説明

碍子汚損地域予測システム、方法およびプログラム

【課題】 活線碍子の汚損地域を効率的に分別すること、および台風による激しい汚損に対応して予防的な水洗作業を行う地域を特定し、順序良く水洗作業が行えるようにすること。
【解決手段】 通信ネットワーク介してパイロット碍子の汚損量を取得する汚損量取得手段と、パイロット碍子が設置されている位置情報を保存する位置情報データベースより、位置情報を取得する位置情報取得手段と、取得したパイロット碍子の汚損状況と位置情報とを用いて汚損量の度合い別に地域を分別する汚損地域分別手段とを備えるように構成し、さらに台風情報により、台風による汚損状況を予測する台風塩害予測手段と、予防的な水洗作業を要する地域を特定する予防的水洗地域決定手段と、予防的な水洗作業の順序を特定する汚損地域洗浄順序作成手段を備えるように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送電線などで絶縁具として使用される碍子(がいし、以後「碍子」を使用する)の汚損状況の予測、および台風通過の際に予防的に水洗作業を行う地域を決定することのできる碍子汚損地域予測システム、方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、発電所、変電所、開閉所、送電線路に取り付けられる碍子は、通電している活線状態を安全確実に絶縁するのに使用されるものである。しかしその碍子は塩塵による汚損により経年とともに絶縁性能が低下する。汚損が進むと地絡などの原因となってしまうので、ある程度汚損が進んだ時に活線水洗を行う必要がある。活線碍子の汚損状況は、パイロット碍子の汚損量を測定して管理目標値に照らし合わせて水洗の有無を判断している。管理目標値は、汚損量に応じて軽汚損地域、中汚損地域、重汚損地域の3段階に分けて管理されている。
【0003】
さらに台風通過の場合には急速に汚損が進むためその汚損状況の予測が必要となる。汚損の程度がひどくなった時には、移動式のポンプ車または固定式の水洗具で水洗いを行っているが、汚損の程度がひどい場合は、近隣の碍子に塩塵が付着することでその碍子を地絡させる危険性がある。そのため水洗いする際の方向性や水洗いの圧力の程度も地絡させないための重要な要素である。汚損の程度が高いところから水洗いをすることになるが、担当者の経験と人海戦術によって見回りを行い対応しているのが現状である。
【0004】
これまで、碍子の汚損に関する技術として、特許文献1では、パイロット碍子の実測値を利用して気象データから計算される碍子汚損量の推測値を合理的に補正することができる方法と装置に関する技術を提案している。また、特許文献2は、パイロット碍子の実測値を利用して碍子汚損量の推測値を補正し、その推測値を測定の度に動的に見直してより精度の高い推測を行えるようにした動的調整を伴う碍子汚損量の推測方法及び装置に関する技術を提案している。
【特許文献1】特開平10−188700号公報
【特許文献2】特開平10−188701号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、汚損量により、軽汚損地域、中汚損地域、重汚損地域と分けて管理しているが、台風通過時にはその台風の状況により汚損が激しくなり台風通過前に予防的な水洗作業を行う必要がある地域が出てくる。今までは定量的に判断する方法が無かったため、熟練者の経験により対応していたのが現状であり、システム化した対応は行われていなかった。また、台風が通過するエリアにはたくさんの対象となる碍子が存在するので、広い範囲で効率的に予防策として碍子の予防的な水洗作業を行う地域の特定を行うことが望まれている。また、特許文献1および2はパイロット碍子を用いて碍子の汚損量を推測する方法について述べており、碍子の汚損状況に対応して予防的に水洗作業を行うのを支援するシステム、方法には対応していない。
【0006】
本発明は、上述のかかる事情に鑑みてなされたものであり、通信ネットワークを介してパイロット碍子の汚損量を取得し、パイロット碍子が設置されている位置情報とそのパイロット碍子が設置されている設置環境として、海からの距離、地形、周辺建造物との関係、風向き、風量などの情報を基にして汚損量の度合い別に地域を分別すること、および、台風情報を取得し、取得した台風情報より、台風の進路に存在する地域の碍子の汚損予測を行い、その予測に従って台風の通過前に汚損度の高い順に予防的な水洗作業を行う地域を決定する碍子汚損地域予測システム、方法、およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係わる碍子汚損地域予測システムは、通信ネットワーク介してパイロット碍子の汚損量を取得する汚損量取得手段と、前記パイロット碍子汚損量を時系列に汚損量蓄積データベースに蓄積する汚損量登録手段と、パイロット碍子が設置されている位置情報を保存する位置情報データベースより、位置情報を取得する位置情報取得手段と、パイロット碍子の設置環境情報を保存する環境情報データベースより環境情報を取得する環境情報取得演算手段と、前記汚損量蓄積データベースを用いて汚損量の度合い別に地域を分別する汚損地域分別手段とを備えたことを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、パイロット碍子の汚損量を通信ネットワークを介して取得でき、取得した汚損量を用いて汚損量の度合い別に地域を分別することができるので、現地より記憶媒体を用いて汚損状況を入手し、人手で汚損状況をシステムに登録する作業が必要なくなり効率的に作業を行うことができる。
【0009】
好ましくは、前記位置情報はGIS情報であり、前記GIS情報に、位置情報と付加情報を登録するGIS情報登録手段を備え、前記位置情報取得手段は、前記GIS情報よりパイロット碍子の位置情報および付加情報を取得するように構成する。
【0010】
本発明によれば、GIS情報を用いてパイロット碍子の位置情報とパイロット碍子に関する汚損状況やその他の情報を一つまとめにして保存することができるので、位置情報と、汚損情報を別々のデータとして保存するのと比較して、情報の扱いを格段に容易におこなうことができる。
【0011】
さらに、気象情報を保存する気象情報データベースより台風情報を取得し、位置情報データベースより碍子の位置情報を取得し、汚損量蓄積データベースより碍子の汚損量を取得し、前記台風情報、碍子の位置情報および碍子の汚損情報により台風による塩害の被害状況を予測する台風塩害予測手段とを備えたように構成するのも好ましい。
【0012】
本発明によれば、取得した汚損状況および台風情報により台風によるパイロット碍子の汚損状況を予測することができので、台風通過により激しく汚損する活線碍子の地域を容易に知ることができる。
【0013】
また、前記気象情報データベースは、通信ネットワークを介して取得するように構成するのも好ましい。
【0014】
本発明によれば、気象情報を通信ネットワークから取得することができるので、気象情報を別途入手してシステムに人手で登録するという手間が無くなり効率的に作業を行うことができる。
【0015】
さらに、前記碍子汚損地域予測システムは、前記汚損地域分別手段より分別されたパイロット碍子の地域別汚損状況と、前記台風塩害予測手段が予測した塩害予測状況と、台風による過去のパイロット碍子の被害状況を保存する台風被害状況データベースとを参照することで、予測される台風による被害が予め定めた被害の度合いを越える洗浄対象汚損地域を特定する予防的水洗地域決定手段と、を備えたように構成するのも好ましい。
【0016】
本発明によれば、台風による碍子の汚損状況を予測して、台風通過前に予防的な水洗作業を行う地域を予測することができるので、今まで適切に対応できていなかった予防的水洗作業を行うことができるようになる。なお、予防的な水洗作業は、碍子の汚損量を減少させる手段であれば特に水洗には限られない。
【0017】
また、前記台風塩害予測手段は、定めた時刻ごとに塩害予測を行い、その結果を台風塩害予測状況データベースに保存し、前記予防的水洗地域決定手段は、前記台風塩害予測状況データベースを用いて予防的な水洗作業を行う必要のある地域の予防的な水洗作業の順序を決定するように構成するのも良い。
【0018】
本発明によれば、台風による汚損地域において判明した活線碍子の予防的な水洗作業を行う地域の予防的な水洗作業を行う順序を作成することができるので、洗浄担当者または管理者が悩むことなく、指定された順序に従って予防的な水洗作業を行うことができ、作業の効率化を図ることができる。
【0019】
さらに好ましくは、前記台風塩害予測手段は、取得した台風情報により降雨量を予測し、前記予防的水洗地域決定手段は、前記予測した降雨量が予め定めた閾値以上であれば前記特定した洗浄対象汚損地域であっても予防的な水洗作業を行わないことを決定するように構成する。
【0020】
本発明によれば、降雨量が多い台風の場合で、過去の実績において定めた降雨量以上の降雨が見込める場合は、台風による予防的な水洗作業を行う必要がなくなるので、効率的に碍子の予防的水洗作業を行うことができる。
【0021】
また、前記分別された汚損地域の情報より、前記汚損地域の碍子の予防的な水洗作業の順序を作成する汚損地域洗浄順序作成手段とを備えたように構成するのも好ましい。
【0022】
本発明によれば、予防的な水洗作業の対象となる地域の作業順序を作成することができるので、効率的に予防的な水洗作業を行うことができる。
【0023】
さらに好ましくは、前記位置情報データベースに、碍子の予防的な水洗作業の際の位置関係と水洗の強さを保存し、前記汚損地域洗浄順序作成手段は、前記位置情報より碍子の予防的な水洗作業の際の位置関係と水洗いの強さを取得して、前記作成した碍子の予防的な水洗作業の順序ごとに追記して作成するように構成する。
【0024】
本発明によれば、予防的な水洗作業の対象となる碍子の水洗の際の位置と水洗の強さを予め知ることができるので、効率的な作業を行うことができ、さらに水資源を適切に取り扱うことができる。
【0025】
さらに、台風塩害予測手段は、台風情報と予測した台風による汚損状況のマップを重ね合わせ、台風前に予防的な水洗作業を必要とする箇所を通知する要に構成するのも好ましい。
【0026】
本発明により、台風前に水洗作業を行う地域が分かるので、水洗作業を効率的におこなうことができる。
【0027】
さらに、汚損量と風速情報から水洗可能な時間を算出する水洗推奨時間判定手段を備えるように構成するのも好ましい。
【0028】
本発明によれば、汚損量と台風の風速情報から水洗可能な時間を算出することができるので、適切な時間に予防的水洗を行うことが可能となる。
【0029】
上記目的を達成するため、本発明に係わる碍子汚損地域予測方法は、通信ネットワーク介してパイロット碍子の汚損量を取得する汚損量取得ステップと、前記パイロット碍子汚損量を時系列に汚損量蓄積データベースに蓄積する汚損量登録ステップと、パイロット碍子が設置されている位置情報を保存する位置情報データベースより、位置情報を取得する位置情報取得ステップと、パイロット碍子の設置環境情報を保存する環境情報データベースより環境情報を取得する環境情報取得演算ステップと、前記汚損量蓄積データベースを用いて汚損量の度合い別に地域を分別する汚損地域分別ステップとを含むことを特徴とする。
【0030】
上記目的を達成するため、本発明に係わる碍子汚損地域予測プログラムは、碍子の汚損予測を行うコンピュータ上で動作するプログラムであって、通信ネットワーク介してパイロット碍子の汚損量を取得する汚損量取得処理と、前記パイロット碍子汚損量を時系列に汚損量蓄積データベースに蓄積する汚損量登録処理と、パイロット碍子が設置されている位置情報を保存する位置情報データベースより、位置情報を取得する位置情報取得処理と、パイロット碍子の設置環境情報を保存する環境情報データベースより環境情報を取得する環境情報取得演算処理と、前記汚損量蓄積データベースを用いて汚損量の度合い別に地域を分別する汚損地域分別処理とをコンピュータ上で動作させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、通信ネットワークを介してパイロット碍子の汚損量を取得し、パイロット碍子が設置されている位置情報とそのパイロット碍子が設置されている設置環境情報を基にして汚損量の度合い別に地域を分別すること、および、台風情報を取得し、取得した台風情報より、台風の進路に存在する地域の碍子の汚損量の予測を行い、その予測に従って台風の通過前に汚損度の高い順に予防的な水洗作業を行う地域を決定することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、本発明の実施の形態を説明する。図1に、本発明の第1の実施の形態に係わる碍子汚損地域予測システム1、このシステムと通信を行う汚損状況通知装置5、および気象システム3の機能ブロック図を示す。図1において、碍子汚損地域予測システム1は、通信ネットワーク4を介して汚損状況通知装置5および気象システム3と繋がっている。
【0033】
ここで、碍子汚損地域予測システム1は、パイロット碍子の汚損状況を管理する電力会社またはサービス事業者などにより管理、運営される。また、汚損状況通知装置5はパイロット碍子の汚損状況を計測して通信ネットワーク4を介してその計測した汚損状況を通知する複数の装置である。
【0034】
碍子汚損地域予測システム1は、通信ネットワーク4を介してデータの送受信を行うための送受信部12、送受信部12から受け取ったデータの処理、およびその他のさまざまな処理を行う中央演算処理部13、データを記憶するための記憶部14、および、中央演算処理部13との間でデータの入出力を行う入力部15と表示部16から構成されている。
【0035】
さらに、中央演算処理部13は、送受信部12との間でデータの受け渡しを行う送受信処理手段(機能)131、入力部15あるいは表示部16とデータの受け渡しを行う入出力処理手段(機能)132、入出力処理手段(機能)132または送受信処理手段131を介して受信した碍子の情報などを登録する情報登録手段(機能)133、汚損量蓄積データベース(DB)151を参照して対象のパイロット碍子の汚損量を取得する汚損量取得手段(機能)134、汚損状況通知装置5から受信したパイロット碍子の汚損量を前記汚損量蓄積DB151に保存する汚損量登録手段(機能)135、位置情報データベース(DB)152を参照して対象のパイロット碍子が設置されている場所の緯度・経度などの位置情報を取得する位置情報取得手段(機能)136、環境情報データベース(DB)154を参照して、対象のパイロット碍子の環境情報として海からの距離、地形、周辺建造物との関係、定めた期間ごとに測定した風の向きと風量などを取得する環境情報取得演算手段(機能)137、受信したパイロット碍子の汚損状況から地域を軽汚損地域、中汚損地域、重汚損地域に分別する汚損地域分別手段(機能)138、地域を分けてマップ情報としてとして保存するGIS情報に、対応するパイロット碍子の汚損状況などを登録するGIS情報登録手段(機能)139、気象システム3から受信した台風情報に基づいて、パイロット碍子の過去の台風による汚損状況を参照することで台風通過による汚損量を加味し、台風塩害予測状況データベース(DB)157に保存する台風塩害予測手段(機能)140、前記台風塩害予測状況DB157の情報に基づいて、台風通過前に水洗いを必要とする地域を特定する予防的水洗地域決定手段141、前記台風通過前に予防的な水洗作業が必要とされる地域を汚損度が高い順に並べ予防的な水洗作業を行う地域の順序を作成する汚損地域洗浄順序作成手段142から構成される。
【0036】
また、記憶部14は、汚損状況通知装置5から受信した各パイロット碍子の汚損状況を時系列に蓄積する汚損量蓄積データベース(DB)151、各パイロット碍子の設置場所の緯度・経度、住所、および地図へのURL(Universal Resouce Locator)などのリンク情報などの位置情報を保存する位置情報データベース(DB)152、位置情報に加えてパイロット碍子の時系列の汚損情報を保存するGIS情報データベース(DB)153、各パイロット碍子が設置されている場所の風向き、風量などを時系列に保存している環境情報データベース(DB)154、気象システム3から受信した台風情報の進行方向、進行速度、現在位置、台風の強さ(最大風速)、台風の大きさ(強風域)、雨量などを時系列に保存する気象情報データベース(DB)155、過去の台風の汚損状況をパイロット碍子ごとに保存する台風被害状況データベース(DB)156、現在の台風によるパイロット碍子の汚損予測状況を保存する台風塩害予測状況データベース(DB)157から構成されている。
【0037】
汚損状況通知装置5は、通信ネットワーク4を介してデータの送受信を行うための送受信部52、送受信部52からのデータの処理を行う中央演算処理部53、中央演算処理部53との間でデータの入出力を行う入力部55および表示部56、対象のパイロット碍子の汚損量を計測する汚損量計測部57から構成されている。
【0038】
気象システム3は、汚損状況通知装置5と同様に、通信ネットワーク4を介してデータの送受信を行うための送受信部32、送受信部32からのデータの処理を行う中央演算処理部33、中央演算処理部33との間でデータの入出力を行う入力部35および表示部36、観測した気象のデータを保存する気象データ37から構成されている。
【0039】
通信ネットワーク4は、専用の通信網か通信事業者から借り受けた回線をある定めた通信プロトコルを用いて碍子汚損地域予測システム1、汚損状況通知装置5、気象システム3間を接続する通信網である。例えば、ADSL(Asymmetric Disital Subsucriber Line)、FTTH(Fiber To The Home)、CATV(Community Antenna TeleVision)などの回線を使用することが可能である。
【0040】
図2に、碍子汚損地域予測システム1の動作の概略を示す。パイロット碍子の汚損情報、汚損区分(軽、中、重)、汚損量は(F02)、GIS情報データベースに(F01)登録され、碍子の汚損状況は上記GIS情報データベースにて管理される(F04)。さらに気象システム3からの台風情報(F03)として、台風の位置情報(緯度・経度)、予測経路(進行方向)、風速、大きさ、雨量などから、過去の台風の情報によりパイロット碍子の汚損量の予測をたてることで台風による汚損地域の予測を行い(F05)、台風が訪れる前に活線碍子の予防的な水洗作業が可能になる(F06)。という一連の動作を示している。
【0041】
図3に、碍子汚損地域予測システム1のネットワーク構成図を示す。図3に示すように本碍子汚損地域予測システム1は、通信ネットワーク4を介して、碍子汚損地域予測システム1、汚損状況通知装置5、気象システム3が相互に接続されて構成される。
【0042】
図4に、汚損量蓄積DB151の構成例を示す。汚損量蓄積DB151はパイロット碍子ごとにそのパイロット碍子の汚損量を保存するものであり、汚損量の測定は、本実施の形態では1ヶ月単位で行っており時系列に保存している。汚損量の欄は測定日の汚損量を表している。「水洗(999)」と記載している部分は、その日に水洗を行っているので水洗を表す999を登録していることを示している。 前記「999」は固定ではなく、汚損量と区別ができるものであれば何でも良い。これは汚損量計測の担当者が現地に出向いて、汚損量状況通知装置5を用いて計測を行い、その結果を通信ネットワーク4を介して碍子汚損地域予測システム1に送信するという行い方でも良いし、汚損状況通知装置5が自主的に予め定めた周期でパイロット碍子の汚損量を測定して、その計測した汚損量を碍子汚損地域予測システム1に通信ネットワーク4を介して送信するという行い方でも良い。
【0043】
図5に、位置情報DB152の構成例を示す。位置情報DB152は、パイロット碍子ごとにパイロット碍子に割振った碍子ID、位置の登録番号、緯度・経度からなる位置、住所および、地図へのURLなどのリンク情報を備えている。地図へのリンクは操作者が行う画面上で、地図へのリンクを指定(例えばクリック)すると画面上に対象のパイロット碍子が存在する位置をプロットした地図などが表示されるように構成するのに使用する。
【0044】
図6に、GIS情報DB153のデータ構成例を示す。GIS情報は、パイロット碍子の位置情報に加えてパイロット碍子の汚損状況を時系列に保存する。本実施形態におけるGIS情報DB153は、汚損量蓄積DB151と位置情報DB152を併せ持った情報を有するように構成されている。よって、本実施の形態においてパイロット碍子の位置情報を知りたい場合は、位置情報DB152もしくはGIS情報153のどちらかにアクセスすることで位情報を取得することが可能である。
【0045】
図7に、GIS情報のマップの構成例を示す。GIS情報は図7に示すように、ある地図上の長さを単位正方形に区切り、一つの正方形にIDを割振り、地図上のある区域を指定するものである。さらにGIS情報はその位置以外にさまざまな属性情報を有することが可能である。本実施の形態では属性情報としてパイロット碍子の汚損状況を時系列に保存するのに利用する。
【0046】
図8に、環境情報DB154のデータ構成例を示す。パイロット碍子が設置されている場所の海からの距離、平地か丘陵地帯か、盆地かなどの地形、周辺建築物との関係の有無、および日時ごとに時系列に測定された風向きと風量を保存している。緯度・経度などの情報も保存されていても良い。
【0047】
図9および図10に、地域IDの構成を示す。地域IDはその地域に属する複数の碍子がリンクされており、さらに図6において示したように、さらに碍子の汚損量やその測定日などが保存されている。図10では、地域を指定するとその地域に属するパイロット碍子を出力できるような地域−パイロット碍子間の関係を表す図である。
【0048】
図10は、パイロット碍子に対して地域IDを含むGIS情報データベースのデータ構成例である。パイロット碍子を指定するとそのパイロット碍子が属する地域が判明する。
【0049】
図11は、予防的な水洗作業を行うに際して、水洗予定日順に水洗対象の地域、および、その地域のパイロット碍子の現在の汚損量、汚損量増加率、水洗対象汚損量閾値との差分などを保存する洗浄日程表を示す。
【0050】
次に各手段(機能)が行う動作をフローチャートを用いて以下に説明する。
[1.情報登録]
【0051】
図12は、位置情報および環境情報を碍子汚損地域予測システム1に登録する動作を示すフローチャートである。システムの管理者などの操作者はシステムに直接つながっているキーボードおよび画面を使用して位置情報および環境情報の情報登録を行う。まず、位置情報または環境情報の登録を要求する(S121b)。登録要求を受信した(S121a)碍子汚損地域予測システム1は、位置情報または環境情報の入力画面を送信する(S122a)。
【0052】
受信した(S242b)入力画面は画面上に表示され(S122b)、操作者が位置情報または環境情報を入力した後に登録ボタンなどを押下すると、入力した位置情報または環境情報は碍子汚損地域予測システム1に送信される(S123b)。登録を要求している位置情報または環境情報を受信した(S123a)碍子汚損地域予測システム1は、位置情報DB152または環境情報DB154に入力内容を保存する(S124a)。
【0053】
次に碍子汚損地域予測システム1は、全ての登録情報が登録されているかを判定し(S125a)、登録されていない場合は、ステップS122aから全ての登録情報の登録が終了するまで上記処理を繰り返す。全ての登録情報の登録が完了した場合は、登録完了を通知し(S126a)、処理を終了する。登録完了の通知を受けた画面には登録完了が表示される(S124b)。
【0054】
なお、情報の登録は、本実施の形態では碍子汚損地域予測システム1に直接つながっているキーボードおよび画面を使用したが、通信ネットワーク4を介して外部の端末より登録することも可能である。また同様に碍子汚損地域予測システム1のネットワーク内につながっている端末からも同様に情報の登録が可能である。
[2.GIS情報DBへの登録]
【0055】
図13は、GIS情報の登録を行う動作を示すフローチャートである。本動作はGIS情報登録手段139が行う動作である。まずパイロット碍子の位置情報と汚損量を位置情報取得ルーチン(S131)と汚損量取得ルーチン(S132)を起動することで取得する。取得した位置により対応するGIS情報を参照しGIS情報として位置情報と、汚損量の測定日と汚損量とを時系列に登録する(S133)。次に全てのパイロット碍子にて作業を行ったかを判定し(S134)、行っていない場合は、次のパイロット碍子を指定して(S135)ステップS141に戻り、全てのパイロット碍子の処理が終了するまで処理を繰り返す。全てのパイロット碍子の処理が終了した場合は(S134のyesのルート)処理を終了する。
[3.汚損量測定]
【0056】
図14は、汚損量の測定を行う動作を示すフローチャートである。本動作は、汚損量取得手段(機能)134が行う動作である。汚損量の測定は各地域のパイロット碍子の汚損量を汚損状況通知装置5が測定して通信ネットワーク4を介して通知される汚損量を取得し、汚損量蓄積DB151に登録する機能を有する。
【0057】
まず汚損状況通知装置5から計測した対象のパイロット碍子の汚損量を通信ネットワーク4を介して通知する。汚損状況通知装置5は、汚損量計測部57にてパイロット碍子の汚損量を計測し、その計測した値を中央処理演算部53に通知し、中央処理演算部53は送受信部52に対して汚損量を碍子汚損地域予測システム1に送信するように指示する。送受信部52は互いに定められた通信プロトコルに従って通信ネットワーク4を介して碍子汚損地域予測システム1の送受信部12と通信を行い汚損量を通知する(S141b)。
【0058】
碍子汚損地域予測システム1は、汚損量情報を受信し(S141a)、受信した対象のパイロット碍子の汚損量を取得する(S142a)。次に汚損量蓄積DB151に受信した汚損量を登録するために汚損量登録ルーチンを起動する(S143a)。本実施の形態においてエラー処理は述べていないが、問題があった場合は適切なエラー処理を行う。
[4.汚損量登録]
【0059】
図15は、汚損量を汚損量蓄積DB151に登録するルーチンである汚損量登録ルーチンが行う動作のフローチャートを示している。本動作は、汚損量登録手段(機能)135が行う動作である。汚損量登録ルーチンは指定された碍子IDを用いて汚損量蓄積DB151を参照して、対応のエリアに受信した日時に対応してその汚損量を登録する(S151)。
[5.位置情報取得]
【0060】
図16は、パイロット碍子の位置を取得する位置情報取得ルーチンの動作を示すフローチャートである。本動作は位置情報取得手段(機能)136が行う動作である。まず指定された碍子IDにて、位置情報DB152を参照し(S161)、位置情報としてパイロット碍子が設置されている場所の経度・緯度を取得する(S162)。
[6.環境情報取得および演算]
【0061】
図17は、パイロット碍子が設置されている場所の環境情報を取得するルーチンの動作を示すフローチャートである。本動作は環境情報取得演算手段(機能)137が行う動作である。まず指定された碍子IDにて、環境情報DB154を参照し(S171)、環境情報としてパイロット碍子が設置されている場所の海からの距離、平野・丘陵地帯・盆地などの地形、周辺建造物との関係、および予め定めた時間間隔で計測した風向きと風量のうち指定された日時の計測値を取得する(S172)。
【0062】
図18は、環境情報により、汚損量の増加率を求める環境情報演算ルーチンの動作を示すフローチャートである。本動作は環境情報取得演算手段(機能)137が行う動作である。まず、環境情報取得ルーチンを起動して登録されている環境情報を取得する(S181)。本実施の形態では、海からの距離、地形、周辺建造物との関係、および1時間ごとに収集された風向きと風量の情報である。
【0063】
取得した環境情報要素(海からの距離、地形、周辺建造物との関係、風向き、風量など)を環境パラメータとして(S182)、過去の汚損量蓄積データベース151を参照して環境パラメータで検索し汚損量の増加率を算出する(S183)。算出した汚損量の増加率を碍子IDごとに保存する(S184)。次に全てのパイロット碍子の処理を終了したか判定し、終了していない場合は、次のパイロット碍子を指定して(S185)ステップS181から全てのパイロット碍子の処理を終了するまで繰り返す。全てのパイロット碍子の処理が終了した場合は処理終了とする(S185のyesのルート)。本演算は周期的に行ったり、オンデマンドに行ったりして汚損量の増加率を予測するのに使用する。
[7.汚損地域分別]
【0064】
図19は、汚損地域として軽・中・重を決定するために行う動作を示すフローチャートである。本動作は汚損地域分別手段(機能)138が行う動作である。まずパイロット碍子の碍子IDを指定して汚損量を取得するために「汚損量取得ルーチン」を起動する(S191)。取得した汚損量により軽・中・重を判定するために、軽汚損地域の閾値と取得した汚損量を比較し(S192)、軽度であれば該当のパイロット碍子の地域を軽汚損地域に分類する(S193)。軽度でなければ、次に中度であるか中度の閾値と取得した汚損量を比較し(S194)、中度であれば街頭のパイロット碍子の地域を中汚損地域に分類する(S195)。
【0065】
中度でもない場合は重度ということで該当パイロット碍子の地域を重汚損地域として分類する(S196)。次に全てのパイロット碍子について作業を行ったかを判定し、終了していない場合は、次のパイロット碍子を指定して(S198)ステップS191から全てのパイロット碍子の処理を終了するまで繰り返す。全てのパイロット碍子の処理が終了した場合は処理を終了する(S197のyesのルート)。
[8.地域の水洗予定日作成]
【0066】
図20は、汚損度別に地域の活線碍子を水洗する日程の予測を立てる動作を示すフローチャートである。本動作は汚損地域洗浄順序作成手段(機能)142が行う動作である。まず、地域ごとに以下の動作を行う。地域内に存在するパイロット碍子を汚損度が高い順序に並べる(S201)。全ての地域に属する全てのパイロット碍子にて処理を行ったかを判定し、全て行っていない場合は、地域内の次のパイロット碍子を指定して(S203)、ステップS201から地域内の全てのパイロット碍子に対して処理を終了するまで繰り返す。
【0067】
地域内の全てのパイロット碍子の処理が終了した場合は(S202のyesのルート)、次に一番汚損度の高いパイロット碍子を抽出し、そのパイロット碍子もしくは地域のパイロット碍子の平均の汚損増加率を過去のデータと比較して算出する(S204)。例えば、該当のパイロット碍子の過去数ヶ月(年)の1ヶ月ごとの増加率の平均を求めることでも良い。もしくは図18にて環境情報による汚損量の増加率(汚損増加率)を用いて該当の一番汚損度の高いパイロット碍子の平均増加量か、地域の平均値を用いても良い。
【0068】
予防的な水洗作業の対象となる汚損量の閾値にいつ達するかを算出し四捨五入する(S205)。例えば、図21のBの計算式に示すように計算することで閾値を越えるのが約何ヵ月後であるか判定できる。その算出した月数を現在に日付に加えて予防的な水洗作業の予定日として登録する(S206)。次に上記作業を全ての地域で行ったかを判定し(S207)、行っていない場合は、次の地域を指定して(S208)、ステップS201より全ての地域の処理が終了するまで上記動作を繰り返す。全ての地域の処理が終了した場合は(S207のyesのルート)、算出した地域ごとの予防的な水洗作業予定日の表を作成し(S209)、処理を終了する。作成される表は図11に示すようなものであり、予防的な水洗作業を行う必要がある予定日、現在の最大の汚損量を示しているパイロット碍子の汚損量である現在の汚損量、汚損量の月ごとの増加率、水洗閾値との差分値などが記載され、担当者が判断しやすい形式のものとなる。
【0069】
本予定日はその地区で最大の汚損量を示すパイロット碍子に基づいて判定するものであり、実際の水洗作業を行うその地域の複数の活線碍子のほとんどは、そのパイロット碍子が示す汚損量より汚損度合いが少ないだろうと言うことを期待している。
本発明による第1の実施の形態は以上のように構成され動作する。
【0070】
本発明によれば、パイロット碍子の汚損状況を計測し、計測した汚損量を通信ネットワークを介して碍子汚損地域予測システムに通知することができるので、碍子汚損地域予測システムは取得した汚損状況によりパイロット碍子で代表される地域の汚損状況を分類することが可能となる。またGIS情報を使用する場合は、位置情報に加えてその他の属性として汚損量を時系列に保存することができるので容易に汚損量を管理することができる。またGIS情報は公開されたインタフェースであるので情報を有効に活用することが可能になる。また活線碍子の水洗作業が頻発する地域では、水洗装置が恒常的に使用できるので固定的に水洗装置を設置し遠隔操作を行うなどの対応を行うことができる。
【0071】
さらに、地区ごとに予防的に行う活線碍子の水洗作業の日程を立てることができるので、ベテランの経験に頼ることなく経験の浅い担当者でも活線碍子の水洗作業を担当することが可能となる。
【0072】
次に第2の実施の形態について以下に説明する。第2の実施の形態では、台風情報を気象システム3から取得し、取得した台風の気象情報により台風が通過する予定の地域のパイロット碍子の台風による汚損量の予測を立て、その汚損量が閾値に達する地域の活線碍子を抽出し、台風による汚損が発生する前に予防的な水洗作業を行うというものである。
【0073】
図22は、気象情報DB155の台風情報に関するデータ構成例を示す。本台風情報は気象システム3から直接取得するように構成されても良いし、操作者が気象システム3にログインし必要な情報を気象データ37から取得して気象情報DB155として保存させても良い。気象システム3とのインタフェースを有する場合は、気象システム3は気象データ37から台風に関する情報を抽出して、送受信部32に送信の指示を行い、送信部32は通信プロトコルに従って碍子汚損地域予測システム1の送受信部12と通信を行って抽出した台風情報を通知する。この場合は、中央演算処理部13内に記載していないが、気象システム3との通信を行う機能を有する手段が存在する。
【0074】
気象情報DB155は、台風を識別する台風IDごとにその年月日の定めた時刻ごとに台風の進行方向、進行速度、台風の現在位置、台風の強さ(最大風速)、台風の大きさ(強風域)、現在の雨量などを保存している。
【0075】
図23は、過去の台風によるパイロット碍子の汚損被害状況を保存する台風被害状況DB156のデータ構成例である。本情報は台風IDごとにその台風の前述した気象情報DB155へのリンクと、パイロット碍子の汚損度合いを保存するデータへのリンクなどを保存している。気象情報DB155へのリンクにアクセスすると過去の台風の年月日時刻ごとの進行方向、進行速度、大きさ、強さなどを取得することが可能である。
【0076】
パイロット碍子の汚損度合いへのリンクでは、汚損被害を受けた碍子の碍子IDとその台風による汚損量、台風の最接近距離、全体の雨量などが保存されている。この情報により、過去の雨量、最接近距離などの統計を取り、現在の台風の進行方向、進行速度、強さ、大きさ、降雨量などを過去の情報を保存している台風被害状況DB156と比較することで汚損量を予測することが可能である。
【0077】
図24は、現在の台風の情報から前記台風被害状況DB156を参照して時刻ごとに碍子の汚損量を予測して保存する台風塩害予測状況DB157のデータ構成例である。台風のIDごとに年月日および時刻ごとの塩害を受けると予測される碍子の碍子IDとその汚損量から構成されている。本実施の形態において汚損量は差分ではなく汚損量そのものである。時刻ごとの差分は時刻ごとに差を求めることによって求めることができる。
【0078】
次に台風による汚損の予測および台風による汚損を受ける前に碍子の台風時の予防的な水洗作業を行う地域の決定などの動作についてフローチャートを用いて説明する。
[9.台風による塩害予測]
【0079】
図25(a)は台風の塩害(汚損)を予測する台風塩害予測ルーチンの動作を示すフローチャートである。本動作は台風塩害予測手段140が行う動作である。まず気象情報DB155より台風情報を取得する(S251)。台風情報が有るかどうか判定し、無い場合は処理を終了する(S251のnoのルート)。台風情報が有った場合は、最新の台風情報としてその位置、進行方向、進行速度、強さ、大きさなどの属性情報を取得する(S252)。次に、強風域に存在する対象のMAPコードをGIS情報より抽出し、抽出したMAPコードに対して以下の動作を行う(S253)。該当のMAPコードの位置が強風域に入っているか、暴風域に入っているかによって、強風域、暴風域の、堆積予想値を図25(b)に示している台風情報変換テーブルのT251よりその相対位置から求め加算し、台風塩害情報DBに登録する(S254)。加算した汚損量の値が予防的水洗の閾値に達しているかどうか判定し(S255)、達していなければ何もしない(S255のnoのルート)。達している場合は、予防的水洗推奨地域として地図上、もしくは一覧に出力する(S256)。次に全対象のMAPコードをチェックしたかを判定し(S257)、終了していない場合は、次のMAPコードを指定して(S258)、ステップS254より全ての対象のMAPコードの処理が終了するまで繰り返し上記処理を行う。対象の全てのMAPコードに対しての処理が終了した場合は(S257のyesのルート)、本実施の形態では10分間待って(S259)から再度ステップS251から処理を継続する。前記10分間の値はシステム上で変更可能に構成されている。
[10.台風による水洗い対象地域の特定]
【0080】
図26は台風による汚損が予測される地域を決定する「予防的水洗地域決定ルーチン」の動作を示すフローチャートである。前述のように予測した台風の影響による汚損量から台風通過以前に予防的な水洗作業を行う必要がある地域を抽出するルーチンである。本動作は予防的水洗地域決定手段141が行う動作である。まず台風塩害予測状況DB157を参照して台風の影響による予測した汚損量が予め定めた汚損量以上であるかを判定する(S261)。
【0081】
汚損量が予め定めた閾値以上である場合は洗浄対象汚損地域にパイロット碍子IDとその位置情報などを保存する(S262)。次に全ての対象のパイロット碍子について処理を終了したかを判定する(S263)。終了していない場合は次のパイロット碍子を指定して(S264)ステップS261から全てのパイロット碍子の処理が終了するまで処理を繰り返す。全てのパイロット碍子の処理が終了した場合は処理を終了する(S263のyesのルート)。以上により台風により大きな被害を受けると予測される地域を特定する。
[11.水洗対象地域の順序付け]
【0082】
図27は、上記抽出した台風による影響にて大きな被害を受けると予測される地域を保存する洗浄対象汚損地域の内、汚損度の高い地域から予防的な水洗作業の順序を付与する「汚損地域洗浄順序決定ルーチン」の動作を示すフローチャートである。本動作は汚損地域洗浄順序決定手段142が行う動作である。まず、予防的水洗地域決定ルーチンで作成した洗浄対処汚損地域、または台風塩害予測ルーチンが作成した予防的水洗推奨地域から汚損量の多い順にパイロット碍子をキーとしてデータを並べ替える(S271)。
【0083】
並べ替えた情報を汚損地域の予防的な水洗作業の順序として洗浄対象汚損地域として再度保存する(S272)。次に全ての対象のパイロット碍子に対して処理を終了したかを判定し(S273)、終了していない場合は次のパイロット碍子を指定(S274)してステップS271から全ての対象のパイロット碍子の処理が終了するまで繰り返す。全ての対象パイロット碍子の処理が終了したら処理を終了する(S273のyesのルート)。
【0084】
本動作により台風による汚損被害が発生する地域を汚損度が大きい箇所から順に並べて予防的な水洗作業を行う順序を求める。本実施の形態では汚損どの多きものから並べ替えたが、その他の緊急度があれば汚損度以外に緊急度などの属性を持たせ、その緊急度または重要度などによって順序を変更したりすることが可能である。
【0085】
図28は、台風による汚損に対して、個別のパイロット碍子単位の水洗作業ではなく、地域として水洗を行うようにする動作を示すフローチャートである。本動作は汚損地域洗浄順序作成(機能)142が行う動作である。まず、予防的水洗地域決定ルーチンにて保存したパイロット碍子を汚損量の多い順に並べ替える(S281)。次に全ての対象のパイロット碍子について処理を終了したかを判定し、終了していない場合は、次の対象のパイロット碍子を指定し(S283)、ステップS281から全ての対象のパイロット碍子の処理が終了するまで上記動作を繰り返す。
【0086】
全ての対象のパイロット碍子の処理が終了した場合は、並べ替えた順序に従って以下の動作を行う(S284)。台風前に水洗作業を実施する順序を登録する地域順序エリアに、現在作業を行っているパイロット碍子が属する地域が登録されていないかを地域順序エリアを検索する(S285)。既に登録がある場合は、何もせずにステップS287へ進む。登録が無かった場合は、地域順序エリアの最後尾に現在作業を行っている対象のパイロット碍子が属する地域を地域IDにて登録する(S286)。
【0087】
次に全ての対象パイロット碍子について処理を終了したかを判定し(S287)、終了していない場合は、次の対象のパイロット碍子を指定し(S288)、ステップS285から全ての対象のパイロット碍子の処理が終了するまで処理を繰り返す。全ての対象のパイロット碍子の処理が終了した場合は、処理を終了する(S287のyesのルート)。
【0088】
本動作により、図29に示すように最優先の地域から降順で台風前に水洗作業を行う地域として地域順序エリアに登録される。活線碍子の水洗担当者は本地域順序エリアを見て順序良く効率的に水洗作業を行うことができる。
【0089】
本実施の形態によれば、台風の通過によって激しく汚損される活線碍子の地域を予測することができ、さらにその汚損度の順に地域を並べることができるので、台風の通過前に予防的な水洗作業が必要となる地域を汚損度が高い順に予防的な水洗作業することができる。また、予測される汚損度は台風の通過が接近している地域から高くなることが予想されるので順序良く予防的な水洗作業に回ることができることが期待できる。また、パイロット碍子個別ごとに水洗作業を行うのみでなく、地域単位で優先順序をもって台風の通過前に活線碍子の水洗作業ができるのでベテランの経験に頼らなく効率的に順序良く水洗作業を行うことができる。
【0090】
なお本実施の形態において、台風の進行方向および進行速度をパラメータとして算出することで、汚損度の順序を指定する際に、その予防的な水洗作業を行う地域に回る時刻も指定することが可能である。
【0091】
次に本発明による第3の実施の形態について図30および図31を用いて説明する。第3の実施の形態は活線碍子の予防的な水洗作業を行う際の各場所の碍子の洗浄位置および水の噴出量の強さを保存して、洗浄担当者に通知するものである。
【0092】
図30は、図5に示す位置情報DB152に活線碍子の洗浄位置および水の噴出量の強さを保存するものである。これらの情報により予防的な水洗作業の順序を作成する時に、その場所での洗浄位置および水の噴出量の強さを同時に作成することで活線碍子の予防的な水洗作業の担当者は洗浄位置および水の噴出量の強さを予め知っておくことができる。
[12.洗浄位置と水噴出量の強さ]
【0093】
図31は、図26に示す予防的水洗地域決定ルーチンに前記洗浄位置および水の噴出量の強さを追加したフローチャートである。図26と比較してステップS262の処理が図31のステップS312の処理に変更になっている部分が異なっている。 ステップS312では、洗浄対象汚損地域のデータにパイロット碍子IDとその位置情報および、上位に加えて水洗いの位置、水の噴出量の強さを保存するものである。
【0094】
本実施の形態によれば、予め活線碍子の水洗い洗浄位置と水の噴出量の強さを洗浄担当者が知ることができるので、予防的な水洗作業に要する時間を短縮することができ、活線碍子の予防的な水洗作業に要する水の量が最適化され、使用する水の量を節約することが可能となる。特に台風による予防的水洗いの場合は時間短縮により、よりたくさんの地域の活線碍子の予防的な水洗作業を行うことができる。
【0095】
次に本発明による第4の実施の形態について図32を用いて説明する。第4の実施の形態は台風の降雨量によっては予防的な水洗作業を行う必要が無いことがあることを考慮し、進行してくる台風の降雨量の予想により、過去の経験により予め定めた降雨量を超えている場合は、洗浄対象汚損地域から対象のパイロット碍子IDを対象外とするものである。
[13.台風の降雨量による水洗対策]
【0096】
図32は、図25(a)の台風塩害予測ルーチンに上記台風の降雨量による洗浄対象汚損地域からの削除を行う処理を加えたフローチャートである。図25(a)のフローチャートに比較してステップS321〜323の処理が追加されている。ステップS321では、台風情報により対象のパイロット碍子の位置における降雨量の確率と予測降雨量から台風による全降雨量を算出する。算出した予測降雨量が予め定めた降雨量以上であるか判定し(S322)、予め定めた降雨量以上である場合は経験よりその地域の活線碍子の予防的な水洗作業は行わないこととし、洗浄対象汚損地域から外す(S323)。予め定めた降雨量以上でない場合は何もしない。
【0097】
本実施の形態によれば、台風が多くの雨を伴う台風と予測される場合は、洗浄対象汚損地域であっても予防的な水洗作業の対象から外すことが可能となるので、効率的に予防的な水洗作業の対象地域を回ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係わる碍子汚損地域予測システムの機能ブロック図である。
【図2】本発明の第1および第2の実施の形態に係わる碍子汚損地域予測システムの動作概略を示す図である。
【図3】本発明の第1および第2の実施の形態に係わる碍子汚損地域予測システムのネットワーク構成図である。
【図4】図1の汚損量蓄積DBのデータ構成例である。
【図5】図1の位置情報DBのデータ構成例である。
【図6】図1のGIS情報DBのデータ構成例である。
【図7】図1のGIS情報DBのマップの構成例である。
【図8】図1の環境情報DBのデータ構成例である。
【図9】本発明の第1の実施の形態に係わる地域の構成例である。
【図10】図1のGIS情報DBのデータ構成例である。
【図11】本発明の第1の実施の形態に係わる洗浄日程表である。
【図12】図1の情報登録手段が行う処理手順を示すフローチャートである。
【図13】図1のGIS情報登録手段が行う処理手順を示すフローチャートである。
【図14】図1の汚損量取得手段が行う処理手順を示すフローチャートである。
【図15】図1の汚損量登録手段が行う処理手順を示すフローチャートである。
【図16】図1の位置情報取得手段が行う処理手順を示すフローチャートである。
【図17】図1の環境情報取得演算手段が行う処理手順を示すフローチャートである。
【図18】図1の環境情報取得演算手段が行う処理手順を示すフローチャートである。
【図19】図1の汚損地域分別手段が行う処理手順を示すフローチャートである。
【図20】本発明の第1の実施の形態に係わる地域ごとの水洗作業の日程を決定する処理手順を示すフローチャートである。
【図21】図20で使用する数式の例である。
【図22】本発明の第2の実施の形態に係わる図1の気象情報DBのデータ構成例である。
【図23】本発明の第2の実施の形態に係わる図1の台風被害状況DBのデータ構成例である。
【図24】本発明の第2の実施の形態に係わる図1の台風塩害予測状況DBのデータ構成例である。
【図25】本発明の第2の実施の形態に係わる台風塩害予測手段が行う処理手順を示すフローチャート(図25(a))と、台風情報変換テーブルのデータ構成例(図25(b))である。
【図26】本発明の第2の実施の形態に係わる予防的水洗地域決定手段が行う処理手順を示すフローチャートである。
【図27】本発明の第2の実施の形態に係わる汚損地域洗浄順序作成手段が行う処理手順を示すフローチャートである。
【図28】本発明の第2の実施の形態に係わる台風時の汚損地域洗浄順序作成の処理手順を示すフローチャートである。
【図29】本発明の第2の実施の形態に係わる地域順序エリアのデータ登録例である。
【図30】本発明の第3の実施の形態に係わる位置情報DBのデータ構成例である。
【図31】本発明の第3の実施の形態に係わる予防的水洗地域決定手段が行う処理手順を示すフローチャートである。
【図32】本発明の第4の実施の形態に係わる台風塩害予測手段が行う処理手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0099】
1 碍子汚損地域予測システム
3 気象システム
4 通信ネットワーク
5 汚損状況通知装置
12 32 52 送受信部
13 33 53 中央演算処理部
15 35 55 入力部
16 36 56 表示部
14 記憶部
131 送受信処理手段
132 入出力処理手段
133 情報登録手段
134 汚損量取得段
135 汚損量登録手段
136 位置情報取得手段
137 環境情報取得演算手段
138 汚損地域分別手段
139 GIS情報登録手段
140 台風塩害予測手段
141 予防的水洗地域決定手段
142 汚損地域洗浄順序作成手段
151 汚損量蓄積(データベース)DB
152 位置情報(データベース)DB
153 GIS情報
154 環境情報(データベース)DB
155 気象情報(データベース)DB
156 台風被害状況(データベース)DB
157 台風塩害予測状況(データベース)DB
37 気象データ
57 汚損量計測部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信ネットワーク介してパイロット碍子の汚損量を取得する汚損量取得手段と、
前記パイロット碍子汚損量を時系列に汚損量蓄積データベースに蓄積する汚損量登録手段と、
パイロット碍子が設置されている位置情報を保存する位置情報データベースより、位置情報を取得する位置情報取得手段と、
パイロット碍子の設置環境情報を保存する環境情報データベースより環境情報を取得する環境情報取得演算手段と、
前記汚損量蓄積データベースを用いて汚損量の度合い別に地域を分別する汚損地域分別手段と、
を備えたことを特徴とする碍子汚損地域予測システム。
【請求項2】
前記位置情報はGIS情報であり、
前記GIS情報に、位置情報と付加情報を登録するGIS情報登録手段を備え、
前記位置情報取得手段は、前記GIS情報よりパイロット碍子の位置情報および付加情報を取得することを特徴とする請求項1に記載の碍子汚損地域予測システム。
【請求項3】
気象情報を保存する気象情報データベースより台風情報を取得し、位置情報データベースより碍子の位置情報を取得し、汚損量蓄積データベースより碍子の汚損量を取得し、前記台風情報、碍子の位置情報および碍子の汚損情報により台風による塩害の被害状況を予測する台風塩害予測手段と、
を備えたことを特徴とする請求項1または2に記載の碍子汚損地域予測システム。
【請求項4】
前記気象情報データベースは、通信ネットワークを介して取得することを特徴とする請求項3に記載の碍子汚損地域予測システム。
【請求項5】
前記汚損地域分別手段より分別されたパイロット碍子の地域別汚損状況と、前記台風塩害予測手段が予測した塩害予測状況と、台風による過去のパイロット碍子の被害状況を保存する台風被害状況データベースとを参照することで、予測される台風による被害が予め定めた被害の度合いを越える洗浄対象汚損地域を特定する予防的水洗地域決定手段と、
を備えたことを特徴とする請求項4に記載の碍子汚損地域予測システム。
【請求項6】
前記台風塩害予測手段は、定めた時刻ごとに塩害予測を行い、その結果を台風塩害予測状況データベースに保存し、
前記予防的水洗地域決定手段は、前記台風塩害予測状況データベースを用いて予防的な水洗作業を行う必要のある地域の洗浄順序を決定することを特徴とする請求項5に記載の碍子汚損地域予測システム。
【請求項7】
前記台風塩害予測手段は、取得した台風情報により降雨量を予測し、
前記予防的水洗地域決定手段は、前記予測した降雨量が予め定めた閾値以上であれば前記特定した洗浄対象汚損地域であっても予防的な水洗作業を行わないことを決定することを特徴とする請求項5に記載の碍子汚損地域予測システム。
【請求項8】
前記分別された汚損地域の情報より、前記汚損地域の碍子の予防的な水洗作業の順序を作成する汚損地域洗浄順序作成手段と、
を備えたことを特徴とする請求項1に記載の碍子汚損地域予測システム。
【請求項9】
前記位置情報データベースに、碍子の予防的な水洗作業の際の位置関係と水洗の強さを保存し、
前記汚損地域洗浄順序作成手段は、前記位置情報より碍子の予防的な水洗作業の際の位置関係と水洗いの強さを取得して、前記作成した碍子の予防的な水洗作業の順序ごとに追記して作成する
ことを特徴とする請求項8に記載の碍子汚損地域予測システム。
【請求項10】
汚損量と風速情報から水洗可能な時間を算出する水洗推奨時間判定手段を備えることを特徴とする請求項3ないし7のいずれか一に記載の碍子汚損地域予測システム。
【請求項11】
通信ネットワーク介してパイロット碍子の汚損量を取得する汚損量取得ステップと、
前記パイロット碍子汚損量を時系列に汚損量蓄積データベースに蓄積する汚損量登録ステップと、
パイロット碍子が設置されている位置情報を保存する位置情報データベースより、位置情報を取得する位置情報取得ステップと、
パイロット碍子の設置環境情報を保存する環境情報データベースより環境情報を取得する環境情報取得演算ステップと、
前記汚損量蓄積データベースを用いて汚損量の度合い別に地域を分別する汚損地域分別ステップと、
を含むことを特徴とする碍子汚損地域予測方法。
【請求項12】
碍子の汚損予測を行うコンピュータ上で動作するプログラムであって、
通信ネットワーク介してパイロット碍子の汚損量を取得する汚損量取得処理と、
前記パイロット碍子汚損量を時系列に汚損量蓄積データベースに蓄積する汚損量登録処理と、
パイロット碍子が設置されている位置情報を保存する位置情報データベースより、位置情報を取得する位置情報取得処理と、
パイロット碍子の設置環境情報を保存する環境情報データベースより環境情報を取得する環境情報取得演算処理と、
前記汚損量蓄積データベースを用いて汚損量の度合い別に地域を分別する汚損地域分別処理と、
をコンピュータ上で動作させることを特徴とする碍子汚損地域予測プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【公開番号】特開2008−123805(P2008−123805A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−305564(P2006−305564)
【出願日】平成18年11月10日(2006.11.10)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】