説明

硬化性組成物

【課題】より鉛筆硬度の改善された硬化膜を与える硬化性組成物を提供する。
【解決手段】(A)多官能重合性不飽和基含有化合物、(B)ラジカル重合開始剤、(C)下記一般式(1)で示される化合物によって変性された反応性酸化物粒子


[式(1)中、Rは2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する有機基を示し、Rは炭素数1〜3のアルキル基を示し、nは1〜8の整数を示す。]、及び(D)有機溶剤を含有する硬化性組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性組成物に関する。さらに詳しくは、鉛筆硬度の改善された硬化膜を与える硬化性組成物及び硬化膜に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチック製品、例えば、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンテレフタレート、塩化ビニル樹脂、ABS樹脂、酢酸セルロース、ポリプロピレン等は、軽量性、易加工性、耐衝撃性などに優れているので種々の用途に使用されている。しかしながら、これらプラスチック製品は、表面硬度が低いため、傷がつき易く、ポリカーボネートのような透明な樹脂においては、その樹脂が持つ本来の透明性あるいは外観を著しく損なうという欠点があり、フラットパネルディスプレイの反射防止フィルム等に使用する場合には像の鮮明度の低下につながってしまう。このため、これらプラスチック製品に耐摩耗性を付与し、表面硬度を高める活性エネルギー線硬化性ハードコート材料が求められている。
【0003】
これらの活性エネルギー線硬化性ハードコート材料は硬度を高めるためにシリカ等の金属酸化物粒子に反応性基を導入し、耐摩耗性と耐カール性の両立を目的とした技術が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。しかし、従来の方法は粒子に反応性基を導入する工程数が多く、均質な材料を得ることが困難であった。
【0004】
【特許文献1】特開2004−91765号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上述の問題に鑑みなされたものであり、より鉛筆硬度の改善された硬化膜を与える硬化性組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明者らは鋭意研究を行い、放射線硬化性組成物に、多官能(メタ)アクリロイル基及びシロキサン基を有する特定の化合物で変性された酸化物粒子を配合することにより、優れた鉛筆硬度を有する硬化膜を与えることを見出し、本発明を完成させた。
【0007】
即ち、本発明は下記の硬化性組成物及び硬化膜を提供する。
1.下記成分(A)〜(D):
(A)多官能重合性不飽和基含有化合物
(B)ラジカル重合開始剤
(C)下記一般式(1)で示される化合物によって変性された反応性酸化物粒子
【化3】

[式(1)中、Rは2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する有機基を示し、Rはそれぞれ独立に炭素数1〜3のアルキル基を示し、nは1〜8の整数を示す。]
(D)有機溶剤
を含有する硬化性組成物。
2.前記一般式(1)において、Rが下記構造を有する基である上記1に記載の硬化性組成物。
【化4】

[式中、Acは(メタ)アクリロイル基を示す。]
3.前記一般式(1)において、Rがメチル基又はエチル基である上記1又は2に記載の硬化性組成物。
4.前記酸化物粒子が、シリカ粒子である上記1〜3のいずれかに記載の硬化性組成物。
5.上記1〜4のいずれかに記載の硬化性組成物を硬化させてなる硬化膜。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、鉛筆硬度の改善された硬化膜を与える硬化性組成物を提供することができる。
本発明によれば、優れた鉛筆硬度を有する硬化膜を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を具体的に説明する。
I.硬化性組成物
本発明の硬化性組成物は、下記成分(A)〜(E)を含み得る。これらの成分のうち、成分(A)〜(D)は必須成分であり、成分(E)は目的に応じて配合される任意成分である。
(A)多官能重合性不飽和基含有化合物
(B)ラジカル重合開始剤
(C)下記一般式(1)で示される化合物によって変性された反応性酸化物粒子
【化5】

[式(1)中、Rは2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する有機基を示し、Rは炭素数1〜3のアルキル基を示し、nは1〜8の整数を示す。]
(D)有機溶剤
(E)添加剤
以下、各成分について説明する。
【0010】
(A)多官能重合性不飽和基含有化合物
本発明に用いられる多官能重合性不飽和基含有化合物(A)は、組成物の成膜性を高めるために好適に用いられる。多官能重合性不飽和基含有化合物(A)としては、分子内に2個以上の重合性不飽和基を含むものであれば、特に制限はないが、例えば、(メタ)アクリルエステル類、ビニル化合物類を挙げることができる。このうち、(メタ)アクリルエステル類が好ましい。
【0011】
(メタ)アクリルエステル類としては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、エチレングルコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングルコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングルコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングルコールジ(メタ)アクリレート、ビス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリレート類、及びこれらの水酸基へのエチレンオキシド又はプロピレンオキシド付加物のポリ(メタ)アクリレート類、分子内に2以上の(メタ)アクリロイル基を有するオリゴエステル(メタ)アクリレート類、オリゴエーテル(メタ)アクリレート類、及びオリゴエポキシ(メタ)アクリレート類等を挙げることができる。この中では、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート等が好ましい。
【0012】
ビニル化合物類としては、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル等を挙げることができる。
【0013】
このような多官能重合性不飽和基含有化合物(A)の市販品としては、例えば、東亞合成(株)製アロニックスM−400、M−404、M−408、M−450、M−305、M−309、M−310、M−315、M−320、M−350、M−360、M−208、M−210、M−215、M−220、M−225、M−233、M−240、M−245、M−260、M−270、M−1100、M−1200、M−1210、M−1310、M−1600、M−221、M−203、TO−924、TO−1270、TO−1231、TO−595、TO−756、TO−1343、TO−902、TO−904、TO−905、TO−1330、日本化薬(株)製KAYARAD D−310、D−330、DPHA、DPCA−20、DPCA−30、DPCA−60、DPCA−120、DN−0075、DN−2475、SR−295、SR−355、SR−399E、SR−494、SR−9041、SR−368、SR−415、SR−444、SR−454、SR−492、SR−499、SR−502、SR−9020、SR−9035、SR−111、SR−212、SR−213、SR−230、SR−259、SR−268、SR−272、SR−344、SR−349、SR−601、SR−602、SR−610、SR−9003、PET−30、T−1420、GPO−303、TC−120S、HDDA、NPGDA、TPGDA、PEG400DA、MANDA、HX−220、HX−620、R−551、R−712、R−167、R−526、R−551、R−712、R−604、R−684、TMPTA、THE−330、TPA−320、TPA−330、KS−HDDA、KS−TPGDA、KS−TMPTA、共栄社化学(株)製ライトアクリレート PE−4A、DPE−6A、DTMP−4A等を挙げることができる。
【0014】
本発明の組成物中における成分(A)の配合量は、溶剤を除く成分の合計を100質量%としたときに、20〜70質量%の範囲内であることが好ましく、30〜60質量%の範囲内であることがより好ましい。20質量%未満であると、塗膜の硬化性が不十分になるおそれがあり、70質量%を超えると、塗膜の外観が損なわれるおそれがある。
【0015】
(B)ラジカル重合開始剤
本発明に用いられるラジカル重合開始剤(B)としては、例えば、熱的に活性ラジカル種を発生させる化合物(熱重合開始剤)、及び放射線(光)照射により活性ラジカル種を発生させる化合物(放射線(光)重合開始剤)等の、汎用されているものを挙げることができ、放射線(光)重合開始剤が好ましい。
【0016】
放射線(光)重合開始剤としては、光照射により分解してラジカルを発生して重合を開始せしめるものであれば特に制限はなく、例えば、アセトフェノン、アセトフェノンベンジルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、キサントン、フルオレノン、ベンズアルデヒド、フルオレン、アントラキノン、トリフェニルアミン、カルバゾール、3−メチルアセトフェノン、4−クロロベンゾフェノン、4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、チオキサントン、ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノ−プロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1,4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキシド、オリゴ(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−(4−(1−メチルビニル)フェニル)プロパノン)等を挙げることができる。
【0017】
放射線(光)重合開始剤の市販品としては、例えば、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製イルガキュア 184、369、651、500、819、907、784、2959、CGI1700、CGI1750、CGI1850、CG24−61、ダロキュア 1116、1173、BASF社製ルシリン TPO、8893UCB社製ユベクリル P36、フラテツリ・ランベルティ社製エザキュアーKIP150、KIP65LT、KIP100F、KT37、KT55、KTO46、KIP75/B等を挙げることができる。
【0018】
本発明の組成物中における成分(B)の配合量は、溶剤を除く成分の合計を100質量%としたときに、0.01〜20質量%の範囲内とすることが好ましく、0.1〜10質量%の範囲内とすることがさらに好ましい。0.01質量%未満であると、硬化物としたときの硬度が不十分となるおそれがあり、20質量%を超えると、塗膜の硬度が損なわれるおそれがある。
【0019】
(C)一般式(1)で示される化合物によって変性された反応性酸化物粒子(以下、反応性粒子(C)という)
本発明に用いられる反応性粒子(C)は、ケイ素、アルミニウム、ジルコニウム、チタニウム、亜鉛、ゲルマニウム、インジウム、スズ、アンチモン、セリウム等からなる群から選ばれる少なくとも一つの元素の酸化物からなる粒子(Ca)と、下記一般式(1)で示される分子内に多官能(メタ)アクリロイル基及びシロキサン基を有する粒子変性剤(Cb)とを反応させることにより得られ、重合性不飽和基を有する、ケイ素、アルミニウム、ジルコニウム、チタニウム、亜鉛、ゲルマニウム、インジウム、スズ、アンチモン、セリウム等からなる群から選ばれる少なくとも一つの元素の酸化物粒子である。
反応性粒子(C)を配合することにより、(A)成分または(A)成分の硬化物との結着力が上がり、硬化膜全体の強度が向上するために、得られる硬化膜の鉛筆硬度が改善されるものと思われる。
【0020】
【化6】

式(1)中、Rは2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する有機基を示し、Rは炭素数1〜3のアルキル基を示し、nは1〜8の整数を示す。一般式(1)で示される化合物の詳細については後述する。
【0021】
(1)酸化物粒子(Ca)
反応性粒子(C)の製造に用いられる酸化物粒子(Ca)は、得られる硬化性組成物の硬化膜の無色性の観点から、ケイ素、アルミニウム、ジルコニウム、チタニウム、亜鉛、ゲルマニウム、インジウム、スズ、アンチモン及びセリウムよりなる群から選ばれる少なくとも一つの元素の酸化物粒子である。
【0022】
これらの酸化物粒子(Ca)としては、例えば、シリカ、アルミナ、ジルコニア、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ゲルマニウム、酸化インジウム、酸化スズ、インジウムスズ酸化物(ITO)、酸化アンチモン、酸化セリウム等の粒子を挙げることができる。中でも、高硬度の観点から、シリカ、アルミナ、ジルコニア及び酸化アンチモンの粒子が好ましい。これらは単独で又は2種以上を組合わせて用いることができる。さらには、酸化物粒子(Ca)は、粉体状又は溶剤分散ゾルとして用いるのが好ましい。溶剤分散ゾルとして用いる場合、他の成分との相溶性、分散性の観点から、分散媒は、有機溶剤が好ましい。このような有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、オクタノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、γ−ブチロラクトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のエステル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のエーテル類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類を挙げることができる。中でも、メタノール、イソプロパノール、ブタノール、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、トルエン、キシレンが好ましい。
【0023】
酸化物粒子(Ca)の数平均粒子径は、得られる硬化膜の用途に応じて適宜選択すればよいが、0.001μm〜2μmが好ましく、0.003μm〜1μmがさらに好ましく、0.005μm〜0.5μmが特に好ましい。数平均粒子径が2μmを超えると、硬化物としたときの透明性が低下したり、硬化膜としたときの表面状態が悪化する傾向がある。また、粒子の分散性を改良するために各種の界面活性剤やアミン類を添加してもよい。
【0024】
ケイ素酸化物粒子(例えば、シリカ粒子)として市販されている商品としては、例えば、コロイダルシリカとして、日産化学工業(株)製メタノ−ルシリカゾル、IPA−ST、MEK−ST、NBA−ST、XBA−ST、DMAC−ST、ST−UP、ST−OUP、ST−20、ST−40、ST−C、ST−N、ST−O、ST−50、ST−OL等を挙げることができる。また粉体シリカとしては、日本アエロジル(株)製アエロジル130、アエロジル300、アエロジル380、アエロジルTT600、アエロジルOX50、旭硝子(株)製シルデックスH31、H32、H51、H52、H121、H122、日本シリカ工業(株)製E220A、E220、(株)アデカ製 アデライトAT20
、AT-30、AT−40、富士シリシア(株)製SYLYSIA470、日本板硝子(株)製SGフレ−ク等を挙げることができる。
【0025】
また、アルミナの水分散品としては、日産化学工業(株)製アルミナゾル−100、−200、−520;アルミナのイソプロパノール分散品としては、住友大阪セメント(株)製AS−150I;アルミナのトルエン分散品としては、住友大阪セメント(株)製AS−150T;ジルコニアのトルエン分散品としては、住友大阪セメント(株)製HXU−110JC;アンチモン酸亜鉛粉末の水分散品としては、日産化学工業(株)製セルナックス;アルミナ、酸化チタン、酸化スズ、酸化インジウム、酸化亜鉛等の粉末及び溶剤分散品としては、シーアイ化成(株)製ナノテック;アンチモンドープ酸化スズの水分散ゾルとしては、石原産業(株)製SN−100D;ITO粉末としては、三菱マテリアル(株)製の製品;酸化セリウム水分散液としては、多木化学(株)製ニードラール等を挙げることができる。
【0026】
酸化物粒子(Ca)の形状は球状、中空状、多孔質状、棒状、板状、繊維状、又は不定形状であり、好ましくは、球状である。酸化物粒子(Ca)の比表面積(窒素を用いたBET比表面積測定法による)は、好ましくは、10〜1000m/gであり、さらに好ましくは、100〜500m/gである。これら酸化物粒子(Ca)の使用形態は、乾燥状態の粉末、又は水もしくは有機溶剤で分散した状態で用いることができる。例えば、上記の酸化物の溶剤分散ゾルとして当業界に知られている微粒子状の酸化物粒子の分散液を直接用いることができる。特に、硬化物に優れた透明性を要求する用途においては酸化物の有機溶剤分散ゾルの利用が好ましい。
【0027】
(2)粒子変性剤(Cb)
本発明に用いられる粒子変性剤(Cb)は、上記一般式(1)で示される化合物であり、分子内に多官能(メタ)アクリロイル基及びシロキサン基を有することを特徴としている。
式(1)中、Rは2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する有機基を示し、好ましくは3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する有機基であることが好ましい。3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する有機基の具体例としては、下記式で示される構造を有する基が挙げられる。下記式で示される構造を有する基としては、2,2,2−トリ[(メタ)アクリロイルオキシメチル]エチル基、3−{2,2,2−トリ[(メタ)アクリロイルオキシメチル]エトキシ}−2,2−ジ[(メタ)アクリロイルオキシメチル]プロピル基等が挙げられる。
【化7】

式中、Acは(メタ)アクリロイル基を示す。
【0028】
粒子変性剤(Cb)は、(メタ)アクリロイル基及び加水分解性シリル基を有し、加水分解性シリル基によって酸化物粒子(Ca)と結合することができ、(メタ)アクリロイル基によってラジカル重合することができる。尚、加水分解性シリル基とは、水と反応してシラノール(Si−OH)生成するものであって、例えば、ケイ素に1以上のメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、等のアルコキシ基、アリールオキシ基、アセトキシ基、アミノ基、ハロゲン原子が結合したものを指す。
【0029】
(3)反応性粒子(C)の調製
加水分解性シリル基を有する粒子変性剤(Cb)を酸化物粒子(Ca)と混合し、加水分解させ、両者を結合させる。得られる反応性粒子(C)中の有機重合体成分即ち加水分解性シランの加水分解物及び縮合物の割合は、通常、乾燥粉体を空気中で完全に燃焼させた場合の質量減少%の恒量値として、例えば空気中で室温から通常800℃までの熱質量分析により求めることができる。
【0030】
酸化物粒子(Ca)への粒子変性剤(Cb)の結合量は、反応性粒子(C)(酸化物粒子(Ca)及び粒子変性剤(Cb)の合計)を100質量%として、好ましくは、0.01質量%以上であり、さらに好ましくは、0.1質量%以上、特に好ましくは、1質量%以上である。酸化物粒子(Ca)に結合した粒子変性剤(Cb)の結合量が0.01質量%未満であると、組成物中における反応性粒子(C)の分散性が十分でなく、得られる硬化物の透明性、耐擦傷性が十分でなくなる場合がある。また、反応性粒子(C)製造時の原料中の酸化物粒子(Ca)の配合割合は、好ましくは、5〜99質量%であり、さらに好ましくは、10〜98質量%である。反応性粒子(C)を構成する酸化物粒子(Ca)の含有量は、反応性粒子(C)の65〜95質量%であることが好ましい。
【0031】
本発明の組成物中における反応性粒子(C)の含有量は、溶剤を除く成分の合計を100質量%としたときに、20〜74質量%の範囲内であることが好ましく、40〜70質量%の範囲内であることがより好ましい。20質量%未満であると、硬化物としたときに高硬度の膜が得られないおそれがあり、74質量%を超えると、成膜性が不十分となるおそれがある。
尚、反応性粒子(C)の含有量は、固形分を意味し、反応性粒子(C)が溶剤分散ゾルの形態で用いられるときは、その含有量には溶剤の量を含まない。
【0032】
(D)有機溶剤
本発明の組成物は、塗膜の厚さを調節するために、有機溶剤で希釈して用いることが通常である。例えば、反射防止膜や被覆材として用いる場合の粘度は、通常0.1〜50,000mPa・秒/25℃であり、好ましくは、0.5〜10,000mPa・秒/25℃である。
【0033】
有機溶剤(D)としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、オクタノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、γ−ブチロラクトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のエステル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のエーテル類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類等が挙げられる。これらの有機溶剤は1種単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0034】
本発明の組成物中における有機溶剤(D)の合計の配合量は、溶剤を除く成分の合計を100質量部としたときに、50〜10,000質量部の範囲内であることが好ましい。尚、前記反応性粒子(C)の分散液中の有機溶剤も本発明の組成物中に持ち込まれ得る。溶剤の配合量は、この成分(C)由来の有機溶剤も勘案の上、塗布膜厚、組成物の粘度等を考慮して適宜決定することができる。
【0035】
(E)添加剤
本発明の組成物には、上記成分の他、必要に応じて熱重合開始剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、レベリング剤等を添加することができる。
好ましい熱重合開始剤としては、例えば、過酸化物、アゾ化合物を挙げることができ、具体例としては、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチル−パーオキシベンゾエート、アゾビスイソブチロニトリル等を挙げることができる。
【0036】
本発明の組成物は、上記成分(A)〜(D)、必要に応じて成分(E)をそれぞれ添加して、室温又は加熱条件下で混合することにより調製することができる。具体的には、ミキサ、ニーダー、ボールミル、三本ロール等の混合機を用いて、調製することができる。ただし、加熱条件下で混合する場合には、重合開始剤や重合性不飽和基の分解開始温度以下で行うことが好ましい。
【0037】
上記のようにして得られた本発明の組成物は、熱及び/又は放射線(光)によって硬化させることができる。
【0038】
II.硬化膜
本発明の硬化膜は、前記硬化性組成物を種々の基材、例えば、プラスチック基材にコーティングして硬化させることにより得ることができる。具体的には、組成物をコーティングし、好ましくは、0〜200℃で揮発成分を乾燥させた後、熱及び/又は放射線で硬化処理を行うことにより被覆成形体として得ることができる。
熱による場合、その熱源としては、例えば、電気ヒーター、赤外線ランプ、熱風等を用いることができる。熱による場合の好ましい硬化条件は20〜150℃であり、10秒〜24時間の範囲内で行われる。
【0039】
放射線(光)による場合、その線源としては、組成物をコーティング後短時間で硬化させることができるものである限り特に制限はないが、例えば、赤外線の線源として、ランプ、抵抗加熱板、レーザー等を、また可視光線の線源として、日光、ランプ、蛍光灯、レーザー等を、また紫外線の線源として、水銀ランプ、ハライドランプ、レーザー等を、また電子線の線源として、市販されているタングステンフィラメントから発生する熱電子を利用する方式、金属に高電圧パルスを通じて発生させる冷陰極方式及びイオン化したガス状分子と金属電極との衝突により発生する2次電子を利用する2次電子方式を挙げることができる。また、アルファ線、ベータ線及びガンマ線の線源として、例えば、60Co等の核分裂物質を挙げることができ、ガンマ線については加速電子を陽極へ衝突させる真空管等を利用することができる。これら放射線は1種単独で又は2種以上を同時に又は一定期間をおいて照射することができる。放射線による場合、紫外線又は電子線を用いることが好ましい。そのような場合、好ましい紫外線の照射光量は0.01〜10J/cmであり、より好ましくは、0.1〜2J/cmである。また、好ましい電子線の照射条件は、加速電圧は10〜300kV、電子密度は0.02〜0.30mA/cmであり、電子線照射量は1〜10Mradである。
【0040】
本発明の組成物は被覆材(ハードコート)や反射防止膜の用途に好適であり、反射防止や被覆の対象となる基材としては、例えば、プラスチック(ポリカーボネート、ポリメタクリレート、ポリスチレン、ポリエステル、ポリオレフィン、エポキシ、メラミン、トリアセチルセルロース、ABS、AS、ノルボルネン系樹脂等)、金属、木材、紙、ガラス、スレート等を挙げることができる。これら基材の形状は板状、フィルム状又は3次元成形体でもよく、コーティング方法は、通常のコーティング方法、例えばディッピングコート、スプレーコ−ト、フローコ−ト、シャワーコート、ロールコート、スピンコート、刷毛塗り等を挙げることができる。これらコーティングにおける塗膜の厚さは、乾燥、硬化後、通常0.1〜400μmであり、好ましくは、1〜200μmである。
【0041】
本発明の硬化膜は、高硬度及び耐擦傷性を有し、特に鉛筆硬度に優れているので、CD、DVD、MO等の記録用ディスク、プラスチック光学部品、タッチパネル、フィルム型液晶素子、プラスチック容器、建築内装材としての床材、壁材、人工大理石等の傷付き(擦傷)防止や汚染防止のための保護コーティング材、又は、フィルム型液晶素子、タッチパネル、プラスチック光学部品等の反射防止膜等として特に好適に用いられる。
【実施例】
【0042】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は実施例によって何ら限定されない。尚、下記の記載中、「%」及び「部」は、特に断らない限り、「質量%」及び「質量部」を意味する。
【0043】
(製造例1)粒子変性剤(Cb)の合成
乾燥空気中、アルドリッチ社製3−(トリエトキシシリル)−プロピルイソシアネート32.6部、ジブチルスズジラウレート0.1部からなる溶液に対し、新中村化学製NKエステルA−TMM−3LM−N(ペンタエリスリトールトリアクリレート60質量%とペンタエリスリトールテトラアクリレート40質量%とからなる。このうち、反応に関与するのは、水酸基を有するペンタエリスリトールトリアクリレートのみである。)67.4部を30℃で1時間かけて滴下後、60℃で3時間加熱攪拌し、目的とする粒子変性剤(Cb)を含む組成物を得た。
生成物のイソシアネート基に特徴的な2260cm−1の吸収ピークが消失し、新たに、[−O−C(=O)−NH−]基中のカルボニル基に特徴的な1660cm−1のピーク及びアクリロイル基に特徴的な1720cm−1のピ−クが観察され、重合性不飽和基としてのアクリロイル基と、[−O−C(=O)−NH−]基を共に有する、下記構造式で示される粒子変性剤(Cb)が生成していることを確認した。
【化8】

【0044】
(製造例2−1)反応性シリカ粒子(C)の製造
製造例1で製造した粒子変性剤(Cb)2.27部、シリカ粒子分散液(シリカ濃度30%、アデカ製AT20を限外濾過でMEKに溶剤置換したもの)96.1部、イオン交換水0.12部、及びp−ヒドロキシフェニルモノメチルエーテル0.01部の混合液を、60℃、4時間攪拌後、オルト蟻酸メチルエステル1.38部を添加し、さらに1時間同一温度で加熱攪拌し、反応性粒子の分散液を得た。この分散液をアルミ皿に2g秤量後、175℃のホットプレート上で1時間乾燥、秤量して固形分含量を求めたところ、31.1%であった。また、分散液を磁性るつぼに2g秤量後、80℃のホットプレート上で30分予備乾燥し、750℃のマッフル炉中で1時間焼成した後の無機残渣より、固形分中の無機含量を求めたところ、92.7%であった。
得られた反応性シリカ粒子の平均粒子径は、50nmであった。ここで、平均粒子径は透過型電子顕微鏡により測定した。
【0045】
(製造例2−2)反応性シリカ粒子の製造
下記構造式で示されるSZ6030(商品名;東レダウコーニング社製)を用いた以外は、上記の製造例2−1の方法に従い粒子変性を行った。SZ6030の仕込み量は上記製造例2−1と同じとした。
【化9】

【0046】
(実施例1)硬化性組成物の調製
上記製造例2−1で製造した反応性シリカ粒子分散液69.4部(反応性シリカ粒子として21.6部)、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート25.8部、Irg184 2.60部、メチルイソブチルケトン(MIBK)44.5部をフラスコに入れ室温で30分間攪拌し均一な142.3部の混合液を得た。その後エバポレーターを用いて減圧度80mmHgで溶剤の留去を行い、全量が100部になるまで濃縮し目的の組成物を得た。
【0047】
(比較例1)
下記表1に示す組成とした他は、実施例1と同様にして硬化性組成物を得た。
【0048】
<硬化膜の製造>
実施例1及び比較例1で製造した各組成物を80μm厚のTAC基材上に30ミルのバーコーターを用いて塗工し、膜厚が12μmの塗膜を得た。これを80℃のオーブンに1分間入れ、乾燥を行った。この後フィルムを、空気中で高圧水銀灯を用いて300mJ/cmの照射スピードで1回、高圧水銀ランプコンベアに通し合計300mJ/cmを照射して硬化を行った。
【0049】
<硬化膜の特性評価>
得られた各硬化膜について、鉛筆硬度の評価を行った。
測定荷重は500gで、測定方法はJIS K5600−5−4に準拠し、5Hの鉛筆を用い、下記評価方法で、鉛筆硬度を評価した。
評価方法:
鉛筆硬度試験終了後、三波長管の下で傷の観察を行い、凹みや傷のない本数を数えた。表1中の数値の分母は試験回数を、分子は傷や凹みのない部分の本数を示す。
【0050】
【表1】

【0051】
表1の結果から、一般式(1)で示される構造を有する化合物によって変性された酸化物粒子を含有する実施例1では、従来の粒子変性剤によって変性された酸化物粒子を含有する比較例1に比べて鉛筆硬度が大きく改善されていることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明の硬化性組成物によれば、特に鉛筆硬度に優れた硬化膜を提供することができる。
本発明の硬化膜は、特に優れた鉛筆硬度を有するため、被覆材(ハードコート)や反射防止膜等の用途に好適である。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分(A)〜(D):
(A)多官能重合性不飽和基含有化合物
(B)ラジカル重合開始剤
(C)下記一般式(1)で示される化合物によって変性された反応性酸化物粒子
【化1】

[式(1)中、Rは2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する有機基を示し、Rはそれぞれ独立に炭素数1〜3のアルキル基を示し、nは1〜8の整数を示す。]
(D)有機溶剤
を含有する硬化性組成物。
【請求項2】
前記一般式(1)において、Rが下記構造を有する基である請求項1に記載の硬化性組成物。
【化2】

[式中、Acは(メタ)アクリロイル基を示す。]
【請求項3】
前記一般式(1)において、Rがメチル基又はエチル基である請求項1又は2に記載の硬化性組成物。
【請求項4】
前記酸化物粒子が、シリカ粒子である請求項1〜3のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の硬化性組成物を硬化させてなる硬化膜。


【公開番号】特開2009−286925(P2009−286925A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−141988(P2008−141988)
【出願日】平成20年5月30日(2008.5.30)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】