説明

硬貨包装紙および硬貨包装装置

【課題】棒金の落下強度を高めつつ、棒金の解体容易性を確保すること。
【解決手段】重積方向割れ強度が巻回方向割れ強度よりも相対的に大きくなるように、巻回方向と平行な補強部または脆弱部を重積方向について所定間隔で有する包装紙を構成する。また、補強部または脆弱部とともに、棒金の重積方向における略中央位置に内部の視認が可能な孔を所定のピッチで設けた包装紙を構成する。さらに、補強部を設ける場合には、補強部を包装紙の巻き代以外の部分にのみ設けることとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重積硬貨の周面に巻回されたうえで重積硬貨の重積方向に突出した部分である巻き代がそれぞれかしめられることで重積硬貨を包装する硬貨包装紙および硬貨包装装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、金融機関などにおいては、硬貨を所定枚数(たとえば、50枚)単位で積層した重積硬貨を紙、ポリエチレンあるいはセロハンで巻き付けて棒状にする硬貨包装装置が用いられている。この硬貨包装装置を用いることで、棒状に包装した硬貨(棒金)を短時間で生成することができる。
【0003】
かかる棒金は、たとえば、重積硬貨の円周まわりに重積硬貨の高さよりも幅が広い硬貨包装紙を巻き付け、重積硬貨の重積方向からはみ出した硬貨包装紙部分(巻き代)を、上下の硬貨面に対してそれぞれ「かしめる」ことで生成される(たとえば、特許文献1参照)。なお、硬貨包装紙は、ロール紙として硬貨包装装置に対して提供されることが一般的である。
【0004】
ここで、ポリエチレンを材料とする硬貨包装紙は、燃やすと有害物質が発生してしまうので環境保護の観点からは好ましくない。このため、環境にやさしい材料であり、かつ、再生利用が可能な普通紙を材料とする硬貨包装紙を使用することが望ましい。なお、普通紙とは、表面に特殊な加工が施されていない非透明な紙のことを指す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭58−82826号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、硬貨包装紙として普通紙を用いた場合には、棒金を落下させた場合に硬貨包装紙が破損して包装硬貨が飛散してしまうという問題があった。これは、普通紙の強度が十分とはいえないため、普通紙で包装された棒金が落下すると、落下時の衝撃による包装硬貨の位置ずれによって硬貨包装紙が割れてしまうためである。
【0007】
このため、普通紙の坪量(単位面積あたりの質量)を上げる、すなわち、厚みを増すことで上記した割れを防止することも考えられるが、ロール1巻あたりの収容長が短くなるため好ましくない。また、厚みを増した普通紙を用いると、棒金を手で割りにくくなるため使い勝手が低下してしまう。
【0008】
なお、普通紙の厚みを増す代わりに、重積硬貨に対する巻回回数を増やす手法を用いた場合にも、同様に、落下時の割れに対する強度を向上させることができるものの、棒金の解体を行いにくいという問題が発生してしまう。
【0009】
これらのことから、棒金の落下強度を高めつつ、棒金の解体容易性を確保することができる硬貨包装紙をいかにして実現するかが大きな課題となっている。なお、かかる課題は、硬貨包装紙による硬貨包装を行う際に、硬貨包装紙に対して所定の加工を行う硬貨包装装置についても同様に発生する課題である。
【0010】
本発明は、上述した従来技術の課題を解決するためになされたものであり、棒金の落下強度を高めつつ、棒金の解体容易性を確保することができる硬貨包装紙および硬貨包装装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、重積硬貨の周面に巻回されたうえで前記重積硬貨の重積方向に突出した部分である巻き代がそれぞれかしめられることで前記重積硬貨を包装する硬貨包装紙であって、前記重積方向の割れに対する強度が巻回方向の割れに対する強度よりも大きいことを特徴とする。
【0012】
また、本発明は、上記の発明において、前記巻回方向に延伸する補強部が設けられたことを特徴とする。
【0013】
また、本発明は、上記の発明において、前記補強部は、前記巻き代以外の部分にのみ設けられたことを特徴とする。
【0014】
また、本発明は、上記の発明において、前記補強部は、前記巻き代から所定距離以内にのみ設けられたことを特徴とする。
【0015】
また、本発明は、上記の発明において、前記巻回方向に延伸する脆弱部が設けられたことを特徴とする。
【0016】
また、本発明は、上記の発明において、前記脆弱部は、前記巻回方向について所定間隔ごとに設けられた孔の集合であることを特徴とする。
【0017】
また、本発明は、上記の発明において、前記脆弱部は、前記重積方向における略中央に設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、重積方向の割れに対する強度が巻回方向の割れに対する強度よりも大きいこととしたので、重積方向割れ強度が巻回方向割れ強度よりも相対的に大きいことによって、棒金の落下強度を高めつつ、棒金の解体容易性を確保することができるという効果を奏する。
【0019】
また、本発明によれば、巻回方向に延伸する補強部が設けられることとしたので、補強部が、棒金の落下時に発生する縦割れをせき止めることによって棒金の落下強度を高めることができるという効果を奏する。
【0020】
また、本発明によれば、補強部は、巻き代以外の部分にのみ設けられることとしたので、補強部が巻き代に存在すると発生しやすい巻き代の巻き込み不良を防止することができるという効果を奏する。
【0021】
また、本発明によれば、補強部は、巻き代から所定距離以内にのみ設けられることとしたので、棒金の落下時に応力が集中して最初の縦割れが発生しやすい部位にのみ補強部を設けることで包装紙のコストを下げることができるという効果を奏する。
【0022】
また、本発明によれば、巻回方向に延伸する脆弱部が設けられることとしたので、脆弱部が、棒金の落下時に発生する縦割れをせき止めることによって棒金の落下強度を高めることができるという効果を奏する。
【0023】
また、本発明によれば、脆弱部は、巻回方向について所定間隔ごとに設けられた孔の集合であることとしたので、包装紙の製造段階以降の任意の段階で、脆弱部を設ける加工を容易に行うことができるという効果を奏する。
【0024】
また、本発明によれば、脆弱部は、重積方向における略中央に設けられることとしたので、棒金の解体時に応力が集中しやすい略中央位置を脆弱化することで、棒金の解体を容易に行うことができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1は、本発明に係る硬貨包装紙の概要を示す図である。
【図2】図2は、補強部を設けた包装紙のバリエーションを示す図である。
【図3】図3は、包装紙の変形例を示す図である。
【図4】図4は、穿孔形状の変形例を示す図である。
【図5】図5は、脆弱部を設けた包装紙を示す図である。
【図6】図6は、硬貨包装装置の構成を示すブロック図である。
【図7】図7は、硬貨集積部、包装紙供給部および硬貨包装部の構成例を示す図である。
【図8】図8は、穿孔位置の調整例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に、添付図面を参照して、本発明に係る硬貨包装紙および硬貨包装装置の好適な実施例を詳細に説明する。なお、以下では、本発明に係る硬貨包装紙についての実施例を実施例1として、本発明に係る硬貨包装装置についての実施例を実施例2として、それぞれ説明することとする。
【実施例1】
【0027】
本実施例1では、本発明に係る硬貨包装紙について説明する。まず、本発明に係る硬貨包装紙の概要について説明する。図1は、本発明に係る硬貨包装紙の概要を示す図である。なお、同図の(A)には、硬貨包装紙を用いた棒金の生成手順の概要を、同図の(B)には、棒金落下時の割れが伝搬する様子を、同図の(C)には、本発明に係る硬貨包装紙(以下、包装紙1と記載する)の特徴を、それぞれ示している。
【0028】
図1の(A)に示したように、棒金3を生成する場合には、一般的に、重積硬貨2の高さよりも幅が広い包装紙1を、重積硬貨2の円周方向に巻き付ける(巻回する)。そして、重積硬貨2の重積方向にはみ出した包装紙1の両部分(巻き代)を「かしめる」ことで、棒金3を生成する。
【0029】
ここで、包装紙1として普通紙を用いた場合には、ポリエチレンフィルムを用いた場合に比べて落下時の衝撃に対する強度が不足する傾向にある。具体的には、図1の(B)に示したように、普通紙を材料とする包装紙1で巻回した棒金3を落下させた場合、落下時の衝撃によって、着地部分の対向側に最初の縦割れ3aが発生する。これは、落下時の衝撃で硬貨の移動やずれが起こるためであると考えられる。
【0030】
そして、いったん最初の縦割れ3aが発生すると、発生した縦割れ3aが同図に示す方向3bへ一気に伝搬し、ジッパーをあけるように棒金3全体が破損して包装された硬貨が飛散することになる。
【0031】
このように、包装紙1の材料として普通紙を用いた場合には、落下時に棒金3全体の破損が発生しやすい。このため、普通紙の坪量を上げて強度を確保したり、棒金3を生成する際の巻回回数を増やして強度を確保したりといった方策をとることが考えられる。
【0032】
しかし、このようにして棒金3全体としての強度を確保すると、今度は、棒金3を解体しにくいというデメリットが発生する。すなわち、棒金3内の硬貨を使用する際には、棒金3を重積方向に二つ折りにするなどして棒金3を「横割れ」させる必要があるが、棒金3全体が頑丈すぎると「横割れ」しづらいため解体が困難となってしまう。
【0033】
そこで、本発明に係る包装紙1では、図1の(C)に示したように、重積方向の割れに耐える強度(以下、「重積方向割れ強度」と記載する)が、巻回方向の割れに耐える強度(以下、「巻回方向割れ強度」と記載する)よりも相対的に大きくなるように調整することとした。
【0034】
すなわち、本発明に係る包装紙1は、重積方向割れ強度が巻回方向割れ強度よりも相対的に大きいので、重積方向よりも巻回方向に割れやすい。ここで、重積方向割れ強度を巻回方向割れ強度よりも相対的に大きくするためには、重積方向割れ強度を高めるか、あるいは、巻回方向割れ強度を低めるか、いずれかの加工を行うこととすればよい。
【0035】
以下では、重積方向割れ強度を相対的に高める場合について図2〜図4を用いて、巻回方向割れ強度を相対的に低くする場合について図5を用いて、それぞれ説明することとする。
【0036】
まず、重積方向割れ強度を相対的に高めることによって、重積方向割れ強度が巻回方向割れ強度よりも大きくなるように調整された包装紙1について説明する。図2は、補強部を設けた包装紙1のバリエーションを示す図である。
【0037】
図2の(A)に示したのは、糸などの破断しにくい材料を、強度向上が必要な部位に貼り付けることで重積方向割れ強度を高めた包装紙1である。ここで、貼り付けられた糸などの素材が各補強部101に対応している。また、同図のa1とa2とを結んだ位置における断面図1aに示したように、補強材101aは、包装紙1の表面に貼り付けられている。
【0038】
なお、図2の(A)には、補強材101aが、包装紙1の表面に貼り付けられた場合について示したが、補強材101aが内部に埋め込まれた包装紙1を用いることとしてもよい。また、補強材101aを包装紙1の表面に貼り付けつつ、プレス加工を施すなどして包装紙1表面を平面加工することとしてもよい。
【0039】
ところで、図2の(A)に示したように、各補強材101aは、重積方向について所定の間隔で貼り付けられている。このように、所定の間隔ごとに補強材101aを貼り付けることで、図1に示した最初の縦割れ3aが発生した場合に、この縦割れ3aを特定の区間(補強材101aと補強材101aとで挟まれた区間)にとどめることができる。
【0040】
すなわち、補強材101aの間隔を超えて縦割れ3aが伝搬することを防止することができる。一方、巻回方向と平行に設けられた補強材101aは、横割れを阻止することはないので、棒金3の解体に伴う横割れを伝搬させる。したがって、棒金3の解体を容易に行わせることができる。
【0041】
また、図2の(A)に示したように、各補強材101aは、巻き代以外の領域にのみ設けられている。このように、巻き代に補強材101aを設けないことで、図1に示したかしめ部の生成不良を防止することができる。
【0042】
なお、図2の(A)では、糸などの補強材101aを巻回方向と平行に貼り付ける場合について説明したが、縦割れ3aの伝搬を防止するという観点から、同図の(B)〜(D)に示した加工を包装紙1に対して行うこととしてもよい。
【0043】
なお、かかる加工のタイミングについては、製紙段階で行っても良いし、製紙段階以降の所定のタイミング、たとえば、硬貨包装装置で棒金3を生成する直前のタイミングなど、で行ってもよい。
【0044】
図2の(B)に示したのは、糸を貼り付ける代わりに、包装紙1に対してしわ101bを設ける加工を行った場合である。このように、所定間隔でしわ101bを設けることで、重積方向の割れ(縦割れ3a)の伝搬が、しわ101bでせき止められる効果を得ることができる。また、棒金3を解体する場合の巻回方向のわれ(横割れ)を、しわ101bに沿って伝搬させやすいという効果も得ることができる。
【0045】
図2の(C)に示したのは、糸を貼り付ける代わりに、包装紙1に対してこぶ101cを設ける加工を行った場合である。このように、所定間隔でこぶ101cを設ける場合にも、図2の(A)や(B)の場合と同様の効果を得ることができる。
【0046】
図2の(D)に示したのは、糸を貼り付ける代わりに、包装紙1に対して縞状のフィルム材101dを印刷した場合である。なお、フィルム材101dは、棒金3に対して所定のロゴや金融機関名を印刷する際に、無色透明なコーティングとして併せて印刷することとすればよい。このように、所定間隔でフィルム材101dを印刷する場合にも、図2の(A)〜(C)に示した場合と同様の効果を得ることができる。
【0047】
なお、図2では、補強部101を重積方向について所定間隔で設ける旨を説明したが、かかる補強部101の間隔は、等間隔とすることとしてもよいし、巻き代に近い部分の間隔を狭めることとしてもよい。このように、巻き代に近い部分に補強部101を密に設けることで、棒金3の両端部分における耐落下強度をさらに高めることができる。
【0048】
ところで、図2では、包装紙1の巻回方向と平行な補強部101を、包装紙1の重積方向について所定間隔ごとに設けた場合について説明したが、包装紙1に対して補強部101以外の加工を施したり、補強部101を設けるエリアを限定したりすることもできる。そこで、以下では、包装紙1の変形例について図3を用いて説明することとする。
【0049】
図3は、包装紙1の変形例を示す図である。なお、同図の(A)には、包装紙1に対して穿孔加工をさらに施す場合について、同図の(B)には、補強部101を設けるエリアを限定する場合について、それぞれ示している。
【0050】
図3の(A)に示したように、図2に示した補強部101が設けられた包装紙1に対し、重積方向について略中央部分、すなわち、生成される棒金3の高さの1/2に相当する位置に、円形の孔111をあけることとしてもよい。
【0051】
ここで、孔のピッチ(孔111と孔111との間隔P3)は、包装対象となる硬貨の直径をDとした場合に、πDとなるようにする。このようにすることで、生成された棒金3では、孔111がちょうど重なって内部の硬貨を視認することができる。なお、孔111の間隔P3は、包装対象となる硬貨ごとに変更することとすればよい。
【0052】
そして、このような孔111を重積方向について略中央部分に設けることで、棒金3を解体する際の横割れが、略中央部分で特に発生しやすくなるという効果を得ることができる。したがって、棒金3の落下に伴う縦割れを補強部101で防止しつつ、棒金3の解体に伴う横割れを孔111で助長することができる。
【0053】
なお、図3の(A)では、円形の孔111を設ける場合について示したが、孔の形状については、真円に限らず、楕円とすることとしてもよい。この場合、楕円の長軸を巻回方向と平行にすることが好ましい。これは、棒金3を解体する際の横割れを発生しやすくするためである。
【0054】
ところで、図2では、補強部101を巻き代以外の全面に設けた包装紙1を示したが、かかる補強部101を巻き代以外の所定部分に限定して設けることとしてもよい。すなわち、図3の(B)に示したように、補強部101を、巻き代からの距離がW3以下となる部分(同図の斜線部分参照)にのみ設けることができる。
【0055】
これは、図1の(B)に示したように、棒金3が落下する場合には、棒金3の両端部分が地面に接する場合が多いため、特に、最初の縦割れ3aは、両端部分に発生しやすいからである。したがって、かかる最初の縦割れ3aの伝搬を両端部分でせき止めることができれば、棒金3全体が破損することを防止することができる。
【0056】
このように、包装紙1の巻き代近辺の部位のみに補強部101を設けることとすれば、補強部101の数を少なくすることができるので、棒金3の縦割れを効果的に防止しつつ、包装紙1のコストを下げることが可能となる。
【0057】
ところで、図3の(A)では、包装紙1に対して円形の孔111を設ける場合について示したが、包装紙1に対して穿孔する孔の形状は、円形や楕円形には限られない。そこで、以下では、穿孔形状の変形例について図4を用いて説明することとする。
【0058】
図4は、穿孔形状の変形例を示す図である。図4の(A)に示すように、図2に示した補強部101が設けられた包装紙1に対し、重積方向について略中央部分、すなわち、生成される棒金3の高さの1/2に相当する位置に、三角形の孔112をあけることとしてもよい。
【0059】
ここで、孔のピッチ(孔112と孔112との間隔P4)は、図3の(A)に示した場合と同様に、πD(Dは硬貨の直径)となるようにする。このようにすることで、生成された棒金3では、孔112がちょうど重なって内部の硬貨を視認することができる。
【0060】
また、穿孔される三角形は、図4の(A)に示したように、包装紙1の先端側とは逆側(同図の左側)向きとなるようにする。このように、孔112を左向きの三角形とすることで、包装紙1の先端と、孔112とが重なってしまった場合であっても、包装紙1の先端部分に鋭角な部位が発生しにくい(図4の(B)参照)。したがって、かかる先端部分が、外側に巻かれた包装紙1の孔112と重なっても、先端部分が逆むけしにくい。
【0061】
これに対し、図4の(C)に示したように、孔113を右向きの三角形とすると、包装紙1の先端と、孔112が重なってしまった場合に、包装紙1の先端部分に鋭角な部位が発生しやすい。このため、鋭角な部位をもつ先端部分が、外側に巻かれた包装紙1の孔112と重なると、鋭角な部位が逆むけしやすい。
【0062】
ところで、これまでは、重積方向割れ強度を高める補強部101を設けることで、重積方向割れ強度が巻回方向割れ強度よりも相対的に大きくなるように調整した包装紙1について説明してきた。
【0063】
しかしながら、巻回方向割れ強度を低めることで、重積方向割れ強度が巻回方向割れ強度よりも相対的に大きくなるようにしてもよい。そこで、以下では、巻回方向割れ強度を低める加工を施した包装紙1について図5を用いて説明することとする。
【0064】
図5は、脆弱部201を設けた包装紙1を示す図である。図5の(A)に示したのは、孔115の群からなる脆弱部201を、重積方向について所定間隔で設けた包装紙1である。ここで、1つの群に属する孔115の間隔P5は、脆弱部201の間隔W5よりも小さいように調整されている。
【0065】
これは、棒金3の解体時に発生する横割れを、1つの脆弱部201内で伝搬しやすくするためであり、また、図1の(B)に示したように、棒金3を落下させた場合に発生する最初の縦割れ3aを、縦割れ3aに隣接する脆弱部201の孔115でせき止めるためである。
【0066】
すなわち、図5の(A)に示した包装紙1は、縦割れについては、間隔W5ごとに設けられた脆弱部201でせき止める。一方、横割れについては、間隔W5よりも小さい間隔P5ごとに設けられた孔115で伝搬させる。
【0067】
なお、図5の(B)に示したように、脆弱部201を設けた包装紙1に対し、図3の(A)と同様に、重積方向について略中央部分、すなわち、生成される棒金3の高さの1/2に相当する位置に、円形の孔111をあけることとしてもよい。
【0068】
なお、孔111の間隔P3については、図3の(A)と同様であるので、ここでの説明を省略する。また、孔111の形状を楕円や三角形とすることができる点についても、補強部101を設けた包装紙1と同様であるので、ここでの説明を省略する。
【0069】
上述してきたように、本実施例1では、重積方向割れ強度が巻回方向割れ強度よりも相対的に大きくなるように、巻回方向と平行な補強部または脆弱部を重積方向について所定間隔で有する包装紙を構成した。したがって、棒金の落下強度を高めつつ、棒金の解体容易性を確保することができる。
【0070】
ところで、上述した実施例1では、製紙段階あるいは製紙段階以降の所定の段階で加工が施された包装紙について説明した。しかし、加工前の包装紙を硬貨包装装置へ提供し、硬貨包装装置が包装紙に対する加工をおこなったうえで硬貨を包装することとしてもよい。そこで、以下に示す実施例2では、包装紙の加工機能を有する硬貨包装装置について説明することとする。
【実施例2】
【0071】
図6は、本実施例2に係る硬貨包装装置10の構成を示すブロック図である。なお、同図では、硬貨包装装置10の特徴を説明するために必要な構成要素のみを示しており、包装対象となる硬貨の投入機構や搬送機構といった一般的な構成要素については記載を省略している。また、硬貨包装装置10は、実施例1で説明した包装紙1全般、特に、穿孔されていない包装紙1全般をロール紙として受け付けるものとする。
【0072】
同図に示すように、硬貨包装装置10は、硬貨集積部11と、包装紙供給部12と、硬貨包装部13と、入力部14と、制御部15と、記憶部16とを備えている。また、制御部15は、金種決定部15aと、穿孔調整部15bとをさらに備えており、記憶部16は、包装情報16aを記憶する。
【0073】
硬貨集積部11は、同一金種の硬貨を所定枚数(たとえば、25枚や50枚)ごとに、硬貨面同士が重なるように積み上げる機構であり、重積された硬貨、すなわち、重積硬貨2を硬貨包装部13へ提供する。
【0074】
包装紙供給部12は、ロール紙(包装紙1)を格納するとともに、包装紙1を繰り出して硬貨包装部13へ供給する機構である。また、包装紙供給部12は、穿孔調整部15bからの指示に応じて包装紙1に穿孔する機構をさらに有しているが、この点については、図7を用いて後述することとする。なお、包装紙1の幅は、あらゆる金種に対応するようにあらかじめ算出されたものを用いる。
【0075】
硬貨包装部13は、硬貨集積部11から提供された重積硬貨2に対し、包装紙供給部12にて穿孔された包装紙1を所定回数だけ巻回し、後続の包装紙1を切断したうえで、重積硬貨2の重積方向にはみ出した包装紙1の両部分を「かしめる」ことで、棒金3を生成する機構である。
【0076】
ここで、硬貨集積部11、包装紙供給部12および硬貨包装部13の構成例について図7を用いて説明しておく。図7は、硬貨集積部11、包装紙供給部12および硬貨包装部13の構成例を示す図である。なお、同図の(A)には、各部を側方からみた図を、同図の(B)には、各部を上方からみた図を、それぞれ示している。
【0077】
図7の(A)に示したように、硬貨集積部11は、対向配置された一対のベルト11a間に硬貨を導入して突起11bで支えるとともに、硬貨が導入されるたびに突起11bの位置を下降させていくことで、一対のベルト11a間に所定枚数の重積硬貨2を集積する。
【0078】
包装紙供給部12は、ロール状の包装紙1を、2組の給紙ローラ12aで硬貨包装部13に向けて繰り出すとともに、カッタ12cで所定の長さに切断する。ここで、カッタ12cは、包装紙1の幅方向に対して「く」の字型の形状を有しており、繰り出される包装紙1を、両端部分よりも中央部分が凸状となる「く」の字型になるように切断する。
【0079】
また、包装紙供給部12は、2組の給紙ローラ12a間に、穿孔部12bを有しており、穿孔調整部15bからの指示に応じて包装紙1に対して所定の形状の孔を、所定のタイミングであける。なお、同図では、2組の給紙ローラ12a間に穿孔部12bを設けた場合について示したが、穿孔部12bの取り付け位置は、ロール状の包装紙1とカッタ12cとの間の任意の位置とすることができる。
【0080】
硬貨包装部13は、硬貨集積部11から受け取った重積硬貨2を、図示しない案内機構によって複数本の包装ローラ13a間に導き、各包装ローラ13aで重積硬貨2を挟み込んで回転させながら、包装紙供給部12から供給された包装紙1を重積硬貨2の周面に巻き付ける機構である。そして、上下の巻込鉤13bで包装紙1の上下縁を巻き込んで「かしめる」ことで棒金3を生成する。
【0081】
次に、穿孔部12bの詳細な構成について図7の(B)を用いてさらに説明する。図7の(B)に示したように、穿孔部12bは、穿孔ピン71と、穿孔ガイド72と、ダスト回収ボックス73とをさらに備えている。穿孔ピン71は、穿孔ガイド72における包装紙1側に設けられた開放部から突出することで、包装紙1に対して所定の形状の孔をあける。
【0082】
なお、孔の形状については、穿孔ピン71を取り替えることで任意の形状とすることができる。また、各形状にそれぞれ対応した穿孔ピン71を複数種類設けておき、穿孔調整部15bからの指示された形状に対応する穿孔ピン71を作動させることとしてもよい。
【0083】
穿孔ガイド72は、包装紙1側に平坦な面を有しており、上記した穿孔ピン71を作動させるためのソレノイドやリンク機構を備えているものとする。ダスト回収ボックス73は、穿孔ピン71による孔あけで発生した包装紙1の切片を回収する取り外し式のボックスである。
【0084】
図6の説明に戻り、入力部14について説明する。入力部14は、タッチパネルディスプレイやテンキーなどの入力デバイスで構成され、包装対象となる硬貨の金種を入力させる処理を行う。また、入力部14は、入力された金種を制御部15の金種決定部15aへ通知する処理を併せて行う。
【0085】
なお、本実施例2では、入力部14を介して包装対象となる硬貨の金種を取得する場合について示したが、硬貨の金種を判別する光学センサや磁気センサといったセンサによって金種をあらかじめ判別し、金種判別した硬貨を包装対象とすることとしてもよい。
【0086】
制御部15は、入力部14から受け取った金種に基づいて記憶部16の包装情報16aを検索することで、当該金種に対応する穿孔パターンを取得し、取得した穿孔パターンを包装紙供給部12に対して指示する処理を行う処理部である。
【0087】
金種決定部15aは、入力部14から受け取った金種に基づいて記憶部16の包装情報16aを検索し、当該金種に対応する穿孔パターンを取得する処理部である。そして、金種決定部15aは、取得した穿孔パターンを穿孔調整部15bへ出力する処理を併せて行う。
【0088】
穿孔調整部15bは、金種決定部15aから受け取った穿孔パターンで包装紙1に対する穿孔を行うように包装紙供給部12へ指示する処理を行う処理部である。なお、穿孔指示を受けた包装紙供給部12は、包装紙1の供給速度に応じて穿孔部12bの作動タイミングを調整することで、包装紙1の所定位置に孔をあけることになる。
【0089】
記憶部16は、メモリやハードディスクドライブといった記憶デバイスであり、包装情報16aを記憶する。包装情報16aは、硬貨の金種ごとに、包装紙1の巻回方向における孔のピッチを定義した情報である。なお、穿孔部12bの穿孔ピン71を重積方向に複数備えることとしたうえで、重積方向のピッチを包装情報16aに含めることとしてもよい。
【0090】
次に、硬貨包装装置10によって行われる穿孔位置の調整例について、図8を用いて説明する。図8は、穿孔位置の調整例を示す図である。なお、同図の(A)には、包装紙1として普通紙のような非透明な紙を用いる場合の例を、同図の(B)には、包装紙1としてトレーシングペーパのような半透明な紙を用いる場合の例を、それぞれ示している。また、図8には、重積硬貨2に対する巻回回数を2.5回とする場合について示している。
【0091】
図8の(A)に示したように、非透明な紙を用いる場合には、穿孔調整部15bは、待機中の包装紙1の先端からA1の距離に最初の孔111をあけるように包装紙供給部12の穿孔部12bへ指示する。なお、A1は20mm程度とすることができる。
【0092】
つづいて、穿孔調整部15bは、巻回方向についてπDのピッチで2番目の孔111をあけるように包装紙供給部12bへ指示する。かかる指示を受け付けた包装紙供給部12は、巻回方向について最初の孔からの距離がπDに達した時点で包装紙1の送りをいったん停止したうえで、穿孔部12bによって2番目の孔をあける。なお、包装紙1の送りを停止することなく穿孔部12bで2番目の孔をあけることとしてもよい。
【0093】
そして、巻回回数が2.5回となるように包装紙1はカッタ12cで切断される。ここで、Dは包装対象となる硬貨の直径であり、金種によって異なる値が包装情報16aに格納されている。なお、πは円周率である。
【0094】
このように、巻回回数を2.5回程度とする場合、最初の孔111と、2番目の孔111とは、生成された棒金3の同じ位置で重なり、かつ、2番目の孔111の外側には包装紙1が重ならない。したがって、重なった孔111経由で、棒金3内の硬貨の外周を直接視認することができるので、棒金3の側面から金種を確認することが可能となる。
【0095】
次に、半透明な紙を用いる場合について説明する。図8の(B)に示したように、半透明な紙を用いる場合には、穿孔調整部15bは、待機中の包装紙1の先端から0.5πDmaxの距離に最初の孔111をあけるように包装紙供給部12の穿孔部12bへ指示する。
【0096】
ここで、Dmaxは、硬貨包装装置10が包装対象とする硬貨の直径のうち最大の直径を指している。ところで、硬貨包装装置10が包装対象とする硬貨の直径のうち最小の直径をDminとすると、条件式「0.5πDmax<πDmin」が成立すれば、巻回状態で包装紙1の先端が孔111の位置にくることはない。なお、日本の硬貨の場合、Dmaxが26.5mmであり、Dminが20mmであるので、上記した条件式を満たしている。
【0097】
このように、半透明な紙を用いる場合には、図8の(B)に示したように、1重目となる部分にのみ孔111があけられる。そして、巻回回数が2.5回(紙片の長さは2.5πD)となるように包装紙1がカッタ12cで切断される。
【0098】
このようにすることで、1重目部分にあけられた孔111の外側には、孔111がない包装紙1が1回だけかぶさることになる。したがって、孔111が棒金3の外周部分に直接露出することなく、棒金3の側面から半分透けた状態で金種を確認することが可能となる(同図の破線部分参照)。
【0099】
また、複数の棒金3をトレーのような箱体へ収納して運搬する際、あるいは、箱体へ棒金3を収納する際に、棒金3同士が接触してお互いの孔(包装紙1の孔)が引っ掛かり、包装紙1が孔部分から破れてしまうことを防止することができる。
【0100】
上述したように、本実施例2では、穿孔部を備えた硬貨包装装置が、包装対象硬貨の金種ごとに、包装紙に対する穿孔位置を調整しつつ、穿孔された包装紙を重積硬貨に巻回することで棒金を生成することとした。したがって、硬貨の金種を側面から視認可能な棒金を生成することができる。
【0101】
なお、実施例2では、図3の(A)などに示した金種視認用の孔を硬貨包装装置であける場合について説明したが、図5に示した脆弱部を構成する孔を硬貨包装装置であけることとしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0102】
以上のように、本発明に係る硬貨包装紙および硬貨包装装置は、棒金の落下強度を高めつつ、棒金の解体容易性を確保したい場合に有用であり、特に、中身の確認が可能な棒金を低コストで生成したい場合に適している。
【符号の説明】
【0103】
1 包装紙
2 重積硬貨
3 棒金
10 硬貨包装装置
11 硬貨集積部
11a ベルト
11b 突起
12 包装紙供給部
12a 供紙ローラ
12b 穿孔部
12c カッタ
13 硬貨包装部
13a 包装ローラ
13b 巻込鉤
14 入力部
15 制御部
15a 金種決定部
15b 穿孔調整部
16 記憶部
16a 包装情報
71 穿孔ピン
72 穿孔ガイド
73 ダスト回収ボックス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重積硬貨の周面に巻回されたうえで前記重積硬貨の重積方向に突出した部分である巻き代がそれぞれかしめられることで前記重積硬貨を包装する硬貨包装紙であって、
前記重積方向の割れに対する強度が巻回方向の割れに対する強度よりも大きいことを特徴とする硬貨包装紙。
【請求項2】
前記巻回方向に延伸する補強部が設けられたことを特徴とする請求項1に記載の硬貨包装紙。
【請求項3】
前記補強部は、
前記巻き代以外の部分にのみ設けられたことを特徴とする請求項2に記載の硬貨包装紙。
【請求項4】
前記補強部は、
前記巻き代から所定距離以内にのみ設けられたことを特徴とする請求項3に記載の硬貨包装紙。
【請求項5】
前記巻回方向に延伸する脆弱部が設けられたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の硬貨包装紙。
【請求項6】
前記脆弱部は、
前記巻回方向について所定間隔ごとに設けられた孔の集合であることを特徴とする請求項5に記載の硬貨包装紙。
【請求項7】
前記脆弱部は、
前記重積方向における略中央に設けられていることを特徴とする請求項5または6に記載の硬貨包装紙。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−37480(P2011−37480A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−186471(P2009−186471)
【出願日】平成21年8月11日(2009.8.11)
【出願人】(000001432)グローリー株式会社 (1,344)
【Fターム(参考)】