説明

磁性体マークを備える帳票体

【課題】本発明は、形成される所定数の磁性体マークのうち、所定の磁性体マークが着磁される帳票体に関し、搬送される帳票体に対して着磁された磁性体マークを確実に検知可能とさせることを目的とする。
【解決手段】帳票体11の帳票基部12に、搬送方向に対する垂直方向に複数の長方形状の磁性体マーク13A〜13Fが連設され、所定の磁性体マーク13A〜13Fにおける長手方向で磁化方向が形成させ、一方極(N極)側に非着磁領域13A−1を形成させて磁気マーク13Aとさせる構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、形成される所定数の磁性体マークのうち、所定の磁性体マークが着磁される帳票体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、例えば帳票体を封緘体に封入した後に、個別先に配送することが行われ、封緘体に、実際に個別先毎の帳票体が封入されているか、異なる帳票体が混在していないかを検査することが行われている。このような場合も含めて帳票体を検査するにあたって当該帳票体を確実に認識する必要がある。
【0003】
従来、封緘体に封入した帳票体のマッチングを行うために、当該帳票体にそれぞれマッチングのためのマークや符号を付しておき、マークや符号を認識することでマッチングの正否を判別することが一般的に行われている。このような帳票体に付すマッチングのためのマークや符号について、以下の特許文献1で提案されているものがある。
【0004】
上記特許文献1では、シートに照合記号(バーコード)を付すもので、当該照合記号が金属または金属粉入りインキで印刷し、当該照合記号をX線透過による検査装置により読み取ってマッチング検査を行うことが提案されている。また、インキの他に、導電粉末入りのトナーを定着させる技術も提案されている。
【0005】
しかしながら、上記特許文献1で提案されているように、シートに照合記号(バーコード)を形成させるに際して、X線で検出可能な金属または金属粉入りインキで印刷を行うことによって可変的データを容易に照合記号として形成させることができるものであるが、インキ内に含ませる金属または金属粉の量はインキという特性上限度があって形成シート上に何枚かの介在物があると、下層の照合記号が認識されないか、または誤認識する場合も生じてくると共に、X線を使用するシステムは高価となる。
【0006】
一方、X線ではなく、磁性体で内容物を検知する技術が以下の特許文献2で提案されている。当該特許文献2は、自己の有する保磁力を越える交番磁界を与えたときに急峻な磁化反転を生じる強磁性体粉末を含有したインキまたは塗料を、包装用箱に収納される内容物に印刷または塗布して検知用マークを設けるというものである。
【0007】
上記特許文献2で提案されているものは、内容物に設けた検知用マークに対して、両側に当該強磁性体の保持力を超える交番磁界を印加する発生用コイルと検知用コイルとを配置して検知用マークを検知するものであるから、これを帳票体のマッチング等に適用することは高価になることもあって現実的ではない。
【0008】
【特許文献1】特許第3098557号公報
【特許文献2】特開2003−285808号公報
【0009】
上記特許文献1、2に鑑みて、本出願人は、マッチング用マークを磁性体で形成し、これを磁気センサにより非接触で検知することを想到したものである。
【0010】
そこで、図5に本発明の前提となる帳票体の一例の説明図を示すと共に、図6及び図7に図5における帳票体のマーク検知の説明図を示す。なお、図7(B)、(C)は、磁気マーク(111A)を8mm×3mmの長方形状とし、保持力1500(Oe:単位エルステッド)の磁性体インキに4000(G:ガウス)の残留磁束密度で着磁させた場合として(図6(B))、封緘体105より高さ3mmの位置でアイチ・マイクロ・インテリジェント社製のMIセンサ(磁気センサ)の検知状態を出力値(2.5Vを接地(GND))で示したものである。
【0011】
図5は、封緘体に封入させる帳票体を示したもので、図5(A)において、連続帳票体101が搬送方向両側にマージナル部102A,102Bを形成させ、個片帳票体103A〜103Cで構成する一の帳票体103が連続されたものであって、個片帳票体103A〜103Cの何れかに、その一方端のマーク形成領域に、磁性体粉が混入されたインキで印刷により例えば6つの磁性体マーク111A〜111Fが搬送方向に対する垂直方向(幅方向)に連設され、帳票体103毎に何れかの磁性体マーク111A〜111Fが着磁される。また、何れかの個片帳票体103A〜103Cの所定箇所に住所、氏名、識別符号等が印刷される。
【0012】
上記連続帳票体101は、搬送中の一工程でマージナル部102A,102Bが除去され、また、単一の帳票体103に切断されて、折込線104で例えばZ折りで折曲される。このような折曲された帳票体103が、図5(B)に示されるように、封緘体105に封入されるもので、このときに当該封緘体105の窓部106に上記印刷した住所、氏名、識別符号等が表出されるように帳票体103が封入される。この状態で当該帳票体103に形成された磁性体マーク111A〜111Fの何れかに着磁された磁性体マーク(以下、磁気マークという)の位置と、当該封緘体105の窓部106より表出される認識符号を認識してマッチングが行われるものである。
【0013】
上記マッチングは、図6(A)に示すように、封入工程の後に搬送手段121により図示しない撮像位置まで搬送されて窓部106より表出された識別符号が撮像、認識され、さらにマーク検出位置まで搬送されて配置されたマーク検知部123により何れかの着磁された磁性体マーク111A〜111Fの磁気マークが検知され、認識された識別符号と検知された磁気マークの位置でマッチングが行われるものである。
【0014】
すなわち、上記マーク検知部123は、搬送されてくる封緘体105に封入された帳票体103の磁性体マーク111A〜111Fに対してそれぞれ磁気センサ131〜136で対応されており、何れかの磁気センサ131〜136が検知することで磁気マークの位置が判別されるものである。ところで、着磁された磁性体マーク(ここでは、磁気マーク111Aとする)は、図6(B)に示すように、N極端部とS極端部とにおいて磁力(絶対値)が最大となり、各端部からの距離にしたがって徐々に磁力が低下し、N極とS極との切り替わり目で磁力が最小(ゼロ)になるという性質がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、図6(A)に示すように、搬送手段121上で帳票体103が搬送されたときに、上下方向にいわゆるバタツキを生じた場合、図7(A)〜(C)に示すように、当該バタツキによって磁気マークと磁気センサが接近すると磁気マークの両端から遠ざかる方向に対して当該磁気センサの出力値が広がりをみせ、隣接する磁性体マークあるいは磁気マークに影響を及ぼして何れの検知かを判別できなくなるという問題がある。
【0016】
そこで、本発明は上記課題に鑑みなされたもので、搬送される帳票体に対して着磁された磁性体マークを確実に検知可能とさせる磁性体マークを備える帳票体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決するために、請求項1の発明では、複数の長方形状の磁性体マークが、後に搬送される際の搬送方向に対する垂直方向に連設状態で形成され、所定の磁性体マークに着磁させることで磁気マークとし、当該磁気マークを対応の磁気センサにより非接触で検知させる磁性体マークを備える帳票体であって、前記磁気マークは、前記磁性体マークの長手方向で磁化方向が形成され、一方極側に非着磁領域が形成される構成とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、搬送方向に対する垂直方向に複数の長方形状の磁性体マークが連設され、所定の磁性体マークにおける長手方向で磁化方向が形成され、一方極側に非着磁領域が形成される構成とすることにより、非着磁領域に隣接する極の磁力が低下されることから、搬送時の上下方向へのバタツキで当該磁気マークと磁気センサとが接近しても隣接する磁気マーク若しくは着磁されない磁性体マークと判別できなくなるということを回避することが可能となり、着磁された磁性体マークの磁気マークを確実に検知可能とさせることができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の最良の実施形態を図により説明する。
図1に、本発明の帳票体の一部を示した構成図を示す。図1(A)において、例えば前述の図5(A)に示すような単一の帳票体11(103)のZ折りされた個片帳票体(103B)が示され、その帳票基部12の例えば端部の磁性体マーク形成領域に、一例として、それぞれ長方形状の磁性体マーク(13A〜13F)が後に搬送される際の搬送方向に対する垂直方向に連設状態で形成される。当該磁性体マーク13A〜13Fは、例えば印刷インキに磁性体粉を混入させて一般的な印刷技術により形成することができる。
【0020】
そして、何れかの磁性体マーク13A〜13F(ここでは、磁性体マーク13Aとする)は、着磁されることによって磁気マークとされるものであり、図1(B)に示すように、当該磁性体マーク13Aの長手方向で磁化方向を形成するように着磁され、一方極側(ここでは、N極側)に非着磁領域13A−1が形成される。当該磁気マーク13Aの着磁された部分を後述のマーク検知システムにおいて帳票体11が搬送されたときに磁気センサが検知するものである。
【0021】
上記非着磁領域13A−1は、シールドとしての役割を為し、当該N極からの磁界の拡散を抑制させる役割を為す。したがって、N極の磁力が減少し、S極の磁力は維持されるものである(当該磁力の磁気センサによる検知は図4で説明する)。当該非着磁領域13A−1は、例えば、磁性体マーク13Aを8mm×3mmとした場合に、長手方向の一方端(N極側)より1mmの範囲で形成される。なお、着磁させる際の磁力値は、検知する磁気センサとの位置や搬送時の上下方向のバタツキに対応させて決定される(後述する)。
【0022】
ここで、図2に、図1における磁性体マークに対する着磁の説明図を示す。図2(A)において、磁気記録ヘッド21は誘導型の一般的な構成のものであり、コア22にコイル23が巻回され、当該コア22の端部が微小ギャップGを有している。そして、コイル23を通電することにより、極性に応じてギャップGの両端が電極24A(N極、S極),24B(S極、N極)となり、磁化方向が決定される。
【0023】
上記のような磁気記録ヘッド21により、上記帳票体11に形成された磁性体マーク13A〜13Fのうち、ここでは磁性体マーク13Aに着磁を行う場合、図2(B)に示すように、当該帳票体11(磁性体マーク13A)の搬送方向に対する垂直方向(図1(A))に磁気記録ヘッド21の2極の電極24A,24Bを併設させ、当該電極24A,24Bに対して垂直方向に当該磁性体マーク13Aの短辺側より通過させる。
【0024】
例えば、図2(B)に示すように、電極24AをN極、電極24BをS極としてコイル23を通電させ、当該磁性体マーク13Aを短辺側より通過させる、ギャップGが当該磁性体マーク13Aの非着磁領域とする後端部分(本実施形態では残り1mmの部分)で通電を停止させることで、図2(C)に示すように、非着磁領域13A−1がN極側に形成された磁気マーク13Aが形成されるものである。
【0025】
続いて、図3に、本発明の帳票体のマッチングを行う際のマーク検知システムの一部を示した説明図を示す。図3はマーク検知システム31の一部を示したもので、例えばベルト搬送の搬送手段32における搬送方向上の所定位置にマーク検知部33が配置され、当該マーク検知部33は、上記帳票体11の各磁性体マーク13A〜13Fに対応させたそれぞれの磁気センサ34A〜34Fを備える。
【0026】
当該磁気センサ34A〜34Fとしては、例えば、MR(磁気抵抗効果)センサ、感磁媒体に高周波電流を通電したときに外部磁界により磁気インピーダンスが大きく変化するMI効果(高周波表皮効果)を利用した磁気インピーダンスセンサ(MIセンサ)を採用することができる。
【0027】
一方、上記搬送手段32上では封緘体41が順次搬送されるもので、当該封緘体41には、窓部42が設けられて図1(A)に示す個片帳票体を備える帳票体11が封入されたものである。磁気センサ34A〜34Fの当該磁性体マーク13A〜13Fに対する対応位置としては、例えば各磁性体マーク13A〜13Fの中心位置が搬送方向上で磁気センサ34A〜34Fと重なる位置とさせるものである。
【0028】
そこで、図4に、図3におけるマーク検知システムの磁気センサ検知の説明図を示す。図4においては、図7と同様に、磁気マーク(13A)を8mm×3mmの長方形状として非着磁領域13A−1を長手方向1mmで形成し(図4(A))、他の磁化領域を保持力1500(Oe)の磁性体インキに4000(G:ガウス)(1500(G)以上)の残留磁束密度で着磁させた場合として(図1(B))、封緘体41より高さ3mmの位置でアイチ・マイクロ・インテリジェント社製のMIセンサ(磁気センサ)の検知状態を出力値(2.5Vを接地(GND))で示したものである。
【0029】
図4(B)、(C)は、上記磁気センサを磁気マーク13Aに対して中央より1mmずつずらせて検知させた場合のセンサ出力値であり、図に示すように、上記非着磁領域13A−1は、連続する極(図4(A)ではN極)の磁力(磁界)の拡散を抑制するように作用し、隣接する磁気マーク(磁性体マーク)への磁力による影響を軽減して確実に区別することができるものである。このことは隣接する磁気マーク(着磁されない磁性体マーク)と近接させて配置しても隣接の磁気マーク若しくは磁性体マークを区別することができ、検知対象の磁気マーク13Aを確実に検知することができることを意味する。
【0030】
このように、検知対象の帳票体(封緘体)の搬送による上下方向のバタツキで当該磁気マークと磁気センサとが接近しても隣接する磁気マーク若しくは着磁されない磁性体マークを区別することが可能となり、着磁された磁性体マークの磁気マークをより確実に検知可能とさせることができる。このことにおいても上記同様に、磁性体マークの大きさを小さくでき、また、磁性体マーク同士をより接近させて配置させることが可能となり、配置される帳票体の大きさに対してより数多く配置させて当該帳票体に対する識別の情報量を多くさせることもできるものである。
【0031】
なお、上記実施形態では、非着磁領域をN極側に形成させた場合を示したが、S局側に形成しても同様の作用効果を奏することができるものである。また、本発明の構成では磁気マークに対する磁気センサの検知幅が狭まることとなるが、例えば搬送時に封緘体内で帳票体が搬送方向に対して垂直方向に位置ずれが生じる場合には、一の磁気マーク(磁性体マーク)に対して複数の磁気センサを組として配置させることで対処することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明の磁性体マークを備える帳票体は、当該帳票体のマッチングのために磁気センサで検知される磁性体マークが形成される場合に適する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の帳票体の一部を示した構成図である。
【図2】図1における磁性体マークに対する着磁の説明図である。
【図3】本発明の帳票体のマッチングを行う際のマーク検知システムの一部を示した説明図である。
【図4】図3におけるマーク検知システムの磁気センサ検知の説明図である。
【図5】本発明の前提となる帳票体の一例の説明図である。
【図6】図5における帳票体のマーク検知の説明図(1)である。
【図7】図5における帳票体のマーク検知の説明図(2)である。
【符号の説明】
【0034】
11 帳票体
12 帳票基部
13 磁性体マーク(磁気マーク)
13A−1 非着磁領域
21 磁気記録ヘッド
24 電極
31 マーク検知システム
32 搬送手段
33 磁性体マーク検知部
34 磁気センサ
41 封緘体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の長方形状の磁性体マークが、後に搬送される際の搬送方向に対する垂直方向に連設状態で形成され、所定の磁性体マークに着磁させることで磁気マークとし、当該磁気マークを対応の磁気センサにより非接触で検知させる磁性体マークを備える帳票体であって、
前記磁気マークは、前記磁性体マークの長手方向で磁化方向が形成され、一方極側に非着磁領域が形成されることを特徴とする磁性体マークを備える帳票体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−113349(P2009−113349A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−289312(P2007−289312)
【出願日】平成19年11月7日(2007.11.7)
【出願人】(000110217)トッパン・フォームズ株式会社 (989)
【Fターム(参考)】