説明

磁性素子を付与した媒体、媒体の情報読取方法および装置

【課題】
この発明は、磁性素子を検知する複数の検知回路のうちの媒体に付与された磁性素子を検知した検知回路の組み合わせに応じて媒体に付与された磁性素子により形成される情報を読み取る磁性素子を付与した媒体、媒体の情報読取方法および装置を提供する。
【解決手段】
磁界が与えられることにより信号を発生する少なくとも1つの磁性素子が付与された媒体から識別情報を読み取る情報読取装置において、媒体に磁界を与え、該磁界により磁性素子から発生される信号を検出する複数の検知手段と、複数の検知手段のうちの磁界が与えられることにより磁性素子から発生される信号が検出された検知手段の組み合わせに応じて媒体に付与された磁性素子により形成される情報を読み取る情報読取手段とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、磁性素子を付与した媒体、媒体の情報読取方法および装置に関し、特に、磁性素子を検知する複数の検知回路のうちの媒体に付与された磁性素子を検知した検知回路の組み合わせに応じて媒体に付与された磁性素子により形成される情報を読み取る磁性素子を付与した媒体、媒体の情報読取方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、機密情報や個人情報等の漏洩防止、有価証券等の不正複写による偽造防止等、セキュリティ強化を目的とする種々の方法や装置が提供されている。
【0003】
有価証券等の偽造防止を目的として、例えば特定のパターンや赤外線吸収剤を含有する特殊インク等が潜像された特殊用紙を用いて有価証券等を作成することで、有価証券等の偽造を防止する方法が提案されている。
【0004】
この方法は、特殊用紙で作成された有価証券等がスキャナ(画像読取装置)や複写機等により複写された場合、特殊用紙に潜像された特定のパターン、特殊インク等が目視可能な状態で印刷され、複写物であることが識別されることで偽造が防止できるように構成されている。
【0005】
また、例えば、特許文献1には、カラーコピー機等による偽造や有価証券用紙自体の偽造を極めて困難にする偽造防止用紙およびそれを用いた有価証券の提案がなされており、特許文献2には、特定原稿の複写行為が行われても、必ず特定のパターンを付加できる画像処理装置及び方法が提案されている。
【0006】
上記特許文献1による提案は、パルプ繊維でなる紙基材に、メタメリックな色料を含有するインキが塗布された紙小片もしくは繊維片と、該メタメリックな色料を含有するインキと太陽光等通常光の下で同色相に見える通常色インキで着色された紙小片もしくは繊維片とが略同量漉き込まれた偽造防止用紙とすることで、カラーコピーされた有価証券類に色相が異なる2種の斑点状が現れ、偽造防止ができるように構成されている。
【0007】
また、上記特許文献2による提案は、原稿からの画像と転写材からの画像とを合わせて原稿の特定性を判定することで、特定性のある原稿の出力画像を必ず加工して出力し、本来複写されるべきでない特定原稿(例えば紙幣)が複写された場合に、複写した装置の所在地を限定する手がかりとすることができるように構成されている。
【特許文献1】特開2001−159094号公報
【特許文献2】特開平05−219351号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上記特許文献1及び特許文献2に示される提案は、いずれも用紙の画像情報が複写されて印刷出力されることで用紙に付与された特定のパターンが検知される、もしくは特定のパターンが付加されて検知されることで用紙が複写されたことを識別できるように構成されており、用紙をスキャンすることなく瞬時に用紙の複写を不可とする、もしくは特定原稿であるか否かを判別する方法や装置、偽造防止用紙等の提案が望まれる。
【0009】
また、用紙をスキャンして光学的に用紙上に付与された特定のパターンを検知する方法では、特定のパターンが形成された領域にゴミや汚れ等が存在する場合は、特定のパターンが誤検知される場合があり、これらの影響を受けることなく用紙に付与された複写不可の情報を確実に検知して複写防止を行う信頼性の高い装置や方法の提案が望まれる。
【0010】
そこで、本発明は、磁性素子を検知する複数の検知回路のうちの媒体に付与された磁性素子を検知した検知回路の組み合わせに応じて媒体に付与された磁性素子により形成される情報を読み取る磁性素子を付与した媒体、媒体の情報読取方法および装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、請求項1の発明は、磁界が与えられることにより信号を発生する少なくとも1つの磁性素子が付与された媒体から識別情報を読み取る情報読取装置において、前記媒体に磁界を与え、該磁界により前記磁性素子から発生される信号を検出する複数の検知手段と、前記複数の検知手段のうちの前記磁界が与えられることにより前記磁性素子から発生される信号が検出された前記検知手段の組み合わせに応じて前記媒体に付与された磁性素子により形成される情報を読み取る情報読取手段とを具備することを特徴とする。
【0012】
また、請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記複数の検知手段は、前記磁界が与えられることにより前記磁性素子から発生される信号を検出する検知コイルをそれぞれ具備し、前記検知コイルは、各中心位置がそれぞれ等間隔で格子状に配置されること
を特徴とする。
【0013】
また、請求項3の発明は、請求項2の発明において、前記検知コイルは、その検出領域が前記格子状の間隔に対応して設定されることを特徴とする。
【0014】
また、請求項4の発明は、請求項1乃至3のいずれかの発明において、前記情報読取手段は、前記検知手段の検知出力の有無に応じて前記媒体に付与された磁性素子により形成される情報を読み取ることを特徴とする。
【0015】
また、請求項5の発明は、請求項1乃至3のいずれかの発明において、前記情報読取手段は、前記検知手段の検出信号パターンに応じて前記媒体に付与された磁性素子により形成される情報を読み取ることを特徴とする。
【0016】
また、請求項6の発明は、請求項1乃至3のいずれかの発明において、前記磁性素子は、長さおよび形状が異なる磁性素子を含み、前記情報読取手段は、前記磁性素子の数および長さおよび形状の組み合わせに対応して前記検知手段により検出される検出信号パターンに応じて前記媒体に付与された磁性素子により形成される情報を読み取ることを特徴とする。
【0017】
また、請求項7の発明は、請求項1乃至3のいずれかの発明において、前記磁性素子から発生される信号は、前記磁性素子が磁化反転時に発する磁束変化に基づく信号であることを特徴とする。
【0018】
また、請求項8の発明は、請求項1乃至3のいずれかの発明において、前記磁性素子から発生される信号は、前記磁性素子が磁歪振動により発する信号であることを特徴とする。
【0019】
また、請求項9の発明は、少なくとも1つの磁性素子を媒体に付与し、前記媒体に磁界を与え、該磁界により前記媒体に付与された前記少なくとも1つの磁性素子から発生される信号を複数の検知手段で検出し、前記複数の検知手段のうちの前記磁性素子から発生される信号が検出された前記検知手段の組み合わせに応じて前記媒体に付与された磁性素子により形成される情報を読み取ことを特徴とする。
【0020】
また、請求項10の発明は、磁界が与えられることにより信号を発生する少なくとも1つの磁性素子が付与された媒体であって、前記磁性素子は、該磁性素子を検出する検知コイルの配置間隔に基づく検知領域を越えた間隔で配置され、前記磁性素子の数に対応して前記媒体を特定する情報が形成されることを特徴とする。
【0021】
また、請求項11の発明は、請求項10の発明において、前記磁性素子は、長さや形状が異なる磁性素子を含み、前記磁性素子の数および長さや形状の組み合わせに対応して前記媒体を特定する情報を形成することを特徴とする。
【0022】
また、請求項12の発明は、請求項10または11の発明において、前記磁性素子は、磁気特性が異なる磁性素子を含み、前記磁性素子により形成される情報は、該磁性素子の数および長さおよび磁気特性のうちの少なくとも2つの組み合わせに対応して前記媒体を特定する情報を形成することを特徴とする。
【0023】
また、請求項13の発明は、請求項10乃至12のいずれかの発明において、前記磁性素子から発生される信号は、前記磁性素子が磁化反転時に発する磁束変化に基づく信号であることを特徴とする。
【0024】
また、請求項14の発明は、請求項10至13のいずれかの発明において、前記磁性素子から発生される信号は、前記磁性素子が磁歪振動により発する信号であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
この発明の磁性素子を付与した媒体、媒体の情報読取方法および装置によれば、媒体に磁界を与え、該磁界により媒体に付与された磁性素子から発生される信号を検出する複数の検知手段と、複数の検知手段のうちの磁界が与えられることにより磁性素子から発生される信号が検出された検知手段の組み合わせに応じて媒体に付与された磁性素子により形成される情報を読み取る情報読取手段とを具備するので、媒体を載置する際の媒体の上下左右の配置方向に関わらず媒体に付与された複数の磁性素子を同時に確実に検知して、より高精度に媒体の識別情報が読み取れる。
【0026】
また、媒体に付与された磁性素子の配置パターンが検知できるので、より多くの情報量が付与された媒体の識別情報を読み取ることができ、高いセキュリティー性が確保された媒体が提供できるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
この発明に係わる磁性素子を付与した媒体、媒体の情報読取方法および装置は、有価証券等の不正複写による偽造防止、機密情報や個人情報等が印刷された用紙の不正複写による情報漏洩防止、あるいは文書管理等を目的として、例えば印刷機や複写機等に適用される。
【0028】
印刷機に適用する場合は、情報を印刷する用紙を用紙固有を識別する識別情報が磁性素子で表現されて付与された専用紙が用いられ、専用紙の識別情報と、専用紙に印刷された情報とを対応付けて管理することで、文書管理が可能な印刷機として用いられる。
【0029】
また、複写機に適用する場合は、管理された機密情報等が複写されようとした場合は、機密情報等が印刷された原稿に付与された磁性素子を検知することで原稿が機密文書または重要文書であると判別され、当該原稿を取り扱う権限のあるパスワードが入力された場合のみ複写動作を可とすることで機密情報や重要文書等が不正複写されて情報が漏洩するもしくは偽造されることを防止することができる。
【0030】
本実施例においては、磁性素子で対応付けられて表現された識別情報が付与された媒体と、その媒体の情報読取方法および装置を複写機に適用した場合を例に説明する。
【実施例1】
【0031】
以下、本発明に係わる磁性素子を付与した媒体、媒体の情報読取方法および装置を複写機に適用した一例について添付図面を参照して詳細に説明する。
【0032】
図1は、本発明に係わる情報読取装置100を備えた複写機10の概略図であり、図1(a)は複写機10を概略的に示したブロック図、図1(b)は、複写機10の概略的な斜視図である。
【0033】
図1(a)、(b)に示すように、複写機10は、複写機10のプラテンガラス14上に載置された原稿1に付与された磁性素子111、112、113を検出し、検出結果に基づき原稿1の識別情報を検知する情報読取装置100と、複写機10の全体を統括制御するとともに、情報読取装置100から出力される原稿1の識別情報と、ユーザにより入力されたパスワードとに基づき入力パスワードが原稿1の複写を可とする権限のあるパスワードであるか否かを判別し、原稿1の複写を可とするパスワードが入力された場合は、複写機10による原稿1の複写動作を行い、原稿1の複写を可とするパスワードが入力されなかった場合は、複写禁止の制御を行う制御部11と、プラテンガラス14上に載置された原稿1に対して光を投光し、投光による原稿1の反射光を図示せぬ光電変換素子(例えば、CCD=Charge Cuople Device等)で受光して電気信号に変換し、変換された電気信号に基づき原稿1の画情報を読み取り、読み取った画情報に対して所定の画像処理を施す画像読取装置12と、画像読取装置12により読み取られた原稿1の画情報を用紙トレイ16から給紙される用紙54へ印刷出力して排紙トレイ17へ排紙する画像形成部13を備えている。
【0034】
また、画像形成部13は、画像読取装置12で原稿1から読み取った画情報が画像処理後、出力される出力画像データに応じてレーザ光を感光ドラム132へ出射し、感光ドラム132の走査露光制御を行う露光制御部131と、露光制御部131の走査露光制御により感光ドラム132表面上に形成された潜像を各色のトナーで現像してトナー画像を形成する現像器133と、現像器133により感光ドラム132上に形成されたトナー画像を転写する転写ドラム134と、転写ドラム134上に形成されたトナー画像を用紙トレイ16から給紙される用紙54上に定着させる定着装置135とを備えている。
【0035】
また、複写機10のプラテンカバー15内には、プラテンガラス14上に載置された原稿1に付与された磁性素子111、112、113を検出するための情報読取装置100の複数の励磁コイル101と複数の検知コイル102とが配置されており、各励磁コイル101からは所定の交番磁界が発信され、各検知コイル102は、各励磁コイル101から発信された交番磁界や各磁性素子から発せられる磁気パルスや電磁波等を受信するとともに情報読取装置100が原稿1に付与された磁性素子111、112、113の検出結果に基づき原稿1の識別情報を検知し、出力する。
【0036】
複写機10には、予め原稿の複写を可とする権限を有するパスワードと、原稿の識別情報とが対応付けたパスワード情報が記憶保持されており、このパスワード情報と原稿から検知した原稿の識別情報とを照会することでプラテンガラス14上に載置された原稿1が複写可または複写不可の何れの原稿であるかが判別される。
【0037】
なお、原稿1に磁性素子が付与されていない場合は、複写可の原稿として判別し、複写機10による原稿1の複写動作を行う。
【0038】
また、情報読取装置100の構成及び原稿1に付与された磁性素子111、112、113の検知方法については後述する。
【0039】
このように構成された複写機10がプラテンガラス14上に載置された原稿1の識別情報の検知結果に基づき原稿1の複写または複写禁止等の処理を行う動作について簡単に説明する。
【0040】
複写機10のプラテンガラス14上に原稿1が載置され、プラテンカバー15を閉じて(図中の矢印方向)、図示せぬ複写開始ボタンを押下されると、複写機10の制御部11は、原稿1を複写する複写動作に先立ち、情報読取装置100を起動して動作させる。
【0041】
情報読取装置100が動作すると、各励磁コイル101から所定の交番磁界が発信され、プラテンガラス14上の原稿1に付与された各磁性素子111、112、113が交番磁界を受けて磁化され、磁化反転時に急峻な磁気パルスを発する、もしくは各磁性素子が磁歪振動し、磁歪振動により各磁性素子から電磁波が発せられる。
【0042】
各磁性素子から発せられる磁気パルス、もしくは電磁波は、プラテンガラス14上に載置された原稿1の方向に応じて原稿1に付与された各磁性素子が配置する位置と最も近傍に配置された検知コイル102によって受信され、複数の検知コイル102のうちの各磁性素子から発せられる磁気パルス、もしくは電磁波を受信した検知コイル102の配置位置に基づき情報読取装置100が原稿1の識別情報を検知する。
【0043】
情報読取装置100が原稿1の識別情報を検知すると、ユーザへパスワード入力を促す「パスワードを入力して下さい」等の音声メッセージ、もしくは表示を行い、入力されたパスワードと情報読取装置100から出力された原稿1の識別情報とに基づき原稿1の複写動作、もしくは複写禁止動作の制御を行う。
【0044】
具体的には、入力パスワードと原稿1の識別情報とをパスワード情報で照会し、原稿1の識別情報に対応したパスワード情報に登録された登録パスワードと、入力パスワードとが一致した場合は、複写動作の制御を行う。
【0045】
また、登録パスワードと、入力パスワードとが一致しない場合は、「この原稿は複写不可です」等の複写禁止を示すメッセージまたは警告音等を出力するとともに複写不可動作の制御を行う。
【0046】
なお、情報読取装置100が原稿1から磁性素子が発する信号を検知できなかった場合は、複写可の原稿として認識され複写動作の制御が行われる。
【0047】
複写機10の複写動作の制御が行われると、複写機10のプラテンガラス14上に載置された原稿1の画情報が画像読取装置12により読み取られ、読み取られた画情報が画像形成部13で用紙トレイ16から給紙される用紙54に印刷されて排紙トレイ17へ排紙される。
【0048】
なお、情報読取装置100による原稿1の識別情報の検知は、原稿1が複写機10のプラテンガラス14上に載置された後、複写機10に対して複写開始指示後、もしくは複写開始指示前のどちらでもよく、特に限定されるものではない。
【0049】
また、原稿1に付与される磁性素子の種類、本数、及び形状は、特に限定されるものではなく、原稿1を識別するために付与された原稿1の識別情報に応じて磁性素子は、一つでもよく、複数種類の複数の磁性素子が付与されてもよい。
【0050】
また、原稿1に付与される磁性素子は、該磁性素子を検出する検知コイルの配置間隔に基づく検知領域を越えた間隔で配置されていればよい。
【0051】
図2は、本発明に係わる情報読取装置100の要部の構成を示すブロック図である。
【0052】
なお、図2に示す情報読取装置100は、原稿1に付与された各磁性素子が所定の磁界を受けると磁化反転時に急峻な磁気パルスを発する、所謂大バルクハウゼン効果の特性を有する磁性素子である場合に適用される情報読取装置である。
【0053】
また、図2においては、情報読取装置100の複数の励磁コイル101及び検知コイル102は、一つの励磁コイル101及び検知コイル102とで対を構成した複数の励磁コイル101及び検知コイル102が複写機10のプラテンカバー15内に配置されている。
【0054】
図2は、本発明に係わる情報読取装置100の要部の構成を示すブロック図である。
【0055】
なお、図2に示す情報読取装置100は、原稿1に付与された各磁性素子が所定の磁界を与えられることで磁化し、磁化反転時に急峻な磁気パルスを発する、所謂大バルクハウゼン効果の特性を有する磁性素子である場合に適用される情報読取装置である。
【0056】
また、図2においては、情報読取装置100の複数の励磁コイル101及び検知コイル102は、一つの励磁コイル101及び検知コイル102とで対を成して構成され、複写機10のプラテンカバー15内に配置されている。
【0057】
図2に示すように、情報読取装置100は、i=1、2、・・・、mとj=12・・・nとで配置位置が特定される複数の励磁コイル(i、j)101及び複数の検知コイル(i、j)102と、各励磁コイル(i、j)101に対応してそれぞれ接続された複数の励磁回路(i、j)103と、各検知コイル(i、j)102に対応してそれぞれ接続された複数の検知回路(i、j)104と、タイミング制御部105と、信号処理部106と、ビット出力部107とを備えている。
【0058】
各励磁回路(i、j)103は、各励磁回路(i、j)103にそれぞれ接続された励磁コイル(i、j)101を介して所定の交番磁界を発生させるための制御を行う。
【0059】
各検知回路(i、j)104は、各検知回路(i、j)104に接続された検知コイル(i、j)102で受信された信号に基づき原稿1に付与された磁性素子111、112、113が所定の磁界を与えられることで磁化し、磁化反転時に発する急峻な磁気パルスの検出信号を検出する。
【0060】
信号処理部106は、複数の検知回路(i、j)104のうちの各磁性素子が発する磁気パルスに対応した検出信号を出力した検知回路(i、j)104の組み合わせに基づき原稿1に付与された磁性素子111、112、113を検知する。
【0061】
ビット出力部107は、信号処理部106から出力される原稿1に付与された磁性素子111、112、113の検知結果に基づき原稿1の識別情報を検知し、検知結果を出力する。
【0062】
タイミング制御部105は、交番磁界の周期に応じたタイミングで交番磁界や各磁性素子が発する磁気パルスが検知回路104が検知できるように各励磁回路(i、j)103と各検知回路(i、j)104とのタイミング制御を行う。
【0063】
このように構成された情報読取装置100で検知される磁性素子の特性及びその検知方法について図3乃至図8を参照しながら説明する。
【0064】
図3において、図3(a)は、原稿2に付与された大きさ及び形状が互いに異なる磁性素子111と磁性素子201を示す図であり、図3(b)は、磁性素子111、201の各磁気特性を示す図である。
【0065】
また、図4において、図4(a)は、各検知回路(i、j)104直下に原稿2の磁性素子111、201が配置された場合の各検知回路(i、j)104が原稿2から検出する交番磁界及び磁性素子111、201が発する磁気パルスの検出信号を示す図であり、図4(b)は、図4(a)で示した検出信号に基づき信号処理後、各検知回路(i、j)104から出力される検出パルス信号を示す図である。
【0066】
なお、原稿に付与される磁性素子は、複数種類の複数の磁性素子を組み合わせて付与してもよいが、図3においては、説明の便宜上、円型の形状をした磁性素子111と直線状の形状をした磁性素子201が付与された例が示されている。
【0067】
図3(a)及び(b)に示すように、原稿2に付与された磁性素子111、201は、例えば、Fe−Co系アモルファス材の磁性材ワイヤーであり、磁性素子111が磁性材ワイヤーを円型の形状に加工形成したものであり、磁性素子111が磁性材ワイヤーを直線の形状に加工形成したものである。
【0068】
また、図3(b)に示すように、原稿2に付与された磁性素子111、201は、それぞれ磁気履歴曲線310、311で示されるような磁気特性を有しており、磁性素子111は、磁気履歴曲線310に示されるような例えば保磁力H1を有し、磁性素子201は、磁気履歴曲線311に示されるような例えば保磁力H2を有している。
【0069】
保磁力H1を有する磁性素子111は、磁界強度がH1を超える交番磁界を受けることで磁化反転し、その際に急峻な磁気パルスを発し、保磁力H2を有する磁性素子201は、磁界強度がH2を超える交番磁界を受けることで磁化反転し、その際に急峻な磁気パルスを発する。
【0070】
各磁性素子111、201が有する固有の保磁力H1、H2は、各磁性素子の大きさや形状等によって異なり、例えば、図4(a)の検出信号402に示すように、保磁力H1を有する磁性素子111は、タイミング制御部105から出力された基準信号からの時間t1で磁界強度が略H1になった交番磁界を受けることで磁化反転し、その際に急峻な磁気パルスAを発し、時間t3で磁界強度が略−H1になった交番磁界を受けることで磁化反転し、その際に急峻な磁気パルスCを発する。
【0071】
また、保磁力H2を有する磁性素子201は、時間t2で磁界強度が略H2になった交番磁界を受けることで磁化反転し、その際に急峻な磁気パルスBを発し、時間t4で磁界強度が略−H2になった交番磁界を受けることで磁化反転し、その際に急峻な磁気パルスDを発する。
【0072】
情報読取装置100の各検知回路(i、j)104は、各検知回路(i、j)104にそれぞれ接続された受信コイル(i、j)102を介して図4(a)に示すような各検知回路(i、j)104から発せられた交番磁界対応した検出信号401と、各磁性素子111、201が磁化反転時に発する磁気パルスA、B、C、Dを含んだ検出信号402を検出する。
【0073】
受信コイル(i、j)102を介して検出された検出信号402は、検出信号402から交番磁界成分の検出信号401が除去され、パルス信号A、B、C、Dのうちの正の信号成分であるパルス信号A、Bが検出され、更に増幅してノイズ成分を除去後、図4(b)に示すような検出パルス信号A、Bが検出される。
【0074】
なお、各検知回路(i、j)104直下に原稿2の各磁性素子が配置されていない場合は、各検知回路(i、j)104からは、検出パルス信号は出力されない。
【0075】
各検知回路(i、j)104で検出された検出パルス信号A、Bは、信号処理部106へ出力され、信号処理部106が各検知回路(i、j)104から出力される検出パルス信号A、Bの出力信号に基づき原稿2に付与された磁性素子111、201を検知する。
【0076】
具体的には、複数の検知回路(i、j)104のうちの検出パルス信号が出力された検知回路(i、j)104の組み合わせに応じて原稿2に付与された磁性素子の数及び種類を検知する。
【0077】
信号処理部106は、原稿2に付与された磁性素子111、201の検知結果をビット出力部107へ出力し、ビット出力部107が磁性素子111、201に対応付けられた識別情報を「0」または「1」の値に変換された多ビットの情報で出力する。
【0078】
なお、原稿に付与された磁性素子とその識別情報との対応付けの詳細は後述する。
【0079】
図5及び図6は、本発明に係わる情報読取装置100の複数の励磁コイル(i、j)101及び検知コイル(i、j)102の要部の構成及び磁性素子を付与した媒体の要部の構成を示す図である。
図5において、図5(a)は、プラテンカバー15内の複数の励磁コイル(i、j)101及び検知コイル(i、j)102の配置を示す図、図5(b)は、複数の励磁コイル(i、j)101及び検知コイル(i、j)102の配置位置の詳細を示す図である。
【0080】
また、図6のいて、図6(a)は、本発明に係わる磁性素子を付与した媒体である原稿1の一例を示す図であり、図6(c)は、原稿1が複写機10のプラテンガラス14上に載置された後、プラテンカバー15を閉じた際の原稿1と励磁コイル(i、j)101及び検知コイル(i、j)102との配置関係を示す図である。
【0081】
図5(a)に示すように、プラテンカバー15内には、円形状の同一の大きさと検知領域を有する複数の励磁コイル(i、j)101(i、j)及び検知コイル(i、j)102がそれぞれ等間隔で格子状に規則正しく配置されている。
【0082】
具体的には、図5(b)に示すように、複数の励磁コイル(i、j)101と複数の検知コイル(i、j)102がそれぞれ1個ずつ対を成し、左右方向にj=1、2、3、4、5、6、・・・nで示されるn個、上下方向にi=1、2、3、4、5、6、・・・mで示されるm個の合計m×n個の励磁コイル(i、j)101及び検知コイル(i、j)102が等間隔に格子状に配置されている。
【0083】
なお、各励磁コイル(i、j)101及び検知コイル(i、j)102の並びは、説明の便宜上、各励磁コイル(i、j)101及び検知コイル(i、j)102のjの値が変化する方向を左右方向、iの値が変化する方向を上下方向とする。
【0084】
また、各励磁コイル(i、j)101及び検知コイル(i、j)102は、それぞれ各励磁コイル(i、j)101及び検知コイル(i、j)102の中心位置から上下左右方向にそれぞれ隣り合う各励磁コイル(i、j)101及び検知コイル(i、j)102のそれぞれの中心位置までの間隔がdの距離だけ離間されて配置されており、各励磁コイル(i、j)101及び検知コイル(i、j)102による磁性素子が発する信号の検知領域がそれぞれ各励磁コイル(i、j)101及び検知コイル(i、j)102のそれぞれの中心位置から√2×dの直径で形成される円の領域を検知領域とするように配置されている。
【0085】
例えば、励磁コイル(i、j)101及び検知コイル(i、j)102の中心位置が(2、2)に配置された励磁コイル(2、2)101及び検知コイル(2、2)102の検知領域は、円の中心位置を(2、2)とする直径が√2×dで形成される円501を検知領域とする。
【0086】
同様に、励磁コイル(i、j)101及び検知コイル(i、j)102の中心位置が(4、3)に配置された励磁コイル(i、j)101及び検知コイル(i、j)102の検知領域は、円の中心位置を(4、3)とする直径が√2×dで形成される円502、励磁コイル(i、j)101及び検知コイル(i、j)102の中心位置が(4、4)に配置された励磁コイル(i、j)101及び検知コイル(i、j)102の検知領域は、円の中心位置を(4、4)とする直径が√2×dで形成される円503、励磁コイル(i、j)101及び検知コイル(i、j)102の中心位置が(5、3)に配置された励磁コイル(i、j)101及び検知コイル(i、j)102の検知領域は、円の中心位置を(5、3)とする直径が√2×dで形成される円504、励磁コイル(i、j)101及び検知コイル(i、j)102の中心位置が(5、4)に配置された励磁コイル(i、j)101及び検知コイル(i、j)102の検知領域は、円の中心位置を(5、4)とする直径が√2×dで形成される円505をそれぞれ検知領域とする。
【0087】
また、本発明に係わる磁性素子を付与した媒体である原稿1には、図6(a)に示すように、磁性素子111、112、113がそれぞれ互いに所定の距離を超えるように離間されて付与されている。
【0088】
具体的には、各磁性素子111、112、113は、プラテンカバー15内の複数の励磁コイル(i、j)101及び検知コイル(i、j)102がそれぞれ等間隔に離間された距離dの3√2倍、すなわち3√2×dの長さを超える距離だけ離間されて原稿1に付与されている。
【0089】
このように構成された複数の励磁コイル(i、j)101及び検知コイル(i、j)102と原稿1とを用いることで、プラテンガラス14上に載置された原稿1の方向に応じて原稿1が複写機10のプラテンガラス14上に載置された後、プラテンカバー15を閉じた際の原稿1と励磁コイル(i、j)101及び検知コイル(i、j)102とが図6(b)に示すような配置関係となる。
【0090】
図7は、原稿1に付与された各磁性素子と励磁コイル(i、j)101及び検知コイル(i、j)102との配置関係に応じて各磁性素子が発する信号を検知する励磁コイル(i、j)101及び検知コイル(i、j)102との対応を示す図である。
【0091】
図7(a)に示すように、プラテンガラス14上に載置された原稿1の方向に応じて原稿1の磁性素子311が励磁コイル(i、j)101及び検知コイル(i、j)102の中心位置(5、1)の位置701、磁性素子312が励磁コイル(i、j)101及び検知コイル(i、j)102の中心位置(2、4)の位置702にそれぞれ配置されている。
【0092】
このように配置された場合は、原稿1の磁性素子311が所定の交番磁界を与えられることで発する信号がコイルの中心位置(5、1)の位置701に配設された励磁コイル(5、1)101及び検知コイル(5、1)102により検知され、磁性素子312が発する信号がコイルの中心位置(2、4)の位置702に配設された励磁コイル(2、4)101及び検知コイル(2、4)102により検知される。
【0093】
また、図7(b)に示すように、プラテンガラス14上に載置された原稿1の方向に応じて原稿1の磁性素子311が励磁コイル(i、j)101及び検知コイル(i、j)102の中心位置がそれぞれ(5、1)、(5、2)、(6、1)、(6、2)からそれぞれ等距離の位置703、磁性素子312が励磁コイル(i、j)101及び検知コイル(i、j)102の中心位置がそれぞれ(2、4)、(2、5)、(3、4)、(3、5)からそれぞれ等距離の位置704にそれぞれ配置されている。
【0094】
このように配置された場合は、各コイルの中心位置(5、1)、(5、2)、(6、1)、(6、2)に対応した4つの励磁コイル(5、1)101及び検知コイル(5、1)102、励磁コイル(5、2)101及び検知コイル(5、2)102、励磁コイル(6、1)101及び検知コイル(6、1)102、励磁コイル(6、2)101及び検知コイル(6、2)102がそれぞれ形成する検知領域に磁性素子311が存在することになるので、これら4つの励磁コイル(i、j)101及び検知コイル(i、j)102で磁性素子311が所定の交番磁界を与えられることで発する信号が検知される。
【0095】
また、磁性素子312は、各コイルの中心位置(2、4)、(2、5)、(3、4)、(3、5)に対応した4つの励磁コイル(2、4)101及び検知コイル(2、4)102、励磁コイル(2、5)101及び検知コイル(2、5)102、励磁コイル(3、4)101及び検知コイル(3、4)102、励磁コイル(3、5)101及び検知コイル(3、5)102がそれぞれ形成する検知領域に存在することになるので、これら4つの励磁コイル(i、j)101及び検知コイル(i、j)102で磁性素子312が所定の交番磁界を与えられることで発する信号が検知される。
【0096】
このことから情報読取装置100の信号処理部106は、複数の検知回路(i、j)104のうちの検出パルス信号を検出して出力した検知回路(i、j)104の組み合わせに基づき原稿1に付与された各磁性素子を検知する。
【0097】
図8は、信号処理部106が各検知回路(i、j)104から出力される検出パルス信号に基づき原稿1に付与された各磁性素子を検知する方法の一例を示すフローチャートである。
【0098】
図8に示すように、信号処理部106は、各検知回路(i、j)104での検出パルス信号の検出結果を検知回路(i、j)104のi=1、2、・・・、n、j=1,2、・・・、mの順に確認し、検出パルス信号が検出された検知回路(i、j)104が存在する場合は、当該検知回路(i、j)104の他に当該検知回路(i、j)104と接続された検知コイル(i、j)101と左上側に隣接する位置、上側に隣接する位置、右上側に隣接する位置、左側に隣接する位置、右側に隣接する位置、左下側に隣接する位置、右下側に隣接する位置にそれぞれ配置された各検知コイル(i、j)101に接続されたそれぞれの検知回路(i、j)101で検出パルス信号が検出された場合であっても同一の磁性素子が発した検出信号であると検知する。
【0099】
具体的には、原稿1に付与された磁性素子の数を示すカウンター(=COUNT)と、検知回路(i、j)を指定するポインターi及びjの値を初期設定(COUNT=0、i=0、j=0)後(ステップS801乃至S803)、各検知回路(i、j)104での検出パルス信号の検出有無をポインターがi=1、2、・・・、n、j=1,2、・・・、mの順で指定される各検知回路(i、j)104毎に確認する(ステップS804)。
【0100】
ステップS804において、検出パルス信号を検出した検知回路(i、j)104が存在する場合は(ステップS804でYES)、当該検知回路(i、j)104と接続された検知コイル(i、j)101と左上側、上側、右上側、左側に隣接してそれぞれ配置された各検知コイル(i、j)101と接続された検知回路(i−1、j−1)104、検知回路(i−1、j)104、検知回路(i−1、j+1)104、検知回路(i、j−1)104で検出パルス信号が検出されていない場合に磁性素子の数を計数するカウンター(=COUNT)をカウントアップ(ステップS805乃至S812)する。
【0101】
次に、検出パルス信号を検出した検知回路(i、j)104と接続された検知コイル(i、j)101の右側に隣接して配置された検知コイル(i、j+1)101での検出パルス信号の検出有無を確認し、同様な動作処理を検知回路(m、n)104まで繰り返し確認することで(ステップS803乃至S816)、原稿に付与された磁性素子の数を検知することができる。
【0102】
ビット出力部107は、信号処理部106から出力される原稿に付与された磁性素子の数に応じた識別情報を検知し、検知結果を出力する。
【0103】
ビット出力部107が磁性素子の数に応じた識別情報を検知する方法の一例について図9を参照し説明する。
【0104】
図9は、磁性素子311、312、313を組合わせて形成された識別情報が付与された原稿の一例を示した図である。
【0105】
図9(a)は、磁性素子が全く付与されていない原稿30を示す図、図9(b)は、磁性素子が1本付与されている原稿31を示す図、図9(c)は、磁性素子が2本付与されている原稿32を示す図、図9(d)は、磁性素子が3本付与されている原稿32を示す図である。
【0106】
ビット出力部107が磁性素子の数に応じた識別情報を検知する場合は、例えば、原稿に付与される磁性素子の数に応じたビット数の識別情報として検知する。
【0107】
具体的には、3本の磁性素子を組み合わせて識別情報が表現されて原稿に付与されている場合は、磁性素子3本の数に対応して識別情報を3ビット情報とし、図9(a)に示す原稿30のように磁性素子が全く付与されていない場合は、「000」の識別情報、図9(b)に示す原稿31のように磁性素子が1本付与されている場合は、「100」の識別情報、図9(c)に示す原稿32のように磁性素子が2本付与されている場合は、「110」の識別情報、図9(d)に示す原稿33のように磁性素子が3本付与されている場合は、「111」の識別情報としてそれぞれ検知する。
【0108】
このようにビット出力部107は、信号処理部106が複数の検知回路(i、j)104のうちの各磁性素子が発する磁気パルスに対応した検出信号を出力した検知回路(i、j)104の組み合わせに基づき原稿に付与された磁性素子の数の検知結果に基づき原稿の識別情報を多ビットの情報で出力する。
【0109】
なお、本発明に係わる媒体に付与される磁性素子は、図10(a)乃至(e)に示されるように、円形型(図10(a))、直線型(図10(b))、L字型(図10(c))、十字型(図10(d))、三角形型(図10(e))等の種々の形状の磁性素子を用いることが可能である。
【0110】
これらの磁性素子は、図3及び図4で説明したように、磁性素子の大きさ、形状、磁気特性等に応じた保磁力を有するので、これら各磁性素子が磁界を与えられることで各磁性素子が有する保磁力に対応した検出パルス信号(例えば、検出時間、検出出力)が検出される。
【0111】
具体的には、原稿2(図3(a)参照)に示されるように、円形型の磁性素子111と、直線型の磁性素子の2本の磁性素子を組み合わせて識別情報が形成されている場合は、磁性素子111が交番磁界を与えられることで検出パルス信号Aが検出され、磁性素子201が交番磁界を与えられることで検出パルス信号Bが検出されるので、信号処理部106が複数の検知回路(i、j)104のうちの各磁性素子111、201が発する磁気パルスに対応した検出信号を出力した検知回路(i、j)104の組み合わせに基づき磁性素子の数を検知し、検出パルス信号A、Bの検出信号に基づき磁性素子111、201を検知して、その検知結果を出力することで原稿1に付与された磁性素子の数と種類に対応付けされた識別情報を検知することができる。
【0112】
図11は、励磁コイルと検知コイルの形状とその配置の一例を示す図である。
【0113】
図11(a)に示すように、格子状に配列された複数の円形状の検知コイル102と、左右方向の複数列の検知コイル102が配置された領域の大きさを有する矩形状の励磁コイル201を複数配置することで各検知コイル102の検知領域に配置された原稿の磁性素子に対して磁界を与えることができ、励磁コイルの数を抑えることができる。
【0114】
また、図11(b)に示すように、格子状に配列された複数の円形状の検知コイル102と、図11(a)で示した複数の励磁コイル201と、上下方向の複数列の検知コイル102が配置された領域の大きさを有する矩形状の励磁コイル202を複数配置することで各検知コイル102の検知領域に配置された原稿の磁性素子に対して、より確実に磁界を与えることができる。
【0115】
また、図11(c)に示すように、格子状に配列された複数の円形状の検知コイル102と、最も外側に配置された複数の検知コイル102の並びで形成される矩形の大きさ有する矩形状の励磁コイル203と、次に内側に配置された複数の検知コイル102の並びで形成される矩形の大きさ有する矩形状の励磁コイル204と、次に内側に配置された複数の検知コイル102の並びで形成される矩形の大きさ有する矩形状の励磁コイル205と、次に内側に配置された複数の検知コイル102の並びで形成される矩形の大きさ有する矩形状の励磁コイル205とを配置することで各検知コイル102の検知領域に配置された原稿の磁性素子に対して磁界を与えることができ、励磁コイルの数を抑えることができる。
【0116】
図12は、図2で示した情報読取装置100とは他の構成で媒体に付与された磁性素子に対応付けられた識別情報を読み取るように構成された情報読取装置200の要部の構成を示すブロック図である。
【0117】
なお、図12に示す情報読取装置200は、原稿に付与された磁性素子が所定の磁界を受けると磁歪振動する特性を有する磁性素子である場合に適用される情報読取装置である。
【0118】
図12に示すように、情報読取装置200は、i=1、2、・・・、mとj=12・・・nとで配置位置が特定される複数の励磁コイル(i、j)101及び複数の検知コイル(i、j)102を備えており、複数の励磁コイル(i、j)101を介して低周波から高周波へ順次変化する所定の交番磁界を発信させるための制御を行う複数の励磁回路(i、j)203と、複数の励磁コイル(i、j)101から発信された所定の交番磁界を複写機10のプラテンガラス14上の原稿4に付与された磁性素子411、412(以下、説明の便宜上、「磁歪振動素子411」、「磁歪振動素子412」という。)が磁化されて磁歪振動し、その際に発せられる電磁波を検知コイル(i、j)102を介して電圧信号で検出する複数の検知回路(i、j)204と、検知回路(i、j)204で検出された検出信号に基づき原稿4に付与された磁歪振動素子411、412を検知し、原稿4に付与された磁歪振動素子の数と種類を検知する信号処理部206と、信号処理部206から出力される磁歪振動素子の検知結果に基づき識別情報を出力するビット出力部207と、複数の励磁回路(i、j)203及び検知回路(i、j)204との周波数制御を行う周波数制御回路205を備えている。
【0119】
なお、周波数制御回路205は、励磁回路203で生成した交番磁界の周波数に対応して各検知回路(i、j)204の図示せぬバンドパスフィルター回路等の設定周波数を帯域制限等の制御動作を行う。
【0120】
また、原稿4に付与された磁歪振動素子411、412の検知は、周波数が低周波から高周波へ順次変化する交番磁界を間欠的に発信して磁歪振動素子411、412に与え、各励磁コイル(i、j)101から交番磁界が発信されていない間に磁歪振動素子411、412が磁歪振動により発する電磁波を検出するように構成されている。
【0121】
また、励磁コイル(i、j)101から間欠的に発信される交番磁界は、所定の低周波から所定の高周波へ順次変化し、所定の高周波に達したら再び所定の低周波から所定の高周波へ順次変化しながら間欠的に発信する動作が繰り返されるように構成されている。
【0122】
このように構成された情報読取装置200が原稿4に付与された磁歪振動素子411、412を検知する動作について図13を参照しながら詳細に説明する。
【0123】
図13において、図13(a)は、情報読取装置200で検知される磁歪振動素子411、412が付与された原稿4の一例を示す図であり、図13(b)は、磁歪振動素子411、412が磁歪振動により発する電磁波が各検知回路(i、j)204で検出される検出信号を示す図である。
【0124】
図13(a)に示すように、原稿4には、原稿4の識別情報を形成する磁歪振動素子411,412が付与されている。
【0125】
各磁歪振動素子411、412は、フェライトやアモルファス等の薄箔状の素子であり、外部から所定の磁界を与えることで寸法変化を起こすような、いわゆる磁歪特性を有している。
【0126】
各磁歪振動素子に対して低周波から高周波へ、もしくは高周波から低周波へ順次変化する所定の交番磁界を与えることで各磁歪振動素子が特定の周波数の交番磁界を受けた時に最も大きく磁歪振動する。
【0127】
また、各磁歪振動素子が最も大きく磁歪振動する交番磁界の周波数は、各磁歪振動素子の大きさや形状等に応じて特定される固有の周波数(以下、「共振周波数」という。)を有する。
【0128】
なお、ここでは、磁歪振動素子411の共振周波数がf2、磁歪振動素子412の共振周波数がf1であるものとして説明する。
【0129】
また、各磁歪振動素子が磁歪振動することで、各磁歪振動素子が寸法変化を起こし、各磁歪振動素子から電磁波が発せられる。
【0130】
このことから、原稿4に付与された各磁歪振動素子に対して各磁歪振動素子それぞれ固有の共振周波数に対応した交番磁界を与えて磁歪振動させ、各磁歪振動素子が発する電磁波を検出することで原稿4に付与された各磁歪振動素子を検出することができる。
【0131】
情報読取装置200が原稿4に付与された各磁歪振動素子を検知する場合は、各励磁回路(i、j)203の図示せぬ電圧制御発振回路(例えば、VCO=Voltage Controlled Oscillator等)に電圧を供与し、電圧制御発振回路で制御された電圧に応じた波形信号を生成し、生成された波形信号を電力増幅して各励磁コイル(i、j)101を介して低周波から高周波へ変化する交番磁界を間欠的に発信する制御を行う。
【0132】
具体的には、低周波の交番磁界を一定時間発信後、一定時間発信を停止し、次に高い周波数の交番磁界を一定時間発信後、一定時間発信を停止して順次同様な発信と発信停止を所定の低周波から所定の高周波に達するまで繰り返し、交番磁界の周波数が所定の高周波に達したら、再び所定の低周波から所定の高周波へ連続して直線的に変化する交番磁界の発信と発信停止の動作を繰り返す。
【0133】
この動作により各励磁コイル(i、j)101から発信された周波数f1の交番磁界を原稿4に付与された各磁歪振動素子が受けることで磁歪振動素子411が最も大きく磁歪振動し、周波数f2の交番磁界を原稿4に付与された磁歪振動素子412が受けることで磁歪振動素子412が最も大きく磁歪振動する。
【0134】
各磁歪振動素子が磁歪振動することで各磁歪振動素子からは電磁波が発せられ、各磁歪振動素子の近傍に配置された検知コイル(i、j)102と接続された検知回路(i、j)204が電圧信号の受信信号として検出し、検知回路(i、j)204の図示せぬバンドパスフィルター回路等で濾波され、図示せぬ増幅回路等で増幅されて図13(b)に示すように磁歪振動素子411の近傍に配置された検知コイル(i、j)102と接続された検知回路(i、j)204では、磁歪振動素子411の共振周波数f1に対応したパルス信号Eが検出され、磁歪振動素子412の近傍に配置された検知コイル(i、j)102と接続された検知回路(i、j)204では、磁歪振動素子412の共振周波数f2に対応したパルス信号Fが検出される。
【0135】
信号処理部206は、パルス信号Eを検出した検知回路(i、j)204と、パルス信号Fを検出した検知回路(i、j)204とに基づき原稿4に付与された磁歪振動素子の数と種類を検知し、その検知結果をビット出力部207へ出力する。
【0136】
ビット出力部207は、信号処理部206から出力された磁歪振動素子の数と種類に対応付けられた識別情報を検知し、検知結果を多ビットの情報で出力する。
【0137】
このように複数の検知回路のうちの原稿に付与された磁性素子を検知した検知回路と、当該検知回路が検知した磁性素子の種類との組み合わせに応じて原稿に付与された磁性素子により形成される識別情報を読み取るので、原稿が載置される上下左右の配置方向に関わらず原稿に付与された複数の磁性素子を同時に確実に検知し、より高精度に原稿の識別情報を読み取ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0138】
【図1】本発明に係わる情報読取装置100を備えた複写機10の概略図
【図2】情報読取装置100の要部の構成を示すブロック図
【図3】原稿2に付与された磁性素子111、201の磁気特性を示す図
【図4】検知回路で検出される磁性素子111、201の検出信号の一例を示す図
【図5】励磁コイル101及び検知コイル102の要部の構成を示す図
【図6】本発明に係わる磁性素子を付与した媒体の一例を示す図
【図7】磁性素子を検知する検知回路と原稿に付与された複数の磁性素子と複数の励磁コイル101及び検知コイル102との配置関係の一例を示す図
【図8】信号処理部106が磁性素子を検知した検知回路の組み合わせに基づき原稿に付与された磁性素子の数を方法の一例を示す図
【図9】ビット出力部107が原稿に付与された磁性素子の数に対応して検知する識別情報の一例を示す図
【図10】本発明に係わる原稿に付与される磁性素子の形状の一例を示す図
【図11】励磁コイルと検知コイルの形状とその配置の一例を示す図
【図12】情報読取装置100とは他の構成の情報読取装置200の要部を示すブロック図
【図13】情報読取装置200が原稿4に付与された磁歪振動素子を検知する方法の一例を示す図
【符号の説明】
【0139】
1、2、4、30、31、32、33 原稿
10 複写機
11 制御部
12 画像読取部
13 画像形成部
14 プラテンガラス
15 プラテンカバー
16 給紙トレイ
17 排紙トレイ
100、200 情報読取装置
101 励磁コイル
102 検知コイル
103、203 励磁回路
104、204 検知回路
105 タイミング制御部
106、206 信号処理部
107、207 ビット出力部
111、112、113、201 磁性素子
131 露光制御装置
132 感光ドラム
133 現像器
134 転写ドラム
135 定着装置
310、311 磁気履歴曲線
402 検出信号
411、412 磁歪振動素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁界が与えられることにより信号を発生する少なくとも1つの磁性素子が付与された媒体から識別情報を読み取る情報読取装置において、
前記媒体に磁界を与え、該磁界により前記磁性素子から発生される信号を検出する複数の検知手段と、
前記複数の検知手段のうちの前記磁界が与えられることにより前記磁性素子から発生される信号が検出された前記検知手段の組み合わせに応じて前記媒体に付与された磁性素子により形成される情報を読み取る情報読取手段と
を具備することを特徴とする情報読取装置。
【請求項2】
前記複数の検知手段は、
前記磁界が与えられることにより前記磁性素子から発生される信号を検出する検知コイル
をそれぞれ具備し、
前記検知コイルは、
各中心位置がそれぞれ等間隔で格子状に配置されること
を特徴とする請求項1記載の情報読取装置。
【請求項3】
前記検知コイルは、
その検出領域が前記格子状の間隔に対応して設定される
ことを特徴とする請求項2記載の情報読取装置。
【請求項4】
前記情報読取手段は、
前記検知手段の検知出力の有無に応じて前記媒体に付与された磁性素子により形成される情報を読み取る
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の情報読取装置。
【請求項5】
前記情報読取手段は、
前記検知手段の検出信号パターンに応じて前記媒体に付与された磁性素子により形成される情報を読み取る
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の情報読取装置。
【請求項6】
前記磁性素子は、
長さおよび形状が異なる磁性素子を含み、
前記情報読取手段は、
前記磁性素子の数および長さおよび形状の組み合わせに対応して前記検知手段により検出される検出信号パターンに応じて前記媒体に付与された磁性素子により形成される情報を読み取る
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の情報読取装置。
【請求項7】
前記磁性素子から発生される信号は、
前記磁性素子が磁化反転時に発する磁束変化に基づく信号である
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の情報読取装置。
【請求項8】
前記磁性素子から発生される信号は、
前記磁性素子が磁歪振動により発する信号である
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の情報読取装置。
【請求項9】
少なくとも1つの磁性素子を媒体に付与し、
前記媒体に磁界を与え、該磁界により前記媒体に付与された前記少なくとも1つの磁性素子から発生される信号を複数の検知手段で検出し、
前記複数の検知手段のうちの前記磁性素子から発生される信号が検出された前記検知手段の組み合わせに応じて前記媒体に付与された磁性素子により形成される情報を読み取
ことを特徴とする情報読取方法。
【請求項10】
磁界が与えられることにより信号を発生する少なくとも1つの磁性素子が付与された媒体であって、
前記磁性素子は、該磁性素子を検出する検知コイルの配置間隔に基づく検知領域を越えた間隔で配置され、
前記磁性素子の数に対応して前記媒体を特定する情報が形成される
ことを特徴とする媒体。
【請求項11】
前記磁性素子は、
長さや形状が異なる磁性素子を含み、
前記磁性素子の数および長さや形状の組み合わせに対応して前記媒体を特定する情報を形成する
ことを特徴とする請求項10記載の媒体。
【請求項12】
前記磁性素子は、
磁気特性が異なる磁性素子を含み、
前記磁性素子により形成される情報は、
該磁性素子の数および長さおよび磁気特性のうちの少なくとも2つの組み合わせに対応して前記媒体を特定する情報を形成する
ことを特徴とする請求項10または11記載の媒体。
【請求項13】
前記磁性素子から発生される信号は、
前記磁性素子が磁化反転時に発する磁束変化に基づく信号である
ことを特徴とする請求項10乃至12のいずれかに記載の媒体。
【請求項14】
前記磁性素子から発生される信号は、
前記磁性素子が磁歪振動により発する信号である
ことを特徴とする請求項10至13のいずれかに記載の媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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