説明

硬貨処理装置

【課題】硬貨搬送路上における硬貨の詰まりが遅滞なく適正に検出でき、信頼性の向上を図った硬貨処理装置を提供する。
【解決手段】硬貨処理装置1は、入出金硬貨保留部32に投入された硬貨を繰り出し、第1の識別部41で金種、および真偽を識別し、入金金額を得る。硬貨処理装置1は、一時保留部52に保留している硬貨の一部、または全部を、再度入出金硬貨保留部32に戻す。このとき、入出金硬貨保留部32に戻した硬貨の枚数を、検出用硬貨枚数としてカウントする。そして、入出金硬貨保留部32に戻した硬貨を繰り出し、第1の識別部41で識別する。このとき、第1の識別部41で識別した硬貨の枚数を、検出用硬貨通過枚数としてカウントする。硬貨処理装置1は、カウントした検出用硬貨枚数、および検出用硬貨通過枚数に基づいて、硬貨搬送路60において硬貨の詰まりが発生しているかどうかを判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金融機関の店舗に設置される現金自動預け払い機(ATM)等に適用され、入出金取引で用いる硬貨を処理する硬貨処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、金融機関の店舗に設置されている現金自動預け払い機(所謂、ATM)等には、硬貨処理装置が適用されている。硬貨処理装置は、入金取引や出金取引等で用いる硬貨を処理する。入金取引では、利用者によって投入された入金硬貨について、1枚ずつ金種、および真偽を識別し、金種毎の枚数、および合計金額を得る。
【0003】
入金取引では、利用者本人が今回投入した硬貨の合計金額を認識していない場合がある。例えば、自宅等で適当に溜めていた硬貨を纏めて投入することがある。このような場合、硬貨搬送路において、入金された硬貨が詰まると、得られる合計金額と、実際の投入金額と、の間に差が生じ、当該利用者に対する入金処理が適正に行えない。特に、変形等により金種、または真偽の識別が行えない硬貨は、硬貨搬送路に詰まる可能性が高い。
【0004】
そこで、金種、または真偽が識別できなかった硬貨(所謂、返却硬貨)があったときには、これらの返却硬貨について金種の再識別を行うことにより、硬貨搬送路における硬貨の詰まりを検出することも提案されている(特許文献1参照)。具体的には、最初に金種が識別できなかった硬貨の枚数と、実際に金種の再識別を行った硬貨の枚数と、を比較し、搬送路上における硬貨の詰まりも検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−67516号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した特許文献1は、入金硬貨の中に、金種または真偽が識別できなかった硬貨があったときにのみ、硬貨搬送路において硬貨の詰まりが発生しているかどうかを検出しているだけであった。言い換えれば、入金硬貨の中に、金種および真偽(真硬貨であること)が識別できなかった硬貨がなかったときには、硬貨搬送路において硬貨の詰まりが発生しているかどうかの検出を行っていない。
【0007】
なお、金種、または真偽が識別できなかい硬貨が詰まり、結果的に返却硬貨が発生しないことや、金種、および真偽が識別できる硬貨が硬貨搬送路に詰まることもある。
【0008】
したがって、特許文献1に記載されている装置では、硬貨搬送路において発生した硬貨詰まりが検出できなかったり、その検出が遅れることがある。取引処理時に、その取引において硬貨の詰まりが発生したかどうかの検出が行えないと、硬貨搬送路に詰まった硬貨が、後の利用者が投入した硬貨として処理されることになる。すなわち、ある利用者が投入した硬貨が、別の利用者が投入した硬貨として処理される危険性があり、金融機関の信用を著しく低下させる問題を引き起こすことにもなりかねない。
【0009】
この発明の目的は、硬貨搬送路上における硬貨の詰まりが遅滞なく適正に検出でき、信頼性の向上を図った硬貨処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明の硬貨処理装置は、上記課題を解決し、その目的を達するために、以下のように構成している。
【0011】
硬貨搬送手段は、2つの硬貨収納部を結ぶ硬貨搬送路に沿って、前記硬貨収納部の一方から硬貨を繰り出し、その硬貨を前記硬貨収納部の他方へ搬送する。例えば、入金取引では、一方の硬貨収納部は、利用者が入金硬貨を投入する入出金硬貨保留部になり、他方の硬貨収納部は、入金硬貨を一時的に保留する一時保留部になる。また、硬貨の補充処理では、一方の硬貨収納部は、補充硬貨を収納している運用カートリッジになり、他方の硬貨収納部は、出金硬貨を金種別に分けて保留する金種別硬貨収納部になる。このように、一方の硬貨収納部と、他方の硬貨収納部と、は、装置本体が実行する動作によって変化する。
【0012】
第1のカウント手段は、前記硬貨搬送手段が前記硬貨収納部の一方から、他方に搬送している硬貨の枚数をカウントする。
【0013】
また、前記硬貨搬送手段は、前記硬貨搬送手段が搬送した硬貨の繰り出し側である一方の前記硬貨収納部に対して、詰まり検出用硬貨を供給する硬貨供給機能を有している。さらに、第2のカウント手段が、前記硬貨供給機能により一方の前記硬貨収納部に供給した詰まり検出用硬貨の枚数をカウントする。
【0014】
そして、判定手段は、前記硬貨搬送手段により、前記硬貨供給機能が一方の前記硬貨収納部に供給した詰まり検出用硬貨を、前記硬貨収納部の他方へ搬送したときに、前記第1のカウント手段がカウントした硬貨の枚数と、前記第2のカウント手段がカウントした硬貨の枚数と、に基づいて、前記硬貨搬送路での硬貨詰まりの発生有無を判定する。
【0015】
判定手段は、例えば、前記第1のカウント手段、および前記第2のカウント手段の両方においてカウントされた、詰まり検出用硬貨の枚数が同じであれば、硬貨詰まりが発生していないと判定する。
【0016】
また、前記第1のカウント手段がカウントした硬貨の枚数が、前記第2のカウント手段がカウントした硬貨の枚数よりも少なければ硬貨詰まりが発生していると判定する。
【0017】
さらに、前記第1のカウント手段がカウントした硬貨の枚数が、前記第2のカウント手段がカウントした硬貨の枚数よりも多ければ、発生した硬貨詰まりが解消した(硬貨詰まりが発生していない。)と判定してもよいし、硬貨詰まりが発生している可能性があると判定するようにしてもよい。
【0018】
前記詰まり検出用硬貨は、前記硬貨搬送手段が前記硬貨収納部の一方から繰り出し、前記硬貨収納部の他方へ搬送した硬貨の一部を抜き取って利用してもよいし、別に設けておいてもよい。
【発明の効果】
【0019】
この発明によれば、硬貨搬送路上における硬貨の詰まりが遅滞なく適正に検出でき、信頼性の向上が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】硬貨処理装置の主要部の構成を示すブロック図である。
【図2】硬貨処理装置の内部構成を示す概略図である。
【図3】硬貨処理装置における入金取引処理を示すフローチャートである。
【図4】硬貨処理装置における入金取引処理を示すフローチャートである。
【図5】硬貨処理装置における硬貨補充処理を示すフローチャートである。
【図6】硬貨処理装置における硬貨補充処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、この発明の実施形態である硬貨処理装置について説明する。
【0022】
図1は、この発明の実施形態である硬貨処理装置の主要部の構成を示すブロック図である。図2は、この硬貨処理装置の内部構成を示す概略図である。この硬貨処理装置1は、金融機関の店舗に設置されている現金自動預け払い機(所謂、ATM)等に適用される。この硬貨処理装置1は、入出金取引で用いる硬貨を処理する。
【0023】
この硬貨処理装置1は、制御部2と、シャッタ開閉部3と、識別部4と、繰出部5と、搬送部6と、通信部7と、を備えている。制御部2は、この硬貨処理装置1本体の動作を制御する。
【0024】
シャッタ開閉部3は、本体前面に設けられた入出金硬貨保留部32の上方に位置するシャッタ31の開閉を制御する。利用者は、シャッタ31が開されているときに、入出金硬貨保留部32に対する硬貨の投入や、入出金硬貨保留部32からの硬貨の取り出しが行える。
【0025】
識別部4は、第1の識別部41と、第2の識別部42と、を有している。第1の識別部41、および第2の識別部42は、硬貨毎に、その金種、および真偽を識別する。第1の識別部41は、入出金硬貨保留部32から繰り出した硬貨について、金種、および真偽を識別する。第2の識別部42は、入出金硬貨保留部32へ送り込まれる硬貨について、金種、および真偽を識別する。
【0026】
搬送部6は、硬貨搬送路60に沿って硬貨を搬送する。硬貨搬送路60は、入出金硬貨保留部32に投入された硬貨を、第1の識別部41を介して一時保留部52や金種別硬貨収納部53に搬送する搬送路、運用カートリッジ54に収納されている硬貨を第2の識別部42を介して入出金硬貨保留部32へ搬送する搬送路を有している。また、硬貨搬送路60には、第1の識別部41で金種、または真硬貨であることが識別できなかった硬貨(以下、返却硬貨と言う。)を貯留する返却硬貨貯留部56、および一時保留部52を経由させた硬貨(この発明で言う詰まり検出用硬貨)を貯留する詰まり検出用硬貨貯留部55を設けた搬送路を有している。詰まり検出用硬貨貯留部55と、返却硬貨貯留部56と、はフラッパによって区切っている。このため、詰まり検出用硬貨貯留部55と、返却硬貨貯留部56とに貯留している硬貨が混ざることはない。また、硬貨搬送路60は、金種別硬貨収納部53から繰り出した硬貨を、詰まり検出用硬貨貯留部55、返却硬貨貯留部56、および第2の識別部42を経由させて入出金硬貨保留部32へ搬送する搬送路も有している。
【0027】
このように、硬貨搬送路60は、本体内部において、硬貨を循環させることができるように形成されている。
【0028】
一時保留部52に保留している硬貨は、詰まり検出用硬貨貯留部55、または運用カートリッジ54に選択的に放出できる。金種別硬貨収納部53は、金種毎に、当該金種の硬貨を収納する金種別硬貨カートリッジを有している。この金種別硬貨カートリッジに収納している硬貨が、出金用硬貨として利用される。
【0029】
繰出部5は、入出金硬貨保留部32、一時保留部52、金種別硬貨収納部53、運用カートリッジ54等に収納されている硬貨を分離して、1枚ずつ硬貨搬送路60に繰り出す繰出ローラ(不図示)を有している。通信部7は、硬貨処理装置1本体が適用された上位装置(例えば、ATM)との間における通信を行う。
【0030】
この硬貨処理装置1は、入金処理や、硬貨補充処理で、硬貨を硬貨搬送路60に沿って搬送した後、当該硬貨搬送路60上において硬貨の詰まりが発生しているかどうかを検出する。
【0031】
以下、この硬貨処理装置1の動作について説明する。
【0032】
図3、および図4は、この硬貨処理装置における入金取引処理を示すフローチャートである。硬貨処理装置1は、上位装置からの指示にしたがって、シャッタかシャッタ開閉部3が入出金硬貨保留部32の上方に位置するシャッタ31を開する(s1)。上位装置は、利用者が硬貨による入金を指示する入力操作を行うと、この指示を硬貨処理装置1に通知する。
【0033】
利用者は、シャッタ31が開されると、今回入金する硬貨を入出金硬貨保留部32に投入し、投入完了にかかる入力操作を行う。このとき、利用者は、所持している硬貨を適当に(金種毎の枚数を認識せずに)投入することもある。すなわち、投入した硬貨の合計金額を認識していない利用者もいる。上位装置は、利用者による投入完了の入力操作に応じて、その旨を硬貨処理装置1に通知する。
【0034】
硬貨処理装置1は、上位装置から硬貨の投入完了が通知されると、シャッタ31を閉する(s2、s3)。硬貨処理装置1は、繰出部5が今回投入された硬貨を硬貨搬送路60に繰り出す繰出処理を開始する(s4)。s4で繰り出された硬貨は、第1の識別部41に搬送され、金種、および真偽について識別される。硬貨処理装置1は、金種、および真硬貨であることが識別できた硬貨を一時保留部52に搬送する(s5、s6)。一方、金種、または真硬貨であることの少なくとも一方が識別できなかった硬貨(以下、返却硬貨と言う。)については、返却硬貨貯留部56に搬送し、貯留する(s5、s7)。このとき、返却硬貨貯留部56を設けている搬送路については停止している。また、硬貨処理装置1は、第1の識別部41で金種および真硬貨であることが識別された硬貨について、金種毎に、その枚数をカウントしている。
【0035】
硬貨処理装置1は、上述したs5〜s7にかかる処理を、今回入出金硬貨保留部32に投入された硬貨がなくなるまで繰り返す(s8)。
【0036】
硬貨処理装置1は、s8で今回投入された全ての入金硬貨について、s5〜s7にかかる処理が完了したと判定すると、返却硬貨貯留部56に貯留している返却硬貨の有無を判定する(s9)。
【0037】
硬貨処理装置1は、s9で返却硬貨があると判定すると、返却硬貨貯留部56に貯留している返却硬貨を入出金硬貨保留部32に搬送する(s10)。硬貨処理装置1は、入出金硬貨保留部32への返却硬貨の搬送が完了すると、シャッタ31を開し(s11)、返却硬貨を利用者に返却する。このとき、一時保留部52に保留している硬貨(今回、金種、および真硬貨であることが識別された硬貨)について、合計金額を上位装置に通知しており、当該上位装置の表示部で表示される。
【0038】
利用者は、硬貨の再投入を行うかどうかについての入力操作を行う。上位装置は、硬貨の再投入にかかる入力操作を受け付けると、硬貨処理装置1に対して、硬貨の再投入を通知する。硬貨処理装置1は、上位装置から、この再投入にかかる通知があると(s12)、s3に戻って、上記処理を繰り返す。
【0039】
硬貨処理装置1は、s9で返却硬貨が無いと判定した場合、または、s12で上位装置から硬貨の再投入無しにかかる通知を受信すると、一時保留部52に保留している硬貨の一部、または全部を、詰まり検出用硬貨として詰まり検出用硬貨貯留部55に送り出す(s13)。s13では、例えば10枚〜30枚程度の硬貨を、詰まり検出用硬貨として詰まり検出用硬貨貯留部55に送り出す。
【0040】
なお、ここでは、s13で一時保留部52に保留している硬貨の一部、または全部を、詰まり検出用硬貨として詰まり検出用硬貨貯留部55に送り出すとしたが、s6で予め定めた枚数の硬貨を詰まり検出用硬貨貯留部55に搬送し、その後、s6での硬貨の搬送先を一時保留部52に変更する処理であってもよい。
【0041】
硬貨処理装置1は、一時保留部52から詰まり検出用硬貨貯留部55に送り出した詰まり検出用硬貨を、第2の識別部42を介して入出金硬貨保留部32に搬送する(s14)。このとき、硬貨処理装置1は、第2の識別部を通過した硬貨の枚数(検出用硬貨枚数)をカウントしている。
【0042】
硬貨処理装置1は、入出金硬貨保留部32に搬送した詰まり検出用硬貨を硬貨搬送路60に繰り出す繰出処理を開始する(s15)。このとき、詰まり検出用硬貨は、第1の識別部41を介して一時保留部に搬送する。このとき、硬貨処理装置1は、第1の識別部41を通過した硬貨の枚数(検出用硬貨通過枚数)をカウントしている。
【0043】
このとき、硬貨処理装置1は、第1の識別部41で金種、および真硬貨であることが識別できた硬貨を一時保留部52に搬送する(s16、s17)。一方、金種、または真硬貨であることの少なくとも一方が識別できなかった硬貨については、返却硬貨貯留部56に搬送し、貯留する(s16、s18)。硬貨処理装置1は、上述したs16〜s18にかかる処理を、今回入出金硬貨保留部32に搬送した詰まり検出用硬貨がなくなるまで繰り返す(s19)。
【0044】
硬貨処理装置1は、s14でカウントした検出用硬貨枚数と、s15でカウントした検出用硬貨通過枚数と、を比較し、両者が一致していれば、硬貨詰まりが発生していないと判定する(s20、s22)。
【0045】
また、硬貨処理装置1は、s14でカウントした検出用硬貨枚数が、s15でカウントした検出用硬貨通過枚数よりも多ければ、硬貨詰まりが発生していると判定し、その旨を上位装置に通知する(s21、s23)。
【0046】
さらに、硬貨処理装置1は、s14でカウントした検出用硬貨枚数が、s15でカウントした検出用硬貨通過枚数よりも少なければ、硬貨詰まりが発生している可能性有りと判定し、その旨を上位装置に通知する(s21、s24)。
【0047】
なお、s24では、上述した処理で、詰まり検出用硬貨を搬送したことにより、硬貨搬送路60における硬貨の詰まりが解消したと判定するようにしてもよい。
【0048】
ここでは、詰まり検出用硬貨を搬送したことにより、その時点で硬貨搬送路60に詰まっていた硬貨の一部が搬送されただけで、硬貨搬送路60上における硬貨詰まりが完全に解消していない可能性があるため、s24で硬貨詰まりが発生している可能性有りと判定する構成としている。
【0049】
硬貨処理装置1は、この後、上位装置から取引完了の通知を受信すると、一時保留部52に保留している硬貨を、第1の識別部41に搬送し、金種、および真偽を再度識別し、金種別硬貨収納部53の該当する金種の金種別カートリッジに収納する。
【0050】
また、硬貨処理装置1は、上位装置から取引中止にかかる通知を受信したときには、一時保留部52に保留している硬貨を、入出金硬貨保留部32に搬送し、利用者に返却する。
【0051】
このように、この実施形態の硬貨処理装置1は、投入された入金硬貨から抜き取った詰まり検出用硬貨を、硬貨搬送路60に沿って再搬送するので、硬貨搬送路60上における硬貨の詰まりが遅滞なく適正に検出でき、信頼性の向上が図れる。
【0052】
なお、上記の説明では、詰まり検出用硬貨として、今回投入された入金硬貨を利用する構成としたが、本体側で詰まり検出用硬貨を予め用意しておいてもよい。このようにすれば、入金硬貨の枚数に影響されることなく、詰まり検出用硬貨の枚数を常に同じにできる。
【0053】
次に、運用カートリッジ54に収納している硬貨を、金種別硬貨収納部53の該当する金種の金種別カートリッジに収納する補充処理について説明する。
【0054】
図5、および図6は、この補充処理を示すフローチャートである。
【0055】
硬貨処理装置1は、運用カートリッジ54に収納されている硬貨の繰り出しを開始し、硬貨を硬貨搬送路60に沿って入出金硬貨保留部32へ搬送する(s31)。硬貨処理装置1は、入出金硬貨保留部32に搬送した硬貨を、1枚ずつ繰り出し、第1の識別部41に搬送し、金種、および真偽を識別する(s32)。硬貨処理装置1は、第1の識別部41で金種および真硬貨であることが識別できた硬貨を、予め定めた枚数だけ、一時保留部52に搬送し、収納する(s33、s34)。硬貨処理装置1は、予め定めた枚数の硬貨を一時保留部52に収納すると、第1の識別部41で金種および真硬貨であると識別した硬貨については、金種別硬貨収納部53の該当する金種の金種別カートリッジに搬送し、収納する(s33、s35)。
【0056】
なお、硬貨処理装置1は、第1の識別部41で金種または真硬貨であることの少なくとも一方が識別できなかった硬貨については、図示していない回収カートリッジに搬送し、収納する(s32、s36)。
【0057】
硬貨処理装置1は、運用カートリッジ54内に収納されていた全ての硬貨について、上述した処理を完了すると、一時保留部52に保留している硬貨を、詰まり検出用硬貨として、運用カートリッジ54に戻す(s37、s38)。
【0058】
硬貨処理装置1は、運用カートリッジ54に戻した硬貨を、再度、繰り出して入出金硬貨保留部32へ搬送する(s39)。このとき、硬貨処理装置1は、第2の識別部42を通過した硬貨の枚数を検出用硬貨枚数としてカウントしている。
【0059】
硬貨処理装置1は、入出金硬貨保留部32に搬送した詰まり検出用硬貨を、1枚ずつ繰り出し、第1の識別部41に搬送し、金種、および真偽を識別する(s39、s40)。硬貨処理装置1は、第1の識別部41で金種、および真硬貨であることを識別した硬貨を、金種別硬貨収納部53の該当する金種の金種別カートリッジに搬送し、収納する(s41)。また、第1の識別部41で金種または真硬貨であることの少なくとも一方が識別できなかった硬貨については、図示していない回収カートリッジに搬送し、収納する(s42)。硬貨処理装置1は、第1の識別部41を通過した硬貨の枚数(検出用硬貨通過枚数)をカウントしている。
【0060】
硬貨処理装置1は、詰まり検出用硬貨について上述した処理が完了すると(s43)、s39でカウントした検出用硬貨枚数と、s40でカウントした検出用硬貨通過枚数と、を比較し、両者が一致していれば、硬貨詰まりが発生していないと判定する(s44、s46)。
【0061】
また、硬貨処理装置1は、s39でカウントした検出用硬貨枚数が、s40でカウントした検出用硬貨通過枚数よりも多ければ、硬貨詰まりが発生していると判定し、その旨を上位装置に通知する(s45、s47)。
【0062】
さらに、硬貨処理装置1は、s39でカウントした検出用硬貨枚数が、s40でカウントした検出用硬貨通過枚数よりも少なければ、硬貨詰まりが発生している可能性有りと判定し、その旨を上位装置に通知する(s48)。
【0063】
なお、s48では、上述した処理で、詰まり検出用硬貨を搬送したことにより、硬貨搬送路60における硬貨の詰まりが解消したと判定するようにしてもよい。
【0064】
ここでは、詰まり検出用硬貨を搬送したことにより、その時点で硬貨搬送路60に詰まっていた硬貨の一部が搬送されただけで、硬貨搬送路60上における硬貨詰まりが完全に解消していない可能性があるため、s48で硬貨の詰まりが発生している可能性有りと判定する構成としている。
【0065】
このように、この実施形態の硬貨処理装置1は、運用カートリッジ54に収納されている硬貨を、金種別硬貨収納部53に補充する補充処理においても、硬貨搬送路60上における硬貨の詰まりが遅滞なく適正に検出でき、信頼性の向上が図れる。
【0066】
また、上記実施形態では、s38で一時保留部52に保留している硬貨を、運用カートリッジ54に戻すとしたが、運用カートリッジ54に換えて、検出用硬貨貯留部55に送り出す構成としてもよい。このようにすれば、詰まり検出用硬貨の搬送経路を短くすることができ、結果的に、補充処理にかかる時間の短縮が図れる。
【符号の説明】
【0067】
1…硬貨処理装置
2…制御部
4…識別部
5…繰出部
6…搬送部
32…入出金硬貨保留部
41…第1の識別部
42…第2の識別部
52…一時保留部
53…金種別硬貨収納部
54…運用カートリッジ
55…検出用硬貨貯留部
56…返却硬貨貯留部
60…硬貨搬送路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの硬貨収納部を結ぶ硬貨搬送路に沿って、前記硬貨収納部の一方から硬貨を繰り出し、その硬貨を前記硬貨収納部の他方へ搬送する硬貨搬送手段と、
前記硬貨搬送手段が前記硬貨収納部の一方から、他方に搬送している硬貨の枚数をカウントする第1のカウント手段と、を備え、
また、前記硬貨搬送手段には、前記硬貨搬送手段が搬送した硬貨の繰り出し側である一方の前記硬貨収納部に対して、詰まり検出用硬貨を供給する硬貨供給機能が設けられているとともに、
前記硬貨供給機能により一方の前記硬貨収納部に供給した詰まり検出用硬貨の枚数をカウントする第2のカウント手段と、
前記硬貨搬送手段により、前記硬貨供給機能が一方の前記硬貨収納部に供給した詰まり検出用硬貨を、前記硬貨収納部の他方へ搬送したときに、前記第1のカウント手段がカウントした硬貨の枚数と、前記第2のカウント手段がカウントした硬貨の枚数と、に基づいて、前記硬貨搬送路での硬貨詰まりの発生有無を判定する判定手段と、を備えた硬貨処理装置。
【請求項2】
前記硬貨搬送手段は、前記硬貨収納部の一方から繰り出し、前記硬貨収納部の他方へ搬送した硬貨の一部を、前記詰まり検出用硬貨として利用する手段である、請求項1に記載の硬貨処理装置。
【請求項3】
前記判定手段は、前記硬貨搬送手段により、前記硬貨供給機能が一方の前記硬貨収納部に供給した詰まり検出用硬貨を、前記硬貨収納部の他方へ搬送したときに、前記第1のカウント手段がカウントした硬貨の枚数と、前記第2のカウント手段がカウントした硬貨の枚数と、が同じ枚数であれば硬貨詰まりが発生していないと判定する手段である、請求項1、または2に記載の硬貨処理装置。
【請求項4】
前記判定手段は、前記硬貨搬送手段により、前記硬貨供給機能が一方の前記硬貨収納部に供給した詰まり検出用硬貨を、前記硬貨収納部の他方へ搬送したときに、前記第1のカウント手段がカウントした硬貨の枚数が、前記第2のカウント手段がカウントした硬貨の枚数よりも少なければ硬貨詰まりが発生していると判定する手段である、請求項1〜3のいずれかに記載の硬貨処理装置。
【請求項5】
前記判定手段は、前記硬貨搬送手段により、前記硬貨供給機能が一方の前記硬貨収納部に供給した詰まり検出用硬貨を、前記硬貨収納部の他方へ搬送したときに、前記第1のカウント手段がカウントした硬貨の枚数が、前記第2のカウント手段がカウントした硬貨の枚数よりも多ければ硬貨詰まりが発生していないと判定する手段である、請求項1〜4のいずれかに記載の硬貨処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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