7と、外周面の3箇所に軸方向に延びる弾性部材19を有する内筒9とを有し、3つの弾性部材19のうち2つは予め内筒9に固定され、残りの1つの弾性部材19Cを、研磨筒3内に挿入設定された外筒7に内筒9を挿入後、縦溝17を介して圧入し、この圧入による弾性力で外筒7を拡開して研磨筒3の内周面に圧接するとともに、研磨筒3に対する芯材5の真円度を確保する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント配線基板等の研磨に用いられ、不織布研磨材等を円筒状に形成してなる研磨材を、剛性を有する芯材で支持した構造の研磨ローラ及び該研磨ローラの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の研磨ローラは、例えば特許文献1に開示されているように、ベークライトやアルミニウム製等の剛性を有する円筒形コア(芯材)の外周面に砥粒を固めた不織布研磨材を接着剤で固定したり、ブラシを取り付けたりした構造のものが知られており、バフローラなどと呼ばれている。
芯材の中心孔の両端に軸装着部材としての軸通しリングを嵌め込み固定し、この軸通しリングを介して回転軸に着脱自在に取り付けるようになっている。
ベークライトによる芯材は、紙や布にフェノール樹脂等を含浸したもので、一般にベーク芯と呼ばれている。
不織布研磨材の円筒形式は、特許文献2に開示されているように、輪切り状のものを芯材の軸方向に積層したラミネート形式、板状のものを芯材の周方向に積層したフラップ形式、帯状のものを芯材の外周面に連続的に巻き付けた渦巻き形式等が知られているが、いずれにおいても不織布研磨材は芯材に接着剤によって固着され、一体化されている。
【0003】
使用が進むにつれて不織布研磨材は磨耗して研磨材の径が小さくなっていき、ある程度摩耗した段階で新しい研磨ローラと交換する。そして、使用済みの研磨ローラは研磨材と芯材とが一体となったまま廃棄処分されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−266296号公報
【特許文献2】特開2005−230929号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように、従来においては不織布研磨材等からなる研磨材と芯材とが一体に固着されているために、芯材は何らダメージを受けていないにも拘わらず研磨材と共に廃棄処分されており、環境問題(CO排出量の増加等)やリサイクルコストの上昇等の問題を抱えていた。
【0006】
本発明は、上記した問題点に鑑みてなされたものであり、芯材の再利用を図ることができ、資源の有効利用や製造コストの低減に寄与できる研磨ローラ及び研磨ローラの製造方法の提供を、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明は、円筒状に形成された研磨材と、該研磨材の内部に着脱可能に挿入される芯材とからなり、前記芯材は、円筒軸方向全体に亘るスリットを有し前記研磨材の内周面に当接する外筒と、該外筒に挿入され、両端部に回転軸に装着するための軸装着部材が嵌合される内筒とを有し、前記内筒は、該内筒を前記研磨材内に設定された前記外筒に挿入したときに、前記外筒を前記研磨材の内周面に均等に押圧するように該内筒の外周面に配置された円筒軸方向に延びる複数の弾性部材を有し、前記複数の弾性部材のうちの少なくとも1つを、前記外筒に前記内筒を挿入した後に圧入することにより前記研磨材内に前記外筒と前記内筒とが圧接固定されることを特徴とする研磨ローラである。
【0008】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の研磨ローラにおいて、前記複数の弾性部材は、剛性を有する帯板状の基体と、該基体の表面に固定され、前記外筒の内周面に当接する弾性層とを有し、後から圧入される弾性部材を除く残りの弾性部材は、前記内筒の外周面に固定されていることを特徴とする研磨ローラである。
【0009】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の研磨ローラにおいて、前記複数の弾性部材が、前記内筒の外周面を周方向に3等分した位置に配置され、そのうちの1つが後から圧入されることを特徴とする研磨ローラである。
【0010】
請求項4記載の発明は、請求項1〜3のいずれかに記載の研磨ローラにおいて、前記内筒の両端部に小径部が形成され、該小径部に前記外筒の内径と同等の外径を有するリング状のカラー部材が設けられ、該カラー部材は前記後から圧入される弾性部材を挿通するための切り欠き部を有していることを特徴とする研磨ローラである。
【0011】
請求項5記載の発明は、請求項1〜4のいずれかに記載の研磨ローラにおいて、円筒軸方向の両端に、前記内筒、前記カラー部材及び前記外筒の端面を前記研磨材の一部に亘って覆い、前記軸装着部材により押圧されるリング状の端面押えを有していることを特徴とする研磨ローラである。
【0012】
請求項6記載の発明は、円筒状に形成された研磨材を芯材で支持してなる研磨ローラの製造方法において、前記研磨材内に、円筒軸方向全体に亘るスリットを有し前記研磨材の内周面に当接する外筒を挿入した後、該外筒内に、両端部に回転軸に装着するための軸装着部材が嵌合される内筒を挿入し、該内筒は前記外筒内に挿入したときに、前記外筒を前記研磨材の内周面に均等に押圧するように該内筒の外周面に配置された円筒軸方向に延びる複数の弾性部材を有し、前記複数の弾性部材のうちの少なくとも1つを、前記外筒に前記内筒を挿入した後に圧入し、前記研磨材内に前記外筒と前記内筒とを圧接固定することを特徴とする研磨ローラの製造方法である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、研磨ローラの本来の研磨機能を維持しながら芯材の再利用を図ることができ、資源の有効利用や廃棄物の低減、製造コストの低減にも寄与できる。
弾性で寸法誤差を吸収できるので、芯材の外筒と内筒の組み合わせを限定する必要がなく、取扱い性、使用性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施の形態に係る研磨ローラの縦断面図で、図4におけるA−A線での展開断面図である。
【図2】芯材の分解斜視図である。
【図3】研磨ローラの組み立てを説明するための斜視図である。
【図4】研磨ローラの横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施の形態に係る研磨ロールを図面にしたがって説明する。
図1に示すように、本実施の形態に係る研磨ローラとしてのバフローラ1は、円筒状に形成された研磨材としての不織布研磨材(以下「研磨筒」という)3と、この研磨筒3の内部に着脱可能に挿入された剛性を有する芯材5等を有している。
研磨筒3は、樹脂を含浸して砥粒を固定した不織布プレートを平らな薄手の基布に貼り付け、円筒状に形成したもので、例えば床面に立てた状態で円筒形状を維持できる保形性を有している。
芯材5は、研磨筒3内に挿入されてその内周面に当接する外筒7と、この外筒7内に挿入される内筒9等を有している。本実施形態における外筒7と内筒9は上述したベーク管で形成されているが、これに限定されず、プラスチックやアルミニウム等の金属で形成してもよい。
【0016】
内筒9の両端部には、図示しない駆動源からの回転駆動力が入力される回転軸に装着するための軸装着部材としての金属製の軸通しリング11が嵌合されている。
軸通しリング11は、内筒9内に挿入される挿入部11aと、内筒9の外径よりも大きい径のフランジ部11bとを有し、中心部には上記回転軸に嵌挿するための挿通孔が形成されている。軸通しリング11は図示しないナット等を有する締結部材で上記回転軸に位置固定される。
軸通しリング11の内周面にはキー溝が形成されており、上記回転軸に取り付けられたキーが上記キー溝に係合することでバフローラ1と上記回転軸とが一体に回転するように結合される。
挿入部11aの外側端部には環状溝が形成されてOリング13(図2参照)が嵌められており、挿入したときにOリング13が弾性変形して内筒9の内周面に圧接するようになっている。
【0017】
図2に示すように、外筒7には、円筒軸方向(ローラ軸方向;以下単に「軸方向」という)に亘って1本のスリット(切れ目)15が形成されており、内側から押圧力が作用したときに弾性変形により拡開(拡径)できるようになっている。
内筒9は完全な円筒形状をなし、その外周面には、周方向に3等分した位置、すなわち中心角120°の間隔で軸方向に延びる細幅の縦溝17が形成されている。これらの縦溝17に対応してそれぞれ帯板状の弾性部材19A、19B、19Cが設けられている。
これらの弾性部材19は、剛性を有する部材としてのステンレス材からなる帯板状の基体21と、この基体21の外面に固定されたゴム等からなる弾性層23とを有している。
3つの弾性部材19A、19B、19Cのうち、2つの弾性部材19A、19Bは予め縦溝17に嵌めて接着等の手法で内筒9に固定されている。本実施形態では、内筒9の両端部と中央部にスペーサとして機能するリング状のカラー部材25を嵌合して外筒7に対する内筒9の大まかな芯出しを得る構成となっており、この関係で弾性部材19A、19Bは2つに分割されて固定されている。勿論、中央部のカラー部材25を設けずに弾性部材19A、19Bを1本の長い形状としてもよい。
端部に位置するカラー部材25は、内筒9の両端部に形成された小径部24に嵌合され、中央部に位置するカラー部材25は内筒の中央部に形成された環状溝26に嵌合されている。
カラー部材25は、外筒7の内径と同等の外径を有している。
【0018】
弾性部材19Cは、研磨筒3内に挿入設定された外筒7に内筒9を挿入した後から、打ち込んで圧入されるもので、この後工程としての弾性部材19Cの圧入を許容すべく、各カラー部材25には切り欠き部27が形成され、切り欠き部27の位置を揃えて内筒9に嵌合されている。
研磨筒3に対する外筒7の外径は、研磨筒3を立てた状態で上側から摺擦しながら押し込んで挿入できる程度に設定されている。
研磨筒3内に外筒7を挿入した後、図3に示すように、弾性部材19Cを有しない内筒9を外筒7内に挿入する。この場合、外筒7を有する研磨筒3を床面に立てた状態で内筒9を上から押し込んでもよく、逆に内筒9を床面に立てた状態で研磨筒3を上から嵌合してもよい。
内筒9は弾性部材19Cを有していないので、外筒7の内面寸法に対してタイトな関係にはなく、容易に押し込んで挿入することが可能となる。
なお、図3では分かり易くするために、外筒7を研磨筒3から突出させた状態を表示している。
【0019】
外筒7に内筒9を押し込んだ後、弾性部材19Cをこれに対応する縦溝17によってできている隙間にあてがい、プラスチックハンマ等で叩いて圧入する。
圧入すると、図4に矢印で示すように、外筒7は3箇所で均等に押圧されて拡開し、研磨筒3の内周面に圧接する。
弾性部材19A、19B、19Cによる3箇所での径方向の均等押圧作用によって内筒9も外筒7の中心部に位置決めされ、研磨筒3と芯材5の真円度が得られる。すなわち、弾性部材19Cの後圧入によって、研磨筒3、外筒7及び内筒9が同心円の関係に設定される。
本実施形態では弾性部材19を3箇所に設ける構成としたが、これに限定される趣旨ではなく、上記均等押圧作用が得られる範囲で適宜に設定することができる。
【0020】
外筒7と内筒9との間に製造上の寸法誤差があっても弾性層23の弾性によって吸収され、真円度を高精度に確保することができる。弾性による圧接固定であるので、内筒9又は弾性部材19Cを軸方向にハンマ等で叩くことにより、軸方向にずらして固定を解除して取り外すことができ、再利用が可能となる。
各弾性部材19を剛体としても上記真円度はある程度得ることができるが、剛体間の強固な固定となり、固定解除は極めて困難となるとともに、部材の損傷も懸念される。
また、上記のように弾性層23の弾性によって寸法誤差が吸収されるので、外筒7と内筒9との組み合わせを限定する必要がなく、複数の外筒7と内筒9の中から無作為に選択して芯材5を構成できる使い勝手のよさもある。
【0021】
芯材5を上記のように2重管的な構造とせずに単管とする構造も考えられるが、このようにした場合、研磨筒3の内周面と芯材間のすべりが懸念され、これを防止すべく寸法をタイトにすると取り外しが困難となる。
本実施形態に係るバフローラ1において、研磨筒3、外筒7及び内筒9の同一箇所にマーキングをし、回転軸に装着して実際に使用した結果、マーキングの位置ずれはなく、研磨筒3と外筒7との間、及び外筒7と内筒9との間ですべりは生じないことが確認された。
弾性部材19による圧接力及び摩擦力によって、芯材5の軸方向のずれも生じないが、本実施形態ではこの軸方向のずれを完全に防止するために、図2等に示すように、軸方向両端に平板状で且つリング状の端面押え29を設けている。
端面押え29の内径は、軸通しリング11の挿入部11aを挿通可能で、内筒9の外径よりも小さく設定され、外径は、外筒7の外径及び研磨筒3の内径よりも大きく設定されている。
これによって、図1に示すように、内筒9、カラー部材25、外筒7、弾性部材19及び研磨筒3の一部に亘る領域が端面押え29によって覆われ、端面押え29が軸通しリング11によって軸方向外側への位置ずれを阻止されることにより、内筒9等の軸方向のずれが抑制される。
【0022】
以上、本発明の実施の形態について詳述してきたが、具体的構成は、この実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における設計の変更などがあっても発明に含まれる。
上記実施形態では、不織布研磨材によるいわゆるバフローラを例示したが、他のホイール型研磨ローラにおいても同様に実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明の研磨ローラは、プリント配線基板等の研磨に用いられる研磨ローラの製造業等に利用可能である。
【符号の説明】
【0024】
1…バフローラ 3…研磨材としての不織布研磨材(研磨筒)
5…芯材 7…外筒
9…内筒 11…軸装着部材としての軸通しリング
19…弾性部材 21…基体
23…弾性層 24…小径部
25…カラー部材 27…切り欠き部
29…端面押え

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状に形成された研磨材と、該研磨材の内部に着脱可能に挿入される芯材とからなり、
前記芯材は、円筒軸方向全体に亘るスリットを有し前記研磨材の内周面に当接する外筒と、該外筒に挿入され、両端部に回転軸に装着するための軸装着部材が嵌合される内筒とを有し、
前記内筒は、該内筒を前記研磨材内に設定された前記外筒に挿入したときに、前記外筒を前記研磨材の内周面に均等に押圧するように該内筒の外周面に配置された円筒軸方向に延びる複数の弾性部材を有し、
前記複数の弾性部材のうちの少なくとも1つを、前記外筒に前記内筒を挿入した後に圧入することにより前記研磨材内に前記外筒と前記内筒とが圧接固定されることを特徴とする研磨ローラ。
【請求項2】
請求項1記載の研磨ローラにおいて、
前記複数の弾性部材は、剛性を有する帯板状の基体と、該基体の表面に固定され、前記外筒の内周面に当接する弾性層とを有し、後から圧入される弾性部材を除く残りの弾性部材は、前記内筒の外周面に固定されていることを特徴とする研磨ローラ。
【請求項3】
請求項2記載の研磨ローラにおいて、
前記複数の弾性部材が、前記内筒の外周面を周方向に3等分した位置に配置され、そのうちの1つが後から圧入されることを特徴とする研磨ローラ。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の研磨ローラにおいて、
前記内筒の両端部に小径部が形成され、該小径部に前記外筒の内径と同等の外径を有するリング状のカラー部材が設けられ、該カラー部材は前記後から圧入される弾性部材を挿通するための切り欠き部を有していることを特徴とする研磨ローラ。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の研磨ローラにおいて、
円筒軸方向の両端に、前記内筒、前記カラー部材及び前記外筒の端面を前記研磨材の一部に亘って覆い、前記軸装着部材により押圧されるリング状の端面押えを有していることを特徴とする研磨ローラ。
【請求項6】
円筒状に形成された研磨材を芯材で支持してなる研磨ローラの製造方法において、
前記研磨材内に、円筒軸方向全体に亘るスリットを有し前記研磨材の内周面に当接する外筒を挿入した後、該外筒内に、両端部に回転軸に装着するための軸装着部材が嵌合される内筒を挿入し、該内筒は前記外筒内に挿入したときに、前記外筒を前記研磨材の内周面に均等に押圧するように該内筒の外周面に配置された円筒軸方向に延びる複数の弾性部材を有し、
前記複数の弾性部材のうちの少なくとも1つを、前記外筒に前記内筒を挿入した後に圧入し、前記研磨材内に前記外筒と前記内筒とを圧接固定することを特徴とする研磨ローラの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−161523(P2011−161523A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−23698(P2010−23698)
【出願日】平成22年2月5日(2010.2.5)
【出願人】(591262849)日本研紙株式会社 (1)
【出願人】(394002925)株式会社丸源鐵工所 (2)
【Fターム(参考)】