説明

破片ガイドを有する核燃料スペーサアセンブリ

【課題】フレッティングによって燃料棒破損が生じる確率を低下させる。
【解決手段】原子炉用の燃料集合体は、複数の核燃料棒20と、これらの燃料棒を編成されたアレイとして支持する少なくとも1つの燃料棒スペーサアセンブリ10とを含む。燃料棒スペーサアセンブリは、燃料棒スペーサアセンブリの前縁41にガイド37を含む。このガイドは、燃料棒スペーサアセンブリの開放通路に破片を導くために、燃料棒に向かって傾斜している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に核燃料棒スペーサアセンブリに関する。
【背景技術】
【0002】
原子炉冷却材循環システムを構成する構成部品の製造およびそれに続く据付けならびに修繕の間、原子炉容器およびさまざまな運転条件下で原子炉容器内に冷却材を循環させるその関連システムから、全ての破片(debris)(例えば金属の切りくずおよび削りくず、金属の小さな固体切断片など)を除去することを保証するために、入念な取組みが実施される。破片除去の保証に資するため綿密な手順が実施され、かつ、このような除去を達成するための安全装置が使用されるにもかかわらず、一部の切りくずおよび金属粒子は冷却材循環システムの中に潜み、留まり続ける。
【0003】
例えば、原子炉内の燃料棒スペーサアセンブリに捕捉された破片によって、燃料集合体の損傷が起こる可能性がある。この損傷は、燃料棒管の外面と接触した破片のフレッティング(fretting)によって引き起こされる燃料棒管の穿孔からなる。破片は、球形の片ではなく、比較的に薄い長方形の片である傾向がある。具体的には、大部分の破片は、おそらく蒸気発生器の修繕または交換の後に一次系内に残された金属旋削くずからなる。破片は、その「卵ケース(egg−crate)」形のセル壁(またはフェルール(ferrule)セル)間の空間内、および/または燃料棒スペーサアセンブリの前縁の領域に留まる可能性がある。
【0004】
上記の問題を解決する1つの方法は、破片を捕獲するために、燃料束の下タイプレート(tie plate)にろ過装置を取り付け、運転前試験中にこのろ過装置を取り外す方法である。これらのろ過装置は、幅広い範囲のタイプおよびサイズの破片を除去するのに有効ではあったが、これらの従来のろ過装置は、全ての破片を除去するわけではなく、例えば燃料束の頂部から、燃料束に破片が入ることを防げない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この従来の方法はそれなりによく機能することもあり、一般に、それらのろ過装置の設計運転条件の範囲内では目的を達成するが、いくつかの問題(例えば両立性の問題、首尾一貫しない運転サイクル、コスト、その他)も生み出す。したがって、原子炉内の破片捕獲の問題を解決する新たな方法が求められている。その新たな方法は、原子炉の構成部品の既存の構造および運転と両立しなければならず、原子炉の運転サイクル全体を通じて有効でなければならず、少なくとも、原子炉に追加されるコストを上回る利益を全体として提供しなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の例示的な一実施形態では、原子炉用の燃料集合体が開示される。この燃料集合体は、複数の核燃料棒と、これらの燃料棒を編成されたアレイとして支持する少なくとも1つの燃料棒スペーサアセンブリとを含むことができる。燃料棒スペーサアセンブリは、燃料棒スペーサアセンブリの開放通路に破片を導くガイドを含む。
【0007】
例示的な他の実施形態では、このガイドが燃料棒に向かって傾斜している。
【0008】
例示的な他の実施形態では、傾斜した部材によって水平面が冷却材流から遮蔽される(例えば破片を集めやすい水平面から破片を遠ざける)ように、ガイドが、燃料棒スペーサアセンブリの内側に位置する。
【0009】
例示的な他の実施形態では、ガイドが燃料棒スペーサアセンブリと一体であり、破片を集める傾向があるサブチャネル内経路を閉め切る働きをする。
【0010】
例示的な他の実施形態では、冷却材流に影響を及ぼすため、ガイドが、燃料棒スペーサアセンブリの前縁に位置する。
【0011】
例示的な他の実施形態では、ガイドが、破片が燃料棒スペーサアセンブリを完全に通過する確率を増大させる最小断面積を有するよう、破片の向きを優先的に定めるように設計されている。
【0012】
例示的な他の実施形態では、本発明が、燃料棒スペーサアセンブリによって破片が捕捉され、その後、フレッティングによって燃料棒破損が生じる確率を低下させるために、原子炉冷却材中の破片を燃料棒スペーサアセンブリ内の空間に導く特定の特徴または装置を含む核燃料棒スペーサアセンブリを開示する。
【0013】
本発明は、以下の詳細な説明および添付図面からより完全に理解されよう。図面中、同様の要素は同様の参照符号によって表されている。これらの説明および図面は、例示のためだけに示されたものであり、したがって本発明を限定するものではない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
これらの図は、本発明の例示的な実施形態を説明するために、本発明の例示的な実施形態の方法および装置の全体的な特徴を示すことを意図したものであることに留意されたい。しかし、これらの図面は均一な尺度で描かれてはおらず、所与の実施形態の特性を正確に反映していない場合があり、そのため、これらの図面を、本発明の範囲に含まれる例示的な実施形態の値または特性の範囲を定義または限定するものと解釈してはならない。分かりやすくするため、燃料集合体の相対的な寸法およびサイズは縮小または誇張されている場合がある。さまざまな図面の同様の対応する部分に対しては、同様の参照番号が使用される。
【0015】
本明細書に記載される燃料集合体は一般に、沸騰加圧水型原子炉内で使用されるタイプの燃料集合体とすることができる。燃料集合体は一般に、燃料集合体の長さに沿って間隔を置いて配置されたグリッド(grid)によって、互いから間隔をあけて保持された燃料棒を含む。燃料棒はそれぞれ核燃料ペレット(図示せず)を含み、上下のエンドプラグによって両端が閉じられている。核分裂性物質からなる燃料ペレットは、原子炉の反応パワーを生み出す源である。下炉心板の複数の流れ開口を通して燃料集合体へ、水、ホウ素を含む水などの液体減速材/冷却材が上向きに流される。それぞれの燃料集合体の下端ノズルは画定された一連の流れ穴を有し、冷却材は、燃料集合体の中で発生した熱を抽出して有用な仕事を生み出すために、この穴を通して上方へ流れ、燃料チャネルに入り、燃料集合体の燃料棒に沿って流れる。
【0016】
図1は、本発明の例示的な一実施形態に基づく燃料棒スペーサアセンブリ10を示す。燃料棒スペーサアセンブリ10は、燃料棒20(図3に示されている)をアレイとして支持する燃料棒支持セル15として編成される。例えば、図1には、燃料棒を支持する10×10のアレイが示されている。燃料棒の長さは例えば約160インチ、直径は例えば約0.4から0.5インチである。
【0017】
燃料棒スペーサアセンブリ10は2つの目的を有することができる。第1に、燃料棒スペーサアセンブリ10は、燃料束集合体の寿命の間、燃料棒20の間隔を均一に維持する機械的支持を提供することができる。第2に、燃料棒スペーサアセンブリ10は、液体水冷却材/減速材の混合を提供し、燃料棒20が、熱破損することなくより高いパワーで機能することを可能にする。燃料棒20を支持するために複数のセル15があってもよいことを当業者は理解されたい。
【0018】
燃料集合体(図示せず)は、燃料棒20の周囲に配置された少なくとも1つの燃料棒スペーサアセンブリ10を含む。燃料棒スペーサアセンブリ10は、燃料束の長さに沿ったさまざまな高さに配置することができる。さらに、燃料集合体の中に2つ以上の燃料棒スペーサアセンブリ10があってもよいことを理解されたい。燃料棒スペーサアセンブリ10はさらに、燃料棒20が接触摩耗することを防ぐことができる。その上、燃料棒スペーサアセンブリ10は、それぞれの燃料棒20に、それらのそれぞれの高さで適当な拘束を提供することができ、したがって燃料棒20間の摩耗性接触を防ぎ、燃料束の長さに沿って燃料棒20を互いに、最適性能を与える均一な間隔に維持することができる。図2および4を参照すると、1つのサブチャネル10aを示す燃料棒スペーサアセンブリ10が示されている。それぞれのサブチャネル10a内には、ばね38を挿入するための開口30がある。ばね38は、燃料棒20の衝突および/または接触を軽減するのに役立つことができる。図2に示されているように、ばね部材38はサブチャネル10a間に位置する。例えば、ばね38は、(図1に示されているように)水平および垂直方向にサブチャネル10a1つおきに配置される。しかし、サブチャネルごと、サブチャネル2つおきなど、他のばね38位置を、セルグリッド15内に配置することができることを理解されたい。摩耗性接触を吸収するため、ばね38は、T字状の延長部材39を(両方向に)含むことができる。
【0019】
図4に示されているように、1つのサブチャネル10aの側壁にフェルールセル25が示されている。フェルールセル25は、燃料棒20がサブチャネル10aに挿入されるときに、ストップ機構の働きをすることができる。サブチャネル10aの側壁のフェルールセル25の形状のため、フェルールセル25はさらに、ばね部材38に対する間隔を維持することができる。
【0020】
図3は、本発明の例示的な一実施形態に基づく燃料棒スペーサアセンブリのサブコンポーネントの側面図である。図3に示されているように、燃料棒スペーサアセンブリ10は、スペーサ体の開放通路に破片を導くためのガイド37を含む。さらに、ガイド37は、従来のろ過装置の使用に加えての追加の破損防止層の働きをし、したがって、ろ過装置の直上および上方における破片フレッティングによる破損の可能性を低下させる。図4に示されているように、ガイド37は、燃料棒スペーサアセンブリ10の前縁41に位置し、燃料棒20に向かって内側へ傾斜している。言い換えると、水などの液体減速材/冷却材の流れが、燃料棒スペーサアセンブリ10に向かって流れるとき、液体減速材/冷却材が接触する最初の前縁は、ガイド部材37である。これは、燃料棒から遠ざかるように破片を導くことによって、燃料集合体内の破片に影響を及ぼす。
【0021】
ガイド37は円錐形スカートの形状をとることができる。この円錐形スカートは、流れチャネルの中央の空間を最大化することを促進し、破片がスペーサ体を通過する領域を与える。例示的な一実施形態では、円錐形スカートの角度が10〜30度である。他の角度を使用してもよいことを理解されたい。
【0022】
破片を集めやすい水平面から破片を遠ざけるため、傾斜した部材によって水平面が冷却材流から遮蔽されるように、ガイド37はさらに、燃料棒スペーサアセンブリ10の内側に位置する。ガイド37はさらに、破片が燃料棒スペーサアセンブリを完全に通過する確率を増大させる最小断面積を有するように、破片の向きを定めるように設計される。
【0023】
ガイド37はさらに、燃料棒スペーサアセンブリ10と一体(ワンピース)であり、破片を集める傾向があるサブチャネル内経路を閉め切る働きをする。さらに、ガイド37のこの一体設計は製造コストを低減させ、多部品燃料集合体に関連した修繕コストを低減させる。
【0024】
例示的な一実施形態では、本発明が、ガイド37を含む核燃料棒スペーサアセンブリ10を開示する。原子炉冷却材中の破片を、燃料棒スペーサアセンブリ10内の空間に導き、フレッティングによる燃料棒破損を引き起こす可能性がある破片捕捉の確率を低下させる。
【0025】
破片ガイドを備えた燃料棒スペーサアセンブリは、炉心に沿ったある場所に配置された一体化された破片トラップと同時に使用することができることを理解されたい。
【0026】
本明細書に記載の燃料棒スペーサアセンブリは、沸騰水型原子炉において使用されるタイプの燃料棒スペーサアセンブリとすることができるが、他のタイプの原子炉を使用することもできることを理解されたい。
【0027】
以上のように本発明を説明してきたが、本発明をさまざまに変更できることは明らかである。このような変更を、本発明の趣旨および範囲から逸脱するものとみなしてはならず、当業者に明らかなこのような変更は全て、上記特許請求の範囲に含まれることが意図されている。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の例示的な一実施形態に基づく燃料集合体グリッド内の燃料棒スペーサアセンブリの透視図である。
【図2】1つのサブチャネルを示す本発明の例示的な一実施形態に基づく燃料棒スペーサアセンブリの断面図である。
【図3】本発明の例示的な一実施形態に基づく燃料棒スペーサアセンブリのサブコンポーネントの側面図である。
【図4】1つのサブチャネルを示す本発明の例示的な一実施形態に基づく燃料棒スペーサアセンブリの等角断面図である。
【符号の説明】
【0029】
10 燃料棒スペーサアセンブリ
10a サブチャネル
15 燃料棒支持セル
20 燃料棒
25 フェルールセル
30 開口
37 ガイド
38 ばね部材
41 前縁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の核燃料棒(20)と、前記燃料棒を編成されたアレイとして支持する少なくとも1つの燃料棒スペーサアセンブリ(10)とを含む原子炉用の燃料集合体において、
前記燃料棒スペーサアセンブリの前縁(41)にガイド(37)を含み、前記燃料棒スペーサアセンブリの開放通路に破片を導くために、前記ガイドが前記燃料棒に向かって傾斜していることを特徴とする燃料棒スペーサアセンブリ。
【請求項2】
破片を集めやすい水平面から破片を遠ざけるために水平面が冷却材流から遮蔽されるように、前記ガイド(37)が、前記燃料棒スペーサアセンブリ(10)の内側に位置することを特徴とする請求項項1記載の燃料棒スペーサアセンブリ。
【請求項3】
前記ガイド(37)が前記燃料スペーサアセンブリと一体であることを特徴とする請求項項1記載の燃料棒スペーサアセンブリ。
【請求項4】
前記ガイド(37)が円錐形スカートの形状を有することを特徴とする請求項項1記載の燃料棒スペーサアセンブリ。
【請求項5】
複数の核燃料棒(20)と、前記燃料棒を編成されたアレイとして支持する少なくとも1つの燃料棒スペーサアセンブリ(10)とを含む原子炉用の燃料集合体において、
ばね(38)を保持するための開口(30)と、
前記燃料棒スペーサアセンブリの1つのサブチャネルの側壁の少なくとも1つのフェルールセル(25)と、
前記燃料棒スペーサアセンブリの開放通路に破片を導くためのガイド(37)とを含むことを特徴とする燃料棒スペーサアセンブリ。
【請求項6】
前記ガイド(37)が、前記燃料棒から遠ざかるように破片を導くための細長い前縁を含むことを特徴とする請求項項5記載の燃料棒スペーサアセンブリ。
【請求項7】
前記細長い前縁(41)が、前記燃料棒に向かって内側へ傾斜したことを特徴とする請求項項5記載の燃料棒スペーサアセンブリ。
【請求項8】
破片を集める傾向があるサブチャネル内経路を閉じ切るように、前記ガイド(37)が前記燃料スペーサアセンブリと一体であることを特徴とする請求項項6記載の燃料棒スペーサアセンブリ。
【請求項9】
集められた破片が前記燃料棒スペーサアセンブリを通過することができるように、前記ガイド(37)が最小断面積を有するように設計されたことを特徴とする請求項項6記載の燃料棒スペーサアセンブリ。
【請求項10】
前記ガイド(37)が円錐形スカートの形状を有することを特徴とする請求項項6記載の燃料棒スペーサアセンブリ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−333740(P2007−333740A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−158243(P2007−158243)
【出願日】平成19年6月15日(2007.6.15)
【出願人】(301068310)グローバル・ニュークリア・フュエル・アメリカズ・エルエルシー (56)