説明

硬貨払出装置

【課題】配線数を低減するとともに、組立作業効率を向上させることができる硬貨払出装置を提供する。
【解決手段】硬貨払出機構23を駆動制御する制御基板の一方面には、硬貨収容筒22内の硬貨の有無を検出する複数個の硬貨検出センサ71を、各硬貨収容筒22に設けられたセンサ挿入孔33に対応するように設けるようにした。そして、制御基板24は、硬貨検出センサ71が設けられた一方面を各硬貨収容筒22側に向けるとともに、各硬貨検出センサ71を各センサ挿入孔33に一括して挿入した状態で各硬貨収容筒22に固定するようにした。このため、各硬貨検出センサ71からそれぞれ配線を引き出す必要がないので、それらの配線スペースを確保する必要がない。また、それら配線を、手作業による半田付け等によって硬貨検出センサ及び制御基板にそれぞれ接続する必要もない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばワンマンバスの運賃箱に搭載される硬貨払出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばワンマンバスの運賃箱においては、投入口から投入された券類と硬貨とが券銭分離手段により分離されるとともに、その分離された硬貨は硬貨識別手段により金種別に分離される。当該硬貨識別手段からの硬貨は、釣り銭を払い出すための硬貨払出装置に供給される。この硬貨払出装置としては、例えば特許文献1に記載される構成が知られている。即ち、この硬貨識別装置は、複数個の硬貨収容筒を備えるとともに、各硬貨収容筒には前記硬貨識別手段から供給される硬貨が金種毎に蓄積される。釣り銭を払い出す場合には、制御手段からの制御信号に基づいて硬貨払出機構が作動されることにより、各硬貨収容筒に蓄積された硬貨が、釣り銭の額に応じて組み合わせられて払い出される。
【0003】
各硬貨収容筒の上部及び下部の2箇所、収容する硬貨の種類によっては上部、中間部及び下部の3箇所には、硬貨検出センサがそれぞれ設けられるとともに、当該硬貨検出センサにより、硬貨収容筒内の硬貨の蓄積量が検出される。即ち、硬貨収容筒の上部に設けられた硬貨検出センサにより、当該硬貨収容筒が満杯になったことが検出された場合、当該検出信号に基づいて、制御手段は、硬貨識別手段からの硬貨が運賃箱金庫に供給されるように硬貨の供給経路を切り替える。一方、硬貨収容筒の下部及び中間部に設けられた硬貨検出センサは、例えばワンマンバスの運行終了後に、最終的に硬貨収容筒内に残しておく硬貨の量に対応するように設けられている。即ち、運賃箱に多額の硬貨を残すことは、防犯上好ましくないため、ワンマンバスの運行終了後には必要最低限の硬貨を残して、硬貨収容筒内の硬貨を運賃箱内の金庫に回収するようにされている。そして、この必要最低限の硬貨の蓄積量を、硬貨収容筒の下部、及び中間部に設けられた硬貨検出センサにより検出するようにされている。具体的には、硬貨収容筒の下部に設けられた硬貨検出センサにより、当該硬貨収容筒が空になった状態(正確には、下部の硬貨検出センサにより硬貨が検出されなくなる所定枚数以下になった状態)が検出されるとともに、硬貨収容筒の中間部に設けられた硬貨検出センサにより、当該硬貨収容筒の半回収状態が検出される。
【特許文献1】特開平7−37136号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、前記従来の硬貨払出装置には次のような問題があった。即ち、前記硬貨検出センサとしては、例えば発光素子と受光素子とがそれぞれ個別にケースに組み込まれた分離型のフォトセンサ(処理回路基板を含む。)が使用されていた。この分離型のフォトセンサは、各硬貨収容筒において、発光側と受光側とを互いに対向するように配置されるとともに、発光側から受光側へ向かう光が遮られているかどうかにより硬貨の有無を検出するようになっていた。そして、この分離型のフォトセンサにおいては、発光側及び受光側からそれぞれ2本の配線が引き出されて前記制御手段に接続されていた。このため、硬貨収容筒の上部及び下部の2箇所に硬貨検出センサが設けられる場合には4本の配線を引き出す必要があるとともに、同じく上部、中間部及び下部の3箇所に硬貨検出センサが設けられる場合には6本の配線を引き出す必要があった。このように多数の配線を、硬貨払出装置と前記制御手段との間において配設するための配線スペースを運賃箱内に確保する必要があった。
【0005】
近年では、車両内における通路スペースを確保するために、運賃箱の小型化(特に、薄型化)が要望されている。その一方で、運賃箱には、例えば非接触ICカードシステムが組み込まれる等、運賃箱はますます多機能化の傾向にある。このため、運賃箱の内部スペースをいかに確保するかが、重要な問題となっている。さらに分離型のフォトセンサにおいて、前記多数の配線はそれぞれ1本1本手作業による半田付けにより接続されていた。このため、半田付け作業が非常に煩雑であるとともに、硬貨払出装置の組立作業効率の低下の一因となっていた。
【0006】
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、配線数を低減するとともに、組立作業効率を向上させることができる硬貨払出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、硬貨を金種別に積み重ねた状態で収容する複数個の硬貨収容筒が一列に並べられた状態で設けられるとともに、各硬貨収容筒の下方に配置された硬貨払出機構の作動により各硬貨収容筒の最下部の硬貨を一枚ずつ払い出すようにした硬貨払出装置において、前記硬貨払出機構を駆動制御する制御基板を備えるとともに、当該制御基板の一方面には硬貨収容筒内の硬貨の有無を検出する複数個の硬貨検出センサを各硬貨収容筒に設けられたセンサ装着部位に対応するように設け、前記制御基板は、硬貨検出センサが設けられた一方面を各硬貨収容筒側に向けるとともに、各硬貨検出センサを各硬貨収容筒のセンサ装着部位に一括して装着した状態で各硬貨収容筒に固定するようにしたことをその要旨とする。
【0008】
この構成によれば、硬貨検出センサから配線を引き出す必要がないので、それらの配線スペースを確保する必要がない。また、それら配線を、手作業による半田付け等によって硬貨検出センサ及び制御基板にそれぞれ接続する必要もない。このため、硬貨払出装置の組立作業効率が向上する。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の硬貨払出装置において、前記制御基板は、各硬貨収容筒に対応する部位においてそれぞれ固定するようにしたことをその要旨とする。
【0010】
この構成によれば、各硬貨収容筒は制御基板により連結される。このため、各硬貨収容筒間を連結するための手段を別途設けるようにした場合と異なり、硬貨払出装置の部品点数が抑制されるとともに、当該硬貨払出装置の組立作業効率が向上する。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の硬貨払出装置において、各硬貨収容筒の基部にはフランジを設けるとともに、各硬貨収容筒は前記硬貨払出機構の枠体壁に設けられた筒装着部位に位置決め状態で配置するようにし、当該位置決め状態の各硬貨収容筒のフランジをブラケットにより前記枠体壁の外面に押さえ付けることにより各硬貨収容筒を当該枠体壁に一括して固定するようにしたことをその要旨とする。
【0012】
この構成によれば、各硬貨収容筒を個別に固定するようにした場合と異なり、硬貨払出装置の組立作業効率が向上する。
請求項4に記載の発明は、請求項1〜請求項3のうちいずれか一項に記載の硬貨払出装置において、前記制御基板の硬貨検出センサが設けられた一方面と反対側の他方面には、硬貨収容筒から硬貨が払い出される度に当該硬貨により押圧されて動作するレバーを各硬貨収容筒に対応して設けるとともに、各レバーの動作を検出する払出検出センサを各レバーに対応して設けるようにしたことをその要旨とする。
【0013】
この構成によれば、制御基板は、レバーの動作を検出することにより、硬貨の払い出し枚数を求めることが可能となる。また、払出検出センサを例えば硬貨収容筒等に設けるようにした場合と異なり、当該払出検出センサから制御基板への配線が不要となる。このため、払出検出センサからの配線スペースを確保する必要がない。また、当該配線を、手作業による半田付け等によって払出検出センサ及び制御基板にそれぞれ接続する必要もない。従って、硬貨払出装置の組立作業効率が向上する。
【0014】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜請求項4のうちいずれか一項に記載の硬貨払出装置において、各硬貨収容筒には、それらの側方に配置される硬貨識別装置により硬貨が金種毎に分離されて供給されるとともに、前記制御基板は、各硬貨収容筒の前記硬貨識別装置と反対側の側部に固定するようにしたことをその要旨とする。
【0015】
この構成によれば、制御基板が硬貨識別装置に干渉するおそれはない。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、配線数を低減するとともに、組立作業効率を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明を、例えばワンマンバスの運賃箱に搭載される硬貨払出装置に具体化した一実施の形態を図1〜図8基づいて説明する。
<運賃箱の概要>
まず、運賃箱の概要について説明する。図1に示すように、運賃箱11の筐体12の上部には、運賃としての硬貨C並びに整理券及び回数券等の券類Tが投入される投入口13が設けられている。この投入口13に投入された硬貨C及び券類Tは、当該投入口13の直下に配置された券銭分離装置14により分離される。この券銭分離装置14により分離された券類は、図示しない通路を介して図示しない金庫の券類収容室に収容される。一方、券銭分離装置14により分離された硬貨Cは硬貨識別装置15により金種(10円、50円、100円及び500円)が識別される。硬貨識別装置15により識別処理後の硬貨Cの一部は、硬貨払出装置16の硬貨収容部16aに金種別に振り分けられて収容されるとともに、残りの硬貨Cは図示しない通路を介して前記金庫の硬貨収容室に収容される。釣り銭が必要とされる場合には、硬貨払出装置16から釣り銭の金額に応じて硬貨Cが払い出されるとともに、この払い出された硬貨Cは搬送装置(ベルトコンベヤ)17により、運賃箱11の外面に設けられた硬貨排出口18に供給される。
【0018】
<硬貨払出装置>
次に、硬貨払出装置について詳細に説明する。図2に示すように、硬貨払出装置16は、運賃箱11の筐体12に固定される四角枠状の枠体21と、当該枠体21の上面に一列に並ぶように固定されるとともに硬貨収容部16aを構成する4つの硬貨収容筒22と、各硬貨収容筒22に対応するように枠体21内に設けられる硬貨払出機構23とを備えている。また、硬貨払出装置16は、各硬貨収容筒22の側部に固定されるとともに硬貨払出機構23を駆動制御する制御基板24を備えている。なお、図2に二点鎖線で示されるように、各硬貨収容筒22の側方には硬貨識別装置15が各硬貨収容筒22の延びる方向に対して所定角度をなすように斜状に配置される。また、図2に二点鎖線で示されるように、各硬貨払出機構23の硬貨識別装置15とは反対側の側方下部には搬送装置17が配置される。
【0019】
<硬貨収容筒>
硬貨収容筒22は、遮光体、即ち可視光に対する遮光性を得るために例えば黒色に着色された合成樹脂材料により一体形成されている。図3に示すように、硬貨収容筒22は、両端が開口した筒本体31と、当該筒本体31の下部に形成された四角環状のフランジ32とを備えている。
【0020】
筒本体31のフランジ32よりも上側の外周面において、上部、下部及びそれらの部位の中間部には、3つのセンサ挿入孔33が当該筒本体31の中心軸に沿うように一列に配置形成されている。また、筒本体31の外周面において、上部、下部及びそれらの部位の中間部には、それぞれ2つを1組とする雌ねじ部34が突設されている。各組を構成する2つの雌ねじ部34の中間に各センサ挿入孔33が位置するように、各雌ねじ部34は配置されている。さらに、硬貨収容筒22の外周面には、2つの突部35a,35bが、センサ挿入孔33に対する挿入方向及び雌ねじ部34の突出方向に対して直交する方向へ延びるように形成されている。2つの突部35a,35bのうちの一方には位置決め突部36が形成されるとともに、他方には位置決め凹部37が形成されている。
【0021】
図4に示すように、各硬貨収容筒22は、枠体21の長方形状の上壁21aに所定間隔毎に形成された4つの挿通孔41に上方から挿入されている。硬貨収容筒22の挿通孔41に対する挿入方向への移動は、フランジ32の下面が上壁21aの上面に当接することにより規制される。この状態において、硬貨収容筒22の下端面は上壁の内面と面一となるように、フランジ32の筒本体31の軸線方向における位置が設定されている。また、各硬貨収容筒22を枠体21の各挿通孔41に挿入した状態において、互いに隣り合う硬貨収容筒22の位置決め突部36と位置決め凹部37とは互いに嵌合している。これにより、各硬貨収容筒22の間隔が一定に保たれるとともに、各硬貨収容筒22の上下方向及び左右方向における位置決めがなされる。
【0022】
また、上壁21aの各挿通孔41に挿入状態で位置決めされた各硬貨収容筒22は、それらのフランジ32がブラケット42により上方から押さえ付けられることにより、上壁21aの外面に一括して固定されている。ブラケット42は、板材がコの字状に屈曲されることにより形成されている。ブラケット42の互いに対向する2つの側壁の下部には、それぞれ固定片43が外方へ折り曲げ形成されるとともに、当該固定片43にはボルト挿通孔43aが形成されている。ブラケット42は、各硬貨収容筒22を囲うように各フランジ32の上面間に載置されるとともに、固定片43の上方からボルト44を挿通して上壁21aに締め付けることにより固定されている。ボルト44の締め付けに伴いフランジ32は上壁21aの外面に押し付けられる。
【0023】
4つの硬貨収容筒22には、それぞれ10円硬貨、50円硬貨、100円硬貨及び500円硬貨が、硬貨識別装置15により振り分けられて収容される。硬貨識別装置15により供給された硬貨Cは、対応する金種の硬貨収容筒22の上部開口部から供給されるとともに、当該硬貨収容筒22内において積み重ねられた状態で収容される。
【0024】
図5に示すように、枠体21の上壁21aの内面には、複数のスペーサ52が各挿通孔41を間に挟むように固定されるとともに、各スペーサ52の下面にはそれぞれ板状のガイド部材53が固定されている。スペーサ52の厚みは、各硬貨収容筒22に収容される硬貨Cのうち最も厚みの大きい硬貨Cの厚みよりも若干大きく設定されている。また、各ガイド部材53は、互いに隣り合うガイド部材53間に若干隙間が形成されるように配置されるとともに、当該隙間はガイド溝54として機能する。各硬貨収容筒22に収容される硬貨Cのうち最下部の硬貨Cは、各硬貨収容筒22の下端開口部内を臨む2つのガイド部材53の上面間に落下して載置される。
【0025】
<硬貨払出機構>
図5に示すように、枠体21内には、4つの硬貨払出機構23が、各硬貨収容筒22と対応するように設けられている。図6に併せて示すように、硬貨払出機構23は、図示しないモータに作動連結されるとともに、独立して動作するように構成された硬貨押出部材61を備えている。硬貨押出部材61はガイド溝54に沿うように移動可能に設けられている。硬貨押出部材61の先端部は、上壁21aの内面及び硬貨収容筒22の下端面に干渉しないように設けられるとともに、2つのガイド部材53間に載置された硬貨Cに係合可能となるように設けられている。
【0026】
そして、前記モータの駆動により、硬貨押出部材61は、図6に実線で示す押出待機位置と、同じく二点鎖線で示す押出位置との間を移動する。押出待機位置は、硬貨Cを払い出さない通常時における硬貨押出部材61の位置であるとともに、硬貨押出部材61の先端部がガイド溝54の後端側(図6における右側)、具体的には2つのガイド部材53間に載置された硬貨Cよりも後方にある位置である。押出位置は、硬貨収容筒22の最下部の硬貨Cを押し出す位置であるとともに、硬貨押出部材61の先端部がガイド溝54の前端側にある位置である。
【0027】
硬貨押出部材61が押出待機位置から押出位置へ向かって移動すると、2つのガイド部材53の上面間に載置された硬貨Cに硬貨押出部材61が係合するとともに、当該硬貨押出部材61により硬貨Cは押されて2つのガイド部材53の上面から外方へ投げ出される。当該投げ出された硬貨Cは、2つのガイド部材53の硬貨Cが放出される側の端部の斜め下方に配置された搬送装置17の搬送面上に落下して、硬貨排出口18へ送られる。
【0028】
<制御基板>
図7に示すように、各硬貨収容筒22の側部には、各硬貨払出機構23を駆動制御する制御基板24が固定されている。図2に併せて示すように、制御基板24には、16個のボルト挿通孔24aが縦横に所定間隔をおいて配置形成されている。各ボルト挿通孔43aは、上壁21aに立設された4つの硬貨収容筒22の雌ねじ部34に対応している。また、制御基板24の一方面には、硬貨収容筒22内の硬貨Cの有無を検出する複数個(本実施形態では、9個)の硬貨検出センサ71が縦横に所定間隔をおいて設けられている。各硬貨検出センサ71は、上壁21aに立設された4つの硬貨収容筒22のセンサ挿入孔33に対応している。
【0029】
本実施の形態において、硬貨検出センサ71としては、反射型のフォトセンサが使用されている。この反射型のフォトセンサは、発光素子と受光素子とが単一のケースに組み込まれたものであるとともに、両素子の発光面と受光面とは検出体である硬貨Cに向き合う方向に配置されている。硬貨収容筒22内において、硬貨検出センサ71に対応する位置まで硬貨Cが蓄積されている場合には、発光素子から照射された光が硬貨Cにより反射されるとともに、当該反射光を受光素子により受けることにより硬貨Cの存在が検出される。硬貨収容筒22内において、硬貨検出センサ71に対応する位置まで硬貨Cが蓄積されていない場合には、発光素子から照射された光が硬貨Cにより反射されることがないので、受光素子からは何ら検出信号は出力されない。これにより、硬貨Cが存在しないことが検出される。各硬貨検出センサ71の検出信号は制御基板24へ送られる。
【0030】
このような硬貨検出センサ71を、各硬貨収容筒22の上部及び下部に、又は上部、下部及びそれらの中間部に設けることにより、各硬貨収容筒22内の硬貨Cの蓄積量を検出することが可能となる。即ち、硬貨収容筒22の上部に設けられた硬貨検出センサ71は、当該硬貨収容筒22が満杯になった状態を検出する。また、硬貨収容筒22の下部及び中間部に設けられた硬貨検出センサ71は、例えばワンマンバスの運行終了後に、最終的に硬貨収容筒22内に残しておく硬貨Cの量に対応するように設けられている。即ち、運賃箱に多額の硬貨Cを残すことは、防犯上好ましくないため、ワンマンバスの運行終了後には必要最低限の硬貨Cを残して、硬貨収容筒22内の硬貨Cを運賃箱11内の金庫に回収するようにしている。そして、硬貨収容筒22の中間部に設けられた硬貨検出センサ71は、硬貨収容筒22内に残す必要最低限の硬貨Cの蓄積量、換言すれば、当該硬貨収容筒22の半回収状態を検出する。また、硬貨収容筒22の下部に設けられた硬貨検出センサ71は、当該硬貨収容筒22が空になった状態(正確には、下部の硬貨検出センサ71により硬貨Cが検出されなくなる所定枚数以下になった状態)を検出する。
【0031】
本実施の形態では、10円硬貨、50円硬貨及び500円硬貨が蓄積される3つの硬貨収容筒22には、その上部及び下部の2箇所に硬貨検出センサ71が設けられるとともに、100円硬貨が蓄積される硬貨収容筒22には、その上部、下部及びそれらの中間部の3箇所に硬貨検出センサ71が設けられる。即ち、10円硬貨、50円硬貨及び500円硬貨については、満杯状態及び空状態の2つの状態が検出されるとともに、100円硬貨については、満杯状態、空状態及び半回収状態の3つの状態が検出される。100円硬貨の半回収状態は、例えばワンマンバスの運行終了後に、最終的に硬貨収容筒22内に残しておく量の硬貨Cが蓄積された状態をいう。
【0032】
そして、制御基板24は、硬貨検出センサ71が設けられた一方面を各硬貨収容筒22側に向けるとともに、各硬貨検出センサ71を各硬貨収容筒22のセンサ挿入孔33に一括して装着した状態に配置される。この状態において、各ボルト挿通孔24aにボルト72を外方から挿入して硬貨収容筒22の雌ねじ部34に締め付けることにより、制御基板24は各硬貨収容筒22に固定されている。このように、制御基板24は、各硬貨収容筒22に対応する部位においてそれぞれ固定されている。換言すれば、各硬貨収容筒22は、制御基板24により相互に連結されている。なお、本実施の形態において、硬貨収容筒22の片側(図7における左側)の雌ねじ部34は使用されない。
【0033】
<払出検出センサ>
図7に示すように、制御基板24の硬貨検出センサ71が設けられた一方面と反対側の他方面における下部には、4つの払出検出センサ73が各硬貨収容筒22に対応するように設けられている。本実施の形態において、払出検出センサ73としては、フォトインタラプタが使用されている。このフォトインタラプタは、発光素子と受光素子とが単一のケースに組み込まれるとともに、対向して配置された両素子間を検出体が通過して光を遮ることにより物体の検出を行う。各払出検出センサ73の検出信号は制御基板24へ送られる。
【0034】
また、制御基板24の前記他方面における各払出検出センサ73の近傍には、4つの支持部材74が設けられている。図8に併せて示すように、各支持部材74には、くの字状のレバー75がその中央付近に設けられた軸76を中心として回動可能に支持されている。レバー75は、図8に実線で示す通常位置と、同じく二点鎖線で示す払出位置との間を移動する。レバー75は軸76に装着された図示しない捻りコイルばねの弾性力により通常位置を保つように常時付勢されている。
【0035】
通常位置は、レバー75の下端が硬貨Cの払い出し経路上に位置して硬貨押出部材61により押し出される硬貨Cが係合可能となるとともに、レバー75の上端が払出検出センサ73の発光素子と受光素子との間に介在しない位置である。そして、レバー75が通常位置に保持された状態で、硬貨収容筒22から硬貨Cが払い出されたとき、レバー75は硬貨Cにより押圧されるとともに、前記捻りコイルばねの弾性力に抗して右回動して前記払出位置に至る。この払出位置は、レバー75の上部が払出検出センサの発光素子と受光素子との間に介在する位置である。硬貨収容筒22の最下部の硬貨Cが払い出されると、レバー75は前記捻りコイルばねの弾性力により通常位置へ復帰する。即ち、レバー75は、硬貨Cが払い出される度に通常位置と払出位置との間を移動する。従って、制御基板24は、各払出検出センサ73により検出されたレバー75の動作回数に基づいて、各硬貨収容筒22からの硬貨Cの払い出し枚数を求めることが可能となる。
【0036】
<硬貨払出装置の動作>
次に、前述のように構成した硬貨払出装置の動作を説明する。運賃箱11の投入口13に運賃として投入された券類T及び硬貨Cは、券銭分離装置14により券類Tと硬貨Cとに分離される。この分離された券類Tは図示しない通路を通って図示しない金庫の券類収容室に収容されるとともに、同じく分離された硬貨Cは硬貨識別装置15に送られる。この硬貨識別装置15に送られてきた硬貨Cは金種別に選別されるとともに、硬貨払出装置16の4つの硬貨収容筒22に金種別に収容される。
【0037】
硬貨収容筒22の上部に設けられた硬貨検出センサ71により当該硬貨収容筒22が満杯になったことが検出されると、制御基板24により硬貨Cの図示しない通路が硬貨払出装置16から前記金庫へ切り替えられて、当該金庫の硬貨収容室に収容される。釣り銭が必要とされる場合には、各硬貨収容筒22から釣り銭の金額に応じて硬貨Cが払い出されるように、制御基板24は硬貨払出機構23を駆動制御する。その払い出された硬貨Cは搬送装置17により硬貨排出口18へ搬送される。
【0038】
<実施の形態の効果>
従って、本実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)硬貨払出機構23を駆動制御する制御基板の一方面には、硬貨収容筒22内の硬貨Cの有無を検出する複数個の硬貨検出センサ71を、各硬貨収容筒22に設けられたセンサ装着部位であるセンサ挿入孔33に対応するように設けるようにした。そして、制御基板24は、硬貨検出センサ71が設けられた一方面を各硬貨収容筒22側に向けるとともに、各硬貨検出センサ71を各センサ挿入孔33に一括して挿入した状態で各硬貨収容筒22に固定するようにした。
【0039】
このため、各硬貨検出センサ71からそれぞれ配線を引き出す必要がないので、それらの配線スペースを確保する必要がない。また、それら配線を、手作業による半田付け等によって硬貨検出センサ及び制御基板にそれぞれ接続する必要もない。このため、硬貨払出装置16の組立作業効率を向上させることができる。
【0040】
(2)制御基板24は、各硬貨収容筒22に対応する部位においてそれぞれ固定するようにした。即ち、各硬貨収容筒22は制御基板24により相互に連結される。このため、各硬貨収容筒22間を連結するための手段を別途設けるようにした場合と異なり、硬貨払出装置16の部品点数が抑制されるとともに、当該硬貨払出装置16の組立作業効率を向上させることができる。
【0041】
(3)各硬貨収容筒22の基部にはフランジ32を設けるとともに、各硬貨収容筒22は硬貨払出機構23の上壁21aに設けられた挿通孔41に位置決め状態で配置するようにした。そして、当該位置決め状態の各硬貨収容筒22のフランジ32をブラケット42により上壁21aの外面に押さえ付けることにより、各硬貨収容筒22を当該上壁21aに一括して固定するようにした。
【0042】
このため、各硬貨収容筒22を個別に固定するようにした場合と異なり、硬貨払出装置16の組立作業効率を向上させることができる。
(4)制御基板24の硬貨検出センサ71が設けられた一方面と反対側の他方面には、硬貨収容筒22から硬貨Cが払い出される度に当該硬貨Cにより押圧されて動作するレバー75を各硬貨収容筒22に対応して設けるようにした。また、制御基板24の前記他方面には、各レバー75の動作を検出する払出検出センサ73を各レバー75に対応して設けるようにした。
【0043】
このため、制御基板24は、レバー75の動作を検出することにより、硬貨Cの払い出し枚数を求めることが可能となる。また、払出検出センサ73を例えば硬貨収容筒22等に設けるようにした場合と異なり、当該払出検出センサ73から制御基板24への配線が不要となる。このため、払出検出センサ73からの配線スペースを確保する必要がない。また、当該配線を、手作業による半田付け等によって払出検出センサ73及び制御基板24にそれぞれ接続する必要もない。従って、硬貨払出装置16の組立作業効率を向上させることができる。
【0044】
(5)制御基板24を硬貨払出装置16に組み込むようにしたことにより、当該硬貨払出装置16単体で検査等を行うことができる。硬貨払出装置16を含め運賃箱11の各装置を単一の制御手段により集中的に制御するようにした場合には、硬貨払出装置16を前記集中制御する制御手段に接続して検査等を行う必要がある。
【0045】
(6)各硬貨収容筒22には、それらの側方に配置される硬貨識別装置15により硬貨Cが金種毎に分離されて供給されるとともに、制御基板24は、各硬貨収容筒22の硬貨識別装置15と反対側の側部に固定するようにした。このため、制御基板24が硬貨識別装置15に干渉するおそれはない。
【0046】
(7)硬貨検出センサ71として、反射式のフォトセンサを採用した。硬貨検出センサ71を制御基板24の一方面に設けて当該制御基板24ごと、硬貨収容筒22に固定する構成を採用する上で好適なセンサである。これは、反射型のフォトセンサであれば、検出体に対して一方向から対面状態に配置すればよいからである。
【0047】
(8)硬貨収容筒22を遮光体により形成するようにした。このため、硬貨検出センサ71による硬貨Cの検出が正確に行われる。反射型のフォトセンサは、外乱光の影響を受けやすい特性を有するので、外部からの光は極力遮断することが好ましい。
【0048】
(9)4つの硬貨収容筒22は全て同一の形状とした。このため、硬貨収容筒22を例えば合成樹脂材料の射出成型等により製造する際には、単一種類の射出成型を用意すればよい。このため、硬貨収容筒22、ひいては硬貨払出装置16の製造コストを低減させることができる。
【0049】
<他の実施形態>
尚、前記実施の形態は、次のように変更して実施してもよい。
・運賃箱以外にも、券売機、自動販売機等に搭載するようにしてもよい。
【0050】
・本実施の形態では、釣り銭が必要とされる場合に、各硬貨収容筒22から釣り銭の金額に応じた硬貨Cが硬貨排出口18に供給されるようにしたが、運賃箱11に両替機能を持たせて硬貨排出口18には、釣り銭ではなく両替後の硬貨Cを排出するようにしてもよい。この場合、投入口13とは別に、両替用硬貨投入口を設ける。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本実施の形態における運賃箱の概略構成図。
【図2】同じく硬貨払出装置の概略斜視図。
【図3】同じく硬貨収容筒の斜視図。
【図4】同じく硬貨払出装置の要部正面図。
【図5】同じく硬貨払出装置の要部正断面図。
【図6】同じく図5における1−1線断面図。
【図7】同じく硬貨払出装置に固定された制御基板の正面図。
【図8】同じく硬貨払出装置の要部側面図。
【符号の説明】
【0052】
11…運賃箱、15…硬貨識別装置、16…硬貨払出装置、21…枠体、
21a…上壁(枠体壁)、22…硬貨収容筒、23…硬貨払出機構、24…制御基板、
32…フランジ、33…センサ挿入孔(センサ装着部位)、
41…挿通孔(筒装着部位)、42…ブラケット、71…硬貨検出センサ、
73…払出検出センサ、75…レバー、C…硬貨。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬貨を金種別に積み重ねた状態で収容する複数個の硬貨収容筒が一列に並べられた状態で設けられるとともに、各硬貨収容筒の下方に配置された硬貨払出機構の作動により各硬貨収容筒の最下部の硬貨を一枚ずつ払い出すようにした硬貨払出装置において、
前記硬貨払出機構を駆動制御する制御基板を備えるとともに、当該制御基板の一方面には硬貨収容筒内の硬貨の有無を検出する複数個の硬貨検出センサを各硬貨収容筒に設けられたセンサ装着部位に対応するように設け、
前記制御基板は、硬貨検出センサが設けられた一方面を各硬貨収容筒側に向けるとともに、各硬貨検出センサを各硬貨収容筒のセンサ装着部位に一括して装着した状態で各硬貨収容筒に固定するようにした硬貨払出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の硬貨払出装置において、
前記制御基板は、各硬貨収容筒に対応する部位においてそれぞれ固定するようにした硬貨払出装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の硬貨払出装置において、
各硬貨収容筒の基部にはフランジを設けるとともに、各硬貨収容筒は前記硬貨払出機構の枠体壁に設けられた筒装着部位に位置決め状態で配置するようにし、当該位置決め状態の各硬貨収容筒のフランジをブラケットにより前記枠体壁の外面に押さえ付けることにより各硬貨収容筒を当該枠体壁に一括して固定するようにした硬貨払出装置。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のうちいずれか一項に記載の硬貨払出装置において、
前記制御基板の硬貨検出センサが設けられた一方面と反対側の他方面には、硬貨収容筒から硬貨が払い出される度に当該硬貨により押圧されて動作するレバーを各硬貨収容筒に対応して設けるとともに、各レバーの動作を検出する払出検出センサを各レバーに対応して設けるようにした硬貨払出装置。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のうちいずれか一項に記載の硬貨払出装置において、
各硬貨収容筒には、それらの側方に配置される硬貨識別装置により硬貨が金種毎に分離されて供給されるとともに、前記制御基板は、各硬貨収容筒の前記硬貨識別装置と反対側の側部に固定するようにした硬貨払出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−183760(P2007−183760A)
【公開日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−896(P2006−896)
【出願日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【出願人】(000144544)レシップ株式会社 (179)
【Fターム(参考)】