説明

磁性粒子およびその製造方法

【目的】 磁性粉の分散性、分散安定性、結着樹脂との親和性がよく、小粒径でかつ粒度分布の幅が狭く、しかも耐熱性、耐摩耗性等にすぐれるとともに、硬くかつ割れにくい、バインダー型の磁性粒子を得る。
【構成】 磁性粉を、官能基を有するカップリング剤で処理し、ついでこの官能基と結合しうる官能基を有する重合開始剤で処理して、表面に重合開始剤を導入した後、この磁性粉を使用して、懸濁重合法により磁性粒子を製造する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、電子写真法、静電記録法、静電印刷法等を利用した画像形成装置において、帯電性のトナーとともに2成分系の現像剤を構成するキャリヤや、1成分系の現像剤としての磁性トナーとして使用される他、磁気ディスプレイ等にも利用される磁性粒子と、その懸濁重合法による製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、上記磁性粒子としては、フェライト粒子の表面を樹脂コートしたものが一般的に使用されている。しかし、上記フェライト粒子を、たとえば2成分系の現像剤のキャリヤとして画像形成装置に使用した場合には、昨今の高画質化の要求に十分に対応できなくなりつつあるのが現状である。
【0003】キャリヤとトナーからなる2成分の現像剤を使用する画像形成装置の現像部においては、まず現像剤を攪拌混合してトナーを帯電させて、キャリヤ粒子の周りに付着させた後、磁石を内蔵した現像スリーブの表面にキャリヤを磁気付着させて、当該キャリヤからなる磁気ブラシを形成する。そしてこの磁気ブラシを、表面に静電潜像が形成された感光体の表面に接近または接触させると、磁気ブラシ中のトナーが静電潜像に静電付着して、当該静電潜像がトナー像に顕像化される。
【0004】ところが、上記キャリヤとしてフェライト粒子を使用した場合には、このフェライト粒子の重量故に、磁気ブラシが現像スリーブの回転時に生じる遠心力によって大きく伸び、慣性力によって感光体の表面を傷つけたり、感光体の表面に静電付着したトナーを掻き取ったり付着位置をずらしたりして、形成画像の画質を低下させるのである。
【0005】また、形成画像の画質を低下させる他の原因として、上記フェライト粒子からなるキャリヤが、フェライト粉を焼結して製造されるため小粒径化が困難であることや、完全な球状に形成できないため流動性が悪いこと等もあげられる。そこで近時、上記フェライト粒子からなるキャリヤの問題点を解消して、形成画像の高画質化を図るべく、結着樹脂からなる粒子中に磁性粉を分散させた軽量なキャリヤ、いわゆるバインダー型のキャリヤについての研究、開発が盛んに行われている。
【0006】このバインダー型のキャリヤは、フェライト粒子より軽量であるため、磁気ブラシが遠心力によって大きく伸びることがない上、慣性力が小さいため感光体の表面を傷つけたり、感光体の表面に静電付着したトナーを掻き取ったり付着位置をずらしたりすることがない。上記バインダー型のキャリヤは、スチレン−アクリル系等の結着樹脂、フェライト粉等の磁性粉およびその他の添加剤を溶融混練し、ついで粉砕し分級することでも製造できる。しかし、かかる粉砕型のキャリヤは、粒度分布が広く、かつ粒径が大きい上、完全な球状にならないという問題が残る。
【0007】そこで懸濁重合法を利用して、上記バインダー型のキャリヤを製造することが検討されている。この方法は、結着樹脂の元になるラジカル重合性のビニル単量体と、磁性粉その他の添加剤とを含む液状のモノマー相を分散媒中に液滴状に分散させつつ加熱して、ビニル単量体を重合させる方法である。かかる方法によって得られるバインダー型のキャリヤは、粒度分布が狭く、かつ小粒径化が可能で、しかも完全な球状に近いものが得られるため、フェライト粒子からなるキャリヤを使用した場合に比べ、形成画像の高品質化が可能となる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】ところが、マグネタイト粉等の磁性粉は、表面が親水性であること、比重がビニル単量体より著しく大きいこと、ビニル単量体に対して多量(体積比でほぼ2:1程度)に配合する必要があること、等に起因して、モノマー相中に均一に分散させるのが困難であるため、製造されたキャリヤ中における磁性粉の分散状態が不均一になり、キャリヤの磁気特性や電気特性が不均一化する等のおそれがある。また、製造されたキャリヤにおいては、磁性粉とキャリヤの結着樹脂との親和性が低く、両者が十分に結合していないため、両者の界面からキャリヤ割れが発生したり、磁性粉がキャリヤ粒子から脱落したりして、形成画像を汚染し、現像剤の性能が低下するおそれもある。
【0009】そこで、磁性粉の分散性、分散安定性を向上させるとともに、結着樹脂に対する親和性を向上させるために、チタネートカップリング剤、シランカップリング剤、アルミニウムカップリング剤等のカップリング剤で処理して表面を疎水化した磁性粉を使用することが提案された(特開昭56−51755号公報、特開昭59−224102号公報、特開昭60−254054号公報、特開昭61−53653号公報等)。しかし十分な処理効果を得るには、磁性粉を過剰量のカップリング剤で処理する必要があり、生成キャリヤ中には余剰のカップリング剤が低分子量の状態で存在するため、製造されるキャリヤは、耐熱性、耐摩耗性に劣るとともに、硬度が低く柔らかいものとなってしまう。
【0010】バインダー型のキャリヤの場合、硬度が低いと凝集しやすくなり、たとえば現像部の穂切り板(磁気ブラシの厚みを調整する部材)等の部分に詰まって、詰まった部分だけ磁気ブラシが形成されず、画像に白筋が発生したりするという問題を生じる。また、硬度が低いキャリヤは割れやすくなり、割れたキャリヤから脱落した磁性粉が、形成画像を汚染するおそれもある。
【0011】磁性粉の表面に吸着しうるモノあるいはビス有機リン酸エステル化合物のモノマーと、その他の重合性モノマーとを水の存在下で重合させて、磁性粉の表面を重合体でカプセル化することも提案されている(特開昭63−281409号公報参照)。ところが、重合体の重合度が大きくなる程、その他の重合性モノマーの特性が大きく現れて、モノあるいはビス有機リン酸エステル化合物による磁性粉表面への吸着効果が薄れるので、高分子の磁性粉表面への吸着性を確保するには、重合体の重合度をあまり大きくできない。このため、製造されるキャリヤは、やはり耐熱性、耐摩耗性に劣るとともに、硬度が低く柔らかいものとなってしまい、先にあげた種々の問題を生じる。
【0012】また上記処理を行った磁性粉は、上記のように分子量の低い重合体を多量に含むので、モノマー相の粘度が高くなって、分散媒中に液滴状に分散させるのが困難になり、50〜70μm以下程度の小粒径のキャリヤが得られない、キャリヤの粒度分布が広くなってしまう、等の問題を生じる。本発明は以上の事情に鑑みてなされたものであって、磁性粉の分散性、分散安定性、結着樹脂との親和性がよく、小粒径でかつ粒度分布の幅が狭く、しかも耐熱性、耐摩耗性等にすぐれ、硬くかつ割れにくいため、キャリヤ等に好適に使用できる磁性粒子と、その重合法による製造方法とを提供することを目的としている。
【0013】
【課題を解決するための手段および作用】上記課題を解決するための本発明の磁性粒子は、表面にカップリング剤を介して高分子鎖が結合した磁性粉を含有することを特徴とする。また本発明の磁性粒子の製造方法は、磁性粉を、分子中に官能基を有するカップリング剤(以下「官能基含有カップリング剤」という)で処理して表面に官能基を導入し、この官能基と結合する官能基を有する重合開始剤を反応させて、磁性粉の表面に当該重合開始剤を結合させた後、この磁性粉とビニル単量体とを含むモノマー相を分散媒中に液滴状に分散させつつ重合させることを特徴とする。
【0014】上記構成からなる本発明においては、磁性粉を、官能基含有カップリング剤で処理すると、磁性粉の表面の親水性基(水酸基、硫酸基、硝酸基等)が当該カップリング剤によってマスキングされて磁性粉が疎水化されるため、磁性粉のモノマー相への分散性、分散安定性が向上する。また磁性粉の表面に導入された官能基含有カップリング剤の官能基には、その後の工程で重合開始剤が結合され、さらに懸濁重合工程で重合性の単量体が結合されてグラフト鎖を生成し、磁性粉をグラフト化する。
【0015】したがって本発明によれば、磁性粉の分散性、分散安定性ならびに結着樹脂との親和性が向上するので、モノマー相に分散した磁性粉が再凝集して磁気特性が不均一化したり、あるいは、製造された磁性粒子に割れや磁性粉の脱落が発生したりすることが防止される。グラフト化の反応は、上記2段階の処理によって表面に重合開始剤が導入された磁性粉と、重合性のビニル単量体との間で進行するのでグラフト化率が著しく高い。さらに磁性粉の処理に使用した官能基含有カップリング剤は、もし余剰分が発生しても、その後の工程で官能基に重合開始剤が結合され、さらに懸濁重合工程で単量体が重合して高分子化するので、低分子量のままで磁性粒子中に存在することはない。したがって製造された磁性粒子は、耐熱性、耐摩耗性等にすぐれるとともに、硬くかつ割れにくいものとなる。
【0016】しかも、上記のように懸濁重合工程に到るまでの前段階においては重合体が発生することがないので、懸濁重合に使用するモノマー相の粘度は低く、分散媒中に液滴状に分散させるのが容易となる。したがって製造された磁性粒子は、小粒径でかつ粒径分布が狭く、粒径の揃ったものとなる。以下に本発明を、製造方法の工程にしたがって説明する。
【0017】まず磁性粉を、前記官能基含有カップリング剤で処理して、磁性粉の表面に官能基を導入する。磁性粉と官能基含有カップリング剤との反応は、通常のカップリング剤と同様に室温程度の比較的低温で進行するので、上記処理を行うには、たとえば所定量の磁性粉とカップリング剤とを適当な溶媒中に投入して混合するだけでよい。
【0018】磁性粉の処理に使用される官能基含有カップリング剤としては、1分子中にカップリング剤の部分と、グリシドキシ基やイソシアネート基等の官能基とを含む種々の化合物を使用することができる。官能基含有カップリング剤としては、たとえば式(1) 〜(8) に示す各種のシランカップリング剤等があげられる。
【0019】
【化1】


【0020】
【化2】


【0021】官能基含有カップリング剤の使用量はとくに限定されないが、磁性粉100重量部に対して0.1〜10重量部の範囲内が好ましく、1〜5重量部の範囲内がより好ましい。官能基含有カップリング剤の使用量が上記範囲を下回った場合には、磁性粉が十分に疎水化されず、分散性、分散安定性が低下するおそれがある他、グラフト化率が低下するので、結着樹脂との親和性が悪化して割れや磁性粉の脱落を生じたり、あるいはグラフト化率が低下する分、耐熱性、耐摩耗性等が悪化したり、磁性粒子が柔らかくかつ割れやすくなったりするおそれがある。
【0022】一方、官能基含有カップリング剤の使用量が上記範囲を超えた場合には、粒子中に、磁性粉にカップリングしないフリーのカップリング剤が残存し、あるいは、次工程で添加する重合開始剤の必要量が増し、その結果、トナーの耐湿性や帯電安定性、さらには、キャリヤや磁性トナーの寿命に悪影響を与える。官能基含有カップリング剤は1種を単独で使用できる他、2種以上を併用することもできる。
【0023】官能基含有カップリング剤によって処理される磁性粉の種類についてはとくに限定されない。本発明では、強磁性を示す金属やその合金、各種のフェライト、あるいは強磁性を示す元素を含有しないが、適当に熱処理することによって強磁性を示す合金等、現在知られているあらゆる種類の磁性材料の粉末を使用することができる。強磁性を示す金属としては、鉄、コバルト、ニッケル等があげられ、上記のようにこれらの金属を含有する合金を使用することもできる。フェライトとしては、たとえば四三酸化鉄(Fe3 4 )、三二酸化鉄(γ−Fe2 3 )、酸化鉄亜鉛(ZnFe2 4 )、酸化鉄イットリウム(Y3 Fe5 12)、酸化鉄カドミウム(CdFe2 4 )、酸化鉄ガドリニウム(Gd3 Fe5 4 )、酸化鉄銅(CuFe2 4 )、酸化鉄鉛(PbFe1219)、酸化鉄ネオジム(NdFeO3 )、酸化鉄バリウム(BaFe1219)、酸化鉄マグネシウム(MgFe2 4 )、酸化鉄マンガン(MnFe2 4 )、酸化鉄ランタン(LaFeO3 )等があげられる。また熱処理によって強磁性を示す合金としては、たとえばマンガン−銅−アルミニウムや、マンガン−銅−錫などの、マンガンと銅を含有するホイスラー合金等があげられる。これらは単独で使用される他、2種以上を併用することもできる。磁性粉の粒径についてはとくに限定されず、通常のバインダー型キャリヤに使用されるのと同程度、すなわち0.01〜5μm程度が好ましい。磁性粉の粒径が上記範囲を下回ると、飽和磁化の低下を招いたり、モノマー相の粘度が増大して、微小でかつ均一な粒径の磁性粒子が得られなくなるおそれがある。また磁性粉の粒径が上記範囲を超えると、たとえ官能基含有カップリング剤によって処理しても、分散性、分散安定性が不十分になり、懸濁重合時に液滴から磁性粉が脱落する等して、均質な磁気特性の磁性粒子が得られなくなるおそれがある。
【0024】処理に使用する溶媒としては、非水性の種々の溶媒を使用できる。つぎに上記処理液に、磁性粉の表面に導入された官能基含有カップリング剤の官能基と結合しうる官能基を有する重合開始剤を加えると、磁性粉の表面に導入された官能基と、重合開始剤の官能基とが結合して、磁性粉の表面に、カップリング剤を介して重合開始剤が結合する。
【0025】上記重合開始剤としては、1分子中に官能基含有カップリング剤の官能基と結合しうる官能基と、重合開始剤の部分とを含む種々の化合物を使用することができる。官能基含有カップリング剤の官能基と結合しうる官能基が、前記のようにグリシドキシ基やイソシアネート基である場合、重合開始剤側の官能基としては、上記グリシドキシ基等と室温程度の比較的低温の条件下で結合しうるカルボン酸基等が好ましい。また重合開始剤の部分としては、上記カルボン酸基やグリシドキシ基等と室温で反応せず、しかも、加熱等によってラジカルを発生して、重合性のビニル単量体の重合反応を開始しうるアゾ基等が好ましい。
【0026】上記重合開始剤の具体例としては、たとえば4,4′−アゾビス(4−シアノバレリアン酸)、2,2′−アゾビス(2−シアノプロピオン酸)、2,2′−アゾビス(2−メチルプロピオン酸)、4,4′−アゾビス(4−メチルバレリアン酸)等があげられる。重合開始剤の使用量はとくに限定されないが、当該重合開始剤の官能基当量が、官能基含有カップリング剤の官能基当量以上となるように、使用量を設定するのが望ましい。重合開始剤の官能基当量が、官能基含有カップリング剤の官能基当量未満である場合には、磁性粉の表面に、重合開始剤が結合していない官能基含有カップリング剤が残存して、その官能基により磁性粉が親水性を示し、製造される磁性粒子の耐候性とくに耐湿性に悪影響を及ぼすおそれがある他、磁性粉の表面に結合しなかった過剰のカップリング剤が、重合開始剤によって高分子化されることなく、低分子量のまま磁性粒子中に残存して、耐熱性、耐摩耗性等が悪化したり、磁性粒子が柔らかくかつ割れやすくなったりするおそれがある。
【0027】重合開始剤は1種を単独で使用できる他、2種以上を併用することもできる。上記処理の後、本発明の製造方法においては、処理済みの磁性粉をビニル単量体等と混合して懸濁重合用のモノマー相を作製する。そしてこのモノマー相を、適当な分散媒中に液滴状に分散させつつ重合させると、本発明の磁性粒子が製造される。
【0028】なお、磁性粉の表面に結合した重合開始剤は、熱等によって切断された際に、磁性粉側に残った部分と磁性粉から切り離された部分の両方に遊離ラジカルを生じるので、上記モノマー相には、敢えて重合開始剤を添加する必要はない。しかし結着樹脂の生成をより確実にするために、また、生成する結着樹脂の分子量の制御のためには、補助的に重合開始剤を添加してもよい。
【0029】ビニル単量体としては、たとえばモノビニル芳香族単量体、アクリル系単量体、ビニルエステル系単量体、ビニルエーテル系単量体、ジオレフィン系単量体、モノオレフィン系単量体、ハロゲン化オレフィン系単量体、ポリビニル系単量体等の従来公知の種々のビニル系単量体を使用することができる。モノビニル芳香族単量体としては、下記一般式(9) :
【0030】
【化3】


【0031】〔式中R2 は水素原子、低級アルキル基またはハロゲン原子を示し、R3 は水素原子、低級アルキル基、ハロゲン原子、アルコキシ基、アミノ基、ニトロ基、ビニル基、スルホ基、ナトリウムスルホナト基、カリウムスルホナト基またはカルボキシル基を示す。)で表される化合物、たとえばスチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、α−クロロスチレン、o,m,p−クロロスチレン、p−エチルスチレン、スチレンスルホン酸ナトリウムなどがあげられる。
【0032】アクリル系単量体としては、下記一般式(10):
【0033】
【化4】


【0034】〔式中R4 は水素原子または低級アルキル基を示し、R5 は水素原子、炭素数12までの炭化水素基、ヒドロキシアルキル基、ビニルエステル基またはアミノアルキル基を示す。)で表される化合物、たとえばアクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸フェニル、アクャリロニトリル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル、β−ヒドロキシアクリル酸エチル、γ−ヒドロキシアクリル酸ブチル、δ−ヒドロキシアクリル酸ブチル、β−ヒドロキシメタクリル酸エチル、γ−アミノアクリル酸プロピル、γ−N,N−ジエチルアミノアクリル酸プロピル、エチレングリコールジメタクリル酸エステル、テトラエチレングリコールジメタクリル酸エステルなどがあげられる。
【0035】ビニルエステル系単量体としては、たとえばギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどがあげられる。ビニルエーテル系単量体としては、たとえばビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニル−n−ブチルエーテル、ビニルフェニルエーテル、ビニルシクロヘキテルエーテルなどがあげられる。
【0036】ジオレフィン系単量体としては、たとえばブタジエン、イソプレン、クロロプレンなどがあげられる。モノオレフィン系単量体としては、たとえばエチレン、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1,4−メチルペンテン−1などがあげられる。ハロゲン化オレフィン系単量体としては、たとえば塩化ビニル、塩化ビニリデンなどがあげられる。
【0037】さらにポリビニル単量体としては、たとえばジビニルベンゼン、ジアリルフタレート、トリシアヌレートなどがあげられる。これらは単独で使用できる他、2種以上を併用することもできる。たとえば、最も一般的なスチレン−アクリル系の結着樹脂を含む磁性粒子を製造する場合には、ビニル単量体としてスチレンとアクリル系単量体とを併用すればよい。
【0038】上記ビニル単量体と、表面に重合開始剤が結合された磁性粉との配合割合は、磁性粒子の用途によって異なるが、バインダー型のキャリヤの場合には、ビニル単量体の総量100重量部に対して、磁性粉が100〜250重量部、好ましくは150〜200重量部の割合で配合されるのが好ましい。補助的に使用される重合開始剤としては、分散媒に不溶で、かつビニル単量体との相溶性のあるものが好ましく、たとえばアゾビスイソブチロニトリル、2,2′−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2′−アゾビス−(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2′−アゾビス−(2−シクロプロピルプロピオニトリル)、2,2′−アゾビス−(2−メチルプロピオニトリル)、2,2′−アゾビス−(2−メチルブチロニトリル)、1,1′−アゾビス−(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2−フェニルアゾ−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、ジメチル−2,2′−アゾビス(2−メチルプロピオネート)等のアゾ化合物;クメンヒドロペルオキシド、t−ブチルヒドロペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ジ−t−ブチルペルオキシド、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル等の過酸化物が使用できるほか、紫外線や可視光線の照射による重合を行う場合には、従来公知の光重合開始剤を使用することもできる。これらは単独で使用される他、2種以上を併用することもできる。
【0039】重合開始剤の使用量は、ビニル単量体100重量部に対して0.001〜10重量部、好ましくは0.01〜6重量部の範囲である。なおγ線、加速電子線等を用いて重合を開始させることも可能であり、この場合には重合開始剤を使用しなくてもよい。また、紫外線と各種光増感剤とを組合せて重合を開始してもよい。
【0040】また必要に応じて、以上の各成分の他に、種々の添加剤、たとえば電荷制御剤やオフセット防止剤(離型剤)、架橋剤等を配合することもできる。電荷制御剤は、磁性粒子を2成分系現像剤のキャリヤや、1成分系現像剤としての磁性トナーに使用する場合に配合されるもので、帯電極性によって、正電荷制御用と負電荷制御用の2種の電荷制御剤がある。
【0041】正電荷制御用の電荷制御剤としては、塩基性窒素原子を有する有機化合物、例えば塩基性染料、アミノピリン、ピリミジン化合物、多核ポリアミノ化合物、アミノシラン類等や、上記各化合物で表面処理された充填剤等があげられる。負電荷制御用の電荷制御剤としては、ニグロシンベース(CI5045)、オイルブラック(CI26150 )、ボントロンS、スピロンブラック等の油溶性染料;スチレン−スチレンスルホン酸共重合体等の電荷制御性樹脂;カルボキシ基を含有する化合物(例えばアルキルサリチル酸金属キレート等)、金属錯塩染料、脂肪酸金属石鹸、樹脂酸石鹸、ナフテン酸金属塩等があげられる。
【0042】電荷制御剤は、ビニル単量体100重量部に対して0.1〜10重量部、好ましくは0.5〜8重量部の割合で使用される。オフセット防止剤は磁性粒子の凝集を防止するためのもので、脂肪族系炭化水素、脂肪族金属塩類、高級脂肪酸類、脂肪酸エステル類もしくはその部分ケン化物、シリコーンオイル、各種ワックス等があげられる。中でも、重量平均分子量が1000〜10000程度の脂肪族系炭化水素が好ましい。具体的には、低分子量ポリプロピレン、低分子量ポリエチレン、パラフィンワックス、炭素原子数4以上のオレフィン単位からなる低分子量のオレフィン重合体、シリコーンオイル等の1種または2種以上の組み合わせが適当である。
【0043】オフセット防止剤は、ビニル単量体100重量部に対して0.1〜10重量部、好ましくは0.5〜8重量部の割合で使用される。架橋剤は、結着樹脂や磁性粉のグラフト鎖を架橋させて、磁性粒子の機械的あるいは熱的特性を改善するとともに、磁性粉と結着樹脂とをより一層強固に一体化するために配合されるもので、たとえばジビニルベンゼン等のジビニル化合物;ジアリルフタレート、ジアリルイソフタレート、ジアリルアジペート、ジアリルグリコレート、ジアリルマレエート、ジアリルセバケート等のジアリル化合物;トリアリルホスフェート、トリアリルアコニテート、トリアリルシアヌレート、トリメリット酸アリルエステル、ピロメリット酸アリルエステル等のトリアリル化合物;1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ブチレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート等のジアクリレート化合物;トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート等のトリアクリレート化合物;1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、ブチレングリコールジメタクリレート等のジメタクリレート化合物;トリメチロールプロパントリメタクリレート等のトリメタクリレート化合物;ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、N,N,N′,N′−テトラキス(β−ヒドロキシエチル)エチレンジアミンのアクリル酸エステル等のポリ(メタ)アクリレート化合物;アリルアクリレート、アリルメタクリレート等のアリル−アクリル系化合物;N,N′−メチレンビスアクリルアミド、N,N′−メチレンビスメタクリルアミド等のアクリルアミド化合物;ポリウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、ポリエーテルアクリレート、ポリエステルアクリレート等のプレポリマーなどがあげられる。
【0044】架橋剤は、ビニル単量体100重量部に対して0〜10重量部、好ましくは0.1〜5重量部の割合で使用される。なお、本発明の磁性粒子をキャリヤに使用する場合には、架橋剤をこれ以上の割合で配合しても差し支えない。本発明の磁性粒子を、磁性トナーとして使用する場合には、さらに、着色剤を配合することもできる。着色剤としては、カーボンブラック、アニリンブルー、カルコオイルブルー、クロムイエロー、ウルトラマリンブルー、デュポンオイルレッド、キノリンイエロー、メチレンブルークロライド、フタロシアニンブルー、マラカイトグリーン、ローズベンガル等、従来公知の種々の着色剤を使用することができる。着色剤は、ビニル単量体100重量部に対して1〜15重量部、好ましくは5〜10重量部の割合で使用される。
【0045】上記各成分からなるモノマー相が分散される分散媒としては、ビニル単量体等の原料成分および重合後の磁性粒子を全く溶解しないか、あるいは殆ど溶解せず、しかも不活性な溶媒が使用される。好適な分散媒としては、たとえば水または水系の溶媒などがあげられる。良好な分散状態を得るため、上記分散媒には懸濁安定剤を配合するのが好ましい。
【0046】懸濁安定剤としては従来公知の種々の懸濁安定剤が使用できるが、目的とする磁性粒子の粒径が、キャリヤの場合50〜70μm以下、磁性トナーの場合5〜10μm以下であることを考慮すると、懸濁分散能力にすぐれている必要があり、また製造後の磁性粒子の特性に影響を与えないためには、磁性粒子から除去しやすいものである必要がある。上記の要件を満たす、本発明に好適に使用される懸濁安定剤としては、たとえばリン酸三カルシウム等のリン酸カルシウム塩と、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムとの組み合わせ等があげられる。
【0047】上記分散媒中に、前記の各成分を含有するモノマー相を加え、たとえば102〜108 ダイン/cm程度の剪断力で攪拌すると、モノマー相が分散媒中に懸濁して球状に造粒される。この状態で、−30〜90℃、特に30〜80℃の温度で0.1〜50時間程度の重合を行うと、ビニル単量体が重合して球状の磁性粒子が得られる。このとき、酸素による重合の停止反応を抑制するために反応系内を不活性ガスで置換することが好ましい。かくして得られる磁性粒子は、高解像度の画像を得るためには、体積平均粒径が、前記のようにキャリヤの場合50〜70μm以下、磁性トナーの場合5〜10μm以下が望ましい。
【0048】上記本発明の製造方法によれば、モノマー相中に含まれる各成分はいずれも低分子量であるためモノマー相は低粘度で、分散媒中に液滴状に分散させるのが容易である。したがって、キャリヤの場合50〜70μm以下、磁性トナーの場合5〜10μm以下でかつ粒度分布がきわめて狭い、粒径の揃った磁性粒子を製造することができる。
【0049】また磁性粉は、官能基含有カップリング剤によって疎水化されているため、モノマー相中に分散させた際の分散性、分散安定性にすぐれており、再凝集することがないので、生成された磁性粒子中にほぼ均一に分散されており、磁性粒子は磁気特性にすぐれたものとなる。さらに重合反応時には、上記磁性粉の表面の重合開始剤にビニル単量体が重合して高効率でグラフト化されるため、磁性粉にグラフトした高分子と磁性粒子の結着樹脂とが磁性粒子中でほぼ均一に混和した状態となって、磁性粉と結着樹脂とが一体化する。このため、両者の界面から割れが発生したり、磁性粉が磁性粒子から脱落したりするおそれがなく、製造された磁性粒子は、耐久性にすぐれたものとなる。
【0050】しかも上記反応過程では、磁性粒子の物性を低下させる低分子量の重合体や未反応の成分などは殆ど生成しないので、磁性粒子は、耐熱性、耐摩耗性等にすぐれるとともに、硬くかつ割れにくいものとなる。なお、本発明の磁性粒子は、前記のように、帯電性のトナーとともに2成分系の現像剤を構成するキャリヤとして使用できる他、1成分系の現像剤としての磁性トナーや磁気ディスプレイ等の種々の分野に使用することができる。
【0051】
【実施例】以下に本発明を、実施例、比較例に基づいて説明する。
実施例1乾燥雰囲気下で、四三酸化鉄粉(チタン工業社製の品番BL−100)100重量部および四三酸化鉄粉(チタン工業社製の品番BL−200)100重量部と、官能基含有カップリング剤としての、前記式(7) で表される3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン0.7重量部とを、500重量部のアセトン中に添加し、5分間攪拌、混合して処理した。
【0052】つぎに上記処理液に、重合開始剤としての4,4′−アゾビス(4−シアノバレリアン酸)1.2重量部を加えて、さらに5分間攪拌、混合して処理した後、減圧乾燥法によってアセトンを除去して処理済みの四三酸化鉄粉を回収した。つぎに、上記四三酸化鉄粉200.19重量部を、下記に示す各成分と混合してペースト状のモノマー相を作製した。
【0053】
成 分 重量部・ビニル単量体: スチレン 70 ブチルメタクリレート 20・架橋剤: ジビニルベンゼン 2 ジエチレングリコールジメタクリレート 8・重合開始剤: 2,2′−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル) 6つぎに、分散媒としての蒸留水600重量部に、懸濁安定剤としてのリン酸三カルシウム40重量部およびドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.5重量部を溶解した後、上記モノマー相を加え、TKホモミキサー〔特殊機化工業社製〕の高粘度用脚部を改造したミキサーを用いて回転数7000r.p.m.で12分間攪拌して懸濁させて、モノマー相を液滴化した。
【0054】つぎに、この懸濁液をセパラブルフラスコ中に移し替え、窒素雰囲気下、回転数250r.p.m.で攪拌しつつ80℃に加熱して、5時間重合反応させた。そして、重合粒子をろ別して希酸洗浄、水洗浄、乾燥を行って、磁性粒子を得た。
実施例2官能基含有カップリング剤として、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランに代えて、前記式(4) で表される3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン0.7重量部を使用したこと以外は、上記実施例1と同様にして磁性粒子を得た。
【0055】比較例1官能基含有カップリング剤としての3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランおよび重合開始剤としての4,4′−アゾビス(4−シアノバレリアン酸)で処理していない四三酸化鉄粉(チタン工業社製の品番BL−100)100重量部および四三酸化鉄粉(チタン工業社製の品番BL−200)100重量部を使用したこと以外は、上記実施例1と同様にしてモノマー相を作製したところ、四三酸化鉄粒子は単量体に対する濡れ性が低いため、均質なモノマー相が得られなかった。そして、上記モノマー相を分散媒中に投入して実施例1と同条件で懸濁を試みたが、モノマー相を液滴化することはできなかった。
【0056】比較例2官能基含有カップリング剤としての3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランに代えて、官能基を含有しない通常のシランカップリング剤(トーレシリコーン社製の品番SH6020)0.7重量部を使用したこと以外は、上記実施例1と同様にして磁性粒子を得た。
【0057】実施例3官能基含有カップリング剤として、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランに代えて、前記式(1) で表される3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン0.8重量部を使用したこと以外は、上記実施例1と同様にして磁性粒子を得た。
【0058】上記各実施例、比較例について以下の各試験を行い、特性を評価した。
平均粒径測定各実施例、比較例で製造した磁性粒子の粒度分布のうち体積基準のメジアン径D50を、レーザー回折式粒子径測定装置(堀場製作所製の型番LA−700)を用いて測定して平均粒径とした。また、25%残留径D25と75%残留径D75との比D25/D75を求めて、粒度分布の幅を評価した。結果を表1に示す。
【0059】
【表1】


【0060】上記表1の結果より、実施例1〜3の磁性粒子はいずれも、比較例2の磁性粒子に比べてD50が小さいことから平均粒径が小さく、またD25/D75が小さいことから、粒度分布の幅が狭く、粒径の揃ったものであることがわかった。そしてこの事実から、本発明の製造方法によれば、モノマー相の粘度を低くでき、したがって、モノマー相を微小な液滴として分散媒中に分散させるのが容易になることが確認された。
【0061】実用試験各実施例、比較例で製造した磁性粒子をキャリヤとして、それぞれ、平均粒径10μmのトナー〔三田工業(株)製のDC2585用〕と、トナー濃度が8%となるように配合して2成分系の現像剤を作製し、以下の各測定を行って、特性を評価した。
【0062】■ 画像濃度測定各現像剤を、三田工業(株)製の普通紙複写機(型番DC2585)にスタート現像剤として使用するとともに、現像剤に使用したのと同じトナーを補給用トナーとして使用しつつ、黒白原稿の1万枚の連続複写を行い、画像形成1枚目(初期)、2千枚目、6千枚目および1万枚目の形成画像における画像濃度を、反射濃度計(東京電色社製の型番TC−6D)を用いて測定した。
【0063】■ かぶり濃度測定上記画像形成1枚目(初期)、2千枚目、6千枚目および1万枚目の形成画像の余白部分の濃度を、上記反射濃度計を用いて測定した。
■ ブローオフ帯電量測定上記1万枚の連続複写前(初期)、2千枚複写後、6千枚複写後および1万枚複写後における現像剤の帯電量を、東芝ケミカル社製のブローオフ帯電量測定器を用いて測定した。
【0064】画像濃度の測定結果を表2、かぶり濃度の測定結果を表3、ブローオフ帯電量の測定結果を表4にそれぞれ示す。
【0065】
【表2】


【0066】
【表3】


【0067】
【表4】


【0068】上記各表の結果より、比較例2の磁性粒子をキャリヤとして含有する現像剤は、複写枚数の増加にともなって画像濃度が低下し、かぶり濃度が上昇するとともに、ブローオフ帯電量が低下した。また形成画像を観察したところ、2千枚目の画像には全面にかぶりがみられ、6千枚目の画像には全面にかぶりがみられるとともに多数の白筋が発生した。そこで連続複写を中止して複写機の現像部を検査したところ、キャリヤが凝集して、現像部の穂切り板の部分に詰まっているのが観察された。
【0069】これに対し、実施例1〜3はいずれも、1万枚の連続複写を行っても、各特性にほとんど変化がみられず、形成画像も良好であった。そしてこのことから、実施例1〜3の磁性粒子は耐久性にすぐれたものであることが確認された。
【0070】
【発明の効果】以上詳述したように、本発明によれば、磁性粉の分散性、分散安定性、結着樹脂との親和性がよく、小粒径でかつ粒度分布の幅が狭く、しかも耐熱性、耐摩耗性等にすぐれるとともに硬くかつ割れにくい、バインダー型の磁性粒子が得られる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】表面にカップリング剤を介して高分子鎖が結合した磁性粉を含有することを特徴とする磁性粒子。
【請求項2】磁性粉を、分子中に官能基を有するカップリング剤で処理して表面に官能基を導入し、この官能基と結合する官能基を有する重合開始剤を反応させて、磁性粉の表面に当該重合開始剤を結合させた後、この磁性粉とビニル単量体とを含むモノマー相を分散媒中に液滴状に分散させつつ重合させることを特徴とする磁性粒子の製造方法。