説明

硫酸法によるほぼ球形の硫酸バリウムの製造方法及び銅箔基板における使用

硫酸バリウム粒子の形態が不定形であり、粒径分布が広いという問題を解決するために、本発明は、硫酸法によるほぼ球形硫酸バリウム製造方法を提供する。具体的に、(a)バライトを石炭で焼成して硫化バリウムを生成する工程と、(b)硫化バリウムを水で溶解して濃度が70〜130g/Lの硫化バリウム溶液を調製し、硫化バリウム溶液の温度を45〜85℃に調節し、硫化バリウムの添加速度が500L/h〜7000L/hとなる状態で該硫化バリウム溶液と過量の硫酸を連続反応器に同時に添加し、反応させて、硫酸バリウムスラリーと硫化水素とを生成する工程と、(c)該硫酸バリウムスラリーに熱空気を流れ込ませて硫化水素を排出させる工程と、(d)硫酸バリウムスラリーを脱水、洗浄、乾燥、粉砕してほぼ球形の硫酸バリウム製品を得る工程とを含む。該製造方法によれば、球形又は球形に近似し、かつ連続的で調整可能な粒径分布の硫酸バリウムが得られる。また、本発明は、ほぼ球形硫酸バリウムをフィラーとした銅箔基板における使用を更に公開している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硫酸バリウムに関し、詳しくは、硫酸法による硫酸バリウムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
通常の硫酸バリウムは、ゴム、プラスチック、インク、塗料、製紙など多くの業界に広く用いられている。ナノ硫酸バリウムは、量子効果、サイズ効果、界面効果など重要な構造特性を持ち、その物理特性が通常の材料とは異なり、新規な高級機能性充填材料であり、ゴム、プラスチック、インク、塗料、製紙など多くの工業分野に大いに見込まれるのみならず、医学、セラミック、複合材料などの面においても、更に大いに見込まれている。
【0003】
従来技術では、硫酸バリウムの製造方法は、主として天然鉱石加工製粉、芒硝法化学合成及び硫酸法合成などの方法がある。天然鉱石製粉による粒子は、粒径が大きく、かつ粒径の分布が広い。芒硝法による硫酸バリウムには硫化ナトリウムが含まれており、かつ粒径の分布が比較的に広く、その粒子の形態が不定形であることから、一部の業界では、その応用が制限されている。
【0004】
特許文献1では、「バライト硫酸法による精製硫酸バリウムの生産工程」が開示されており、特許文献1では、硫酸法を利用して精製硫酸バリウム製品を製造しているが、硫化バリウム溶液に直接的に硫酸を添加して沈殿硫酸バリウムスラリーを生成しているため、硫酸バリウム粒子の形態が不定形であり、且つ、粒径の分布が広いという問題も存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】中国特許出願公開第101134596号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、硫酸バリウム粒子の形態が不定形であり、かつ粒径分布が広いという問題を解決するために、ほぼ球形の硫酸バリウムを生産する硫酸法による硫酸バリウムの製造方法を提供することを一つの目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を実現するための本発明の技術案は、硫酸法によるほぼ球形硫酸バリウムの製造方法であって、(a)バライトを石炭で焼成して硫化バリウムを生成する工程を含み、それより肝心なのは、
(b)硫化バリウムを水で溶解して濃度が70〜130g/Lの硫化バリウム溶液を調製し、該硫化バリウム溶液の温度を45〜85℃に調節し、硫化バリウム溶液の添加速度が500L/h〜7000L/hとなる状態で、該硫化バリウム溶液と過量の硫酸を連続反応器に同時に添加し、反応させて、硫酸バリウムスラリーと硫化水素とを生成する工程と、
(c)該硫酸バリウムスラリーに熱空気を流れ込ませて硫化水素を排出させる工程と、
(d)工程(c)の排気による脱気処理を経た硫酸バリウムスラリーを脱水、洗浄、乾燥、粉砕してほぼ球形硫酸バリウム製品を得る工程とを更に含むことを特徴とする。
【0008】
本発明の好ましい実施形態として、前記工程(c)において、流れ込ませる熱空気の風量が3000〜7000M/hであり、温度が45〜80℃であり、脱気時間が1.5〜3hである。
【0009】
本発明の別の好ましい実施形態として、前記工程(b)において、硫酸バリウムスラリーに残される硫酸の濃度が0.5〜25g/Lとなるように制御する。
【0010】
本発明の別の好ましい実施形態として、前記工程(d)において、洗浄を経た硫酸バリウムスラリーに珪酸ナトリウム又はアルミン酸ナトリウム又はカップリング剤を加えて1.5〜3h反応した後、脱水、洗浄、乾燥、粉砕を経て硫酸バリウム製品を得る。
【0011】
本発明の別の好ましい実施形態として、前記乾燥は、フラッシュ蒸発乾燥が用いられており、乾燥後のほぼ球形硫酸バリウム製品の含水量が0.2%未満である。
【0012】
本発明は、ほぼ球形の硫酸バリウムの銅箔基板における使用を提供することをもう一つの目的とする。
【発明の効果】
【0013】
従来技術に比べて、本発明によれば、下記の有益な効果を奏する。
【0014】
(1)本発明では、並流連続合成工程を経て球形又は球形に近似する硫酸バリウムを得たので、硫酸バリウムの応用範囲を更に広げた。
(2)本発明では、反応速度を制御することにより、硫酸バリウムの核形成と成長速度を制御し、サブミクロンレベルで、かつ連続的に調整可能な粒径分布の硫酸バリウムを得た。
(3)本発明では、合成反応後に酸性条件において熱気を流れ込ませて脱気することにより、硫酸バリウム製品の白色度を向上させた。
(4)本発明では、カップリング剤による硫酸バリウム粉体の表面修飾及びアルミナなど異なる材料による被覆により、下流産業の応用における分散、沈殿という問題を解決した。
(5)本発明は銅箔基板に使用され、高分散性球近似型サブミクロン粒子の樹脂における連続分散充填に加え、熱伝導係数が比較的に高いため、基板のTg値と難燃性能を高めることができる。しかも、導電イオンの含有量が厳しく制御されているため、高CTI基板の生産をサポートできる。さらに、硬度が比較的に低いことは、基板の加工及び成型性能を保証している。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施例1による硫酸バリウムの電子顕微鏡走査写真である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面と実施例を参照して更に本発明を説明する。
【0017】
[実施例1]
(a)バライトと無煙炭とを粉砕して混合し、焼成炉に投入して焼成した。温度は1200℃に制御し、焼成時間は2時間とした。硫化バリウムを60%ほど含む粗硫化バリウムが生成した。
【0018】
(b)上記粗硫化バリウムを浸出槽に入れ80℃の湯に浸し、硫化バリウムを114g/L含有する溶液を調製し、該硫化バリウム溶液の温度を67℃に調節し、該硫化バリウム溶液と過量の硫酸(工業硫酸、98%)を同時に連続反応器に添加して、反応させて硫酸バリウムスラリーと硫化水素とを生成した。硫化バリウム溶液の添加速度は4000L/hであり、硫酸の添加量は、反応完成後に硫酸バリウムスラリーに残される硫酸の濃度が2.7g/Lとなるように計算した。
【0019】
(c)該硫酸バリウムスラリーに熱空気を流れ込ませて硫化水素を脱気させた。流れ込ませる熱空気の風量は3500M/hであり、温度は54℃であり、脱気時間は2hとした。
【0020】
(d)工程(c)の脱気処理を経た硫酸バリウムスラリーを脱水、洗浄(材料/水=1:7、温度:90℃、時間:2.0h)して、それからフラッシュ蒸発乾燥し、ハンマリング・粉砕してほぼ球形の硫酸バリウム製品を得た。製品を電子顕微鏡で検査すると、図1に示すように、硫酸バリウムが球形か球形に近似した形態であった。
【0021】
実施例1で得た硫酸バリウムをエキポシガラス繊維銅箔基板組成物に入れた。硫酸バリウムの添加量は組成物の全重量の2〜35%とした。
【0022】
[実施例2]
(a)バライトと無煙炭とを粉砕して混合し、焼成炉に投入して焼成した。温度は1200℃に制御し、焼成時間は2時間とした。硫化バリウムを60%ほど含む粗硫化バリウムが生成した。
【0023】
(b)上記粗硫化バリウムを浸出槽に入れ80℃の湯に浸し、硫化バリウムを110g/L含有する溶液を調製し、該硫化バリウム溶液の温度を65℃に調節し、該硫化バリウム溶液と過量の硫酸(工業硫酸、98%)を同時に連続反応器に添加して、反応させて硫酸バリウムスラリーと硫化水素とを生成した。硫化バリウム溶液の添加速度は3000L/hであり、硫酸の添加量は、反応完成後に硫酸バリウムスラリーに残される硫酸の濃度が12.5g/Lとなるように計算した。
【0024】
(c)該硫酸バリウムスラリーに熱空気を流れ込ませて硫化水素を脱気させた。流れ込ませる熱空気の風量は3500M/hであり、温度は60℃であり、脱気時間は2.5hとした。
【0025】
(d)工程(c)の脱気処理を経た硫酸バリウムスラリーをろ過して脱水し、水で洗浄し、それからろ過ケーキを水に溶解して硫酸バリウムスラリーを生成し、該硫酸バリウムスラリーに珪酸ナトリウム又はアルミン酸ナトリウムを添加し、2時間反応した後、ろ過して脱水し、再び水で3回洗浄し(材料/水=1:7、温度:90℃、時間:2.0h)して、それからフラッシュ蒸発乾燥し、粉砕して、酸化アルミニウムに被覆されたほぼ球形の硫酸バリウム製品を得た。
【0026】
実施例2で得た硫酸バリウムをフェノール樹脂銅箔基板組成物に入れた。硫酸バリウムの添加量は組成物の全重量の2〜35%とした。
【0027】
[実施例3]
工程(d)において、脱水、洗浄後にろ過ケーキを水に溶解して硫酸バリウムスラリーを生成して、該硫酸バリウムスラリーにカップリング剤KH−560を添加することを除いて、他の工程は実施例2と同様に行なった。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)バライトを石炭で焼成して硫化バリウムを生成する工程を含むことに加えて、
(b)硫化バリウムを水で溶解して濃度が70〜130g/Lの硫化バリウム溶液を調製し、前記硫化バリウム溶液の温度を45〜85℃に調節し、前記硫化バリウム溶液の添加速度が500L/h〜7000L/hとなる状態で前記硫化バリウム溶液と過量の硫酸を連続反応器に同時に添加し、反応させて、硫酸バリウムスラリーと硫化水素とを生成する工程と、
(c)前記硫酸バリウムスラリーに熱空気を流れ込ませて前記硫化水素を排出させる工程と、
(d)工程(c)の排出による脱気処理を経た前記硫酸バリウムスラリーを脱水、洗浄、乾燥、粉砕してほぼ球形の硫酸バリウム製品を得る工程と、
を更に含むことを特徴とする、硫酸法によるほぼ球形の硫酸バリウムの製造方法。
【請求項2】
前記工程(c)において、前記流れ込ませる熱空気の風量が3000〜7000M/hであり、温度が45〜80℃であり、脱気時間が1.5〜3hであることを特徴とする、請求項1に記載の硫酸法によるほぼ球形硫酸バリウムの製造方法。
【請求項3】
前記工程(b)において、前記硫酸バリウムスラリーに残される前記硫酸の濃度が0.5〜25g/Lとなるように制御することを特徴とする、請求項1に記載の硫酸法によるほぼ球形硫酸バリウムの製造方法。
【請求項4】
前記工程(d)において、洗浄を経た前記硫酸バリウムスラリーに珪酸ナトリウム又はアルミン酸ナトリウム又はカップリング剤を加えて1.5〜3h反応させた後、脱水、洗浄、乾燥、粉砕を経て硫酸バリウム製品を得ることを特徴とする、請求項1に記載の硫酸法によるほぼ球形硫酸バリウムの製造方法。
【請求項5】
前記乾燥は、フラッシュ蒸発乾燥が用いられており、乾燥後の前記ほぼ球形の硫酸バリウム製品の含水量が0.2%未満であることを特徴とする、請求項1又は4に記載の硫酸法によるほぼ球形の硫酸バリウムの製造方法。
【請求項6】
ほぼ球形の硫酸バリウムをフィラーとする銅箔基板における使用。


【図1】
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【公表番号】特表2012−513365(P2012−513365A)
【公表日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−542660(P2011−542660)
【出願日】平成21年12月30日(2009.12.30)
【国際出願番号】PCT/CN2009/076262
【国際公開番号】WO2010/078821
【国際公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【出願人】(510200510)重慶科昌科技有限公司 (3)
【Fターム(参考)】