説明

磁性粒子に結合された成分を、遠心力付与により分離する方法およびその装置

【課題】溶液から磁性粒子に結合した重要な成分を分離する方法の提供。
【解決手段】1つ以上の平らな室を持ち、各室は区画の外側部分25に上る傾斜底と、流体10をトラップする手段とを含み、該手段は、コンテナー11の区画の外部の内側に置かれている室と、磁性粒子21と磁性粒子に結合された重要な成分を捕獲するための磁石12とを持つコンテナー装置を提供する工程と、コンテナーの内部の外側でかつ磁石に隣接して置かれている軸19の周りに、コンテナーは、回転しながら、重要な成分を含む溶液を、室の内部に配置する工程と、重要な成分を固定する反応成分で塗布された磁性粒子を添加する工程と、磁性粒子と溶液を混合し、磁性粒子と上澄み液体とからなる混合物を生成する工程と、コンテナーを回転させることにより、遠心力によってトラップ手段中トラップされ、かつ磁性粒子が、内部の内側に固定されるように磁場が付与される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の目的は、磁力および遠心力を付与することにより、磁性粒子に結合した重要な成分を液体サンプルから分離する方法であって、該遠心力は、磁場により磁性粒子に有効な力の方向とは正反対に有効であり、また磁力は磁性粒子に対して有効な遠心力よりも高く、それにより液体から磁性粒子を分離することを特徴とする方法である。分離された液体はトラップにより拘束され、トラップされた液体は、さらに吸着材量に結合されることが好ましい。本発明のさらなる目的は、該方法を実行するための装置である。
【背景技術】
【0002】
磁性粒子の助けを用いて、生物材料、特に核酸をその自然の環境から単離する方法は、何年も前から公知である(たとえば欧州特許第0837871号明細書を参照)。公知の方法によれば、分離される重要な成分を含むサンプル混合物を磁性粒子と接触させ、混合しかつ重要な化合物が該粒子に結合するという条件下で、結合が起きる充分な時間の間、培養する。培養後、磁性粒子に結合した生物材料は、通常磁場を用いて流体から分離される。たとえば、培養が行われた容器またはピペットの壁に磁性粒子を引き付けることができる。続いて、磁性粒子に結合していないサンプル内容物を含む流体を、たとえば、吸引によりピペットを経由して除去する。
【0003】
しかしこれらの手法は、特定量の磁性粒子が反応容器および/またはピペットチップに付着するという不利な点を持っている。
【0004】
ピペット採取または吸引によりサンプル流体を除去する他の不利な点は、多数の組み立て部品のいずれか、たとえば、ロボット機械が必要とされ、または手動操作の欠陥を享受しなければならないということである。さらに、磁力を付与して液体または懸濁液から磁性粒子を引き出すためには、また引き続いてそれらを充分に洗浄する(通常、3〜4回)ためには長時間が必要である。他の不利な点は、塊または凝集物を集めた磁性粒子は、過剰の流体を保持する傾向にあり、凝集した塊は溶液中には再懸濁させるのが困難であるということである。
【0005】
米国特許第5098845号明細書(Babson)中には、特定の検体、たとえば抗体が付着されるかなり大きな球体(固体支持)を含む円形の容器が記述されている。縦軸の周りにカップを回転させることにより洗浄分離が行われ、そこでは、固体材料を容器中に残したままで、液体内容物を除去するために遠心力が働く。しかし該方法は、結合のために役立つ表面積が、球体の寸法に限定されるという被覆された容器と類似の不利な点を持っている。さらに不利な点は、被覆された容器は、マイクロ球体には使用できないし、また特に、磁性マイクロ球体用には使用できないことである。
【0006】
米国特許第6150182号明細書(Cassaday)中には、洗浄効率を向上させかつ磁性システムまたは遠心システム単独の不利を減少させる方法で、磁気抽出技術および遠心抽出技術を組み合わせる方法が記述されている。しかしながら、該方法の不利な点は、たとえ可能であっても、該方法を自動化することが困難であるということである。さらに、Cassadayにより記述された方法は、ピペット採取または吸引によりサンプル流体を除去する方法と関連した不利な点を凌駕していない。
【0007】
公知の装置および方法は、ロボット手段の必要性なしに、またはサンプルの手動取り扱いに含まれるリスク無しに、溶液から、磁性粒子に結合した重要な成分の分離を行うことができないという不利な点を持っている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は叙上の先行技術の欠点を取り除くことである。
【0009】
本発明は、重要な成分、たとえば、磁性粒子に結合した血漿、血液または尿から由来する成分を、溶液から分離する方法であって、磁力と遠心力の適用を組み合わせ、それにより後者が互いに正反対の方向を向くという方法に向けられている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の実施態様において、本発明は、溶液から磁性粒子に結合した重要な成分を分離する方法であって、特に次の工程:
(a)1つ以上の平らな室(I)を持ち、各室は、内部容積と、区画の外側部分に上る傾斜底(8)と、流体(10)をトラップする手段とを含み、該傾斜底は、1゜〜85゜の間の角度を持つことが好ましく、該手段は、コンテナーの区画の外部の内側に置かれていることを特徴とする室と、(II)磁性粒子と該磁性粒子に結合された重要な成分を捕獲するためのコンテナーの区画の内部(4)の外側に置かれた磁石とを持つコンテナー装置を提供する工程と、
(b)該コンテナーの内部の外側でかつ磁石に隣接して置かれている軸の周りに、該コンテナーは、回転する前に、重要な成分を含む該溶液の一部および必要なら、可能な追加の試薬とを、該室の内部容積中に配置する工程と、
(c)該コンテナーの内部の外側に置かれている軸の周りに、該コンテナーが回転する前に、重要な成分を含む溶液に該重要な成分を固定する反応成分で塗布された非常に多数の磁性粒子を添加する工程と、
(d)非常に多数の塗布された磁性粒子と該溶液を混合し、それにより該磁性粒子と上澄み液体とからなる混合物を生成する工程と、その後、
(e)該コンテナーを回転させることにより、該コンテナー内の磁性粒子と液体の混合物を回転させ、その結果、該液体の少なくとも一部が、該コンテナーの外部に放出され、そこでは、該液体が、遠心力(13)によってトラップ手段中に押しやられる間に、該液体の一部または全部が、コンテナーの外側部分において内部容積中に集積された手段によってトラップされ、かつ磁性粒子が、該内部容積の内部の内側に固定されるように磁場が付与されることを特徴とする、該磁性粒子と該液体を分離する工程と、からなることを特徴とする方法に向けられている。
【0011】
他の実施態様において、本発明は、溶液から磁性粒子に結合した重要な成分を分離するコンテナー装置であって、
該コンテナー装置は、
(1)1つ以上の室を持つコンテナーであって、各室は内部容積と室の外部に上がっていく傾斜底と流体をトラップするための手段とを持ち、該手段は該コンテナーの室の外部の内側に置かれていることを特徴とするコンテナーと、
(2)磁性粒子と該磁性粒子に結合された該重要な成分を捕獲するためのコンテナーの室の内部壁の外側に置かれた磁石と、
(3)該磁石に隣接した該コンテナーの中央に置かれた回転軸と、
(4)磁性粒子に対して、磁場たとえば、磁力(14)を付与するための手段と該コンテナーを回転するためのエンジンとからなることを特徴とするコンテナー装置に向けられている。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明による単一室(カートリッジ)と磁石の位置を示している。
【図2】本発明による中心に除去可能な磁石を持ったリング形状で配置されているカートリッジの断面を示している。
【図3】回転軸と除去可能な磁石を含む2つのカートリッジの断面を詳細に示している。
【図4】16の個々の室を持ったカートリッジのリングの平面図を示している。
【図5】室の下部(5)に取り付けられた反応チュ―ブ(15)を持った、本発明による単一室(カートリッジ)と磁石の位置を示している。
【図6】8個の分離室を持ったコンパクトカートリッジの平面図を示している。
【図7】1つの単一相互接続可能なカートリッジの上部の詳細を示している。
【図8】ピペット採取装置によりピペット採取されるように用意された線形配列の相互接続可能なカセットを示している。
【図9】第1および第3の12個接続された室が、ピペット採取位置に配置され、また第2および第4の12個接続された室が、回転位置に配置されていることを特徴とする本発明による回転子装置を示している。
【発明を実施するための形態】
【0013】
重要な成分を分離する方法に対して適するコンテナー装置は、各室は内部容積からなる平らな室である1つ以上の区画と、傾斜底と区画の外部に上がっていく室(8)の低い部分の上昇部分と、流体(10)をトラップするための手段とからなる。各平らな室は、内部バリア(6)に隣接して置かれた第1ピペット採取開口部(1)と、第2内部ピペット採取開口部(2)を持ったカバー(23)を含み、両者は膜材料または熱可塑性プラスチック高分子弾性体で作られた材料で状況に応じて覆われている。本発明による装置のいくつかにおいて、各室の上り傾斜底の下部には、さらにピペット採取出口(17)がある。
【0014】
反応室として使用するのに適した内部容積は、区画の内部または壁(4)に隣接して置かれ、そこでは、流体をピペット採取する手段が、室の区画の外壁(25)内に置かれる。サンプルサイズまたは特定の応用に従って、室の寸法および室(5)の下部を、改質できる。本発明方法に適した装置中に含まれる典型的な室は、3〜13cmの高さと5〜25mmの厚さを持った内部壁(4)と、2〜12mmの高さと5〜80mmの間の厚みを持つ内部壁(4)と反対で平行に置かれた外壁(25)を含む。室の内部壁(4)の次には、内部バリア(6)がピペット採取開口部(1)および(2)を分離するために加えられている。内部壁(4)および外壁(25)は、適当に形成された平行側壁によって接続され、その結果、内部壁から外壁までの表面距離は、2〜12cmである。
【0015】
遠心力により本発明による区画の外部に動かされる液体または流体の流体をトラップする手段(10)は、カットオフ溝(7)の上部におけるギャップ(9)を持った物理的壁であり、該室の内部容積中の室のトップには到達しないことが好ましい。該流体をトラップする手段(10)の材料は、磁性粒子に結合しない物質を含む化学吸着材料または不可逆的に結合したサンプル流体に適する超吸着材料に基づくものが好ましく、後者は、磁石(12)の次の区画の内部に押しやられる。遠心分離後、他の全ての液体および非磁性成分を含めたサンプル液体が、該吸着材料中に封じ込まれかつ重要な材料のみが磁性粒子に結合される。続いて、磁性粒子に結合された重要な成分を洗浄しかつ加工することができる。
【0016】
分離プロセスの間コンテナーの区画の内部壁(4)の外側に置かれた磁石(12)を、たとえば、磁石を下方に除去することによりスイッチオフできる。従って、磁石を除去する前に、区画の内部壁(4)の内側における室(5)の下部中に濃縮されかつ捕獲された磁性粒子(21)は、室(5)の下部中の内部容積の流体中に放出される。たとえば、磁石を上下に移動させることにより、付与される磁場を容易にスイッチオンおよびスイッチオフ出来るという事実は、磁性粒子に結合した重要な成分を持った磁性粒子の洗浄または混合のために特に重要である。
【0017】
重要な成分を含む溶液の少なくとも一部が、1つ以上の室の内部容積中で処理されるとき、コンテナーの区画の内部壁の外側に置かれた磁石(12)は、スイッチオンされ、一方コンテナー装置は、該コンテナーの内部の外側に置かれた軸(19)の周りに回転する。好ましくは、サンプル液体の少なくとも一部が、コンテナーの外壁に追い出すようにコンテナー装置が、回転するときには、磁石は同時に同じ軸の周りに回転して、その結果、各室中の磁場は均一になる。
【0018】
サンプル液体または反応溶液(22)のみならず磁性粒子(21)を含む混合物に付与される回転運動は、該混合物の内側の磁性粒子上に有効である遠心力と同等かまたはそれ以下になるようにするのが好ましく、また該混合物の非磁性液体部分を、該トラップ手段(10)に移送するのに充分になるようにするのが好ましい。遠心力は、回転運動の速度を変化させることにより、通常変更される。好ましくは、1g〜100gの間の遠心力、より好ましくは、6g〜80gの間の遠心力が付与される。
【0019】
複数の磁性粒子(21)反応性の組成物によって被覆され、該反応性組成物が前記組成物と結合し、当該複数の磁性粒子が前記組成物を含む溶液に加えられる。当該磁性粒子の追加の間、当該磁石はオフに切り替えられ、当該装置の回転運動が中立状態になる。
【0020】
重要な成分を結合する反応成分を用いて被覆された非常に多くの磁性粒子は、重要な成分を含む溶液に対して添加される。磁性粒子の添加の間、磁石がスイッチオフされ、かつ装置の回転運動はニュートラルになる。
【0021】
該重要な成分が、たとえば、核酸、オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチド、タンパク質、抗体、抗原、またはハプテンまたは磁性粒子に直接的にまたは間接的に結合できる他の成分である定量に値する検体であってもよい。
【0022】
ある応用に対しては、平らな室には、室の底において、以後の反応、たとえば、PCR反応を行うための追加のチューブ(15)が、設けられている。室(4)の下部の底は、開口部(16)を持っており、そこでは、反応混合物を容易に反応チューブ(15)中に移送できる。磁性粒子に結合した重要な成分を、室の上向性底の下部にある開口部を経由して、該追加のチューブに通常移送する。
【0023】
本発明のさらなる目的は、溶液から磁性粒子に結合した重要な成分を分離する円形コンテナー装置であって、該コンテナー装置は、
(1)1つのコンテナーは、1つ以上の室を持ち、各室は、内部容積と、区画の外部に上がっていく傾斜底と、流体(10)をトラップするための手段とを持ち、該手段は、該コンテナーの区画の外壁(25)の内側に置かれていることを特徴とするコンテナーと、
(2)磁性粒子(21)と該磁性粒子に結合された重要な成分を捕獲するためのコンテナーの区画の内部壁(4)の外側に置かれた磁石(12)と、
(3)該磁石(12)に隣接した該円形コンテナーの中央に置かれた回転軸(19)と、
(4)磁性粒子に対して磁場、たとえば磁力を付与するための手段と該コンテナーを回転するためのエンジンとからなることを特徴とする円形コンテナー装置である。
【0024】
本発明による該コンテナー装置が、1つ以上の室を含み、各室が、1ml〜50mlの範囲の容積を持っており、より好ましくは、5ml〜25mlの範囲である。
【0025】
好ましくは、該コンテナー装置は、1つ以上の単一カセットまたはカートリッジに接続された多数の室を含み、各カセットまたはカートリッジは、1つまたは2つの他のカセットに接続されまたは接続可能である。該カセットは、2〜100室からなることが、好ましい。好ましくは、該カセットは、8、12、24、48、72または96室を含み、また線形または環状配列で配置可能である。
【0026】
本発明による特に好ましい実施態様は、接続可能な単一カセットを含む多数の室は、4、8、12、16、32、64または96までの単一相互接続可能なコンテナーのリングを形成する。これらのカセットまたはカートリッジは、それぞれ隣のカートリッジに柔軟に接続されることが好ましく、また平行に形成されているか、または好ましくは、回転軸(19)の周りのリング上に置かれ、各カセットが、個別化されている。単一コンテナー間の接続は、蝶番(28)を形成する他のコンテナーの鼻状細長い一片(26)を用いて、コンテナーの片側上にチャンネル(27)を組み立てることにより、達成されることが好ましい。
【0027】
本発明装置に使用される室は、通常平坦であり、また区画の外部に上がっていく傾斜底を含む。該傾斜底と該室の内部壁(4)の間の角度は、1゜〜85゜の間が好ましく、1゜〜60゜の間がより好ましい。本発明装置中に含まれる典型的な室は、3〜13cmの高さと5〜25mmの厚さを持った内部壁(4)と、2〜12cmの高さと5〜25mmの間の厚みを持つ内部壁(4)に対して反対で平行に置かれた外部壁(25)を含む。内部壁(4)および外壁(25)は、適当に形成された平行側壁によって接続され、その結果、内部壁から外壁までの表面距離は、おおよそ2〜12cmである。
【0028】
他の好ましい実施態様において、1つ以上の室は、少なくとも1つの入口および1つの出口または入口の引き込み口(1,2,17)を含んでおり、1つ以上の引き込み口は、柔軟なシートまたは膜材料を用いて覆われていてもよい。
【0029】
コンテナー装置には、コンテナーが、大量の液体で満たされたとき、また入口および出口の引き込み口(1,2,17)が、使用後閉じられるときに特に役立つ換気用の排出開口部(3)が設けられている。ウイルス性のサンプルを、コンテナー中に分離してかつ充満させることを意図するときには、後者は特に推奨される。排出開口部(3)は、多孔質のプラスチック、フリース、繊維材料または多孔質金属からなることが好ましい。
【0030】
遠心分離中に室(5)の低部の内部壁(4)に、磁性粒子(21)を結合させるために使用される磁石は、コンテナーの区画の内部壁(4)の外側に置かれる。さらに、該磁石(12)は、回転軸(19)とコンテナー装置の内部の間に置かれることが好ましい。他の実施態様においては、回転軸(19)および磁石(12)は、該コンテナーの内部の外側で両方とも中心に置かれる。
【0031】
リング形状の実施態様の1つにおいて、カセットまたはカートリッジのリングは2室以上からなり、該装置はライトサイクラー(LightCycler)装置(図4)のサンプル調製に特に適している。他の線形実施態様において、たとえば、室の2、4、6または8の線形配列が、直角のローター上で回転するときには、装置は高収率装置に適合し、そこでは1つの線形ピペット採取ヘッド上で、たとえば、2、4、6またはそれ以上のピペットを持った線形ピペット採取ヘッドによって、続いて処理されて、増幅は、マイクロタイタープレート・フォーマット・サーモサイクラー装置上で続いて行われる。さらにマイクロタイタープレート・フォーマット装置に適している他の実施態様では、プロセスのピペット採取相の間でも必要とされる線形配列は、蝶番で曲げられ、全カセット(およびカセット中に組み入れられた室)が回転軸から同じ距離を持ち、その結果、全反応が同じ遠心力で行われかつ全区画が同じ磁場に管理されるプロセスになるように、リングの一部を形成する。そのような実施態様を部分的に図9中に示す。
【0032】
本発明の特定の実施態様は、12室と、該室の各室中にある流体(10)の吸収またはトラップ採取(たとえば、スーパー吸収材料)用フリース材料と、該室(図7)の上部カバー(23)における第1および第2入口および/または出口引き込み口(1,2)をカバーする2枚の柔軟なシートとを含む円形装置である。図1および図8中に示すように、該円形装置の12室の各室は、区画の外部に向けて上がっていく傾斜底と、溝(7)の上部にあるギャップ(9)を持ったカットオフ溝(7)によって室(5)の下部から分離されたコンテナーの区画の外壁(25)の内側に置かれた流体トラップ採取手段とを含んでいる。該装置のコンテナーの内部の外側には、上下に取り外し可能な磁石が、置かれている。磁性粒子(21)を含む重要な成分および試薬からなるサンプル溶液は、室の外部に近く置かれた第1入口引き込み口(1)を経由して該室に添加される。重要な成分を含む溶液と磁性粒子(21)と他の必要な試薬を組み合わせかつ混合したのち、回転磁石(12)を位置に置いたまま該装置をゆっくりと回転させる。該装置の中心に磁石(12)が存在するために重要な成分を含む磁性粒子(21)は、区画の内部壁(4)の内側に結合される。該装置のわずかなまたは適度の回転運動により、残留液体または流体は、区画の外壁(25)の内側に置かれた吸着材料(10)に向けて、移送される。磁力および遠心力付与による分離プロセスは、通常は約3秒〜30秒の間の極数秒間に起きる。コンテナーの内部壁(4)の内側に結合した乾燥した磁性粒子(21)は、磁石(12)が除去されたのち、溶出緩衝液を用いて懸濁されることが好ましい。さらなる混合および培養工程の後に、懸濁液中の磁性粒子(21)とともに、またはもし磁石(12)を、その場所に再び置くとすれば、磁性粒子無しに、たとえばピペット採取チップを用いて溶出液を除去できる。柔軟なシートまたは膜材料によってカバーされた第2引き込み口(2)を経由して生成された溶出液を採取する。
【0033】
本発明の他の実施態様は、リング構造上に配置された多数の室からなる装置である。該室の構造およびサイズは、柔軟なシートまたはフィルム材料によって覆われている他の出口引き込み口(17)が、各室の底側に置かれていること以外は、上記したものに対応している。従って、精製された溶出液は、本発明装置の底側にある引き込み口に接続されている容器またはコンテナー中に直接移送され、そこでは分離された重要な成分を、さらに処理できる(たとえば、精製された核酸を増幅できる)。
【0034】
本発明による装置の室は、通常射出成型部品(たとえば、“Handbuch Spritzgiessen”, Hanser Publ. 2004, 77ff頁;“Werkstoff-Fuehrer Kunststoffe”Hanser Publ. 2001. 8. Ed., 83-89頁)によって製造されており、またこのようにして大変コスト的に有効である。
【0035】
本発明の他の目的は、溶液から磁性粒子に結合した重要な成分を分離するのに適したコンテナー装置を含む装置である。重要な成分を含む多数のサンプルを処理するための装置には、多数のピペット採取チップを持っているピペット採取装置が設けられている。これらの自動化されたピペットが、線形に配置されている。カセットを回転させるターンテーブルには、カセットを回転させるための4×12の位置が設けられている。12個の相互接続されたカセットは、同時にピペット採取装置によって処理される。ピペット採取手法に対しては、12個のピペット採取を持ったピペット採取ヘッドが同時に12個のカセットを処理できるように、相互接続されたカセットが線形に配置されている。12個のカセットの4ブロック全部を処理したのち、線形配置されたカセットがターンテーブル上に曲げられ、さらに良好な処理を可能にする。該カセットは、ターンテーブルの部分上に置かれる。ここで、実際の分離プロセスが実行され、カセットは回転軸に対して、全て同一の距離を持ち、磁石はカセットの内部壁の外側に置かれる。従って、48個のカセットは同時に処理され、望ましくない液体が室の外部にある吸収材料に移送され、そこでは該液体は、液体吸収材料に結合される。分離後、カセットは線形配列に曲げ戻され、この位置において、洗浄緩衝液の添加および混合などのさらなる工程を実行できる。該12個のピペット採取装置は、最初の12個のカセットに対して、必要な場合にはいくつかの部分の洗浄緩衝液および/または溶出緩衝液を添加する働きをする。48個の全てのカセットに対して磁性粒子を懸濁させたのち、前に記述したように次の分離を再び実行できる。
【0036】
該プロセスの終わりには、48サンプル(または必要な場合には、それより少なく)が実行され、また全ての重要な化合物は分離され、また禁止材料から精製され、また溶出溶液中で濃縮される。
【0037】
次の実施例は、さらに本発明方法および装置を記述する:
COBAS AmpliPrep/COBAS TaqManテストを用いたウイルスDNAの単離と精製
製造業者の処方にしたがって試薬を使用した。
使用した試薬:
溶解緩衝液:1.6ml
クエン酸ナトリウム・2水和物 pH=4.8
42.5%グアニジン チオシアン酸エステル
<14%ポリドカノール
0.9%ジチオスレイトール

プロテイナーゼ溶液:100μl
トリス緩衝液 pH=5.2
<0.05%EDTA
塩化カルシウム
酢酸カルシウム
7.8%プロテイナーゼ
グリセロール

結合緩衝液:820μl
クエン酸ナトリウム・2水和物 pH=4.8
42.5%グアニジン チオシアン酸エステル
<14%ポリドカノール
0.9%ジチオスレイトール

磁性粒子の懸濁液:120μl
磁性ガラス粒子
93%イソプロパノール

洗浄緩衝液:1×2.0mlおよび1×500μl
トリスベース緩衝液 pH=6.8
0.2%メチルパラベン

溶出緩衝液:65μl
トリスベース緩衝液 pH=7.6
0.2%メチルパラベン

吸着性材料:2.7g HySorbTM BASF,Ludwigshafen,ドイツ

重要な化合物:HBVウイルスDNA
生体サンプル:860μl血漿
【0038】
体積860μlの生体サンプルを、本発明による装置の外部近くの上面に置かれた第1入口引き込み口を経由して、1つ以上の温度制御された室に添加した。使用した装置は、全部で8室からなる。プロテアーゼ、たとえば、プロテイナーゼを含む溶解緩衝液を用いて、また可能であれば、結合緩衝液(またはアルコール)を用いて、該サンプルを予備処理する。磁性粒子の懸濁液の約120μlの一部を、該予備処理されたサンプルに添加する。8室を持った装置を含むローターを前後に数度だけわずかにうごかすことにより、室中での該溶液の混合および培養を行う。
【0039】
通常は5分以上必要としない培養後、重要な成分を磁性粒子に結合させる。磁石を上方へ移動させる。そのことは装置の中心に磁石を導入することにより、磁石のスイッチが入れられることを意味している。従って、該室の内部壁の内側に、磁性粒子を集める。適度な遠心力(たとえば、6xg)を付与することにより、非磁性成分を含むサンプル流体は該室の外壁に押しやられ、そこでは、吸着材料、たとえば衛生品に非常に幅広く使用されている材料、すなわちHySorbTM BASF,Ludwigshafen,ドイツまたは繊維マトリックス中で軽く架橋されたポリアクリル酸の部分カリウム塩(シグマーアルドリッチ社、米国ミズーリー州セントルイス63103)が置かれている。
【0040】
遠心分離後、装置の回転運動がニュートラルになったとき、磁石を下に動かし、その結果、結合された重要な成分を含む磁性粒子を該(反応)室の底に放つことにより、磁石を該装置から引き抜く。洗浄緩衝液(通常室毎に、1×2mlおよび2回目には、より少ない体積、たとえば500μl以下)の少量を多数回添加とローター装置の妥当な移動(たとえば、6xgを用いて1回かまたは2回)により得られた磁性粒子の懸濁液を、さらに精製する。従って、サンプルの望ましくない成分は洗浄溶液中に溶解されるが、重要な成分、核酸は磁性粒子に結合される。
【0041】
洗浄手法が、完了しまた妥当な遠心分離運動(たとえば、6xg)により、洗浄緩衝液の最後の部分を除去したときに、そのときに装置の中央にある元の位置に磁石を戻しておく。従って、残留する洗浄緩衝液は、装置の上り傾斜底を経由して、装置の外側にある吸着材料中に移送され、また重要な成分を持った磁性粒子は該室の内部壁に隣接した底に固定される。
【0042】
次の工程では、重要な成分が結合される乾燥された磁性粒子の精製された部分を含んだ各室に対して65μlの溶出緩衝液が添加される。従って重要な成分は、溶出緩衝液中に再び懸濁される。溶出後、その元の位置に磁石を再び挿入して、その結果、重要な成分を含まない磁性粒子が該室のそれぞれの位置に集められる。たとえば、上面上に置かれた柔軟なシートでカバーされた第2引き込み口を経由して、該室の内部に挿入されるピペット採取チップを用いて、該重要な成分を含む溶出緩衝液は除去されまた集められる。
【0043】
求められれば、状況によりHBVマスター混合物(65μl)と共に、精製された溶出液を容器、反応チューブ(15)または装置の各室の底側の引き込み口に接続されたコンテナー中に、直接移送可能であり、そこでは重要な成分が、たとえば増幅され、および/またはさらに分析される。
【0044】
本発明の方法および装置は、先行技術、たとえば「免疫学的検定ハンドブック」デイビッド・ワイルド著、ネイチャー出版グループ、2001年、316〜346頁と組み合わせて、以上提供した報告に対すると同様な方法で免疫学的検定に対して応用できる。
【符号の説明】
【0045】
1 ピペット採取開口部
2 内部ピペット採取開口部
3 排出口
4 室の内部壁
5 室の下部
6 内部バリア
7 カットオフ溝
8 室の下部の上り部分
9 ギャップ
10 流体トラップ手段、たとえば、超吸着材料
11 室のハウジング
12 磁石
13 遠心力の方向
14 磁力の方向
15 反応チューブ
16 反応チューブの開口部
17 ピペット採取出口
18 磁石の矢印運動
19 回転軸
20 室の下部の上り部分
21 磁性粒子
22 反応溶液/反応室
23 カバー
24 仕切り壁
25 室の外壁
26 鼻状細長い一片
27 チャンネル
28 蝶番

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶液から磁性粒子に結合した重要な成分を分離する方法であって、次の工程:
(a)1つ以上の平らな室(1)を持ち、各室は内部容積と区画の外側部分(25)に上る傾斜底と、流体(10)をトラップする手段とを含み、該手段はコンテナー(11)の区画の外部(25)の内側に置かれていることを特徴とする室と、磁性粒子(21)と該磁性粒子(21)に結合された重要な成分を捕獲するためのコンテナーの区画の内部(4)の外側に置かれた磁石(12)とを持つコンテナー装置を提供する工程と、
(b)一方で該コンテナーの内部(4)の外側でかつ磁石(12)に隣接して置かれている軸(19)の周りに、該コンテナーは回転しながら重要な成分を含む該溶液の少なくとも一部を該室の内部容積中に配置する工程と、
(c)重要な成分を含む溶液に、該重要な成分を固定する反応成分で塗布された非常に多数の磁性粒子(21)を添加する工程と、
(d)非常に多数の塗布された磁性粒子と該溶液を混合し、該磁性粒子と上澄み液体とからなる混合物を生成する工程と、その後、
(e)該コンテナーを回転させることにより、該コンテナー内の磁性粒子と液体の混合物を回転させ、その結果、該液体の少なくとも一部が該コンテナーの外部(25)に放出され、そこでは該液体が遠心力によってトラップ手段(10)中に押しやられる間に、該液体の一部または全部がコンテナーの外側部分(25)において内部容積中に集積された手段(10)によってトラップされ、かつ磁性粒子が該内部容積の内部(4)の内側に固定されるように磁場が付与されることを特徴とする磁性粒子と液体を分離する工程と、からなることを特徴とする方法。
【請求項2】
回転運動の速度は、磁性粒子上に作用する生成した遠心力が該混合物中の磁性粒子上に作用する遠心力と同等か、それより低くまた該混合物の非磁性液体部分を該トラップ手段に移送するのに充分になるようにすることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
付与される遠心力が、1g〜100gであることを特徴とする請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
流体(10)をトラップする該手段が、該室の内部容積中の室のトップに到達しない物理的壁であることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項5】
流体(10)をトラップする該手段が、化学吸収材または超吸収材料であることを特徴とする請求項1または4記載の方法。
【請求項6】
該重要な成分が、核酸、オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチド、タンパク質、抗体、抗原、またはハプテンまたは磁性粒子に直接的にまたは間接的に結合できる他の成分であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
該平らな室には、以後の反応を行うための追加のチューブ(15)が設けられ、該追加のチューブが室の底を経由して接続されていることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項8】
該底と該平らな室の内部壁(4)の間の角度は、1゜〜85゜の間であることを特徴とする請求項1〜7に記載の方法。
【請求項9】
溶液から磁性粒子に結合した重要な成分を分離するコンテナー装置であって、該コンテナー装置は、
(1)1つのコンテナーは、1つ以上の室を持ち、各室は内部容積と、室の外部(25)に上がっていく傾斜底と、流体(10)をトラップするための手段とを持ち、該手段は該コンテナーの室の外壁(25)の内側に置かれていることを特徴とするコンテナーと、
(2)磁性粒子(21)と該磁性粒子に結合された重要な成分を捕獲するためのコンテナーの室の内部壁(4)の外側に置かれた磁石(12)と、
(3)該磁石(12)に隣接したコンテナー装置の中央に置かれた回転軸(19)と、
(4)磁場を付与するための手段と該コンテナーを回転するためのエンジンとからなることを特徴とするコンテナー装置。
【請求項10】
該コンテナーが、1つ以上の室を含み、各室が1ml〜50mlの範囲の容積を持っていることを特徴とする請求項9記載のコンテナー装置。
【請求項11】
2つの追加の単一カセットに接続されたまたは接続可能な第1カセット中に結ばれた多数の室を含み、各カセットは2〜100室からなることを特徴とする請求項9または10記載のコンテナー装置。
【請求項12】
各単一カセットは、4〜96の単一相互接続可能なコンテナーを含むことを特徴とし、線形またはリング状配列を形成する単一カセット中に配置された多数の室を含むことを特徴とする請求項9〜11のいずれかに記載のコンテナー装置。
【請求項13】
1つ以上の特徴づけられたカセットが、回転軸(19)の周りのリング上に置かれていることを特徴とする請求項11または12記載のコンテナー装置。
【請求項14】
1つ以上の室は、好ましくは柔軟なシートまたは膜材料を用いて覆われている少なくとも1つの入口および出口(1,2)を含んでいることを特徴とする請求項9〜13のいずれかに記載のコンテナー装置。
【請求項15】
各室には、排出開口部(3)が設けられていることを特徴とする請求項1〜14のいずれかに記載のコンテナー装置。
【請求項16】
請求項9〜15のいずれかに記載のコンテナー装置からなる、溶液から磁性粒子に結合した重要な成分を分離する装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−115647(P2010−115647A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−256430(P2009−256430)
【出願日】平成21年11月9日(2009.11.9)
【出願人】(501205108)エフ ホフマン−ラ ロッシュ アクチェン ゲゼルシャフト (285)
【Fターム(参考)】