説明

破風化粧板

【課題】少ない作業工数で破風化粧板を取り付けることができ、換気用の通気孔を軒下から目に付き難く且つ雨水が浸入し難い位置に形成して、屋根裏空間の換気を十分に行えるようにする。
【解決手段】屋根側端部4に取付けてケラバを装飾する破風化粧板1を本体化粧板2と破風受板3の二つの部材により構成し、両板を連結して屋根側端部4の下方を覆う下部被覆部を構成するとともに、下部被覆部に上方へ凹んだ凹溝11を設け、凹溝11内の屋外側の壁面に屋根裏空間を換気するための通気孔26を複数列設し、通気孔から外気を流入させて屋根裏空間の換気を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋根の妻側端部であるケラバに取り付けてケラバを装飾する破風化粧板に係り、屋根裏空間に通ずる通気孔を備えて家屋の内部を換気できるように構成された構成のものに関する。
【背景技術】
【0002】
家屋の切妻屋根廻りの造作において、妻側端部の意匠性を高めて見栄えを良くするために、塩化ビニル樹脂シートなどで被覆された樹脂被覆鋼板を折り曲げて破風板状の化粧板を形成し、これをケラバに沿って取り付けることがある。
【0003】
従来の破風化粧板として、例えば図11に示される、本体化粧板101と、上部化粧板102と、破風受板103とにより構成された破風化粧板100が知られている。同図に示されるように、この破風化粧板100は、屋根側端部104に沿わせた本体化粧板101をビスや釘などの固着具106aで固定して屋根側端部104の側面とその下方を本体化粧板101で覆い、本体化粧板101の上端に屋根側端部104の上部を覆う上部化粧板102の下端折り返し部を係合して両板を連結し、さらに本体化粧板101の下方で破風受板103を外壁105に沿ってあてがい、その端部を本体化粧板101の下縁に固着具106bで連結し、破風受板103の他端部を家屋の外壁105に固着具106cで固定することで、妻側端部を恰も鋼製の破風板がケラバに沿って取り付けられた如き外観に納めるものである(例えば特許文献1参照)。
また、図12に示されるように、本体化粧板101と、上部化粧板102と、破風受板103とからなる破風化粧板100であって、屋根側端部104の下側を覆う本体化粧板101の部分に通気孔101aを形成し、この通気孔101aから外気を流入させて屋根裏空間の換気を行えるようにした構成のものも知られている(例えば特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−155811号公報
【特許文献2】実開平5−42498号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の破風化粧板100のように、本体化粧板101と上部化粧板102と破風受板104との三つの部材により構成されていれば、各部材は成形加工が容易であり、また、ケラバに取り付ける際に各部材間の取り付け位置を微調整して取り付け誤差を吸収することで外観を奇麗に納めることが可能であるものの、三つの部材を固定する必要があるため、取り付けに要する作業工数が多くなり、作業時間も長くならざるを得なかった。また、本体化粧板101の上端と上部化粧板102の下端折り返し部の連結が不十分であると、強風を受けたときに連結が外れて上部化粧板102が下端部側から捲れ上がってしまう虞がある。
また、前記図12に示されるように、通気孔101aを本体化粧板101の、屋根側端部104の下部に対向する位置に設けたのでは、軒下から屋根を見上げたときに通気孔101aが目に付き、さらに、降雨時に本体化粧板101の下面を棟側から軒先へと伝い落ちる雨水が通気孔101aから本体化粧板101の内側に入り込み、換気機能を低下させるという問題がある。
【0006】
本発明は従来技術の有するこのような問題点に鑑み、より少ない作業工数で破風化粧板をケラバに沿って確実且つ奇麗に取り付けて屋根の端部を見栄え良く装飾し、換気用の通気孔を軒下から目に付き難く且つ雨水が浸入し難い位置に形成して、屋根裏空間の換気を十分に行えるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため本発明は、屋根側端部に取付けてケラバを装飾する破風化粧板において、屋根側端部の上方を覆う上部被覆部と側方を覆う側部被覆部を有する本体化粧板の下端に屋根側端部の下方を覆う下部被覆部を設け、この下部被覆部に上方へ凹んだ凹溝を設けるとともに、当該凹溝内の屋外側の壁面に屋根裏空間を換気するための通気孔を複数列設した構成を有することを特徴とする。
【0008】
前記構成の破風化粧板によれば、屋根側端部の下方を覆う下部被覆部に上方へ運んだ凹溝を設け、この凹溝の壁面に通気孔を複数形成してあるので、通気孔から外気を家屋の内部に取り入れて屋根裏空間へと流入させることで、屋根裏空間の換気を十分に行うことができる。通気孔は、凹溝内の屋外側の壁面に形成してあるので、降雨時に通気孔から化粧板内部に雨水が浸入し難く、また、屋根側端部を下から見上げても通気孔が目に触れることもなく、破風化粧板によりケラバを見栄え良く納めることができる。
【0009】
前記構成において、破風化粧板を本体化粧板と破風受板により構成し、通気孔を有する凹溝が設けられた前記下部被覆部が、本体化粧板の側部被覆部の下端部に設けた、当該下端部から上方へ折り返され且つ先端を家屋側へ屈曲させてなる折り返し面部に、一端部を軒天井に取り付けてなる破風受板の他端部を接続して構成されていることが好ましい。
破風化粧板を本体化粧板と破風受板の二つの部材により構成することにより、破風化粧板の取り付けに要する作業工数が減り、部材の加工性と取り付け作業性の向上を図ることができる。
この場合、前記通気孔付きの凹溝は本体化粧板と破風化粧板の何れかの側に設けることができるが、凹溝を挟んでその屋外側の壁面に本体化粧板の折り返し面部の側壁、家屋側の壁面に破風受板の側壁が対向配置されるように構成すれば、本体化粧板と破風受板の接続部位が凹溝内に位置して、屋根側端部を下から見上げても接続部位が目に付かず、前記通気孔が目に触れにくいことと相俟って屋根側端部の造作がスッキリとしたより見栄えの良いものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態の破風化粧板を取り付けた屋根側端部の下側を、一部を破断して示した外観図である。
【図2】図1における屋根側端部の要部断面図である。
【図3】図1の破風化粧板の構成を示す展開斜視図である。
【図4】(A)は本体化粧板の通気孔が形成された部分の外観図、(B)はB−B線断面図である。
【図5】図1の破風化粧板を構成する本体化粧板と破風受板の断面図と、両板を連結した破風化粧板の断面図である。
【図6】他の形態の破風化粧板を構成する本体化粧板と破風受板の断面図と、両板を連結して状態の破風化粧板の断面図である。
【図7】本発明の他の実施形態の破風化粧板を取り付けた片棟屋根の側端部の要部断面図である。
【図8】図7の破風化粧板の構成を示す展開斜視図である。
【図9】図7の破風化粧板を構成する本体化粧板と破風受板の断面図と、両板を連結した破風化粧板の断面図である。
【図10】本発明の破風化粧板の内部に熱発泡材を設置した形態を示す屋根側端部の要部断面図である。
【図11】従来の破風化粧板を取り付けた屋根側端部の要部断面図である。
【図12】通気孔を備えた従来の破風化粧板を取り付けた屋根側端部の要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の好適な実施形態を図面を参照して説明する。
図1は本発明の一実施形態の破風化粧板を取り付けた屋根側端部下方の外観図、図2は破風化粧板を屋根側端部に取り付けた状態を示す断面図、図3は破風化粧板の展開斜視図、図4は通気孔の形状を示す外観図と断面図である。
【0012】
図示した形態の破風化粧板1は、屋根側端部4の上方、側方及び下方の一部を覆う本体化粧板2と、本体化粧板2とともに屋根側端部4の下方を覆う破風受板3との二つの部材により構成されるものである。
本体化粧板2と破風受板3は、表面を塩化ビニル樹脂シートで覆うなどの耐蝕加工が施された樹脂被覆鋼板をベンダー等で折り曲げて形成される。各部材を構成する鋼板としては、例えば厚みが0.4mmの鋼板の表面を0.25mm厚の塩化ビニル樹脂シートで被覆し、裏面を0.1mm厚の塩化ビニル樹脂シートで被覆した樹脂被覆鋼板が好適である。
【0013】
本体化粧板2は、図3に示されるように、屋根側端部4の上方を覆う上部被覆部21と側方を覆う側部被覆部22とを備えて形成され、屋根側端部4を覆うように本体化粧板2を設置した状態で、側部被覆部22の面内に形成された断面コ字状の凹部22aにビスや釘などの固着具Nを打ち込むことにより、屋根側端部4の側面に固定されるようになっている。
より詳しくは、前記側部被覆部22の下端部には、家屋側に向かって略直角に折り曲げられた下面部23が設けられているとともに、当該下面部23の先端に上方へ折り返され且つ先端を家屋側へ屈曲させてなる折り返し面部24を連ね、さらに折り返し面部24の先端に下方へ折り曲げた係止片25を設けて形成してある。また、折り返し面部24の屋外側の側壁24aには、図4に示されるように、パンチング加工により形成されたスリット状の通気孔26を複数列設してある。
【0014】
また、破風受板3は、図3に示されるように、屋根側端部4の下方の一部を覆う幅を有する下面部31の前端に、上方へ略直角に折れ曲がっていて上部に水平折れ面部33を連ねてなる側壁32、後端に家屋側に向かって開口していて後述する軒天井6の端部が係入する係止凹部34をそれぞれ一体に設けて形成してある。
【0015】
これら本体化粧板2と破風受板3からなる破風化粧板1は、図2及び図5に示されるように、本体化粧板2の折り返し面部24の上面に、破風受板3の水平折れ面部33を重ね合わせた状態で、折り返し面部24の上面に設けた孔部24bと水平折れ面部33に設けた孔部33aにブラインドリベットなどの固着具Nを嵌入して両面部を一体に固着することにより構成される。
一体に連結した本体化粧板2と破風受板3は、屋根側端部4の下方を覆う下部被覆部を構成し、また、両板の連結部であって互いに重合した前記折り返し面部24の上面と水平折れ面部33の下側には、折り返し面部24の側壁24aと破風受板3の側壁32が対向配置されてなる、上方へ凹んだ凹溝11が形成され、この凹溝11の屋外側の壁面に屋根裏空間を換気するための通気孔26が列設配置される。
【0016】
このように構成される破風化粧板1の取り付けは、図2に示されるように、屋根側端部4に破風化粧板1をあてがい、屋根の側端部上面に取り付けられた水切り板5に上部被覆部21の端部を係合させて取り付け位置を位置決めした状態で、側部被覆部22に設けられた凹部22a内に固着具Nを打ち込むとともに、前記上部被覆部21と水切り板5の係合部位に固着具Nを打ち込んで本体化粧板2を屋根側端部4に固定し、次いで、破風受板3の端部を屋根側端部4の下面に固着具Nで固定し、破風受板3の係止凹部34に軒天井6の端部を係合させて支持することにより行うことができる。施工現場に本体化粧板2と破風受板3を分離して持ち込み、屋根側端部4に本体化粧板2を取り付けた後、本体化粧板2の下端部に破風受板3を連結するようにしてもよい。
また、図6に示されるように、本体化粧板2の折り返し面部24の端部に上方へ鍵状に折れた折れ部24cを設ける一方、破風受板3の水平折れ面部33の端部に下方へ鍵状に折れた折れ部33aを設け、両折れ部24c、33aを互いに係合させることにより、固着具Nを用いずに本体化粧板2と破風受板3を連結してもよい。
【0017】
図7〜図9は本発明の他の実施形態の破風化粧板を示しており、この破風化粧板1は、片棟屋根の側端部4に取り付けて片棟屋根の端部を装飾するものである。
【0018】
破風化粧板1は、前記形態と同様に形成された、本体化粧板2と破風受板3との二つの部材により構成されている。
すなわち、本体化粧板2は、図8に示されるように、屋根側端部4の上方を覆う上部被覆部21と側方を覆う側部被覆部22を備え、側部被覆部22の下端部には、家屋側に向かい斜め下方に折り曲げられた下面部23が設けられ、当該下面部23の先端に上方へ略直角に折り返され且つ先端を前記下面部23と平行に屈曲させてなる折り返し面部24を連ね、さらに折り返し面部24の先端に下方へ折り曲げた係止片25を設けて形成してある。折り返し面部24の屋外側の側壁24aには、パンチング加工により形成されたスリット状の通気孔26を複数列設してある。また、破風受板3は、屋根側端部4の下方の一部を覆う幅を有する下面部31の前端に、上方へ略直角に折れ曲がっていて上部に水平折れ面部33を連ねてなる側壁32、後端に家屋側に向かって開口していて軒天井6の端部が係入する係止凹部34をそれぞれ一体に設けて形成してある。
【0019】
破風化粧板1は、図8及び図9に示されるように、本体化粧板2の折り返し面部24の上面に、破風受板3の水平折れ面部33を重ね合わせた状態で、折り返し面部24の上面に設けた孔部24bと水平折れ面部33に設けた孔部33aにブラインドリベットなどの固着具Nを嵌入して両面部を一体に固着することにより構成される。一体に連結した本体化粧板2と破風受板3は、屋根側端部4の下方を覆う下部被覆部を構成し、また、両板の連結部に上方へ凹んだ凹溝11が形成され、この凹溝11の屋外側の壁面に屋根裏空間を換気するための通気孔26が列設配置される。
【0020】
また、破風化粧板1の取り付けは、前記形態と同様に、屋根側端部4にあてがった破風化粧板1の上部被覆部21の端部を水切り板5に係合させて取り付け位置を位置決めした状態で、側部被覆部22に設けられた凹部22aに固着具Nを打ち込むとともに、前記上部被覆部21と水切り板5の係合部位に固着具Nを打ち込んで本体化粧板2を屋根側端部5に固定し、次いで、破風受板3の端部を屋根側端部5の下面に固着具Nで固定し、破風受板3の係止凹部34に軒天井6の端部を係合させて支持することにより行うことができる。
【0021】
なお、図2と図7に示した屋根側端部4への破風化粧板1の取り付け態様において、家屋に火災が発生した際に、破風化粧板1に設けられた通気孔26から屋内に火炎が浸入して延焼することを防ぐため、破風化粧板21の内側に加熱発泡材を設置することが好ましい。
すなわち、図10に示されるように、破風化粧板1ととともに仕切板7を破風化粧板1の内側に取り付け、通気孔26に面するように配置された前記仕切板7の下端部7aに加熱発泡材8が設置してあれば、火災時に通気孔26から破風化粧板1内に火炎や熱風が浸入したときに加熱発泡材8が膨張して、通気孔26から屋根裏空間に至る通気経路を遮断し、屋根裏空間に火炎などが廻り込んで家屋が延焼することを防止することが可能となる。
【0022】
本発明の破風化粧板1によれば、屋根側端部4の下方を覆う下部被覆部に上方へ運んだ凹溝11を設け、この凹溝11の壁面に通気孔26を形成してあるので、通気孔26から外気を取り入れて屋根裏空間へと流入させることで、屋根裏空間の換気を十分に行うことができる。通気孔26は、凹溝11内の屋外側の壁面に形成してあるので、降雨時に通気孔26から化粧板内部に雨水が浸入し難く、また、屋根側端部4を下から見上げても通気孔26が目に触れることもなく、破風化粧板1によりケラバを見栄え良く納めることができる。
また、破風化粧板1を本体化粧板2と破風受板3の二つの部材により構成することにより、破風化粧板1の取り付けに要する作業工数が減り、部材の加工性と取り付け作業性の向上を図ることができる。この場合、凹溝11を挟んで本体化粧板2と破風受板3を連結すれば、両板の接続部位が凹溝11内に位置して目に付かず、前記通気孔26が目に触れにくいことと相俟って屋根側端部4の造作がスッキリとしたより見栄えの良いものとなる。
【0023】
なお、図示した破風化粧板1は本発明の実施形態の一例を示すものであり、本発明はこれらに限定されず、取り付ける屋根側端部の形状や寸法などに応じて、他の適宜な形態で構成することが可能である。
【符号の説明】
【0024】
1 破風化粧板、11 凹溝、2 本体化粧板、21 上部被覆部、22 側部被覆部、23 下面部、24 折り返し面部、24a 側壁、25 係合片、26 通気孔、3 破風受板、31 下面部、32 側壁、33 水平折れ面部、4 屋根側端部、5 水切り板、6 軒天井、7 仕切板、8 加熱発泡材、N 固着具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋根側端部に取付けてケラバを装飾する破風化粧板において、
屋根側端部の上方を覆う上部被覆部と側方を覆う側部被覆部を有する本体化粧板の下端に屋根側端部の下方を覆う下部被覆部を設け、この下部被覆部に上方へ凹んだ凹溝を設けるとともに、当該凹溝内の屋外側の壁面に屋根裏空間を換気するための通気孔を複数列設した構成を有することを特徴とする破風化粧板。
【請求項2】
破風化粧板を本体化粧板と破風受板により構成し、通気孔を有する凹溝が設けられた前記下部被覆部が、本体化粧板の側部被覆部の下端部に設けた、当該下端部から上方へ折り返され且つ先端を家屋側へ屈曲させてなる折り返し面部に、一端部を軒天井に取り付けてなる破風受板の他端部を接続して構成されていることを特徴とする請求項1に記載の破風化粧板。
【請求項3】
凹溝を挟んでその屋外側の壁面に本体化粧板の折り返し面部の側壁、家屋側の壁面に破風受板の側壁が対向配置された構成を有することを特徴とする請求項2に記載の破風化粧板。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−83057(P2013−83057A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−222527(P2011−222527)
【出願日】平成23年10月7日(2011.10.7)
【出願人】(000006172)三菱樹脂株式会社 (1,977)