説明

硬貨判別装置

【課題】硬貨搬送面に金属を使用しても磁気センサによる硬貨判別に支障をきたさない。
【解決手段】硬貨Cよりも硬い金属製の硬貨搬送面11と、硬貨Cを硬貨搬送面11に押し付けて搬送する搬送ベルトと、硬貨Cの搬送経路中で硬貨搬送面11に対面配置されて硬貨搬送面11に対して磁束を発生させ、磁束の変化に基づき出力が変化する磁気センサSと、磁気センサSと対面する位置で磁気センサSの外形よりも大きい形状で硬貨搬送面11に形成された貫通孔Hと、を備え、磁気センサSの出力変化量と予め設定記憶された出力変化量とを比較照合し、不一致であれば偽貨判定するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、硬貨判別装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、硬貨経路中に配置した磁気センサの出力変化に基づいて硬貨判別するようにした硬貨判別装置がある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図15は、従来の硬貨判別装置81の一例を示す模式図である。図16は、従来の硬貨判別装置81が有する磁気センサ82の周辺を示す断面図である。硬貨投入口83に投入された硬貨Cは、自重によって硬貨経路84を落下移動する。硬貨経路84は、一対の硬貨搬送面85によって形成されている。磁気センサ82は、硬貨搬送面85に嵌めこまれて硬貨経路84に配置されている。磁気センサ82は、硬貨経路84に向けて磁束を発生させている。金属である硬貨Cが磁束を通過すると渦電流が生じて磁束が変化して磁気センサ82の出力は変化する。硬貨判別装置81では、磁気センサ82の出力変化に基づいて硬貨判別が実行される。
【0004】
図15で説明したような自重落下タイプの硬貨判別装置は、硬貨経路が縦方向に長くなるため装置自体の高さも高くなり、装置の小型化が困難である。
【0005】
一方で、搬送ベルトによって硬貨を水平な硬貨搬送面に押し付けて強制的に搬送させ、その搬送過程で硬貨判別をするようにした硬貨判別装置がある。このような強制搬送タイプの硬貨判別装置によれば、その形状を平面的にすることができるため、装置自体の高さを低く抑えて装置の小型化を実現することができる。
【0006】
強制搬送タイプの硬貨判別装置の硬貨搬送面がプラスチック等で構成されている場合、硬貨搬送面は、耐久性が貧弱であるため経年により磨耗してしまう。そこで、例えば、特許文献2に記載されているように硬貨搬送面を形成する部材の材質を耐磨耗性のセラミックス等にすることが考えられる。
【0007】
しかし、耐久性と共にコスト面をも考慮すると、硬貨搬送面については硬貨よりも硬い鉄系の金属製であることが望ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが、磁気センサは金属の影響を受けるため、硬貨搬送面に金属を使用した場合には硬貨判別に支障をきたしてしまう。
【0009】
本発明の目的は、硬貨搬送面に金属を使用しても磁気センサによる硬貨判別に支障をきたさない硬貨判別装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の硬貨判別装置は、硬貨よりも硬い金属製であって前記硬貨が搬送される硬貨搬送面を上面に形成する搬送ベースと、前記硬貨搬送面の上面側に配置されて駆動源の駆動によって回転し、硬貨を前記硬貨搬送面に押し付けて搬送する搬送ベルトと、磁束を発生させ、当該磁束の変化に基づき出力が変化する磁気センサと、前記磁気センサと対面する位置で当該磁気センサの外形よりも大きい形状で前記硬貨搬送面に形成された貫通孔と、前記磁気センサの出力変化量と予め設定記憶された出力変化量とを比較照合し、不一致であれば偽貨判定する手段と、を備え、前記磁気センサは、前記搬送ベースの下面側に配置されているとともに、装置上面からみて前記貫通孔の端部より内側に配置されており、前記貫通孔に対して磁束を発生させる。
【0011】
また、本発明の硬貨判別装置は、硬貨よりも硬い金属製であって前記硬貨が搬送される硬貨搬送面を上面に形成する搬送ベースと、前記硬貨搬送面の上面側に配置されて駆動源の駆動によって回転し、硬貨を前記硬貨搬送面に押し付けて搬送する搬送ベルトと、磁束を発生させ、当該磁束の変化に基づき出力が変化する磁気センサと、前記磁気センサと対面する位置で当該磁気センサの外形よりも大きい形状で前記硬貨搬送面に形成された貫通孔と、前記磁気センサの出力変化量と予め設定記憶された出力変化量とを比較照合し、不一致であれば偽貨判定する手段と、を備え、前記磁気センサは、一対で構成されていて前記搬送ベースを挟んで配置されているとともに、装置上面からみて前記貫通孔の端部より内側に配置されており、前記貫通孔に対して磁束を発生させる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、金属製の硬貨搬送面の磁気センサに対する部分には、磁気センサの外形よりも大きな貫通孔が形成されているため、磁気センサの磁束は硬貨以外の金属の影響を受けず、硬貨判別に支障をきたさないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、実施形態としての硬貨入出金装置を示す外観斜視図である。
【図2】図2は、硬貨入出金装置の内部構造を示す平面図である。
【図3】図3は、硬貨入出金装置の内部構造の一部を示す斜視図である。
【図4】図4は、搬送ベース及び磁気センサを示す斜視図である。
【図5】図5は、搬送ベース及び磁気センサを示す平面図である。
【図6】図6は、搬送ベース及び磁気センサを搬送される硬貨と共に示す斜視図である。
【図7】図7は、搬送ベース及び磁気センサを搬送される硬貨と共に示す平面図である。
【図8】図8は、搬送ベース及び磁気センサを示す断面図である。
【図9】図9は、搬送ベース及び磁気センサを搬送される硬貨と共に示す断面図である。
【図10】図10は、貫通孔に補助部材が嵌め込まれた搬送ベースを示す断面図である。
【図11】図11は、硬貨入出金装置の電気的接続を示すブロック図である。
【図12】図12は、参考実験の状態を示す模式図である。
【図13】図13は、別の実施形態における搬送ベース及び磁気センサを示す断面図である。
【図14】図14は、さらに別の実施形態における搬送ベース及び磁気センサを示す断面図である。
【図15】図15は、従来の硬貨判別装置の一例を示す模式図である。
【図16】図16は、従来の硬貨判別装置が有する磁気センサの周辺を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
実施の一形態を図面に基づいて説明する。実施形態の硬貨判別装置は、硬貨投入口2(図1参照)に投入された硬貨を金種に応じて選別して硬貨収納部20(図2参照)に収納し、硬貨収納部20に収納された硬貨をPOS端末(図示せず)からの払出指示に応じて払い出すようにした硬貨入出金装置1への適用例である。
【0015】
図1は、実施形態としての硬貨入出金装置1を示す外観斜視図である。硬貨入出金装置1は、ハウジング1aを有する。ハウジング1aの前面右側には、上方に開口した硬貨投入口2が設けられている。硬貨投入口2は、複数枚の硬貨のまとまった投入を許容する。ハウジング1aの前面中央には、払い出される硬貨を受ける硬貨払出口3が設けられている。ハウジング1aの前面左側には、操作キー4aと表示器4bとを有する操作パネル4が設けられている。
【0016】
図2は、硬貨入出金装置1の内部構造を示す平面図である。硬貨投入口2には、投入された硬貨を光電的に検出する複数組の投入センサ5が設けられている。また、硬貨投入口2には、投入モータ42(図11参照)の駆動により回転し、投入された硬貨をハウジング1aの内部へと搬送する投入ベルト8が設けられている。投入ベルト8の途中には、投入ベルト8が搬送する硬貨を1枚ずつ分離して送り出す投入ローラ6が設けられている。
【0017】
投入ベルト8の硬貨搬送方向下流側には、投入ベルト8によって搬送された硬貨を受ける位置に配置された硬貨搬送面11が設けられている。硬貨搬送面11は、搬送ベース52によって形成されている。硬貨搬送面11には、後述する搬送ガイド部11a(図4等参照)が設けられている。硬貨搬送面11上の硬貨は、搬送モータ43(図11参照)の駆動により回転する搬送ベルト12によって押し付けられて搬送ガイド部11aに片寄せられて図2中上方向に搬送される。硬貨搬送面11上を搬送される硬貨の搬送経路中には、硬貨判別のための磁気センサSが配置されている(図3等参照)。
【0018】
硬貨搬送面11の硬貨搬送方向の下流側には、片寄せ搬送される最大径の硬貨を落下させ得るリジェクト孔14aが搬送ベース52を貫通させて形成されている。リジェクト孔14aはリジェクトシャッタ14bによって塞がれている。つまり、片寄せ搬送される硬貨は、最小径の硬貨であっても、リジェクトシャッタ14bによってリジェクト孔14aの通過が許容される。リジェクトシャッタ14bは、搬送ベース52の下方に設けられたリジェクトソレノイド14c(図11参照)によって押圧されて閉状態に位置保持されている。リジェクトソレノイド14cは、通電されることにより変位してリジェクトソレノイド14cの押圧を解除する。これにより、リジェクトシャッタ14bは開状態となる。なお、リジェクト孔14aから落下した硬貨の落下方向の先には、硬貨を収納するリジェクト収納部(図示せず)が配置されている。したがって、リジェクト孔14aから落下した硬貨は、このリジェクト収納部に収納される。また、図2に示すように、リジェクト孔14aを通過する硬貨を検出する位置に位置させて、リジェクト収納部に収納される硬貨を検出するリジェクトセンサ15が設けられている。
【0019】
硬貨搬送面11の硬貨搬送方向下流端には、搬送ベルト12によって搬送された硬貨を受ける位置に配置されてこの硬貨をさらに図2中上方向に搬送する第2搬送ベルト16が設けられている。第2搬送ベルト16も搬送モータ43(図11参照)の駆動により回転する。
【0020】
第2搬送ベルト16によって搬送された硬貨は、選別モータ44(図11参照)によって回転する選別ベルト18によって硬貨選別板17上を搬送される。硬貨選別板17には、図2中右側から左側に順次孔幅寸法が拡大する6つの選別孔17aが形成されている。選別孔17aの孔幅寸法は、図2中右側から順に1円硬貨、50円硬貨、5円硬貨、100円硬貨、10円硬貨、500円硬貨の直径にそれぞれ対応している。選別ベルト18によって硬貨選別板17に押え付けられて搬送される硬貨は、対応する選別孔17aから落下する。これにより硬貨は金種別に選別される。選別孔17aには、落下する硬貨を検出する計数センサ19が設けられている。
【0021】
選別孔17aから落下する硬貨を受ける位置には、落下した硬貨を金種別に収納する硬貨収納部20が設けられている。硬貨収納部20の底部には、硬貨収納部20に金種別に収納された硬貨をそれぞれ硬貨払出口3の方向に搬送する6つの収納ベルト21が設けられている。収納ベルト21は、払出モータ45(図11参照)の駆動により回転して硬貨を搬送する。また、硬貨収納部20の側部には、硬貨収納部20に硬貨が最大限まで収納されている収納フル状態の金種を検出する収納フルセンサ22が設けられている。
【0022】
硬貨収納部20には、各収納ベルト21により移送される各金種の硬貨を1枚ずつ送り出す払出ローラ23が設けられている。払出ローラ23によって硬貨が送り出される位置には、硬貨を金種毎に検出する6つの払出待機センサ24が配置されている。また、払出ローラ23によって硬貨が送り出される位置には、硬貨を金種毎に待機させる6つの払出待機ベルト25が設けられている。払出待機ベルト25は、払出モータ45(図11参照)の駆動により回転して硬貨の払出をする。払出待機ベルト25の硬貨払出方向の下流端には、払出を待機している各金種の先頭硬貨を選択的に硬貨払出口3に投出する6つの払出シャッタ27が配置されている。また、払出を待機している各金種の先頭硬貨の材質をそれぞれ検出する6つの材質センサ26と、各払出シャッタ27によって金種別に投出された硬貨を検出する6つの払出センサ28とが設けられている。
【0023】
図3は、硬貨入出金装置1の内部構造の一部を示す斜視図である。エンドレスベルトである搬送ベルト12は、ローラ12aに掛け渡されている。ローラ12aは、搬送モータ43(図11参照)に接続されている。搬送モータ43の駆動によってローラ12aは等速回転する。ローラ12aの等速回転により搬送ベルト12も等速回転する。搬送ベルト12は、硬貨搬送面11上の硬貨Cを挟む位置で硬貨搬送面11の上面側に配置されている。搬送ベルト12と硬貨搬送面11とに挟まれている硬貨Cは、搬送ベルト12の回転に伴って硬貨搬送面11上を搬送される。
【0024】
図4は、搬送ベース52及び磁気センサSを示す斜視図であり、図5は、その平面図である。搬送ベース52は、板状の部材である。搬送ベース52の上面には硬貨搬送面11が形成されている。磁気センサSは、硬貨搬送面11との間に隙間をあけた位置に配置されている。磁気センサSは、図4及び図5では図示しない固定部材によって位置固定されている。硬貨搬送面11と磁気センサSとの間の隙間は、硬貨Cが通過可能な幅である(図9参照)。
【0025】
硬貨搬送面11には、搬送ベース52を貫通する貫通孔Hが、磁気センサSと対面する位置に形成されている。貫通孔Hは、図5に示すように、磁気センサSの外形よりも大きく形成されている。貫通孔Hは、搬送ガイド部11aとの間に硬貨搬送面11を残して形成されている。
【0026】
図6は、搬送ベース52及び磁気センサSを搬送される硬貨Cと共に示す斜視図であり、図7は、その平面図である。搬送ベース52には、硬貨搬送面11における硬貨搬送方向の右側に搬送ガイド部11aが固定されている。搬送ベース52及び搬送ガイド部11aは、硬貨Cよりも硬い金属製である。
【0027】
硬貨Cは、搬送ベルト12(図3参照)によって硬貨搬送面11に押し付けられて搬送ガイド部11aに片寄せされて搬送される。つまり、片寄せ搬送される硬貨Cは、一定の搬送軌跡を形成して硬貨搬送面11上を搬送されることになる。ここで、前述したように、貫通孔Hと搬送ガイド部11aとの間には硬貨搬送面11が残されている。したがって、片寄せ搬送される硬貨Cは、貫通孔Hを通過するに際しては、この貫通孔Hと搬送ガイド部11aとの間の硬貨搬送面11の上を搬送される。仮に、貫通孔Hの大きさが硬貨Cの外形よりも大きい場合であっても、硬貨Cは搬送ガイド部11aに寄せられながら貫通孔Hと搬送ガイド部11aとの間の硬貨搬送面11の上を搬送されるため、搬送中に貫通孔Hから落下することはない。
【0028】
図8は、搬送ベース52及び磁気センサSを示す断面図である。磁気センサSは、硬貨搬送面11から隙間をあけて硬貨搬送面11と平行に配置されている。磁気センサSは、コイルS2とフェライトコアS1とをその構成として有する。フェライトコアS1の中心の軸部分S1aにコイルS2が巻回されている。フェライトコアS1の外周部分S1bは、コイルS2の外周を囲っている。つまり、磁気センサSの外形部分は、フェライトコアS1によって構成されている。図8に示すように、搬送ベース52に形成された貫通孔Hは、フェライトコアS1の外形よりも大きい。
【0029】
このような構成を有する磁気センサSのコイルS2に電気が流れることにより、磁気センサSでは、図8中矢視するように、軸部分S1aから外周部分S1bに至るように磁束が発生する。このとき、搬送ベース52には貫通孔Hが形成されているため、磁束は金属製の搬送ベース52に接触することはない。つまり、磁気センサSの出力変化に影響を与えない。
【0030】
図9は、搬送ベース52及び磁気センサSを搬送される硬貨Cと共に示す断面図である。なお、図9では、磁束の流れを矢視しない。硬貨Cは、図9では示さない搬送ベルト12によって、図9中手前側から奥側に向けて片寄せ搬送される。片寄せ搬送される硬貨Cは、硬貨搬送面11と磁気センサSとの間の隙間、つまり、磁気センサSの磁束を通過する。金属である硬貨Cが磁束中を通過すると渦電流が生して磁束変化が生ずる。磁気センサSは、磁束変化によりその出力が変化する。
【0031】
前述したように、片寄せ搬送される硬貨Cは一定の搬送軌跡を形成する。つまり、硬貨Cは金種毎にその径が異なるため、硬貨Cの金種毎に磁気センサSの磁束に対する通過量が異なる。例えば、径が比較的小さい1円硬貨であれば磁束に対する通過量は少ない。一方で、径が比較的大きい500円硬貨であれば磁束に対する通過量は多い。
【0032】
片寄せ搬送される硬貨Cの径に応じて磁気センサSの磁束に対する通過量が異なるので、片寄せ搬送される硬貨Cの径に応じて磁束の変化量も異なる。つまり、片寄せ搬送される硬貨Cの金種に応じて磁気センサSの出力変化量が異なることになる。さらに言い換えれば、硬貨Cの金種毎に磁気センサSの出力変化量は固有のものとなる。
【0033】
図10は、貫通孔Hに補助部材71が嵌め込まれた搬送ベース52を示す断面図である。図10に示すように、貫通孔Hには、搬送ベース52と共に硬貨搬送面11を形成する例えば樹脂製の補助部材71が嵌め込まれていても良い。補助部材71は、磁気センサSの磁束に影響を与えない材質であれば、樹脂製に限られない。補助部材71が貫通孔Hに嵌め込まれることにより、硬貨Cの搬送安定性を向上させることができる。また、補助部材71が樹脂モールド品である場合には、たとえ硬貨Cの搬送によって補助部材71が磨り減ってしまったとしても、容易にその交換が可能となる。
【0034】
図11は、硬貨入出金装置1の電気的接続を示すブロック図である。硬貨入出金装置1は、情報処理部としてのCPU32を搭載している。CPU32には、プログラム等の固定的データが予め記憶されたROM33と、各種データを書き換え自在に記憶するRAM34とがシステムバス35を介して接続されている。CPU32、ROM33及びRAM34によってマイクロコンピュータが構成されている。RAM34は、その一部が、硬貨入出金装置1の電源を切っても記憶内容が消失しない不揮発性メモリである。
【0035】
RAM34には、後述する照合テーブル34aが形成されている。照合テーブル34aには、予め、磁気センサSの出力変化量と金種とが対応付けて設定記憶されている。
【0036】
CPU32には、システムバス35を介して、磁気センサS(図3等参照)、投入センサ5(図2参照)、リジェクトセンサ15(図2参照)、計数センサ19(図2参照)、収納フルセンサ22(図2参照)、払出待機センサ24(図2参照)、材質センサ26(図2参照)、払出センサ28(図2参照)等を含むセンサ類38からの信号を入力する入力ポート39と、リジェクトソレノイド14c等を含むソレノイド類50に駆動信号を出力する出力ポート40と、通信ケーブル(図示せず)を介してPOS端末とデータ通信可能に接続する通信インターフェース41と、投入モータ42、搬送モータ43、選別モータ44、払出モータ45等を含むモータ類Mを個別に駆動制御するモータ駆動制御部46と、操作パネル4に接続されて操作キー4a(図1参照)から入力されるキー信号を取込むとともに表示器4b(図1参照)にデータを表示させる操作パネル制御部47とが接続されている。これらの各部は、CPU32によって駆動制御される。
【0037】
このような構成において、硬貨Cが硬貨投入口2に投入されたならば、硬貨Cは投入センサ5により検出される。投入センサ5の検出信号の受信によりCPU32は、投入モータ42と搬送モータ43とを駆動させて投入ベルト8と搬送ベルト12を回転させる。硬貨Cは、投入ベルト8の回転により硬貨搬送面11に搬送され、硬貨搬送面11では搬送ガイド部11aに片寄せされて搬送される。片寄せ搬送される硬貨Cは、磁気センサSの磁束を通過する。このとき、図9に基づいて説明したように、片寄せ搬送される硬貨Cの径に応じて磁気センサSの出力変化量は異なり、また、その出力変化量は硬貨C毎に固有のものである。
【0038】
CPU32は磁気センサSの出力変化に基づいて硬貨判別を実行する。硬貨判別に際しては、CPU32は、磁気センサSの出力変化量と照合テーブル34aの出力変化量とを比較照合する。つまり、CPU32は、磁気センサSの出力変化量が照合テーブル34aに記憶されているいずれかの出力変化量と一致するか否かを判定する。磁気センサSの出力変化量が照合テーブル34aに記憶されているいずれかの出力変化量と一致した場合、CPU32は搬送される硬貨Cを正貨と判定する。この場合、CPU32は、リジェクトソレノイド14cを駆動制御せず、リジェクトシャッタ14bは閉状態が維持される。したがって、硬貨Cは、リジェクト孔14aから落下することなく搬送され、次いで選別ベルト18によって搬送される。選別ベルト18によって搬送される硬貨Cは、対応する選別孔17aから落下して硬貨収納部20に収納される。
【0039】
一方で、磁気センサSの出力変化量が、照合テーブル34aに記憶されているいずれの出力変化量とも一致しない場合、CPU32は硬貨Cを偽貨と判定する。この場合、CPU32は、リジェクトソレノイド14cを駆動制御してリジェクトシャッタ14bを開状態にする。これにより、偽貨と判定された硬貨Cは、リジェクト孔14aから落下してリジェクト収納部に収納される。
【0040】
以上説明したように本実施の形態によれば、金属製の硬貨搬送面11の磁気センサSに対する部分には、磁気センサSのフェライトコアS1の外形よりも大きな貫通孔Hが形成されているため、磁気センサSの磁束は、硬貨C以外の金属の影響を受けず、硬貨判別に支障をきたさないようにすることができる。
【0041】
次に、貫通孔Hの大きさと磁気センサSの出力との関係について、参考実験の結果に基づき説明する。
【0042】
図12は、参考実験の状態を示す模式図である。(a)は平面図であり、(b)は側面図である。参考実験は、図12に示すように、直円状の貫通孔Hと直円状の磁気センサSとを同心円上に配置し、また、磁気センサSを硬貨搬送面11の高さに位置させて、この磁気センサSの出力電圧を測定した。そして、このとき、貫通孔Hと磁気センサSとの直径をそれぞれ異ならせて出力電圧を測定した。
【0043】
直径を異ならせた磁気センサSをサンプルA〜Dとして、磁気センサSの出力電圧の値(V)を測定した場合、
貫通孔直径 サンプルA サンプルB サンプルC サンプルD
(mm) (直径3mm) (直径8mm) (直径10mm) (直径17mm)
10 0.7 *3.4 *4.2 *4.0
18 0.7 3.6 4.3 *5.3
19 0.7 3.6 4.3 *5.4
20 0.7 3.6 4.3 *5.5
21 0.7 3.6 4.3 *5.5
22 0.7 3.6 4.3 5.6
27 0.7 3.6 4.3 5.6
搬送ベース無 0.7 3.6 4.3 5.6
となった。
【0044】
「*」のデータは、「搬送ベース無」よりも出力電圧値の小さいデータである。「*」のデータのように、「搬送ベース無」よりも磁気センサSの出力電圧値が小さい場合、磁気センサSが金属である搬送ベース52の影響を受けているものとした(渦電流損失の原理により、金属の影響を受けて磁気センサSの出力値は低下する)。
【0045】
上記の参考実験の結果によれば、磁気センサSの外形に対して貫通孔Hの外形が2〜3mm程度大きい場合には、磁気センサSの出力は、金属製である搬送ベース52の影響を受けなかった。
【0046】
次に、別の実施の形態について図13と図14とに基づいて説明する。
【0047】
図13は、別の実施形態における搬送ベース52及び磁気センサSを示す断面図である。本実施の形態における磁気センサSは、硬貨Cよりも硬い金属製の搬送ベース52の下面側に配置されて硬貨搬送面11に対面している。搬送ベース52には、磁気センサSの外形(つまり、フェライトコアS1の外形)よりも大きい貫通孔Hが形成されている。磁気センサSは、貫通孔Hに対して磁束を発生させている。磁気センサSの磁束は、硬貨搬送面11の上面側に至っている。硬貨Cは、搬送されて磁気センサSの磁束中を通過する。
【0048】
図14は、さらに別の実施形態における搬送ベース52及び磁気センサSを示す断面図である。本実施の形態における磁気センサSは一対で構成されて、硬貨Cよりも硬い金属製の搬送ベース52を挟んで硬貨搬送面11にそれぞれが対面している。搬送ベース52には、磁気センサSの外形(つまり、フェライトコアS1の外形)よりも大きい貫通孔Hが形成されている。磁気センサSは、貫通孔Hに対して磁束を発生させている。硬貨Cは、搬送されて磁気センサSの磁束中を通過する。
【0049】
図13で説明した実施形態及び図14で説明した実施形態であっても、図1ないし図11に基づいて説明した実施形態と同様に、硬貨Cは、搬送ガイド部11aに対して片寄せされているため、その径に応じて磁束に対する通過量が異なり、また、磁気センサSの出力変化量も異なる。硬貨入出金装置1のCPU32は、磁気センサSの出力変化量と照合テーブル34aの出力変化量とを比較照合して不一致であれば偽貨判定する。
【0050】
図13で説明した実施形態及び図14で説明した実施形態でも、磁気センサSのフェライトコアS1の外形よりも大きな貫通孔Hが搬送ベース52に形成されているため、磁気センサSの磁束は、硬貨C以外の金属の影響を受けず、硬貨判別に支障をきたさないようにすることができる。
【符号の説明】
【0051】
1 硬貨入出金装置(硬貨判別装置)
11 硬貨搬送面
11a 搬送ガイド部
12 搬送ベルト
43 搬送モータ(駆動源)
52 搬送ベース
71 補助部材
H 貫通孔
S 磁気センサ
S1 フェライトコア
S1a 軸部分
S1b 外周部分
S2 コイル
【先行技術文献】
【特許文献】
【0052】
【特許文献1】特開2000−99786公報
【特許文献2】特開2002−279474公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬貨よりも硬い金属製であって前記硬貨が搬送される硬貨搬送面を上面に形成する搬送ベースと、
前記硬貨搬送面の上面側に配置されて駆動源の駆動によって回転し、硬貨を前記硬貨搬送面に押し付けて搬送する搬送ベルトと、
磁束を発生させ、当該磁束の変化に基づき出力が変化する磁気センサと、
前記磁気センサと対面する位置で当該磁気センサの外形よりも大きい形状で前記硬貨搬送面に形成された貫通孔と、
前記磁気センサの出力変化量と予め設定記憶された出力変化量とを比較照合し、不一致であれば偽貨判定する手段と、
を備え、
前記磁気センサは、前記搬送ベースの下面側に配置されているとともに、装置上面からみて前記貫通孔の端部より内側に配置されており、前記貫通孔に対して磁束を発生させる、
硬貨判別装置。
【請求項2】
硬貨よりも硬い金属製であって前記硬貨が搬送される硬貨搬送面を上面に形成する搬送ベースと、
前記硬貨搬送面の上面側に配置されて駆動源の駆動によって回転し、硬貨を前記硬貨搬送面に押し付けて搬送する搬送ベルトと、
磁束を発生させ、当該磁束の変化に基づき出力が変化する磁気センサと、
前記磁気センサと対面する位置で当該磁気センサの外形よりも大きい形状で前記硬貨搬送面に形成された貫通孔と、
前記磁気センサの出力変化量と予め設定記憶された出力変化量とを比較照合し、不一致であれば偽貨判定する手段と、
を備え、
前記磁気センサは、一対で構成されていて前記搬送ベースを挟んで配置されているとともに、装置上面からみて前記貫通孔の端部より内側に配置されており、前記貫通孔に対して磁束を発生させる、
硬貨判別装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2011−3219(P2011−3219A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−226822(P2010−226822)
【出願日】平成22年10月6日(2010.10.6)
【分割の表示】特願2007−175138(P2007−175138)の分割
【原出願日】平成19年7月3日(2007.7.3)
【出願人】(000003562)東芝テック株式会社 (5,631)
【Fターム(参考)】