説明

硬化アミノ樹脂粒子及びその表面処理方法

【課題】 分散安定性に優れた硬化アミノ樹脂粒子の提供であり、該硬化アミノ樹脂粒子の表面処理方法の提供であり、そして該硬化アミノ樹脂粒子、分子内にカルボキシル基を有する水性ポリマー類、及び水性媒体からなる該硬化アミノ樹脂粒子の水分散体の提供である。
【解決手段】 分子内にカルボキシル基を有する水溶性ポリマー類にて表面処理された硬化アミノ樹脂粒子、その硬化アミノ樹脂粒子の表面処理方法、及びその硬化アミノ樹脂粒子の水分散体による。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分子内にカルボキシル基を有する水溶性ポリマー類にて表面処理された硬化アミノ樹脂粒子、及びその表面処理方法に関するものである。本発明の分子内にカルボキシル基を有する水溶性ポリマー類にて表面処理されたアミノ樹脂粒子は、特に硬化アミノ樹脂粒子の水性媒体での分散安定性に優れ、さらに粒子表面の親水疎水性の制御が可能であり、耐水性、耐溶剤性、耐熱性も良好であるという特徴を有し、各種研磨剤、塗料、インキ、艶消し剤、樹脂フィラー、樹脂フィルムの滑り性向上剤、クロマト充填剤、耐磨耗剤、液晶ディスプレイ用スペーサー、光拡散シートの光拡散剤、デジタルペーパーなどの電気泳動表示装置用顔料、タッチパネル用ハードコート剤、トナー及びトナー用外添剤、ガス吸着剤、酸性物質の吸着剤、太陽電池用電極、水分解用の光触媒、光学材料、磁性材料、導電材料、難燃剤、製紙材料、繊維処理材料、印刷用原版の凹凸付与剤などとして好適に利用される。
【背景技術】
【0002】
硬化アミノ樹脂粒子の製造方法としては、種々の方法が提案されている。ベンゾグアナミン、メラミン、ホルムアルデヒドを所定のpH範囲で反応させた初期縮合物を、撹拌状態下にある親水性の高分子保護コロイド水溶液に投入して乳化させて、次いで酸等の硬化触媒を加えて硬化反応させる方法が開示されている(特許文献1参照。)。メラミン及び/又はベンゾグアナミンとホルムアルデヒドとの水親和性初期縮合物を、アニオン性又は非イオン性の界面活性剤を含む水性液中で、炭素数10ないし18のアルキル基を有するアルキルベンゼンスルホン酸の懸濁下に縮合硬化させる方法が開示されている(特許文献2参照。)。また、5ないし70nmの平均粒子径を有するコロイダルシリカの懸濁下でメラミン化合物とアルデヒド化合物の初期縮合物の水溶液を生成させ、この水溶液に酸触媒を加えて球状複合硬化メラミン樹脂粒子を析出させる方法が開示されている(特許文献3参照。)。
【0003】
これらの方法で得られる硬化アミノ樹脂粒子は一般的に比重が大きく、水性媒体中では安定に分散することができず、容易に沈降することが知られている。例えば硬化アミノ樹脂粒子の水分散液を塗布する場合、硬化アミノ樹脂粒子が水性媒体中に沈降するために均一な塗付膜が得られない。硬化アミノ樹脂粒子の沈降はスケールが大きくなるに従って、作業性が困難になるため、各種用途プロセスにおける重要な課題であった。
【0004】
硬化アミノ樹脂粒子の適用用途範囲を拡大させるために、硬化アミノ樹脂粒子を水性媒体中に安定に分散させる方法が望まれている。
【特許文献1】特開昭50−45852号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】特開昭62−68811号公報(特許請求の範囲)
【特許文献3】特開2002−327036号公報(特許請求の範囲)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のように、従来の方法では硬化アミノ樹脂粒子を水性媒体中に安定に分散させるという課題がある。
【0006】
従って、本発明の目的は、分散安定性に優れた硬化アミノ樹脂粒子の提供であり、該硬化アミノ樹脂粒子の表面処理方法の提供であり、そして該硬化アミノ樹脂粒子、分子内にカルボキシル基を有する水性ポリマー類、及び水性媒体からなる該硬化アミノ樹脂粒子の水分散体の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の目的は、以下の手段によって達成される。
【0008】
本発明の第一観点は、分子内にカルボキシル基を有する水溶性ポリマー類にて表面処理された硬化アミノ樹脂粒子であることである。
【0009】
その好ましい態様は、以下の通りである。
【0010】
その分子内にカルボキシル基を有する水溶性ポリマー類として、ポリ(メタ)アクリル酸類、スチレンマレイン酸共重合体類、(メタ)アクリル酸マレイン酸共重合体類、スチレンアクリル酸共重合体類、カルボキシメチルセルロース類、分子内にカルボキシル基を有するポリエステル類、分子内にカルボキシル基を有するポリアミド類、分子内にカルボキシル基を有する高分岐ポリマー類、であること。なお、該ポリマー中のカルボキシル基は金属塩、又はアミン塩であってもよい。また、カルボキシル基の一部がエステル結合、及びアミド結合を形成していてもよい。
【0011】
硬化アミノ樹脂粒子が、メラミン樹脂とシリカを含む球状複合硬化メラミン樹脂粒子であること。
【0012】
次に、本発明の第二観点は、水性媒体中、0℃ないし100℃の温度下、硬化アミノ樹脂粒子を分子内にカルボキシル基を有する水溶性ポリマー類で表面処理する工程を含む、硬化アミノ樹脂粒子の表面処理方法であることである。
【0013】
その好ましい態様は、以下の通りである。
【0014】
硬化アミノ樹脂粒子1重量部に対して、分子内にカルボキシル基を有する水溶性ポリマー類0.01ないし500重量部を用いること。
【0015】
その分子内にカルボキシル基を有する水溶性ポリマー類として、ポリ(メタ)アクリル酸類、スチレンマレイン酸共重合体類、(メタ)アクリル酸マレイン酸共重合体類、スチレンアクリル酸共重合体類、カルボキシメチルセルロース類、分子内にカルボキシル基を有するポリエステル類、分子内にカルボキシル基を有するポリアミド類、分子内にカルボキシル基を有する高分岐ポリマー類、であること。なお、該ポリマー中のカルボキシル基は金属塩、又はアミン塩であってもよい。また、カルボキシル基の一部がエステル、及びアミド結合を形成していてもよい。
【0016】
ここで、メラミン樹脂とシリカを含む硬化アミノ樹脂粒子の製造方法(参考例1)は、下記の(a)及び(b)の各工程:
(a)水性媒体中、粒子径5ないし70nmのコロイダルシリカの懸濁下で、メラミン化合物とアルデヒド類を塩基性条件下で反応させて、水に可溶なアミノ樹脂の初期縮合物の水溶液を調製する工程、及び
(b)(a)工程で得られた水溶液に酸触媒を加えて、硬化アミノ樹脂粒子を析出させる工程、
からなる。
【0017】
次に、本発明の第三観点は、硬化アミノ樹脂粒子、分子内にカルボキシル基を有する水溶性ポリマー類、及び水性媒体からなる硬化アミノ樹脂粒子の水分散体である。
【0018】
そのより好ましい態様は、以下の通りである。
【0019】
硬化アミノ樹脂粒子1重量部に対して、分子内にカルボキシル基を有する水溶性ポリマー類が0.01ないし500重量部であり、水性媒体が0.5ないし10000重量部である硬化アミノ樹脂粒子の水分散体である。
【0020】
その分子内にカルボキシル基を有する水溶性ポリマー類として、ポリ(メタ)アクリル酸類、スチレンマレイン酸共重合体類、(メタ)アクリル酸マレイン酸共重合体類、スチレンアクリル酸共重合体類、カルボキシメチルセルロース類、分子内にカルボキシル基を有するポリエステル類、分子内にカルボキシル基を有するポリアミド類、分子内にカルボキシル基を有する高分岐ポリマー類、であること。なお、該ポリマー中のカルボキシル基は金属塩、又はアミン塩であってもよい。また、カルボキシル基の一部がエステル、及びアミド結合を形成していてもよい。
【0021】
水性媒体として、水、又は水と有機溶剤の混合溶剤であること。なお、水に可溶する有機溶剤であれば特に制限はないが、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、プロパノールなどのアルコール類、ジオキサン、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタンなどのエーテル類、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルオキシドなどの極性溶剤、であること。
【発明の効果】
【0022】
硬化アミノ樹脂粒子の適用用途範囲を拡大させるために、硬化アミノ樹脂粒子を水性媒体に安定に分散させる方法を確立した。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
まず本発明の硬化アミノ樹脂粒子について説明する。硬化アミノ樹脂粒子としては、公知の硬化尿素樹脂粒子、硬化メラミン樹脂粒子、硬化グアナミン樹脂粒子、及びこれらの共縮合樹脂粒子などを使用することができる。また公知の染料や顔料を含ませた着色された硬化アミノ樹脂粒子を使用することもできる。硬化アミノ樹脂粒子の粒子径は特に制限はないが、0.05ないし100μmのものが好ましく使用できる。
【0024】
これらの中では特開2003−327036号公報に記載されているメラミン樹脂とシリカを含む球状複合硬化メラミン樹脂粒子を使用することが好ましい。メラミン樹脂とシリカを含む球状複合硬化メラミン樹脂粒子とはコロイダルシリカが粒子表面付近に偏在した球状複合硬化メラミン樹脂粒子であり、該粒子は一次粒子が球状で独立しており、空孔は有しておらず、コロイダルシリカが粒子最表面から約0.2μmの深さ内の粒子表面付近に存在している。コロイダルシリカは粒子表面付近の硬化メラミン樹脂内に埋め込まれているか、粒子表面上に固着した状態で存在するが、通常最表面成分は硬化メラミン樹脂である。該粒子は製造時に水溶性の保護コロイドや界面活性剤を使用しておらず、これらが粒子表面に存在していないので、粒子表面は正電荷に帯電していると推察され、分子内にカルボキシル基を有する水溶性ポリマー類と効率的に反応させることができると考えられる。また蛍光染料や水溶性染料で着色されたメラミン樹脂とシリカを含む球状複合硬化メラミン樹脂粒子を使用することもできる。
【0025】
分子内にカルボキシル基を有する水溶性ポリマー類としては、ポリマー構造中に1つ以上のカルボキシル基を有するポリマー類を使用できる。例えば、ポリ(メタ)アクリル酸類、スチレンマレイン酸共重合体類、(メタ)アクリル酸マレイン酸共重合体類、スチレンアクリル酸共重合体類、カルボキシメチルセルロース類、分子内にカルボキシル基を有するポリエステル類、分子内にカルボキシル基を有するポリアミド類、分子内にカルボキシル基を有する高分岐ポリマー類、などを使用することができる。なお、該ポリマー中のカルボキシル基は金属塩、又はアミン塩であってもよい。また、カルボキシル基の一部がエステル、及びアミド結合を形成していてもよい。
【0026】
本発明の硬化アミノ樹脂粒子と分子内にカルボキシル基を有する水溶性ポリマー類の表面処理時に使用する反応媒体としては水が最も好ましい。また水の一部を、水に可溶する有機溶剤に置き換えた混合溶剤も使用できる。好ましい有機溶剤としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、プロパノールなどのアルコール類、ジオキサン、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタンなどのエーテル類、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルオキシドなどの極性溶剤が挙げられる。
【0027】
分子内にカルボキシル基を有する水溶性ポリマー類の表面処理時の仕込み量は、硬化アミノ樹脂粒子1重量部に対して0.01ないし500重量部、特に0.05ないし100重量部存在させることが好ましい。0.01重量部未満では分子内にカルボキシル基を有する水溶性ポリマー類での改質効果が低く、水性媒体に安定に分散させることが困難になる。また500重量部を超えても分子内にカルボキシル基を有する水溶性ポリマー類にて表面処理させた硬化アミノ樹脂粒子が得られるが、反応に関与しない残存ポリマーが増えるだけであり経済的でない。
【0028】
本発明の硬化アミノ樹脂粒子と分子内にカルボキシル基を有する水溶性ポリマー類の表面処理時の温度は、0℃ないし100℃で行うことが好ましい。20℃ないし80℃で行うとさらに好ましい。
【0029】
表面処理時間は0.1ないし10時間程度でよい。表面処理は分子内にカルボキシル基を有する水溶性ポリマー類が析出しない条件下において、塩基性条件下でも酸性条件下でもどちらでもよく、中性条件下で行ってもよい。表面処理時のpHを調節するために、塩基性化合物や酸性化合物を使用できる。塩基性化合物としては特に制限なく、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア水などが使用できる。酸性化合物としても特に制限はなく、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸や、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸、スルファミン酸などのスルホン酸類、ギ酸、シュウ酸、安息香酸、フタル酸などの有機酸などを使用できる。
【0030】
本発明の方法にて得られた、分子内にカルボキシル基を有する水溶性ポリマー類にて表面処理させた硬化アミノ樹脂粒子は、一般的な濾過又は遠心分離した固形分を乾燥するか、又は樹脂粒子の水分散スラリーを直接噴霧乾燥することにより、粉末状の粒子として得ることができる。乾燥条件は、温度が50℃ないし250℃、時間は0.01ないし50時間行うことが好ましい。乾燥された粉末状の粒子が粒子間凝集している場合は、ホモミキサー、ヘンシェルミキサー、レーディゲミキサーなどの剪断力を有する混合機や、ピンディスクミル、パルベライザー、イノマイザー、カウンタージェットミルなどの粉砕機で適切に処理すれば、球状粒子を破壊することなく粒子間凝集をほぐすことができる。
【0031】
本発明の硬化アミノ樹脂粒子、分子内にカルボキシル基を有する水溶性ポリマー類、及び水性媒体からなる硬化アミノ樹脂粒子の水分散体は、硬化アミノ樹脂粒子を水性媒体中で分子内にカルボキシル基を有する水溶性ポリマー類と混合することで得ることができる。
【0032】
硬化アミノ樹脂粒子と分子内にカルボキシル基を有する水溶性ポリマー類の混合時の温度は、0℃ないし100℃で行うことが好ましい。20℃ないし80℃で行うとさらに好ましい。
【0033】
混合時間は0.1ないし10時間程度でよい。表面処理は分子内にカルボキシル基を有する水溶性ポリマー類が析出しない条件下において、塩基性条件下でも酸性条件下でもどちらでもよく、中性条件下で行ってもよい。表面処理時のpHを調節するために、塩基性化合物や酸性化合物を使用できる。塩基性化合物としては特に制限なく、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア水などが使用できる。酸性化合物としても特に制限はなく、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸や、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸、スルファミン酸などのスルホン酸類、ギ酸、シュウ酸、安息香酸、フタル酸などの有機酸などを使用できる。
【0034】
該硬化アミノ樹脂粒子の水分散体の水溶性媒体としては水が最も好ましい。また水の一部を、水に可溶する有機溶剤に置き換えた混合溶剤も使用できる。好ましい有機溶剤としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、プロパノールなどのアルコール類、ジオキサン、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタンなどのエーテル類、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルオキシドなどの極性溶剤が挙げられる。
【0035】
硬化アミノ樹脂粒子、分子内にカルボキシル基を有する水溶性ポリマー類、及び水性媒体の割合は任意であるが、硬化アミノ樹脂粒子1重量部に対して、分子内にカルボキシル基を有する水溶性ポリマー類が0.01ないし500重量部であり、水性媒体が0.5ないし10000重量部、特に分子内にカルボキシル基を有する水溶性ポリマー類が0.05ないし100重量部であり、水性媒体が1ないし1000重量部であることが好ましい。
【0036】
また、分子内にカルボキシル基を有する水溶性ポリマー類で表面処理させた硬化アミノ樹脂粒子を一般的な濾過、又は遠心分離した固形分を乾燥して得られる粉末状粒子、あるいは表面処理させた硬化アミノ樹脂粒子を直接噴霧乾燥することで得られる粉末状粒子を水性媒体へ再分散させることによって得ることができる。
【0037】
該硬化アミノ樹脂粒子の水分散体の粘度などの物性を調整するために、分子内にカルボキシル基を有さない水溶性ポリマー類を添加することもできる。分子内にカルボキシル基を有さない水溶性ポリマー類であれば特に制限はないが、例えば、ポリビニルアルコール類、ポリエチレンオキシド類、ポリエステル類、ポリアミド類、水溶性多糖類、ポリスチレンスルホン酸類、分子内にカルボキシル基を有さない高分岐ポリマー類などが使用できる。
【0038】
本発明で得られる分子内にカルボキシル基を有する水溶性ポリマー類にて表面処理させた硬化アミノ樹脂粒子の平均粒子径は、表面処理時に使用する硬化アミノ樹脂粒子の平均粒子径とほぼ同じか若干大きくなる程度であり、平均粒子径は0.05ないし100μmである。ここで平均粒子径(μm)は、Mie理論に基づくレーザー回折・散乱法により測定して得られる50%体積径(メジアン径)である。
【0039】
本発明で得られる分子内にカルボキシル基を有する水溶性ポリマー類にて表面処理させた硬化アミノ樹脂粒子は、正電荷に帯電した硬化アミノ樹脂粒子表面に水溶性ポリマー中のカルボキシル基が静電的に結合していることを特徴とする。
【0040】
また、以下に示すストークスの式によると、沈降速度は粘度に反比例して遅くなるが、本発明では硬化アミノ樹脂粒子の沈降速度はストークスの式から算出される値よりも著しく遅くなることを特徴とする。
【0041】
ω=[2r(ρ−ρ0)g]/9η
(式中の記号について η:媒質の粘度、ρ:分散粒子の密度、r:分散粒子の半径、ρ0:媒質の密度、ω:沈降速度、g:重力加速度)
【実施例】
【0042】
以下に本発明を実施例により更に具体的に説明するが、これによって本発明が限定されるものではない。
【0043】
以下の実施例において、試料の物性測定には下記の装置を使用した。
(1)GPC
ポンプ:CCPD[東ソー株式会社製]
脱気装置:SD−8012[東ソー株式会社製]
カラムオーブン:CO−8010[東ソー株式会社製]
検出器:RI−8010[東ソー株式会社製]
カラム:TSKgel G5000PWXL[東ソー株式会社製]+OHpak SB−802.5HQ[昭和電工株式会社製]
温度:40℃
溶媒:50mM硝酸ナトリウム水溶液
(2)レーザー回折・散乱式粒度分布測定
装置名:マスターサイザー2000[マルバーン社製]
(3)走査型電子顕微鏡(SEM)
装置名:JSM−7400[日本電子株式会社製]
(4)透過型電子顕微鏡−エネルギー分散型X線分析(TEM−EDX)
装置名:H−8000[株式会社日立製作所製]
(5)粘度測定
装置名:E型粘度計[型式:VISCO−ELD (株)TOKIMEC社製]
測定温度:25℃
ズリ速度:5〜100rpm
(6)X線光電子分光分析
装置名:X線光電子分光分析装置 ESCA−3200[(株)島津製作所社製]
【0044】
参考例1(硬化アミノ樹脂粒子の合成)
撹拌機、還流コンデンサー及び温度計を装備した2Lの反応フラスコに、メラミン100g、37%ホルマリン193g、水性シリカゾル[日産化学工業(株)製 スノーテックスN(商品名):Si0濃度20.3重量%、pH9.5、平均粒子径12.0nm]15.5g、水614gを仕込み、25%アンモニア水にてpHを8.0に調整した。その後、上記混合物を撹拌しながら昇温し、温度を70℃に保ち、30分反応させてメラミン樹脂の初期縮合物の水溶液を調製した。この時点でのメラミン樹脂の分子量は、GPC法(ポリスチレン換算)にて測定したところ310であった。次に温度を70℃に維持したまま、得られた初期縮合物の水溶液にパラトルエンスルホン酸・一水和物の10重量%水溶液を添加してpHを5.5に調整した。約2分後に反応系内が白濁して硬化アミノ樹脂粒子(硬化メラミン樹脂粒子)が析出した。その後、温度を90℃まで昇温して3時間硬化反応を続けた。冷却後、得られた反応液を濾過し、150℃で一晩静置乾燥し、ピンディスクミルで粉砕することにより白色の硬化アミノ樹脂粒子を得た。平均粒子径はレーザー回折・散乱式粒度分布測定装置で測定したところ、6.5μmであった。この硬化アミノ樹脂粒子をそのままの状態で走査型電子顕微鏡(SEM)にて観察し、及びスライス片の状態で透過型電子顕微鏡−エネルギー分散型X線分析(TEM−EDX)にて観察をしたところ、該粒子は球状で、かつコロイダルシリカが該粒子表面付近に偏在しており、粒子最表面成分はメラミン樹脂であることが確認された。得られた硬化アミノ樹脂粒子は球状複合硬化メラミン樹脂粒子であった。
【0045】
実施例1
300mLの反応フラスコに、POLY(STYRENE−ALT−MALEIC ACID),SODIUM SALT, 13WT% SOLUTION IN WATER[Aldrich社製 Mw=350,000]11.5g、蒸留水140g、参考例1で得られた硬化アミノ樹脂粒子0.3gを仕込み、25±3℃で10分間撹拌し、硬化アミノ樹脂粒子の分散水溶液を調整し、得られた分散水溶液の粘度を測定した。次に、得られた分散水溶液を試験管に移し、沈降高さの経時変化を追跡し、硬化アミノ樹脂粒子の高さを溶液の高さで除すことで硬化アミノ樹脂粒子の沈降速度を算出した。
【0046】
実施例2
300mLの反応フラスコに、カルボキシメチルセルロースナトリウム[関東化学株式会社製 Mw=90,000]1.5g、蒸留水150g、参考例1で得られた硬化アミノ樹脂粒子0.3gを仕込み、25±3℃で10分間撹拌し、硬化アミノ樹脂粒子の分散水溶液を調整し、得られた分散水溶液の粘度を測定した。次に、得られた分散水溶液を試験管に移し、沈降高さの経時変化を追跡し、硬化アミノ樹脂粒子の高さを溶液の高さで除すことで硬化アミノ樹脂粒子の沈降速度を算出した。
【0047】
実施例3
300mLの反応フラスコに、ポリアクリル酸ナトリウム [和光純薬工業株式会社製 重合度=22,000〜70,000]0.15g、蒸留水150g、参考例1で得られた硬化アミノ樹脂粒子0.3gを仕込み、25±3℃で10分間撹拌し、硬化アミノ樹脂粒子の分散水溶液を調整し、得られた分散水溶液の粘度を測定した。次に、得られた分散水溶液を試験管に移し、得られた溶液を試験管に移し、沈降高さの経時変化を追跡し、硬化アミノ樹脂粒子の高さを溶液の高さで除すことで硬化アミノ樹脂粒子の沈降速度を算出した。
【0048】
比較例1
300mLの反応フラスコに、蒸留水150g、参考例1で得られた硬化アミノ樹脂粒子0.3gを仕込み、25±3℃で10分間撹拌し、硬化アミノ樹脂粒子の分散水溶液を調整し、得られた分散水溶液の粘度を測定した。次に、得られた分散水溶液を試験管に移し、沈降高さの経時変化を追跡し、硬化アミノ樹脂粒子の高さを溶液の高さで除すことで硬化アミノ樹脂粒子の沈降速度を算出した。
【0049】
比較例2
300mLの反応フラスコに、ポリビニルアルコール [東京化成工業株式会社製 重合度=1750±50]1.5g、蒸留水150g、参考例1で得られた硬化アミノ樹脂粒子0.3gを仕込み、25±3℃で10分間撹拌し、硬化アミノ樹脂粒子の分散水溶液を調整し、得られた分散水溶液の粘度を測定した。次に、得られた分散水溶液を試験管に移し、沈降高さの経時変化を追跡し、硬化アミノ樹脂粒子の高さを溶液の高さで除すことで硬化アミノ樹脂粒子の沈降速度を算出した。
【0050】
実施例1ないし3、及び比較例1ないし2で算出された硬化アミノ樹脂粒子の沈降速度と硬化アミノ樹脂粒子の分散水溶液の濃度を表1に示した。
【0051】
【表1】

【0052】
実施例1で得られた硬化アミノ樹脂粒子分散液から硬化アミノ樹脂粒子をろ別し、蒸留水で洗浄した。次に、40℃で12時間真空乾燥後、ペレット状に成形した。その後、カーボンテープに固定し、X線光電子分光分析を行い、硬化アミノ樹脂粒子表面に存在する炭素の結合状態を評価した。また、未処理の硬化アミノ樹脂粒子のX線光電子分光分析も同様に行った。X線光電子分光分析結果を図1に示した。図1より、実施例1で得られた硬化アミノ樹脂粒子は、未処理の硬化アミノ樹脂粒子を比較すると285eVのピークが増大していることから硬化アミノ樹脂粒子表面にPOLY(STYRENE−ALT−MALEIC ACID)が結合していることが言える。
【0053】
ストークスの式によると、沈降速度は粘度に反比例することが知られている。つまり、各々の実施例、及び比較例で算出された硬化アミノ樹脂粒子の沈降速度に各々の粘度値を掛けることで粘度が1mPa・Sにおける沈降速度が算出できる。実施例1ないし3で算出された硬化アミノ樹脂粒子の沈降速度に各々の粘度値を掛けた値と、比較例1で算出された硬化アミノ樹脂粒子の沈降速度に比較例1の粘度値を掛けた値を比較すると実施例1ないし3の粘度が1mPa・Sにおける沈降速度は著しく遅い。また、実施例1ないし3で算出された硬化アミノ樹脂粒子の沈降速度に各々の粘度値を掛けた値と、比較例2で算出された硬化アミノ樹脂粒子の沈降速度に比較例2の粘度値を掛けた値を比較すると実施例1ないし3の粘度が1mPa・Sにおける沈降速度は著しく遅いことから、分子内にカルボキシル基を有する水溶性ポリマー類の効果が大きいことが言える。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】実施例1で得られた硬化アミノ樹脂粒子分散液から得られた硬化アミノ樹脂粒子と未処理の硬化アミノ樹脂粒子とのX線光電子分光分析による硬化アミノ樹脂粒子表面に存在する炭素の結合状態の評価結果を図1に示す。
【0055】
縦軸は、光電子強度(Intensity/Percent)を示す。横軸は、結合エネルギー(Binding Energy/eV)を示す。
【符号の説明】
【0056】
1は、実施例1で得られた硬化アミノ樹脂粒子分散液から得られた硬化アミノ樹脂粒子粒子のX線光電子分光分析による硬化アミノ樹脂粒子表面に存在する炭素の結合状態の評価結果を示す。
【0057】
2は、未処理の硬化アミノ樹脂粒子のX線光電子分光分析による硬化アミノ樹脂粒子表面に存在する炭素の結合状態の評価結果を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子内にカルボキシル基を有する水溶性ポリマー類にて表面処理された硬化アミノ樹脂粒子。
【請求項2】
水性媒体中、0℃ないし100℃の温度下、硬化アミノ樹脂粒子を分子内にカルボキシル基を有する水溶性ポリマー類で表面処理する工程を含む、請求項1に記載の硬化アミノ樹脂粒子の表面処理方法。
【請求項3】
硬化アミノ樹脂粒子1重量部に対して、分子内にカルボキシル基を有する水溶性ポリマー類0.01ないし500重量部を用いる請求項2に記載の硬化アミノ樹脂粒子の表面処理方法。
【請求項4】
硬化アミノ樹脂粒子、分子内にカルボキシル基を有する水溶性ポリマー類、及び水性媒体からなる硬化アミノ樹脂粒子の水分散体。
【請求項5】
硬化アミノ樹脂粒子1重量部に対して、分子内にカルボキシル基を有する水溶性ポリマー類が0.01ないし500重量部であり、水性媒体が0.5ないし10000重量部である請求項4に記載の硬化アミノ樹脂粒子の水分散体。

【図1】
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【公開番号】特開2008−101040(P2008−101040A)
【公開日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−282173(P2006−282173)
【出願日】平成18年10月17日(2006.10.17)
【出願人】(000003986)日産化学工業株式会社 (510)
【Fターム(参考)】