説明

硫黄固化体の製造方法及び製造装置

【課題】溶融状態の硫黄含有資材を、密閉可能で設定温度範囲内に加熱された型枠内に所定圧力をかけて注入し、その後型枠内で冷却固化させて硫黄固化体を成型する。
【解決手段】溶融状態の硫黄含有資材を、硫黄の融点以上の設定温度範囲内に加熱された材料ホッパー1に収容し、この収容された硫黄含有資材を圧力発生器2a,2bにより吸引して上記の設定温度範囲内に加熱されたシリンダ11a,11b内に引き出し、この引き出された硫黄含有資材を上記圧力発生器により所定圧力をかけて該シリンダから押し出し、内部に密閉可能状態のキャビティを有し上記の設定温度範囲内に加熱された型枠5内に注入口24から注入し、上記キャビティに硫黄含有資材が一杯に注入された後の型枠の注入口を閉じ、上記型枠の加熱を停止して上記キャビティ内に注入された硫黄含有資材を徐冷し、上記キャビティ内の硫黄含有資材が冷却固化して成型された硫黄固化体を上記型枠から取り出す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶融状態の硫黄含有資材を、内部に密閉可能状態のキャビティを有し設定温度範囲内に加熱された型枠内に所定圧力をかけて注入し、その後上記キャビティ内で冷却固化させて硫黄固化体を成型する硫黄固化体の製造方法及びその方法の実施に使用する製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、土木用、建設用の資材として、骨材をセメントで結合させたコンクリートが用いられている。これに対して、近年、常温では固体でありおよそ119℃〜159℃に加熱されると溶融するという硫黄の性質に着目し、この硫黄に所定の試料を配合して、土木用、建設用の資材の一つとして利用することが試みられている。上記硫黄を使用した硫黄含有資材は、セメントを使用する通常のコンクリートに比べて高強度で遮水性に優れ、かつ耐酸性の高い材料として知られている。そして、硫黄含有資材は、通常のコンクリートと仕上がりや取り扱いが見かけ上類似していることから、固化したものは硫黄コンクリート又は硫黄固化体と呼ばれることがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ここで、硫黄は着火性を有しており危険物扱いであるので、現場で溶融し打設固化して施工することが困難である。このような状況を改善するために、溶融硫黄に添加剤として硫黄改質剤を混合してその硫黄を変性し、改質硫黄を製造することが試みられている。また、この改質硫黄と微粉末とを混合して溶融状態の改質硫黄中間資材を製造すること、及び、この改質硫黄中間資材と骨材とを混合しこれを固化させて改質硫黄固化体を製造することが試みられている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
そして、上述のような溶融状態の硫黄含有資材(又は改質硫黄中間資材)を冷却固化させて硫黄固化体(又は改質硫黄固化体)を成型するには、所定の形状をした型枠内に上記硫黄含有資材を流し込んで冷却固化させていた。
【0005】
また、圧密後に直ちに脱型でき、表面が平滑で耐久性に優れた硫黄コンクリート製品を製造するものとして、硫黄1体積部に対して鉱物質微粉末1体積部以上〜20体積部以下を配合した混合物を、硫黄の融点以上に加熱後、圧密することにより自型性を有する成形体とするものがある(例えば、特許文献3参照)。
【0006】
【特許文献1】特開2004−160693号公報
【特許文献2】特開2005−82475号公報
【特許文献3】特開2000−72523号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、溶融状態の硫黄含有資材は、硫黄の固化温度(約119℃)を下回った時点で固化し始めて、通常のコンクリート以上の高強度まで固化する。従来、溶融状態の硫黄含有資材が固化する際には、型枠内に流し込まれたときにその型枠と接した部分が急激に冷やされるために、型枠を外した脱型後の硫黄固化体の表面に荒れを生じるなどの問題があった。また、形状の精度の高い製品を製造するのが難しいものであった。
【0008】
また、通常のコンクリートで例えばヒューム管やマンホール等の円筒状の製品を製造するには、円筒状の型枠を回転、振動させながらその内部にコンクリートを投入し、遠心力と振動で型枠内周面に材料を押し付ける遠心成形と呼ばれる製法で製造されている。この場合は、円筒状製品の内周面の仕上げに熟練工を必要とし、時間も掛かるものであった。それよりも、溶融状態の硫黄含有資材は、硫黄の固化温度(約119℃)を下回った時点で固化し始めるので、遠心力を利用して型枠内周面に材料を押し付ける遠心成形法を用いて製品を製造することはできないものであった。
【0009】
そこで、本発明は、このような問題点に対処し、溶融状態の硫黄含有資材を、内部に所定形状のキャビティを有する型枠内に所定圧力をかけて注入し該キャビティ内で冷却固化させて硫黄固化体を成型する硫黄固化体の製造方法及びその方法の実施に使用する製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明による硫黄固化体の製造方法は、溶融状態の硫黄含有資材を、硫黄の融点以上の設定温度範囲内に加熱された材料ホッパーに収容する工程と、上記材料ホッパー内に収容された硫黄含有資材を圧力発生器により吸引し、上記の設定温度範囲内に加熱されたシリンダ内に引き出す工程と、上記シリンダ内に引き出された硫黄含有資材を上記圧力発生器により所定圧力をかけて該シリンダから押し出し、内部に密閉可能状態のキャビティを有し上記の設定温度範囲内に加熱された型枠内に注入口から注入する工程と、上記キャビティに硫黄含有資材が一杯に注入された後の型枠の注入口を閉じる工程と、上記型枠の加熱を停止して上記キャビティ内に注入された硫黄含有資材を徐冷する工程と、上記キャビティ内の硫黄含有資材が冷却固化して成型された硫黄固化体を上記型枠から取り出す工程と、を行うものである。
【0011】
このような方法により、溶融状態の硫黄含有資材を、硫黄の融点以上の設定温度範囲内に加熱された材料ホッパーに収容し、この収容された硫黄含有資材を圧力発生器により吸引して上記の設定温度範囲内に加熱されたシリンダ内に引き出し、この引き出された硫黄含有資材を上記圧力発生器により所定圧力をかけて該シリンダから押し出し、内部に密閉可能状態のキャビティを有し上記の設定温度範囲内に加熱された型枠内に注入口から注入し、上記キャビティに硫黄含有資材が一杯に注入された後の型枠の注入口を閉じ、上記型枠の加熱を停止して上記キャビティ内に注入された硫黄含有資材を徐冷し、上記キャビティ内の硫黄含有資材が冷却固化して成型された硫黄固化体を上記型枠から取り出す。これにより、溶融状態の硫黄含有資材を、内部に密閉可能状態のキャビティを有し硫黄の融点以上の設定温度範囲内に加熱された型枠内に所定圧力をかけて注入し、その後上記キャビティ内で冷却固化させて硫黄固化体を成型する。
【0012】
また、上記材料ホッパー内に収容された硫黄含有資材を、該材料ホッパー内に設けられた撹拌羽で撹拌するものである。これにより、材料ホッパー内に収容された硫黄含有資材を撹拌羽で撹拌して、材料の分離をなくして均一な硫黄含有資材を型枠内に注入する。
【0013】
さらに、上記型枠内に硫黄含有資材を注入する工程は、該型枠に振動を加えながら注入するものである。これにより、型枠に振動を加えながら硫黄含有資材を注入することで、硫黄含有資材が流動性の低い材料であっても型枠内に注入可能となる。
【0014】
そして、本発明による硫黄固化体の製造装置は、硫黄の融点以上の設定温度範囲内に加熱されて溶融状態の硫黄含有資材を内部に収容する材料ホッパーと、上記材料ホッパー内に収容された硫黄含有資材を吸引して上記の設定温度範囲内に加熱されるシリンダ内に引き出し、該シリンダ内に引き出された硫黄含有資材に所定圧力をかけて上記シリンダから押し出す圧力発生器と、上記材料ホッパー内の硫黄含有資材をシリンダ内に引き出す引出し口及び該シリンダから硫黄含有資材を押し出す押出し口にそれぞれ設けられ、連動して移動し上記引出し口及び押出し口を交互に開閉する開閉プレートと、上記シリンダからの硫黄含有資材の押出し口に基端部が接続され、上記の設定温度範囲内に加熱されて内部を硫黄含有資材が流れる注入ホースと、上記注入ホースの他端部に硫黄含有資材の注入口が接続され、内部に上記注入口に連通すると共に密閉可能状態のキャビティを有し、且つこのキャビティに連通するエアー抜き孔を有し、上記の設定温度範囲内に加熱される型枠と、上記型枠の注入口に設けられ、上記キャビティ内に硫黄含有資材が一杯に注入された後の注入口を閉じる遮断機構と、を含んでなるものである。
【0015】
このような構成により、材料ホッパーの内部に硫黄の融点以上の設定温度範囲内に加熱されて溶融状態の硫黄含有資材を収容し、圧力発生器により、上記材料ホッパー内に収容された硫黄含有資材を吸引して上記の設定温度範囲内に加熱されるシリンダ内に引き出し、該シリンダ内に引き出された硫黄含有資材に所定圧力をかけて上記シリンダから押し、上記材料ホッパー内の硫黄含有資材をシリンダ内に引き出す引出し口及び該シリンダから硫黄含有資材を押し出す押出し口にそれぞれ設けられ、連動して移動する開閉プレートにより、上記引出し口及び押出し口を交互に開閉し、上記の設定温度範囲内に加熱されて内部を硫黄含有資材が流れる注入ホースの基端部を、上記シリンダからの硫黄含有資材の押出し口に接続し、該注入ホースの他端部を、内部に上記注入口に連通すると共に密閉可能状態のキャビティを有し、且つこのキャビティに連通するエアー抜き孔を有し、上記の設定温度範囲内に加熱される型枠の硫黄含有資材の注入口に接続し、その注入口に設けられた遮断機構により、上記キャビティ内に硫黄含有資材が一杯に注入された後の注入口を閉じる。これにより、溶融状態の硫黄含有資材を、内部に密閉可能状態のキャビティを有し硫黄の融点以上の設定温度範囲内に加熱された型枠内に所定圧力をかけて注入し、その後上記キャビティ内で冷却固化させて硫黄固化体を成型する。
【0016】
また、上記材料ホッパー、圧力発生器のシリンダ、注入ホース及び型枠を、硫黄の融点以上の設定温度範囲内に加熱するために、それぞれの構成要素自体に加熱手段を付設したものである。これにより、上記材料ホッパー、圧力発生器のシリンダ、注入ホース及び型枠に付設された加熱手段で、それぞれの構成要素自体を硫黄の融点以上の設定温度範囲内に加熱する。
【0017】
さらに、上記材料ホッパー、圧力発生器のシリンダ、注入ホース及び型枠を、硫黄の融点以上の設定温度範囲内に加熱するために、それぞれの構成要素の周囲を箱状部材で囲って、その内部の雰囲気温度を加熱するようにしたものである。これにより、上記材料ホッパー、圧力発生器のシリンダ、注入ホース及び型枠の周囲を箱状部材で囲って、その内部の雰囲気温度を加熱することで、それぞれの構成要素を硫黄の融点以上の設定温度範囲内に加熱する。
【0018】
さらにまた、上記圧力発生器は、上記材料ホッパーに対して並列に複数個設け、上記材料ホッパー内に収容された硫黄含有資材を吸引して上記シリンダ内に引き出す動作と、該シリンダ内に引き出された硫黄含有資材に所定圧力をかけて上記シリンダから押し出す動作とを交互に実行可能としたものである。これにより、上記材料ホッパーに対して並列に複数個設けられた圧力発生器で、上記材料ホッパー内に収容された硫黄含有資材を吸引して上記シリンダ内に引き出す動作と、該シリンダ内に引き出された硫黄含有資材に所定圧力をかけて上記シリンダから押し出す動作とを交互に実行可能とする。
【0019】
また、上記開閉プレートは、上記材料ホッパーからの硫黄含有資材の引出し口及び上記シリンダからの硫黄含有資材の押出し口の部分を除きその長手方向に沿って周囲を覆う鞘状のプレートカバーの中に収められ、該プレートカバーの中でスライド移動するものである。これにより、長手方向に沿って周囲を覆う鞘状のプレートカバーの中に収められた開閉プレートは、該プレートカバーの中においてスライド移動し、上記材料ホッパーからの硫黄含有資材の引出し口及び上記シリンダからの硫黄含有資材の押出し口の部分に残る硫黄含有資材がその周囲にこぼれるのを防止する。
【0020】
さらに、上記圧力発生器のシリンダは、その長手方向に沿って上下に2分割できる構造とされている。これにより、整備・保守時に、圧力発生器のシリンダをその長手方向に沿って上下に2分割できる。
【0021】
さらにまた、上記材料ホッパーの内部には、該材料ホッパー内に収容された硫黄含有資材を撹拌する撹拌羽を設けたものである。これにより、上記材料ホッパーの内部に設けられた撹拌羽で、該材料ホッパー内に収容された硫黄含有資材を撹拌して、材料の分離をなくして均一な硫黄含有資材を型枠内に注入する。
【発明の効果】
【0022】
請求項1に係る発明(硫黄固化体の製造方法)によれば、溶融状態の硫黄含有資材を、内部に密閉可能状態のキャビティを有し硫黄の融点以上の設定温度範囲内に加熱された型枠内に所定圧力をかけて注入し、その後上記キャビティ内で冷却固化させて硫黄固化体を成型することができる。したがって、硫黄固化体による製品の形状が複雑であっても型枠のキャビティの形状によって精度の高い製品を製造することができる。また、製品の精度は型枠の形状によって決まるので、型枠の仕上げ面の広さや形状の複雑さに関係なく、均一な製品の製造が可能となる。さらに、特に製品の表面仕上げを必要とせず、熟練工を必要としない。
【0023】
また、請求項2に係る発明によれば、材料ホッパー内に収容された硫黄含有資材を撹拌羽で撹拌して、材料の分離をなくして均一な硫黄含有資材を型枠内に注入することができる。したがって、硫黄固化体としての固化強度を高くすることができる。
【0024】
さらに、請求項3に係る発明によれば、型枠に振動を加えながら硫黄含有資材を注入することで、硫黄含有資材が流動性の低い材料であっても型枠内に注入することができる。
【0025】
そして、請求項4に係る発明(硫黄固化体の製造装置)によれば、溶融状態の硫黄含有資材を、内部に密閉可能状態のキャビティを有し硫黄の融点以上の設定温度範囲内に加熱された型枠内に所定圧力をかけて注入し、その後上記キャビティ内で冷却固化させて硫黄固化体を成型することができる。したがって、硫黄固化体による製品の形状が複雑であっても型枠のキャビティの形状によって精度の高い製品を製造することができる。また、製品の精度は型枠の形状によって決まるので、型枠の仕上げ面の広さや形状の複雑さに関係なく、均一な製品の製造が可能となる。さらに、特に製品の表面仕上げを必要とせず、熟練工を必要としない。
【0026】
また、請求項5に係る発明によれば、材料ホッパー、圧力発生器のシリンダ、注入ホース及び型枠に付設された加熱手段で、それぞれの構成要素自体を硫黄の融点以上の設定温度範囲内に加熱することができる。したがって、上記それぞれの構成要素自体の内部において硫黄含有資材を溶融状態に維持することができる。
【0027】
さらに、請求項6に係る発明によれば、材料ホッパー、圧力発生器のシリンダ、注入ホース及び型枠の周囲を箱状部材で囲って、その内部の雰囲気温度を加熱することで、それぞれの構成要素を硫黄の融点以上の設定温度範囲内に加熱することができる。したがって、上記それぞれの構成要素の内部において硫黄含有資材を溶融状態に維持することができる。
【0028】
さらにまた、請求項7に係る発明によれば、材料ホッパーに対して並列に複数個設けられた圧力発生器で、上記材料ホッパー内に収容された硫黄含有資材を吸引してシリンダ内に引き出す動作と、該シリンダ内に引き出された硫黄含有資材に所定圧力をかけて上記シリンダから押し出す動作とを交互に実行することができる。したがって、圧力発生器が2個(シリンダが2本)の場合は、材料ホッパーからシリンダへの硫黄含有資材の引き出しと、シリンダからの硫黄含有資材の押し出しとを同時に実行でき、硫黄含有資材の型枠への注入時間を短縮することができる。
【0029】
また、請求項8に係る発明によれば、長手方向に沿って周囲を覆う鞘状のプレートカバーの中に収められた開閉プレートは、該プレートカバーの中においてスライド移動し、材料ホッパーからの硫黄含有資材の引出し口及びシリンダからの硫黄含有資材の押出し口の部分に残る硫黄含有資材がその周囲にこぼれるのを防止することができる。これにより、上記開閉プレートや材料ホッパーの下部付近に硫黄含有資材が付着して固化するのを防止し、整備・保守を容易とすることができる。
【0030】
さらに、請求項9に係る発明によれば、圧力発生器のシリンダは、その長手方向に沿って上下に2分割できる構造とされていることにより、整備・保守時に、圧力発生器のシリンダをその長手方向に沿って上下に2分割できる。これにより、上記シリンダを上下に2分割して内部を清掃し、整備・保守を容易とすることができる。
【0031】
さらにまた、請求項10に係る発明によれば、材料ホッパーの内部に設けられた撹拌羽で、該材料ホッパー内に収容された硫黄含有資材を撹拌して、材料の分離をなくして均一な硫黄含有資材を型枠内に注入することができる。したがって、硫黄固化体としての固化強度を高くすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。
図1は本発明による硫黄固化体の製造装置の実施形態を示す斜視図である。この硫黄固化体の製造装置は、溶融状態の硫黄含有資材を、内部に密閉可能状態のキャビティを有し硫黄の融点以上の設定温度範囲内に加熱された型枠内に所定圧力をかけて注入し、その後上記キャビティ内で冷却固化させて硫黄固化体を成型する硫黄固化体の製造方法の実施に使用するもので、材料ホッパー1と、圧力発生器2a,2bと、開閉プレート3a,3bと、注入ホース4と、型枠5と、遮断機構6(図9参照)とを備えて成る。
【0033】
上記材料ホッパー1は、溶融状態の硫黄含有資材を内部に収容するもので、図2及び図3に示すように、例えば金属で漏斗状に形成され、その容積は例えば10m3程度とされている。そして、上記材料ホッパー1の外周部には、電熱ヒーター、温風ヒーター又はオイルヒーター等の加熱手段が付設されると共に断熱材でカバーされており、該材料ホッパー1を硫黄の融点(119℃)以上の設定温度範囲内に加熱するようになっている。なお、この加熱の設定温度範囲としては、135〜150℃程度が好ましい。これにより、上記材料ホッパー1内に収容された溶融状態の硫黄含有資材は、固化せずに溶融状態に保持される。
【0034】
また、上記材料ホッパー1の内部には、撹拌羽7a,7bが設けられている。この撹拌羽7a,7bは、上記材料ホッパー1内に収容された硫黄含有資材を撹拌するもので、図2及び図3に示すように、材料ホッパー1の上面に設置された電気モータ等の回転駆動源8から下向きに延びる回転軸9と直交する腕軸10の両端部に取り付けられている。そして、上記回転駆動源8を駆動して撹拌羽7a,7bを回転させることにより、上記材料ホッパー1内に収容された硫黄含有資材を撹拌して、材料の分離をなくして均一な硫黄含有資材を後述の型枠5内に注入することができる。なお、上記撹拌羽7a,7bの取り付け角度をプロペラ状に捻って下向きとすることで、材料ホッパー1内に収容された硫黄含有資材を撹拌しつつ下方に送るようにすることができる。
【0035】
ここで、上記硫黄含有資材について説明する。この硫黄含有資材は、常温では固体でありおよそ119〜159℃で溶融するという硫黄の性質を利用して、119℃以上の設定温度範囲内に加熱して溶融させた硫黄に砂や砂利、石炭灰等を混合して、およそ119〜159℃を保持しながら練り混ぜ、これを冷却硬化させて製造した硫黄固化体と呼ばれるものである。又は、同様に加熱して溶融させた硫黄と、この溶融硫黄を変性する硫黄改質剤とを混合して改質硫黄を製造し、この改質硫黄に砂や砂利、石炭灰等を混合して、上記と同様に加熱しながら練り混ぜ、これを冷却硬化させて製造した改質硫黄固化体と呼ばれるものである。すなわち、硫黄含有資材の中には、上記硫黄固化体と改質硫黄固化体とを含むものであり、以下において、単に硫黄固化体と表記した場合は、改質硫黄固化体を含んだ意味であるとする。
【0036】
上記改質硫黄固化体について更に詳細に説明する。改質硫黄固化体は、硫黄と、硫黄改質剤と、微細粉と、骨材とを原料として製造される。まず、溶融した硫黄と硫黄改質剤とを混合して改質硫黄を製造する。硫黄は、通常の単体硫黄であり、例えば天然産、又は石油や天然ガスの脱硫によって生成した硫黄等が挙げられる。硫黄改質剤は、溶融硫黄を変性、例えば硫黄を重合することによって改質する。この硫黄改質剤としては、硫黄を重合し得る化合物であればよく、例えば炭素数4〜20のオレフィン系炭化水素又はジオレフィン系炭化水素、具体的には、リモネン、ピネン等の環状オレフィン系炭化水素、スチレン、ビニルトルエン、メチルスチレン等の芳香族炭化水素、ジシクロペンタジエン(DCPD)及びそのオリゴマ−、シクロペンタジエン、テトラハイドロインデン(THI)、ビニルシクロヘキセン、ビニルノルボルネン、エチリデンノルボルネン、シクロオクタジエン等のジエン系炭化水素等の1種又は2種以上との混合物が挙げられる。上記硫黄と硫黄改質剤との混合は、硫黄が溶融した状態、すなわち119〜159℃、好ましくは135〜150℃の温度で行われる。
【0037】
前記改質硫黄は、硫黄と硫黄改質剤とを溶融混合することで得ることができるが、このときの硫黄改質剤の使用割合は、硫黄と硫黄改質剤との合計量に対して、通常0.1〜30質量%、特に1.0〜20質量%の割合が好ましい。得られた改質硫黄は、所定の温度(例えば150℃)に加温された微細粉と混合されて改質硫黄中間資材とされる。微細粉としては、石炭灰、珪砂、シリカヒューム、ガラス粉末、燃料焼却灰、電気集塵灰及び貝殻粉砕物のうち1種又は2種以上を選択すればよい。
【0038】
上記得られた改質硫黄中間資材は、溶融状態を保つことのできる温度(例えば130〜140℃)に保持された状態で、例えば130〜140℃程度に加温された骨材と混合される。この骨材は、骨材として使用可能であれば特に限定されず、一般にコンクリートで用いられる骨材を使用できる。このような骨材としては、例えば、天然石、砂、れき、硅砂、鉄鋼スラグ、フェロニッケルスラグ、銅スラグ、金属の製造時に生成される副生物、溶融スラグ類、貝殻及びこれらの混合物等からなる群より選択される1種又は2種以上が挙げられる。上記の改質硫黄中間資材と骨材とを、例えば混練装置を用いて混合することによって改質硫黄資材が製造され、これを冷却して固化させることで改質硫黄固化体が製造される。このような改質硫黄固化体は、例えば特許第4007997号公報に記載された改質硫黄固化体製造システムを使用して製造することができる。
【0039】
以下の説明では、このような硫黄固化体又は改質硫黄固化体を設定温度範囲内に加熱して、溶融状態の硫黄含有資材として用いる。
【0040】
図1において、上記材料ホッパー1の下部には、圧力発生器2a,2bが設けられている。この圧力発生器2a,2bは、上記材料ホッパー1内に収容された硫黄含有資材を吸引して引き出し、該引き出された硫黄含有資材に所定圧力をかけて押し出すものであり、符号2aが第1の圧力発生器を示し、符号2bが第2の圧力発生器を示している。そして、図7に示すように、第1の圧力発生器2aは、円筒状のシリンダ11aと、このシリンダ11a内に嵌装されたピストン12aと、このピストン12aを押し引きするピストンロッド13aと、このピストンロッド13aを伸縮させる電気モータ等の駆動モータ14aとから成る。同様にして、第2の圧力発生器2bは、円筒状のシリンダ11bと、このシリンダ11b内に嵌装されたピストン12bと、このピストン12bを押し引きするピストンロッド13bと、このピストンロッド13bを伸縮させる電気モータ等の駆動モータ14bとから成る。
【0041】
なお、上記シリンダ11a,11bの寸法は、例えば、内径が130mmでストロークが600mmとされ、1回当たりの硫黄含有資材の押し出し量が7.96Lとされている。そして、上記硫黄含有資材を押し出すときの所定圧力は、例えば98kPa(≒1kg/cm2)以上であって147kPa(≒1.5kg/cm2)又は196kPa(≒2.0kg/cm2)以下とすればよい。また、上記駆動モータ14a,14bは、油圧モータであってもよい。
【0042】
そして、図1に示すように、上記圧力発生器2a,2bは、上記材料ホッパー1に対して水平方向に並列に2個設けられ(図4参照)、該材料ホッパー1内に収容された硫黄含有資材を吸引して上記シリンダ11a,11b内に引き出す動作と、該シリンダ11a,11b内に引き出された硫黄含有資材に所定圧力をかけて上記シリンダ11a,11bから押し出す動作とを交互に実行可能としている。
【0043】
なお、上記圧力発生器2a,2bの各シリンダ11a,11bの外周部には、電熱ヒーター、温風ヒーター又はオイルヒーター等の加熱手段が付設されると共に断熱材でカバーされており、該シリンダ11a,11bを硫黄の融点(119℃)以上の設定温度範囲(例えば135〜150℃程度)内に加熱するようになっている。これにより、上記各シリンダ11a,11b内に引き出された溶融状態の硫黄含有資材は、固化せずに溶融状態に保持される。
【0044】
また、上記圧力発生器2a,2bの各シリンダ11a,11bは、図7及び図8に示すように、その長手方向に沿って上下に2分割できる構造とされている。例えば、円筒状の部材が長手方向に沿って上下に二つの半円筒状の部材に分割できる形状に形成されて、ボルト、ナット等で締結されている。これにより、整備・保守時に、圧力発生器2a,2bのシリンダ11a,11bをその長手方向に沿って上下に2分割して内部を清掃し、整備・保守を容易とすることができる。
【0045】
上記材料ホッパー1の下部に対して上記圧力発生器2a,2bのシリンダ11a,11bが連結する部位には、図1に示すように、開閉プレート3a,3bが設けられている。この開閉プレート3a,3bは、上記材料ホッパー1内の硫黄含有資材を各シリンダ11a,11b内に引き出す引出し口15a,15b及び該シリンダ11a,11bから硫黄含有資材を押し出す押出し口16a,16bを交互に開閉するもので、上記引出し口15a,15b及び押出し口16a,16bにそれぞれ設けられ、二つの部材が連動して移動するようになっている。
【0046】
すなわち、硫黄含有資材の引出し口15a,15bは、上記材料ホッパー1の下部にて上記圧力発生器2a,2bの各シリンダ11a,11bの配設間隔に合わせて形成されている。また、硫黄含有資材の押出し口16a,16bは、上記圧力発生器2a,2bの各シリンダ11a,11bの先端側(図3参照)にて該シリンダ11a,11bの配設間隔に合わせて形成されている。そして、開閉プレート3a,3bは、図2〜図4に示すように、細長板状の部材に形成され、その長さは少なくとも上記シリンダ11a,11bの配設間隔の2倍以上とされており、該シリンダ11a,11bの長手方向に対して直交する方向に移動可能とされている。ここで、上記引出し口15a,15bを開閉するものを第1の開閉プレート3aとし、図3において、材料ホッパー1の下部にて部材の平面が水平面内に位置するように配置されている。また、上記押出し口16a,16bを開閉するものを第2の開閉プレート3bとし、図3において、圧力発生器2a,2bの各シリンダ11a,11bの先端部にて部材の平面が垂直面内に位置するように配置されている。
【0047】
上記第1の開閉プレート3aには、図4に示すように、長手方向の例えば中央部に1個の貫通孔17が開けられており、該第1の開閉プレート3aが矢印A,B方向に移動することにより、上記貫通孔17が引出し口15a又は15bのどちらか一方に合致して、二つの引出し口15a,15bを交互に開閉するようになっている。また、第2の開閉プレート3bには、図2に示すように、長手方向の例えば両端部に貫通孔18a,18bが1個ずつ開けられており、該第2の開閉プレート3bが矢印A,B方向に移動することにより、上記一方の貫通孔18aが一方の押出し口16aに合致すると共に開閉プレート3bの略中央部で他方の押出し口16bを閉塞し、他方の貫通孔18bが他方の押出し口16bに合致したときは開閉プレート3bの略中央部で一方の押出し口16aを閉塞して、二つの押出し口16a,16bを交互に開閉するようになっている。
【0048】
このような状態で、上記第1及び第2の開閉プレート3a,3bの一端部(図1及び図2において右端部)が矩形状の端板19で接続されており、この端板19に伸縮ロッド20が連結され、この伸縮ロッド20の一端部にエアーシリンダ等の駆動用シリンダ21が設置されている。そして、上記駆動用シリンダ21を駆動して伸縮ロッド20を矢印A,B方向に伸長又は収縮することにより、上記第1及び第2の開閉プレート3a,3bが、矢印A,B方向に連動して移動する。これにより、上記第1及び第2の開閉プレート3a,3bを用いて、引出し口15a,15b及び押出し口16a,16bを交互に開閉することができる。この場合、駆動用シリンダ21及び伸縮ロッド20が1個でよいので、構造及び動作が簡素化される。
【0049】
なお、図1及び図8に示すように、第1及び第2の開閉プレート3a,3bは、上記材料ホッパー1からの硫黄含有資材の引出し口15a,15b及び上記シリンダ11a,11bからの硫黄含有資材の押出し口16a,16bの部分を除きその長手方向に沿って周囲を覆う鞘状のプレートカバー22a,22bの中に収められ、該プレートカバー22a,22bの中でスライド移動するようになっている。すなわち、第1及び第2の開閉プレート3a,3bは、鞘状のプレートカバー22a,22bの中に挿入されて矢印A,B方向に連動してスライド移動することで、材料ホッパー1からの硫黄含有資材の引出し口15a,15b及びシリンダ11a,11bからの硫黄含有資材の押出し口16a,16bの部分に残る硫黄含有資材がその周囲にこぼれるのを防止することができる。
【0050】
そして、図1及び図4に示すように、上記シリンダ11a,11bからの硫黄含有資材の押出し口16a,16bには、二股形状の材料導入パイプ23が連結されており、その一端部23aで1本にまとめて後述の注入ホース4へ導くようになっている。
【0051】
上記シリンダ11a,11bからの硫黄含有資材の押出し口16a,16bには、注入ホース4の基端部が接続されている。この注入ホース4は、上記シリンダ11a,11bからの硫黄含有資材の押出し口16a,16bから押し出された溶融状態の硫黄含有資材を後述の型枠5へ送って注入するもので、硫黄の融点以上の設定温度範囲(135〜150℃程度)内で耐熱性を有し、且つ柔軟性を有する材料で製造され、上記材料導入パイプ23の一端部23aに接続されている。
【0052】
なお、上記注入ホース4の外周部には、電熱ヒーター、温風ヒーター又はオイルヒーター等の加熱手段が付設されると共に断熱材でカバーされており、該注入ホース4を硫黄の融点(119℃)以上の設定温度範囲(例えば135〜150℃程度)内に加熱するようになっている。これにより、上記注入ホース4内に導き出された溶融状態の硫黄含有資材は、固化せずに溶融状態に保持されて該注入ホース4内を流れる。
【0053】
上記注入ホース4の他端部には、型枠5の硫黄含有資材の注入口24が接続されている。この型枠5は、その内部に溶融状態の硫黄含有資材を、所定圧力をかけて注入しその後冷却固化させて硫黄固化体を成型するもので、スティール又はアルミニューム等の金属でできており、製造する硫黄固化体製品の形状に合わせた形状に形成されている。図1に示す型枠5は、例えば、ヒューム管又はマンホール等の円筒状の硫黄固化体製品を製造する場合を示している。
【0054】
上記型枠5の具体的な構造を、図5及び図6を参照して説明する。図5は、図1に示す型枠5の構成要素を示す分解斜視図である。この型枠5は、内部に上記注入口24に連通すると共に密閉可能状態のキャビティを有し、且つこのキャビティに連通するエアー抜き孔を有し、上記の設定温度範囲内に加熱されるもので、中型枠25と、二つの部材から成る外型枠26a,26bと、2枚の妻板27a,27bとを備えている。
【0055】
上記中型枠25は、製造すべき円筒状製品の内周面を規定するもので、所定の長さで外周面が円柱状に形成された部材から成り、長手方向に延びる部材の一部25aを内側に移動させることで中型枠25全体を内側に絞り込むことができるようになっている。また、外型枠26a,26bは、製造すべき円筒状製品の外周面を規定するもので、上記中型枠25の外径よりも大きい内径を有し所定の長さで円筒状に形成された部材から成り、長手方向に沿って二つの半円筒状部材に分割することができるようになっている。なお、三つ以上に分割してもよい。さらに、妻板27a,27bは、製造すべき円筒状製品の両端面を規定するもので、上記外型枠26a,26bの外径よりも大きい外径を有するドーナツ板状又は円形板状に形成され、上記中型枠25及び外型枠26a,26bの両端部に配置される。
【0056】
そして、図6に示すように、外周面が円柱状に形成された中型枠25の外側に、その上下から二つの半円筒状部材の外型枠26a,26bを被せてボルト、ナット等で円筒状に組み合わせ、この外型枠26a,26bの両端部に2枚の妻板27a,27bを配置し、そのドーナツ板状の中央開口部に上記中型枠25の両端部を嵌合して、ボルト、ナット等で該妻板27a,27bを外型枠26a,26bに固定する。これにより、図1に示す型枠5が組み立てられる。
【0057】
この状態で、上記中型枠25と外型枠26a,26bと妻板27a,27bとで囲まれた空間により、上記注入口24に連通すると共に密閉可能状態のキャビティ28(図9参照)が形成される。また、上記一方の外型枠26aの上面には、上記キャビティ28内に注入口24から溶融状態の硫黄含有資材を注入するときの空気逃げのためのパイプ状のエアー抜き孔29が設けられている。
【0058】
なお、上記外型枠26a,26bの外周部には、電熱ヒーター、温風ヒーター又はオイルヒーター等の加熱手段が付設されると共に断熱材でカバーされており、該上記外型枠26a,26bを硫黄の融点(119℃)以上の設定温度範囲(例えば135〜150℃程度)内に加熱するようになっている。これにより、上記外型枠26a,26b内に注入された硫黄含有資材が固化せずに溶融状態に保持されて、上記中型枠25と外型枠26a,26bと妻板27a,27bとで囲まれたキャビティ28内の隅々まで行き渡ることになる。
【0059】
また、図1及び図5、図6に示す型枠5は、硫黄固化体で円筒状の製品を製造する場合の型枠形状を示したものであるが、円筒状以外の製品を製造する場合は、その製品の形状に合わせて中型枠25と、外型枠26a,26bと、妻板27a,27bの形状を決めればよい。この場合、パイプ形状でない、板状又は盤状或いはブロック状等の製品形状のときは、中型枠25が不要の場合がある。
【0060】
上記型枠5の注入口24には、図9〜図11に示すように、遮断機構6が設けられている。図9〜図11は、上記型枠5を注入口24の位置において型枠5の長手方向に直交する面で切断した横断面図である。この遮断機構6は、前記注入ホース4を介して上記キャビティ28内に硫黄含有資材が一杯に注入された後の注入口24を閉じるものである。図9において、型枠5の注入口24の前面位置には、注入口開閉板30が上下方向にスライド可能に設けられている。この注入口開閉板30は、図12に示すように、両側部に鉤状の掛止部を備えたガイドプレート31が型枠5の注入口24の前面位置に固定されており、このガイドプレート31の掛止部に両側辺を掛止して上下方向にスライド可能とされている。
【0061】
図9及び図12において、上記注入口開閉板30の下部には、注入ホース4の他端部を接続するためのホース受金具32が取り付けられ、注入口開閉板30の上部には、図9に示す型枠5の注入口24を閉塞するためのメクラ栓33が進退可能に設けられている。そして、上記注入口開閉板30において、上記ホース受金具32及びメクラ栓33が取り付けられた位置には、型枠5の注入口24に合致して連通させるための貫通孔(図9参照)が開けられている。なお、上記メクラ栓33は、側断面形状がコの字形に形成された取付金具34の内部に支持されて押込みボルト36の先端に取り付けられており、該取付金具34に固定されたナット35に対して押込みボルト36を正方向又逆方向に回転することで進退可能とされている。また、メクラ栓33の横断面形状は、注入口24の横断面形状と同一とされている。
【0062】
なお、図9において、符号37は中型枠25の内周面に取り付けられた補強用のフランジを示し、符号38は中型枠25の一部25aを内側に移動させることで中型枠25全体を内側に絞り込む際の逃げ用としてフランジ37に形成された切り欠けを示し、符号39は外型枠26a,26bの外周面に取り付けられた補強用のフランジを示し、符号40は上記外型枠26a,26bを長手方向に沿って二つの半円筒状部材に分割したり結合する際の連結ボルトを示している。
【0063】
上記のように構成された遮断機構6を用いて型枠5の注入口24を閉じる状態について説明する。まず、図9は型枠5のキャビティ28に硫黄含有資材を注入する状態を示し、注入口開閉板30をガイドプレート31に沿って上昇させ、ホース受金具32の位置が型枠5の注入口24の位置に合致されている。この状態で、図1に示す注入ホース4の他端部を上記ホース受金具32に接続し、溶融状態の硫黄含有資材を型枠5の注入口24からキャビティ28内に注入する。
【0064】
そして、上記キャビティ28内に硫黄含有資材が一杯に注入された後に、図10に示すように、注入口開閉板30をガイドプレート31に沿って矢印Cのように下降させ、メクラ栓33の位置を型枠5の注入口24の位置に合致させる。この状態で、図11に示すように、押込みボルト36を正方向に回転して矢印Dのように前進させ、メクラ栓33を型枠5の注入口24に押し込む。このとき、図10において、上記注入口24内に残っていた硫黄含有資材が上記メクラ栓33の押し込みによってキャビティ28内に押し付けられる。これにより、キャビティ28内で冷却固化して成型された硫黄固化体製品において、上記注入口24に対応する個所の仕上げを容易にし、且つ平滑面に仕上げることができる。
【0065】
次に、このように構成された硫黄固化体の製造装置の動作及びその硫黄固化体の製造方法について説明する。まず、図1において、溶融状態の硫黄含有資材を、硫黄の融点(119℃)以上の設定温度範囲(例えば135〜150℃程度)内に加熱された材料ホッパー1に収容する。このとき、上記材料ホッパー1内に収容された硫黄含有資材を、該材料ホッパー1内に設けられた撹拌羽7a,7bで撹拌してもよい。
【0066】
次に、上記材料ホッパー1内に収容された硫黄含有資材を第2の圧力発生器2bにより吸引して上記の設定温度範囲内に加熱されたシリンダ11b内に引き出すと共に、別のシリンダ11a内に既に引き出された硫黄含有資材を第1の圧力発生器2aにより所定圧力をかけて該シリンダ11aから押し出し、内部に密閉可能状態のキャビティ28を有し上記の設定温度範囲内に加熱された型枠5内に注入口24から注入する。
【0067】
このとき、図7に示すように、駆動用シリンダ21の駆動により伸縮ロッド20が矢印A方向に伸長して、第1の開閉プレート3aの貫通孔17が材料ホッパー1からの引出し口15b(図1参照)に合致して開き、第2の開閉プレート3bの貫通孔18aがシリンダ11aからの押出し口16a(図1参照)に合致して開いている。このような開閉プレート3a,3bの動作と、第1及び第2の圧力発生器2a,2bの動作により、上記のように材料ホッパー1内に収容された硫黄含有資材をシリンダ11b内に引き出すと共に、別のシリンダ11a内に既に引き出された硫黄含有資材を押し出して、型枠5内に注入口24から注入する。
【0068】
上記の工程が終わると、次に、図8に示すように、駆動用シリンダ21の駆動により伸縮ロッド20を矢印B方向に収縮して、第1の開閉プレート3aの貫通孔17が材料ホッパー1からの引出し口15a(図1参照)に合致して開き、第2の開閉プレート3bの貫通孔18bが第2の圧力発生器2bのシリンダ11bからの押出し口16b(図1参照)に合致して開くようにする。このような開閉プレート3a,3bの動作と、第1及び第2の圧力発生器2a,2bの動作により、材料ホッパー1内に収容された硫黄含有資材を第1の圧力発生器2aのシリンダ11a内に引き出すと共に、第2の圧力発生器2bのシリンダ11b内に前回引き出された硫黄含有資材を押し出して、型枠5内に注入口24から注入する。以後、この動作を繰り返す。
【0069】
上記型枠5への硫黄含有資材の注入は、図1に示すように、上記シリンダ11a,11bからの硫黄含有資材の押出し口16a,16bに連結された材料導入パイプ23の一端部23aに注入ホース4の基端部を接続し、該注入ホース4の他端部を型枠5の注入口24に接続して行う。この注入ホース4の型枠5への接続は、図9に示すように、型枠5の注入口24の前面位置に設けた注入口開閉板30の下部に取り付けられたホース受金具32に接続して行う。なお、上記型枠5へ硫黄含有資材を注入しているときは、該型枠5内の空気は、一方の外型枠26aの上面に設けられたエアー抜き孔29から逃げて行く。
【0070】
また、上記型枠5内へ硫黄含有資材を注入している間は、上記材料ホッパー1、圧力発生器2a,2bのシリンダ11a,11b、注入ホース4及び型枠5を、硫黄の融点(119℃)以上の設定温度範囲(例えば135〜150℃程度)内に加熱しておく。これにより、上記それぞれの構成要素自体の内部において硫黄含有資材が固化しないようにして、溶融状態に維持することができる。なお、上記型枠5内に硫黄含有資材を注入する工程は、該型枠5に振動を加えながら注入してもよい。この場合は、硫黄含有資材が流動性の低い材料であっても型枠5内に注入することができる。
【0071】
そして、上記型枠5のキャビティ28に硫黄含有資材が一杯に注入されたら、該型枠5の注入口24を閉じる。この注入口24の閉じ作業は、図9〜図11に示す遮断機構6を用いて、型枠5の注入口24内にメクラ栓33を押し込んで行う。このとき、上記注入口24内に残っていた硫黄含有資材が上記メクラ栓33の押し込みによってキャビティ28内に押し付けられ、上記注入口24に対応する個所を平滑面に仕上げることができる。
【0072】
その後、上記型枠5の注入口24から注入ホース4を外して、次の製品製造のための別の型枠5の注入口24にその注入ホース4を接続する。
【0073】
この状態で、上記型枠5の加熱を停止して上記キャビティ28内に注入された硫黄含有資材を常温で徐冷する。そして、所定の時間が経過したら、図5に示すように型枠5を分解して、上記キャビティ28内で硫黄含有資材が冷却固化して成型された硫黄固化体を上記型枠5から取り出す。このとき、型枠5の分解は、図9において中型枠25の一部25aを内側に移動させることで中型枠25全体を内側に絞り込んで硫黄固化体と分離させ、専用の治具を用いて中型枠25を引き出し、その後、両端部の妻板27a,27bを硫黄固化体から分離させ、最後に、外型枠26a,26bを上下に2分割する。これにより、製品としての硫黄固化体を上記型枠5から取り出すことができる。
【0074】
なお、以上の説明においては、材料ホッパー1内に収容された硫黄含有資材を吸引して設定温度範囲内に加熱されるシリンダ11内に引き出し、該シリンダ11内に引き出された硫黄含有資材に所定圧力をかけて上記シリンダ11から押し出す圧力発生器2を、材料ホッパー1に対して並列に2個(2a,2b)設けたものとしたが、本発明はこれに限られず、材料ホッパー1に対して1個だけ設けてもよい。この場合は、材料ホッパー1内に収容された硫黄含有資材を吸引して上記シリンダ11内に引き出す動作と、該シリンダ11内に引き出された硫黄含有資材に所定圧力をかけて上記シリンダ11から押し出す動作とを交互に実行することはできないが、基本的な動作は全く同様に実行でき、構造を簡単とすることができる。
【0075】
また、以上の説明においては、材料ホッパー1、圧力発生器2a,2bのシリンダ11a,11b、注入ホース4及び型枠5を、硫黄の融点以上の設定温度範囲内に加熱するために、それぞれの構成要素自体に加熱手段を付設したものとしたが、本発明はこれに限られず、図1に示すように、それぞれの構成要素の周囲を箱状部材40,41等で囲って、その内部にジェットヒーター等の加熱空気供給装置で設定温度範囲(例えば135〜150℃程度)の加熱空気を送り、その内部の雰囲気温度を硫黄の融点(119℃)以上に加熱するようにしてもよい。この場合は、それぞれの構成要素の周囲を箱状部材40,41等で囲うだけでよいので、既存の材料ホッパー1、圧力発生器2a,2bのシリンダ11a,11b、注入ホース4及び型枠5を使用することができる。したがって、従来のプラントを利用して本発明による硫黄固化体の製造に移行することも可能であり、コストアップを抑えることができる。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明による硫黄固化体の製造方法及び製造装置により製造した硫黄固化体製品は、各種の産業及び用途分野で利用できる。その製品例を挙げれば、次のようなものがある。
(製品例)
ヒューム管、パイプ、マンホール、推進管、卵形管、セグメント、ボックスカルバート、U字側溝、側溝、蓋、三面水路、桝、歩車道境界ブロック、縁石、L型擁壁、平板、魚巣ブロック、漁礁、消波ブロック、基礎ブロック等。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明による硫黄固化体の製造装置の実施形態を示す斜視図である。
【図2】図1に示す材料ホッパーの拡大正面図である。
【図3】図1に示す材料ホッパーの拡大側面図である。
【図4】図1に示す圧力発生器の拡大平面図である。
【図5】図1に示す型枠の構成要素を示す分解斜視図である。
【図6】図1に示す型枠の構造を示す分解斜視図である。
【図7】図1に示す圧力発生器と開閉プレートの動作を説明する、シリンダの上半分を分解した状態の斜視説明図である。
【図8】同じく、図1に示す圧力発生器と開閉プレートの動作を説明する、シリンダの上半分を分解した状態の斜視説明図である。
【図9】型枠の注入口の遮断機構を説明するために、該型枠を注入口の位置においてその長手方向に直交する面で切断した横断面図である。
【図10】同じく、型枠を注入口の位置においてその長手方向に直交する面で切断した横断面図である。
【図11】同じく、型枠を注入口の位置においてその長手方向に直交する面で切断した横断面図である。
【図12】型枠の注入口の遮断機構を示す斜視図である。
【図13】同じく、型枠の注入口の遮断機構を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0078】
1…材料ホッパー
2a…第1の圧力発生器
2b…第2の圧力発生器
3a…第1の開閉プレート
3b…第2の開閉プレート
4…注入ホース
5…型枠
6…遮断機構
7a,7b…撹拌羽
11a,11b…シリンダ
12a,12b…ピストン
14a,14b…駆動モータ
15a,15b…材料ホッパーからの引出し口
16a,16b…シリンダからの押出し口
17…第1の開閉プレートの貫通孔
18a,18b…第2の開閉プレートの貫通孔
19…端板
21…駆動用シリンダ
22a,22b…プレートカバー
24…型枠の注入口
25…中型枠
26a,26b…外型枠
27a,27b…妻板
28…キャビティ
29…エアー抜き孔
30…注入口開閉板
31…ガイドプレート
32…ホース受金具
33…メクラ栓
36…押込みボルト
40,41…箱状部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融状態の硫黄含有資材を、硫黄の融点以上の設定温度範囲内に加熱された材料ホッパーに収容する工程と、
上記材料ホッパー内に収容された硫黄含有資材を圧力発生器により吸引して上記の設定温度範囲内に加熱されたシリンダ内に引き出す工程と、
上記シリンダ内に引き出された硫黄含有資材を上記圧力発生器により所定圧力をかけて該シリンダから押し出し、内部に密閉可能状態のキャビティを有し上記の設定温度範囲内に加熱された型枠内に注入口から注入する工程と、
上記キャビティに硫黄含有資材が一杯に注入された後の型枠の注入口を閉じる工程と、
上記型枠の加熱を停止して上記キャビティ内に注入された硫黄含有資材を徐冷する工程と、
上記キャビティ内の硫黄含有資材が冷却固化して成型された硫黄固化体を上記型枠から取り出す工程と、
を行うことを特徴とする硫黄固化体の製造方法。
【請求項2】
上記材料ホッパー内に収容された硫黄含有資材を、該材料ホッパー内に設けられた撹拌羽で撹拌することを特徴とする請求項1記載の硫黄固化体の製造方法。
【請求項3】
上記型枠内に硫黄含有資材を注入する工程は、該型枠に振動を加えながら注入することを特徴とする請求項1又は2記載の硫黄固化体の製造方法。
【請求項4】
硫黄の融点以上の設定温度範囲内に加熱されて溶融状態の硫黄含有資材を内部に収容する材料ホッパーと、
上記材料ホッパー内に収容された硫黄含有資材を吸引して上記の設定温度範囲内に加熱されるシリンダ内に引き出し、該シリンダ内に引き出された硫黄含有資材に所定圧力をかけて上記シリンダから押し出す圧力発生器と、
上記材料ホッパー内の硫黄含有資材をシリンダ内に引き出す引出し口及び該シリンダから硫黄含有資材を押し出す押出し口にそれぞれ設けられ、連動して移動し上記引出し口及び押出し口を交互に開閉する開閉プレートと、
上記シリンダからの硫黄含有資材の押出し口に基端部が接続され、上記の設定温度範囲内に加熱されて内部を硫黄含有資材が流れる注入ホースと、
上記注入ホースの他端部に硫黄含有資材の注入口が接続され、内部に上記注入口に連通すると共に密閉可能状態のキャビティを有し、且つこのキャビティに連通するエアー抜き孔を有し、上記の設定温度範囲内に加熱される型枠と、
上記型枠の注入口に設けられ、上記キャビティ内に硫黄含有資材が一杯に注入された後の注入口を閉じる遮断機構と、
を含んでなることを特徴とする硫黄固化体の製造装置。
【請求項5】
上記材料ホッパー、圧力発生器のシリンダ、注入ホース及び型枠を、硫黄の融点以上の設定温度範囲内に加熱するために、それぞれの構成要素自体に加熱手段を付設したことを特徴とする請求項4記載の硫黄固化体の製造装置。
【請求項6】
上記材料ホッパー、圧力発生器のシリンダ、注入ホース及び型枠を、硫黄の融点以上の設定温度範囲内に加熱するために、それぞれの構成要素の周囲を箱状部材で囲って、その内部の雰囲気温度を加熱するようにしたことを特徴とする請求項4記載の硫黄固化体の製造装置。
【請求項7】
上記圧力発生器は、上記材料ホッパーに対して並列に複数個設け、上記材料ホッパー内に収容された硫黄含有資材を吸引して上記シリンダ内に引き出す動作と、該シリンダ内に引き出された硫黄含有資材に所定圧力をかけて上記シリンダから押し出す動作とを交互に実行可能としたことを特徴とする請求項4〜6のいずれか1項に記載の硫黄固化体の製造装置。
【請求項8】
上記開閉プレートは、上記材料ホッパーからの硫黄含有資材の引出し口及び上記シリンダからの硫黄含有資材の押出し口の部分を除きその長手方向に沿って周囲を覆う鞘状のプレートカバーの中に収められ、該プレートカバーの中でスライド移動することを特徴とする請求項4〜7のいずれか1項に記載の硫黄固化体の製造装置。
【請求項9】
上記圧力発生器のシリンダは、その長手方向に沿って上下に2分割できる構造とされていることを特徴とする請求項4〜8のいずれか1項に記載の硫黄固化体の製造装置。
【請求項10】
上記材料ホッパーの内部には、該材料ホッパー内に収容された硫黄含有資材を撹拌する撹拌羽を設けたことを特徴とする請求項4〜9のいずれか1項に記載の硫黄固化体の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−227551(P2009−227551A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−78240(P2008−78240)
【出願日】平成20年3月25日(2008.3.25)
【出願人】(000004444)新日本石油株式会社 (1,898)
【出願人】(597147832)不二コンクリート工業株式会社 (5)
【Fターム(参考)】