説明

硫黄原子含有環状化合物およびその製造方法並びに架橋性組成物

【課題】 高い密度で硫黄原子を含有し、従って光学材料として有用な、新規な硫黄原子含有環状化合物およびその製造方法、並びに架橋性組成物を提供すること。
【解決手段】 硫黄原子含有環状化合物は、下記一般式(1)で表されることを特徴とする。また、硫黄原子含有環状化合物の製造方法は、特定の環状チオエステルと、特定のスルフィド化合物とを反応させることにより、上記の硫黄原子含有環状化合物を得ることを特徴とする。架橋性組成物は、下記一般式(1)で表される硫黄原子含有環状化合物と、光ラジカル重合開始剤とを含有することを特徴とする。


〔式中、R1 は、CH2 =CHCOO−R2 −またはCH2 =CCH3 COO−R2 −(但し、R2 はメチレン基または炭素数が2〜10のアルキレン基を示す。)で表される基であり、mは1以上の整数であり、nは1以上の整数である。〕

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硫黄原子含有環状化合物およびその製造方法、並びに架橋性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に透光性を有する物質は種々の光学部材の材料として有用である。現在、光学部材の材料としては無機ガラスあるいは有機重合体が用いられているが、特に、高い屈折率を有する透光性物質は、レンズ、光学フィルターなどの材料として有用である。また、或る光学特性を有する物質が膜形成能を有する場合には、基材の表面にコート層を形成するための塗布材料として、またフィルム形成材料として有用であり、更に高い屈折率を有する場合には、これを屈折率の小さいものと組合せて積層フィルムとすることにより、反射防止膜を形成することができる。
更に、当該物質が膜形成能を有しない場合であっても、これを適当なバインダーと組合せることによりフィルムを形成することができ、従って当該物質の有する光学特性を利用して、例えば高屈折率層の形成に利用することができる。
従来、高い屈折率を有する物質としては、硫黄原子を含有する有機化合物が知られており、かかる硫黄原子含有化合物としては、例えば特許文献1に、4,4’−チオビスベンゼンチオールとフェニレンジカルボン酸ハロゲン化物との反応により得られる環状チオアリールエステルが開示され、特許文献2には、芳香族ジチオールと二官能性ハロフォルミルオキシ基を有する芳香族化合物との反応によって得られる環状アリールチオカーボネートが開示され、特許文献3には、上記環状チオアリールエステルを加熱重合して得られる硫黄原子含有重合体が開示され、特許文献4および特許文献5には、特定の環状チオカーボネート化合物を加熱重合して得られる硫黄原子含有重合体が開示されている。
【0003】
【特許文献1】特開平11−322742号公報
【特許文献2】特開2000−239386号公報
【特許文献3】特開2001−261834号公報
【特許文献4】特開2001−316470号公報
【特許文献5】特開2001−316471号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、以上のような事情を背景として、比較的大きな分子量を有する硫黄原子含有環状化合物について種々の研究を行った結果として得られたものである。
本発明の目的は、高い密度で硫黄原子を含有し、従って光学材料として有用な、新規な硫黄原子含有環状化合物およびその製造方法、並びに架橋性組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の硫黄原子含有環状化合物は、下記一般式(1)で表されることを特徴とする。
【0006】
【化1】

【0007】
〔式中、R1 は、CH2 =CHCOO−R2 −またはCH2 =CCH3 COO−R2 −(但し、R2 はメチレン基または炭素数が2〜10のアルキレン基を示す。)で表される基であり、mは1以上の整数であり、nは1以上の整数である。〕
【0008】
本発明の硫黄原子含有環状化合物の製造方法は、下記式(i)で表される環状チオエステルと、下記一般式(2)で表されるスルフィド化合物とを反応させることにより、上記の硫黄原子含有環状化合物を得ることを特徴とする。
【0009】
【化2】

【0010】
【化3】

【0011】
〔式中、R1 は、CH2 =CHCOO−R2 −またはCH2 =CCH3 COO−R2 −(但し、R2 はメチレン基または炭素数が2〜10のアルキレン基を示す。)で表される基である。〕
【0012】
本発明の架橋性組成物は、上記一般式(1)で表される硫黄原子含有環状化合物と、光ラジカル重合開始剤とを含有することを特徴とする。
【0013】
本発明の硫黄原子含有環状化合物は、下記一般式(3)で表されることを特徴とする。
【0014】
【化4】

【0015】
〔式中、R1 は、CH2 =CHCOO−R2 −またはCH2 =CCH3 COO−R2 −(但し、R2 はメチレン基または炭素数が2〜10のアルキレン基を示す。)で表される基であり、R3 は、R4 −O−CH2 −(但し、R4 は炭素数が1〜6のアルキル基または置換若しくは未置換のフェニル基を示す。)で表される基であり、pは1以上の整数であり、qは1以上の整数であり、rは1以上の整数である。〕
【0016】
本発明の硫黄原子含有環状化合物の製造方法は、上記式(i)で表される環状チオエステルと、上記一般式(2)で表されるスルフィド化合物と、下記一般式(4)で表されるスルフィド化合物とを反応させることにより、上記の硫黄原子含有環状化合物を得ることを特徴とする。
【0017】
【化5】

【0018】
〔式中、R3 は、R4 −O−CH2 −(但し、R4 は炭素数が1〜6のアルキル基または置換若しくは未置換のフェニル基を示す。)で表される基である。〕
【0019】
本発明の架橋性組成物は、上記一般式(3)で表される硫黄原子含有環状化合物と、光ラジカル重合開始剤とを含有することを特徴とする。
【0020】
本発明の架橋性組成物は、単官能(メタ)アクリレート化合物よりなる反応希釈剤を含有することが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明の硫黄原子含有環状化合物は、高い密度で硫黄原子を含有すると共に、(メタ)アクリロイル部位を有するものであり、光学材料として有用な、新規な硫黄原子含有環状化合物である。
【0022】
本発明の硫黄原子環状化合物の製造方法によれば、上記の硫黄原子含有環状化合物を得ることができる。
【0023】
本発明の架橋性組成物は、上記の硫黄原子含有環状化合物を含有するものであることから、光学材料として有用であり、また、当該硫黄原子含有環状化合物が、機能性部位である(メタ)アクリロイル部位を有するものであることから、光の作用によって架橋体を形成し、その架橋体には、当該硫黄原子含有環状化合物の有する優れた特性が得られ、その上、一層優れた光学特性が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
本発明に係る硫黄原子含有環状化合物は、上記一般式(1)で表される構造を有するもの(以下、「第1の環状化合物」ともいう。)、または上記一般式(3)で表される構造を有するもの(以下、「第2の環状化合物」という。)である。
【0025】
〔第1の環状化合物〕
本発明に係る第1の環状化合物は、上記一般式(1)で表されるものである。
【0026】
この一般式(1)において、R1 は、CH2 =CHCOO−R2 −またはCH2 =CCH3 COO−R2 −で表される(メタ)メタクロイル基と−R2 −基との複合基である。 ここで、R2 はメチレン基または炭素数が2〜10のアルキレン基であり、その具体例としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基などが挙げられる。
【0027】
また、mは、1以上の整数であるが、好ましくは1〜1000である。
また、nは、1以上の整数であるが、好ましくは1〜1000である。
【0028】
第1の環状化合物は、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)で測定されるポリスチレン換算数平均分子量Mn(以下、「数平均分子量Mn」という。)が、例えば500〜300000であり、同分子量分布Mw/Mnが1.1〜30である。
【0029】
このような第1の環状化合物は、下記の反応式(1) で示されるように、上記式(i)で表される環状チオエステル(以下、「特定の環状チオエステル」ともいう。)と、上記一般式(2)で表されるスルフィド化合物(以下、「第1のスルフィド化合物」という。)とを、通常、触媒の存在下において加熱によって付加反応させることにより、具体的には、特定の環状チオエステルにおけるチオエステル部位が開裂し、1個のまたは2個以上の第1のスルフィド化合物のスルフィド基におけるC−C結合が割り込んで挿入され(挿入反応)、更には、これによって得られる化合物におけるチオエステル部位が開裂・再結合(交換反応)することにより、製造される。
【0030】
【化6】

【0031】
〔式中、R1 は、CH2 =CHCOO−R2 −またはCH2 =CCH3 COO−R2 −(但し、R2 はメチレン基または炭素数が2〜10のアルキレン基を示す。)で表される基であり、mは1以上の整数であり、nは1以上の整数である。〕
【0032】
特定の環状チオエステルは、例えば下記式(ii)で表されるスルホン化合物と、4,4’−ビスベンゼンチオールとを反応させることにより、調製することができる。
ここに、下記式(ii)で表されるスルホン化合物は、例えば、p−トリルスルホンとN−ブロモスクシンイミドとを反応させることにより、2,2−ビス(4−ブロモメチルフェニル)スルホンを合成し、この2,2−ビス(4−ブロモメチルフェニル)スルホンとエチル−2−ヒドロキシベンゾエートとを反応させることにより、2,2−ビス(クロロカルボニルフェノキシメチルフェニル)スルホンを合成し、更に、この2,2−ビス(クロロカルボニルフェノキシメチルフェニル)スルホンと塩化チオニルとを反応させることにより、調製することができる。
【0033】
【化7】

【0034】
第1の環状化合物を製造するために用いられる第1のスルフィド化合物の具体例としては、チイラニルメタクリレート(TMA)、チイラニルアクリレート(TA)などが挙げられる。
【0035】
反応式(1)で示される反応は、適宜の溶媒中において、第四オニウム塩などの触媒を用いることによって行われる。
ここで、溶媒としては、特定の環状チオエステルを溶解し得る極性溶媒を用いることが好ましく、その具体例としては、N−メチルピロリドン、ジクロロベンゼンなどが挙げられ、これらの中では、高い極性を有する点で、N−メチルピロリドンが好ましい。
極性の低い溶媒を用いる場合には、特定の環状チオエステルにおけるチオエステル部位が開裂しにくくなることがある。
また、溶媒中の特定の環状チオエステルの濃度は、0.05mol/L以上であることが好ましく、より好ましくは0.1〜1mol/Lである。この濃度が過小である場合には、特定の環状チオエステルの反応が十分に進行せず、また、得られる第1の環状化合物は分子量が低いものとなりやすい。
【0036】
触媒として用いられる第四オニウム塩の具体例としては、テトラブチルアンモニウムクロリド、テトラブチルアンモニウムブロミド、テトラブチルアンモニウムヨード、テトラブチルアンモニウムアセテート、テトラブチルホスホニウムクロライド、テトラブチルホスホニウムブロミド、セチルトリメチルアンモニウムブロミド、テトラプロピルアンモニウムブロミド、ベンジルトリエチルアンモニウムクロライドなどが挙げられる。また、これらの第四オニウム塩と、18−クラウン−6−エーテル、塩化カリウム、臭化カリウム、沃化カリウム、塩化セシウム、カリウムフェノキシド、ナトリウムフェノキシド、安息香酸カリウムなどの塩類と組み合わせて触媒として用いることもできる。
触媒の使用割合は、例えば反応原料に対して5〜100mol%である。
【0037】
また、反応温度は、90℃未満であることが好ましく、より好ましくは50〜70℃である。反応温度が高過ぎる場合には、反応生成物における(メタ)アクリロイル部位においてラジカル重合反応が生じるおそれがある。
【0038】
特定の環状チオエステルと第1のスルフィド化合物との割合は、特定の環状チオエステル1molに対して第1のスルフィド化合物が2mol以上であることが必要とされ、より具体的には、目的とする第1の環状化合物の種類によって適宜選択される。
例えば特定の環状チオエステル1molに対して2molの第1のスルフィド化合物を用いることにより、一般式(1)におけるnが1である化合物を得ることができ、また、例えば特定の環状チオエステル1molに対して10mol以上の第1のスルフィド化合物を用いることにより、一般式(1)におけるnが5以上である分子量の高い化合物を得ることができる。
また、第1のスルフィド化合物の割合は、特定の環状チオエステル1molに対して30mol未満であることが好ましい。第1のスルフィド化合物の割合が過大である場合には、生成物に不要部が生じるおそれがある。
【0039】
このような第1の環状化合物は、1つの繰り返し単位の主鎖中に6個以上の硫黄原子が含有された安定な化合物であって(メタ)アクリロイル部位を有するものであることから、構造的に嵩高いものでありながら硫黄原子の密度が高く、(メタ)アクリロイル部位よりなる機能性部位を有するため、高い屈折率を有するものである。
【0040】
〔第2の環状化合物〕
本発明に係る第2の環状化合物は、上記一般式(3)で表されるものである。
【0041】
この一般式(3)におけるR1 は、上述した一般式(1)におけるR1 と同様である。
【0042】
また、R3 は、R4 −O−CH2 −で表される基である。
ここで、R4 は炭素数が1〜6のアルキル基または置換若しくは未置換のフェニル基であり、その具体例としては、メトキシメチル基、エトキシメチル基、n−プロポキシメチル基、イソプロポキシメチル基、n−ブトキシメチル基、イソブトキシメチル基、n−ペントキシメチル基、イソペントキシメチル基、n−ヘキソキシメチル基、イソヘキソキシメチル基、置換された若しくは未置換のフェノキシメチル基などが挙げられる。
【0043】
また、pは、1以上の整数であるが、好ましくは1〜1000である。
また、qは、1以上の整数であるが、好ましくは1〜1000である。
また、rは、1以上の整数であるが、好ましくは1〜1000である。
【0044】
第2の環状化合物は、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)で測定されるポリスチレン換算数平均分子量Mnが、例えば500〜300000であり、同分子量分布Mw/Mnが1.1〜30である。
【0045】
このような第2の環状化合物は、下記の反応式(2) で示されるように、上記式(i)で表される特定のチオエステルと、一般式(2)で表される第1のスルフィド化合物と、上記一般式(4)で表されるスルフィド化合物(以下、「第2のスルフィド化合物」ともいう。)とを、通常、触媒の存在下において加熱によって付加反応させることにより、具体的には、特定の環状チオエステルにおけるチオエステル部位が開裂し、1個の第1のスルフィド化合物、および1個のまたは2個以上の第2のスルフィド化合物の各々のスルフィド基におけるC−C結合が割り込んで挿入され(挿入反応)、更には、これによって得られる化合物におけるチオエステル部位が開裂・再結合(交換反応)することにより、得られる。
【0046】
【化8】

【0047】
〔式中、R1 は、CH2 =CHCOO−R2 −またはCH2 =CCH3 COO−R2 −(但し、R2 はメチレン基または炭素数が2〜10のアルキレン基を示す。)で表される基であり、R3 は、R4 −O−CH2 −(但し、R4 は炭素数が1〜6のアルキル基または置換若しくは未置換のフェニル基を示す。)で表される基であり、pは1以上の整数であり、qは1以上の整数であり、rは1以上の整数である。〕
【0048】
第2の環状化合物を製造するために用いられる第1のスルフィド化合物の具体例としては、チイラニルメタクリレート(TMA)、チイラニルアクリレート(TA)などが挙げられる。
【0049】
また、第2の環状化合物を製造するために用いられる第2のスルフィド化合物の具体例としては、R4 がフェニル基であるフェノキシプロピレンスルフィド、R4 がn−ブトキシメチル基であるn−ブトキシプロピレンスルフィドなどが挙げられる。
【0050】
反応式(2)で示される反応は、適宜の溶媒中において、第四オニウム塩などの触媒を用いることによって行われる。
ここで、溶媒としては、特定の環状チオエステルを溶解し得る極性溶媒を用いることが好ましく、その具体例としては、N−メチルピロリドン、ジクロロベンゼンなどを挙げることができ、これらの中では、高い極性を有する点で、N−メチルピロリドンが好ましい。
極性の低い溶媒を用いる場合には、特定の環状チオエステルにおけるチオエステル部位が開裂しにくくなることがある。
また、溶媒中の特定の環状チオエステルの濃度は、0.05mol/L以上であることが好ましく、より好ましくは0.1〜1mol/Lである。この濃度が過小である場合には、特定の環状チオエステルの反応が十分に進行せず、また、得られる第2の環状化合物は分子量が低いものとなりやすい。
【0051】
触媒として用いられる第四オニウム塩の具体例しとては、テトラブチルアンモニウムクロリド、テトラブチルアンモニウムブロミド、テトラブチルアンモニウムヨード、テトラブチルアンモニウムアセテート、テトラブチルホスホニウムクロライド、テトラブチルホスホニウムブロミド、セチルトリメチルアンモニウムブロミド、テトラプロピルアンモニウムブロミド、ベンジルトリエチルアンモニウムクロライドなどが挙げられる。また、これらの第四オニウム塩と、18−クラウン−6−エーテル、塩化カリウム、臭化カリウム、沃化カリウム、塩化セシウム、カリウムフェノキシド、ナトリウムフェノキシド、安息香酸カリウムなどの塩類と組み合わせて触媒として用いることもできる。
触媒の使用割合は、例えば反応原料に対して5〜100mol%である。
【0052】
また、反応温度は、90℃未満であることが好ましく、より好ましくは50〜70℃である。反応温度が高過ぎる場合には、反応生成物における(メタ)アクリロイル部位においてラジカル重合反応が生じるおそれがある。
【0053】
特定の環状チオエステルと第1のスルフィド化合物と第2のスルフィド化合物との割合は、第1のスルフィド化合物の割合が特定の環状チオエステル1molに対して2mol以上であることが必要とされ、また、第2のスルフィド化合物の割合が特定の環状チオエステル1molに対して2mol以上であることが必要とされ、より具体的には、目的とする第2の環状化合物の種類によって適宜選択される。
例えば特定の環状チオエステル1molに対して2molの第1のスルフィド化合物および2molの第2のスルフィド化合物を用いることにより、一般式(3)におけるpおよびqが1である化合物を得ることができ、また、例えば特定の環状チオエステル1molに対して10mol以上の第1のスルフィド化合物および10mol以上の第2のスルフィド化合物を用いることにより、一般式(3)におけるpおよびqが5以上である分子量の高い化合物を得ることができる。
【0054】
このような第2の環状化合物は、1つの繰り返し単位の主鎖中に8個以上の硫黄原子が含有された安定な化合物であって(メタ)アクリロイル部位を有するものであることから、構造的に嵩高いものでありながら硫黄原子の密度が高く、(メタ)アクリロイル部位よりなる機能性部位を有するため、高い屈折率を有するものである。
【0055】
以上の本発明に係る第1の環状化合物および第2の環状化合物(以下、これらをまとめて「特定の環状化合物」ともいう。)は、光ラジカル重合開始剤と組み合わせることにより架橋性組成物とされる。
この本発明に係る特定の環状化合物および光ラジカル重合開始剤を含有する架橋性組成物(以下、「特定の架橋性組成物」ともいう。)は、光の作用によって発生したラジカルによって架橋されるものであり、得られる架橋体は、当該特定の架橋性組成物を構成する特定の環状化合物の有する優れた特性を有し、しかも架橋構造が形成されてなるものであることから、一層優れた光学特性(具体的には高屈折率)が得られることとなる。
【0056】
特定の架橋性組成物においては、特定の環状化合物の含有割合は、組成物全体に対して5〜99.9質量%であることが好ましい。
【0057】
光ラジカル重合開始剤としては、公知の光ラジカル重合開始剤を用いることができ、例えば下記式(iii)で表される化合物などが挙げられる。
光ラジカル重合開始剤の含有割合は、組成物全体に対して0.1〜20質量%であることが好ましく、0.5〜10質量%であることがより好ましい。
【0058】
【化9】

【0059】
また、特定の架橋性組成物は、例えば増感剤などの任意の添加剤が含有されているものであってもよい。
増感剤としては、例えば2−エチルアントラキノンなどを用いることができ、また、増感剤の含有割合は、組成物全体に対して0.1〜20質量%であることが好ましい。
【0060】
更に、特定の環状化合物として第2の環状化合物を含有する特定の架橋性組成物には、例えば2−ヒドロキシエチルメタクリレートなどの単官能(メタ)アクリレート化合物よりなる反応希釈剤が含有されていることが好ましい。反応希釈剤が含有されていることにより、高い架橋率が得られる。
反応希釈剤の含有割合は、組成物全体に対して3〜95質量%であることが好ましい。
【実施例】
【0061】
以下、本発明の具体的な実施例について説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0062】
〔特定の環状チオエステルの調製〕
(1)2,2−ビス(4−ブロモメチルフェニル)スルホンの調製:
p−トリルスルホン7.39g(30mmol)、N−ブロモスクシンイミド11.8g(66mmol)、および過酸化ベンゾイル0.36g(1.5mmol)を、クロロホルム65mLに加え、還流下で48時間反応させた。反応が終了した後、0.1mol/L硫酸鉄水溶液100mLで2回、蒸留水で2回洗浄を行い、有機相を抽出し、無水硫酸マグネシウムを用いて乾燥処理した後、無水硫酸マグネシウムをろ別し、更にクロロホルムを減圧留去することにより、黄白色固体を得た。これをメタノールを用いて再結晶することにより、収率46%で白色針状結晶5.98gを得た。
IR分析および 1H−NMR分析の結果から、得られた生成物は、下記式(a)に示す化合物[2,2−ビス(4−ブロモメチルフェニル)スルホン(以下、「Bis−BMPS」ともいう。)]であると同定された。また、生成物の融点は136.6〜137.0℃であった。
【0063】
【化10】

【0064】
得られた生成物のIR分析および 1H−NMR分析の結果を以下に示す。
○IR(KRS film)(cm-1):
3019(νC−H aromatic),
2960(νC−H aliphatic ),
1595,1490(νC=C aromatic),
1306(νO=S=O),
557(νC−Br)
1H NMR(500MHz,CDCl3 ,TMS)δ(ppm):
4.49(s,1.0H,Hc ),
7.36(d,4.0H,Hb ),
7.41(d,4.0Ha
【0065】
(2)2,2−ビス(2−カルボキシフェノキシメチルフェニル)スルホンの調製:
50mLナスフラスコ内に、エチル−2−ヒドロキシベンゾエート2.66g(16mmol)、塩基として85%水酸化カリウム水溶液を−OH当量で1.09g(16mmol)、および触媒としてテトラブチルアンモニウムブロミド(以下、「TBAB」ともいう。)0.26g(5mol%)を入れ、更にN−メチル−2−ピロリドン(以下、「NMP」という。)5mLを加え、室温で3時間攪拌した。その後、Bis−BMPS3.23g(8mmol)を加え、室温で3時間攪拌した後、新たに過剰の水酸化カリウム水溶液およびテトラヒドロフラン(以下、「THF」ともいう。)を加え、70℃で3時間攪拌して反応させた。反応が終了した後、蒸留水およびクロロホルムを加えて2回洗浄し、水相に塩酸を加えて酸析することにより、収率92%で黄白色固体3.8gを得た。
IR分析、 1H−NMR分析および13C−NMR分析の結果から、得られた生成物は、下記式(b−1)または下記式(b−2)に示す化合物[2,2−ビス(2−カルボキシフェノキシメチルフェニル)スルホン(以下、「Bis−CPMS」という。)]であると同定された。また、生成物の融点は、178.1〜178.7℃であった。
【0066】
【化11】

【0067】
得られた生成物のIR分析、 1H−NMR分析および13C−NMR分析の結果を以下に示す。
○IR(KRS film)(cm-1):
3100−2100(ν−OH carboxylate ),
3019(νC−H aromatic),
2938(νC−H aliphtic),
1696(νC=O carboxylic acid),
1600,1578(νC=C aromatic),
1244(νC−O−C ether )
1H NMR(500MHz,DMSO−d6 ,TMS)δ(ppm):
5.31(s,4.0H,Hc ),
6.99(dd,2H.Hf ),
7.07(d,2H,Hd ),
7.43(dd,2H,He ),
7.56(d,2H,Hg ),
7.71(d,4H,Hb ),
7.98(d,4H,Ha
13C NMR(125MHz,DMSO−d6 ,TMS)δ(ppm):
68.7(Ca ),
113.9,120.7,121.7,127.6,127.9,131.0,133.1,140.3,143.4,156.8(aromatic C),
167.2(Cb
【0068】
(3)2,2−ビス(クロロカルボニルフェノキシメチルフェニル)スルホンの調製:
100mLナスフラスコ内に、Bis−CPMS3.11g(6mmol)と、塩化チオニル3.00g(24mmol)と、1滴のジメチルホルムアミドとを入れ、60℃で2時間攪拌し、その後、80℃の加熱還流下に6時間攪拌して反応させた。反応が終了した後、塩化チオニルを減圧留去することにより、黄白色固体得た。これをn−ヘキサンを用いて再結晶することにより、収率70%で白色結晶2.3gを得た。
IR分析、 1H−NMR分析および13C−NMR分析の結果から、得られた生成物は、下記式(c−1)または下記式(c−2)に示すスルホン化合物[2,2−ビス(クロロカルボニルフェノキシメチルフェニル)スルホン(以下、「Bis−CCPMS」ともいう。)]であると同定された。また、生成物の融点は102.4〜103.1℃であった。
【0069】
【化12】

【0070】
得られた生成物のIR分析、 1H−NMR分析および13C−NMR分析の結果を以下に示す。
○IR(KRS film)(cm-1):
3019(νC−H aromatic),
2938(νC−H aliphtic),
1632(νC=O benzoyl chloride),
1600,1578(νC=C aromatic),
1244(νC−O−C ether )
1H NMR(500MHz,CDCl3 ,TMS)δ(ppm):
5.31(s,4.0H,Ha ),
6.98〜7.52(m,16.0H,aromatic H)
13C NMR(125MHz,CDCl3 ,TMS)δ(ppm):
68.7(Ca ),
113.9,120.7,121.8,127.4,127.6,130.9,133.1,140.3,143.4,156.8(aromatic C),
161.2(Cb
【0071】
(4)環状チオエステルの調整:
三角フラスコ内にBis−CCPMS0.92g(1.6mmol)を入れ、溶媒としてクロロホルム11mLを加えて溶解した。一方、別の三角フラスコ内に4,4’−チオビスベンゼンチオール(以下、「TBBT」という。)0.41g(1.6mmol)を入れ、溶媒としてクロロホルム11mLを加えて溶解した。次いで、2つの溶液を、トリエチルアミン0.31g(3.0mmol)を溶解したクロロホルム溶液300mL中に、室温で10mL/hの速度で滴下し、その後、更に1時間攪拌して反応させた。反応が終了した後、0.1mol/Lクエン酸水溶液で2回、炭酸ナトリウム水溶液で2回、更に蒸留水で2回洗浄処理した。次いで、無水硫酸マグネシウムを用いて乾燥処理した後、無水硫酸マグネシウムをろ別し、更にクロロホルムを減圧留去することにより、収率89%で黄白色固体1.03gを得た。
得られた生成物をTHFで2回洗浄処理し、更にクロロホルムを用いて再結晶することにより、収率32%で白色固体0.35gを得た。
IR分析、 1H−NMR分析、13C−NMR分析、質量分析および元素分析の結果から、得られた生成物(白色固体)は、下記式(d−1)および(d−2)に示す特定の環状チオエステル(以下、「環状チオエステル(1)」ともいう。)であると同定された。また、生成物の融点は、149.7〜150.3℃であった。
【0072】
【化13】

【0073】
得られた生成物のIR分析、 1H−NMR分析、13C−NMR分析、質量分析および元素分析の結果を以下に示す。
○IR(KRS film)(cm-1):
3019(νC−H aromatic),
3016(νC−H aliphatic ),
1681(νC=O thioester ),
1595,1576(νC=C aromatic),
1258(νC−O−C ether ),
756(C−S−C sulfide )
1H NMR(500MHz,CDCl3 ,TMS)δ(ppm):
5.40(s,4.0H,Hc ),
7.26(dd,2.0H,Hf ),
7.47(d,2.0H,Hd ),
7.59(d,4.0H,Hh ),
7.65(d,4.0H,Hi ),
7.73(dd,2.0H,He ),
7.87(d,4.0H,Hb ),
7.94(d,2.0H,Hg ),
8.15(d,4.0H,Ha
13 C NMR(125MHz,CDCl3 ,TMS)δ(ppm):
68.9(Ca ),
114.6,121.8,127.6,128.1,128.2,128.5,129.9,132.6,135.1,136.6,136.9,137.9,141.6,156.3(aromatic C),
188.8(Cb
○質量分析(MALDI−TOF MS):
実測値(m/z)754.93[M+Na]
計算値(m/z)755.92[M+Na]
(matrix:α-Cyano-4-hydroxycinnamic acid )
○元素分析(MALDI−TOF MS):
実測値(%)C:65.37,H:3.64
計算値(%)C:65.55,H:3.85
【0074】
〔線状チオエステルの調製〕
TBBT3.8g(15mmol)、および塩基としてトリエチルアミン3.0g(30mmol)を、クロロホルム100mLに加え、窒素雰囲気下において撹拌した。その後、o−アニソールクロライド5.1g(30 mmol)を30分かけて滴下した後、1時間撹拌して反応させた。反応が終了した後、0.1mol/Lクエン酸水溶液で2回、炭酸水素ナトリウム水溶液で2回、更に蒸留水で2回洗浄を行い、有機相を抽出し、無水硫酸マグネシウムを用いて乾燥処理した後、無水硫酸マグネシウムをろ別し、更にクロロホルムを減圧留去することにより、収率95%で黄白色固体7.4gを得た。これをクロロホルムとn−へキサンとの混合溶媒を用いて再結晶することにより、収率71%で生成物5.1gを得た。
IR分析、 1H−NMR分析および13C−NMR分析の結果から、得られた生成物は、下記式(e−1)または下記式(e−2)に示す化合物(以下、「線状チオエステル(1)」ともいう。)であると同定された。また、生成物の融点は、141.9〜142.6℃であった。
【0075】
【化14】

【0076】
得られた生成物のIR分析、 1H−NMR分析および13C−NMR分析の結果を以下に示す。
○IR(KRS film)(cm-1):
3072(νC−H aromatic),
3010(νC−H aliphatic ),
1697(νC=O thioester ),
1595,1577(νC=C aromatic),
1284(νC−O−C ether ),
758(C−S−C sulfide )
1H NMR(500MHz,CDCl3 ,TMS)δ(ppm):
3.95(s,6.0H,Ha ),
7.01(d,2.0H,Hb ),
7.02(dd,2.0 H,Hd ),
7.41(d,4.0H,J=2.8Hz,Hf ),
7.46(d,4.0H,J=2.8Hz,Hg ),
7.50(dd,2.0H,Hc ),
7.85 (d,4.0H,He
13C NMR(125MHz,CDCl3 ,TMS)δ(ppm):
56.77(Ca ),
113.04,121.50,127.02,128.81,130.89,132.26,135.09,136.56,137.84,159.09,(aromatic C), 161.2(Cb
【0077】
〈実施例1(第1の環状化合物の合成)〉
湿度10%以下のドライバック中において、アンプル管に、触媒としてテトラ−n−ブチルアンモニウムクロリド(以下、「TBAC」ともいう。)0.027g(0.10mmol)を入れ、更に回転子を入れ、40℃で5時間撹拌することによって減圧乾燥処理した。次いで、アンプル管に、チイラニルメタクリレート(以下、「TMA」ともいう。)0.016g(0.10mmol)、環状チオエステル(1)0.037g(0.05mmol)およびNMP1.0mL、更に重合禁止剤としてヒドロキノンを少量入れ、二方コックを取り付けた後、当該アンプル管をドライバックから取り出した。次いで、アンプル管内の試料に対して、液体窒素を用いて凍結・脱気を行い、その後、室温で解凍し、アンプル管内を高純度乾燥窒素により置換した。この操作を3回繰り返し、更に30分間凍結・脱気した後、アンプル管を封管した。次いで、アンプル管内の試料を室温で解凍し、反応温度が70℃、反応時間が96時間の条件で反応を行った。反応が終了した後、反応溶液をメタノールに注ぎ、メタノール不溶物を回収してクロロホルムに溶解し、貧溶媒としてメタノールを用いて再沈精製を行い、室温で24時間減圧乾燥処理することにより、収率91%で白色固体0.048gを得た。
得られた生成物について、SEC分析、IR分析および 1H−NMR分析を行ったところ、下記式(f)に示す第1の環状化合物(以下、「環状化合物(1−1)」ともいう。)であって、数平均分子量Mnが2.0×103 であり、分子量分布Mw/Mnが2.8であることが確認された。また、環状チオエステル(1)に対するTMAの挿入反応率は99%以上であった。
【0078】
【化15】

【0079】
得られた生成物の1 H−NMR分析の結果を以下に示し、IRスペクトル図を図1に示す。
図1においては、得られた生成物のIRスペクトル図を(b)として示すと共に、環状チオエステル(1)のIRスペクトル図を(a)として示した。
1H NMR(500MHz,CDCl3 ,TMS)δ(ppm):
1.92(s,6.0H,He ),
3.08−3.34(m,4.0H,Hd ),
4.37−4.46(m,4.0H,Hc ),
4.44(s,2.0H,Hb ),
5.22(s,4.0H,Ha ),
5.57(s,2.0H,Hf ),
6.11(s,2.0H,Hf'),
6.93〜7.98(m,24.0H,aromatic H)
【0080】
〈実施例2〜6(第1の環状化合物の合成)〉
溶媒の使用量を変更し、溶媒中の環状チオエステル(1)の濃度(以下、「原料濃度」ともいう。)、および反応時間を下記表1に従ったこと以外は実施例1と同様の操作を行った。
得られた生成物の各々について、SEC分析、IR分析および 1H−NMR分析を行ったところ、各々、環状化合物(1−1)と同様の構造を有する第1の環状化合物であることが確認された。
収率、TMAの挿入反応率、得られた第1の環状化合物における、数平均分子量Mnおよび分子量分布Mw/Mnを下記表1に示す。
【0081】
【表1】

【0082】
そして、実施例1〜実施例6の結果から、以下のことが理解される。
(1)反応時間が長いときには、TMAの挿入反応率が高くなる。
(2)原料濃度が低いとき(具体的には、原料濃度条件0.025mol/Lのとき)には、反応を定量的に進行させることが困難となる。
【0083】
〈実施例7(第1の環状化合物の合成)〉
TMAの使用量を0.160g(1.00mmol)に変更したこと以外は実施例1と同様の操作を行うことにより、収率90%で生成物0.17gを得た。
得られた生成物について、SEC分析、IR分析および 1H−NMR分析を行ったところ、下記式(g)に示す第1の環状化合物(以下、「環状化合物(1−7)」ともいう。)であって、数平均分子量Mnが6.6×103 であり、分子量分布Mw/Mnが10.8であることが確認された。また、環状チオエステル(1)に対するTMAの挿入反応率は99%以上であった。
【0084】
【化16】

【0085】
得られた生成物のIR分析および 1H−NMR分析の結果を以下に示す。
○IR(KRS film)(cm-1):
3024(νC−H aromatic),
2925(νC−H aliphatic ),
1720(νC=O ester ),
1669(νC=O S-Alkyl thioester ),
1637(νC=C vinyl ),
1597,1577(νC=C aromatic),
1294(νC−O−C ether ),
758(C−S−C sulfide )
1H NMR(500MHz,CDCl3 ,TMS)δ(ppm):
1.92(s,60.0H,He ),
3.08−3.34(m,40.0H,Hd ),
4.37−4.46(m,40.0H,Hc ),
4.44(s,20.0H,Hb ),
5.22(s,4.0H,Ha ),
5.57(s,20.0H,Hf ),
6.11(s,20.0H,Hf'),
6.93〜7.98(m,24.0H,aromatic H)
【0086】
〈実施例8(第1の環状化合物の合成)〉
TMAの使用量を0.080g(0.5mmol)に変更したこと以外は実施例1と同様の操作を行うことにより、収率93%で生成物を得た。
得られた生成物について、SEC分析、IR分析および 1H−NMR分析を行ったところ、一般式(1)においてR1 がCH2 =CCH3 COO−CH2 −であってnが5を示す第1の環状化合物(以下、「環状化合物(1−8)」ともいいう。)であって、数平均分子量Mnが3.3×103 であり、分子量分布Mw/Mnが8.3であることが確認された。また、環状チオエステル(1)に対するTMAの挿入反応率は99%以上であった。
【0087】
〈参考例1〉
TMAの使用量を0.240g(1.5mmol)に変更したこと以外は実施例1と同様の操作を行ったところ、生成物に不要部が確認された。
【0088】
そして、実施例1、および実施例7、実施例8および参考例1の結果から、以下のことが理解される。
(1)特定の環状チオエステルに対するTMAのモル比が2〜20であるときには、反応がTMAの使用量に対して定量的に進行する。
(2)特定の環状チオエステルに対するTMAのモル比が30以上と大きいときには、生成物に不溶部が生じる。
【0089】
ここに、実施例1、実施例7および実施例8において得られた第1の環状化合物の各々について、DSC分析によってガラス転移温度Tgを測定したところ、実施例1に係る環状化合物(1−1)のガラス転移温度Tgは75.6℃であったが、実施例7に係る環状化合物(1−7)および実施例8に係る環状化合物(1−8)においては明確なガラス転移温度を確認することができなかった。
また、実施例1、実施例7および実施例8において得られた第1の環状化合物の各々について、THFをキャスト溶媒として用いることによって第1の環状化合物よりなる環状化合物液を調製し、この環状化合物液をシリコンウエハ上にスピンコート法によって塗布し、塗膜を室温で24時間減圧乾燥処理することによって第1の環状化合物製のフィルムを得、このフィルムの波長632.8nmの光の屈折率(nD )をエリプソメーターにより測定した。結果を表2に示す。
表2において、環状化合物(1−1)製のフィルムを「フィルム(1−A)」とし、環状化合物(1−8)製のフィルムを「フィルム(1−B)」とし、環状化合物(1−7)製のフィルムを「フィルム(1−C)」とした。また、表2において、「原料使用量割合」とは、フィルムの材料である第1の環状化合物を得るために反応に供した原料の使用量のモルの比、「TMAの使用量:環状チオエステル(1)の使用量」を示す。
【0090】
【表2】

【0091】
そして、表2の結果から、硫黄原子の含有割合が大きくなるに従って屈折率が高くなる傾向にある、ということが理解される。
【0092】
〈実施例9〜実施例11(架橋性組成物の合成)〉
実施例1、実施例7および実施例8において得られた第1の環状化合物の各々を基材として用い、第1の環状化合物0.200g(60質量%)と、光ラジカル重合開始剤として上記式(iii)で表される化合物0.009g(3質量%)と、増感剤として2−エチルアントラキノン0.003g(1質量%)とを混合した系に少量(具体的には2mL)のTHFを加えることにより、特定の架橋性組成物液を調製し、得られた架橋性組成物液を臭化カリウム製の基板上に塗布し、塗膜を乾燥処理することにより、フィルムを作製した。
得られたフィルムの各々に対して、光源として消費電力250Wの高圧水銀灯を用い、波長254nmの光を9mW/cm2 の条件で20分間照射し、IRスペクトルにおけるメタクリロイル基のνC=Cに起因する1637cm-1の転化率を測定することにより架橋率を確認した。各々、実施例9に係るフィルム(環状化合物(1−1)を含有する架橋性組成物液よりなるフィルム)の最終的な転化率は8%、実施例10に係るフィルム(環状化合物(1−8)を含有する架橋性組成物液よりなるフィルム)の最終的な転化率は24%、実施例11に係るフィルム(環状化合物(1−7)を含有する架橋性組成物液よりなるフィルム)の最終的な転化率は32%であった。測定結果を図2に示す。
図2において、曲線(イ)は環状化合物(1−1)を含有する架橋性組成物液よりなるフィルムの測定値を示し、曲線(ロ)は環状化合物(1−8)を含有する架橋性組成物液よりなるフィルムの測定値を示し、曲線(ハ)は環状化合物(1−7)を含有する架橋性組成物液よりなるフィルムの測定値を示す。
【0093】
そして、実施例9〜実施例11の結果から、以下のことが理解される。
(1)特定の架橋性組成物を構成する第1の環状化合物が一般式(1)におけるnの値が大きいものになるに従って架橋率が高くなる傾向にある。
(2)特定の架橋性組成物を構成する第1の環状化合物が一般式(1)におけるnの値が大きいものになるに従って最終的な架橋率が高くなる傾向にある。
【0094】
〈実施例12(第2の環状化合物の合成)〉
湿度10%以下のドライバック中において、アンプル管に、触媒としてTBAC0.027g(0.10mmol)を入れ、更に回転子を入れ、40℃で5時間撹拌することによって減圧乾燥処理した。次いで、アンプル管に、TMA0.016g(0.10mmol)、環状チオエステル(1)0.037g(0.05mmol)、フェノキシプロピレンスルフィド(以下、「PPS」ともいう。)0.40g(2.5mmol)およびNMP1.0mL(0.05mol/L)、更に重合禁止剤としてヒドロキノンを少量入れ、二方コックを取り付けた後、当該アンプル管をドライバックから取り出した。次いで、アンプル管内の試料に対して、液体窒素を用いて凍結・脱気を行い、その後、室温で解凍し、アンプル管内を高純度乾燥窒素により置換した。この操作を3回繰り返し、更に30分間凍結・脱気した後、アンプル管を封管した。次いで、アンプル管内の試料を室温で解凍し、反応温度が70℃、反応時間が96時間の条件で反応を行った。反応が終了した後、反応溶液をメタノールに注ぎ、メタノール不溶物を回収してクロロホルムに溶解し、貧溶媒としてメタノールを用いて再沈精製を行い、減圧乾燥処理することによって無色透明な粘性固体を得、更に、室温で24時間減圧乾燥処理することにより、収率94%で生成物0.43gを得た。
得られた生成物について、SEC分析、IR分析および 1H−NMR分析を行ったところ、下記式(h)で示す第2の環状化合物(以下、「環状化合物(2−1)」ともいう。)であって数平均分子量Mnが14.2×103 であり、分子量分布Mw/Mnが9.0であることが確認された。また、環状チオエステル(1)に対するTMAおよびPPSの挿入反応率は99%以であった。
【0095】
【化17】

【0096】
得られた化合物のIR分析および 1H−NMR分析の結果を以下に示し、また、 1H−NMRスペクトル図を図3に示す。
○IR(KRS film)(cm-1):
3039(νC−H aromatic),
2925(νC−H aliphatic ),
1716(νC=O ester ),
1669(νC=O S-Alkyl thioester ),
1637(νC=C vinyl ),
1598,1587(νC=C aromatic),
1230(νC−O−C ether ),
754(C−S−C sulfide )
1H NMR(500MHz,CDCl3 ,TMS)δ(ppm):
1.90(s,6.0H,He ),
3.00−3.15(m,150.0H,Hb ,Hd ),
4.06−4.12(m,100.0H,Hg ),
4.34(s,2.0H,Hb'),
4.43(d,4.0H,Hc ),
5.13(s,4.0H,Ha ),
5.48(s,2.0H,Hf ),
6.07(s,2.0H,Hf'),
6.70〜7.85(m,274.0H,aromatic H)
【0097】
〈実施例13〜16(第2の環状化合物の合成)〉
PPSの使用量を下記表3に従って変更したこと以外は実施例12と同様の操作を行った。
得られた生成物の各々について、SEC分析、IR分析および 1H−NMR分析を行ったところ、各々、実施例13に係る生成物は一般式(3)においてR1 がCH2 =CCH3 COO−CH2 −であってqが1であり、R4 がメチレン基であってpが5を示す第2の環状化合物(以下、「環状化合物(2−2)」ともいう。)であり、実施例14に係る生成物は一般式(3)においてR1 がCH2 =CCH3 COO−CH2 −であってqが1であり、R4 がメチレン基であってpが10を示す第2の環状化合物(以下、「環状化合物(2−3)」ともいう。)であり、実施例15に係る生成物は一般式(3)においてR1 がCH2 =CCH3 COO−CH2 −であってqが1であり、R4 がメチレン基であってpが15を示す第2の環状化合物(以下、「環状化合物(2−4)」ともいう。)であり、実施例16に係る生成物は一般式(3)においてR1 がCH2 =CCH3 COO−CH2 −であってqが1であり、R4 がメチレン基であってpが20を示す第2の環状化合物(以下、「環状化合物(2−5)」ともいう。)であることが確認された。
収率、TMAおよびPPSの挿入反応率、得られた第2の環状化合物における、数平均分子量Mnおよび分子量分布Mw/Mnを下記表3に示す。
【0098】
【表3】

【0099】
そして、実施例12〜実施例16の結果から、反応はPPSの使用量に対して定量的に進行する、ということが理解される。
【0100】
ここに、実施例12〜実施例16において得られた第2の環状化合物の各々について、DSC分析によってガラス転移温度を測定した。結果を表4に示すと共に、第2の環状化合物を得るために反応に供した、環状チオエステル(1)に対するPPSのモル比とガラス転移温度との関係を示すグラフを図4に示す。
表4においては、実施例1に係る第1の環状化合物(環状化合物(1−1))のガラス転移温度の測定結果を併せて共に示した。また、表4において、「原料使用量割合」とは、第2の環状化合物を得るために反応に供した原料の使用量のモル比、「TMAの使用量:PPSの使用量:環状チオエステル(1)の使用量」を示す。
【0101】
【表4】

【0102】
そして、表4および図4の結果から、PPSの使用量が増加するに従ってガラス転移温度が低くなる傾向にある、ということが理解される。
【0103】
また、実施例12〜実施例16において得られた第2の環状化合物の各々について、THFをキャスト溶媒として用いることによって第2の環状化合物よりなる環状化合物溶液を調製し、この環状化合物液をシリコンウエハ上にスピンコート法によって塗布し、塗膜を室温で24時間減圧乾燥処理することによって第2の環状化合物製のフィルムを得、このフィルムの波長632.8nmの光の屈折率(nD )をエリプソメーターにより測定した。結果を表5に示すと共に、フィルムの材料である第2の環状化合物を得るために反応に供した環状チオエステル(1)に対するPPSのモル比と屈折率との関係を示すグラフを図5に示す。
表5において、環状化合物(2−2)製のフィルムを「フィルム(2−A)」とし、環状化合物(2−3)製のフィルムを「フィルム(2−B)」とし、環状化合物(2−4)製のフィルムを「フィルム(2−C)」とし、環状化合物(2−5)製のフィルムを「フィルム(2−D)」とし、環状化合物(2−1)製のフィルムを「フィルム(2−E)」とした。また、表5において、「原料使用量割合」とは、フィルムの材料である第2の環状化合物を得るために反応に供した原料の使用量のモル比、「TMAの使用量:PPSの使用量:環状チオエステル(1)の使用量」を示す。
【0104】
【表5】

【0105】
そして、表5および図5の結果から、以下のことが理解される。
(1)特定の環状チオエステルに対するPPSのモル比が30未満であるときには、硫黄原子の含有割合が大きくなるに従って屈折率が高くなる傾向にある。
(2)特定の環状チオエステルに対するPPSのモル比が30以上であるときには、硫黄原子の含有割合が大きくなるに従って屈折率はほぼ一定となる。
【0106】
〈実施例17および実施例18(架橋性組成物の合成)〉
実施例12および実施例14において得られた第2の環状化合物の各々を基材として用い、第2の環状化合物0.200g(60質量%)と、光ラジカル重合開始剤として上記式(iii)で表される化合物0.009g(3質量%)と、増感剤として2−エチルアントラキノン0.003g(1質量%)とを混合した系に少量(具体的には2mL)のTHFを加えることにより、特定の架橋性組成物液を調製し、得られた架橋性組成物液を臭化カリウム製の基板上に塗布し、塗膜を乾燥処理することにより、フィルムを作製した。このフィルムについて、厚みを測定すると共に、エリプソメーターにより波長632.8nmの光の屈折率(nD )を測定した。
次いで、得られたフィルムの各々に対して、光源として消費電力250Wの高圧水銀灯を用い、波長254nmの光を9mW/cm2 の条件で20分間照射し、IRスペクトルにおけるメタクリロイル基のνC=Cに起因する1637cm-1の転化率を測定した。実施例17に係るフィルム(環状化合物(2−1)を含有する架橋性組成物液よりなるフィルム)の最終的な転化率は24%、実施例18に係るフィルム(環状化合物(2−3)を含有する架橋性組成物液よりなるフィルム)の最終的な転化率は24%であった。測定結果を図6に示す。
図6において、曲線(イ)は環状化合物(2−1)を含有する架橋性組成物液よりなるフィルムの測定値を示し、曲線(ロ)は環状化合物(2−3)を含有する架橋性組成物液よりなるフィルムの測定値を示し、また、実施例9において測定した、環状化合物(1−1)を含有する架橋性組成物液よりなるフィルムの測定値を曲線(ハ)として共に示した。
【0107】
また、20分間の光照射後フィルムの厚みおよび屈折率を確認したところ、環状化合物(2−1)を含有する架橋性組成物液よりなるフィルムは、光照射処理前に比して、屈折率が102.7%大きくなり、厚みが92.9%薄くなり、また、環状化合物(2−3)を含有する架橋性組成物液よりなるフィルムは、光照射処理前に比して、屈折率が103.5%大きくなり、厚みが89.4%薄くなっていた。
【0108】
〈実施例19および実施例20(架橋性組成物の合成)〉
実施例12および実施例14において得られた第2の環状化合物の各々を基材として用い、第2の環状化合物0.200g(60質量%)と、光ラジカル重合開始剤として上記式(iii)で表される化合物0.009g(3質量%)と、増感剤として2−エチルアントラキノン0.003g(1質量%)と、反応希釈剤として2−ヒドロキシメチルメタクリレート0.130g(20質量%)とを混合した系に少量(具体的には2mL)のTHFを加えることにより、特定の架橋性組成物液を調製し、得られた架橋性組成物液を臭化カリウム製の基板上に塗布し、塗膜を乾燥処理することにより、フィルムを作製した。
得られたフィルムの各々に対して、光源として消費電力250Wの高圧水銀灯を用い、波長254nmの光を9mW/cm2 の条件で20分間照射し、IRスペクトルにおけるメタクリロイル基のνC=Cに起因する1637cm-1の転化率を測定することにより架橋率を確認した。結果を図7に示す。
図7において、曲線(イ)は実施例19に係るフィルム(環状化合物(2−1)を含有する架橋性組成物液よりなるフィルム)の測定値を示し、曲線(ロ)は実施例20に係るフィルム(環状化合物(2−3)を含有する架橋性組成物液よりなるフィルム)の測定値を示す。
【0109】
そして、実施例17〜実施例20の結果から、以下のことが理解される。
(1)特定の架橋性組成物を構成する第2の環状化合物が一般式(3)におけるqの値が大きいものになるに従って架橋率が高くなる傾向にある。
(2)特定の架橋性組成物を構成する第2の環状化合物が一般式(3)におけるqの値が大きいものになるに従って最終的な架橋率が高くなる傾向にある。
(3)特性の架橋性組成物よりなるフィルムは、光照射処理することによって屈折率が高くなる傾向にある。
(4)特性の架橋性組成物よりなるフィルムは、光照射処理することによって厚みが薄くなる傾向にある。
(5)反応希釈剤を用いることにより、より一層高い架橋率が得られる。
【0110】
以下に、特定の環状化合物を得るための反応系における反応温度を決定するために行った実験例1〜実験例3を示す。
【0111】
〈実験例1〉
湿度10%以下のドライバック中において、アンプル管に、触媒としてTBAC0.027g(0.10mmol)を入れ、更に回転子を入れ、40℃で5時間撹拌することによって減圧乾燥処理した。次いで、アンプル管に、TMA0.016g(0.10mmol)、線状チオエステル(1)0.024g(0.05mmol)およびNMP0.5mL(0.10mol/L)、更に重合禁止剤としてヒドロキノンを少量入れ、二方コックを取り付けた後、当該アンプル管をドライバックから取り出した。次いで、アンプル管内の試料に対して、液体窒素を用いて凍結・脱気を行い、その後、室温で解凍し、アンプル管内を高純度乾燥窒素により置換した。この操作を3回繰り返し、更に30分間凍結・脱気した後、アンプル管を封管した。次いで、アンプル管内の試料を室温で解凍し、反応温度が70℃、反応時間が24時間の条件で反応を行った。反応が終了した後、反応溶液をメタノールに注ぎ、メタノール不溶物を回収してクロロホルムに溶解し、貧溶媒としてメタノールを用いて再沈精製を行い、室温で24時間減圧乾燥処理することにより、収率96%で白色固体0.39gを得た。
得られた生成物について、SEC分析、IR分析および 1H−NMR分析を行ったところ、下記式(ア)で示す化合物(以下、「比較用線状化合物(1)」ともいう。)であって数平均分子量Mnが3.1×103 であり、分子量分布Mw/Mnが1.5であることが確認された。また、線状チオエステル(1)に対するTMAの挿入反応率は99%であった。
【0112】
【化18】

【0113】
得られた生成物の 1H−NMR分析の結果を以下に示し、IRスペクトル図を図8に示す。
図8においては、得られた生成物のIRスペクトル図を(b)として示すと共に、線状チオエステル(1)のIRスペクトル図を(a)として示した。
1H NMR(500MHz,CDCl3 ,TMS)δ(ppm):
1.93(s,6.0H,He ),
3.38−3.27(m,4.0H,Hc ),
3.91(s,6.0H,Ha ),
4.41−4.08(m,4.0H,Hd ),
4.59(s,2.0H,Hb ),
5.58(s,2.0H,Hf ),
6.10(s,2.0H,Hf'),
7.75〜6.96(m,16.0H,aromatic H)
【0114】
〈実験例2〜3〉
反応時間を下記表6に従ったこと以外は実験例1と同様の操作を行った。
得られた生成物の各々について、SEC分析、IR分析および 1H−NMR分析を行ったところ、各々、比較用線状化合物(1)と同様の構造を有する線状化合物であることが確認された。
収率、TMAの挿入反応率、得られた線状化合物における、数平均分子量Mnおよび分子量分布Mw/Mnを下記表6に示す。
【0115】
【表6】

【0116】
以上の実験例1〜実験例3の結果から、反応温度90℃以上では、メタクリロイル部分においてラジカル重合反応が生じてしまう、ということが理解される。
従って、上記の実施例1〜実施例8および実施例12〜実施例16においては、反応温度90℃未満の条件で反応を行うこととした。
【産業上の利用可能性】
【0117】
本発明に係る硫黄原子含有環状化合物および架橋性組成物は、高い密度で硫黄原子を含有すると共に、(メタ)アクリロイル部位を有するものであって、これにより、高い屈折率を有するものであるため、種々の光学部品の材料として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0118】
【図1】実施例1で得られた生成物のIRスペクトル図である。
【図2】実施例9〜実施例11に係る光照射時間と転化率との関係を示すグラフである。
【図3】実施例12で得られた生成物の 1H−NMRスペクトル図である。
【図4】実施例12〜実施例16で得られた生成物に係る環状チオエステル(1)に対するPPSのモル比とガラス転移温度との関係を示すグラフである。
【図5】実施例12〜実施例16で得られた生成物よりなるフィルムに係る環状チオエステル(1)に対するPPSモル比と屈折率との関係を示すグラフである。
【図6】実施例17および実施例18に係る光照射時間と転化率との関係を示すグラフである。
【図7】実施例19および実施例20に係る光照射時間と転化率との関係を示すグラフである。
【図8】実験例1で得られた生成物のIRスペクトル図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されることを特徴とする硫黄原子含有環状化合物。
【化1】

〔式中、R1 は、CH2 =CHCOO−R2 −またはCH2 =CCH3 COO−R2 −(但し、R2 はメチレン基または炭素数が2〜10のアルキレン基を示す。)で表される基であり、mは1以上の整数であり、nは1以上の整数である。〕
【請求項2】
下記式(i)で表される環状チオエステルと、下記一般式(2)で表されるスルフィド化合物とを反応させることにより、請求項1に記載の硫黄原子含有環状化合物を得ることを特徴とする硫黄原子含有環状化合物の製造方法。
【化2】

【化3】

〔式中、R1 は、CH2 =CHCOO−R2 −またはCH2 =CCH3 COO−R2 −(但し、R2 はメチレン基または炭素数が2〜10のアルキレン基を示す。)で表される基である。〕
【請求項3】
下記一般式(1)で表される硫黄原子含有環状化合物と、光ラジカル重合開始剤とを含有することを特徴とする架橋性組成物。
【化4】

〔式中、R1 は、CH2 =CHCOO−R2 −またはCH2 =CCH3 COO−R2 −(但し、R2 はメチレン基または炭素数が2〜10のアルキレン基を示す。)で表される基であり、mは1以上の整数であり、nは1以上の整数である。〕
【請求項4】
下記一般式(3)で表されることを特徴とする硫黄原子含有環状化合物。
【化5】

〔式中、R1 は、CH2 =CHCOO−R2 −またはCH2 =CCH3 COO−R2 −(但し、R2 はメチレン基または炭素数が2〜10のアルキレン基を示す。)で表される基であり、R3 は、R4 −O−CH2 −(但し、R4 は炭素数が1〜6のアルキル基または置換若しくは未置換のフェニル基を示す。)で表される基であり、pは1以上の整数であり、qは1以上の整数であり、rは1以上の整数である。〕
【請求項5】
下記式(i)で表される環状チオエステルと、下記一般式(2)で表されるスルフィド化合物と、下記一般式(4)で表されるスルフィド化合物とを反応させることにより、請求項4に記載の硫黄原子含有環状化合物を得ることを特徴とする硫黄原子含有環状化合物の製造方法。
【化6】

【化7】

〔式中、R1 は、CH2 =CHCOO−R2 −またはCH2 =CCH3 COO−R2 −(但し、R2 はメチレン基または炭素数が2〜10のアルキレン基を示す。)で表される基である。〕
【化8】

〔式中、R3 は、R4 −O−CH2 −(但し、R4 は炭素数が1〜6のアルキル基または置換若しくは未置換のフェニル基を示す。)で表される基である。〕
【請求項6】
下記一般式(3)で表される硫黄原子含有環状化合物と、光ラジカル重合開始剤とを含有することを特徴とする架橋性組成物。
【化9】

〔式中、R1 は、CH2 =CHCOO−R2 −またはCH2 =CCH3 COO−R2 −(但し、R2 はメチレン基または炭素数が2〜10のアルキレン基を示す。)で表される基であり、R3 は、R4 −O−CH2 −(但し、R4 は炭素数が1〜6のアルキル基または置換若しくは未置換のフェニル基を示す。)で表される基であり、pは1以上の整数であり、qは1以上の整数であり、rは1以上の整数である。〕
【請求項7】
単官能(メタ)アクリレート化合物よりなる反応希釈剤を含有することを特徴とする請求項6に記載の架橋性組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−233039(P2006−233039A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−50287(P2005−50287)
【出願日】平成17年2月25日(2005.2.25)
【出願人】(592218300)学校法人神奈川大学 (243)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】