説明

硫化物及びセレン化物粉体の合成方法

【課題】太陽電池の製造に適切な特性を有し、化学組成に所望の不定比性を有するカルコパイライト型の結晶構造を持ったセレン化物粉体またはp型伝導性を有する硫化物粉体を、低コストで合成する方法を提供する。
【解決手段】所望粉体の元素組成に対応した組成を有する原料をグリコール溶媒中でその沸点近傍まで加熱して還流を行うことで上記合成を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カルコパイライト型の結晶構造を有するセレン化物粉体及びp型伝導性を有する硫化物粉体に関し、特に、太陽光発電材料やその原料として供されるために必要な所望の非化学量論組成をもつ粉体の合成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽光発電は、化石燃料の消費を押さえ、炭酸ガス排出量を低減するという目的において注目されるエネルギー源である。太陽光を集光してそれを熱源として利用する発電方式と、太陽光によって半導体を励起して発電する方式とがある。半導体を用いる方式では、太陽光のエネルギーを吸収して電子の励起状態に変換し、励起された電子を電極に集電することで太陽光のエネルギーを電気エネルギーとして取り出すための装置、いわゆる太陽光発電パネルが用いられる。
【0003】
太陽光発電パネルに用いる半導体として、シリコン、テルル化カドミウム、カルコパイライト(chalcopyrite)型セレン化物などの何種類かの半導体材料が実用あるいは検討されている。特に、カルコパイライト型のCu1−x(In1−yGa)(Se1−zは太陽光に対する吸収係数が大きく薄層でも太陽光を十分に吸収できることから、薄膜型太陽光発電パネルの材料として期待されている。なお、以下においては、組成式Cu1−x(In1−yGa)(Se1−zで表される不定比固溶組成物をCIGSと総称することにする。しかし、CIGSは、優れた特性にもかかわらず、主構成成分としてインジウムを含むという問題点がある。インジウムは希少金属であり、その資源は豊富ではない。そのため、定比組成がCuZnSnSで表されるp型伝導性を持った半導体が、インジウムを含まず、かつ太陽光発電に適当な特性を持った半導体として注目され、その開発が進められている。
【0004】
シリコンでは、p型n型の半導体を得るために不純物のドーピングを施す。これと同様に、CIGS、あるいはp型伝導性硫化物においても、伝導性を高めるための材料制御が求められる。シリコンと異なり、化合物半導体であるCIGSやp型伝導性硫化物においては、結晶に不定比性を持ち込むことにより非化学量論性(不定比性)に由来するキャリアーが発生するので、導電性を高めることが可能である。たとえば、Cu1−x(In1−yGa)(Se1−zの組成でxをゼロ以外の値にすることで、キャリアーを発生させることができる。また、化合物半導体であるCIGSやp型伝導性硫化物では、化学組成を変化させた固溶体を構成することによって、バンドギャップを変化させることが可能である。すなわち、太陽光に限らず、発電のためのエネルギー源として用いる光の波長にあわせてバンドギャップを変化させることが可能である。たとえばCu1−x(In1−yGa)(Se1−zの組成においてyやzの値を変化させることで、バンドギャップが変化する。そのため、これらの化合物では化学組成制御が重要な意味を持つことが知られている。
【0005】
一方、太陽光発電パネルでは、得られる電力とそのパネル製造コストが折り合っている必要がある。すなわち、パネルの製造コストの低減が求められる。製造コストに占める原料の割合を小さくするためには、より高い光吸収を示す化学組成を持った材料を用い、その材料を必要最小限の厚さにしたパネルを用いることが求められる。一方、製造コストに占める設備コストも低減されなければならない。大型のパネルを真空蒸着で製造するには大型の装置が必要となるため、製造原価が上昇する。そのため、安価な製造プロセスが求められている。
【0006】
たとえば、非特許文献1には噴霧熱分解法によるp型伝導性硫化物の合成方法が示されており、また、非特許文献2にはコスト削減のための技術として、p型伝導性硫化物のコロイド粒子合成とその粒子を原料とした薄膜合成が示されている。
【0007】
特に、非特許文献3にみられるように、安価な太陽光発電を提供することを目的に、真空蒸着などの真空プロセスを経ずに、簡便な製造装置を使って安価に製造することが望まれている。
【0008】
例えば、特許文献1は、カルコパイライト型p型半導体粉体を、オレイン酸で処理した前駆体を加熱することで得る技術が開示され、更に、得られた粉体を焼成することで、太陽光発電セルを製造する技術も開示している。この特許文献1の方法ではヘキサンなどの溶媒を用いており、また加熱温度が300℃かそれ以上という高温が必要とされる。
【0009】
非特許文献2や非特許文献3に示されるような、たとえば、スプレーによる吹きつけなどの方法を使って太陽光発電パネルを作製しようとした場合、それぞれのプロセスに対して最も好ましい粒子径や粒子形状が考慮されなければならない。すなわち、過度に細かな粒子で凝集が起こることはこのプロセスを進める上で適当ではなく、一方、粗粒の場合には光吸収係数から求められる必要最小限の膜厚を大きく上回ることになってしまい、材料消費がかさんでコストを上昇させる要因となる。したがって、粉体の特性を制御した半導体材料が求められる。
【0010】
太陽光発電に用いられる材料粉体を得るための様々な先行技術がある。たとえば、非特許文献4は、ソルボサーマル法によりCIGSを合成する技術を開示している。こうした方法は、溶媒中に原料成分を溶解させ再析出することで目的の組成と結晶構造を持った太陽電池材料としての粉体を得るものであるが、圧力容器を用いなければならないという製造技術上の制約を持っている。より低コストで製造するためには、圧力容器の利用は好ましくなく、常圧での合成が望まれる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
太陽光発電パネル生産のための設備コスト及び原料コストの低減のためには、前述の通り、真空を用いない安価な製造プロセスと、使用する原料の量を最小限に抑えかつ安価な原料を使用することが望まれる。更に光吸収を担う半導体としてのCIGSやp型伝導性を持った硫化物などの材料の化学組成を制御し、導電性、光吸収特性を制御した粉体の提供を可能にすることが重要である。また、特許文献1のように溶媒を大気に放散させることなく、また圧力容器などのコスト上昇要因となる設備を要せず、常圧のプロセスで所望の粉体を得ることも重要である。本発明はこれらの要請に対応することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一側面によれば、
化学組成に所望の不定比性を有するカルコパイライト型の結晶構造を持ったセレン化物粉体またはp型伝導性を有する硫化物粉体を合成する方法において、
溶媒として用いるグリコールと所望の前記粉体中の元素比率に対応した原料とを冷却塔を備えた反応容器に投入し、
前記グリコールの沸点近傍まで反応容器を加熱し、
前記加熱によって蒸発した前記グリコールを冷却塔を介して反応容器に還流させつつ前記原料を反応させる、
ことにより、前記グリコールを放散させること無しに所望の不定比性を有するカルコパイライト型の結晶構造を持った前記セレン化物または前記硫化物を前記反応容器内に得ることを特徴とする粉体合成方法が与えられる。
ここにおいて、前記グリコールはトリエチレングリコールまたはテトラエチレングリコールであり、前記所望の粉体は所望の不定比性を有するカルコパイライト型の結晶構造を持ったセレン化物であるCu1−x(In1−yGa)(Se1−z粉体であり、前記Cu1−x(In1−yGa)(Se1−z粉体と同一のCu:In:Ga:Se:S比を実現する組成比に調合すべく、金属Cu及びCuClからなるグループと金属In及びInClからなるグループと金属Ga及びGaClからなるグループとS及びSeからなるグループから夫々少なくとも1種類の物質を前記原料として溶媒に投入するようにしてもよい。
また、前記グリコールはテトラエチレングリコールまたはトリエチレングリコールであり、前記原料はCuClと金属Inと金属GaとSeとからなるようにしてもよい。
また、前記グリコールはトリエチレングリコールまたはテトラエチレングリコールであり、前記所望の粉体は所望の不定比性を有するp型伝導性を持った硫化物であるCu1−x(Zn1−ySn)(S,Se1−x粉体であり、前記Cu1−x(Zn1−ySn)(S,Se1−x粉体と同一のCu:Zn:Sn:Se:S比となるように調合すべく、金属Cu及びCuClからなるグループと金属Zn及びZnClからなるグループと金属Sn及びSnClからなるグループとSe及びSからなるグループから夫々少なくとも1種類の物質を前記原料として溶媒に投入するようにしてもよい。
また、前記グリコールはテトラエチレングリコールであり、前記原料はCuClと金属Znと金属SnとSとからなるようにしてもよい。
また、前記合成された粉体に対して硫黄を含む雰囲気中での熱処理を加えることによって、前記粉体中の硫黄含有量を増すようにしてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、亜鉛面を成長面とする結晶成長が実現可能となり、これによって、原子レベルで平坦な材料の提供が可能となることから、素子を形成した際の凹凸が原因となった電界集中等の問題が回避可能となる。また、その製造法に課題が残されているp型酸化亜鉛についても、アクセプターとなる不純物の導入の容易性が高まることから、酸化亜鉛及び酸化亜鉛固溶体を用いた電子素子、光素子のより高効率な製造と、より高性能な素子特性の実現がもたらされる。
【0014】
例えば、特許文献3では、本発明と同様に、溶液から析出で太陽電池パネル材料を得る方法を開示しているが、これは具体的にはアセチルアセトナート等の有機金属を基板に塗布してそれを熱処理して膜状の太陽電池材料を形成するものである。この方法では、CIGS等の結晶化のための加熱によって基板が損傷する場合があり、本発明のように、予め結晶化した粉体を得てこれを塗布する手段の方が耐熱性に劣る基板上への光吸収材料の形成手段として好適である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の製造方法を実施するための製造装置を例示する概略図。
【図2】実施例1及び比較例2による製造物のX線回折図形を示す図。
【図3】比較例1による製造物のX線回折図形を示す図。
【図4】比較例1で得られた製造物の電子顕微鏡写真。
【図5】実施例1で得られたCIGS粉体の電子顕微鏡写真。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の方法によれば、その化学組成に所望の不定比性を有するカルコパイライト型の結晶構造を持ったセレン化物粉体及びp型伝導性を有する硫化物粉体を製造することができる。具体的には、溶媒に原料を溶解した溶液から、化学組成に所望の不定比性を有するカルコパイライト型の結晶構造を持ったセレン化物粉体またはp型伝導性を有する硫化物粉体を析出させる。更に具体的には、溶媒としてはグリコールを使用し、これと原料とを冷却塔を備えた反応容器に投入した上で、グリコールの沸点まで反応容器を加熱し、加熱によって蒸発したグリコール溶媒を冷却塔を介して反応容器に還流させつつ原料を反応させ、その反応の結果として所望の不定比性を有するカルコパイライト型の結晶構造を持ったセレン化物及び硫化物が反応容器内に得られる。冷却塔を使った還流という手段を用いることで、圧力容器を用いることなく、溶媒の蒸発に伴う放散を抑止することができる。
【0017】
上記方法の実施するに当たっては、例えば図1に示すような反応装置を使用することができる。反応容器Aは溶媒と原料とを投入する容器であって、酸化を防ぐためのガスパージのためのガス導入/排気口B及び蒸発した溶媒を還流させるための冷却塔Cをそなえる。溶媒と原料を投入したこの反応装置をヒーターDによって加熱し、溶媒の沸点付近に温度を維持することによって、溶解・析出反応を誘起し、粉体を製造する。また、均質な反応を得るため、反応容器内に攪拌機構、つまり攪拌子Fを設置することが好ましく、また、温度制御のための温度センサーEが反応容器に接して、あるいは反応容器内に挿入されていることが好ましい。また、温度センサーEの出力を温度計Gに入力することにより、反応容器Aの温度を測定しまた制御することができる。
【0018】
更に、反応容器に対して原料を投入するための原料投入機構Hを備えることにより、製造効率を高めることも可能である。
【0019】
本発明はまた、太陽光発電パネル用材料として有効な、所望の不定比性を有するカルコパイライト型の結晶構造を持ったセレン化物であるCu1−x(In1−yGa)(Se1−zの粉末を製造することができる。ここで、当該物質の固溶域から、xは0.8〜1.12、yは0〜1、zは0〜1の範囲の値を取り得る。具体的には、溶媒として用いるグリコールと原料を、冷却塔を備えた反応容器に投入した上で、グリコールの沸点まで反応容器を加熱し、加熱によって蒸発したグリコール溶媒を冷却塔を介して反応容器に還流させつつ原料を反応させ、その反応の結果として所望の不定比性を有するカルコパイライト型の結晶構造を持ったセレン化物及び硫化物を反応容器内に得る。溶媒としては、トリエチレングリコールまたはテトラエチレングリコールを使用するのが好ましい。また、そこで用いる原料として、金属Cu及びCuClからなるグループ、金属In、InCl、金属Ga及びGaClからなるグループ、S及びSeからなるクループの4つのグループから夫々少なくとも1種類ずつ選択してなる原料を用いる。また、この原料は、所望の組成物と同一のCu:In:Ga:Se:S比を実現する組成比に調合したものを使用する。これを、グリコールに投入して溶解し、析出によって所望の不定比性を有するカルコパイライト型の結晶構造を持ったセレン化物の粉体を得る。冷却塔を使った還流という手段を用いることで、圧力容器を用いることなく溶媒の蒸発に伴う放散を抑止することができる。
【0020】
ここでも、先に、図1に示したA〜Dの構成要素を有する反応装置を用いることが好ましく、さらに、攪拌子F及び温度センサーEを備えることが好ましい。ヒーターDによる加熱温度は、使用される溶媒であるトリエチレングリコールまたはテトラエチレングリコールの沸点付近とし、また投入する原料は、金属Cu及びCuClからなるグループ,金属In及びInClからなるグループ、金属Ga及びGaClからなるグループ、S及びSeからなるグループの4つのグループから夫々少なくとも1種類選択したものである。また、原料の溶解速度の調整を目的として、金属と塩化物の投入量比(つまり、CuとCuClの割合などの、各グループ内の比率)を最適化することが望ましい。
【0021】
さらに、本発明では、太陽電池パネル材料として有用な、所望の不定比性を有するp型伝導性の結晶構造を持った硫化物であるCu1−x(Zn1−ySn)(S,Se1−zの粉体を得る粉体製造法粉体が与えられる。ここで当該物質の固溶域から、xは0.9〜1.1、yは0.4〜0.6、zは0〜1の範囲の値を取り得る。具体的には、溶媒として用いるグリコールと原料とを冷却塔を備えた反応容器に投入し、グリコールの沸点まで反応容器を加熱し、加熱によって蒸発したグリコーゲン溶媒を冷却塔を介して反応容器に還流させつつ原料を反応させ、その反応の結果として所望の不定比性を有するカルコパイライト型の結晶構造を持ったセレン化物または硫化物を反応容器内に得る。ここでは、溶媒として、トリエチレングリコールまたはテトラエチレングリコールを使用し、また、そこで用いる原料として、金属Cu及びCuClからなるグループ、金属Zn及びZnClからなるグループ、金属Sn及びSnClからなるグループ、Se及びSからなるグループの4つのグループから夫々少なくとも1種類ずつ選択してなる原料を用いる。この原料の組成比が、その所望の組成物と同一のCu:Zn:Sn:Se:S比を実現するものとなるように調合する。これをグリコールに投入して溶解、析出によって、所望の粉体を得る。
【0022】
ここでも、先に、図1に示したA〜Dの構成要素を有する反応装置を用いることができる。また、攪拌子F及び温度センサーEを備えることが好ましい。ヒーターDによる加熱温度は使用される溶媒であるトリエチレングリコールまたはテトラエチレングリコールの沸点付近とする。また投入する原料は、金属Cu及びCuClからなるグループ、金属Zn及びZnClからなるグループ、金属Sn及びSnClからなるグループ、並びにSe及びSからなるグループの4グループの夫々から少なくとも1種類ずつ(つまり少なくとも4種類)を選択する。ここで、少なくとも4種類としたのは、Cu1−x(Zn1−ySn)(S,Se1−z中のzが0または1である場合には、必要となる元素が4種類に限定されるためである。ただし、必要となる元素が4種類に限られる場合であっても、原料の溶解速度の調整を目的として、金属と塩化物の投入量比を最適化することが望ましい。
【0023】
本発明ではまた、上述の3種類の方法によって得られた粉体に対して、硫黄を含む雰囲気中での熱処理を加えることで、硫黄成分を増した粉体を得ることができる。先に示した通り、太陽光発電用光吸収材料の特性として導電性と光吸収特性が特に重要である。この特性を最適化するためには、陽イオンと陰イオンの組成比及びセレンと硫黄の組成比を制御することが有用である。溶液反応で得られた上記粉体に対して具体的に言えば、カルコパイライト型の結晶構造を持ったセレン化物及びp型伝導性を有する硫化物では、そのセレンと硫黄の比率によってバンドギャップを変化させることができる。本発明では硫黄雰囲気中での熱処理を施すことによってその粉体の化学組成を変化せしめ、それによって、導電性、バンドギャップ(光吸収特性)を制御することができる。
【0024】
以下では、実施例と比較例を対照しながら本発明を更に説明する。ここで、本発明を実施例に限定しようという意図は全くなく、実施例はあくまでも本発明を説明する目的のための単なる例示であることに注意しなければならない。
【実施例】
【0025】
[比較例1]
ここでは、ソルボサーマル法は本発明の粉体の製造には不適切であることを示す。
【0026】
原料となる金属Cu、In、Ga及びSeを容積45mlの耐圧反応容器に投入した。それらの原料は1gのCIGSを得るための適量とし、さらに、25mlのエチレンジアミン(毒物のため取扱注意)を圧力容器に投入した。その後、圧力容器を密閉してから昇温した、エチレンジアミンの蒸気圧によって圧力容器は自加圧され、温度を上げることで、ソルボサーマル反応を誘起した。非特許文献3を参照し、典型的な製造条件として200℃60時間の反応時間を経た後に反応容器を徐冷し、除圧後、開封して反応物を回収した。その結果、製造物1gを得るために投入したGa0.066g及びインジウム0.254gの合計0.320gのインジウムとガリウム原料の内、0.056gが未反応のIn−Ga合金の状態で回収された。その合金の組成をEDX装置で分析したところ、Ga含量が原子比で95%にも上っていた。
【0027】
従って、ソルボサーマル法はCIGSの合成手段として考慮されていたものではあるが、目的の組成物を未反応物なしに合成できないという点において、望ましい方法であるとは言えない。
【0028】
ここでは、ソルボサーマル法によって得られた製造物のX線回折図形を図3に示す。200℃及び220℃の合成温度で製造した反応物は、その主成分はCIGSと同じくカルコパイライト型結晶構造を持つ粉体であることがこの図から判明した。しかし、未反応物の存在も見受けられた。一方、180℃で合成した製造物のX線回折図形は未反応の化合物の残存を示すものとなった。
【0029】
比較例1で得られた製造物は図4に示すような凝集物であり、未反応物は粒度の揃わない粉体粒子が凝集した状態のものであった。なお、この凝集物は、反応温度220℃、反応時間60時間で製造されたものであり、図3にX線回折図形を見る限り、比較的目的組成物の含量が高いと見られるものであったが、実際には反応の不均一生や未完了を示唆するような電子顕微鏡像がえられた。
【0030】
以上、纏めると、ソルボサーマル法は反応収率が低く、得られる粉体の粒度のばらつきが大きく、また、得られる粉体は凝集した状態になっている。更に、エチレンジアミンという毒性の高い溶媒を用いるとともに、圧力容器を必要とする製造技術であることから、以下に説明する本発明の実施例に比較して問題が多いと判断される。
【0031】
[実施例1]
本発明に基づき、CIGSの製造を行った。この例では、実施例1及び代表的な原料物質の組合せを示す表1中の、原料の組合せの略称(以下、組合せと称する)R1〜3の3種類の組合せの内、組合せR2を用いた。
【0032】
【表1】

【0033】
また、製造時に用いる溶媒として、テトラエチレングリコールを用いた。より高温の沸点を持つグリコール溶媒を用いることで,より高温での反応が行われるので,高沸点のグリコールを用いることが好ましい.しかし、反応条件の最適化を行うことで、溶媒としてトリエチレングリコールを使用した場合でもほぼ同等の結果を得ることができると考えられる。組合せR2の原料を、Cu0.9(In0.7,Ga0.3)Seという組成式で示されるCIGSを合成するに適量の比率で原料を調製した。
【0034】
反応容器Aとして、容量500mlのパイレックスガラス製ベッセルを用いた。目的のCIGS組成物5gを得るための必要量を秤量した、組合せR2の原料とテトラエチレングリコール溶媒200mlとを反応容器Aに投入した。なお、この反応容器Aには冷却塔C及びパージガス導入/排出口Bが設けられている。本実施例では、製造するCIGS組成物が少量であるため、原料投入装置Hは用いなかった。
【0035】
冷却塔Cをベッセルに設置して封をした状態で、ガスパージのためのポートBより窒素ガスを30分ほど導入し続けることでベッセル内の酸素ガスを除去し、不活性ガスとして利用する窒素ガスにて満たした。なお、このパージに際しては、真空ポンプなどを用いることによって、パージ時間を短縮することが可能である。
【0036】
反応を促進する目的で、撹拌子Fを用いて溶媒とそこに投入した原料とを撹拌しながら、ヒーターDを用いてベッセルの温度を昇温した。なお、温度はテトラエチレングリコールの沸点近傍の317℃に設定した。特に反応容器Aが大型になる場合、反応容器の温度計測用の温度センサーE及び温度計Gを設けることが望ましい。しかし、本実施例では製造量が少量であり溶媒量も少ないため、ヒーターDに内蔵された温度計を用いて温度を制御した。なお、他のグリコール溶媒を用いる場合には、本実施例と同様に、そのグリコールの沸点近傍の温度に溶媒温度を保つことが望ましい。
【0037】
反応終了後に得られた製造物は、エタノール、蒸留水で洗浄した後、乾燥した。
【0038】
図2のX線回折図形のうち、上から2段目の「R2,tetra−EG」と標記されたものが、本実施例による製造物のX線回折図形である、この図形は、目的の組成物が結晶性の化合物として製造されたことを示すものである。
【0039】
図5の電子顕微鏡写真から、比較例1のソルボサーマル法に比べて鱗片状の粒子の存在率が低くなっていることが見て取れ、粒子析出が想定通りに進行したことが確認される。
【0040】
[比較例2]
ここではCIGSの製造を行った。この例では、表1に示す組合せR1〜3の組合せの内、組合せR1と組合せR3の両者を用いた。また、溶媒としてテトラエチレングリコールを用いた。組合せR1の原料と組合せR3の原料を夫々、Cu0.9(In0.7,Ga0.3)Seという組成式で示されるCIGSを合成するに適量の比率になるように調製した。
【0041】
反応容器Aとして、容量500mlのパイレックスガラス製ベッセルを用いた。目的のCIGS組成物5gを得るための必要量を秤量した組合せR1またはR3の原料とテトラエチレングリコール溶媒200mlとを反応容器Aに投入した。なお、この反応容器Aには、冷却塔C及びパージガス導入のためのガス導入/排出口Bが設けられている。本例では、製造するCIGS組成物が少量であるため、原料投入装置Hは用いなかった。
【0042】
冷却塔Cをベッセルに設置して封をした状態でガス導入/排出口Bより窒素ガスを30分間ほど導入し続けることで、ベッセル内の酸素ガスを除去し、不活性ガスとして利用する窒素ガスにて満たした。なお、このパージに際しては、真空ポンプなどを用いることによって、パージ時間を短縮することが可能である。
【0043】
反応を促進する目的で、撹拌子Fを用いて溶媒とそこに投入した原料とを撹拌しながら、ヒーターDによってベッセルの温度を昇温した。なお、温度は、テトラエチレングリコールの沸点近傍の317℃に設定した。特に反応容器Aが大型になる場合、反応容器Aの温度計測用の温度センサーE及び温度計Gを設けることが望ましい。しかし、本例では製造量が少量であり溶媒量も少ないため、ヒーターDに内蔵された温度計を用いて温度を制御した。なお、他のグリコール溶媒を用いる場合には、本例と同様に、そのグリコールの沸点近傍の温度に溶媒温度を保つことが望ましい。
【0044】
反応終了後に得られた製造物は、エタノール及び蒸留水で洗浄した後、乾燥した。図2のX線回折図形のうち、上から1段目の「R1,tetra−EG」と標記されたもの及び下から1段目の「R3,tetra−EG」と標記されたものが、本比較例による製造物のX線回折図形である、この図形は、目的の組成物が結晶性の化合物の形では得られていないことを示すものである。未反応物が残されていることの原因は、組合せR1では銅成分として塩化物ではなく金属銅を用いたこと、また組合せR3ではインジウム及びガリウム原料として塩化物を用いたことが挙げられる。組合せR1と組合せR3の何れについても、中間生成物としてセレンと銅からなる化合物が生成されていることが確かめられており、Cuの溶解と他の成分の溶解とのアンバランスが生じた場合には、目的化合物以外の化合物が先に過飽和に達してしまい、望ましくない反応が起こってしまうと考えられる。
【0045】
[比較例3]
ここではCIGSの製造を行った。この例では、この例では、表1に示す原料の組合せR1〜3の内、組合せR2を用いた。また、溶媒として、トリエチレングリコールを用いた。組成せR2の原料を、Cu0.9(In0.7,Ga0.3)Seという組成式で示されるCIGSを合成するに適量の比率で調製した。
【0046】
反応容器Aとして、容量500mlのパイレックスガラス製ベッセルを用いた。目的のCIGS組成物5gを得るための必要量を秤量した、組合せR2の原料を秤量したものとトリエチレングリコール溶媒200mlとを反応容器Aに投入した。なお、この反応容器Aには、冷却塔C及びパージガス導入のためのガス導入/排出口Bが設けられている。本例では、製造するCIGS組成物が少量であるため、原料投入装置Hは用いなかった。
【0047】
冷却塔Cをベッセルに設置して封をした状態で、ガスパージのためのガス導入/排出口Bより窒素ガスを30分ほど導入し流し続けることで、ベッセル内の酸素ガスを除去し、不活性ガスとして利用する窒素ガスにて満たした。なお、このパージに際しては、真空ポンプなどを用いることによって、パージ時間を短縮することが可能である。
【0048】
反応を促進する目的で、撹拌子Fを用いて溶媒とそこに投入した原料とを撹拌しながら、ヒーターDによってベッセルの温度を昇温した。なお、温度はトリエチレングリコールの沸点近傍の285℃に設定した。特に反応容器Aが大型になる場合、反応容器Aの温度計測用の温度センサーE及び温度計Gを設けることが望ましい。しかし、本例では製造量が少量であり溶媒量も少ないため、ヒーターDに内蔵された温度計を用いて温度を制御した。なお、他のグリコール溶媒を用いる場合には、本例と同様に、そのグリコールの沸点近傍の温度に溶媒温度を保つことが望ましい。
【0049】
反応終了後に得られた製造物は、エタノール及び蒸留水で洗浄したのち、乾燥した。
【0050】
図2のX線回折図形のうち、下から2段目の「R2,TEG」と標記されたものが、本例による製造物のX線回折図形である。この図形は、目的の組成物が結晶性の化合物として製造されたことを示すものであるが、未反応のセレンも検出された。この原因として、トリメチレングリコールを用いた場合、テトラエチレングリコールに比べて沸点かやや低温となることから溶解度あるいは反応活性に不足が生じ、テトラエチレングリコールを用いた場合に比べて未反応物が若干多めになったものと考えられる。しかし、本比較例の結果から、トリメチレングリコールを用いても、CIGSの合成が可能であることは示されており、投入原料と溶媒との配合比あるいは投入原料の溶解度を調整するために塩化物原料と金属原料の比を調整するなどの通常の最適化を検討することで、この状況は改善されると考えられる、
【0051】
[実施例2]
この例では、表2中で試料番号が100715とされている原料の組合せを用いてCu1−x(Zn1−ySn)Sの製造を行った。表2は実施例2及び比較例4で用いた原料とベッセル中での反応時間ならびに溶媒として用いたテトラエチレングリコールの投入量を示す。なお、表2中に「Zn粉末×2」なる表記があるが、これはZn粉末を必要量の2倍投入したことを意味する。また、「時間」カラムは合成のための反応時間である。
【0052】
【表2】

【0053】
また、溶媒としてテトラエチレングリコールを用いた。100715の原料を、Cu(Zn0.5,Ga0.5)Seという組成式で示される組成物を合成するに適量の比率で調製した。
【0054】
反応容器Aとして、容量500mlのパイレックスガラス製ベッセルを用いた。目的のCu(Zn0.5,Ga0.5)S組成硫化物5gを得るための必要量を秤量した100715の原料とテトラエチレングリコール溶媒200mlとを反応容器Aに投入した。なお、この反応容器Aには、冷却塔C及びパージガス導入のためのガス導入/排出口Bが設けられている。本実施例では、製造する硫化物が少量であるため、原料投入装置Hは用いなかった。
【0055】
冷却塔をベッセルに設置して封をした状態で、ガスパージのためのガス導入/排出口Bより窒素ガスを30分ほど導入し流し続けることでベッセル内の酸素ガスを除去し、不活性ガスとして利用する窒素ガスにて満たした。なお、このパージに際しては、真空ポンプなどを用いることによって、パージ時間を短縮することが可能である。
【0056】
反応を促進する目的で、撹拌子Fを用いて溶媒とそこに投入した原料とを撹拌しながら、ヒーターDによってベッセルの温度を昇温した。なお、温度はテトラエチレングリコールの沸点近傍の317℃に設定した。特に反応容器Aが大型になる場合、反応容器Aの温度計測用の温度センサーE及び温度計Gを設けることが望ましい。しかし、本実施例では製造量が少量であり溶媒量も少ないため、ヒーターDに内蔵された温度計を用いて温度を制御した。なお、他のグリコール溶媒を用いる場合には、本実施例と同様に、そのグリコールの沸点近傍の温度に溶媒温度を保つことが望ましい。
【0057】
反応終了後に得られた製造物は、エタノール及び蒸留水で洗浄した後、乾燥した。その後、X線回折測定を行ったところ、非特許文献5に示されているstannite構造のCuZnSnS組成物がほぼ単相の状態で得られていることが確認できた。
【0058】
[比較例4]
この例では、表2に示す原料の組合せで試料番号100715以外の原料の組合せを用いてCu1−x(Zn1−ySn)Sの製造を行った。また、溶媒としてテトラエチレングリコールを用いた。表2の原料を、Cu(Zn0.5,Ga0.5)Seという組成式で示される組成物を合成するに適量の比率で調製した。
【0059】
反応容器Aとして容量500mlのパイレックスガラス製ベッセルを用いた。目的のCu(Zn0.5,Ga0.5)S組成硫化物5gを得るための必要量を秤量した原料とテトラエチレングリコール溶媒200mlとを反応容器Aに投入した。なお、この反応容器Aには冷却塔C及びパージガス導入のためのガス導入/排出口Bが設けられている。本実施例では、製造する組成物が少量であるため原料投入装置Hは用いなかった。
【0060】
冷却塔Cをベッセルに設置して封をした状態で、ガスパージのためのガス導入/排出口Bより窒素ガスを30分ほど導入し流し続けることで、ベッセル内の酸素ガスを除去し、不活性ガスとして利用する窒素ガスにて満たした。なお、このパージに際しては、真空ポンプなどを用いることによってパージ時間を短縮することが可能である。
【0061】
反応を促進する目的で、撹拌子Fを用いて溶媒とそこに投入した原料とを撹拌しながら、ヒーターDによってベッセルの温度を昇温した。なお、温度はテトラエチレングリコールの沸点近傍の317℃に設定した。特に反応容器Aが大型になる場合、反応容器Aの温度計測用の温度センサーE及び温度計Gを設けることが望ましい。しかし、本実施例では製造量が少量であり溶媒量も少ないため、ヒーターDに内蔵された温度計を用いて温度を制御した。なお、他のグリコール溶媒を用いる場合には、本実施例と同様に、そのグリコールの沸点近傍の温度に溶媒温度を保つことが望ましい。
【0062】
反応終了後に得られた製造物は、エタノール及び蒸留水で洗浄した後、乾燥した。その後、X線回折測定を行ったところ、非特許文献4のCuZnSnS組成物がほぼ単相の状態では得られていないことが確認できた。
【0063】
なお、CIGSをはじめとする太陽光発電用材料の粉体合成は、必ずしも真空プロセスを使用しない対向高発電パネルの製造のみに有効なわけではない。例えば、特許文献2では、太陽光発電パネルの製造法の1つであるスパッタリングに用いるターゲット材料の焼結に関する技術が開示されている。ここに見られるように、スパッタリングのための焼結体ターゲットの製造技術の一部として、本発明におけるCICSやCuZnSnS系混晶などの粉体も、スパッタターゲットの焼成原料として用いることは勿論可能である。
【0064】
さらに、CIGSと類似した化合物を蛍光体として利用する技術は、特許文献4に示されている、こうした蛍光体としての応用においても、本発明によって製造される粉体は、低い温度での合成で得られために、そのコスト低減に寄与する可能性がある。特許文献5では、特許文献4と同様にカルコパイライト型化合物を発光材料として利用するための技術が開示されている。しかし、その中で「CuAlS粉末に0.01〜10wt%に相当する高純度のMn粉末を混合する手順と、この混合粉末を石英ボートに入れHSガス雰囲気中で加熱焼成してCuAlS:Mn蛍光体粉末を得る手順」とあるとおり、比較的高い温度で蛍光体を合成する技術となっている。これに対して、本発明の効果として、こうした蛍光体合成の合成温度を下げることができ、それによって製造コストを低減したり蒸気圧の高い材料を使えるようになるなどの利点が出てくる。
【産業上の利用可能性】
【0065】
以上詳細に説明したように、本発明によれば太陽電池に適した特性を有する、良質な、カルコパイライト型の結晶構造を持ったセレン化物粉体またはp型伝導性を有する硫化物粉体を合成することができるので、太陽電池の普及に大いに貢献するものと期待される。
【符号の説明】
【0066】
A:反応容器
B:ガス導入/排出口
C:冷却塔
D:ヒーター
E:温度センサー
F:攪拌子
G:温度計
H:原料投入装置
【先行技術文献】
【特許文献】
【0067】
【特許文献1】特開2010−111555
【特許文献2】特開2009−287092
【特許文献3】特開2001−53314
【特許文献4】特開平9−279140
【特許文献5】特開平8−64361
【非特許文献】
【0068】
【非特許文献1】N. Kamouna, et al., "Fabrication and characterization of Cu2ZnSnS4 thin films deposited by spray pyrolysis technique", Thin Solid Films誌 515巻15号, 2007年9月31日刊行, 5949-5952ページ
【非特許文献2】Chet Steinhagen, et al., "Synthesis of Cu2ZnSnS4 Nanocrystals for Use in Low-Cost Photovoltaics", Journal of American Chemical Society誌2009年刊行, 131巻35号12554-12555ページ
【非特許文献3】C. J. Hibberd1, et al., "Non-vacuum methods for formation of Cu(In, Ga)(Se, S)2 thin film photovoltaic absorbers", Progress in Photovoltaics誌 18巻6号, 434-452ページ 2010年9月刊行
【非特許文献4】Y. Chun, K. Kim, and K. Yoon, “Synthesis of CuInGaSe2 nanoparticlesby solvothermal route," Thin Solid Films 誌480-481巻, 2005年9月刊行 46-49ページ
【非特許文献5】Y. B. Kishore Kumar, et al, "Preparation and characterization of spray-deposited Cu2ZnSnS4 thin films", Solar Energy Materials & Solar Cells誌 93巻 2009年刊行 1230-1237ページ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学組成に所望の不定比性を有するカルコパイライト型の結晶構造を持ったセレン化物粉体またはp型伝導性を有する硫化物粉体を合成する方法において、
溶媒として用いるグリコールと所望の前記粉体中の元素比率に対応した原料とを冷却塔を備えた反応容器に投入し、
前記グリコールの沸点近傍まで反応容器を加熱し、
前記加熱によって蒸発した前記グリコールを冷却塔を介して反応容器に還流させつつ前記原料を反応させる、
ことにより、前記グリコールを放散させること無しに所望の不定比性を有するカルコパイライト型の結晶構造を持った前記セレン化物または前記硫化物を前記反応容器内に得ることを特徴とする粉体合成方法。
【請求項2】
前記グリコールはトリエチレングリコールまたはテトラエチレングリコールであり、
前記所望の粉体は所望の不定比性を有するカルコパイライト型の結晶構造を持ったセレン化物であるCu1−x(In1−yGa)(Se1−z粉体であり、
前記Cu1−x(In1−yGa)(Se1−z粉体と同一のCu:In:Ga:Se:S比を実現する組成比に調合すべく、金属Cu及びCuClからなるグループと金属In及びInClからなるグループと金属Ga及びGaClからなるグループとS及びSeからなるグループから夫々少なくとも1種類の物質を前記原料として溶媒に投入する、
請求項1に記載の粉体合成方法。
【請求項3】
前記グリコールはテトラエチレングリコールまたはトリエチレングリコールであり、前記原料はCuClと金属Inと金属GaとSeとからなる、請求項2に記載の粉体合成方法。
【請求項4】
前記グリコールはトリエチレングリコールまたはテトラエチレングリコールであり、
前記所望の粉体は所望の不定比性を有するp型伝導性を持った硫化物であるCu1−x(Zn1−ySn)(S,Se1−x粉体であり、
前記Cu1−x(Zn1−ySn)(S,Se1−x粉体と同一のCu:Zn:Sn:Se:S比となるように調合すべく、金属Cu及びCuClからなるグループと金属Zn及びZnClからなるグループと金属Sn及びSnClからなるグループとSe及びSからなるグループから夫々少なくとも1種類の物質を前記原料として溶媒に投入する、
請求項1に記載の粉体合成方法。
【請求項5】
前記グリコールはテトラエチレングリコールであり、前記原料はCuClと金属Znと金属SnとSとからなる、請求項4に記載の粉体合成方法。
【請求項6】
前記合成された粉体に対して硫黄を含む雰囲気中での熱処理を加えることによって、前記粉体中の硫黄含有量を増す、請求項1から4の何れかに記載の粉体合成方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2012−76976(P2012−76976A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−226230(P2010−226230)
【出願日】平成22年10月6日(2010.10.6)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.パイレックス
【出願人】(301023238)独立行政法人物質・材料研究機構 (1,333)
【Fターム(参考)】