説明

破風用化粧板材

【課題】施工作業中における衝撃に強く、破壊し難い簡素な構成の破風用化粧板材を提供する。
【解決手段】
建物の屋根12の妻側に取り付けられる化粧板材10であって、化粧板材10が屋根の平側に取り付けられる鼻隠し材37よりも屋外側に突き出して伸び、例えば、接続具40を介して、化粧板材10が屋根12の平側の鼻隠し用取付け下地材38と接続される破風用化粧板材10を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の屋根の妻側に取り付けられる破風用化粧板材に関し、特に、この屋根の平側に取り付けられる鼻隠し材よりも屋外側に突き出して伸びた破風用化粧板材の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
住宅等の建物の屋根の妻側の外壁部分である破風には、外観デザインを向上させるため、破風用化粧板材が用いられる場合がある。このような破風用化粧板材の中には、屋根の先端よりも屋外側に突出するように配置して、化粧板材の先端部分によって、雨樋の端部を隠し、妻側から見えないようにすることにより、妻面の意匠的効果を上げるようにした構造が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、屋根の妻側の破風部分に露出した下地木材に対して、破風用化粧板材を釘等の固着具で打ちつけた構造が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
【特許文献1】特開平9−60225号公報
【特許文献2】特開2000−160786号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に記載されたような破風用化粧板材では、破風の突き出し長さを長くすることにより、化粧板材が片持ち状態となって、釘等により固定される位置から先端側は自由端となり、ぐらつき易くなる。特に、近年、セメント系押出成形材からなる化粧板材が多く市場に供給されており、このような化粧板材では、合成樹脂系板材に比べ、やや耐衝撃性が劣るという問題を有する。
【0006】
このような破風用化粧板材を屋根の破風部分に取り付けた後、近傍の鼻隠し用化粧板材や雨樋等の施工をする場合に、作業員のヘルメットや取り付けようとした化粧板材、雨樋等が、破風用化粧板材の先端の裏面(軒樋の端部に対向する側面)にぶつかることがあり、この衝撃により化粧板材に亀裂が入る恐れがある。
【0007】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、施工作業中における衝撃に強く、破壊し難い簡素な構成の破風用化粧板材を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明に係る破風用化粧板材の1つの実施態様は、建物の屋根の妻側に取り付けられる化粧板材であって、前記化粧板材が前記屋根の平側に取り付けられる鼻隠し材よりも屋外側に突き出して伸び、前記化粧板材が前記屋根の平側の部分と接続されることを特徴とする。
【0009】
ここで、「化粧板材が屋根の平側に取り付けられる鼻隠し材よりも屋外側に突き出して伸び」とは、化粧板材の先端部が、屋根の平側の外壁部分である鼻隠しよりも、勾配屋根の延長線方向に伸びていることを意味し、これにより、例えば、平側の軒下に取り付けられた雨樋の端部等を、妻側から見えないようにすることができる。
また、化粧板材と接続する屋根の平側の部分には、屋根の平側の外壁部分である鼻隠し部分が含まれる。この鼻隠し部分に化粧板材が取り付けられている場合には、この鼻隠し材(鼻隠し用化粧板材)と破風用化粧板材とを接続することも考えられるし、鼻隠し構成部材、すなわち鼻隠し材(鼻隠し用化粧板材)を取り付ける下地材と破風用化粧板材とを接続することも考えられるし、その他、建物の屋根の平側の任意の部分と破風用化粧板材とを接続することが考えられる。なお、固定の確実性及び容易性を鑑みれば、鼻隠し構成部材と接続するのが好ましく、特に、鼻隠し取付用木質下地材と接続するのが好ましい。また、両者を固定する方法としては、ネジ(ビス)止め、溶接、接着を始めとする任意の接合手段を用いることができる。その一例として、ブラケットとビス等の締結部材とを用いて接続することが考えられ、ブラケットは、後述するように、予め化粧板材に取り付けておくこともできるし、別部材とすることもできる。
【0010】
本実施態様によれば、化粧板材を屋根の破風部分だけで固定する場合に比べて、化粧板材の先端により近い部分で固定できるので、この固定部分から化粧板材の先端までの距離をより短くすることができる。よって、仮に、化粧板材の先端部分に何らかの力が加わったとしても、その力による曲げ応力を小さくすることができるので、化粧板材の損傷を抑制することができる。
【0011】
本発明に係る破風用化粧板材のその他の実施態様は、上記において、前記化粧板材の裏面側に、前記屋根の平側の部分に接続可能な接続具が設けられることを特徴とする。
【0012】
本実施態様によれば、破風用化粧板材の裏面側に設けられた接続具を屋根の平側の部分に接続することにより、化粧板材を、容易に屋根の平側の部分に固定することができる。
【0013】
本発明に係る破風用化粧板材のその他の実施態様は、上記において、前記接続具が、前記化粧板材の裏面に設けられた補強金物を含み、前記補強金物の先端部が前記化粧板材の裏面から離れる方向に折り曲げ可能に構成されることを特徴とする。
【0014】
本実施態様によれば、破風用化粧板材の裏面に設けられた補強金物の先端部を施工現場において折り曲げることにより、破風用化粧板材の裏面と略直交するように位置する屋根の末端の面とを接続可能な状態とすることができる。また、補強金物の折り曲げ角度は、屋根末端の配置に適合するように現場合わせにて調整することができる。
【0015】
本発明に係る破風用化粧板材のその他の実施態様は、上記において、前記補強金物の基部が、前記破風用化粧板材に内挿して設けられることを特徴とする。
【0016】
本実施態様によれば、補強金物の基部が破風用化粧板材に内挿して設けられるので、補強金物の基部は破風用化粧板材に対して強固に連結される。また、破風用化粧板材の裏面に補強金物を固定するための部材を、別途設けることを要しない。
【0017】
本発明に係る破風用化粧板材のその他の実施態様は、上記において、前記屋根の平側の部分が、鼻隠し材または鼻隠し構成部材であることを特徴とする。
【0018】
本実施態様によれば、妻側だけでなく平側においても、意匠性に優れた外観を得ることができ、鼻隠し材または鼻隠し構成部材を用いれば、破風用化粧板材と確実、容易に接続することができる。
【0019】
本発明に係る破風用化粧板材のその他の実施態様は、上記において、前記補強金物の先端部に、前記屋根の平側の部分と接続するために用いるビス孔が設けられることを特徴とする。
【0020】
本実施態様によれば、補強金物の先端部を折り曲げて屋根の末端に合わせ、ビス孔にビスを打ち込むことにより、補強金物と屋根の末端とを容易に接続することが可能となる。
【0021】
本発明に係る破風用化粧板材のその他の実施態様は、上記において、前記化粧板材により、妻側から見て雨樋の端面が隠れることを特徴とする。
【0022】
本実施態様によれば、化粧板材によって、雨樋の端部が見えないようにすることができるので、妻面の意匠的効果を上げることができる。
【発明の効果】
【0023】
以上のように、本発明によれば、屋根末端に取り付けられた破風用化粧板材に対して施工作業中に加えられる衝撃に対する構造強度を強くするとともに、近傍箇所の施工中に破風用化粧板材が誤って損傷を受けることを低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明に係る破風用化粧板材の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、本発明に係る破風用化粧板材が建物の屋根の末端に取り付けられた一実施形態を示す概略正面図である。図2は、図1のA−A線に沿った概略底面図である。図3は、図1のB−B線に沿った概略断面図である。
【0025】
本発明に係る破風用化粧板材10は、平板状のセメント系押出成形材であり、図1に示すように、建物の屋根12の平側の外壁部分である鼻隠し部材(鼻隠し用化粧板)37よりも屋外16側に突き出して伸び、この屋外16側に突出する先端部18によって、雨樋20の端面を妻面から隠すことができる。この破風用化粧板材10の表面22下側には、長手方向に延びた複数の凹凸によるストライプ模様の化粧部24が形成されている。また、屋根12の上端と化粧部24の上側とをケラバ包み板25が覆っている。このように破風用化粧板材10を設けることにより、妻面の意匠的効果を上げるようになっている。破風用化粧板材10の寸法としては、例えば、長手方向の長さ3m、上下方向の高さ20cm、厚さ3cm程度を例示することができるが、これに限られるものではない。
【0026】
破風用化粧板材10は、図2および図3に示すように、その表面22側が屋外16側に向けられ、裏面26側が建物躯体28側に向けられて配置され、固定具、例えば保持金具30を介してビス32により、建物躯体28の妻側に固定される。
【0027】
破風用化粧板材10の裏面26には、屋根12の平側の固定面となる鼻隠し用構成部材38との接続具として、補強金物40が設けられる。補強金物40はステンレス製の略矩形状の薄平板であり、その基部42は、破風用化粧板材10の裏面26に、先端側から長手方向中間部まで延びるように貼付けられた裏面側化粧板44との間で形成される段差46内に挿入されて、接着剤により固定される。なお、化粧板材10を屋根12の平側の部分と接続するのは、保持金具30よりも化粧板材10の先端側であり、補強金物40を用いる場合は、保持金具30よりも化粧板材先端側に位置するように固定される。
【0028】
そして、補強金物40の先端部48は、裏面26とのなす角度が略90度となるように折り曲げられており、先端部48の面に設けられた2つのビス孔54を介して、鼻隠し用構成部材である鼻隠し用取付け下地材38に対してビス50により固定される。そして、固定された先端部48の上から、鼻隠し部材(鼻隠し用化粧板)37が鼻隠し用取付け下地材38に取り付けられる。
なお、補強金物40は、折り曲げ前においては、破風用化粧板材10の裏面26に沿う平行な状態になっているが、図4に示すように、破風用化粧板材10の裏面26から引き離す方向に折り曲げ可能になっている。
【0029】
上記構成の機能、作用効果等について説明する。
例えば、雨樋20を取り付けるために、破風用化粧板材10の近傍で作業者が作業をしているとき、作業者のヘルメットや取り付けようとした雨樋20が、破風用化粧板材10の先端部18の裏面26にぶつかり、その衝撃力による曲げ応力によって、破風用化粧板材10が損傷する(例えば、折れたり、ひびが入ったりする)恐れがある。その場合であっても、補強金物40によって破風用化粧板材10の先端近傍が固定されているので、保持金具30の位置だけで固定している場合に比べて、曲げ応力を大きく減少させることができる。
【0030】
したがって、破風用化粧板材10が屋根12の鼻隠し材37よりも屋外16側に突き出して伸びたとしても、施工作業中にその先端部18に加えられる衝撃に対して、破壊や損傷の発生を低減することができる。
【0031】
また、補強金物40の先端部48は、容易に折り曲げ可能であることから、施工前は裏面26に沿う状態のままにしておき、施工中に折り曲げ加工をすることにより、鼻隠し用化粧板38との接続を迅速かつ簡便に行うことができる構造となっている。こうした簡素な構成により、施工作業中において損傷を受けにくい破風用化粧板材10を提供することができる。
【0032】
上記の実施形態において、補強金物40の先端部48の面と鼻隠し用取付け下地材38の外表面52とを接面させ、先端部48の面に設けられた2つのビス孔54に板金ビス50を打ち込むようにしてもよい。このように、補強金物40と鼻隠し用取付け下地材38とを接続することにより、破風用化粧板材10を、補強金物40を介して鼻隠し用取付け下地材38に固定することができる。なお、先端部48を折り曲げるタイミングは、破風用化粧板材10を妻側に取り付ける前であってもよいし、取り付け後やその途中であってもよい。
【0033】
上記の実施形態において、補強金物40のビス50は鼻隠し部材(鼻隠し用化粧板)37自体に対して固定するようにしてもよいし、下地鉄骨に対して固定してもよく、これらの他、屋根12の平側の領域であって、ビス止め等により破風用化粧板材10の補強金物40を固定することができるのであれば、建物躯体28の他の部分でもよい。
【0034】
上記の実施形態において、補強金物40は、破風用化粧板材10の先端部18の側に基部42を有するように設けられる場合について説明しているが、破風用化粧板材10の先端部18の側に先端部48を有するように破風用化粧板材10の裏面26に設けるようにしてもよい。このようにしても本発明と同一の作用効果を奏することができる。
【0035】
上記の実施形態において、補強金物40としては、予め略L字状に折り曲げられた金具を破風用化粧板材10の裏面26に設けるようにしてもよく、このようにしても本発明と同一の作用効果を奏することができる。
【0036】
なお、上記の実施形態においては、保持金具30は、破風用化粧板材10の裏面26に対向する屋根12の妻側躯体部分に設けられ、躯体部分から屋外16側へ水平方向に突き出て上方に屈曲した先端をなすL字断面状の部分を上下2箇所に備える。保持金具30は、例えば図5および図6のように、略矩形平板状の上側と下側とにL字状の屈曲部58を備えるようにして構成される。
【0037】
また、上記の実施形態において、破風用化粧板材10の裏面26側には、逆L字状の鍵状部60が、保持金具30の屈曲部58に対応するように上下2箇所に形成されている。破風用化粧板材10を取り付ける際には、鍵状部60を屈曲部58に載せて仮固定し、次いで保持金具30のビス孔33にビス32を打ち込むことにより破風用化粧板材10を建物躯体28に固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明に係る破風用化粧板材が建物の屋根の末端に取り付けられた一実施形態を示す概略正面図である。
【図2】図1のA−A線に沿った概略底面図である。
【図3】図1のB−B線に沿った概略断面図である。
【図4】金属板が折り曲げられる前における本発明に係る破風用化粧板材の裏面の一実施形態を示す概略平面図である。
【図5】建物躯体に設けられる保持金具を示す概略正面図である。
【図6】建物躯体に設けられる保持金具を示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0039】
10 破風用化粧板材
12 屋根
16 屋外
18 先端部
22 表面
24 化粧部
25 ケラバ包み板
26 裏面
28 建物躯体
30 保持金具
32 ビス
33 ビス孔
37 鼻隠し部材(鼻隠し用化粧板)
38 鼻隠し用取付け下地材
40 補強金物(接続具)
42 基部
48 先端部
50 ビス
52 外表面
54 ビス孔
58 屈曲部
60 鍵状部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の屋根の妻側に取り付けられる化粧板材であって、
前記化粧板材が前記屋根の平側に取り付けられる鼻隠し材よりも屋外側に突き出して伸び、
前記化粧板材が前記屋根の平側の部分と接続されることを特徴とする破風用化粧板材。
【請求項2】
前記化粧板材の裏面側に、前記屋根の平側の部分に接続可能な接続具が設けられることを特徴とする請求項1に記載の破風用化粧板材。
【請求項3】
前記接続具が、前記化粧板材の裏面に設けられた補強金物を含み、前記補強金物の先端部が前記化粧板材の裏面から離れる方向に折り曲げ可能に構成されることを特徴とする請求項2に記載の破風用化粧板材。
【請求項4】
前記補強金物の基部が、前記破風用化粧板材に内挿して設けられることを特徴とする請求項3に記載の破風用化粧板材。
【請求項5】
前記屋根の平側の部分が、鼻隠し材または鼻隠し構成部材であることを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載の破風用化粧板材。
【請求項6】
前記補強金物の先端部に、前記屋根の平側の部分と接続するために用いるビス孔が設けられることを特徴とする請求項3から5の何れか1項に記載の破風用化粧板材。
【請求項7】
前記化粧板材により、妻側から見て雨樋の端面が隠れることを特徴とする請求項1から6の何れか1項に記載の破風用化粧板材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−155817(P2009−155817A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−332111(P2007−332111)
【出願日】平成19年12月25日(2007.12.25)
【出願人】(000001096)倉敷紡績株式会社 (296)