説明

硬貨残留検知装置

【課題】自動機から出金される硬貨が通過する硬貨通路に硬貨及び硬貨以外の部材の存在を検知可能な検知センサを配設することによって、前記硬貨通路内に残留する硬貨の存在を検知することができるとともに、前記硬貨通路に挿入された指、棒、粘着部材等を検知することができ、異常状態を識別することができ、自動機から出金される硬貨についての不正行為を防止することができるようにする。
【解決手段】自動機の硬貨出金口11に接続された硬貨通路12に配設された検知センサ14と、該検知センサ14の動作を制御するとともに、前記検知センサ14の出力信号に応じた検知信号を出力するセンサ制御部15と、前記検知信号に基づいて前記硬貨通路12内に残留する硬貨の存在、及び、前記硬貨通路12内の異物の存在を判定するセンサ出力判定部16とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬貨残留検知装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、両替機、遊技用メダル販売機のような自動機は、不正検出装置を有し、硬貨入金口に配設されたセンサと、硬貨入金口に接続された硬貨通路に配設されたセンサとによって入金された硬貨の種類及び個数を検知することにより、自動機の利用者が入金した金額と自動機が受領した金額との相違を識別する(例えば、特許文献1及び2参照。)。
【0003】
前記不正検出装置を有することによって、硬貨の入金を検知させた後に入金した硬貨を糸等で引き抜いて、両替された硬貨や遊技用メダルを不正に出金させるという、不正行為を防止することができる。
【特許文献1】特開平05−166028号公報
【特許文献2】特開2007−094957号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来の不正検出装置では、自動機から出金される釣銭等の硬貨を抜き取る不正行為を防止することができなかった。近年、自動機の硬貨出金口に接続された硬貨通路の内壁に粘着テープ等の粘着部材を付着して、出金された硬貨を硬貨出金口に到達される前に硬貨通路内で捕捉(そく)させ、自動機の正規の利用者が立ち去った後に、粘着部材によって硬貨通路内で捕捉された硬貨を回収する、という不正行為が頻発している。前記従来の不正検出装置は、入金された硬貨を検知するものであっても、出金される硬貨を検知するものではないので、釣銭等の出金される硬貨についての不正行為を防止することはできない。
【0005】
本発明は、前記従来の問題点を解決して、自動機から出金される硬貨が通過する硬貨通路に硬貨及び硬貨以外の部材の存在を検知可能な検知センサを配設することによって、前記硬貨通路内に残留する硬貨の存在を検知することができるとともに、前記硬貨通路に挿入された指、棒、粘着部材等を検知することができ、異常状態を識別することができ、自動機から出金される硬貨についての不正行為を防止することができる硬貨残留検知装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そのために、本発明の硬貨残留検知装置においては、自動機の硬貨出金口に接続された硬貨通路に配設された検知センサと、該検知センサの動作を制御するとともに、前記検知センサの出力信号に応じた検知信号を出力するセンサ制御部と、前記検知信号に基づいて前記硬貨通路内に残留する硬貨の存在、及び、前記硬貨通路内の異物の存在を判定するセンサ出力判定部とを有する。
【0007】
本発明の他の硬貨残留検知装置においては、さらに、前記検知センサは、前記硬貨通路における硬貨出金口側端近傍に配設される。
【0008】
本発明の更に他の硬貨残留検知装置においては、さらに、前記検知センサは、静電容量式非接触センサである。
【0009】
本発明の更に他の硬貨残留検知装置においては、さらに、前記センサ出力判定部は、前記検知信号が、前記硬貨通路を正常に通過する硬貨を検知したときの検知信号と同じ大きさで、かつ、該検知信号より長い時間継続したときに、前記硬貨通路内に残留する硬貨の存在、及び、前記硬貨通路内の異物の存在を判定する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、自動機から出金される硬貨が通過する硬貨通路に硬貨及び硬貨以外の部材の存在を検知可能な検知センサを配設するようになっている。これにより、硬貨通路内に残留する硬貨の存在を検知することができるとともに、前記硬貨通路に挿入された指、棒、粘着部材等を検知することができ、異常状態を識別することができる。したがって、自動機から出金される硬貨についての不正行為を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0012】
図2は本発明の実施の形態における自動機を示す図である。
【0013】
図において、10は本実施の形態における自動機であり、例えば、コンビニエンスストア、スーパーマーケット等の商店の店舗や屋外に配設されている飲料、タバコ、食品等を販売する自動販売機、鉄道の駅、博物館、テーマパーク等に配設されている切符、入場券、回数券等を販売する券売機、ゲームセンタ等に配設されている遊技用メダル販売機、紙幣を硬貨に両替する両替機等であるが、釣銭等として硬貨を出金する装置であれば、いかなる装置であってもよい。ここでは、前記自動機10が飲料、タバコ、食品等の各種商品を販売する自動販売機であるものとして説明する。
【0014】
前記自動機10は、本体前面に配設された操作部51、商品取出部52及び硬貨出金口11を有する。前記操作部51は、自動機10の利用者が操作して商品を選択するスイッチ等の商品選択手段、紙幣又は硬貨を入金する貨幣入金口、前記利用者に対するメッセージ、広告等を表示する表示手段、前記利用者に対する警告、音楽等を出力するスピーカ等の音声出力手段等を備える。また、前記商品取出部52は、利用者が購入した商品が排出される商品排出口、該商品排出口を覆う開閉可能な蓋(ふた)部材等を備える。
【0015】
さらに、前記硬貨出金口11は、釣銭等として前記利用者に支払うために出金される一円玉、五円玉、十円玉、百円玉、五百円玉等の各金種の硬貨が排出される排出口であって、後述される硬貨通路12の出口端に接続されている。そして、前記硬貨通路12の出口端近傍には、硬貨通路12内に残留する硬貨の存在を検知することができるとともに、前記硬貨通路12に挿入された指、棒、粘着部材等の異物の存在を検知する硬貨残留検知装置としての硬貨残留検知部が配設されている。
【0016】
次に、該硬貨残留検知部の構成について説明する。
【0017】
図1は本発明の実施の形態における硬貨残留検知部の構成を示す図、図3は本発明の実施の形態における硬貨通路の断面図である。
【0018】
図1において、13は、硬貨出金口11を覆う開閉可能な蓋部材としての出金口蓋である。また、14は、静電容量式非接触センサから成る検知センサであり、出口端が硬貨出金口11に接続された硬貨通路12の出口端近傍において、硬貨通路12の内壁の外側に配設されている。なお、硬貨通路12は、自動機10が有する図示されない出金機の出口と硬貨出金口11とを接続する通路であり、前記出金機から出金された硬貨が自重によって内部を通過する。
【0019】
そして、15は、前記検知センサ14に接続されたセンサ制御部であり、前記検知センサ14の動作を制御するとともに、前記検知センサ14の出力信号を受信する。また、16は、前記センサ制御部15に接続されたセンサ出力判定部であり、前記検知センサ14の出力信号に基づいて硬貨通路12内における出口端近傍に残留硬貨又は異物が存在するか否かを判定し、残留硬貨又は異物が存在する場合には、異常を検知したと判定する。さらに、17は、前記センサ出力判定部16に接続された異常状態通知装置であり、前記センサ出力判定部16が異常を検知したと判定すると、異常を検知した旨を前記利用者又は自動機10の周囲の人々に通知する。例えば、操作部51の表示手段に異常が発生した旨の表示を行わせたり、音声出力手段から警報音を音声出力させることによって、異常を検知した旨を前記利用者又は自動機10の周囲の人々に通知する。さらに、18は、前記センサ出力判定部16に接続された異常状態記録装置であり、前記センサ出力判定部16が異常を検知したと判定すると、異常を検知した日時等を磁気ディスク、半導体メモリ、記録用紙等の記録媒体に記録する。
【0020】
また、検知センサ14は、図3に示されるように、検知面が硬貨通路12内を向き、かつ、硬貨通路12の周囲を取り囲むように配設される。
【0021】
例えば、硬貨通路12が、図3(a)に示されるように、矩(く)形の断面形状を備えるものである場合、検知センサ14は、4枚の板状部から成り、各板状部は、その検知面が硬貨通路12内を向くようにして、硬貨通路12の4つの平板状の側壁の各々と平行になるように、その外側に配設される。これにより、Bとして示される硬貨の姿勢がどのようなものであっても、硬貨通路12内に硬貨が存在することを検知することができる。
【0022】
また、例えば、硬貨通路12が、図3(b)に示されるように、円形の断面形状を備えるものである場合、検知センサ14は、1枚の板状部から成り、その検知面が硬貨通路12内を向くようにして、硬貨通路12の湾曲した側壁と平行になるように湾曲した形状にされて、その外側に配設される。
【0023】
次に、前記検知センサ14の構成について詳細に説明する。
【0024】
図4は本発明の実施の形態における検知センサの構成図である。なお、 (a)は平面図であって図1における矢印Aで示される方向から見た図、(b)は検知センサの断面図である。
【0025】
ここでは、説明の都合上、検知センサ14が、図3(a)に示されるような矩形の断面形状を備える硬貨通路12に配設されたものであるものとして説明する。
【0026】
図4に示されるように、検知センサ14は、絶縁性材料から成る板状の基板25、並びに、該基板25の表面に付着する導電性材料から成る送信電極21及び受信電極22を有する。なお、前記検知センサ14は、基板25の表面が検知面として硬貨通路12内を向くように配設される。
【0027】
そして、前記送信電極21は、硬貨通路12内における硬貨及び異物、すなわち、被検知物に電磁波を放射するために、硬貨通路12側の面である表面に配置される。また、前記受信電極22は、送信電極21が放射し、被検知物によって反射された電磁波を受信するために、送信電極2lと同じ面に配置される。この場合、前記送信電極21及び受信電極22は、図4(a)に示されるように、各々、櫛(くし)歯状の平面形状を備え、互いの歯が噛(か)み合うように配設されている。なお、前記検知センサ14は、基板25の表面が検知面として硬貨通路12内を向くように配設される。
【0028】
また、基板25の裏面には、図4(b)に示されるように、導電性材料から成る補助電極23が付着し、更に、絶縁性材料から成る板状のスペーサ26を介して、導電性材料から成る板状のシールド電極24が積層されている。該シールド電極24は、送信電極21の裏側から放射される電磁波を遮蔽(へい)するための電極である。また、前記補助電極23は、送信電極21とシールド電極24との間に流れる電流を遮断するための電極である。そして、前記シールド電極24は、補助電極23との間にスペーサ26を挟み込んだ状態で、基板25の裏面に接着される。
【0029】
検知センサ14は、このような構造を有するので、裏面側、すなわち、シールド電極24側で被検知物を検知することなく、表面側、すなわち、検知面側のみで被検知物を検知する。これにより、Bとして示される被検知物としての硬貨の姿勢がどのようなものであっても、硬貨通路12内に硬貨が存在することを検知することができる。
【0030】
そして、同種類の電極は、導電パターン、スルーホール等によって互いに接続されている。また、各電極は、センサ制御部15に接続されており、送信電極21及び補助電極23には交流信号が印加され、受信電極22及びシールド電極24は接地される。
【0031】
なお、前記検知センサ14は、例えば、銅張り積層板(中興化成製)を用いて製造することができる。この場合、基板25は、テフロン(R)製の板部材であり、送信電極21、受信電極22及び補助電極23は、銅箔(はく)をエッチング等の方法によってパターニングすることにより作成される。なお、スペーサ26は、基板25と同様に、テフロン(R)製の板部材である。また、シールド電極24は、例えば、金属板、導電性ゴム、導電性布等から成る。なお、前記検知センサ14は、これに限らず、いかなる製造方法によって製造されたものであってもよい。
【0032】
次に、前記センサ制御部15の構成について説明する。
【0033】
図5は本発明の実施の形態におけるセンサ制御部の構成を示す回路図である。
【0034】
図に示されるように、検知センサ14に接続されたセンサ制御部15は、発振回路31、バッファ回路32、電流検知抵抗素子33、シールド線34、第一差動増幅器35、バンドパスフィルタ36、検波回路37、ローパスフィルタ38、第二差動増幅器41、アナログ/デジタル変換器42、CPU(中央演算装置)43及びデジタル/アナログ変換器44を備えている。
【0035】
そして、前記発振回路31は、検知センサ14に供給して、該検知センサ14の送信電極21から電磁波を放射させるための交流電圧を出力する。また、前記バッファ回路32は、発振回路31が出力した交流電圧を検知センサ14に供給するバッファとして機能する。さらに、前記電流検知抵抗素子33は、検知センサ14に流れる電流を電圧に変換するための抵抗素子である。なお、前記電流検知抵抗素子33は、バッファ回路32の出力端とシールド線34との間に接続される。
【0036】
また、該シールド線34は、バッファ回路32が出力する交流電圧を検知センサ14に供給する導電線である。なお、前記シールド線34は、芯(しん)線34aと、該芯線34aを被覆する被覆線34bとを備える。前記芯線34aの一端は、電流検知抵抗素子33を介してバッファ回路32の出力端に接続される。また、前記芯線34aの他端は、送信電極21に接続される。そして、前記被覆線34bの一端は、バッファ回路32の出力端に電流検知抵抗素子33を介さずに直接接続される。また、前記被覆線34bの他端は、検知センサ14の補助電極23に接続される。
【0037】
さらに、前記第一差動増幅器35は、計測用アンプであり、非反転入力端子(+)及び反転入力端子(−)が共に入力インピーダンスが高く、非反転入力端子と反転入力端子との電位差に応じた電圧を出力する。そして、前記第一差動増幅器35の非反転入力端子は、電流検知抵抗素子33の一端、すなわち、バッファ回路32側の端部に接続される。また、前記第一差動増幅器35の反転入力端子は、電流検知抵抗素子33の他端、すなわち、送信電極21側の端部に接続される。したがって、前記第一差動増幅器35は、電流検知抵抗素子33の端子間電圧に応じた値の交流電圧信号を出力する。
【0038】
そして、前記バンドパスフィルタ36は、第一差動増幅器35から入力された交流電圧信号のうち、周波数fの信号成分、すなわち、発振回路31と同じ周波数の成分のみを通過させる。前記バンドパスフィルタ36によって、第一差動増幅器35が出力する交流電圧信号からノイズ成分を取り除くことができる。
【0039】
また、前記検波回路37は、バンドパスフィルタ36から入力された交流電圧信号を直流電圧信号に変換する。本実施の形態における検波回路37は、時定数τを1/f程度に設定した全波整流回路である(fは発振回路31の出力周波数である)。
【0040】
さらに、前記ローパスフィルタ38は、検波回路37から入力された直流電圧信号から高周波成分を除去する。このように、前記ローパスフィルタ38によって、検波回路37が出力した直流電圧信号からリップル成分を取り除くことができる。
【0041】
そして、前記第二差動増幅器41は、非反転入力端子(+)と反転入力端子(−)との電位差に応じた電圧を出力する。前記第二差動増幅器41の非反転入力端子は、ローパスフィルタ38の出力端に接続される。また、前記第二差動増幅器41の反転入力端子は、デジタル/アナログ変換器44の出力端に接続される。後述するように、前記第二差動増幅器41によって、検知センサ14の送信電極21と受信電極22との間に被検知物が存在していないときの値が零となるように、検波回路37の出力信号が補正される。前記第二差動増幅器41が出力した直流電圧信号は、検知信号Sdとして外部に出力される。
【0042】
また、前記アナログ/デジタル変換器42は、第二差動増幅器41が出力した直流電圧信号、すなわち、検知信号Sdを、アナログ信号からデジタル信号に変換する。さらに、前記CPU43は、アナログ/デジタル変換器42から入力されたデジタル信号に所定のアルゴリズムによる演算処理を施すことによって補正信号Saを生成する。そして、前記CPU43は、生成した補正信号Saを、内部に保存するとともに、デジタル/アナログ変換器44に出力する。後述するように、前記補正信号Saによって、検知信号Sdが補正される。
【0043】
さらに、前記デジタル/アナログ変換器44は、CPU43の出力信号、すなわち、補正信号Saをデジタル信号からアナログ信号に変換する。
【0044】
本実施の形態における硬貨残留検知部は、以上のような構成を有することによって、硬貨通路12内に残留する硬貨、硬貨通路12に挿入された指、棒、粘着部材等の異物等の被検知物を検知することができる。
【0045】
次に、前記構成の硬貨残留検知部の動作について説明する。
【0046】
本実施の形態におけるセンサ制御部15は、特許文献2に開示されている装置と同様の回路構成を有し、硬貨通路12内に硬貨、異物等の被検知物が存在しない状態、すなわち、初期状態における電流検知抵抗素子33の端子間電圧を基準電圧とし、前記電流検知抵抗素子33の端子間電圧の基準電圧からの変化に基づいて、被検知物を検知する。
【0047】
次に、センサ制御部15で被検知物を検出する動作原理について、図5を用いて説明する。
【0048】
検知センサ14に被検知物が接近する前の状態、すなわち、初期状態において、送信電極21と受信電極22との間の静電容量Caは、送信電極21及び受信電極22の表面、すなわち、電極面上の空間によって与えられる。また、被検知物が接近していないときには、送信電極21と受信電極22との間に流れる電流は打ち消される。
【0049】
これに対して、電極面に被検知物が接近したときの送信電極21と受信電極22との間の静電容量(ここではCsとする)は、前記被検知物によって与えられる。一般に、金属の比誘電率は無限大であり、また、人体を水と考えたときの人体の一部の比誘電率は81程度である。したがって、Ca<Csであるから、電極面に硬貨、異物等の被検知物が接近すると、静電容量が増加することになる。
【0050】
そのため、電極面に被検知物が接近したときには、送信電極21と受信電極22との間に流れる電流は増加する。ここで、初期状態に送信電極21と受信電極22との間に流れる電流の電流値をI0 とし、送信電極21と受信電極22との間の静電容量が増加したことによる電流値の増加分をIS とすると、検知センサ14の電極面に被検知物が接近することによって、電流検知抵抗素子33を流れる電流がI0 からI0 +IS に増加する。このため、電流検知抵抗素子33の端子間電位差が増大し、これにより、第一差動増幅器35の出力も増大する。
【0051】
前述のように、第一差動増幅器35は、電流検知抵抗素子33の端子間電位差に応じた交流電圧信号を出力する。該交流電圧信号は、バンドパスフィルタ36でノイズ成分が除去され、検波回路37で交流電圧信号から直流電圧信号に変換され、ローパスフィルタ38でリップル成分が除去された後、第二差動増幅器41の非反転入力端子に入力される。そして、該第二差動増幅器41は、入力された直流電圧信号と補正信号Saとの差に応じた電圧を、検知信号Sdとして出力する。ここで、前記補正信号Saは、被検知物が存在しないとき、すなわち、電流検知抵抗素子33に電流I0 が流れているときの検知信号Sdが零ボルトとなるように設定されている。したがって、検知信号Sdは、被検知物に流れる電流の増加分の電流値IS に応じた値となる。
【0052】
このような動作を行うことにより、本実施形態における硬貨残留検知装置は、被検知物の存在を検知することができる。
【0053】
また、前述のように、本実施形態においては、送信電極21とシールド電極24との間に補助電極23を設けるとともに、1個のバッファ回路32から、異なる配線を介して送信電極21及び補助電極23に交流電圧を供給する。したがって、次のような理由によって、被検知物に対する検出精度を高めることができる。
【0054】
まず、補助電極23を設ける理由と、異なる配線を介して送信電極21及び補助電極23に交流電圧を供給する理由とを説明する。
【0055】
検知センサ14が被検知物の検知を行うのは、本来は表面側のみである。しかし、実際には、送信電極21から裏面側にも電磁波が放出される。したがって、検知センサ14の裏面側に他の部材が存在する場合に、当該部材と送信電極21との間に電界が形成されないようにする必要がある。これは、検知センサ14の裏面側に存在する部材と送信電極21との間に電界が形成されると、当該部材の位置変化に起因して電流検知抵抗素子33を流れる電流が変動してしまい、誤検知や検知精度悪化の原因になるからである。そのため、検知センサ14の裏面側には、接地されたシールド電極24が設けられる。
【0056】
しかしながら、該シールド電極24のみを設けた場合、すなわち、補助電極23を設けない場合には、送信電極21とシールド電極24との間に電流が流れてしまうことになる。通常、送信電極21とシールド電極24との間の静電容量は、送信電極21と被検知物との間の静電容量と比べて非常に大きくなる。したがって、送信電極21とシールド電極24との間に流れる電流も、送信電極21と被検知物との間を流れる電流と比較して、非常に大きくなる。そのため、送信電極21とシールド電極24との間に電流が流れると、送信電極21と被検知物との間の電流を精度良く検知することが非常に困難になる。これに対して、送信電極21とシールド電極24との間に補助電極23を設けるとともに、送信電極21とシールド電極24との間の電位をほぼ同電位にした場合、検知センサ14の裏面側に存在する部材の影響をなくしつつ、当該裏面側に流れる電流を非常に小さく抑えることができる。
【0057】
加えて、本実施の形態においては、異なる配線を介して送信電極21及び補助電極23に交流電圧を供給しており、バッファ回路32と送信電極21とを接続する配線に電流検知抵抗素子33が設けられている。すなわち、送信電極21はシールド線34の芯線34a及び電流検知抵抗素子33を介してバッファ回路32に接続され、補助電極23はシールド線34の被覆線34bを介してバッファ回路32に接続されている。このように、送信電極21を流れる電流と補助電極23を流れる電流とは分離されており、前記補助電極23を流れる電流が電流検知抵抗素子33を流れることはない。このため、該電流検知抵抗素子33を流れる電流を小さくすることができ、したがって、送信電極21から被検知物に流れる電流の検知精度が向上する。
【0058】
また、本実施の形態における硬貨残留検知部は、1個のバッファ回路32から異なる配線を介して送信電極21及び補助電極23に交流電圧を供給するので、前記送信電極21から被検知物に流れる電流を精度良く検知することができる。したがって、硬貨残留検知部と同じ装置に搭載された他の部品等の影響を抑制して、被検知物の検知精度を向上させることができる。
【0059】
さらに、本実施の形態における硬貨残留検知部は、被検知物が検知されていないときの検知信号値を用いて、被検知物が検出されたときの検知信号Sdを補正するので、被検知物の検知精度を向上させることができる。
【0060】
次に、硬貨通路12内に残留する硬貨、及び、硬貨通路12に挿入された指、棒、粘着部材等の異物を検知する動作について説明する。
【0061】
通常、硬貨は硬貨通路12内をある一定の時間内で通過し、この状態を正常とする。
【0062】
一方、硬貨が通過する前や後、すなわち、出金時以外では被検知物は硬貨通路12内に存在しない。そのとき、硬貨を抜き取る操作として、硬貨通路12内に指を挿入したり、棒、粘着テープ等を付着させたりすることが考えられる。そのような操作が行われると、硬貨通路12内に指、棒、粘着テープ等の異物が存在することになる。そこで、そのような操作によって硬貨通路12内に硬貨が残留したり、平常時に存在しない異物が検知されたりしたときを異常とする。
【0063】
また、硬貨が正常に硬貨通路12を通過したときでも、通過中においては、検知センサ14が硬貨を検知する。そこで、硬貨が検知センサ14の配設された部分を正常に通過する所要時間より長い時間硬貨を検知した場合には、異常と判断する。つまり、センサ出力判定部16は、センサ制御部15が出力する検知信号Sdが、硬貨通路12を正常に通過する硬貨を検知したときの検知信号Sdと同じ大きさで、かつ、該検知信号Sdより長い時間継続したときに、硬貨通路12内に残留する硬貨の存在、及び、硬貨通路12内の異物の存在を判定する。なお、通常、硬貨通路12内に、指、棒、粘着テープ等の異物が存在することはない。したがって、硬貨通路12内の検知センサ14の配設された部分に指、棒、粘着テープ等の異物があることは、硬貨抜き取りの操作によるものと考えられる。しかし、指、棒、粘着テープ等の異物を検出したときの第二差動増幅器41の出力と、硬貨を検出したときの第二差動増幅器41の出力との相違だけで、異常を検知したと判定することは困難である。
【0064】
そこで、センサ出力判定部16は、第二差動増幅器41の出力が、硬貨等の被検知物を検知したときと同等の大きさで、かつ、硬貨が検知センサ14の配設された部分を正常に通過する所要時間より長い時間継続したときには、硬貨通路12内に硬貨が残留している、又は、硬貨抜き取りの操作が行われているものとして、異常を検知したと判定する。そして、センサ出力判定部16が異常を検知したと判定すると、異常状態通知装置17は異常を検知した旨を通知し、異常状態記録装置18は、異常を検知した日時を記録する。
【0065】
このように、本実施の形態においては、硬貨通路12内に残留する硬貨の存在を検知することができるとともに、硬貨通路12内に存在するはずのない指、棒、粘着部材等の異物の存在を検知することができる。これにより、異常状態を識別することができ、出金される硬貨についての不正行為を防止することができる。
【0066】
なお、検知センサ14は、静電容量式非接触センサ以外の非接触センサ、例えば、光学式非接触センサから成るものであってもよいが、その場合硬貨の位置関係に応じて、検知漏れの可能性がある。検知センサ14として、静電容量式非接触センサを採用することによって、被検出面全体を1つのセンサにより検出することができる。
【0067】
また、本実施の形態においては、自動販売機の硬貨通路に適用した例を示したが、他の自動機、例えば、現金自動預払機(ATM:Automatic Teller Machine)や遊技機などにも適用可能である。
【0068】
さらに、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々変形させることが可能であり、それらを本発明の範囲から排除するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の実施の形態における硬貨残留検知部の構成を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態における自動機を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態における硬貨通路の断面図である。
【図4】本発明の実施の形態における検知センサの構成図である。
【図5】本発明の実施の形態におけるセンサ制御部の構成を示す回路図である。
【符号の説明】
【0070】
10 自動機
11 硬貨出金口
12 硬貨通路
14 検知センサ
15 センサ制御部
16 センサ出力判定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)自動機の硬貨出金口に接続された硬貨通路に配設された検知センサと、
(b)該検知センサの動作を制御するとともに、前記検知センサの出力信号に応じた検知信号を出力するセンサ制御部と、
(c)前記検知信号に基づいて前記硬貨通路内に残留する硬貨の存在、及び、前記硬貨通路内の異物の存在を判定するセンサ出力判定部とを有することを特徴とする硬貨残留検知装置。
【請求項2】
前記検知センサは、前記硬貨通路における硬貨出金口側端近傍に配設される請求項1に記載の硬貨残留検知装置。
【請求項3】
前記検知センサは、静電容量式非接触センサである請求項1又は2に記載の硬貨残留検知装置。
【請求項4】
前記センサ出力判定部は、前記検知信号が、前記硬貨通路を正常に通過する硬貨を検知したときの検知信号と同じ大きさで、かつ、該検知信号より長い時間継続したときに、前記硬貨通路内に残留する硬貨の存在、及び、前記硬貨通路内の異物の存在を判定する請求項1〜3のいずれか1項に記載の硬貨残留検知装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−80618(P2009−80618A)
【公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−248948(P2007−248948)
【出願日】平成19年9月26日(2007.9.26)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【Fターム(参考)】