説明

硬貨処理機

【課題】部品点数を増加させることなく広範囲の検出領域における硬貨や異物の残留検出を行うことができる硬貨処理機を提供する。
【解決手段】受け皿7を撮影するカメラ8と、受け皿7が空の状態のときのマスタ画像を予め記憶したメモリ10と、カメラ8の撮影制御を行うとともに、カメラ8によって撮影された画像およびメモリ10に記憶されたマスタ画像を受信可能な制御部9とを備え、制御部9は、メモリ10に記憶されたマスタ画像と、カメラ8で撮影された画像とを比較する比較部11を備え、比較部11の比較結果に基づいて受け皿7における硬貨又は異物の残留の有無を判定することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、硬貨処理機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、銀行等の金融機関の店舗においては、利用者の入金した硬貨の鑑別、計数を行い金種毎に収容するとともに、利用者の出金操作に基づいて収容されている硬貨の中から適宜出金を行う硬貨入出金機などの硬貨処理機が用いられている。
このような硬貨処理機では、例えば、払出口での硬貨の取り忘れや搬送路周辺での異常によって、通常硬貨が留まるべきではない箇所に硬貨が残留してしまうことがある。そのため、このような硬貨処理機では、硬貨残留の発生が想定される箇所、例えば硬貨の払出口に、硬貨の残留を検出するための光学センサや磁気センサを設けたものがある(例えば、特許文献1および特許文献2参照)。
【特許文献1】実開昭59−155662号公報
【特許文献2】実公平4−54535号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述のように光学センサや磁気センサによって硬貨の残留を検出する場合には、様々な制約が生じてしまう。
具体的には、光学センサを用いる場合には、検出対象となる硬貨が光学センサを構成する投光器および受光器の間の光軸を切る位置に配置されなければならない。また、磁気センサを用いる場合には、磁気センサの検出範囲が非常に狭いため、検出したい範囲の近傍に磁気センサを配置しなければならない。
すなわち、光学センサや磁気センサでは規定の搬送ルートを通過する硬貨の残留検知には適しているが、ある程度広い範囲の検出領域における硬貨の残留検出に用いようとすると、広範囲をカバーするために多数のセンサを配置する必要が生じるため、部品点数が増加して装置の大型化やコストアップを招いてしまう。また、とりわけ光学センサを用いる場合には、投光器や受光器の光軸を切る位置に検出対象の硬貨が位置する必要があるため、実質的に検出したい範囲の全てをカバーすることができないという課題がある。
【0004】
本発明は、これら課題に鑑みてなされたもので、部品点数を増加させることなく広範囲の検出領域における硬貨や異物の残留検出を行うことができる硬貨処理機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載した発明は、硬貨又は異物の残留が想定される所定の領域(例えば、実施の形態における受け皿7)を撮影する撮影手段(例えば、実施の形態におけるカメラ8)と、前記所定の領域が空の状態のときのマスタ画像を予め記憶した記憶手段(例えば、実施の形態におけるメモリ10)と、前記撮影手段の撮影制御を行うとともに、前記撮影手段によって撮影された画像および前記記憶手段に記憶されたマスタ画像を受信可能な制御手段(例えば、実施の形態における制御部9)とを備え、該制御手段は、前記記憶手段に記憶されたマスタ画像と、前記撮影手段で撮影された画像とを比較する比較手段(例えば、実施の形態における比較部11)を備え、該比較手段の比較結果に基づいて前記所定の領域における硬貨又は異物の残留の有無を判定することを特徴とする。
【0006】
請求項2に記載した発明は、請求項1に記載の発明において、前記制御手段は、前記比較手段の比較結果に基づいて、前記記憶手段に記憶されたマスタ画像と前記撮影手段で撮影された画像とが異なると判定された場合にアラーム信号を出力することを特徴とする。
【0007】
請求項3に記載した発明は、請求項1又は2に記載の発明において、前記制御手段は、所定時間毎に撮影を行うように前記撮影手段の撮影制御を行うことを特徴とする。
【0008】
請求項4に記載した発明は、請求項1乃至3の何れか一項に記載の発明において、前記制御手段は、前記比較手段の比較結果に基づいて前記撮影手段で撮影された画像と前記記憶手段に記憶されたマスタ画像とが一致すると判定された場合に、前記アラーム信号の出力を禁止することを特徴とする。
【0009】
請求項5に記載した発明は、請求項1又は2に記載の発明において、前記制御手段は、少なくとも、前記所定の領域への硬貨の放出開始時点より、前記比較手段の比較結果に基づいて前記撮影手段で撮影された画像と前記記憶手段に記憶されたマスタ画像とが一致すると判定された時点までの間、所定時間毎に撮影を行うように前記撮影手段の撮影制御を行うことを特徴とする。
【0010】
請求項6に記載した発明は、請求項5に記載の発明において、前記制御手段は、さらに、前記所定の領域への硬貨の放出開始前に、撮影を行うように前記撮影手段の撮影制御を行うとともに、前記比較手段の比較結果に基づいて前記撮影手段で撮影された画像と前記記憶手段に記憶されたマスタ画像とが一致すると判定された場合に、前記所定の領域への硬貨の放出を開始することを特徴とする。
【0011】
請求項7に記載した発明は、請求項1乃至6の何れか一項に記載の発明において、前記制御手段は、前記比較手段の比較結果に基づいて前記撮影手段で撮影された画像と前記記憶手段に記憶されたマスタ画像とが一致すると判定された場合に、前記撮影手段で撮影された画像を、新たなマスタ画像として更新記憶することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載した発明によれば、例えば出金口など、硬貨又は異物の残留が想定される所定の領域を撮影手段によって撮影した画像と、当該撮影された画像と同一の所定の領域において硬貨又は異物が空の状態、つまり残留が無いときに予め撮影され記憶手段に記憶されたマスタ画像とを制御手段でそれぞれ受信して、これらの画像を比較手段で比較するので、この比較手段の比較結果に基づいて、例えば、撮影手段から受信した画像と記憶手段に記憶されたマスタ画像とが異なると判別されたときに当該所定の領域に硬貨や異物の残留があると判定し、一方、撮影手段から受信した画像と記憶手段に記憶されたマスタ画像とが同一であると判別されたときに所定の領域に硬貨や異物が残留していないと判定することができる。したがって、部品点数を増加させることなく広範囲の検出領域における硬貨又は異物の残留検出を行うことができる効果がある。
【0013】
請求項2に記載した発明によれば、比較手段の比較結果に基づいてマスタ画像と撮影した画像とが異なると判別され硬貨又は異物が残留していると判定された場合に、アラーム信号を出力して利用者に注意を促すことができる。したがって、硬貨又は異物の残留に起因するトラブルを未然に防ぐことができるという効果がある。
【0014】
請求項3に記載した発明によれば、硬貨又は異物の残留が発生した場合に、迅速にこれを検出することができるため、より確実にトラブル回避することができるという効果がある。
【0015】
請求項4に記載した発明によれば、マスタ画像と撮影した画像とが一致する場合、つまり、硬貨又は異物の残留が解消された状態になったと判定された場合にアラーム信号の出力を禁止するため、利用者に硬貨又は異物の残留が解消されたことを認識させることができ、したがって、商品性の向上を図ることができる効果がある。
【0016】
請求項5に記載した発明によれば、少なくとも、所定の領域への硬貨の放出開始時点より、硬貨又は異物の残留が解消された状態になったと判定された時点までの間のみ、例えば出金口などの所定の領域を撮影手段によって撮影していれば良く、そもそも、硬貨又は異物が残留し得ないタイミングまでも撮影する必要を無くすことができるという効果がある。
【0017】
請求項6に記載した発明によれば、さらに、所定の領域への硬貨の放出開始前に、所定の領域に硬貨又は異物がないことを確認の上で、当該所定の領域への硬貨の放出を開始することができるという効果がある。
【0018】
請求項7に記載した発明によれば、硬貨又は異物の残留が解消された状態となったと判定された画像データを、新たなマスタ画像として更新記憶することで、所定の領域の経年変化による汚れなどの影響を排除することができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
次に、本発明の硬貨処理機の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1において、1は貨幣処理機を示している。この貨幣処理機1は主に銀行などの金融機関の店舗などで、例えば、使用者であるテラーなどのデスク下に設置されて使用されるものである。この貨幣処理機1は、紙幣を受け入れるとともにこの紙幣を必要に応じて繰り出す紙幣処理機3と、この紙幣処理機3の上に配置され、硬貨を受け入れるとともにこの硬貨を必要に応じて払い出す硬貨入出金機(硬貨処理機)2とで構成されている。
【0020】
紙幣処理機3は、その機体上面の前部に外部から紙幣を投入する紙幣投入口34が設けられており、さらに、その機体前面側には、外部に対し出金紙幣およびリジェクト紙幣を払い出す紙幣出金/リジェクト口36が設けられている。そして、外部から入金処理しようとする紙幣が使用者により投入されることで、紙幣は分離繰出機構(図示せず)により1枚ずつ分離されて機体内部の搬送路(図示せず)に送られるようになっている。また、搬送路は、送られてきた紙幣を搬送ベルトによって紙幣投入口34と紙幣出金/リジェクト口36との間で搬送するように構成され、その途中には紙幣の金種、真偽、多重送りなどを鑑別する各種センサを備えた入出金鑑別部(図示せず)が設けられている。そして、紙幣投入口34から入金された紙幣の中で、入出金鑑別部により正常紙幣以外の、偽紙幣、多重送り等のリジェクト紙幣と鑑別された紙幣を出金/リジェクト口36から外部に払い戻すようになっている。一方、入出金鑑別部により正常紙幣と鑑別され各金種別に計数された紙幣は金種別スタッカ(図示せず)に収納される。そして、金種別スタッカに収納された紙幣は、必要に応じて出金用紙幣として利用されるようになっている。また、出金処理にあっては、機体内部の金種別スタッカから指定金額分の紙幣が繰り出され、搬送路を経由して、紙幣出金/リジェクト口36から外部に払い出されるようになっている。
【0021】
一方、硬貨入出金機2は、その機体上面の前部に外部から硬貨を投入する硬貨入金口4と、紙幣および/または硬貨の計数結果などの情報を表示する表示部5が機体幅方向に沿って並んで設けられており、さらに、その機体前面側には、外部に対し出金硬貨およびリジェクト硬貨を払い出す硬貨出金/リジェクト口6が設けられている。また、前述した表示部5は、いわゆるタッチパネルになっており、入金や出金に係る操作ボタンが表示可能に構成され、使用者がこの操作ボタンのうち入金操作や出金操作の機能を備えたものを操作することで、それぞれ入金や出金を要求する制御指令が入力される。
【0022】
ここで、硬貨入金口4には、外部から入金処理しようとするバラ硬貨が金種混合状態で使用者により投入されることになり、該バラ硬貨は分離繰出機構(図示せず)により1枚ずつ分離されて機体内部の搬送路(図示せず)に送られるようになっている。搬送路は、送られてきた硬貨を搬送ベルトによって硬貨入金口4と硬貨出金/リジェクト口6との間で搬送するように構成され、その途中には硬貨の金種、真偽などを鑑別する各種センサを備えた入出金鑑別部(図示せず)が設けられている。そして、硬貨入金口4から入金されたバラ硬貨の中で、入出金鑑別部により正常硬貨以外の、偽硬貨等のリジェクト硬貨と鑑別された硬貨を出金/リジェクト口6から外部に払い戻すようになっている。一方、入出金鑑別部により正常硬貨と鑑別され各金種別に計数された硬貨は金種別収納部(図示せず)に収納される。そして、金種別収納部に収納された硬貨は、必要に応じて出金用硬貨として利用されるようになっている。また、出金処理にあっては、機体内部の金種別収納部から指定金額分の硬貨が繰り出され、搬送路を経由して、硬貨出金/リジェクト口6から外部に払い出されるようになっている。
【0023】
ところで、硬貨出金/リジェクト口6には出金硬貨を受け止める受け皿7が設けられており、この受け皿7の上方にカメラ8が固定されている。
図2に示すように、カメラ8は硬貨入出金機2の機体内部に設けられた制御部9からの制御指令に従って受け皿7の静止画像を撮影するようになっており、このカメラ8で撮影された静止画像は制御部9に向けて出力されるようになっている。このカメラ8は、その被写界が硬貨出金/リジェクト口6の受け皿7の内側全ての領域(図2中、装置正面から見た場合におけるこの領域の奥行きをAで示す。)となるように受け皿7の上方に配置されている。なお、カメラ8の配置は図2に示す位置に限られるものではなく、受け皿7の内側全体が撮影可能な位置であればよい。
【0024】
制御部9は、この硬貨入出金機2の各種制御を行うものであり、適宜のタイミングで上述したカメラ8によって撮影が行われるように、カメラ8に向けて制御指令を出力するように設定されるとともに、このカメラ8で撮影された画像データを受信可能に構成されている。
【0025】
さらに、制御部9にはメモリ10が接続されている。このメモリ10には、受け皿7に硬貨や異物が残留していないとき、すなわち受け皿7が空の状態の静止画像(以下、単にマスタデータと呼ぶ)が予め記憶されている。また、制御部9は比較部11を備えており、上述した画像データとマスタデータとが比較可能になっている。ここで、メモリ10に記憶されているマスタデータは、出金処理を行う前にカメラ8で撮影した画像データをマスタデータとして保存したものである。そして、このマスタデータはカメラ8で撮影するのが好ましく、例えば、カメラ8で撮影を行う場合は、使用者が受け皿7に硬貨や異物がないことを確認した後、使用者による撮影操作に基づいて行ってもよいし、また、制御部9からの制御指令に基づいて、装置起動後のイニシャル状態のときなどに自動的に撮影するようにしてもよい。
【0026】
この他、制御部9には、前述した搬送路の制御系12が接続されており、制御部9は、比較部11の比較結果に基づいて搬送路の制御系12に対して作動許可指令、作動禁止指令等の制御指令を出力するようになっている。
また、制御部9には、スピーカや表示灯などのアラーム装置13が接続されており、制御部9は比較部11の比較結果に基づいて硬貨や異物の残留があると判定された場合にアラーム装置13に向けてアラーム出力を行うようになっている。ここで、アラーム装置13はこのアラーム出力を受けて、例えば、警告音を発したり表示灯を点灯させたりするものである。なお、アラーム装置13はスピーカや表示灯に限られるものではなく使用者に報知することが可能なものであればよい。
【0027】
次に、図3のフローチャートに基づいてこの実施の形態の出金計数処理を説明する。
まず、ステップS01では、使用者が表示部5に表示された操作ボタンを操作して硬貨入出金機2に出金要求が入力されると、金種別収納部に収容された硬貨の中から出金要求がなされた金額分の硬貨を繰り出し、当該硬貨を搬送路によって硬貨出金/リジェクト口6に搬送して、受け皿7内に放出する。ここで、受け皿7に放出された硬貨は、通常、使用者によってすぐに回収されることとなる。
【0028】
ステップS02では、硬貨放出後、硬貨が取り出されると想定される所定時間が経過すると、制御部9からカメラ8に対して制御指令を出力して受け皿7内側の全体の領域を撮影し、カメラ8から出力された画像データを制御部9で受信する。
ステップS03では、画像データとマスタデータとが等しいか否かを判定する。ステップS03の判定結果が「YES」(画像データとマスタデータとが等しい)である場合はこの処理を終了し、判定結果が「NO」(画像データとマスタデータとが異なる)である場合はステップS04に進む。
【0029】
ここで、画像データとマスタデータとが等しいか否かの判定は、受け皿7に硬貨や異物など、何かしらの物体が受け皿7内に存在する場合に画像データとマスタデータとが異なると判定されればよく、受け皿7の中に物体がある場合には、例えば、画像データ中の部分的な輝度に差異が生じるので、この部分的な輝度の違いの有無を探索すればよい。
また、受け皿7の中にある物体が顕在化するように、撮影した画像データとマスタデータとの両者に対して二値化処理などの画像処理を行って硬貨や異物などの物体の有無を判定してもよい。
【0030】
ステップS04では、画像データとマスタデータとが異なっており、受け皿7の中に硬貨や異物(通常は使用者が回収し忘れた硬貨)が残留しているので、その旨を使用者に知らせるためにアラーム装置13に対してアラーム出力を行う。ここで、制御部9は、硬貨や異物の残留が生じているときに、搬送路の制御系12に対して出金硬貨の搬送を禁止する制御指令を出力したり、さらに、表示部5に残留(異常)が発生している旨のメッセージやイラストを表示させるようになっている。
さらに制御部9は、アラーム出力を行っているときに前述した比較部11での比較を継続して行い、再び画像データとマスタデータとが一致すると判定された場合、つまり硬貨や異物が取り出された場合には前記アラーム出力を禁止するように設定されている。なお、アラーム出力の停止は、使用者による停止操作によって行うように構成してもよい。
【0031】
したがって、上述した実施の形態によれば、硬貨出金/リジェクト口6の受け皿7の全領域をカメラ8によって撮影した画像と、当該撮影された画像と同一の領域において硬貨や異物の残留が無いときに予め撮影されメモリ10に記憶されたマスタデータとを制御部9でそれぞれ受信して、これらマスタデータと画像データとを比較部11で比較するので、カメラ8から受信した画像データとメモリ10に記憶されたマスタデータとが異なるときに硬貨や異物などが残留していると判定することができる。この結果、従来の光学センサや磁気センサのように複数の素子を配置する必要がないので、部品点数を増加させることなく受け皿7全体である広範囲の検出領域における硬貨や異物の残留検出を行うことができる。
【0032】
また、比較部11の比較結果に基づいてマスタデータと撮影した画像データとが異なると判定された場合に硬貨や異物が残留していると判定することができ、制御部9がアラーム装置13に対してアラーム信号を出力して利用者に注意を促すことができるため、硬貨や異物の残留に起因するトラブルを未然に防ぐことができる。
【0033】
そして、受け皿7における硬貨や異物の残留が解消された状態になったと判別された場合にアラーム信号の出力を禁止するため、利用者に硬貨や異物の残留が解消されたことを認識させることができ、したがって、商品性の向上を図ることができる。
【0034】
なお、上記実施の形態では、出金計数処理時に適宜のタイミングでカメラ8を撮影制御するように構成していたが、例えば、出金計数処理時以外でも、制御部9によって所定時間毎にカメラ8を撮影制御して、比較部11にて画像データとマスタデータとを比較し、この比較結果に基づいて硬貨や異物が受け皿7に残留しているか否かを判定してもよい。この場合、制御部9が所定時間毎に撮影を行うようにカメラ8を制御するので、出金計数処理時以外でも硬貨や異物の残留が発生した場合に、迅速にこれを検出することができ、この結果、より確実にトラブル回避することができる。
【0035】
次に、上述した実施の形態の図1,2を援用してこの実施の形態の変形例を図4のフローチャートに基づいて説明する。なお、この変形例は、上述した出金計数処理のステップS01の以前に比較部11によって画像データとマスタデータとを比較する処理を加えたものである。よって、上述した実施の形態の同一部分に同一符号を付して重複する説明を省略し、出金計数処理における相違点のみを説明する。
【0036】
まず、ステップS11では、出金計数処理の開始に当たって、制御部9からカメラ8に対して制御指令を出力して受け皿7の全体の領域を撮影し、カメラ8で撮影され出力された画像データを制御部9で受信する。
ステップS12では、画像データとマスタデータとが等しいか否かを判定する。ステップS12の判定結果が「YES」(画像データとマスタデータとが等しい)である場合はこの処理を終了し、判定結果が「NO」(画像データとマスタデータとが異なる)である場合はステップS13に進む。
【0037】
ステップS13では、画像データとマスタデータとが異なっており、受け皿7の中に硬貨や異物など残留しているので、その旨を使用者に知らせるためにアラーム装置13に対してアラーム出力を行う。ここで、前述した実施の形態と同様に、この変形例においても、制御部9によって、硬貨や異物の残留が生じているときに、搬送路の制御系12に対して出金硬貨の搬送を禁止する制御指令を出力したり、さらに、表示部5に硬貨や異物の残留(異常)が発生している旨のメッセージやイラストを表示させるようにしてもよい。
そして、上述した実施の形態と同様に、ステップS01〜ステップS04の処理を行いこの処理を終了する。
【0038】
したがって、上記変形例によれば、とりわけ硬貨を受け皿7内に放出する前に受け皿7における硬貨や異物等の残留の有無を判定して、硬貨や異物などが残留している場合には使用者による硬貨出金処理を一時的に停止して、使用者に硬貨や異物などの除去を促すことができるため、出金硬貨への硬貨や異物などの混入を未然に防ぐことができる。
【0039】
なお、上述した実施の形態およびその変形例では、硬貨出金/リジェクト口6に設けられた受け皿7における硬貨や異物の残留検出を行う場合について説明したが、例えば、管理者がいる場合には、硬貨入出金機2の筐体内に設けられている搬送路周辺、鑑別部周辺など、硬貨や異物の残留があってはならない重要なエリアを検出範囲とすることができる。そして、制御部9により、硬貨入出金機2が待機中にカメラ8によって画像を取得するように設定することで、テラーなどの使用者がいない場合でも硬貨や異物の残留を検出することが可能なり、さらに、管理者がいるので上記重要なエリアにおける硬貨や異物を事前に排除することができる。
【0040】
また、硬貨以外の異物の一例としては、例えば、紙切れや部品類などが挙げられる。
さらに、硬貨処理機として硬貨入出金機を用いた場合について説明したが、硬貨入金機や硬貨出金機に適用してもよい。
【0041】
さらには、上述した実施の形態およびその変形例では、メモリ10に記憶されているマスタデータは、出金処理を行う前にカメラ8で撮影した画像データをマスタデータとして保存したものであり、このマスタデータはカメラ8で撮影するのが好ましく、例えば、カメラ8で撮影を行う場合は、使用者が受け皿7に硬貨や異物がないことを確認した後、使用者による撮影操作に基づいて行ってもよいし、また、制御部9からの制御指令に基づいて、装置起動後のイニシャル状態のときなどに自動的に撮影するようにしてもよいと説明したが、これに限るものではなく、例えば、次のようにすることができる。すなわち、制御部20が、比較部11の比較結果に基づいてカメラ8によって撮影された画像とメモリ10に記憶されたマスタ画像とが一致すると判定した場合に、前記カメラ8によって撮影した画像を、新たなマスタ画像としてメモリ10に更新記憶させるようにすることができる。これにより、硬貨出金/リジェクト口6に設けられた受け皿7の表面が、硬貨の落下によるキズなど、人の手による硬貨抜き取り時の引っ掻き傷などによって、少しずつ汚れたりしていく影響を少なくすることができ、硬貨や異物の残留検出の精度を高く維持できることになる。また、比較部11の比較結果に基づいてカメラ8によって撮影された画像とメモリ10に記憶されたマスタ画像とが一致すると判定した場合に、マスタ画像を更新することになるので、常に、硬貨や異物の残留がないときの画像データがマスタデータとして保存されることになる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の実施の形態における貨幣処理機1を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態における硬貨入出金機2の機能ブロック図である。
【図3】本発明の実施の形態における出金計数処理を示すフローチャートである。
【図4】本発明の実施の形態の変形例における出金計数処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0043】
2 硬貨入出金機
4 硬貨入金口(投入口)
6 硬貨出金/リジェクト口(出金口)
7 受け皿(硬貨の残留が想定される所定の領域)
8 カメラ(撮影手段)
9 制御部(制御手段)
10 メモリ(記憶手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬貨又は異物の残留が想定される所定の領域を撮影する撮影手段と、
前記所定の領域が空の状態のマスタ画像を予め記憶した記憶手段と、
前記撮影手段の撮影制御を行うとともに、前記撮影手段によって撮影された画像および前記記憶手段に記憶されたマスタ画像を受信可能な制御手段とを備え、
該制御手段は、前記記憶手段に記憶されたマスタ画像と、前記撮影手段で撮影された画像とを比較する比較手段を備え、該比較手段の比較結果に基づいて前記所定の領域における硬貨又は異物の残留の有無を判定することを特徴とする硬貨処理機。
【請求項2】
前記制御手段は、前記比較手段の比較結果に基づいて、前記記憶手段に記憶されたマスタ画像と前記撮影手段で撮影された画像とが異なり、硬貨又は異物があると判定された場合にアラーム信号を出力することを特徴とする請求項1に記載の硬貨処理機。
【請求項3】
前記制御手段は、所定時間毎に撮影を行うように前記撮影手段の撮影制御を行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の硬貨処理機。
【請求項4】
前記制御手段は、前記比較手段の比較結果に基づいて前記撮影手段で撮影された画像と前記記憶手段に記憶されたマスタ画像とが一致すると判定された場合に、前記アラーム信号の出力を禁止することを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の硬貨処理機。
【請求項5】
前記制御手段は、少なくとも、前記所定の領域への硬貨の放出開始時点より、前記比較手段の比較結果に基づいて前記撮影手段で撮影された画像と前記記憶手段に記憶されたマスタ画像とが一致すると判定された時点までの間、所定時間毎に撮影を行うように前記撮影手段の撮影制御を行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の硬貨処理機。
【請求項6】
前記制御手段は、さらに、前記所定の領域への硬貨の放出開始前に、撮影を行うように前記撮影手段の撮影制御を行うとともに、前記比較手段の比較結果に基づいて前記撮影手段で撮影された画像と前記記憶手段に記憶されたマスタ画像とが一致すると判定された場合に、前記所定の領域への硬貨の放出を開始することを特徴とする請求項5に記載の硬貨処理機。
【請求項7】
前記制御手段は、前記比較手段の比較結果に基づいて前記撮影手段で撮影された画像と前記記憶手段に記憶されたマスタ画像とが一致すると判定された場合に、前記撮影手段で撮影された画像を、新たなマスタ画像として更新記憶することを特徴とする請求項1乃至6の何れか一項に記載の硬貨処理機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−97260(P2008−97260A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−277495(P2006−277495)
【出願日】平成18年10月11日(2006.10.11)
【出願人】(500265501)ローレル精機株式会社 (191)
【Fターム(参考)】