説明

磁性発振素子、磁気センサ、磁気ヘッドおよび磁気再生装置

【課題】エネルギー効率が良好で高い磁気発振出力が得られる磁性発振素子を提供する。
【解決手段】第1の磁気共鳴周波数f1を有する第1の磁気共鳴層と、前記第1の磁気共鳴周波数f1よりも大きい第2の磁気共鳴周波数f2を有する第2の磁気共鳴層と、前記第1の磁気共鳴層と前記第2の磁気共鳴層との間に挟まれた非磁性層と、前記第1および第2の磁気共鳴層ならびに前記非磁性層の膜面に対して垂直に電流を通電する一対の電極を有し、前記2つの磁気共鳴周波数の差(f2−f1)が前記第1の磁気共鳴層が有する共鳴線幅の半分よりも大きく、かつ前記2つの磁気共鳴周波数の比f2/f1が1.6以下であることを特徴とする磁性発振素子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁性発振素子、ならびに磁性発振素子を用いた磁気センサ、磁気ヘッドおよび磁気再生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ハードディスクドライブの磁気ヘッドには、スピンバルブ(spin-valve)膜を含むGMR素子(Giant MagnetoResistive element)を用いることが一般化している。スピンバルブ膜は、磁化自由層(フリー層)、非磁性層(スペーサ層)、磁化固着層(ピン層)および反強磁性層を積層した構造を有する。スピンバルブ膜では、反強磁性層との交換バイアスによりピン層の磁化を固着させ、外部磁場によってフリー層の磁化のみを回転させ、ピン層とフリー層の磁化方向の相対的な角度を変化させ、大きな磁気抵抗効果(MR変化率)を得ることができる。このため、磁気記録媒体に記録されている磁気信号を高感度に検出できる。
【0003】
しかし、磁気記録媒体の高密度化に伴って記録ビットのサイズが小さくなり、記録ビットからの漏れ磁束すなわち信号磁界の量がますます減少している。また、いわゆる熱雑音によるS/N比の低下が顕著に現れるようになってきている。このため、より低磁界でも高感度かつ高S/N比で信号磁界を検出できる新たな素子を開発することが大きな技術課題となっている。
【0004】
一方、スピンバルブ膜と同様の構造を有する多層人工格子膜において、その膜面に垂直に電流を流したときの磁化の運動を利用するスピン波発振器が提案されている(非特許文献1参照)。このスピン波発振器は、第1の強磁性層/非磁性層/第2の強磁性層の3層構造を含んでいる。第1の強磁性層はある方向に固着された磁化を有する。第2の強磁性層の磁化は自由に回転できる。上記3層構造の膜面に垂直に電流を流すと、電子が第1の強磁性層内を通過する際にスピン偏極し、その偏極電流が第2の強磁性層に注入され、電子のスピンと第2の強磁性層内の磁化とが相互作用してスピン波を励起する。このようなスピン波発振器が発生するスピン波の外部磁場依存性を利用すれば、新たな原理による高感度な磁気センサを開発できる可能性がある。
【0005】
しかし、上記従来技術では、2層の強磁性層のうち第1の強磁性層の磁化が固着されており、スピン波発振に寄与するのは第2の強磁性層のみであるため出力が小さい。また、従来技術では、第1および第2の強磁性層が有する磁化の相対角度が磁気発振の際に時々刻々変化するため、2つの磁化間に働く磁気双極子相互作用によるエネルギー損失が避けられず、エネルギー効率が悪いという問題がある。
【非特許文献1】Physical Review B. Volume 54, 9353 (1996)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、エネルギー効率が良好で高い磁気発振出力が得られる磁性発振素子、ならびにこのような磁性発振素子を用いた磁気センサ、磁気ヘッドおよび磁気再生装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る磁性発振素子は、第1の磁気共鳴周波数f1を有する第1の磁気共鳴層と、前記第1の磁気共鳴周波数f1よりも大きい第2の磁気共鳴周波数f2を有する第2の磁気共鳴層と、前記第1の磁気共鳴層と前記第2の磁気共鳴層との間に挟まれた非磁性層と、前記第1および第2の磁気共鳴層ならびに前記非磁性層の膜面に対して垂直に電流を通電する一対の電極を有し、前記2つの磁気共鳴周波数の差(f2−f1)が、前記第1の磁気共鳴層が有する共鳴線幅の半分よりも大きく、かつ前記2つの磁気共鳴周波数の比f2/f1が1.6以下であることを特徴とする。
【0008】
本発明の他の態様に係る磁気センサは、上述した磁性発振素子と、通電により励起される、前記第1および第2の磁気共鳴層が有する磁化による共鳴周波数の揃った歳差運動に基づく発振出力の外部磁場に依存した変化を抵抗変化として検出する手段とを有することを特徴とする。
【0009】
本発明のさらに他の態様に係る磁気ヘッドは、上述した磁性発振素子と、前記磁性発振素子にバイアス磁界を印加して前記第1および第2の磁気発振層の磁区を制御する磁区制御層と、前記磁性発振素子の膜面に対して垂直に電流が通電されるように設けられた絶縁層と、前記磁性発振素子を挟む1対の磁気シールド層とを有することを特徴とする。
【0010】
本発明のさらに他の態様に係る磁気再生装置は、上述した磁気ヘッドと、磁気記録媒体とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、エネルギー効率が良好で高い磁気発振出力が得られる磁性発振素子を提供することができ、さらにこのような磁性発振素子を用いた高感度な磁気センサ、磁気ヘッドおよび磁気再生装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について説明する。
本発明の実施形態に係る磁性発振素子は、2層の磁気共鳴層と、これらの2層の磁気共鳴層間に挟まれた1層の非磁性層との積層膜を含み、膜面に垂直に通電することにより磁気発振する。2層の磁気共鳴層はいずれも磁化が固着されていない磁化自由層である。本発明の実施形態に係る磁性発振素子では、発振の際に2つの磁気共鳴層の磁化が位相を揃えて歳差運動する。以下、この位相を揃えた歳差運動現象について詳述する。
【0013】
まず、磁化の歳差運動現象に関わる重要な物理量である磁気共鳴周波数について説明する。磁性体の動的特性を調べる手段として、マイクロ波による強磁性共鳴吸収現象が知られている。これは、磁性体にマイクロ波(振動磁場)を印加することによって、磁化の歳差運動が励起される現象である。この現象は、マイクロ波のエネルギーが、どの程度まで磁化の運動に吸収されるかを調べることで観測できる。
【0014】
図1は、互いに異なる2つの磁性体が有する磁化の磁気共鳴吸収ピークを模式的に示したものである。磁化固有の周波数とマイクロ波の周波数が一致するときに、歳差運動が最も強く励起され、共鳴吸収ピークを生じる。図1では、2つの磁性体が有するそれぞれの共鳴吸収ピークP1、P2を示している。共鳴吸収ピークを与える周波数が、磁気共鳴周波数fR(図1ではf1、f2と表示している)である。共鳴吸収ピークの代表的な特性として半値幅である共鳴線幅ΔfR(図1ではΔf1、Δf2と表示している)がある。これは、磁化のエネルギー損失に関わる量である。fRおよびΔfRは、磁化が感じる磁場に関係している。本発明の実施形態における磁気共鳴層のような薄膜状の強磁性体の場合、fRおよびΔfRはほぼ次式で見積もることができる。
【0015】
【数1】

【0016】
ここで、γ(≒1.76×107rad/(Oe・sec))は磁気回転比、αはギルバート減衰係数で磁化のエネルギー損失に関わる量である。また、4πMs(Ms:飽和磁化)は膜面垂直方向の反磁場、HKは異方性磁場、Hは反磁場および異方性磁場以外のバイアス磁場や記録媒体からの磁場などの外部磁場を表す。これらの諸量は磁性材料、膜厚、外的磁場に依存するため、fRおよびΔfRも磁性材料、膜厚、外部磁場に依存して変化する。
【0017】
図2に模式的に示すように、本発明の実施形態に係る磁性発振素子は、第1の磁気共鳴層1、非磁性層2、および第2の磁気共鳴層3の積層膜を含む。第1の磁気共鳴層1が有する磁化をM1、第2の磁気共鳴層2が有する磁化をM2とする。磁気共鳴層1固有の磁気共鳴周波数をf1、磁気共鳴層2固有の磁気共鳴周波数をf2とする。上述したように、磁気共鳴周波数は磁性材料、膜厚、外的磁場に依存するので、第1および第2の磁気共鳴層1、3におけるこれらの要素が異なればf1≠f2である。ここでは、f1<f2とする。また、膜面垂直方向への通電による電流密度をJとする。図2のように第1の磁気共鳴層1から第2の磁気共鳴層3へ電流を流す場合をJ>0とする。図2に示した積層膜に対して膜面垂直方向に通電すると、2つの磁化M1、M2は下記(3)式の形のトルクを互いに及ぼし合って相互作用する。
【0018】
【数2】

【0019】
(3)式はベクトル積を表している。aはJに比例し、その相互作用トルクの大きさを定める。J=0であればa=0である。また、i=1,2であり、Γ1はM2がM1に及ぼすトルク、Γ2はM1がM2に及ぼすトルクである。(3)式のトルクは、スピントランスファートルクと呼ばれ、スピン偏極電流と角運動量保存則を起源としており、 Slonczewski によって見出されたものである(J. Magn. Magn. Mater. 159, L1 (1996))。
【0020】
多くの場合、磁化の運動はランダウ・リフシッツ・ギルバート方程式(以下、LLG方程式)によって記述できる。そこで、本発明者らは、下記(4)式に示すスピントランスファートルク項を付加したLLG方程式を用いて、図2の2つの磁化M1、M2の運動を調べた。
【0021】
【数3】

【0022】
ここで、Heffは磁化に作用する有効磁場であり、外部磁場、異方性磁場、反磁場などを含んでいる。(4)式は非線形連立微分方程式であり、厳密に解析解を導くことは困難であるので、数値計算により解いた。計算の結果、適当な条件下で2つの磁化M1、M2が位相を揃えて定常な歳差運動をすることがわかった。例として、図3に、第1および第2の磁気共鳴層1、3が共に矢印Aの方向に磁気異方性を有している場合の磁化の定常な歳差運動の様子を模式的に示す。図3において、φは磁化M1およびM2の、A方向に垂直な面への射影成分のなす角である。位相を揃えた歳差運動とは、φを一定に保ちながらA軸周りに歳差運動するという意味である。すなわち、磁化M1とM2が共に同一の周波数でA軸周りを周回することを意味している。
【0023】
本発明者らの研究の結果、上記の周波数は、下記の(5)式またはそれと同一の値を得ることができる(6)式でほぼ見積もれることがわかった。
【0024】
【数4】

【0025】
ここで、θ1およびθ2は、図3に示したように、それぞれ磁化M1およびM2とA方向とのなす角である。上述したように、aは電流密度Jに関係する量である。
【0026】
(5)式または(6)式は、磁化M1およびM2に固有の周波数f1およびf2間のずれが通電によって補償され、磁化M1とM2の歳差運動の周波数が一致し、積層膜から単一周波数の磁気発振が得られることを意味している。このように、2つの磁化M1およびM2が周波数を揃えて歳差運動するためには、2つの磁気共鳴周波数f1とf2の間にずれがなくてはならない。このずれがどの程度あれば有意な歳差運動が実現するのかも含めて、位相を揃えた歳差運動が発現する条件を以下においてさらに詳しく説明する。
【0027】
図4は、2つの磁化M1およびM2が有する磁気共鳴周波数f1およびf2の相対的差異(f2−f1)/f1および電流密度Jについて、どのような値域で上述した歳差運動が生じるかを例示した図である。この図では、角度θ1を(f2−f1)/f1とJとに対して等高線プロットしている。
【0028】
図4に示した等高線プロットの計算条件は以下の通りである。第1および第2の磁気共鳴層1、3が共に矢印Aの方向に磁気異方性を有し、磁気異方性定数K=5×105erg/cm3による異方性磁場HKが磁化に作用している。磁気共鳴層1にはHKと同程度の大きさのバイアス磁場が作用している。磁気共鳴層2にはHK以上の大きさのバイアス磁場が作用している。第1および第2の磁気共鳴層1、3の膜厚は2nm、αは0.01である。図4では低電流領域を主に描いている。
【0029】
図4は上述した特定のパラメタ値での結果であるが、本発明の実施形態に係る磁性発振素子における磁化の運動の一般的な傾向を表している。図の諸数値において、パラメタ値によって変化を受けるのは、主に電流密度の絶対値である。図4で、角度θ1=0°の場合には、2つの磁化が歳差運動せずに、磁化の安定方向(矢印A方向)に留まっていることを示している。一方、θ1>0°の領域では、(5)式を満たす2つの磁化の歳差運動が生じる。図4から、2つの磁化の歳差運動が生じるには、ある程度の大きさの電流密度Jが必要である。
【0030】
図4より、2つの磁化の歳差運動が生じるためには(f2−f1)/f1≦0.6であることが必要であることがわかる。つまり、2つの磁気共鳴層が有する磁気共鳴周波数の比f2/f1が1.6以下であることが必要である。なお、図4の計算に用いたパラメタ値以外に、適用できる様々なパラメタ値を用いて計算した結果、2つの磁化の歳差運動が生じる(f2−f1)/f1の上限値は0.4〜0.6であることが判明した。すなわち、図4の例は(f2−f1)/f1の上限値が最も大きい場合を示している。(f2−f1)/f1≦0.4、つまりf2/f1が1.4以下であれば、比較的広いJの値域で2つの磁化の歳差運動が生じるといえる。
【0031】
また、有意な歳差運動を実現するには、2つの磁気共鳴周波数f1とf2の間のずれに関して、f1とf2が下記(7)式を満たす必要がある。有意な歳差運動とは、2つの磁化がその安定方向から十分離れているということである。
【0032】
【数5】

【0033】
(7)式は、2つの磁気共鳴層が有する磁気共鳴周波数の差(f2−f1)が、第1の磁気共鳴層1の共鳴線幅Δf1の半分よりも大きい必要があることを意味している。Δf1は既述した(2)式から見積もることができる。図4においても(7)式が満たされている。本発明の実施形態に係る磁性発振素子のような微小な素子においては、熱的な磁化の揺らぎが必ず存在している。具体的に想定している素子サイズでは、J=0であってもθ1,θ2≒5°程度の磁化の揺らぎが必ず生じる。そのため、磁化の運動が熱的な起源によるものではなく、純粋に電流Jによって生じるようにするためには、θ1,θ2>5°であることが好ましい。一般に熱的な揺らぎの大きさは、ギルバート減衰係数αの大きさに関係している。また、(2)式よりΔf1はαに依存している。つまり、(7)式は、歳差運動が熱的な運動に埋もれることなく、電流Jの通電によって生じる磁化M1とM2との間の(3)式による相互作用を介した歳差運動が実現するための条件である。
【0034】
以上で説明したように、本発明の実施形態に係る磁性発振素子は、第1の磁気共鳴周波数f1を有する第1の磁気共鳴層と、第2の磁気共鳴周波数f2を有する第2の磁気共鳴層と、第1の磁気共鳴層と第2の磁気共鳴層との間に挟まれた非磁性層と、第1および第2の磁気共鳴層ならびに非磁性層の膜面に対して垂直に電流を通電する一対の電極を有している。そして、2つの磁気共鳴層が有するそれぞれの磁化M1およびM2に位相を揃えた歳差運動をさせて単一周波数の磁気発振を取り出せるように、2つの磁気共鳴周波数の差(f2−f1)が、第1の磁気共鳴層が有する共鳴線幅Δf1の半分よりも大きく、かつ2つの磁気共鳴周波数の比f2/f1が1.6以下、より好ましくは1.4以下という条件を満たしている。
【0035】
本発明の実施形態に係る磁性発振素子では、2つの磁化が関与して磁気発振が生じるため高い出力が得られる。この磁気発振は、2つの磁化が位相を揃えて運動することにより生じるので、エネルギー損失が少ない。しかも、このような位相が揃った磁気発振は、特定の周波数を有し、発振周波数の広がりが小さい。発振周波数を与える(6)式からわかるように、発振周波数はaを介して電流密度Jに依存しているので、電流によって発振周波数を容易に調節することができる。また、発振出力は歳差運動の振幅で決まり、磁気共鳴周波数の差が大きいほど出力が大きくなる(図4参照)。
【0036】
次に、本発明の実施形態に係る磁気センサについて説明する。この磁気センサは、上述した磁性発振素子に含まれる第1および第2の磁気共鳴層の2つの磁化の歳差運動における、2つの磁化のなす角に起因する素子抵抗を利用して外部磁場を検出する。
【0037】
図3に模式的に示したように、2つの磁化が歳差運動しているとき、2つの磁化M1とM2の間には有限のある角度θが形成される。この角度θは下記(8)式で表される。
【0038】
【数6】

【0039】
(8)式の角度θは、記録媒体からの信号磁場のように時間変化する外部磁場に伴って変化する。図5に2つの磁化がなす角度θの時間変化の一例を示す。この図は、(f2−f1)/f1=0.4である2つの磁気共鳴層の磁化が、電流密度J=1.5×107A/cm2でθ≒38°を保って歳差運動している状態のときに、大きさ40Oe、幅約2nsecのパルス磁場をA方向に印加するという条件で計算した結果を図示している。パルス磁場の印加に伴って、角度θはΔθ≒4.5°だけ大きくなる方向に変化している。パルス磁場の印加を停止する(0Oe)と、2つの磁化はθ≒38°を保った歳差運動に戻る。磁気抵抗効果の理論からも明らかなように、磁化のなす角が大きいほど素子抵抗が大きくなる。したがって、電流密度一定の下で、電圧を観測すると角度変化Δθ≒4.5°に相当する素子電圧の変化を観測することができる。このように、本発明の実施形態に係る磁気センサでは、磁性発振素子に電流を垂直通電して、素子抵抗の変化を電圧変化として観測することにより、外部磁場を検知することができる。
【0040】
したがって、本発明の実施形態に係る磁気センサは、上述した磁性発振素子と、通電により励起される、磁性発振素子の第1および第2の磁気共鳴層が有する磁化による共鳴周波数の揃った歳差運動における、2つの磁化のなす角の外部磁場に依存した変化を抵抗変化として検出する手段とを有する。
【0041】
本発明によれば、上述した磁性発振素子を用いた磁気ヘッドを提供することができる。本発明の実施形態に係る磁気ヘッドは、上述した磁性発振素子と、前記磁性発振素子にバイアス磁界を印加して前記第1および第2の磁気発振層の磁区を制御する磁区制御層と、前記磁性発振素子の膜面に対して垂直に電流が通電されるように設けられた絶縁層と、前記磁性発振素子を挟む1対の磁気シールド層とを有する。
【0042】
また、このような磁気ヘッドをユニット磁気ヘッドとし、絶縁層を介して複数のユニット磁気ヘッドをマトリックス状に配列してマトリックス状磁気ヘッドを提供することもできる。
【0043】
本発明の実施形態に係る磁気ヘッドによって磁気記録媒体に記録された信号磁界を読み出すには、磁気ヘッドを磁気記録媒体に対向させて配置し、磁性発振素子に電流を垂直通電して、その電圧変化を観測する。
【0044】
本発明の実施形態に係る磁気ヘッドは、従来のGMRヘッドと比較して、熱雑音によるS/N比低減が小さいという利点がある。従来のGMRヘッドは、フリー層の磁化による安定点周りの微小振動を利用して信号磁界を読み出している。しかし、安定点周りでは熱雑音の効果が最も大きく現れるので、従来のGMRヘッドでは熱雑音の影響が大きい。これに対して、本発明の実施形態に係る磁気ヘッドでは、磁性発振素子に含まれる2つの磁気共鳴層の磁化の歳差運動を利用している。この歳差運動は、安定点周りの微小振動とは異なり、電流によって本来の安定点から大きく離された磁化の運動であるため、熱揺らぎに埋もれることなく鋭敏に観測することができる。
【0045】
本発明の実施形態に係る磁気ヘッドでは、磁性発振素子にバイアス磁界を印加して第1および第2の磁気発振層の磁区を制御する磁区制御層を設けている。このため、第1および第2の磁気発振層が単磁区化され、磁壁が移動することによって生じるバルクハウゼンノイズを低減して、非常に優れた出力安定性が得られる。
【0046】
本発明の実施形態に係る磁気ヘッドでは、磁性発振素子の周囲に高抵抗の非磁性材料からなる絶縁層を設けて、磁性発振素子の膜面に対して垂直に電流が通電され、磁性発振素子以外への電流の分流を回避しているので、分流に起因するノイズも避けることができる。
【0047】
したがって、本発明の実施形態に係る磁気ヘッドでは、熱雑音によるS/N比低減が少なく、しかもバルクハウゼンノイズに代表されるノイズも低減できるので、微弱な信号磁界に対しても高MR比が得られ、高密度磁気記録媒体の記録情報を読み出すことができる。
【0048】
なお、本発明の実施形態に係る磁気ヘッドによって、信号磁界を読み出すには2つの磁化が共鳴的な歳差運動をする必要があるが、この歳差運動の励起には通電後ある程度の待ち時間を要する。典型的な磁性体の固有振動数は約10GHzであり、これを基準にすると、歳差運動励起のための待ち時間は約0.1nsec〜5nsecとなる。すなわち、磁性体固有の歳差運動の1周から50周程度に要する時間に相当する待ち時間の後に、2つの磁化が共鳴的な歳差運動を起こすようになる。したがって、本発明の実施形態に係る磁気ヘッドによる読み出し動作は、この程度の待ち時間の後に実施する。
【0049】
次に、本発明の実施形態に係る磁性発振素子、磁気ヘッドおよび磁気再生装置の具体的な構成を説明する。
【0050】
本発明の実施形態に係る磁性発振素子に含まれる第1および第2の磁気共鳴層は、磁気共鳴周波数の差に関して上述した所定の条件を満たしていればよく、様々な構成が考えられる。
【0051】
図6に、本発明の第1の実施形態に係る磁性発振素子の断面図を示す。図6に示すように、下部電極4、第1の磁気共鳴層1、非磁性層2、第2の磁気共鳴層3、および上部電極5が積層されている。第1の磁気共鳴層1は第1の磁気共鳴周波数f1を有し、第2の磁気共鳴層3は第1の磁気共鳴周波数f1よりも大きい第2の磁気共鳴周波数f2を有する。
【0052】
第1および第2の磁気共鳴層1、3を形成する強磁性材料は特に限定されず、Fe,Co,Niおよびそれらを含む合金、パーマロイ合金、ホイスラー合金など種々の強磁性材料を用いることができる。非磁性層2には、たとえばRu,Cu,Ag,Auなどの非磁性金属材料を用いることが望ましい。これらの強磁性材料および非磁性金属材料は、他の実施形態においても共通して用いられる。
【0053】
図6の磁性発振素子では、第1および第2の磁気共鳴層1、3は共に面内磁気異方性を有する強磁性層からなる。発振の出力を大きく取るためには、両者の面内磁気異方性が同一の向きであることが望ましい。
【0054】
各々の磁気共鳴層の磁気共鳴周波数は、材料固有の磁気異方性や飽和磁化に依存する。また、強磁性層の膜厚や膜面の平面形状を変えたり、合金の組成比をわずかに変えたりすることで、磁気共鳴周波数を変化させることができる。2つの磁気共鳴周波数の差(f2−f1)が第1の磁気共鳴層1が有する共鳴線幅の半分よりも大きく、2つの磁気共鳴周波数の比f2/f1が1.6以下であるという関係を満たしていれば、第1および第2の磁気共鳴層1、3の材料、膜厚、形状の組み合わせは任意でよい。
【0055】
本発明の他の実施形態においては、少なくとも一方の磁気共鳴層の両端部にバイアス磁場を印加するバイアス磁性膜を設けてもよい。バイアス磁性膜を設けることにより、磁気共鳴層の磁気共鳴周波数を変化させることができる。これは、バイアス磁場によって、実効的な磁気異方性磁場が変化するためである。したがって、適切なバイアス磁性膜を設けることによって、2つの磁気共鳴周波数の差(f2−f1)が第1の磁気共鳴層112が有する共鳴線幅の半分よりも大きくなり、かつ2つの磁気共鳴周波数の比f2/f1が1.6以下となるように調整することもできる。バイアス磁性膜には、たとえばCo−Pt合金、Fe−Pt合金、遷移金属−希土類合金などの硬磁性膜を用いることができる。
【0056】
本発明の他の実施形態においては、少なくとも一方の磁気共鳴層を強磁性層と反強磁性層とを積層した交換結合膜としてもよい。この場合、反強磁性層から強磁性層へ交換バイアス磁場を印加することにより、強磁性層の面内磁気異方性の方向や大きさを制御して、交換結合膜(磁気共鳴層)が有する磁気共鳴周波数を変化させることができる。反強磁性層の材料としては、FeMn,PtMn,PdMn,NiMn,PdPtMnなどを用いることができる。
【0057】
図7に、本発明の第2の実施形態に係る磁性発振素子の断面図を示す。図7の磁性発振素子では、第1の磁気共鳴層1は単層の強磁性層で形成されているが、第2の磁気共鳴層3は強磁性層31と反強磁性層33を積層した交換結合膜で形成されている。第2の磁気共鳴層3を、強磁性層31と反強磁性層33を積層した構造にすることによって、強磁性層31に交換バイアス磁場を作用させ、第2の磁気共鳴層3の磁気共鳴周波数を変化させることができる。
【0058】
図8に、本発明の第3の実施形態に係る磁性発振素子の断面図を示す。図8の磁性発振素子では、第1の磁気共鳴層1が反強磁性層13と強磁性層11を積層した交換結合膜で形成され、第2の磁気共鳴層3が強磁性層31と反強磁性層33を積層した交換結合膜で形成されている。第1および第2の磁気共鳴層1、3の両者を、強磁性層と反強磁性層を積層した構造にすることによって、各磁気共鳴層1、3の磁気共鳴周波数を変化させることができる。
【0059】
なお、GMRヘッドなどに応用されている従来のスピンバルブ膜においても、強磁性層(ピン層)/反強磁性層からなる交換結合膜が用いられている。しかし、従来のスピンバルブ膜では、反強磁性層は強磁性層(ピン層)の磁化を固着するために設けられている。一方、本発明の実施形態に係る磁気共鳴層としての交換結合膜においては、反強磁性層は交換バイアス磁場によって強磁性層内の磁化に働く磁場を制御し、磁化の磁気共鳴周波数を変えるために用いられており、磁化をピン止めするほどに強力な交換バイアス磁場は必要ない。交換バイアス磁場の大きさは、交換結合膜における強磁性層または反強磁性層の膜厚によって制御できる。たとえば、強磁性層の膜厚を大きくすると、交換バイアス磁場を実効的に小さくすることができる。
【0060】
さらに、交換バイアス磁場の大きさを制御するために、強磁性層と反強磁性層との間にCu,Ruなどの非磁性中間層を挟んだ交換結合膜を用いてもよい。非磁性中間層によって、強磁性層/反強磁性層の界面を乱したり、強磁性層を反強磁性層から離したりすることができ、強磁性層内の磁化に働く交換バイアス磁場の大きさを調節できる。
【0061】
図9に、本発明の第4の実施形態に係る磁性発振素子の断面図を示す。図9の磁性発振素子では、第2の磁気共鳴層3が強磁性層31と非磁性中間層32と反強磁性層33を積層した交換結合膜で形成されている。非磁性中間層32によって反強磁性層33と強磁性層31との間の交換結合の大きさを調節することができ、第2の磁気共鳴層3の磁気共鳴周波数を変化させることができる。
【0062】
図10に、本発明の第5の実施形態に係る磁性発振素子の断面図を示す。図10の磁性発振素子では、第1の磁気共鳴層1が反強磁性層13と非磁性中間層12と強磁性層11を積層した交換結合膜で形成され、第2の磁気共鳴層3が強磁性層31と非磁性中間層32と反強磁性層33を積層した交換結合膜で形成されている。
【0063】
図6〜図10に示したいずれの磁性発振素子でも、垂直通電することにより第1および第2の磁気共鳴層1、3の磁化が共に位相を揃えて運動するためエネルギー効率が良好で、出力および周波数安定性に優れた磁気発振が可能である。いずれの磁性発振素子でも、発振出力を大きく取るためには、2つの磁気共鳴層1、3が同一向きの面内磁気異方性を有することが望ましい。これらの磁性発振素子による磁気発振は、2層の磁気共鳴層1、3の面内における磁化運動を利用しており、膜面に垂直方向の反磁場の影響で楕円偏極する。
【0064】
本発明の他の実施形態に係る磁性発振素子では、必要に応じて、円偏極の磁気発振を得ることもできる。たとえば2つの磁気共鳴層を共に垂直磁化膜とすることによって、円偏極した磁気発振を得ることができる。垂直磁化膜では、膜面垂直方向の磁気異方性と、膜面垂直方向の反磁場とが平行になるため、磁気発振が円偏極する。
【0065】
図11に、本発明の第6の実施形態に係る磁性発振素子の断面図を示す。図11の磁性発振素子では、下部電極4、第1の垂直磁化膜(第1の磁気共鳴層)10、非磁性層2、第2の垂直磁化膜(第2の磁気共鳴層)30、および上部電極5が積層されている。第1および第2の垂直磁化膜10、30の材料としては、たとえばRh/Co,Ru/Coや、Pt/Co,Au/Co,Ag/Co,Pd/Co,Ag/Fe,Pd/Niなどの貴金属/遷移金属系を用いることができる。垂直磁化膜が有する垂直磁気異方性は膜厚によって制御できる。したがって、垂直磁化膜の膜厚によって、2つの磁気共鳴周波数の差(f2−f1)が第1の磁気共鳴層が有する共鳴線幅の半分よりも大きくなり、かつ2つの磁気共鳴周波数の比f2/f1が1.6以下となるように調整することができる。
【0066】
本発明の実施形態に係る磁性発振素子においては、第1および第2の磁気共鳴層が有する磁気共鳴周波数の比が1.6に近いほど発振出力が大きく、その発振出力は外部磁場によって制御可能である。特に、2つの磁気共鳴層が同一の向きに磁気異方性を有していれば、外部磁場による出力の変化が顕著になる。
【0067】
なお、本発明の実施形態に係る磁性発振素子に用いられる強磁性層、非磁性層、反強磁性層などは、それぞれ単層である必要はなく、2以上の層を積層したものであってもよい。2つの磁気共鳴層が有する磁気共鳴周波数を意図的にずらし、通電によって磁気発振が得られる構造であればすべて本発明の範囲に属する。
【0068】
次に、本発明の実施形態に係る磁気ヘッド、マトリクス状磁気ヘッド、および磁気再生装置について説明する。
【0069】
図12に本発明の実施形態に係る磁気ヘッドの断面図を示す。説明を容易にするために、図中に互いに直交するx軸、y軸、z軸を表示する。x軸は記録媒体上のトラックに沿う方向を示し、y軸は記録媒体に向かう方向を示し、z軸はトラック幅方向を示す。これらの軸の方向は、後述する各図においても共通である。図13は図12の磁気ヘッドにおける磁性発振素子の近傍を拡大して示す断面図である。図14は、図12の磁気ヘッドを媒体対向面から見た場合の磁性発振素子の近傍を拡大して示す断面図である。図15および図16はそれぞれ図14の変形例である。
【0070】
図12に示すように、本発明の実施形態に係る磁気ヘッドは、非磁性基板40上に形成された、磁気検出素子51を含む再生ヘッド50と記録ヘッド60とを有する。図12および図13に示すように、再生ヘッド50は、下地層52、下部磁気シールド層53、下部金属層54、磁性発振素子51、絶縁層55、上部金属層56、上部磁気シールド層57を含んでいる。記録ヘッド60は上部磁気シールド層57によって再生ヘッド50と磁気的に隔てられている。このため、再生ヘッド50と記録ヘッド60は独立に扱うことができる。本発明の実施形態に係る磁気ヘッドにおいては、記録ヘッド60は、面内磁気記録用であってもよいし、垂直磁気記録用であってもよい。なお、読み取り専用磁気ヘッドの場合には記録ヘッド60を設ける必要はない。さらに、磁気ヘッドの媒体対向面には保護膜70が設けられている。
【0071】
非磁性基板40の材料としては、Al23−TiCまたはSiCなどが挙げられる。基板40上の下地層52の材料として、たとえばAl23からなる絶縁膜が挙げられる。基板40の材料と下部磁気シールド層53の材料との間で整合性がよい場合には、下地層52を設けなくてもよい。下地層16上の下部磁気シールド層53の材料としては、NiFe、FeCo、FeCoNi、センダストなどの軟磁性材料が挙げられる。下部磁気シールド層53は電極としても機能する。下部磁気シールド層53上の下部金属層54の材料としては、Taなどの導電性の非磁性金属材料が挙げられる。下部金属層54上には、媒体に対向するように磁性発振素子51が形成され、媒体対向面から見て磁性発振素子51よりも奥側の領域に絶縁層55が形成される。磁性発振素子51および絶縁層55上の上部金属層56の材料には、下部金属層54と同様の材料が用いられる。下部金属層54上の上部磁気シールド層57の材料には、下部磁気シールド層53と同様の材料が用いられる。上部磁気シールド層57は電極としても機能する。
【0072】
図12および図13に示されるように、下部金属層54および上部金属層56は、磁気記録媒体に記録される記録ビットのサイズに合うように、1対の磁気シールド層に所望の間隔を保つ役割も果たしている。なお、下部金属層54および上部金属層56は、必ずしも設ける必要はない。また、下部磁気シールド層53および上部磁気シールド層57の代わりに、電極としてのみ機能する電極層と磁気シールドとしてのみ機能する磁気シールド層を設けてもよい。
【0073】
本発明の実施形態に係る磁気ヘッドにおいては、磁性発振素子51内の2つの磁気共鳴層に対してバイアス磁界を印加する磁区制御層が設けられる。このバイアス磁界による磁気異方性の制御によって磁気共鳴層を単磁区化することができ、バルクハウゼンノイズを抑制することができる。磁区制御層には硬磁性膜または強磁性層と反強磁性層を積層した交換結合膜が用いられる。硬磁性膜としては、たとえばCoPt、CoPtCr、NbFeBなどが挙げられる。
【0074】
図14は図12の磁気ヘッドを媒体対向面から見た場合の磁性発振素子の近傍を拡大して示す断面図である。図14はいわゆるハード・アバッテッド(hard abutted)構造の磁気ヘッドを示している。この図に示されるように、トラック幅方向に沿って磁性発振素子51の両側の側面に、磁区制御層58と絶縁膜59とが積層して設けられている。絶縁膜59には高抵抗の非磁性材料が用いられる。絶縁層59は2層以上の絶縁層を含む複合膜であってもよい。絶縁層59を設けたことにより、磁性発振素子51へ通電される電流が、磁区制御層58へ分流するのを防止できる。
【0075】
図15は図14の変形例である。図15では、磁性発振素子51の側面の大部分を覆うように絶縁層59が形成され、この絶縁層59上に磁区制御層58が積層されている。このように、図15では絶縁層59と磁区制御層58の積層順序が図14と逆になっている。図15では絶縁層59が磁性発振素子51の側面の大部分を覆っているため、磁性発振素子51へ通電される電流が、磁区制御層58へ分流するのをほぼ完全に回避することができる。この構造における磁区制御層58による磁性発振素子51へのバイアス磁界印加は、強磁性結合や反強磁性結合といった磁性的な結合によってなされるのではなく、磁区制御層58から磁性発振素子51へ磁場が回り込むことによってなされる。
【0076】
図16は図14の他の変形例を示す断面図である。図16では、磁区制御層が、磁性発振素子51の側面ではなく、磁性発振素子51の上下に配置された一対の磁気シールド層内に設けられている。すなわち、下部磁気シールド層53内に磁区制御層58aが、上部磁気シールド層57内に磁区制御層58bがそれぞれ設けられている。磁区制御層58a,58bは、磁気シールド53、57内の通電の妨げにならないように、導電性の高い硬磁性層または強磁性層と反強磁性層を積層した交換結合膜で形成することが望ましい。図16では、磁性発振素子51の両側の側面を覆うように絶縁層59のみが形成されている。この絶縁層59により、分流を招くことなく、磁性発振素子51にのみ電流を通電することができる。
【0077】
図14〜図16に示したいずれの磁気ヘッドにおいても、磁区制御層によりバルクハウゼンノイズを抑制し、絶縁層によって分流を回避することで余分なノイズを除去しているため、磁性発振素子51の感度劣化を最小限に止めることができる。
【0078】
このように本発明の実施形態に係る磁気ヘッドによれば、磁性発振素子内の2つの磁気共鳴層が有する2つの磁化の共鳴的な歳差運動を用いることで熱雑音の影響を受けにくく、しかもバルクハウゼンノイズなどのノイズを抑制しているので、微小領域からの微小磁界を検知でき、高感度の磁気再生を実現できる。
【0079】
次に、本発明の実施形態に係る磁気再生装置について説明する。
【0080】
図17に本発明の実施形態に係る磁気記録再生装置150の斜視図を示す。磁気ディスク(磁気記録媒体)151は、スピンドル152に装着されスピンドルモータにより矢印Aの方向に回転される。磁気ディスク151の近傍に設けられたピボット153には、アクチュエータアーム154が保持されている。アクチュエータアーム154の先端にはサスペンション155が取り付けられている。サスペンション155の下面にはヘッドスライダ156が支持されている。ヘッドスライダ153には、図12〜図16を参照して説明した磁気ヘッドが搭載されている。アクチュエータアーム154の基端部にはボイスコイルモータ157が形成されている。
【0081】
磁気ディスク151を回転させ、ボイスコイルモータ157によりアクチュエータアーム154を回動させてヘッドスライダ156を磁気ディスク151上にロードすると、磁気ヘッドを搭載したヘッドスライダ156の媒体対向面(ABS)が磁気ディスク151の表面から所定の浮上量をもって保持される。なお、ヘッドスライダ156は磁気ディスク151と接触するいわゆる接触走行型のものであってもよい。この状態で、磁気ディスク151に記録された情報を読み出すことができる。
【0082】
図18は、アクチュエータアーム155から先の磁気ヘッドアセンブリを磁気ディスク側から見た拡大斜視図である。磁気ヘッドアッセンブリ160はアクチュエータアーム155を含み、アクチュエータアーム155の一端にはサスペンション154が接続されている。サスペンション154の先端には、図12〜図16を参照して説明したいずれかの磁気ヘッドを有するヘッドスライダ153が取り付けられている。サスペンション154は信号の書き込みおよび読み取り用のリード線164が配線され、このリード線164とヘッドスライダ153に組み込まれた磁気ヘッドの各電極とが電気的に接続されている。図中165は磁気ヘッドアッセンブリ160の電極パッドである。
【0083】
本発明の実施形態に係る磁気再生装置によれば、従来よりも高い記録密度で磁気ディスク151に磁気的に記録された情報を、図12〜図16を参照して説明したいずれかの磁気ヘッドによって、高感度で読みとることができる。
【0084】
次に、本発明の実施形態に係る磁気ヘッドを配列したマトリクス状磁気ヘッドについて説明する。
【0085】
図19は、マトリクス状磁気ヘッドの製造過程において、図12〜図16を参照して説明したいずれかのユニット磁気ヘッドを基板上に複数形成した様子を表す斜視図である。図20は図19の状態から切り出した一次元アレイを媒体対向面から見た断面図である。
【0086】
図19に示すように、非磁性基板40上に、z軸方向(トラック幅方向)に沿って、絶縁層90を介して複数のユニット磁気ヘッド80を等間隔に配列して形成する。この基板をy軸方向に沿って等間隔に切断面Sで切り出すことにより、図20に示すように、ユニット磁気ヘッド80が一次元的に配列した一次元アレイ100を作製する。このように各々のユニット磁気ヘッド80は、中間に介在している絶縁層90によって磁気的、電気的に分断されている。
【0087】
図20に示すように、一次元アレイ100に含まれる個々のユニット磁気ヘッド80はたとえば図14に示したような構造を有する。すなわち、非磁性基板40上に、下部磁気シールド層53が形成され、その上に磁性発振素子51ならびにその両側の側面に隣接する磁区制御層58および絶縁層59の積層体が形成され、これらの上に上部磁気シールド層57が形成されている。なお、磁区制御層58および絶縁層59については、図14に示した構造に限らず、図15に示した構造を採用してもよいし、図16に示した構造を採用してもよい。このように、各ユニット磁気ヘッドは既述した磁気ヘッドとほぼ同一の構造を備えている。一次元アレイ100を一次元のマトリクス状磁気ヘッドとして用いることもできる。
【0088】
なお、たとえば図20において、各ユニット磁気ヘッドの上部磁気シールド層57の上に記録ヘッドを設けることによって、本発明の実施形態に係るマトリクス状磁気ヘッドを再生ヘッドとしてだけでなく、再生記録ヘッドとして用いることができる。
【0089】
図21に、一次元アレイ100を並列して形成された長方形のマトリクス状磁気ヘッド110の斜視図を示す。図21では、上面が媒体対向面である。図21の裏側の面には、各ユニット磁気ヘッドの下部磁気シールド層53と上部磁気シールド層57との間に通電できるように図示しない配線が形成されている。
【0090】
マトリクス状磁気ヘッドの形状は特に限定されず、図21のような長方形以外の形状でもよい。図22に、一次元アレイ100を並列して形成された扇型のマトリクス状磁気ヘッド120を媒体対向面から見た平面図を示す。その他、円形のマトリクス状磁気ヘッドを作製することもできる。
【0091】
本発明の実施形態に係るマトリクス状磁気ヘッドにおいては、各々のユニット磁気ヘッドを独立に動作させることができるので、記録媒体に磁気的に記録された情報を並列的に読み出すのに適している。上述したように各々のユニット磁気ヘッドに記録ヘッドを設ければ、並列書き込みも可能となる。
【0092】
図23に、本発明の実施形態に係るマトリクス状磁気ヘッドを搭載した磁気再生装置の斜視図を示す。図23においては、磁気ディスク151の内周部および外周部に2本ずつポール130を設け、これらのポール130の上に図22に示した扇型のマトリクス状磁気ヘッド120を固定している。図23の磁気再生装置は、図17におけるアクチュエータアーム、サスペンション、ヘッドスライダおよび磁気ヘッドの代わりに、ポール130およびマトリクス状磁気ヘッド120を設けたものである。なお、マトリクス状磁気ヘッド120を可動式にしてもよいことはもちろんである。
【0093】
図23のマトリクス状磁気ヘッド120に含まれる各々のユニット磁気ヘッドは独立に動作させることができるので、各々のユニット磁気ヘッドを協同的に動作するような適切なアルゴリズムを用いることにより、磁気ディスク151に記録された複数のビット情報を同時に読み出すことができる。したがって、従来よりも高い記録密度で磁気的に記録された情報を高感度かつ高速に読みとることができる。
【0094】
以上、具体例を参照しつつ、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。たとえば、シールド層、磁区制御層、絶縁層などの形状や材質に関しては、当業者が公知の範囲から適宜選択することにより本発明を同様に実施し、同様の効果を得ることができる。また、本発明の実施形態に係る磁気再生装置は、磁気記録媒体が固定式のものでもよいし、磁気記録媒体が差し替え可能ないわゆるリムーバブル方式のものでもよい。その他、上述した磁気ヘッドおよび磁気再生装置を基にして当業者が適宜設計変更して実施しうるすべての磁気ヘッドおよび磁気再生装置も同様に本発明の範囲に属する。
【実施例】
【0095】
以下、いくつかの具体的な磁性発振素子について説明する。
(実施例1)
本実施例の磁性発振素子は図6に示す構造を有する。第1および第2の磁気共鳴層1、3にはCoを用いた。Co薄膜の一軸異方性磁場の大きさは、膜厚によって変化することが知られている。そこで、第1および第2の磁気共鳴層1、3に膜厚の異なるCo層を用い、第1および第2の磁気共鳴層1、3に固有の磁気共鳴周波数に差が生じるようにした。2層のCo層の磁気異方性の方向を一致させて成膜した。非磁性層にはCuを用いた。成膜はスパッタリングにより行った。
【0096】
まず、熱酸化シリコン膜を形成したシリコン基板上に、下部電極4としてCu100nm/Ta5nmを成膜し、その表面を研磨して平坦性を向上させた。下部電極4上に、第1の磁気共鳴層1として約1.5nmのCo層、非磁性層2として約2nmのCu層、第2の磁気共鳴層3として約2nmのCo層、その上に上部電極5としてCu10nm/Au10nmを成膜した。電子線ビームリソグラフィーとArイオンビームスパッタを用いて微細加工を行い、接合面積約100nm×80nmの素子を作製した。
【0097】
この素子を中心導体幅50μmのコプレナガイドの一端に接続し、素子からのマイクロ波出力をスペクトラムアナライザーで検知した。素子の膜面に垂直な方向に振動磁場をかけて、素子の強磁性共鳴吸収スペクトルを調べた。第1の磁気共鳴層1(膜厚約1.5nmのCo層)の磁化が有する磁気共鳴周波数に対応するピークが約17.5GHzに、第2の磁気共鳴層3(膜厚約2nmのCo層)の磁化が有する磁気共鳴周波数に対応するピークが約19GHzに認められた。約17.5GHzのピークの共鳴線幅は約0.5GHzであった。下部電極4から上部電極5の方向に直流電流を流し、その電流密度を2×107A/cm2以上にすると、周波数約19.5GHzのマイクロ波の発振が確認された。発振強度は電流密度と共に増大した。
【0098】
(実施例2)
本実施例の磁性発振素子は図7に示す構造を有し、第1の磁気共鳴層1は単層の強磁性層で形成されているが、第2の磁気共鳴層3は強磁性層31と反強磁性層33を積層した交換結合膜で形成されている。素子の製造方法は、実施例1と同様である。
【0099】
図7に示すように、下部電極4として10nmのCu、第1の磁気共鳴層1として膜厚5nmのCo、非磁性層2として膜厚3nmのCu、第2の磁気共鳴層3の強磁性層31として膜厚5nmのCo、第2の磁気共鳴層3の反強磁性層33として膜厚約8nmのIrMn、上部電極5として10nmのCuを用い、接合面積を約100×100nm2とした。
【0100】
強磁性共鳴による共鳴スペクトルで、2つのピークが約14.4GHzと約15.5GHzに認められた。第1の磁気共鳴層1の磁化の共鳴周波数が約14.4GHzに対応し、交換結合膜からなる第2の磁気共鳴層3の磁化の共鳴周波数が約15.5GHzに対応するものと考えられる。約14.4GHzのピークの共鳴線幅は約0.3GHzであった。下部電極4から上部電極5の方向に直流電流を流し、その電流密度を9×106A/cm2以上にすると、周波数約16GHzのマイクロ波の発振が確認された。発振強度は電流密度と共に増大した。
【0101】
(実施例3)
本実施例の磁性発振素子は図8に示す構造を有し、第1の磁気共鳴層1が強磁性層11と反強磁性層13を積層した交換結合膜で形成され、第2の磁気共鳴層3が強磁性層31と反強磁性層33を積層した交換結合膜で形成されている。反強磁性層としてはIrMn、強磁性層としてはCoを用いた。素子の製造方法は、実施例1と同様である。
【0102】
具体的には、Cu層(約10nm)/IrMn層(約10nm)/Co層(約3nm)/Cu層(約5nm)/Co層(約3nm)/IrMn層(約7nm)/Cu層(約20nm)を積層し、接合面積を約50×100nm2とした。
【0103】
強磁性共鳴による共鳴スペクトルで、Co層(約3nm)/IrMn層(約7nm)およびCu層(約10nm)/IrMn層(約10nm)のそれぞれの交換結合膜に対応するピークが約27.2GHzと約29.1GHzに見られた。約27.2GHzのピークの共鳴線幅は約0.8GHzであった。下部電極4から上部電極5の方向に直流電流を流し、その電流密度を約4.6×107A/cm2以上にすると、周波数約32GHzの発振が確認された。
【0104】
(実施例4)
本実施例の磁性発振素子は図11に示す構造を有し、2つの磁気共鳴層が共に垂直磁化膜で形成されている。垂直磁化膜としてはCo/Ruを用いた。素子の製造方法は、実施例1と同様である。
【0105】
具体的には、Cu層(約20nm)/Co層(約0.8nm)/Ru層(約2nm)/Cu層(約2nm)/Co層(約0.6nm)/Ru層(約2nm)/Cu層(約40nm)を積層し、接合面積を約100×100nm2とした。垂直磁化膜の有効垂直磁気異方性が強磁性層の膜厚に依存することを考慮し、2つの垂直磁化膜を構成するCo強磁性層の膜厚にわずかに差をつけている。
【0106】
強磁性共鳴による共鳴スペクトルで、2つのピークが約12GHzと約16GHzに認められた。垂直磁気異方性の起源は格子の歪みであると一般に考えられており、上記2つのピークが2つの垂直磁化膜のいずれの磁化の共鳴周波数であるのかを判断するのは困難である。ただし、上部電極5から下部電極4の方向へ、電流密度2×107A/cm2以上の直流電流を流したときに周波数約17GHzの発振が確認されたことから、下部の垂直磁化膜の磁化の共鳴周波数が約16GHzに対応し、上部の垂直磁化膜の共鳴周波数が約12GHzに対応するものであると解釈された。約12GHzのピークの共鳴線幅は約0.2GHzであった。共鳴周波数の比は約1.3である。発振強度は電流密度と共に増大した。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】2つの磁性体が有する磁化の磁気共鳴吸収ピークを模式的に示す図。
【図2】本発明の実施形態に係る磁性発振素子を模式的に示す図。
【図3】本発明の実施形態に係る磁性発振素子における磁化の定常な歳差運動の様子を模式的に示す図。
【図4】2つの磁気共鳴周波数f1およびf2の相対的差異(f2−f1)/f1および電流密度Jについて、どのような値域で歳差運動が生じるかを例示した図。
【図5】2つの磁化がなす角度θの時間変化の一例を示す図。
【図6】本発明の第1の実施形態に係る磁性発振素子の断面図。
【図7】本発明の第2の実施形態に係る磁性発振素子の断面図。
【図8】本発明の第3の実施形態に係る磁性発振素子の断面図。
【図9】本発明の第4の実施形態に係る磁性発振素子の断面図。
【図10】本発明の第5の実施形態に係る磁性発振素子の断面図。
【図11】本発明の第6の実施形態に係る磁性発振素子の断面図。
【図12】本発明の実施形態に係る磁性ヘッドの断面図。
【図13】図12の磁気ヘッドにおける磁性発振素子の近傍を拡大して示す断面図。
【図14】図12の磁気ヘッドを媒体対向面から見た場合の磁性発振素子の近傍を拡大して示す断面図。
【図15】図14の変形例を示す断面図。
【図16】図14の他の変形例を示す断面図。
【図17】本発明の実施形態に係る磁気再生装置の斜視図。
【図18】本発明の実施形態に係る磁気再生装置の磁気ヘッドアセンブリを磁気ディスク側から見た斜視図。
【図19】本発明の実施形態に係るユニット磁気ヘッドを基板上に複数形成した様子を表す斜視図。
【図20】図19から切り出した一次元アレイを媒体対向面から見た断面図。
【図21】本発明の実施形態に係る長方形のマトリクス状磁気ヘッドの斜視図。
【図22】本発明の他の実施形態に係る扇型のマトリクス状磁気ヘッドの平面図。
【図23】本発明の実施形態に係るマトリクス状磁気ヘッドを搭載した磁気再生装置の斜視図。
【符号の説明】
【0108】
1…第1の磁気共鳴層、2…非磁性層、3…第2の磁気共鳴層、4…下部電極、5…上部電極、11…強磁性層、12…非磁性中間層、13…反強磁性層、31…強磁性層、32…非磁性中間層、33…反強磁性層、40…非磁性基板、50…再生ヘッド、51…磁気検出素子、52…下地層、53…下部磁気シールド層、54…下部金属層、55…絶縁層、56…上部金属層、57…上部磁気シールド層、58…磁区制御層、59…絶縁層、60…記録ヘッド、70…保護膜、80…ユニット磁気ヘッド、90…絶縁層、100…一次元アレイ、110、120…マトリクス状磁気ヘッド、130…ポール、150…磁気再生装置、151…磁気ディスク、152…スピンドル、153…ピボット、154…アクチュエータアーム、155…サスペンション、156…ヘッドスライダ、157…ボイスコイルモータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の磁気共鳴周波数f1を有する第1の磁気共鳴層と、
前記第1の磁気共鳴周波数f1よりも大きい第2の磁気共鳴周波数f2を有する第2の磁気共鳴層と、
前記第1の磁気共鳴層と前記第2の磁気共鳴層との間に挟まれた非磁性層と、
前記第1および第2の磁気共鳴層ならびに前記非磁性層の膜面に対して垂直に電流を通電する一対の電極を有し、
前記2つの磁気共鳴周波数の差(f2−f1)が前記第1の磁気共鳴層が有する共鳴線幅の半分よりも大きく、かつ前記2つの磁気共鳴周波数の比f2/f1が1.6以下である
ことを特徴とする磁性発振素子。
【請求項2】
前記第1および第2の磁気共鳴層は、面内磁気異方性を有する強磁性層で形成されていることを特徴とする請求項1に記載の磁性発振素子。
【請求項3】
前記第1および第2の磁気共鳴層は、面内磁気異方性を有する強磁性層で形成され、少なくとも一方の強磁性層の両端部に一対のバイアス磁性膜を有することを特徴とする請求項1に記載の磁性発振素子。
【請求項4】
前記第1および第2の磁気共鳴層は、面内磁気異方性を有する強磁性層と反強磁性層とを積層した交換結合膜で形成されていることを特徴とする請求項1に記載の磁性発振素子。
【請求項5】
前記第1および第2の磁気共鳴層は、一方が面内磁気異方性を有する強磁性層で形成され、他方が面内磁気異方性を有する強磁性層と反強磁性層とを積層した交換結合膜で形成されていることを特徴とする請求項1に記載の磁性発振素子。
【請求項6】
前記第1および第2の磁気共鳴層は、面内磁気異方性を有する強磁性層、交換バイアス磁場の大きさを調節する非磁性中間層および反強磁性層を積層した交換結合膜で形成されていることを特徴とする請求項1に記載の磁性発振素子。
【請求項7】
前記第1および第2の磁気共鳴層は、一方が面内磁気異方性を有する強磁性層で形成され、他方が面内磁気異方性を有する強磁性層、交換バイアス磁場の大きさを調節する非磁性中間層および反強磁性層を積層した交換結合膜で形成されていることを特徴とする請求項1に記載の磁性発振素子。
【請求項8】
前記第1および第2の磁気共鳴層は、少なくとも一方が垂直磁化膜で形成されていることを特徴とする請求項1に記載の磁性発振素子。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれか1項に記載の磁性発振素子と、
通電により励起される、前記第1および第2の磁気共鳴層が有する磁化による共鳴周波数の揃った歳差運動における、2つの磁化のなす角の外部磁場に依存した変化を抵抗変化として検出する手段と
を有することを特徴とする磁気センサ。
【請求項10】
請求項1ないし8のいずれか1項に記載の磁性発振素子と、
前記磁性発振素子にバイアス磁界を印加して前記第1および第2の磁気発振層の磁区を制御する磁区制御層と、
前記磁性発振素子の膜面に対して垂直に電流が通電されるように設けられた絶縁層と、
前記磁性発振素子を挟む1対の磁気シールド層と
を有することを特徴とする磁気ヘッド。
【請求項11】
請求項10に記載の磁気ヘッドをユニット磁気ヘッドとし、絶縁層を介して複数のユニット磁気ヘッドをマトリックス状に配列したことを特徴とする磁気ヘッド。
【請求項12】
請求項10または11に記載の磁気ヘッドと、磁気記録媒体とを有することを特徴とする磁気再生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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