説明

硬化性シート組成物

【課題】加熱加圧により金型形状に追従し、光照射により重合硬化し光学素子成型パターンを固定化することが出来る硬化性シート組成物であって、ガラス基板などの上に直接レンズパターンを成型でき、基板への密着性に優れ、さらに透明性、耐候性の高い硬化性シート組成物を提供する。
【解決手段】 加熱加圧により金型形状に追従し、光照射により重合硬化し、光学素子成型パターンを固定化することが出来る硬化性シート組成物であって、ポリカーボネートジオール変性ウレタンアクリレートオリゴマー50乃至94%と分子内に少なくとも1個のカルボキシル基を有する(メタ)アクリレート5乃至40%と光重合開始剤0.5乃至5%を含むことを特徴とする硬化性シート組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はガラス基板上に光学用部品を直接成型でき、ガラス基板への密着性に優れ、さらに透明性、耐候性に優れた硬化性シート組成物及びこれを用いて成型した成型物に関する。
【背景技術】
【0002】
レンズ等の光学用部品の成型方法として従来、液状の光硬化性樹脂を用いた方法は公知の事実として知られている。しかしながら液状の光硬化性樹脂では、膜厚を一定に保つことが困難なことや、気泡の混入、ハンドリングの煩雑さなどの問題があり、硬化性シート組成物を用いたレンズの成型方法が提案されている(特許文献1参照)
【0003】
しかしながら、これら硬化性シート組成物を用いた成型方法はフィルム上や、フィルム基板上に光学素子パターンなどを成型するものであり、ガラス基板上にシートを載せ雌型を押しつけ成型する直接成型を行うと、ガラスへの密着性が悪いために雌型から剥離する際にガラス面から剥離してしまったり、また長期にわたり屋外で使用すると剥離してしまうといった耐久性上の問題がある。
【0004】
他方、ガラス基板への直接成型方法としては、特許文献2に示されるような、ペースト状の硬化性組成物を雌型上に塗工し、活性光を照射することで硬化させるという方法が提案されているが、硬化性組成物とガラスとの密着性を高めるためにガラス基板にカップリング剤処理を行う必要があり工程数が多くなってしまう。また、ペースト状であるために、気泡の混入やはみ出した部分の処理に配慮しなければならないという問題があった。
【0005】
【特許文献1】特開平7−17132号公報
【特許文献2】特開2006−231917号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、加熱加圧により雌型形状に容易に追従し、光照射により重合硬化し光学素子成型パターンを固定化することが出来る硬化性シート組成物を提供することである。さらには、ガラス基板にカップリング剤処理等の前処理を行うことなく、ガラス基板上に直接レンズパターンを成型でき、硬化後はガラス基板への密着性に優れ、透明性、耐候性の高い硬化性シート組成物を供給することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記問題点を解決するため鋭意検討した結果、室温で固体状態であり、加熱により液化流動することが出来る硬化性シート組成物であって、(A)が主鎖炭素数4乃至6の脂肪族鎖両末端ジオール化合物を含む原料から成るポリカーボネートジオール(a1)とジイソシアネート(a2)と分子中に少なくとも1個のヒドロキシル基を含有する(メタ)アクリレート(a3)の反応によって得られるウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー50乃至94重量%と(B)分子内に少なくとも1個のカルボキシル基を有する(メタ)アクリレート5乃至40重量%と(C)光重合開始剤0.3乃至10重量%を含む硬化性シート組成物を用いることにより、基材に対する密着性に優れ、透明性、耐候性が良好であり、かつ成型時に気泡混入やはみ出しなどの問題が発生しない、ハンドリング性の優れた成型物の成型方法を見いだした。
【発明の効果】
【0008】
本発明の硬化性シート組成物は室温下では固形シート状であるためハンドリング性に優れ、種々の基材に対して高い密着性を有するため、例えばガラス基板への前処理を必要とせずにガラス基板上に直接光学素子を形成することが可能となる。さらには、透明性、耐候性に優れた硬化成型物を得ることができ、長期屋外での使用に適した光学素子を形成することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明について詳細に説明する。本発明の硬化性シート組成物は、室温で固体状態であり、加熱により液化流動することが出来るシート状の組成物であって、(A)主鎖炭素数4乃至6の脂肪族鎖両末端ジオール化合物を含む原料から成るポリカーボネートジオール(a1)とジイソシアネート(a2)と分子中に少なくとも1個のヒドロキシル基を含有する(メタ)アクリレート(a3)の反応によって得られるウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー;50乃至94重量%と(B)分子内に少なくとも1個のカルボキシル基を有する(メタ)アクリレート;5乃至40重量%と(C)光重合開始剤;0.3乃至10重量%、を含むことを特徴とするものである。
【0010】
本発明における成分(A)は、硬化性シート組成物に常温で固体のシートを形成させるために必要な成分であり、また硬化物に柔軟性と耐候性を与える成分である。成分(A)の構成としては、主鎖炭素数4乃至6の脂肪族鎖両末端ジオール化合物を含む原料から成るポリカーボネートジオール(a1)とジイソシアネート(a2)と分子中に少なくとも1個のヒドロキシル基を含有する(メタ)アクリレート(a3)の反応によって得られるウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーである。
【0011】
ポリカーボネートジオール(a1)は、主鎖炭素数4乃至6の脂肪族鎖両末端ジオール化合物を含む原料から成る。ここで、主鎖炭素数4乃至6の脂肪族鎖両末端ジオール化合物とは、主鎖が炭素数4乃至6の脂肪族鎖からなり、この主鎖中にアルキル、アリル、ハロゲン化アルキル、ハロゲンからなる側鎖を有してもよく、これらの主鎖の両末端がヒドロキシル基となっている化合物のことであり、例えば1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、1,4−ブタンジオール、3−フルオロメチル−1,5−ペンタンジオール、3−フルオロ−1,5−ペンタンジオールなどのジオール化合物が挙げられる。これらは単独で用いても2種以上を併用して用いてもよい。
【0012】
またポリカーボネートジオール(a1)は、典型的には前記主鎖炭素数4乃至6の脂肪族鎖両末端ジオール化合物とジエステル化合物との反応により合成される。ジエステル化合物としては一般に、炭酸ジエステル化合物が好適に用いられる。炭酸ジエステルの例として、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジ−n−プロピルカーボネート、ジイソプロピルカーボート、ジブチルカーボネート、ジシクロヘキシルカーボネート、ジフェニルカーボネート等が挙げられ、これらは単独で用いても2種以上を併用して用いてもよい。
【0013】
ジイソシアネート(a2)としては、例えば2,4−トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、1,3−キシリレンジイソシアネート、1,4−キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ビス(4−イソシアナトシクロヘキル)メタン、1,3−ビス(イソシアナトメチル) シクロヘキサン、1,4−ビス(イソシアナトメチル) シクロヘキサン、ノルボルナンジイソシアネート等が挙げられる。中でも、耐候性に優れた硬化物を得られることから、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の飽和ジイソシアネートが好ましく、さらには接着性の点から、イソホロンジイソシアネート、ビス(4−イソシアナトシクロヘキル)メタン、1,3−ビス(イソシアナトメチル) シクロヘキサン、1,4−ビス (イソシアナトメチル) シクロヘキサンが好ましい。
【0014】
分子中に少なくとも1個のヒドロキシル基を含有する(メタ)アクリレート(a3)としては、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ポリエチレングリコール等の二価のアルコールのモノ(メタ)アクリル酸エステル、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセリン等の三価のアルコールのモノ(メタ)アクリル酸エステルまたはジ(メタ)アクリル酸エステル、フェニルグリシジルエーテル、2−エチルオキシラン、スチレンオキシド、1,4−フェニルジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、1,2‐ビス(グリシジルオキシ)プロパン、2,3‐ブチレングリコールジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテルなどのモノ、ジグリシジル化合物のモノまたはジ(メタ)アクリル酸付加物等が挙げられ、これらは単独で用いても2種以上を併用して用いてもよい。
【0015】
本発明に用いる成分(A) の合成方法としては、特に限定されるものではなく、公知の合成方法が使用可能である。なお、本発明に用いる成分(A)は、重量平均分子量(Mw)が20,000乃至200,000であることが好ましく、さらに40,000乃至100,000の範囲であることが特に好ましい。Mwが20,000未満であると室温でのシート状態を保つことが困難となり、200,000を越えると加熱により流動しにくくなり、披着体への密着性、金型への追従が困難となる。
【0016】
本発明における成分(A)の重量割合は50乃至94%が好ましく、さらには60乃至80%であることが好ましい。50%未満であると、室温でのシート状態を保つことが困難となり、94%を越えると硬化物が硬くなりすぎ、成型物の成型が困難となる。
【0017】
本発明における成分(B)は硬化性シート組成物に基材に対する密着性を与える成分である。成分(B)の構成は、分子内に少なくとも1個のカルボキシル基を有する(メタ)アクリレートであり、例えば、ω−カルボキシ−ポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート、フタル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、アクリル酸ダイマー、β−(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロジェンサクシネート、2−(メタ)アクリロイロキシエチルコハク酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチルフタル酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸が挙げられる。中でも硬化性に優れ、耐候性に優れた硬化物を得られ、かつシート形状を保持できる点から、2-アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸が好ましい。
【0018】
本発明における成分(B)の重量割合は5乃至40%が好ましく、さらには10乃至30%であることが好ましい。5%未満であると、ガラス基板への密着性が悪くなり、40%より多くなると室温でのシート状態を保つことが困難となる。
【0019】
本発明における成分(C)は光重合開始剤であり硬化性シート組成物に硬化性を与える。成分(C)の例としては、アセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルホリノプロパン−1、ベンゾイン、ベンゾインエチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、ベンゾフェノン、ベンジル、メチルベンゾイルフォルメート、チオキサントン、ジエチルチオキサントン等を挙げられるがこれらに限定されず、従来から公知の光重合開始剤が使用可能である。特に、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニルケトン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−(4−ドデシルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−メチル−2−モルホリノ(4−チオメチルフェニル)プロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−〔4−(1−メチルビニル)フェニル〕プロパンのオリゴマーなどを光重合開始剤として用いることにより、揮発性ガスの発生を抑制することができ、特に2−ヒドロキシ−2−メチル−1−〔4−(1−メチルビニル)フェニル〕プロパンのオリゴマーは、その効果が大きく特に好ましい。これらは、1種単独でまたは2種以上を併用して用いることができる。
【0020】
本発明における成分(C)の重量割合は0.3乃至10%が好ましく、さらには0.5乃至5%であることが好ましい。10重量%より多いと組成物の保存安定性が低下したり、硬化物の物性が低下する。また、0.3重量%未満であると光硬化性が低下する。
【0021】
なお、上記(A),(B),(C)各成分の重量割合の和は100以下の値である。
【0022】
以上が本発明の硬化性シート組成物の構成成分であるが、その性能を損なわない範囲であれば必要に応じて、(A),(B)以外の(メタ)アクリル化合物、反応性希釈剤、熱可塑性ポリマー、レベリング剤、着色剤、スリップ剤、酸化防止剤、光安定剤、無機充填剤、紫外線吸収剤、重合禁止剤、シランカップリング剤等の公知の添加剤等を適宜配合して用いることができる。特には、硬化性シート組成物の貯蔵安定性向上や、硬化成型物の耐候性を向上させるために、酸化防止剤や光安定剤を添加することが好ましい。
【0023】
酸化防止剤、光安定剤として市販されている商品としては例えば、スミライザーBHT 、スミライザーS 、スミライザーBP−101、スミライザーGA−80 、スミライザーTNP、スミライザーTPP−R、スミライザーP−16(以上、住友化学社製)、アデカスタブAO−20、アデカスタブAO−30、アデカスタブAO−40、アデカスタブAO−50、アデカスタブAO−60、アデカスタブAO−70、アデカスタブAO−80、アデカスタブAO−330、アデカスタブPEP−4C、アデカスタブHP−10 、アデカスタブ2112、アデカスタブ260(以上、旭電化工業社製)、チヌビン770、チヌビン765、チヌビン144、チヌビン622、チヌビン111 、チヌビン123 、チヌビン292、イルガノックス1010、イルガノックス1035、イルガノックス1076、イルガノックス1098、イルガノックス1135、イルガノックス259(以上、チバジャパン社製)、 ファンクリルFA−711M、FA−712HM(以上、日立化成工業社製)、ダブルボンドケミカル社製chisorb292等が挙げられる(いずれも商品名) 。
【0024】
これら酸化防止剤や光安定剤の添加量は特に限定されないが、樹脂成分100重量部に対して、好ましくは0.001乃至5質量部、より好ましくは0.01乃至3質量部の範囲で添加する。
【0025】
本発明の硬化性シート組成物をシート状に加工する方法としては、公知の技術が使用できる。例えば、本発明の組成物を溶剤で希釈することで液状の塗液とし、離型処理が施されたペットフィルムなどの支持体上に塗液をフローコート法、ロールコート法、グラビアロール法、マイヤバー法、リップダイコート法等により支持体上に塗工し、溶媒を乾燥することにより任意の膜厚で本発明の硬化性シート組成物を得ることが出来る。液状の塗液は、成分(A)乃至(C)を配合後に溶剤で希釈するか、各成分の配合前にあらかじめ溶剤で希釈しておくことも可能である。
【0026】
本発明はまた、上記の硬化性シート組成物を40℃乃至100℃の温度に加熱することにより軟化または溶融させ、該軟化または溶融状態の該組成物に活性エネルギー線を照射することにより硬化させる硬化方法に関する。
【0027】
本発明の硬化性シート組成物は、好ましくはガラス、金属、プラスチック、セラミックなどの基材上に適用し、これを40℃乃至100℃、好ましくは60℃乃至90℃に加熱することで軟化または溶融し流動液化状態とする。ここで流動液化状態とは、該シート組成物の熱挙動をレオメータにて測定した際、G’(貯蔵弾性率)とG’’(損失弾性率)の比で表すことができ、典型的にはG’’/G’が1以上の値となった状態のことである。また、適用される基材に特に限定はないが、密着性及び後述する透光性の点からガラスが特に好ましい。
【0028】
上記の流動液化状態となった後、本発明の組成物に可視光、紫外線、ガンマ線などの活性エネルギー線を照射することで該硬化性シート組成物は重合硬化反応を起こして硬化する。ここで照射する活性エネルギー線の波長は、(C)成分の光重合開始剤の吸収波長に依存する。流動液化状態にある硬化性シート組成物に雌型を押し当て、この状態で硬化させれば任意の形状に成型することができる。また、雌型が金属製などで光を通さない材質である場合、基材をガラスなどの透光性のものにして基材面から活性エネルギー線を照射すればよい。
【0029】
本発明はさらに、上記方法により成型された成型物に関する。
【0030】
上記の方法により成型される成型物としては、電気・電子部品、コーティング基板、フレネルレンズ、レンチキュラーレンズ、プリズムレンズ、マイクロレンズ、光反射レンズ、ホログラム等の光学用部品などが挙げられる。本発明の硬化性シート組成物は透明性、耐候性に優れるため、特にレンズ等の光学用部品に好適である。なお、光学用部品に用いる場合、基材であるガラス上に直接成型した状態で用いることができる。
【実施例】
【0031】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではない。
【0032】
合成例1( ウレタンアクリレート1) : 温度計、攪拌機、還流管を備えたガラス製反応容器に、メチルエチルケトン582.26重量部、イソホロンジイソシアネート59.94重量部、4−メトキシフェノール0.05重量部、ジブチルスズジラウレート0.1重量部を仕込み、撹拌しながら60℃に加温した。これに70℃ に加温したポリカーボネートジオール(T5652 旭化成ケミカルズ製、1,5−ペンタンジオールおよび1,6−ヘキサンジオールを原料とする)520重量部を滴下し、滴下終了後、3時間撹拌して反応させた。ついで2−ヒドロキシエチルアクリレート2.32重量部を滴下し、滴下終了後3時間撹拌して反応させた。赤外分光によって、イソシアネート基が消失するのを確認して反応終了とし、ポリカーボネートウレタンアクリレートを得た。GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)測定の結果、この化合物のMwは60,000であった。
【0033】
比較合成例1(ウレタンアクリレート2): 合成例1の手順同様でメチルエチルケトン934.2重量部、イソホロンジイソシアネート90重量部、4−メトキシフェノール0.08重量部、ジブチルスズジラウレート0.16重量部、ポリカーボネートジオール(T5652 旭化成ケミカルズ製)700重量部、2−ヒドロキシエチルアクリレート11.6重量部にて合成を実施した。得られた化合物のMwは15,000であった。
【0034】
比較合成例2(ウレタンアクリレート3): 合成例1の手順同様でメチルエチルケトン2493.18重量部、イソホロンジイソシアネート250.86重量部、4−メトキシフェノール0.25重量部、ジブチルスズジラウレート0.5重量部、ポリカーボネートジオール(T5652 旭化成ケミカルズ製)2240重量部、2−ヒドロキシエチルアクリレート2.3重量部にて合成を実施した。得られた化合物のMwは250,000であった。
【0035】
比較合成例3(ウレタンアクリレート4): ポリカーボネートジオールの代わりに、ポリエーテルジオール(PTMG2000 三菱化学製) を使用するほかは、合成例1と同様の添加量、手順でポリエーテルウレタンアクリレートを得た。得られた化合物のMwは60,000であった。
【0036】
実施例および比較例: 合成例1および比較合成例1乃至3で得られたウレタンアクリレートを用いて、表1に示す配合割合にて硬化性シート組成物の塗液を得た。ついで、この塗液を離型処理が施されたペットフィルム上に、乾燥膜厚100μmとなるように、バーコーターを用いて成膜し、乾燥炉にて希釈溶剤を蒸発させることで硬化性シート組成物を得た。なお、表中の配合割合は特に断りのない限り重量基準である。
【0037】
成膜性試験:塗液を離型処理が施されたPETフィルム上に、乾燥膜厚100μmとなるように、バーコーターを用いて成膜し、乾燥炉にて希釈溶剤を蒸発させた後、塗膜の状態を確認した。乾燥後の塗膜の状態が一様であるものを合格とし、はじきや流動性を有する塗膜を不合格とした。
【0038】
成型性試験:実施例及び比較例のシート組成物を幅100μm高さ50μmのプリズム形状が施された金型を用いて、温度70℃、プレス圧力0.1MPaにて3分間押し圧成型を行い、その後紫外線を照射して硬化させ、硬化後に金型から剥離してシート組成物の成型硬化物を得た。この成型硬化物の形状と金型の形状を非接触三次元測定機(NH−3型測定機、三鷹光器社製)を用いて比較し、幅および高さ寸法がそれぞれ5%以内のものを合格とした。
【0039】
接着力試験:5.0mm×25mm×100mmのガラス板に実施例及び比較例の硬化性シート組成物を10mm×15mmの大きさで貼り付け支持体を除去後、他方のガラス板と貼り合わせ、70℃×1時間加熱した後、積算光量30kJ/m の紫外線を照射したものを試験片として評価に用いた。この試験片の両端をチャックに固定し、引張速度50mm/minにて引張せん断荷重をかけ、試験片が破壊するまでの最大荷重を測定し、引張せん断接着強さを算出した。引張せん断接着強さは3.0MPa以上を合格とした。
【0040】
透過率試験:3.0mm×25mm×50mmのガラス板に実施例及び比較例の硬化性シート組成物を全面に貼り付け、積算光量30kJ/m の紫外線を照射した後、支持体を除去したものを試験片として評価に用いた。この試験片の全光線透過率を濁度計(NDH2000 日本電色製)を用いて測定した。全光線透過率は85%以上のものを合格とした。
【0041】
耐候性試験:3.0mm×75mm×150mmガラス板に実施例及び比較例の硬化性シート組成物を全面に貼り付け、積算光量30kJ/m の紫外線を照射した後、支持体を除去したものを試験片として評価に用いた。この試験片をキセノンアークウェザーオメーター(アトラス・Ci4000 東洋精機製作所製)にて、1000時間劣化促進試験を行い、劣化促進試験後の試験片の状態を全光線透過率で確認し、初期の全光線透過率からの減少率が5%以内を合格、5%以上の減少率のものを不合格とした。
【0042】
【表1】

【0043】
【表2】

表内の( )は希釈溶剤を除いた樹脂成分の重量
【0044】
なお表中、光重合開始剤1:1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(Irgacure184、チバ・スペシャリティ・ケミカル社製品)、光重合開始剤2:2−ベンゾイルプロパン−2−オール(ダロキュア、メルク社製品)である。
【0045】
実施例1乃至5では、成膜性、成型性、接着力、透過率、耐候性において、良好な結果が得られた。中でも2−アクリロイロキエチルヘキサヒドロフタル酸を使用した実施例2乃至5及び比較例3乃至5では特に耐候性が良好であった。
【0046】
比較例1では成膜性が十分ではなく、接着力も低かった。比較例2では接着力が低かった。比較例3、4では成膜が困難であった。比較例5では成形性が十分ではなかった。比較例6では耐候性が十分ではなかった。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明の硬化性シート組成物は、ガラス基板への前処理を必要とせずにガラス基板上に直接光学素子を形成することが可能となり、生産効率を向上させることが出来る。成型硬化物は高い耐候性を有するため、長期屋外での使用に適した光学素子を製造することが可能となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
室温で固体状態であり、加熱により液化流動することが出来る硬化性シート組成物であって、次の(A),(B),(C)の各成分を含むことを特徴とする硬化性シート組成物。
(A)主鎖炭素数4乃至6の脂肪族鎖両末端ジオール化合物を含む原料から成るポリカーボネートジオール(a1)とジイソシアネート(a2)と分子中に少なくとも1個のヒドロキシル基を含有する(メタ)アクリレート(a3)の反応によって得られるウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー;50乃至94重量%
(B)分子内に少なくとも1個のカルボキシル基を有する(メタ)アクリレート;5乃至40重量%
(C)光重合開始剤;0.3乃至10重量%
【請求項2】
前記(B)分子内に少なくとも1個のカルボキシル基を有する(メタ)アクリレートが2−アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸である請求項1に記載の硬化性シート組成物。
【請求項3】
前記(A)ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーが、平均分子量20,000乃至200,000である請求項1,2に記載の硬化性シート組成物。
【請求項4】
請求項1乃至3いずれかに記載の硬化性シート組成物を基材上に適用し、40℃乃至100℃の温度に加熱することにより軟化または溶融させ、該軟化または溶融状態の該組成物に活性エネルギー線を照射することにより硬化させることを特徴とする硬化性シート組成物の硬化方法。
【請求項5】
前記基材がガラスである請求項4に記載の硬化性シート組成物の硬化方法。
【請求項6】
請求項4,5に記載の硬化方法により硬化成型されてなる成型物。
【請求項7】
前記成型物が光学用部品である請求項6の成型物。

【公開番号】特開2009−108206(P2009−108206A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−282341(P2007−282341)
【出願日】平成19年10月30日(2007.10.30)
【出願人】(000132404)株式会社スリーボンド (140)
【Fターム(参考)】