硬貨識別装置
【課題】
硬貨の材質や厚さを測定できる小さなコイルセンサによって、硬貨の直径を高精度に識別できる硬貨識別装置を提供する。
【解決手段】
硬貨通路の硬貨転動方向に沿って、識別対象の硬貨の直径に応じた間隔に配置された硬貨検知部2−1と硬貨検知部2−2のそれぞれが出力する電圧波形を、正規化部61で、その最大電圧値が予め定めた値となるように正規化し、正規化した2つの電圧波形の交点の電圧値を交点特定部62で特定し、特定した交点の電圧値を基準値記憶部63に記憶されている基準値と比較部64で比較することにより、硬貨の直径を識別する。
硬貨の材質や厚さを測定できる小さなコイルセンサによって、硬貨の直径を高精度に識別できる硬貨識別装置を提供する。
【解決手段】
硬貨通路の硬貨転動方向に沿って、識別対象の硬貨の直径に応じた間隔に配置された硬貨検知部2−1と硬貨検知部2−2のそれぞれが出力する電圧波形を、正規化部61で、その最大電圧値が予め定めた値となるように正規化し、正規化した2つの電圧波形の交点の電圧値を交点特定部62で特定し、特定した交点の電圧値を基準値記憶部63に記憶されている基準値と比較部64で比較することにより、硬貨の直径を識別する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬貨識別装置に関し、特に、転動する硬貨の外径を識別する硬貨識別装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な硬貨処理装置は、受け入れた硬貨を転動させて案内する通路に、硬貨の厚さや表面の凹凸を測定するコイルセンサ(以下厚さセンサと称する)、硬貨の材質を測定するコイルセンサ(以下材質センサと称する)、硬貨の直径を測定するコイルセンサ(以下外径センサと称する)の3つを配置し、其々のセンサから取得した情報に基づいて硬貨の金種や真贋を判別している。
これらの各センサは、測定する情報に対応する周波数で発振され、近傍を硬貨が通過した際に、当該硬貨の影響でインダクタンス等が変化したことが検知されるもので、配置される位置にも特徴がある。
【0003】
また、一般に、外径センサは、材質センサと厚さセンサが硬貨よりも小さなコイルであるのに比較して大きなコイルである。また、材質センサと厚さセンサが転動する硬貨の中央付近に対応する位置に配置されるのに対し、外径センサは、転動する硬貨の高さの違いを測定するものであるから、転動する硬貨の上方に対応する位置に配置される。
【0004】
このように、複数のセンサを用いることにより、多くの情報を取得して硬貨識別の識別精度を高めることが出来るが、その一方で、センサの数に応じて、それらセンサの配置スペースを確保する必要があり、その結果、硬貨識別装置が大型化し、また、大型のコイルを用いたセンサを利用する場合も、その配置スペースの関係から硬貨識別装置が大型化することとなる。
【0005】
なお、2つのセンサを用いて、硬貨の厚さや材質、直径を測定する技術も提案されている。
【0006】
これらの技術としては、例えば、環状に巻装した2つのコイルを所定間隔で対向するように配置し、これらのコイルの中空内に硬貨を相対的に移動させたときのコイルセンサの出力波形の交点ポイントの電圧値を基にして硬貨直径を測定する方法(例えば、特許文献1参照)や、硬貨径よりも小さな材質検出用センサと厚さ検出用センサの2つを配置してこれらの合成出力信号から、谷となる部分を見つけてこの谷の部分の電圧値から外径を判別する方法(例えば、特許文献2参照)がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平5−10925号公報
【特許文献2】特開昭61−262990号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載されている技術では、コイルの中空部に硬貨を通貨させる構成なので、硬貨識別装置が大型化するといた課題がある。
【0009】
また、特許文献2に記載されている技術は、硬貨径よりも小さな材質検出用センサと厚さ検出用センサの2つを用いているため、硬貨識別装置が大型化するといた課題を解決することができるものの、これらのセンサは、厚さや材質の測定に適したセンサであるため、硬貨の直径よりも硬貨の厚さや材質による出力波形の変化が大きく、硬貨の直径を識別する際の識別精度が高いものであるとは言い難いものである。
【0010】
そこで、本発明は、硬貨の材質や厚さを測定できる小さなコイルセンサによって、硬貨の直径を高精度に識別できる硬貨識別装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した目的を達成するため、請求項1の発明は、転動する硬貨を識別する硬貨識別装置において、硬貨通路の硬貨転動方向に沿って、識別対象の硬貨の直径に応じた間隔に配置された2つの硬貨検出手段と、前記硬貨検出手段が出力する2つの電圧波形のそれぞれを、該電圧波形の最大電圧値が予め定められた電圧値となるように、該電圧波形の成分のうち電圧値のみを正規化する正規化手段と、前記正規化手段により正規化された2つの電圧波形の交点を特定しその電圧値を取得する交点特定手段と、前記交点特定手段が特定した交点の電圧値を予め定めた値と比較することにより硬貨の直径を判別する直径判別手段とを具備することを特徴とする。
【0012】
また、請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記正規化手段は、前記電圧波形の最大電圧値と予め定められた電圧値の比を用いて、該電圧波形の最大電圧値が予め定められた電圧値となるように、前記電圧波形の成分のうち電圧値のみを正規化することを特徴とする。
【0013】
また、請求項3の発明は、請求項1の発明において、前記正規化手段は、前記硬貨検出手段が出力する電圧波形のうち、硬貨の縁部に応じた部分を除いた値の平均値を該電圧波形の最大電圧値とすることを特徴とする。
【0014】
また、請求項4の発明は、請求項1の発明において、前記硬貨検出手段が出力する2つの電圧波形のそれぞれを、所定の時間間隔でサンプリングしてディジタル信号化するディジタル信号化手段をさらに具備し、前記正規化手段は、前記ディジタル信号化手段でディジタル信号化された電圧波形を正規化し、前記交点特定手段は、前記正規化手段で正規化された2つの電圧波形の電圧値を、該ディジタル信号化された順に比較し、2つの電圧波形を示す電圧の上下が逆転した前後の電圧値のそれぞれを直線で補間し、該補間した2つの電圧波形の交点を特定しその電圧値を取得することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、装置の小型化を図ることができるとともに、硬貨の直径を高精度に識別することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】硬貨識別装置の機能的な構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示した硬貨識別装置1の構成例を示したブロック図である。
【図3】検知コイル21−1と検知コイル21−2の硬貨通路内における配置位置を説明するための図である。
【図4】検波回路31−1が出力する電圧の波形と検波回路31−2が出力する電圧の波形の例を示した図である。
【図5】検波回路31−1が出力する電圧の波形と検波回路31−2が出力する電圧の波形の例を示した図である。
【図6】検波回路31−1が出力する電圧の波形と検波回路31−2が出力する電圧の波形の例を示した図である。
【図7】正規化部61による正規化処理を説明するための図である。
【図8】図8は、交点特定部62による交点の特定方法を説明するための図である。
【図9】正規化部61と交点特定部62による処理結果を説明するための図である。
【図10】バイメタル硬貨と、その直径の識別について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る硬貨識別装置の一実施の形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。なお、以下に説明する硬貨には、貨幣としての硬貨以外にも、円盤状の金属であるメタル等の類似物も含むものとする。
【実施例】
【0018】
図1は、硬貨識別装置の機能的な構成を示すブロック図である。同図に示すように、硬貨識別装置1は、硬貨検知部2−1と硬貨検知部2−2、信号処理部3−1と信号処理部3−2、判定部4を有している。また、判定部4は、厚さ判定部5と、外径判定部6、材質判定部7を有し、外径判定部6は、正規化部61と、交点特定部62、基準値記憶部63、比較部64を有している。
【0019】
硬貨検知部2−1と硬貨検知部2−2は、それぞれ、識別対象となる硬貨が転動する硬貨通路内に配置され、近傍を通過する硬貨を検知する。
【0020】
信号処理部3−1と信号処理部3−2は、それぞれ、硬貨検知部2−1と硬貨検知部2−2が硬貨を検知した際に出力する信号に対する処理を行う。
【0021】
判定部4は、信号処理部3−1と信号処理部3−2で処理された信号に基づいて、硬貨検知部2−1と硬貨検知部2−2が検知した硬貨の厚さ、直径、材質を判定する。硬貨の厚さは、厚さ判定部5で判定し、硬貨の材質は、材質判定部7で判定するが、これらの判定は、いずれも、周知の技術を利用することができるため、ここでの説明は省略する。また、硬貨の直径は、外径判定部6で判定するが、その処理については後述する。
【0022】
続いて、硬貨識別装置の具体的な構成の例について説明する。図2は、図1に示した硬貨識別装置1の構成例を示したブロック図である。
【0023】
同図に示すように、硬貨識別装置1の硬貨検知部2−1は、検知コイル21−1と発振回路22−1により構成され、同様に、硬貨検知部2−2は、検知コイル21−2と発振回路22−2により構成される。検知コイル21−1と検知コイル21−2は、それぞれ、硬貨通路内に所定の間隔で配置される。なお、この間隔については、後述する。発振回路22−1は、検知コイル21−1とともに硬貨の厚さ識別に適した周波数で共振し、発振回路22−2は、検知コイル21−2とともに硬貨の材質識別に適した周波数で共振する。
【0024】
また、硬貨識別装置1の信号処理部3−1は、検波回路31−1とA/D変換部32−1により構成され、信号処理部3−2は、検波回路31−2とA/D変換部32−2により構成される。検波回路31−1は、検知コイル21−1と共振する発振回路22−1から、電圧の実効値を取得して出力し、A/D変換部32−1は、アナログ出力である検波回路31−1の出力電圧を所定の間隔でサンプリングしてディジタル信号に変換する。同様に、検波回路31−2は、検知コイル21−2と共振する発振回路22−2から、電圧の実効値を取得して出力し、A/D変換部32−2は、アナログ出力である検波回路31−2の出力電圧を所定の間隔でサンプリングしてディジタル信号に変換する。
【0025】
硬貨識別装置1の判定部4は、マイコン41により構成される。マイコン41は、マイクロコントローラとも称されるもので、コンピュータを構成するプロセッサ、メモリ、入出力回路、タイマー回路などを一つの集積回路に含めたものであり、これらをプログラムにしたがって動作させることで、図1に示した厚さ判定部5、外径判定部6、材質判定部7を実現する。
【0026】
次に、検知コイル21−1と検知コイル21−2の硬貨通路内における配置位置について説明する。図3は、検知コイル21−1と検知コイル21−2の硬貨通路内における配置位置を説明するための図である。
【0027】
検知コイル21−1と検知コイル21−2は、硬貨通路内に、硬貨の転動する進行方向に沿って配置される。硬貨の転動する進行方向は、図中に矢印Aで示す方向である。検知コイル21−1と検知コイル21−2を配置する間隔は、識別対象とする硬貨のうち、その直径が最小となる硬貨と、その直径が最大となる硬貨の両者において、検波回路31−1が出力する電圧の波形と検波回路31−2が出力する電圧の波形とが交点を有するような間隔となる。
【0028】
検波回路31−1が出力する電圧の波形と検波回路31−2が出力する電圧の波形とが交点を有するためには、検波回路31−1が出力する電圧の波形が立ち下がる時間と検波回路31−2が出力する電圧の波形が立ち上がる時間が重なる必要がある。電圧の波形が立ち上がるのは、検知コイル21−1や検知コイル21−2の近傍に硬貨が進入する際であり、電圧の波形が立ち下がるのは、検知コイル21−1や検知コイル21−2の近傍から硬貨が退出する際である。
【0029】
したがって、検知コイル21−1と検知コイル21−2を配置する間隔は、図3に符号Lで示した識別対象とする硬貨のうち、最大の直径を有する硬貨が通過する位置と、符号Sで示した識別対象とする硬貨のうち、最小の直径を有する硬貨が通過する位置とに基づいて決定され、いずれの硬貨が転動してきた場合も、検知コイル21−1の近傍から硬貨が退出する時間と、検知コイル21−2の近傍に硬貨が進入する時間との少なくとも一部が一致するような間隔となる。
【0030】
次に、検波回路31−1が出力する電圧の波形と検波回路31−2が出力する電圧の波形について説明する。図4乃至6は、検波回路31−1が出力する電圧の波形と検波回路31−2が出力する電圧の波形の例を示した図である。なお、図4乃至6の各図において、実線が検波回路31−1の出力する電圧の波形を示し、破線が検波回路31−2の出力する電圧の波形を示している。
【0031】
図4は、検知コイル21−1と検知コイル21−2が同一の形状のコイルであって共振する周波数が同じ状態とした場合に、2種類の直径の異なる硬貨から検出された電圧波形を示したもので、図4(a)に示した電圧波形は、硬貨識別装置1が識別対象とする硬貨のうち、最小の直径を有する硬貨に対応するもので、図4(b)に示した電圧波形は、硬貨識別装置1が識別対象とする硬貨のうち、最大の直径を有する硬貨に対応するものである。図4から、最小の直径を有する硬貨の電圧波形(図4(a))と比較して最大の直径を有する硬貨の電圧波形(図4(b))は、電圧波形の横幅が大きくなることがわかる。
【0032】
また、図5は、検知コイル21−1と検知コイル21−2が同一の形状のコイルであって共振する周波数が同じ状態において、2種類の材質のみが異なる硬貨から検出された電圧波形を示したものである。図5から、材質が異なることで、厚さや直径が同じ硬貨であっても、最大電圧が異なる電圧波形になることが分かる。
【0033】
図6は、検知コイル21−1と検知コイル21−2のそれぞれで、共振する周波数が異なっている場合の電圧波形の差を示したものである。図6から、共振周波数の違いから検知コイル21−1と検知コイル21−2から出力される電圧波形の最大電圧値は異なった値となることがわかる。
【0034】
このように、検波回路31−1が出力する電圧の波形と検波回路31−2が出力する電圧の波形は、硬貨の直径以外の要素にも影響を受けるため、外径判定部6では、検波回路31−1が出力する電圧の波形と検波回路31−2が出力する電圧の波形から硬貨の直径以外の要素による影響を除去し、その結果に基づいて硬貨の直径の識別を行う。
【0035】
続いて、外径判定部6の動作について説明する。外径判定部6では、検波回路31−1が出力する電圧の波形と検波回路31−2が出力する電圧の波形に対して、まず、正規化部61が、正規化処理を行い、硬貨の直径以外の要素による影響を除去する。
【0036】
図7は、正規化部61による正規化処理を説明するための図である。正規化部61は、検波回路31−1が出力する電圧の波形と検波回路31−2が出力する電圧の波形のそれぞれに対して、最大電圧値が予め定めた値となるように、電圧波形の正規化処理を行う。
【0037】
具体的には、予め定められた電圧値をαとし、硬貨から取得した電圧波形の最大電圧値がβ、各サンプリングした電圧値がYnの時、正規化した電圧値Yn‘は、
【数1】
【0038】
という式で求めることが出来る。
【0039】
例えば、予め定められた電圧値αが2Vとした場合において、図7(a)に示すような、待機時(硬貨の影響を受けていない時)の電圧がv0で、硬貨が検知された際の最大電圧値がv1の電圧波形が検波回路31−1または検波回路31−2から入力されたとすると、正規化部61は、図7(b)に示すように、最大電圧値がv2となるように電圧波形を正規化する。
【0040】
このように取得した電圧波形を正規化することで、外径や材質や厚さが異なる硬貨であっても正規化後は、最大電圧値が同じ値の電圧波形となる。また、検知コイル21−1と検知コイル21−2のそれぞれで、共振する周波数が異なっている場合であっても、最大電圧値が同じ値の電圧波形となる。これによってたとえ材質や厚さが異なる硬貨であっても外形が同じ硬貨から取得した電圧波形の正規化後の波形から後述する交点の電圧値を特定したときに、交点の電圧値はほぼ同じ電圧値となることから、高精度に直径に応じた電圧値を取得することができる。
【0041】
また、検波回路31−1や検波回路31−2が出力する電圧波形は、図4等に示したように、台形状の波形となるため、正規化部61は、台形状の上辺に相当する部分の平均値を最大電圧値として正規化処理を行うようにしてもよい。
【0042】
続いて、外径判定部6は、交点特定部62が、正規化部61で正規化処理を施した2つの電圧波形の交点を特定する。図8は、交点特定部62による交点の特定方法を説明するための図である。
【0043】
図8(a)に示した図は、正規化部61で正規化処理が施された2つの電圧波形の交点部分を拡大したものであるが、2つの電圧波形は、実際には、信号処理部3−1(A/D変換部32−1)や信号処理部3−2(A/D変換部32−2)で、サンプリングによるディジタル化が施されているため、図8(b)に示すように、検波回路31−1から出力されて正規化部61で正規化処理が施された電圧波形は、電圧P11や電圧P12の集合として表され、検波回路31−2から出力されて正規化部61で正規化処理が施された電圧波形は、電圧P21や電圧P22の集合として表されるものである。
【0044】
このため、交点特定部62は、2つの電圧波形を示す電圧の上下が逆転する電圧P11(電圧P21)と電圧P12(電圧P22)の間に交点が存在するものと特定し、電圧P11と電圧P12を補間した電圧波形、例えば、電圧P11と電圧P12が直線状に変化したものと見做した電圧波形と、電圧P21と電圧P22を補間した電圧波形の交点である電圧PIを特定する(図8(c)参照)。
【0045】
このようにして電圧PIを特定することで高精度に直径に応じた電圧値を取得することができる。
【0046】
なお、交点特定部62は、2つの電圧波形を示す電圧の上下が逆転した最初の電圧である電圧P12または電圧P13を交点と見做して、2つの電圧波形の交点を特定してもよい。この場合、上述した電圧PIを特定する手法と比較すると識別精度は劣る。
【0047】
これら、正規化部61と交点特定部62による処理の結果、例えば、図9(a)に示すように、材質が異なる硬貨から検出されたことによる異なる電圧波形であっても、図9(b)に示すように、特定した交点は、硬貨の直径に応じた値となる。なお、図9(a)に示した電圧波形は、図5(a)に示した電圧波形と図5(b)に示した電圧波形に相当するものである。
【0048】
そして、交点特定部62が硬貨の直径に応じた電圧値を取得することができるため、外径判定部6は、予め識別対象とするそれぞれの硬貨の直径に応じた電圧値を基準値記憶部63に記憶しておき、比較部64で交点特定部62が取得した電圧値と基準値記憶部63に記憶している電圧値を比較することで、硬貨通路内を転動する硬貨の直径を識別することができる。
【0049】
なお、上述のように2つの検知コイルを用いて2つの電圧波形を取得し、この波形から交点を特定する場合に、検知センサの精度のバラつきにより待機時の電圧値が異なる場合がある。このような場合には、取得した電圧波形の待機時の電圧レベルを一致させる補正をしてから正規化処理をする。
【0050】
ところで、硬貨には、バイメタルと称される種類のものが存在する。バイメタルの硬貨は、2つの金属により構成されるもので、例えば、図10(a)に示す硬貨100のように、リング部101とコア部102とで異なる金属が用いられているものである。
【0051】
このようなバイメタルの硬貨100の場合、リング部101とコア部102の金属が異なるため、リング部101とコア部102の透磁率も異なるものとなるため、検波回路31−1や検波回路31−2が出力する電圧波形は、台形状ではないものとなる。
【0052】
しかしながら、検波回路31−1や検波回路31−2が出力する電圧波形の立ち上がり部分や立下り部分、つまり、交点特定部62が特定する交点が生じる部分は、図10(b)や図10(c)に示すように、硬貨100の縁部分、つまり、リング部101に応じた電圧波形部分であり、最大電圧値は、リング部101またはコア部102のいずれか一方の材質に応じて特定することができるため、バイメタルの硬貨100に対応する電圧値を基準値として基準値記憶部63に記憶しておくことにより、前述した処理と同様の処理でバイメタルの硬貨100の直径を識別することができる。
【符号の説明】
【0053】
1 硬貨識別装置
2−1、2−2 硬貨検知部
3−1、3−2 信号処理部
4 判定部
5 厚さ判定部
6 外径判定部
7 材質判定部
21−1、21−2 検知コイル
22−1、22−2 発振回路
31−1、31−2 検波回路
32−1、32−2 A/D変換部
41 マイコン
61 正規化部
62 交点特定部
63 基準値記憶部
64 比較部
100 硬貨
101 リング部
102 コア部
A 硬貨の転動する進行方向
L 最大の直径の硬貨の通過位置
P11、P12、P21、P22 電圧
PI 交点電圧
S 最小の直径の硬貨の通過位置
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬貨識別装置に関し、特に、転動する硬貨の外径を識別する硬貨識別装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な硬貨処理装置は、受け入れた硬貨を転動させて案内する通路に、硬貨の厚さや表面の凹凸を測定するコイルセンサ(以下厚さセンサと称する)、硬貨の材質を測定するコイルセンサ(以下材質センサと称する)、硬貨の直径を測定するコイルセンサ(以下外径センサと称する)の3つを配置し、其々のセンサから取得した情報に基づいて硬貨の金種や真贋を判別している。
これらの各センサは、測定する情報に対応する周波数で発振され、近傍を硬貨が通過した際に、当該硬貨の影響でインダクタンス等が変化したことが検知されるもので、配置される位置にも特徴がある。
【0003】
また、一般に、外径センサは、材質センサと厚さセンサが硬貨よりも小さなコイルであるのに比較して大きなコイルである。また、材質センサと厚さセンサが転動する硬貨の中央付近に対応する位置に配置されるのに対し、外径センサは、転動する硬貨の高さの違いを測定するものであるから、転動する硬貨の上方に対応する位置に配置される。
【0004】
このように、複数のセンサを用いることにより、多くの情報を取得して硬貨識別の識別精度を高めることが出来るが、その一方で、センサの数に応じて、それらセンサの配置スペースを確保する必要があり、その結果、硬貨識別装置が大型化し、また、大型のコイルを用いたセンサを利用する場合も、その配置スペースの関係から硬貨識別装置が大型化することとなる。
【0005】
なお、2つのセンサを用いて、硬貨の厚さや材質、直径を測定する技術も提案されている。
【0006】
これらの技術としては、例えば、環状に巻装した2つのコイルを所定間隔で対向するように配置し、これらのコイルの中空内に硬貨を相対的に移動させたときのコイルセンサの出力波形の交点ポイントの電圧値を基にして硬貨直径を測定する方法(例えば、特許文献1参照)や、硬貨径よりも小さな材質検出用センサと厚さ検出用センサの2つを配置してこれらの合成出力信号から、谷となる部分を見つけてこの谷の部分の電圧値から外径を判別する方法(例えば、特許文献2参照)がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平5−10925号公報
【特許文献2】特開昭61−262990号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載されている技術では、コイルの中空部に硬貨を通貨させる構成なので、硬貨識別装置が大型化するといた課題がある。
【0009】
また、特許文献2に記載されている技術は、硬貨径よりも小さな材質検出用センサと厚さ検出用センサの2つを用いているため、硬貨識別装置が大型化するといた課題を解決することができるものの、これらのセンサは、厚さや材質の測定に適したセンサであるため、硬貨の直径よりも硬貨の厚さや材質による出力波形の変化が大きく、硬貨の直径を識別する際の識別精度が高いものであるとは言い難いものである。
【0010】
そこで、本発明は、硬貨の材質や厚さを測定できる小さなコイルセンサによって、硬貨の直径を高精度に識別できる硬貨識別装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した目的を達成するため、請求項1の発明は、転動する硬貨を識別する硬貨識別装置において、硬貨通路の硬貨転動方向に沿って、識別対象の硬貨の直径に応じた間隔に配置された2つの硬貨検出手段と、前記硬貨検出手段が出力する2つの電圧波形のそれぞれを、該電圧波形の最大電圧値が予め定められた電圧値となるように、該電圧波形の成分のうち電圧値のみを正規化する正規化手段と、前記正規化手段により正規化された2つの電圧波形の交点を特定しその電圧値を取得する交点特定手段と、前記交点特定手段が特定した交点の電圧値を予め定めた値と比較することにより硬貨の直径を判別する直径判別手段とを具備することを特徴とする。
【0012】
また、請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記正規化手段は、前記電圧波形の最大電圧値と予め定められた電圧値の比を用いて、該電圧波形の最大電圧値が予め定められた電圧値となるように、前記電圧波形の成分のうち電圧値のみを正規化することを特徴とする。
【0013】
また、請求項3の発明は、請求項1の発明において、前記正規化手段は、前記硬貨検出手段が出力する電圧波形のうち、硬貨の縁部に応じた部分を除いた値の平均値を該電圧波形の最大電圧値とすることを特徴とする。
【0014】
また、請求項4の発明は、請求項1の発明において、前記硬貨検出手段が出力する2つの電圧波形のそれぞれを、所定の時間間隔でサンプリングしてディジタル信号化するディジタル信号化手段をさらに具備し、前記正規化手段は、前記ディジタル信号化手段でディジタル信号化された電圧波形を正規化し、前記交点特定手段は、前記正規化手段で正規化された2つの電圧波形の電圧値を、該ディジタル信号化された順に比較し、2つの電圧波形を示す電圧の上下が逆転した前後の電圧値のそれぞれを直線で補間し、該補間した2つの電圧波形の交点を特定しその電圧値を取得することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、装置の小型化を図ることができるとともに、硬貨の直径を高精度に識別することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】硬貨識別装置の機能的な構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示した硬貨識別装置1の構成例を示したブロック図である。
【図3】検知コイル21−1と検知コイル21−2の硬貨通路内における配置位置を説明するための図である。
【図4】検波回路31−1が出力する電圧の波形と検波回路31−2が出力する電圧の波形の例を示した図である。
【図5】検波回路31−1が出力する電圧の波形と検波回路31−2が出力する電圧の波形の例を示した図である。
【図6】検波回路31−1が出力する電圧の波形と検波回路31−2が出力する電圧の波形の例を示した図である。
【図7】正規化部61による正規化処理を説明するための図である。
【図8】図8は、交点特定部62による交点の特定方法を説明するための図である。
【図9】正規化部61と交点特定部62による処理結果を説明するための図である。
【図10】バイメタル硬貨と、その直径の識別について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る硬貨識別装置の一実施の形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。なお、以下に説明する硬貨には、貨幣としての硬貨以外にも、円盤状の金属であるメタル等の類似物も含むものとする。
【実施例】
【0018】
図1は、硬貨識別装置の機能的な構成を示すブロック図である。同図に示すように、硬貨識別装置1は、硬貨検知部2−1と硬貨検知部2−2、信号処理部3−1と信号処理部3−2、判定部4を有している。また、判定部4は、厚さ判定部5と、外径判定部6、材質判定部7を有し、外径判定部6は、正規化部61と、交点特定部62、基準値記憶部63、比較部64を有している。
【0019】
硬貨検知部2−1と硬貨検知部2−2は、それぞれ、識別対象となる硬貨が転動する硬貨通路内に配置され、近傍を通過する硬貨を検知する。
【0020】
信号処理部3−1と信号処理部3−2は、それぞれ、硬貨検知部2−1と硬貨検知部2−2が硬貨を検知した際に出力する信号に対する処理を行う。
【0021】
判定部4は、信号処理部3−1と信号処理部3−2で処理された信号に基づいて、硬貨検知部2−1と硬貨検知部2−2が検知した硬貨の厚さ、直径、材質を判定する。硬貨の厚さは、厚さ判定部5で判定し、硬貨の材質は、材質判定部7で判定するが、これらの判定は、いずれも、周知の技術を利用することができるため、ここでの説明は省略する。また、硬貨の直径は、外径判定部6で判定するが、その処理については後述する。
【0022】
続いて、硬貨識別装置の具体的な構成の例について説明する。図2は、図1に示した硬貨識別装置1の構成例を示したブロック図である。
【0023】
同図に示すように、硬貨識別装置1の硬貨検知部2−1は、検知コイル21−1と発振回路22−1により構成され、同様に、硬貨検知部2−2は、検知コイル21−2と発振回路22−2により構成される。検知コイル21−1と検知コイル21−2は、それぞれ、硬貨通路内に所定の間隔で配置される。なお、この間隔については、後述する。発振回路22−1は、検知コイル21−1とともに硬貨の厚さ識別に適した周波数で共振し、発振回路22−2は、検知コイル21−2とともに硬貨の材質識別に適した周波数で共振する。
【0024】
また、硬貨識別装置1の信号処理部3−1は、検波回路31−1とA/D変換部32−1により構成され、信号処理部3−2は、検波回路31−2とA/D変換部32−2により構成される。検波回路31−1は、検知コイル21−1と共振する発振回路22−1から、電圧の実効値を取得して出力し、A/D変換部32−1は、アナログ出力である検波回路31−1の出力電圧を所定の間隔でサンプリングしてディジタル信号に変換する。同様に、検波回路31−2は、検知コイル21−2と共振する発振回路22−2から、電圧の実効値を取得して出力し、A/D変換部32−2は、アナログ出力である検波回路31−2の出力電圧を所定の間隔でサンプリングしてディジタル信号に変換する。
【0025】
硬貨識別装置1の判定部4は、マイコン41により構成される。マイコン41は、マイクロコントローラとも称されるもので、コンピュータを構成するプロセッサ、メモリ、入出力回路、タイマー回路などを一つの集積回路に含めたものであり、これらをプログラムにしたがって動作させることで、図1に示した厚さ判定部5、外径判定部6、材質判定部7を実現する。
【0026】
次に、検知コイル21−1と検知コイル21−2の硬貨通路内における配置位置について説明する。図3は、検知コイル21−1と検知コイル21−2の硬貨通路内における配置位置を説明するための図である。
【0027】
検知コイル21−1と検知コイル21−2は、硬貨通路内に、硬貨の転動する進行方向に沿って配置される。硬貨の転動する進行方向は、図中に矢印Aで示す方向である。検知コイル21−1と検知コイル21−2を配置する間隔は、識別対象とする硬貨のうち、その直径が最小となる硬貨と、その直径が最大となる硬貨の両者において、検波回路31−1が出力する電圧の波形と検波回路31−2が出力する電圧の波形とが交点を有するような間隔となる。
【0028】
検波回路31−1が出力する電圧の波形と検波回路31−2が出力する電圧の波形とが交点を有するためには、検波回路31−1が出力する電圧の波形が立ち下がる時間と検波回路31−2が出力する電圧の波形が立ち上がる時間が重なる必要がある。電圧の波形が立ち上がるのは、検知コイル21−1や検知コイル21−2の近傍に硬貨が進入する際であり、電圧の波形が立ち下がるのは、検知コイル21−1や検知コイル21−2の近傍から硬貨が退出する際である。
【0029】
したがって、検知コイル21−1と検知コイル21−2を配置する間隔は、図3に符号Lで示した識別対象とする硬貨のうち、最大の直径を有する硬貨が通過する位置と、符号Sで示した識別対象とする硬貨のうち、最小の直径を有する硬貨が通過する位置とに基づいて決定され、いずれの硬貨が転動してきた場合も、検知コイル21−1の近傍から硬貨が退出する時間と、検知コイル21−2の近傍に硬貨が進入する時間との少なくとも一部が一致するような間隔となる。
【0030】
次に、検波回路31−1が出力する電圧の波形と検波回路31−2が出力する電圧の波形について説明する。図4乃至6は、検波回路31−1が出力する電圧の波形と検波回路31−2が出力する電圧の波形の例を示した図である。なお、図4乃至6の各図において、実線が検波回路31−1の出力する電圧の波形を示し、破線が検波回路31−2の出力する電圧の波形を示している。
【0031】
図4は、検知コイル21−1と検知コイル21−2が同一の形状のコイルであって共振する周波数が同じ状態とした場合に、2種類の直径の異なる硬貨から検出された電圧波形を示したもので、図4(a)に示した電圧波形は、硬貨識別装置1が識別対象とする硬貨のうち、最小の直径を有する硬貨に対応するもので、図4(b)に示した電圧波形は、硬貨識別装置1が識別対象とする硬貨のうち、最大の直径を有する硬貨に対応するものである。図4から、最小の直径を有する硬貨の電圧波形(図4(a))と比較して最大の直径を有する硬貨の電圧波形(図4(b))は、電圧波形の横幅が大きくなることがわかる。
【0032】
また、図5は、検知コイル21−1と検知コイル21−2が同一の形状のコイルであって共振する周波数が同じ状態において、2種類の材質のみが異なる硬貨から検出された電圧波形を示したものである。図5から、材質が異なることで、厚さや直径が同じ硬貨であっても、最大電圧が異なる電圧波形になることが分かる。
【0033】
図6は、検知コイル21−1と検知コイル21−2のそれぞれで、共振する周波数が異なっている場合の電圧波形の差を示したものである。図6から、共振周波数の違いから検知コイル21−1と検知コイル21−2から出力される電圧波形の最大電圧値は異なった値となることがわかる。
【0034】
このように、検波回路31−1が出力する電圧の波形と検波回路31−2が出力する電圧の波形は、硬貨の直径以外の要素にも影響を受けるため、外径判定部6では、検波回路31−1が出力する電圧の波形と検波回路31−2が出力する電圧の波形から硬貨の直径以外の要素による影響を除去し、その結果に基づいて硬貨の直径の識別を行う。
【0035】
続いて、外径判定部6の動作について説明する。外径判定部6では、検波回路31−1が出力する電圧の波形と検波回路31−2が出力する電圧の波形に対して、まず、正規化部61が、正規化処理を行い、硬貨の直径以外の要素による影響を除去する。
【0036】
図7は、正規化部61による正規化処理を説明するための図である。正規化部61は、検波回路31−1が出力する電圧の波形と検波回路31−2が出力する電圧の波形のそれぞれに対して、最大電圧値が予め定めた値となるように、電圧波形の正規化処理を行う。
【0037】
具体的には、予め定められた電圧値をαとし、硬貨から取得した電圧波形の最大電圧値がβ、各サンプリングした電圧値がYnの時、正規化した電圧値Yn‘は、
【数1】
【0038】
という式で求めることが出来る。
【0039】
例えば、予め定められた電圧値αが2Vとした場合において、図7(a)に示すような、待機時(硬貨の影響を受けていない時)の電圧がv0で、硬貨が検知された際の最大電圧値がv1の電圧波形が検波回路31−1または検波回路31−2から入力されたとすると、正規化部61は、図7(b)に示すように、最大電圧値がv2となるように電圧波形を正規化する。
【0040】
このように取得した電圧波形を正規化することで、外径や材質や厚さが異なる硬貨であっても正規化後は、最大電圧値が同じ値の電圧波形となる。また、検知コイル21−1と検知コイル21−2のそれぞれで、共振する周波数が異なっている場合であっても、最大電圧値が同じ値の電圧波形となる。これによってたとえ材質や厚さが異なる硬貨であっても外形が同じ硬貨から取得した電圧波形の正規化後の波形から後述する交点の電圧値を特定したときに、交点の電圧値はほぼ同じ電圧値となることから、高精度に直径に応じた電圧値を取得することができる。
【0041】
また、検波回路31−1や検波回路31−2が出力する電圧波形は、図4等に示したように、台形状の波形となるため、正規化部61は、台形状の上辺に相当する部分の平均値を最大電圧値として正規化処理を行うようにしてもよい。
【0042】
続いて、外径判定部6は、交点特定部62が、正規化部61で正規化処理を施した2つの電圧波形の交点を特定する。図8は、交点特定部62による交点の特定方法を説明するための図である。
【0043】
図8(a)に示した図は、正規化部61で正規化処理が施された2つの電圧波形の交点部分を拡大したものであるが、2つの電圧波形は、実際には、信号処理部3−1(A/D変換部32−1)や信号処理部3−2(A/D変換部32−2)で、サンプリングによるディジタル化が施されているため、図8(b)に示すように、検波回路31−1から出力されて正規化部61で正規化処理が施された電圧波形は、電圧P11や電圧P12の集合として表され、検波回路31−2から出力されて正規化部61で正規化処理が施された電圧波形は、電圧P21や電圧P22の集合として表されるものである。
【0044】
このため、交点特定部62は、2つの電圧波形を示す電圧の上下が逆転する電圧P11(電圧P21)と電圧P12(電圧P22)の間に交点が存在するものと特定し、電圧P11と電圧P12を補間した電圧波形、例えば、電圧P11と電圧P12が直線状に変化したものと見做した電圧波形と、電圧P21と電圧P22を補間した電圧波形の交点である電圧PIを特定する(図8(c)参照)。
【0045】
このようにして電圧PIを特定することで高精度に直径に応じた電圧値を取得することができる。
【0046】
なお、交点特定部62は、2つの電圧波形を示す電圧の上下が逆転した最初の電圧である電圧P12または電圧P13を交点と見做して、2つの電圧波形の交点を特定してもよい。この場合、上述した電圧PIを特定する手法と比較すると識別精度は劣る。
【0047】
これら、正規化部61と交点特定部62による処理の結果、例えば、図9(a)に示すように、材質が異なる硬貨から検出されたことによる異なる電圧波形であっても、図9(b)に示すように、特定した交点は、硬貨の直径に応じた値となる。なお、図9(a)に示した電圧波形は、図5(a)に示した電圧波形と図5(b)に示した電圧波形に相当するものである。
【0048】
そして、交点特定部62が硬貨の直径に応じた電圧値を取得することができるため、外径判定部6は、予め識別対象とするそれぞれの硬貨の直径に応じた電圧値を基準値記憶部63に記憶しておき、比較部64で交点特定部62が取得した電圧値と基準値記憶部63に記憶している電圧値を比較することで、硬貨通路内を転動する硬貨の直径を識別することができる。
【0049】
なお、上述のように2つの検知コイルを用いて2つの電圧波形を取得し、この波形から交点を特定する場合に、検知センサの精度のバラつきにより待機時の電圧値が異なる場合がある。このような場合には、取得した電圧波形の待機時の電圧レベルを一致させる補正をしてから正規化処理をする。
【0050】
ところで、硬貨には、バイメタルと称される種類のものが存在する。バイメタルの硬貨は、2つの金属により構成されるもので、例えば、図10(a)に示す硬貨100のように、リング部101とコア部102とで異なる金属が用いられているものである。
【0051】
このようなバイメタルの硬貨100の場合、リング部101とコア部102の金属が異なるため、リング部101とコア部102の透磁率も異なるものとなるため、検波回路31−1や検波回路31−2が出力する電圧波形は、台形状ではないものとなる。
【0052】
しかしながら、検波回路31−1や検波回路31−2が出力する電圧波形の立ち上がり部分や立下り部分、つまり、交点特定部62が特定する交点が生じる部分は、図10(b)や図10(c)に示すように、硬貨100の縁部分、つまり、リング部101に応じた電圧波形部分であり、最大電圧値は、リング部101またはコア部102のいずれか一方の材質に応じて特定することができるため、バイメタルの硬貨100に対応する電圧値を基準値として基準値記憶部63に記憶しておくことにより、前述した処理と同様の処理でバイメタルの硬貨100の直径を識別することができる。
【符号の説明】
【0053】
1 硬貨識別装置
2−1、2−2 硬貨検知部
3−1、3−2 信号処理部
4 判定部
5 厚さ判定部
6 外径判定部
7 材質判定部
21−1、21−2 検知コイル
22−1、22−2 発振回路
31−1、31−2 検波回路
32−1、32−2 A/D変換部
41 マイコン
61 正規化部
62 交点特定部
63 基準値記憶部
64 比較部
100 硬貨
101 リング部
102 コア部
A 硬貨の転動する進行方向
L 最大の直径の硬貨の通過位置
P11、P12、P21、P22 電圧
PI 交点電圧
S 最小の直径の硬貨の通過位置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
転動する硬貨を識別する硬貨識別装置において、
硬貨通路の硬貨転動方向に沿って、識別対象の硬貨の直径に応じた間隔に配置された2つの硬貨検出手段と、
前記硬貨検出手段が出力する2つの電圧波形のそれぞれを、該電圧波形の最大電圧値が予め定められた電圧値となるように、該電圧波形の成分のうち電圧値のみを正規化する正規化手段と、
前記正規化手段により正規化された2つの電圧波形の交点を特定しその電圧値を取得する交点特定手段と、
前記交点特定手段が特定した交点の電圧値を予め定めた値と比較することにより硬貨の直径を判別する直径判別手段と
を具備することを特徴とする硬貨識別装置。
【請求項2】
前記正規化手段は、前記電圧波形の最大電圧値と予め定められた電圧値の比を用いて、該電圧波形の最大電圧値が予め定められた電圧値となるように、前記電圧波形の成分のうち電圧値のみを正規化することを特徴とする請求項1記載の硬貨識別装置。
【請求項3】
前記正規化手段は、前記硬貨検出手段が出力する電圧波形のうち、硬貨の縁部に応じた部分を除いた値の平均値を該電圧波形の最大電圧値とすることを特徴とする請求項1記載の硬貨識別装置。
【請求項4】
前記硬貨検出手段が出力する2つの電圧波形のそれぞれを、所定の時間間隔でサンプリングしてディジタル信号化するディジタル信号化手段をさらに具備し、
前記正規化手段は、前記ディジタル信号化手段でディジタル信号化された電圧波形を正規化し、
前記交点特定手段は、前記ディジタル信号化手段でディジタル信号化され、前記正規化手段で正規化された2つの電圧波形の電圧値を、該ディジタル信号化された順に比較し、2つの電圧波形を示す電圧の上下が逆転した前後の電圧値のそれぞれを直線で補間し、該補間した2つの電圧波形の交点を特定しその電圧値を取得する
ことを特徴とする請求項1記載の硬貨識別装置。
【請求項1】
転動する硬貨を識別する硬貨識別装置において、
硬貨通路の硬貨転動方向に沿って、識別対象の硬貨の直径に応じた間隔に配置された2つの硬貨検出手段と、
前記硬貨検出手段が出力する2つの電圧波形のそれぞれを、該電圧波形の最大電圧値が予め定められた電圧値となるように、該電圧波形の成分のうち電圧値のみを正規化する正規化手段と、
前記正規化手段により正規化された2つの電圧波形の交点を特定しその電圧値を取得する交点特定手段と、
前記交点特定手段が特定した交点の電圧値を予め定めた値と比較することにより硬貨の直径を判別する直径判別手段と
を具備することを特徴とする硬貨識別装置。
【請求項2】
前記正規化手段は、前記電圧波形の最大電圧値と予め定められた電圧値の比を用いて、該電圧波形の最大電圧値が予め定められた電圧値となるように、前記電圧波形の成分のうち電圧値のみを正規化することを特徴とする請求項1記載の硬貨識別装置。
【請求項3】
前記正規化手段は、前記硬貨検出手段が出力する電圧波形のうち、硬貨の縁部に応じた部分を除いた値の平均値を該電圧波形の最大電圧値とすることを特徴とする請求項1記載の硬貨識別装置。
【請求項4】
前記硬貨検出手段が出力する2つの電圧波形のそれぞれを、所定の時間間隔でサンプリングしてディジタル信号化するディジタル信号化手段をさらに具備し、
前記正規化手段は、前記ディジタル信号化手段でディジタル信号化された電圧波形を正規化し、
前記交点特定手段は、前記ディジタル信号化手段でディジタル信号化され、前記正規化手段で正規化された2つの電圧波形の電圧値を、該ディジタル信号化された順に比較し、2つの電圧波形を示す電圧の上下が逆転した前後の電圧値のそれぞれを直線で補間し、該補間した2つの電圧波形の交点を特定しその電圧値を取得する
ことを特徴とする請求項1記載の硬貨識別装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2012−48557(P2012−48557A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−190962(P2010−190962)
【出願日】平成22年8月27日(2010.8.27)
【出願人】(307003777)株式会社日本コンラックス (140)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年8月27日(2010.8.27)
【出願人】(307003777)株式会社日本コンラックス (140)
【Fターム(参考)】
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