説明

研磨装置

【課題】任意の形状の被研磨物を研磨することができる研磨装置を提供する。
【解決手段】加工テーブル11の上面に支持された凹レンズ12の被研磨面12aと所定の隙間gをもって移動される研磨ヘッド16に供給孔16b及び排出孔16cを形成し、研磨ヘッド16の上面に供給孔16bと対応して、噴射孔23aを有する供給ノズル23を設ける。該供給ノズル23に形成された導入孔23bに貯留タンク24から可撓配管25を介して研磨液Kを供給する。前記供給ノズル23の噴射孔23aに連通するように空気噴射ノズル27を設け、圧縮空気供給源28から可撓配管29を介して空気噴射ノズル27に圧縮空気を供給し、エゼクタ作用により研磨液Kを供給孔16bから隙間gに供給する。隙間gを流れる研磨液Kによって凹レンズ12の被研磨面12aが研磨される。前記排出孔16cによって隙間g内の使用済みの研磨液Kが排出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば研磨粒子あるいは研磨液等の流動性のある研磨材を被研磨物の表面に作用させて被研磨物を研磨する研磨装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、研磨装置として、特許文献1に開示されたものがある。この研磨装置は、図7に示すように、研磨粒Mを被研磨物Wの加工部位に向けて噴射する供給ノズル41を備え、噴射された上記研磨粒Mを吸引して回収する吸引ノズル42を備えている。又、この研磨装置には研磨粒Mを循環させるための空気流を生成するポンプ43が備えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005‐212009号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記従来の研磨装置は、供給ノズル41から噴射された研磨粒M及び研磨屑が加工部位から飛散しないように、供給ノズル41を保持するホルダ44に、カバー45を装着し、該カバー45の下端開口縁を被研磨物Wの上面に接触させて、加工部位を遮蔽する必要がある。このため、研磨中に被研磨物Wを支持するテーブルTを移動させる際に、被研磨物Wの上面にカバー45の下端縁を摺動接触させる必要があり、従って、上面が平面状の被研磨物Wしか研磨できず、被研磨物Wの形状が限定されるという問題があった。
【0005】
本発明は、上記従来の技術に存する問題点を解消して、任意の形状の被研磨物を研磨することができる研磨装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、テーブルに支持された被研磨物の被研磨面と対向して隙間を形成する研磨ヘッドと、前記研磨ヘッドに設けられ、かつ前記隙間に研磨材を供給する研磨材供給手段と、前記研磨ヘッドに設けられ、かつ前記隙間内の使用済み研磨材を、該隙間から外部に排出する研磨材排出手段と、前記研磨ヘッド又はテーブルを移動する移動手段と、 前記研磨材供給手段、研磨材排出手段及び移動手段の動作を制御する制御装置とを備えたことを要旨とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1において、前記研磨ヘッドには、研磨材を隙間に供給する供給孔と、隙間内の研磨材を排出する排出孔とが形成されていることを要旨とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2において、前記研磨材供給手段及び研磨材排出手段は、研磨材を循環供給するように構成され、循環経路の途中には、研磨材から研磨屑を分離する分離手段が設けられていることを要旨とする。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1項において、研磨材は研磨液であって、前記研磨材供給手段は、圧縮空気供給源から供給されレル噴射空気によるエゼクタ作用により研磨液を前記隙間に供給するように構成されていることを要旨とする。
【0010】
請求項5に記載の発明は、請求項2〜4のいずれか一項において、前記研磨ヘッドの中央部に前記供給孔が形成され、外周部に排出孔が形成されていることを要旨とする。
(作用)
この発明は移動手段によって、研磨ヘッドと被研磨物との間に所定の隙間が形成された状態で研磨ヘッドが移動され、研磨材供給手段によって前記隙間に研磨材が供給されるとともに、使用済みの研磨材が研磨材排出手段によって隙間から外部に排出される。前記隙間を流動する研磨材によって被研磨物が研磨される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、任意の形状の被研磨物を研磨することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】この発明を具体化した研磨装置の一実施形態を示す縦断面図。
【図2】研磨ヘッドを下から見た斜視図。
【図3】研磨装置の作動状態を示す縦断面図。
【図4】(a)〜(d)は、この発明の別の実施形態を示す研磨ヘッドの下から見た斜視図。
【図5】(a)は、この発明の別の実施形態を示す研磨ヘッドの縦断面図、(b)は研磨ヘッドの底面図。
【図6】この発明の別の実施形態を示す研磨ヘッドの縦断面図。
【図7】従来の研磨装置の縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を具体化した研磨装置の一実施形態を図1〜図3に従って説明する。
図1に示すように、研削装置のベッド10の上面には後述する研磨液Kを貯留するトレー36を介して加工テーブル11が配置されている。加工テーブル11の上面には、被研磨物としての凹レンズ12が図示しない例えば吸着用治具によって吸着保持されている。前記ベッド10の所定位置に立設されたコラム(図示略)には、5軸数値制御機構14によってX軸、Y軸及びZ軸の3軸方向と、X軸及びY軸の周りでそれぞれ旋回する2軸方向に移動制御される制御軸15が装着されている。前記制御軸15の下端部には、図2に示すように円盤状の研磨ヘッド16が取り付けられている。前記5軸数値制御機構14及び制御軸15は前記研磨ヘッド16の移動手段を構成している。前記研磨ヘッド16の円形の表面(図1の下面)16aと、前記凹レンズ12の凹状の被研磨面12aとの間には、研磨材としての研磨液Kが流動可能な隙間gが形成されるようになっている。
【0014】
前記研磨ヘッド16には、前記隙間gにスラリー状の研磨液Kを供給する供給孔16bが形成され、該供給孔16bから離隔した位置に隙間g内の研磨液Kを上方向に排出する排出孔16cが形成されている。
【0015】
前記研磨ヘッド16の供給孔16bと排出孔16cとの間には、前記隙間gに研磨液Kを循環供給する研磨材循環供給手段としての研磨液循環供給装置19が設けられている。この研磨液循環供給装置は、概略的に見て、研磨材供給手段としての研磨液供給手段20と、研磨材排出手段としての研磨液排出手段21と、使用済みの研磨液Kから研磨屑を分離する研磨屑分離手段22とによって構成されている。
【0016】
以下、前記研磨液循環供給装置19について説明する。
前記研磨ヘッド16の上面には、前記供給孔16bと対応するように、研磨液Kを前記研磨ヘッド16の供給孔16bに供給するための供給ノズル23が取り付けられている。該供給ノズル23の中心部には前記供給孔16bと連通する噴射孔23aが形成され、該噴射孔23aと交差するように研磨液Kの導入孔23bが形成されている。該導入孔23bには、研磨液Kの貯留タンク24から可撓配管25を介して研磨液Kが導入されるようになっている。
【0017】
前記可撓配管25には電磁式の開閉弁26が接続されている。前記供給ノズル23の上部には前記噴射孔23aに進入するように、空気噴射ノズル27が挿入されている。該空気噴射ノズル27には圧縮空気供給源28から可撓配管29を介して圧縮空気が供給されるようになっている。前記可撓配管29には電磁式の開閉弁30が接続されている。そして、前記開閉弁30が閉路ポートから開路ポートに切り換えられて、圧縮空気供給源28から可撓配管29を通して空気噴射ノズル27に圧縮空気が供給されると、供給ノズル23の噴射孔23a内が空気の噴射によって負圧となる。この空気噴射ノズル27によるエゼクタ作用により、貯留タンク24の内部の研磨液Kが可撓配管25及び導入孔23bを通して噴射孔23aに導入される。そして、研磨ヘッド16の供給孔16bから凹レンズ12と研磨ヘッド16との隙間gに供給され、被研磨面12aが研磨液Kに含まれる砥粒によって研磨される。
【0018】
前記研磨ヘッド16の排出孔16cには、可撓配管31の一端が接続されている。該可撓配管31の途中には吸引ポンプ32が接続され、配管31の他端には、研磨液Kの中から研磨屑のみを遠心分離方式により分離して除去する研磨屑分離装置33が接続されている。該研磨屑分離装置33によって清浄化された研磨液Kは配管34によって前記貯留タンク24の内部に還流され、分離された研磨屑は前記研磨屑分離装置33に設けた図示しない排出口から外部に排出されるようになっている。
【0019】
前記ベッド10と加工テーブル11の間に装着されたトレー36は、前記研磨ヘッド16による前記凹レンズ12の被研磨面12aの研磨加工の際に該被研磨面12aから漏出した研磨液Kを貯留する機能を備えている。このトレー36内の研磨液Kは、配管37及び前記吸引ポンプ32によって前記研磨屑分離装置33に供給されるようになっている。
【0020】
前記5軸数値制御機構14、開閉弁26、開閉弁30及び吸引ポンプ32等には、制御装置35から出力される動作信号によって、作動されるようになっている。前記制御装置35には、前記5軸数値制御機構14による研磨ヘッド16の移動が自動的に行われるように、予め記憶媒体に移動用のプログラムが記憶され、このプログラムに基づいて、研磨ヘッド16が凹レンズ12の被研磨面12aの研磨領域を移動するようになっている。
【0021】
次に、前記のように構成された研磨装置の作用について説明する。
図1は前記開閉弁26及び開閉弁30が閉路ポートに切り換えられるとともに、吸引ポンプ32が停止された研磨装置の停止状態を示す。この状態において、制御装置35から出力される動作信号によって、前記開閉弁26及び開閉弁30が図3に示すように閉路ポートから開路ポートにそれぞれ切り換えられるとともに、吸引ポンプ32が作動される。そして、圧縮空気供給源28から可撓配管29及び空気噴射ノズル27を通して、供給ノズル23の噴射孔23aに圧縮空気が噴射される。この動作によって、前記貯留タンク24の内部に貯留されていた研磨液Kが可撓配管25及び導入孔23bを通して噴射孔23aに吸入され、前記研磨ヘッド16の供給孔16bから前記隙間gに供給される。前記隙間gに供給され、被研磨面12aの研磨に用いられた使用済みの研磨液Kは、該隙間g内から前記吸引ポンプ32によって排出孔16cを通して可撓配管31に吸い上げられ、研磨屑分離装置33内に送られる。該研磨屑分離装置33で、研磨液K内の研磨屑が遠心分離された後、清浄な研磨液Kは、配管34を介して貯留タンク24に還流され、再利用される。分離された研磨屑は、研磨屑分離装置33の図示しない排出口から外部に排出される。
【0022】
研磨ヘッド16が凹レンズ12の被研磨面12aとの隙間gを一定に保ちながら被研磨面12aの研磨領域の全体に移動走査されて、被研磨面12a全体が研磨される。
上記実施形態の研磨装置によれば、以下のような効果を得ることができる。
【0023】
(1)上記実施形態では、凹レンズ12の被研磨面12aと、研磨ヘッド16の表面16aとの間に形成された隙間gに研磨ヘッド16の供給孔16bから研磨液Kを供給し、隙間gを流れる研磨液Kに含まれる砥粒によって被研磨面12aを研磨するようにした。このため、前記研磨ヘッド16を研磨領域に沿って自由に移動することができ、任意の形状の被研磨物Wを研磨することができる。
【0024】
(2)上記実施形態では、隙間g内の使用済みの研磨液Kを排出孔16cから可撓配管31を通して研磨屑分離装置33に導き、該研磨屑分離装置33によって研磨液Kに含まれる研磨屑を遠心分離し、清浄な研磨液Kを貯留タンク24に還流するようにした。このため、研磨液Kを再利用することができ、ランニングコストを低減することができる。
【0025】
(3)上記実施形態では、研磨ヘッド16に供給孔16b及び排出孔16cを設けたので、部品点数を低減して、研磨ヘッド16の構造を簡素化することができる。
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
【0026】
・図4(a)に示すように、前記研磨ヘッド16の中心部に供給孔16bを形成し、外周側に円環状の排出孔16cを形成してもよい。この実施形態では、前記供給孔16bから隙間gに供給された研磨液Kが円環状の排出孔16cによってより確実に排出される。
【0027】
・図4(b)に示すように、研磨ヘッド16の中心部に供給孔16bを形成し、外周部に円形の排出孔16cを複数(例えば2〜8)箇所に形成してもよい。図4(c)に示すように、研磨ヘッド16に平面長四角形状の供給孔16bを形成するとともに、同じく平面長四角形状の排出孔16cを形成してもよい。図4(d)に示すように、2つの供給孔16bと、2つの排出孔16cを形成してもよい。
【0028】
・図5(a),(b)に示すように、前記研磨ヘッド16の中央部に供給孔16bを形成し、外周部に排出孔16cを形成し、外周縁に環状突条16dを形成してもよい。この実施形態においては、前記環状突条16dによって隙間g内の研磨液Kが隙間gから外側方に流出するのを抑制することができる。
【0029】
・図6に示すように、研磨ヘッド16に別体で形成した研磨液供給ノズル38及び研磨液排出ノズル39を取り付けてもよい。
・図示しないが、研磨液供給手段20と、研磨液排出手段21とをそれぞれ別々に配設して、研磨液Kを循環供給しないように構成してもよい。
【0030】
・前記実施形態では研磨ヘッド16を5軸数値制御機構14によって移動操作するようにしたが、研磨ヘッド16を所定位置に保持するとともに、前記ベッド10を例えばX,Y,Zの3軸方向に移動制御するようにしたり、5軸制御したりしてもよい。
【0031】
・研磨液に代えて、研磨材としての砥粒を空気流に乗せて、隙間gに供給し、被研磨物を研磨するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0032】
g…隙間、K…研磨材としての研磨液、W…被研磨物、12a…被研磨面、16…研磨ヘッド、16b…供給孔、16c…排出孔、28…圧縮空気供給源、35…制御装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
テーブルに支持された被研磨物の被研磨面と対向して隙間を形成する研磨ヘッドと、
前記研磨ヘッドに設けられ、かつ前記隙間に研磨材を供給する研磨材供給手段と、
前記研磨ヘッドに設けられ、かつ前記隙間内の使用済み研磨材を、該隙間から外部に排出する研磨材排出手段と、
前記研磨ヘッド又はテーブルを移動する移動手段と、
前記研磨材供給手段、研磨材排出手段及び移動手段の動作を制御する制御装置と
を備えたことを特徴とする研磨装置。
【請求項2】
請求項1において、前記研磨ヘッドには、研磨材を隙間に供給する供給孔と、隙間内の研磨材を排出する排出孔とが形成されていることを特徴とする研磨装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記研磨材供給手段及び研磨材排出手段は、研磨材を循環供給するように構成され、循環経路の途中には、研磨材から研磨屑を分離する分離手段が設けられていることを特徴とする研磨装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項において、研磨材は研磨液であって、前記研磨材供給手段は、圧縮空気供給源から供給されレル噴射空気によるエゼクタ作用により研磨液を前記隙間に供給するように構成されていることを特徴とする研磨装置。
【請求項5】
請求項2〜4のいずれか一項において、前記研磨ヘッドの中央部に前記供給孔が形成され、外周部に排出孔が形成されていることを特徴とする研磨装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−240433(P2011−240433A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−114414(P2010−114414)
【出願日】平成22年5月18日(2010.5.18)
【出願人】(000150604)株式会社ナガセインテグレックス (35)