説明

破砕機のハンマ

【課題】
回転するハンマヘッド9に塵芥等の廃品を衝突させることで破砕する破砕機において、ハンマヘッドによる破砕を確実に行うとともに、破砕により摩耗したハンマヘッド9の交換コストを安価にする。
【解決手段】
ハンマ3のハンマヘッド9が、ハンマアーム31の中間部に抜差可能に配置される基部ハンマヘッド91と、ハンマアーム31の自由端側に連結ピン93により着脱可能に連結される先部ハンマヘッド92とを有する構成にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塵芥、ガラス、金属材などの廃品を破砕する破砕機におけるハンマに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、破砕容器内に設けた駆動軸にハンマアームの一端を固定し、このハンマアームの他端にハンマヘッドを連結ピンにより着脱可能に連結し、駆動軸の回転により回転したハンマヘッドの遠心力によって破砕容器内に投入された塵芥等の廃品を衝突させ、廃品を破砕するようにした破砕機のハンマは知られている。また、このハンマヘッドは、遠心力を増加させて廃品を確実に破砕するために、ハンマヘッド自体の重量を大きく形成されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許4052928号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、廃品の破砕を繰り返すと、ハンマヘッドの各辺に形成されたエッジ部が摩耗し、廃品の破砕作業の効率が悪くなるので、エッジ部が摩耗したハンマヘッドは新規のハンマヘッドに交換されるが、ハンマヘッド自体の質量が大きく高価なため、ハンマヘッドの交換のコストが高くなるという問題がある。
【0005】
本発明はかかる事情を鑑みてなされたもので、ハンマヘッドによる廃品の破砕を確実に行えるとともに、ハンマヘッドの交換を安価に行えるようにした新規な破砕機におけるハンマを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、回転体に連結されるハンマアームと、このハンマアームの中間部に抜差可能に差し込まれる基部ハンマヘッドと、前記ハンマアームの自由端側に連結ピンにより連結される先部ハンマヘッドとを有することを特徴としたものである。これにより、廃品の破砕時には、基部ハンマヘッドの重量と先部ハンマヘッドの重量とにより生じる遠心力により廃品を破砕することが出来るとともに、廃品の破砕により先部ハンマヘッドのエッジ部が摩耗した際に、先部ハンマヘッドのみ交換すればよいので、ハンマヘッドの交換コストが安価となる。
【0007】
また、本発明は先部ハンマヘッド、基部ハンマヘッドのいずれか一方に係合部を、他方に係合部と係合可能な被係合部とを形成してもよい。これにより、廃品の破砕時に、係合部と被係合部とが係合し、基部ハンマヘッドが先部ハンマヘッドに対し幅方向に移動が規制されるので、基部ハンマヘッドと先部ハンマヘッドとが一体となり効率よく破砕が可能となる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、回転体により回転するハンマヘッドを廃品に衝突させることで破砕する破砕機に関して、廃品の破砕を確実に行うととともに、ハンマヘッドの交換コストを安価とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明のハンマを備えた破砕機の一部破断正面図。
【図2】ハンマの分解斜視図。
【図3】ハンマの平面図。
【図4】図3のA−A断面図。
【図5】(a)は、基部ハンマヘッドの平面図、(b)は、基部ハンマヘッドの右側面図。
【図6】(a)は、先部ハンマヘッドの平面図、(b)は、先部ハンマヘッドの右側面図。
【図7】ハンマヘッドの摩耗状態を示す平面図。
【図8】(a)は、他の実施形態における基部ハンマヘッドの平面図、(b)は、他の実施形態における基部ハンマヘッドの右側面図。
【図9】(a)は、他の実施形態における先部ハンマヘッドの平面図、(b)は、他の実施形態における先部ハンマヘッドの右側面図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の実施の形態を、添付図面に例示した本発明の実施形態に基づいて以下に具体的に説明する。
【0011】
図1は、本発明のハンマを備えた破砕機の一部破断側面図である。なお、図1の紙面上側を上側、図1の紙面下側を下側と定義する。
図1に示すように、破砕機Hは、破砕容器1内に複数のハンマ3を備えた破砕装置2を備えている。破砕容器1は、漏斗状の上部破砕容器11と、円筒形状の下部破砕容器12とにより構成されている。上部破砕容器11の一側上面に投入口13が、またその他側上面には取出口14が形成され、この取出口14を跳上扉15により閉鎖している。この取出口14の上部には、廃品中に混ざり込んだスプレー缶等が、ハンマ3による破砕で爆発した際に生じる爆風を破砕機H外に逃がすための防爆装置16が設けられる。さらに、下部破砕容器12の一側面には排出口17が設けられている。
【0012】
破砕容器1の中央部には、高さ方向に延びる駆動軸21が軸受22を介して回転自在に支持されている。この駆動軸21は、破砕容器1の中央上部に搭載される原動機23に継手24を介して連結されている。駆動軸21には、高さ方向に複数の回転体25がキーにより連結されている。複数の回転体25の周縁部には、高さ方向に延びる支持軸26が回転体25の周方向に等間隔に離れて取り付けられている。この支持軸26には後述するハンマ3の一端が連結されている。なお、破砕装置Cは、駆動軸21、軸受22、原動機23、継手24、回転体25、支持軸26、ハンマ3により構成されている。
【0013】
次に、ハンマ3について説明する。図2は、ハンマの分解斜視図である。図3は、ハンマの平面図である。図4は、図3のA−A断面図である。図5(a)は、基部ハンマヘッドの平面図、図5(b)は、基部ハンマヘッドの右側面図である。図6(a)は、先部ハンマヘッドの平面図、図6(b)は、先部ハンマヘッドの右側面図である。
なお、図2〜4に示すように、後述するハンマアーム31の支持孔312が形成される基端部側を後側、後述するハンマアーム31の先端部側(自由端側)を前側と定義する。
【0014】
図2、3に示すように、ハンマ3は、基端部が支持軸26に回動可能に軸支されるハンマアーム31と、ハンマアーム31の先端部側(自由端側)に取り付けられる本発明のハンマヘッド9と、ハンマヘッド9とハンマアーム31とを連結する連結ピン93とにより構成される。
【0015】
前記ハンマアーム31は、図2に示すように、その主体部分が断面矩形の板部材311により形成されている。ハンマアーム31の基端部には支持軸26に差し込まれる支持孔312を有するボス部313が形成されるとともに、その先端部には、ハンマアーム31の上下面を貫通するアーム孔314が形成されている。図4に示すように、アーム孔314は、ハンマアーム31上面より下面に向けて形成され、上下方向に軸線を持つ円形の上部アーム孔314aと、ハンマアーム31下面より上面に向けて形成され、上部アーム孔314aの軸心よりハンマアーム31の先端部側に若干偏心した軸線を持つ円形の下部アーム孔314bとにより形成される。そして、前記上部アーム孔314aと、下部アーム孔314bとにより、アーム孔314の後側下縁に段部315が形成される。この段部315は、後述する連結ピン93と係合して、この連結ピン93の組付時の位置決めと、その脱落を防止する。また、前記ボス部313には、先端部側に向けて延びる厚肉部316が形成されている。
【0016】
前記ハンマヘッド9は、図2、3に示すように、基部ハンマヘッド91と先部ハンマヘッド92とにより構成されている。以下、基部ハンマヘッド91及び先部ハンマヘッド92について詳細に説明する。
【0017】
基部ハンマヘッド91は、図2〜5に示すように、平面矩形の部材の前端中央部の上下面に、平面視において円弧形状となる凹部911(本発明の被係合部に相当)を設けた形状となっている。この凹部911を含む基部ハンマヘッド91の前面は、後述する先部ハンマヘッド92と当接可能な当接面912となり、特に、凹部911は後述する先部ハンマヘッド92の凸部921(本発明の係合部に相当)と係合可能としている。基部ハンマヘッド91の後面は、ボス部313の厚肉部316と当接可能な当接面913となる。基部ハンマヘッド91の前後方向には、角孔よりなる貫通孔914が形成されている。
【0018】
先部ハンマヘッド92は、図2〜4、6に示すように、平面略台形の部材の前端を円弧状にするとともに、後端中央部に、平面視円弧形状に突出させた凸部921(本発明の係合部に相当)を設けた形状となっている。この凸部921を含む先部ハンマヘッド92の後面は、基部ハンマヘッド91の当接面912と当接可能な当接面922となる。先部ハンマヘッド92の前後方向には、角孔よりなる貫通孔923が形成されている。先部ハンマヘッド92の上面及び下面の中央部には、それぞれ上下方向に同一の軸線を持つ上部ヘッド孔924、下部ヘッド孔925が形成されている。先部ハンマヘッド92の外縁には、廃品を破砕するためのエッジ部926が形成されている(図3、6参照)。
【0019】
連結ピン93は、図2、4に示すように、ハンマアーム31のアーム孔314及び先部ハンマヘッド92の上部ヘッド孔924、下部ヘッド孔925に差し込まれることにより、ハンマアーム31に先部ハンマヘッド92を連結するものである。
図4に詳細に示すように、連結ピン93は、上部ヘッド孔924に挿し込まれる上部ピン93a、上部アーム孔314aに挿し込まれる中間部ピン93b、下部アーム孔314b及び下部ヘッド孔925に挿し込まれる下部ピン93cを上下方向に縦列して一体形成されている。前記中間部ピン93bは、上部アーム孔314aに挿込可能な真円であり、上部ピン93a及び下部ピン93cは、前側が中間部ピン93bと同一の円弧面で形成され、後側が中間部ピン93bの円弧面を前側に移動させた円弧面に形成されて全体が切欠円状をなしている。このため、中間部ピン93bの後面には、三日月状の段差部93dが形成されている。
【0020】
次に、基部ハンマヘッド91及び先部ハンマヘッド92の取付について説明する。図2に示すように、まず、ハンマアーム31の支持孔312に支持軸26を通し、ハンマアーム31の基端部を支持軸26に取り付ける。そして、ハンマアーム31の先端側から、基部ハンマヘッド91の貫通孔914に板部材311を差し込んだ後、続けて先部ハンマヘッド92の貫通孔923に板部材311を、先部ハンマヘッド92の上部ヘッド孔924とハンマアーム31の上部アーム孔314aが一致するまで差し込む。その後、先部ハンマヘッド92の上部ヘッド孔924、下部ヘッド孔925とハンマアーム31のアーム孔314とを通るように連結ピン93を通し、ハンマアーム31と先部ハンマヘッド92とを連結する。このとき、アーム孔314の後側下縁に形成された段部315に、中間部ピン93bの段差部93d下面が係合するまで差し込むことにより、連結ピン93の上下方向の位置決めがなされると共に、連結ピン93が下方に脱落するのを防止できる。
【0021】
この状態で、原動機23の駆動により駆動軸21を回転させると、複数の回転体25も回転し、回転体25に連結された支持軸26を介してハンマ3が駆動軸21を中心に回転する。このとき、基部ハンマヘッド91はハンマアーム31の板部材311に差し込まれているのみのため、基部ハンマヘッド91の遠心力によりハンマアーム31の先端部側へ移動し、被係合部911は係合部921に、当接面912は当接面922に当接する。これにより、基部ハンマヘッド91は先部ハンマヘッド92に対して平面視で左右方向(ハンマアーム31の幅方向)に移動が規制され、基部ハンマヘッド91と先部ハンマヘッド92とが一体となる。
したがって、破砕時には、基部ハンマヘッド91(約12kg)と先部ハンマヘッド92(約18kg)とが一体となるので、ハンマヘッド9全体の重量は従来のハンマヘッド(約30kg)と略同じとなるため、従来と変わらず廃品の破砕が可能である。
【0022】
また、基部ハンマヘッド91は、ハンマアーム31に差し込むのみであるため、基部ハンマヘッド91の取り付けが容易である。さらに、基部ハンマヘッド91は、ハンマアーム31に連結ピン93で連結された先部ハンマヘッド92と、ハンマアーム31の厚肉部316により、ハンマアーム31の長手方向の移動を規制されているので、廃品の破砕中に基部ハンマヘッド91が脱落することがない。
【0023】
また、駆動軸21により先部ハンマヘッド92が回転すると、先部ハンマヘッド92は、自身の遠心力により上部ヘッド孔924及び下部ヘッド孔925が連結ピン93の上部ピン93a及び下部ピン93cの後面に接するまで移動する。これにより、図4に示すように、中間部ピン93bの段差部93d上面が先部ハンマヘッド92の内面(貫通孔923)に押えられるので、連結ピン93の脱落が防止される。
【0024】
次に、廃品の破砕によるハンマの摩耗と、摩耗したハンマの交換作業について説明する。図7は、ハンマヘッドの摩耗状態を示す平面図である。
【0025】
前述のように、支持軸26にハンマアーム31を介して取り付けた基部ハンマヘッド91及び先部ハンマヘッド92は、駆動軸21の回転により駆動軸21回りに回転する。そして、破砕容器1の投入口13よりから投入された廃品は、先部ハンマヘッド92のエッジ部926により打撃され、細かく破砕される。
【0026】
このように先部ハンマヘッド92のエッジ部926での打撃による廃品の破砕を繰り返すと、図7に示すように、先部ハンマヘッド92の前側が摩耗する。この摩耗により、先部ハンマヘッド92のエッジ部926が削れ、緩やかな曲面となる。このように先部ハンマヘッド92が摩耗すると、廃品を打撃しようとしても、削れたエッジ部926により廃品が逃げ、破砕されなくなる。そのため、ハンマヘッドの交換が必要となる。
【0027】
次に、ハンマヘッド9の交換作業を説明する。先部ハンマヘッド92が摩耗しているので、連結ピン93を抜き、ハンマアーム31の板部材311より摩耗した先部ハンマヘッド92を外す。そして、新品の先部ハンマヘッド92を前述のように連結ピン93を用いてハンマアーム31に連結する。このとき、基部ハンマヘッド91は摩耗していないので、交換する必要が無い。そのため、従来のように、単一の部材で形成されたハンマヘッド(約30kg)に比べて、本発明のハンマヘッドは、先部ハンマヘッド92(18kg)を交換するのみであるため、交換する部材の重量が小さく、ハンマヘッドの交換コストが安くなる。
【0028】
以上、本発明の実施例について説明したが、本発明はその実施例に限定されることなく、本発明の範囲内で種々の実施例が可能である。
【0029】
例えば、図8、図9に示すように、基部ハンマヘッド91の凹部911及び、先部ハンマヘッド92の凸部921の形状を角型としてもよい。図8(a)は、他の実施形態の基部ハンマヘッドの平面図、図8(b)は、右側面図である。図9(a)は、他の実施形態の先部ハンマヘッドの平面図、図9(b)は、右側面図である。この場合においても、上記実施例と同様に、ハンマヘッド9が駆動軸21を中心に回動した際に、基部ハンマヘッド91が前側へ移動することで、凹部911と凸部と921とが係合する。そのため、先部ハンマヘッド92に対する基部ハンマヘッド91のハンマアーム31幅方向への移動が規制され、基部ハンマヘッド91と先部ハンマヘッド92とが一体となる。
【0030】
また、本発明の実施形態において、基部ハンマヘッド91の凹部911及び、先部ハンマヘッド92の凸部921を無くしてもよい。この場合においても、廃品の破砕により先部ハンマヘッド92が摩耗した際は、先部ハンマヘッド92のみ交換すればよく、従来のように、単一の部材で形成されたハンマヘッドの交換に比べて、交換コストが安くなる。
【0031】
また、本発明の実施形態においては、ハンマヘッド9を基部ハンマヘッド91と、先部ハンマヘッド92との2つの部材で構成したが、ハンマヘッド9を三つ以上の部材で構成してもよい。
【0032】
また、本発明の実施形態においては、中間部ピン93bに段差部93dを形成した連結ピン93としたが、段差部93dの無い、円筒形状の連結ピンとしてもよい。
【符号の説明】
【0033】
H 破砕機
21 駆動軸
31 ハンマアーム
9 ハンマヘッド
91 基部ハンマヘッド
92 先部ハンマヘッド
93 連結ピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転体に連結されるハンマアームと、
このハンマアームの中間部に抜差可能に差し込まれる基部ハンマヘッドと、
前記ハンマアームの自由端側に連結ピンにより連結される先部ハンマヘッドとを有することを特徴とする破砕機のハンマ。
【請求項2】
先部ハンマヘッド、基部ハンマヘッドのいずれか一方に係合部を、他方に係合部と係合可能な被係合部とを形成することを特徴とする請求項1に記載の破砕機のハンマ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−75969(P2012−75969A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−220465(P2010−220465)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000163095)極東開発工業株式会社 (215)
【Fターム(参考)】