説明

硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール組成物及び硬質ポリウレタンフォームの製造方法

【課題】ポリエーテルポリオールや脂肪族ポリエステルポリオールを使用しないか,あるいはその使用量が5重量部未満であり、しかもハロゲンを含有する難燃剤の添加量を従来よりも減少したか、これを使用することなく準不燃の規格に適合する硬質ポリウレタンフォーム用のポリオール組成物並びに硬質ポリウレタンフォームの製造方法を提供する。
【解決手段】ポリオール化合物、発泡剤及び触媒を含み、ポリイソシアネート成分と混合・反応させて硬質ポリウレタンフォームを形成するポリオール組成物であって、ポリオール化合物の全量を100重量部としたときに、芳香族ポリエステルポリオールが95重量部以上であり、活性水素基を有しない高沸点親水性有機溶剤を前記ポリオール化合物100重量部に対して2〜25重量部を含む硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール組成物とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高い難燃性を有する硬質ポリウレタンフォーム用のポリオール組成物並びに該ポリオール組成物を使用した硬質ポリウレタンフォームの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
硬質ポリウレタンフォームは、断熱材、軽量構造材等として周知の材料である。係る硬質ポリウレタンフォームは、ポリオール化合物、発泡剤を必須成分として含有するポリオール組成物とポリイソシアネート成分とを混合し、発泡、硬化させることにより形成される。建築用材料として使用される硬質ポリウレタンフォームには難燃性が要求され、ポリウレタンフォームの分子構造により難燃性能を高める方法として、芳香族ポリエステルポリオールを使用することが難燃性向上に有利であることは知られていた(特許文献1)。
【0003】
しかるに、フォームを構成するポリウレタン中の芳香族ポリエステルポリオールの割合を高くするとポリオール組成物の流動性が低下してフォームの成形性が低下するという問題や形成されたフォームが脆くなって物性が低下する等の問題が発生するため、特許文献1の実施例において採用されているように、少なくとも10%程度、通常は20%程度のポリエーテルポリオールの使用が不可欠である。そうするとポリエーテルポリオールを使用する結果、フォームの難燃性、耐熱性が低下して難燃性向上のためには難燃剤の使用が欠かせないものであった。またフォームを構成するポリウレタン中の芳香族ポリエステルポリオールの割合を高くした場合には、オゾン層破壊係数が小さいHFC化合物を発泡剤成分とした場合にHFC化合物のポリオール組成物中での相溶性が低いためにフォームを構成するセル(気泡)の均一性が低下するという問題が発生する。係る問題を防止するためにもHFC化合物と相溶性のよいポリエーテルポリオールの使用が不可欠であった。
【0004】
また、フォームの耐熱性を高める技術として、硬質ポリウレタンフォーム構成ポリウレタン中にイソシアヌレート結合を導入する方法が周知であり、ペンタンを発泡剤として使用した系においてNCO/OH当量比を3.5程度としたイソシアヌレート基を多く含むフォームが公知である(特許文献2,3など)。
【0005】
しかし、係る技術においてもフォームの強度や面材との接着性改善のためにポリエーテルポリオールの使用が欠かせないものであり、上記と同様に難燃剤の添加が不可欠であった。
【0006】
【特許文献1】特開2006−335810号公報
【特許文献2】特開2008−88355号公報
【特許文献3】特開2008−88356号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記の公知技術の問題点に鑑みて、ポリエーテルポリオールや脂肪族ポリエステルポリオールを使用しないか,あるいはポリエーテルポリオールないし脂肪族ポリエステルポリオールの使用量が5重量部未満であり、しかもハロゲンやリンを含有する難燃剤の添加量を従来よりも減少したか、ないしはこれらの難燃剤を使用することなく準不燃の規格に適合する硬質ポリウレタンフォーム用のポリオール組成物並びに該ポリオール組成物を使用した硬質ポリウレタンフォームの製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール組成物は、ポリオール化合物、発泡剤及び触媒を含み、ポリイソシアネート成分と混合・反応させて硬質ポリウレタンフォームを形成するポリオール組成物であって、
前記ポリオール化合物の全量を100重量部としたときに、芳香族ポリエステルポリオールが95重量部以上であり、
活性水素基を有しない高沸点親水性有機溶剤を前記ポリオール化合物100重量部に対して2〜25重量部を含むことを特徴とする。
【0009】
係る構成のポリオール組成物を使用して製造した硬質ポリウレタンフォームは、リンやハロゲンを含有する難燃剤の添加量が従来よりも少ないか、又はこれらの難燃剤を使用することなく準不燃の規格に適合する硬質ポリウレタンフォームである。
【0010】
従来、芳香族ポリエステルポリオールのみを使用して硬質ポリウレタンフォームを製造すると、得られたフォームは耐熱性は高いものであったが、ポリオール組成物の流動性がよくないために成形性が満足できるものではなく、また樹脂強度が低い等物性も不足しており、フォームと積層する面材との接着強度も十分ではなかった。このため、芳香族ポリエステルポリオールに対して少なくとも10%のポリエーテルポリオールの添加が不可欠であったが、ポリエーテルポリオールの添加により難燃性が低下するという問題が発生し、難燃剤の添加が不可欠であり、リン、ハロゲンの使用の低減という環境上の要請に対応することができなかった。
【0011】
これに対して本発明においては、それ自体が可燃性である高沸点の親水性有機溶剤を添加することによって、逆にハロゲン含有化合物、リン含有化合物などの難燃剤を使用することなく難燃性が向上するという結果が得られた。また上記の組成物を使用した場合、樹脂強度等の物性も良好であり、フォームと積層する面材との接着強度も良好な硬質ポリウレタンフォームを形成することができた。
【0012】
高沸点親水性有機溶剤の添加量がポリオール化合物100重量部に対して2重量部未満の場合にはその効果が発揮されず、25重量部を超えると得られるフォームの難燃性が低下する。高沸点親水性有機溶剤の添加量はポリオール化合物100重量部に対して3〜22重量部であることがより好ましい。
【0013】
本発明の硬質ポリウレタンフォームの製造方法は、ポリオール化合物、発泡剤及び触媒を含むポリオール組成物とポリイソシアネート成分とを混合・反応させて硬質ポリウレタンフォームとする方法であって、
前記ポリオール化合物の全量を100重量部としたときに、芳香族ポリエステルポリオールが95重量部以上であり、
前記ポリオール組成物は、活性水素基を有しない高沸点親水性有機溶剤を前記ポリオール化合物100重量部に対して2〜25重量部を含むことを特徴とする。
【0014】
係る構成の製造方法によれば、ハロゲンを含有する難燃剤の添加量が従来よりも少ないか、又はハロゲンを含有する難燃剤を含有しない準不燃の規格に適合する硬質ポリウレタンフォームを製造することができる。またフォームの成形性や物性も良好であり、面材との接着強度も良好である硬質ポリウレタンフォームを製造することができる。
【0015】
上記の硬質ポリウレタンフォームの製造方法においては、前記ポリオール組成物とポリイソシアネート成分との混合における活性水素基とイソシアネート基の当量比(NCO/OH比)が2.5〜4.5であることが好ましい。NCO/OH比は、2.5〜4.0であることがより好ましい。
【0016】
係る構成により、とりわけ難燃性に優れた硬質ポリウレタンフォームを製造することができる。
【0017】
本発明の硬質ポリウレタンフォームの密度は25〜60kg/mであることが好ましい。本発明の硬質ポリウレタンフォームを構成するポリウレタンは、ウレタン結合とイソシアヌレート結合を有し、水を発泡剤成分として使用する場合にはウレア結合も有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール組成物並びに硬質ポリウレタンフォームの製造方法において使用する芳香族ポリエステルポリオールは、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸とグリコールの縮合物であり、平均官能基数が1.8〜2.5、より好ましくは1.9〜2.3、水酸基価100〜400mgKOH/gのポリオール化合物である。芳香族ポリエステルポリオールを構成するグリコールとしては、特に限定されるものではないが、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール等のポリエステルポリオールの構成成分として公知の低分子量脂肪族グリコールを使用することが好ましい。芳香族ジカルボン酸とグリコールの縮合物の場合には、官能基数は略2であるが、グリコールの一部をトリメチロールプロパン等の多官能アルコールに置換することによって官能基数を2以上に高めることができ、係る構成により、得られるフォームの物性の調整をすることができる。
【0019】
上記の中でも、芳香族ポリエステルポリオールとしてはテレフタル酸を主成分とするポリエステルポリオールの使用が好ましく、芳香族ポリエステルポリオールを構成する賛成分の90モル%以上、より好ましくは95モル%以上、さらに好ましくは全部がテレフタル酸の芳香族ポリエステルポリオールを使用することが好ましい。芳香族ポリエステルポリオールの水酸基価は、150〜300mgKOH/gであることがより好ましく、200〜300mgKOH/gであることがさらに好ましい。
【0020】
本発明においてはポリオール組成物を構成するポリオール化合物は芳香族ポリエステルポリオールのみで構成されていることが好ましいが、ポリオール化合物100重量部中、5重量部以下のポリエーテルポリオール化合物ないし脂肪族ポリエステルポリオールを含有してもよい。ポリエーテルポリオール化合物としては、シュークロース、グリセリン等の多官能アルコール化合物にエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等の環状エーテル化合物、好ましくはプロピレンオキサイドのみ、もしくはプロピレンオキサイドとエチレンオキサイドを開環付加させた脂肪族ポリエーテルポリオール、アルキレンジアミンやアルカノールアミンに環状エーテル化合物を開環付加させた脂肪族アミンポリオール、トルエンジアミンなどの芳香族ポリアミンに環状エーテル化合物を開環付加させた芳香族アミンポリオールなどが例示できる。
【0021】
ポリオール組成物を構成するポリオール化合物として芳香族ポリエステルポリオールに加えてポリエーテルポリオール化合物ないし脂肪族ポリエステルポリオールを使用すると難燃性は低下するが、フォームの成形性と機械的特性、面材との接着性は改善することができる。本発明においては、ポリエーテルポリオールないし脂肪族ポリエステルポリオールの使用量は、ポリオール化合物100重量部中、5重量部未満であることがより好ましく、4重量部以下であることがさらに好ましく、3重量部以下であることが特に好ましい。
【0022】
活性水素基を有しない高沸点親水性有機溶剤としては、沸点が100℃以上、好ましくは110℃以上、より好ましくは120℃以上で親水性の官能基であるエーテル基、エステル基、アミド基等を有する化合物であり、イソシアネート基と反応する水酸基、第1級又は第2級のアミノ基を有しない常温で液状の有機溶剤は限定なく使用することができる。親水性有機溶剤は、水と任意の比率で溶解する水溶性であることがより好ましく、具体的には、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、分子量が600以下のポリエチレングリコールのジアルキルエーテル、ジエチレングリコールジアセテート、トリエチレングリコールジアセテート、分子量が600以下のポリエチレングリコールのジアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、分子量が600以下のポリエチレングリコールのモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(EDGAC)、トリエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、分子量が600以下のポリエチレングリコールのモノエチルエーテルアセテート、ε−カプロラクトン、γ−ブチロラクトン等のラクトン化合物、N−メチルピロリドン等を例示することができる。
【0023】
本発明においては、触媒としては3量化触媒と第3級アミン触媒とを併用し、ポリオール組成物に配合する。該触媒は、3量化触媒/第3級アミン触媒重量比が2/1〜10/1であることが好ましい。3量化触媒/第3級アミン触媒重量比は、2.5/1以上であることが好ましく、3/1以上であることがより好ましい。また3量化触媒/第3級アミン触媒重量比は、8/1以下であることが好ましく、7/1以下であることがより好ましい。
【0024】
イソシアヌレート基形成触媒としては、酢酸カリウム、プロピオン酸カリウム、2−エチルヘキサン酸カリウム(オクチル酸カリウム)、等の炭素数1〜20の有機カルボン酸アルカリ金属塩、及びN−(2−ヒドロキシプロピル)−N−(2−ヒドロキシエチル)−N,N−ジメチルアンモニウム・オクチル酸塩、N−ヒドロキシアルキル−N,N,N−トリアルキルアンモニウム塩等、特開平9−104734号公報に開示された化合物等の第4級アンモニウム塩触媒が例示され、市販品も使用可能であり、これらの触媒から選択される少なくとも1種の化合物を使用する。
【0025】
3量化触媒(イソシアヌレート基形成触媒)としては、有機カルボン酸アルカリ金属塩単独での使用、もしくは有機カルボン酸アルカリ金属塩触媒と第4級アンモニウム塩触媒の併用が好ましい。有機カルボン酸アルカリ金属塩触媒と第4級アンモニウム塩触媒とを併用する場合には、有機カルボン酸アルカリ金属塩触媒/第4級アンモニウム塩触媒の比率(重量比)は、1/1以上であることが好ましい。
【0026】
第3級アミン触媒としては、公知の第3級アミン触媒を限定なく使用することができ、具体的にはN,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミンやN,N,N’,N’−テトラメチルヘキサメチレンジアミン(カオライザーNo.1)、N,N,N’,N’,N”−ペンタメチルジエチレントリアミン(カオライザーNo.3)等のN−アルキルポリアルキレンポリアミン類、ジアザビシクロウンデセン(DBU)、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン(ポリキャット−8)、トリエチレンジアミン、N−メチルモルホリン等の第3級アミン類を使用することが好ましい。
【0027】
本発明の硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール組成物並びに硬質ポリウレタンフォームの製造方法においては、3量化触媒と第3級アミン触媒との使用合計量は、ポリオール組成物とポリイソシアネート成分との反応におけるゲル化時間に応じて適宜設定されるが、ポリオール化合物100重量部に対して1〜4重量部であることが好ましい。
【0028】
本発明のポリオール組成物を構成する発泡剤としては、HFC化合物の使用、又はHFC化合物と水との併用が好ましい。HFC化合物としては、ペンタフルオロプロパン、ペンタフルオロブタン、ヘキサフルオロブタン等が例示され、特に1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン(HFC−245fa)、1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン(HFC−365mfc)、HFC−245fa/HFC−365mfc混合物の使用が好ましい。HFC化合物と水を併用する場合には、HFC/水の重量比は5以下が好ましく、3以下であることがより好ましい。水の使用比率が高くなると、ポリウレタン分子中のイソシアヌレート結合の濃度が低下し、難燃性が低下する場合が生じる。
【0029】
本発明においては、さらに難燃剤を添加することもできる。好適な難燃剤としては、ハロゲン含有化合物、有機リン酸エステル類、三酸化アンチモン、水酸化アルミニウム等の金属化合物が例示される。これらの中でも有機リン酸エステル類が好ましく、リン酸のハロゲン化アルキルエステル、アルキルリン酸エステルやアリールリン酸エステル、ホスホン酸エステル等が使用可能であり、具体的にはトリス(β−クロロエチル)ホスフェート(CLP)、トリス(β−クロロプロピル)ホスフェート(TMCPP)、トリブトキシエチルホスフェート(TBXP)等が例示でき、これらの1種以上が使用可能である。有機リン酸エステル類は添加しなくてもよいが、添加する場合はその添加量はポリオール化合物の合計100重量部に対して5重量部以下であり、4重量部以下であることが好ましく、3重量部以下であることがさらに好ましい。
【0030】
本発明の硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール組成物を構成する成分として架橋剤を使用してもよい。架橋剤としてはポリウレタンの技術分野において使用される低分子量多価アルコールが使用可能である。具体的には、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリエタノールアミン等が例示される。
【0031】
ポリオール組成物と混合、反応させて硬質ポリウレタンフォームを形成するポリイソシアネート化合物としては、取扱の容易性、反応の速さ、得られる硬質ポリウレタンフォームの物理特性が優れていること、低コストであることなどから、液状MDIを使用する。液状MDIとしては、クルードMDI(c−MDI)(スミジュール44V−10,スミジュール44V−20等(住化バイエルウレタン社製)、ミリオネートMR−200(日本ポリウレタン工業))、ウレトンイミン含有MDI(ミリオネートMTL;日本ポリウレタン工業製)等が使用される。液状MDIに加えて、ポリウレタンの技術分野において公知のポリイソシアネート化合物を併用してもよい。
【0032】
本発明の硬質ポリウレタンフォームの製造に際しては、上記成分の他に、当業者に周知の整泡剤、着色剤、酸化防止剤等が使用可能である。
【実施例】
【0033】
(ポリオール組成物)
表1、表2の上段に記載した組成にてポリオール組成物を調製した。使用した原料中、化合物名で表示した成分以外の成分は以下の通りである。整泡剤としては、全ての例においてSH−193(東レダウコーニングシリコン)をポリオール化合物合計100重量部に対して5重量部添加した。使用した原料は以下のとおりである。
a)芳香族ポリエステルポリオール
テレフタル酸とジエチレングリコールを縮合させて得られる水酸基価245mgKOH/gの実質的に2官能のポリオール化合物
b)ポリエーテルポリオール
トルエンジアミンを開始剤としてプロピレンオキサイドを付加した水酸基価400mgKOH/gの実質的に4官能のポリオール化合物
c)触媒
第4級アンモニウム塩触媒:カオライザーNo.410
KAO.No.1:カオライザーNo.1(Kao−No.1)
d)発泡剤
HFC化合物:HFC245fa/HFC365mfc=80/20(重量比)
e)ポリイソシアネート成分
スミジュール44V−20(住化バイエルウレタン)
【0034】
(実施例、比較例)
実施例、比較例については表1、表2のそれぞれ上段に記載した配合にて常法により発泡機を備えたサンドイッチパネル製造ラインを使用し、両面面材として厚さ0.3mmの鋼板を積層したフォーム層の厚さが50mmのサンドイッチパネルを作製した。配合比は、ポリイソシアネート成分の配合量以外は重量部にて表示した。触媒欄に記載したTは3量化触媒、Uは第3級アミン触媒を示し、T+Uは配合量の合計、T/Uは3量化触媒/第3級アミン触媒重量比を示す。ポリイソシアネート成分の配合量は、ポリオール成分との混合におけるイソシアネートインデックス(NCO/OH当量比)にて示した。高沸点親水性有機溶剤としては、水溶性であるγ−ブチロラクトン単独使用、又はγ−ブチロラクトンとジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(EDGAC)を併用した。発泡剤は、HFC245fa/HFC365mfc=80/20(重量比)を使用した。ポリイソシアネート成分の配合量は、NCO/OH当量比にて示した。NCO/OH当量比の計算においては、NCO基は水1モルに消費されるNCO基2当量を除いて計算した。以下に記載の評価を行い、結果を表1、表2のそれぞれ下段に示した。
【0035】
(評価)
<コーンカロリー試験>
得られたサンドイッチパネルから縦横が(99±1)mm×(99±1)mmのサンプルを切り出し、ISO−5660に準拠し、放射熱強度50kW/m2 にて5分間加熱したときの最大発熱速度(発熱速度)、総発熱量を測定した。この測定方法は、建築基準法施行令第108条の2に規定される公的機関である建築総合試験所にて、コーンカロリーメーター法による基準に対応するものとして規定された試験法である。準不燃の規格は以下のとおりであり、この規格を満たすものを合格(合)、満たさないものを(否)とした。
イ)10分間の総発熱量が8.0MJ/m以下であること。
ロ)10分間で最高発熱速度が10秒以上継続して200kW/mを超えないこと。
ハ)10分間で防火上有害な裏面まで貫通する貫通孔(亀裂、穴)の発生がないこと。
【0036】
<寸法安定性>
得られたサンドイッチパネルから縦横が(99±1)mm×(99±1)mmの測定サンプルを切り出し、高温高湿条件(温度70℃、相対湿度95%)において48時間放置し、発泡垂直方向の寸法変化率を測定した。
【0037】
<面材接着強度>(表における「接着強度」)
得られたサンドイッチパネルから縦横が100mm×100mmのサンプルを切り出して図1のようにサンプル端部を固定台座に固定し、面材の一つの上端に形成した穴にばね秤のフックを引っ掛け、面材に対して下方約45度方向にゆっくりと引張る剥離試験を行い、接着強度(単位N/10cm)を求めた。測定は温度23℃、湿度65%RHにて行った。
【0038】
<圧縮強度>
JIS K 7220に従って圧縮強度の測定を行った。測定は5サンプルについて行い、平均値を求めた。
【0039】
【表1】

【0040】
【表2】

【0041】
上記の結果より本願発明の範囲内においては、得られた硬質ポリウレタンフォームは、コーンカロリー試験においていずれも準不燃の規格に適合するものであると共に、寸法安定性、面材との接着強度並びにフォームの圧縮強度において良好な性能をしめすものであった。
【0042】
これに対して、ポリオール化合物として芳香族ポリエステルポリオール70重量部に対してポリエーテルポリオールを30重量部使用した比較例1のフォームはコーンカロリー試験による準不燃の規格に適合しないものであった。芳香族ポリエステルポリオール90重量部に対してポリエーテルポリオールを10重量部使用したフォームも同様に準不燃の規格に適合しないものであった。また比較例1のフォームは、圧縮強度と面材との接着性は良好であったが寸法安定性は不良であった。
【0043】
比較例2,3は水溶性有機溶剤の添加量が本願発明の範囲を逸脱したものである。比較例2は、水溶性有機溶剤の添加量がポリオール化合物100重量部に対して2重量部の例であり、比較例3は25重量部の例であり、いずれも準不燃の規格に適合するものではなかった。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の多機能マットレスの好適な実施形態を例示した斜視図
【符号の説明】
【0045】
10 硬質ポリウレタンフォームサンドイッチパネル
12 硬質ポリウレタンフォーム
14 面材
16 ばね秤
18 面材の穴
20 固定台座

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオール化合物、発泡剤及び触媒を含み、ポリイソシアネート成分と混合・反応させて硬質ポリウレタンフォームを形成するポリオール組成物であって、
前記ポリオール化合物の全量を100重量部としたときに、芳香族ポリエステルポリオールが95重量部以上であり、
活性水素基を有しない高沸点親水性有機溶剤を前記ポリオール化合物100重量部に対して2〜25重量部を含むことを特徴とする硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール組成物。
【請求項2】
前記触媒は3量化触媒と第3級アミン触媒とからなり、前記3量化触媒/第3級アミン触媒重量比が2/1〜10/1であることを特徴とする請求項1に記載の硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール組成物。
【請求項3】
ポリオール化合物、発泡剤及び触媒を含むポリオール組成物とポリイソシアネート成分とを混合・反応させて硬質ポリウレタンフォームとする硬質ポリウレタンフォームの製造方法であって、
前記ポリオール化合物の全量を100重量部としたときに、芳香族ポリエステルポリオールが95重量部以上であり、
前記ポリオール組成物は、活性水素基を有しない高沸点親水性有機溶剤を前記ポリオール化合物100重量部に対して2〜25重量部を含むことを特徴とする硬質ポリウレタンフォームの製造方法。
【請求項4】
前記触媒は3量化触媒と第3級アミン触媒とからなり、前記3量化触媒/第3級アミン触媒重量比が2/1〜10/1であることを特徴とする請求項3に記載の硬質ポリウレタンフォームの製造方法。
【請求項5】
前記ポリオール組成物とポリイソシアネート成分との混合における活性水素基とイソシアネート基の当量比が2.5〜4.5であることを特徴とする請求項3又は4に記載の硬質ポリウレタンフォームの製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2010−138327(P2010−138327A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−317375(P2008−317375)
【出願日】平成20年12月12日(2008.12.12)
【出願人】(000003148)東洋ゴム工業株式会社 (2,711)
【Fターム(参考)】