説明

硬貨搬送装置及び金銭取扱装置

【課題】複数の硬貨を収容したコインホッパから搬送手段によって取り出した硬貨を横方向へ搬送する過程で磁気センサによって硬貨を識別する硬貨搬送装置において、磁気センサと金属製チェーンとの干渉を避けつつ非穴あき硬貨は勿論、穴あき硬貨の中心部の穴をも確実に磁気センサによって検知する。
【解決手段】硬貨を起立させた状態で横方向へ搬送する横搬送経路17cは、横搬送経路低所30と、横搬送経路低所の下流側と登り傾斜路を経由して連設された横搬送経路高所34とを備え、横搬送経路低所と横搬送経路高所上におけるチェーン15の移動経路には高低差がない一方で、横搬送経路低所上におけるチェーンの高さ位置は起立状態で搬送される硬貨の略中心高さに相当し、横搬送経路高所上におけるチェーンの高さ位置は硬貨の中心高さ位置を回避した下方に相当するように構成し、磁気センサ3は横方向搬送経路高所を通過するチェーンの上方に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異なった金種の硬貨を自動的に選別して仕分ける装置等に用いられる硬貨搬送装置の改良に関し、詳細には自動販売機、両替機、金銭払出し装置等々の金銭取扱装置において、装置内に投入、回収された各種硬貨を金種別に選別した上で仕分け収納する作業を自動的に行う選別装置に用いる硬貨搬送装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
金銭取扱装置においては、装置内に投入された硬貨、或は釣り銭用や払出し用に新たに補給された硬貨を、金種別に選別してから仕分けて夫々の収納場所に収納する為の行程が必要とされる。このような選別、仕分け行程を実施するための選別装置としては、従来から種々提案されている。
例えば、本出願人の提案に関わる特開2002−319056公報(特許文献1)に開示された選別装置は、径の異なる異金種の多数の硬貨を混在した状態で収容するコインホッパと、コインホッパから一枚ずつ硬貨を取り出して保持しつつ所定の搬送経路に沿って搬送する硬貨搬送手段と、コインホッパの下流側に位置し搬送されてくる硬貨を一枚ずつ通過させてその金種、真贋等を判別する硬貨識別用センサと、硬貨ガイド経路上を起立した状態で移動する硬貨を金種別に受け取る為に硬貨ガイド経路の前方に対向配置された金種別の硬貨シュータと、硬貨ガイド経路の後壁に沿って所定の配置で設けられ硬貨ガイド経路を通過する硬貨を押圧して該硬貨を対応する金種の硬貨シュータに落下させるための押出手段と、を備える。
硬貨の搬送経路は、コインホッパから上向きに硬貨を搬送する上向き搬送経路と、上向き搬送経路の終端部から横方向へ延びる横搬送経路と、を備え、横搬送経路の終端部からはコインホッパに戻る戻り経路が形成されている。
【0003】
図4はこの選別装置における硬貨搬送手段と横搬送経路と硬貨識別用センサとの位置関係を示す図である。
硬貨搬送手段2は、エンドレスのチェーン15から成り、チェーンの側面には硬貨Cが一枚入る間隔でチェーンピン22が突設されている。チェーンピン22間に硬貨を収容した状態でチェーン15を移動させることによって硬貨は上向き搬送経路Tから横搬送経路Yへ移動し、硬貨識別用センサ3へ向けて横方向へ搬送される。
横搬送経路Y上におけるチェーン15の配設位置は、チェーンピン間に保持した硬貨Cを安定して搬送するために硬貨の中心付近となるように設定されている。径が異なる異金種の硬貨を取り扱う選別装置にあっては、全ての種類の硬貨を共通して安定搬送できる高さ位置にチェーンは配設される。
【0004】
ところで、硬貨識別用センサ3として硬貨の材質の違いによる磁界の変化を検知する磁気センサが広く用いられているが、金属製のチェーンは磁界に影響を与えるため、チェーンが通過する高さ位置には磁気センサを配置できない。このため、図示するようにチェーン15よりも下方に磁気センサ3aを配置している。ここで、例えば非穴あき硬貨は、その中心部を磁気センサが通過することにより、検知時間、検知距離を増大させることができ、検知精度を高めることが可能となるが、このように硬貨の中心部を回避した位置を通過する方式では検知精度に対する信頼性が低くなる。
一方、5円、50円硬貨のように中心部に穴が空いている穴あき硬貨を磁気センサ3aにより検知する場合に、硬貨の特徴量を捕らえるのに最も適したセンサ設置位置は硬貨の中心付近に相当する高さとなる。しかし、チェーンとの干渉を避ける必要から、磁気センサ3aを穴あき硬貨の中心付近に相当する高さ位置に設置できないことが多い。このような場合には、図示したようにチェーン直下に穴の有無を検知するための手段として光センサ3bを用いざるを得ず、これがコストアップをもたらす原因となっている。
上記の他にも同様の構成を備えた硬貨処理装置として、特許文献2(特開2001−6020公報)が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−319056公報
【特許文献2】特開2001−6020公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記に鑑みてなされたものであり、複数の硬貨を収容したコインホッパからチェーンを用いた搬送手段によって一個ずつ取り出した硬貨を横方向へ搬送する過程で磁気センサによって硬貨の金種、真贋を識別する硬貨搬送装置において、磁気センサと金属製チェーンとの干渉を避けつつ非穴あき硬貨は勿論、穴あき硬貨の中心部の穴をも確実に磁気センサによって検知することができるようにした硬貨搬送装置、及び金銭取扱装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1の発明に係る硬貨搬送装置は、複数の硬貨を収容するコインホッパと、該コインホッパから一枚ずつ硬貨を取り出して保持しつつ所定の搬送経路に沿って搬送する硬貨搬送手段と、前記硬貨搬送手段によって搬送される前記硬貨を識別する磁気センサと、を備え、前記搬送経路は、前記コインホッパから上向きに延びる上向き搬送経路と、該上向き搬送経路から横方向へ延びて硬貨を起立させた状態で横方向へ搬送する横搬送経路と、を備え、前記横搬送経路は、横搬送経路低所と、該横搬送経路低所の下流側と登り傾斜路を経由して連設された横搬送経路高所と、を備え、前記硬貨搬送手段は、前記搬送経路に沿って移動すると共に所定のピッチで突設されたチェーンピン間に硬貨を保持する構成を備えたチェーンを備え、前記横搬送経路低所と前記横搬送経路高所上における前記チェーンの移動経路には高低差がない一方で、前記横搬送経路低所上における該チェーンの高さ位置は起立状態で搬送される硬貨の略中心高さに相当し、前記横搬送経路高所上における該チェーンの高さ位置は前記硬貨の中心高さ位置を回避した下方に相当するように構成し、前記磁気センサは、前記横方向搬送経路高所を通過する前記チェーンの上方に配置されていることを特徴とする。
請求項2の発明に係る金銭取扱装置は、請求項1に記載の硬貨搬送装置を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の硬貨搬送装置によれば、複数の硬貨を収容したコインホッパからチェーンから成る搬送手段によって一個ずつ取り出した硬貨を横方向へ搬送する過程で磁気センサによって硬貨の金種、真贋を識別する構成において、磁気センサと金属製チェーンとの干渉を避けつつ非穴あき硬貨の中心部は勿論、穴あき硬貨の中心部の穴をも確実に磁気センサによって検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の硬貨搬送装置の構成説明図である。
【図2】(a)及び(b)は搬送手段としてのチェーンの構成を示す正面図、及び平面図である。
【図3】図1の要部拡大図であり、横方向搬送経路の構成説明図である。
【図4】従来の横方向搬送経路の構成説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を図面に示した形態例により詳細に説明する。
図1は本発明の硬貨搬送装置の構成説明図であり、図2(a)及び(b)は搬送手段としてのチェーンの構成を示す正面図、及び平面図である。
この硬貨搬送装置は、異なる金種の多数の硬貨Cを混在した状態で収容するコインホッパ1と、コインホッパ1から一枚ずつ硬貨Cを取り出して所定の搬送経路17a、17b、17c、17d、17eに沿って搬送する硬貨搬送手段2と、コインホッパ1の下流側(図面では上側)に位置し搬送されてくる硬貨を一枚ずつ通過させてその金種、真贋等を判別する硬貨識別用センサ(磁気センサ)3と、硬貨識別用センサ3の下流側に略水平に配置されて搬送される硬貨を案内する硬貨ガイド経路4と、硬貨ガイド経路4に沿って移動する硬貨Cを金種別に受け取る為に該ガイド経路4の前方に対向配置された金種別の硬貨シュータ5と、硬貨ガイド経路4の後壁に沿って所定の配置で設けられ硬貨ガイド経路4を通過する硬貨を押圧して該硬貨を対応する金種の硬貨シュータ5に落下させるための押出手段6と、を備える。
搬送経路は、コインホッパ1から上向きに延びる上向き搬送経路17a、上向き搬送経路17aの上部に設けた方向変換経路17b、及び方向変換経路17bから横方向へ延びた横搬送経路17c等を備えている。
【0011】
硬貨搬送手段2は、例えばエンドレスのチェーン15をスプロケット(プーリ)16a〜16dによって所定の経路で配回したものであり、いずれか一つのスプロケットを駆動スプロケットとして図示しないモータにより駆動する。モータは図示しない制御部による制御を受けて駆動する。この例では、チェーン15は、コインホッパ1の内底部(スプロケット16a)を通過する経路を経て、上向き搬送経路17aを一旦上向きに移動してスプロケット16bの外周(方向変換経路17b)にて横方向へ方向転換し、ほぼ水平の横搬送経路17cを経てスプロケット16cにて反転し、反転後にほぼ水平の戻り経路17dを経てスプロケット16dの位置にて下方へ向かう下降経路17eに達してホッパ1内に至る。
また、横搬送経路は、おおむね水平であればよく、多少の傾斜、多少の起伏を有した経路は本発明の横搬送経路の概念に含まれるものである。
【0012】
次に、チェーン15は図2(a)(b)において図示したように複数の小判形のブロック20を、略8字型の薄板から成る連結板21(両端部に枢支軸がある)にて回動自在に連結したものであり、連結板21には所定のピッチで傘型のチェーンピン22が前方へ向けて突設されている。この例では、連結板21を2個隔てた間隔で連結板21の右側端部の枢支軸と同軸状にチェーンピン22が固定されている。隣接し合うチェーンピン22間の間隔は、最大径の硬貨(例えば、邦貨の500円硬貨)の径よりも少しく大きくなるように設定されている。
コインホッパ1の内部では、径の異なる異金種が混在した状態で複数の硬貨が不規則的な姿勢で収容されているが、ホッパ内底部をチェーン15が通過して上向き搬送経路17aを上昇する過程で、チェーンピン22間のチェーン上に一枚ずつ硬貨Cが入り込み、チェーン15が上向き搬送経路17aを移動する際には、各ピン間のスペース内に一個ずつの硬貨が保持された状態となっている。
【0013】
本発明の特徴的な構成は、図3の要部拡大図に示したように横搬送経路の構成と磁気センサの配置にある。
まず、横搬送経路17cは、上流側の横搬送経路低所30と、横搬送経路低所と登り傾斜路32を経由して連設された横搬送経路高所34と、下り傾斜路36と、下流側の横搬送経路低所38と、を備えている。横搬送経路高所34は、横搬送経路低所30、38よりも高い位置にあり、下り傾斜路36を介して下流側の横搬送経路低所38と連続している。
本例では、横搬送経路低所30、38の搬送面に対する登り傾斜路32と下り傾斜路36の傾斜角度θは、25°±5°とし、登り傾斜路32と下り傾斜路36の長さを可能な限り短くした。
横搬送経路低所30、38と横搬送経路高所34上におけるチェーン15の移動経路には高低差がない一方で、横搬送経路低所30上におけるチェーンの高さ位置は起立状態で搬送される硬貨Cの略中心高さに相当し、横搬送経路高所34上におけるチェーンの高さ位置は硬貨の中心高さ位置を回避した下方に相当するように設定されている。
更に、磁気センサ3は、横搬送経路高所34を通過する硬貨Cの中心高さ位置に相当する位置、即ち、横方向搬送経路高所を通過するチェーン15の上方に配置されている。
【0014】
上流側の横搬送経路低所30上をチェーン15によって搬送されてきた硬貨Cは、チェーンピン22によって押されて登り傾斜路32を登り、横搬送経路高所34上に移動する。図4で示した従来構造では、磁気センサはチェーンの下方に位置しているため、穴あき硬貨の中心付近を検知することができなかった。これに対して、本発明ではチェーン15の横方向移動経路が一定高さを維持している一方で、硬貨だけが登り傾斜路32を経由して横搬送経路高所34に持ち上げられるため、横搬送経路高所34上においては硬貨の中心位置がチェーン15(チェーンピン22)を上側に越えた状態となる。このため、横搬送経路高所上を通過するチェーンの上方に磁気センサ3を配置したとしても磁気センサは硬貨の中心部を検知することが可能となる。従って、穴あき硬貨のほぼ中心部を磁気センサによって検知することが可能となり、硬貨の材質だけでなく穴の有無も磁気センサによって検知できるため、光センサを格別に設置する必要がなくなる。また、横搬送経路高所上34を搬送される非穴あき硬貨についてもそのほぼ中心部を検知することができるため、検知距離、検知時間が長くなり、識別精度を高めることが可能となる。
なお、硬貨を搬送する際の安定性が最も懸念される上向き搬送経路17aと方向変換経路17bでは、チェーンピン22が硬貨のほぼ中心部を支持することが必要である。これに対して、硬貨をほぼ水平に搬送する横搬送経路17c上にあっては、チェーンピン22を硬貨の中心部付近に配置しなくても安定して搬送することができるため、チェーンピン22が硬貨の中心部よりも下側の部位と接してこの部位を押圧搬送しても問題がない。
なお、本発明において硬貨とは、コイン、メダル等の薄肉円板体を含む概念であり、本発明装置は硬貨以外の薄肉円板体の選別に適用することができる。
本発明の硬貨搬送装置は、自動販売機、両替機、金銭払出し装置等々の金銭取扱装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0015】
1…コインホッパ、2…硬貨搬送手段、3…硬貨識別用センサ(磁気センサ)、15…チェーン、17a…上向き搬送経路、17c…横搬送経路、22…チェーンピン、30、38…横搬送経路低所、32…登り傾斜路、34…横搬送経路高所、36…下り傾斜路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の硬貨を収容するコインホッパと、該コインホッパから一枚ずつ硬貨を取り出して保持しつつ所定の搬送経路に沿って搬送する硬貨搬送手段と、前記硬貨搬送手段によって搬送される前記硬貨を識別する磁気センサと、を備え、
前記搬送経路は、前記コインホッパから上向きに延びる上向き搬送経路と、該上向き搬送経路から横方向へ延びて硬貨を起立させた状態で横方向へ搬送する横搬送経路と、を備え、
前記横搬送経路は、横搬送経路低所と、該横搬送経路低所の下流側と登り傾斜路を経由して連設された横搬送経路高所と、を備え、
前記硬貨搬送手段は、前記搬送経路に沿って移動すると共に所定のピッチで突設されたチェーンピン間に硬貨を保持する構成を備えたチェーンを備え、
前記横搬送経路低所と前記横搬送経路高所上における前記チェーンの移動経路には高低差がない一方で、前記横搬送経路低所上における該チェーンの高さ位置は起立状態で搬送される硬貨の略中心高さに相当し、前記横搬送経路高所上における該チェーンの高さ位置は前記硬貨の中心高さ位置を回避した下方に相当するように構成し、
前記磁気センサは、前記横方向搬送経路高所を通過する前記チェーンの上方に配置されていることを特徴とする硬貨搬送装置。
【請求項2】
請求項1に記載の硬貨搬送装置を備えたことを特徴とする金銭取扱装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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