説明

磁性黒色顔料を含む電極形成用ペースト組成物、これを用いた電極形成方法、及びこれにより製造された電極を含むプラズマディスプレイパネル

【課題】優れた黒色度及び導電性(電子伝導性)を有する電極を具現できる電極形成用ペースト組成物を提供する。
【解決手段】導電性物質、黒色顔料、ガラスフリット、有機バインダー及び溶剤を含む電極形成用ペースト組成物において、前記黒色顔料として磁性黒色顔料を組成物の全体重量を基準として0.1〜20重量%含む電極形成用ペースト組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマディスプレイパネル用電極を形成するためのペースト組成物に関するものである。より詳細には、プラズマディスプレイパネルのバス電極またはアドレス電極を形成する際に使用される磁性黒色顔料を含むペースト組成物、これを用いた電極形成方法、その方法により製造された優秀な黒色度(L)及び外光反射輝度を有するとともに、低い抵抗を有するプラズマディスプレイパネル用電極及び当該電極を含むプラズマディスプレイパネルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
プラズマディスプレイパネル(Plasma Display Panel、PDP)は、前面ガラス基板と背面ガラス基板との間の密閉された隔壁中にNe+Ar、Ne+Xeなどのガスを注入し、正極及び負極の2つの電極間に電圧を印加してネオン光を発光させ、このネオン光を表示光として用いる電子表示装置である。
【0003】
上記のようなPDPは、印加電圧に対する非常に強い非線形性、長い寿命、高輝度、高発光効率、広い視野角、大型化の有利さなどのために高解像度テレビ(HDTV)に主に応用されている。
【0004】
PDPは、前面ガラス基板及び背面ガラス基板の2枚の基板を備え、前面ガラス基板には、透明電極及びバス電極が形成される。また、前面ガラス基板には、横方向に延長された互いに平行な一対の放電維持電極からなる放電維持電極対が位置している。これらは、透明な誘電体層、さらに透明な保護層で被覆される。前面ガラス基板と同様に、誘電体層で被覆された背面ガラス基板には、前記放電維持電極対と直交する多数のアドレス電極が配置されている。
【0005】
これら放電維持電極対とアドレス電極との交差部またはその周辺には、隔壁によって放電セルがピクセル化される。そして、これら各放電セルを選択的に放電させて蛍光体を発光させることにより、表示が行われるようになる。
【0006】
PDPの金属電極のうち、アドレス電極は、主に銀(Ag)ペーストを用いてスクリーン印刷法及びオフセット印刷法などの印刷法やフォトリソグラフィ法によって形成される。
【0007】
一方、前面ガラス基板のバス電極においては、PDPの透明電極として面抵抗値が大きい酸化インジウムスズ(Indium Tin Oxide、ITO)を用いると、導電性の高い多層構造のバス電極が形成されうる。しかしながら、このような構造を有するバス電極は、発光した光を遮光して輝度を低下させうることから、必要なライン抵抗が得られる範囲で最大限に細くする必要がある。
【0008】
上記のようなバス電極は、Cr/Cu/Crの3層構造で真空蒸着及びエッチング工程によって形成されるか、アドレス電極と同様に、スクリーン印刷法及びオフセット印刷法などの印刷法またはフォトリソグラフィ法によって黒色層及び伝導層の2層として形成されるか、または、黒色層及び伝導層の特性を同時に有する1層からなる一体型の層として形成される。
【0009】
上記のようなバス電極の形成方法には、それぞれに長所及び短所がある。例えば、真空蒸着によるCr/Cu/Crの3層構造のバス電極形成方法は、工程時間が長く、薄膜形成装置及び材料の価格が高価であり、エッチング時に環境汚染が生じるという問題点を有する。
【0010】
また、フォトリソグラフィ法による2層のバス電極形成方法は、コントラスト向上のために導入した黒色層及び伝導層によって2層の電極層を構成するために、印刷/乾燥工程を2回反復しなければならず、2層間の不均一性によって電極の欠陥が生じるという問題点を有する。
【0011】
また、1層のバス電極の形成方法は、黒色層と伝導層との双方の特性を有する必要があるため、電極形成後に抵抗が上昇し、黒色度が低下することで、外光反射輝度に悪影響を及ぼすという問題点を有する。
【0012】
パターンを形成するアドレス電極及びバス電極の伝導層を形成するための組成物を構成する成分は、次のように大別される。
【0013】
すなわち、アドレス電極及びバス電極の伝導層の組成物を構成する成分は、有機バインダーとしての機能を有する樹脂成分、金属等の導電性物質、ガラスフリット、溶剤及びその他の添加剤に分けられる。また、バス電極の黒色層を構成する成分は、上記と類似しているが、黒色顔料をさらに含んでいる。
【0014】
上記のような組成物の成分のうち、焼成後にパターンを構成する成分は、導電性物質、黒色顔料及びガラスフリットであるが、これらのうち、一般的にガラスフリット及び黒色顔料は、それ自体の抵抗が高いため、電極の抵抗をも上昇させてしまう。
【0015】
特に、フォトリソグラフィ法を用いて前面ガラス基板にバス電極を形成すると、前面から出る光を遮断して輝度を低下させうるため、狭い幅でこれを形成する必要がある。2層からなる構造において、黒色層部分の形成には、現在、導電性金属酸化物が用いられている。しかし、抵抗が伝導層に比べて非常に高く、材料が高価であるという短所を有し、さらに、印刷/乾燥工程を2回反復する必要があるという問題点を有する。
【0016】
これに対して、1層からなる一体型バス電極の場合、工程及び材料の価格を節減できるという長所を有するが、抵抗の高い黒色顔料を使用する必要があるため、抵抗が上昇しうる。また、黒色顔料よりも導電性金属の量が多いことから、2層のバス電極に比べて黒色度が低下するという短所を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特開平11−096918号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明の目的は、優れた黒色度及び電気伝導性を有する電極を具現できる磁性黒色顔料を含む電極形成用ペースト組成物を提供することにある。
【0019】
本発明の他の目的は、電極下部の黒色度を高め、残りの部位では導電性物質により優れた抵抗特性を示す電極形成方法を提供することにある。
【0020】
本発明の更に他の目的は、前記電極形成方法により製造されたプラズマディスプレイパネル用電極を提供することにある。
【0021】
本発明の更に他の目的は、前記電極を含むプラズマディスプレイパネルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上記のような目的を達成するための本発明に係る電極形成用ペースト組成物は、導電性物質、黒色顔料、ガラスフリット、有機バインダー及び溶剤を含む。そして、前記黒色顔料として、磁性黒色顔料を組成物の全体重量の0.1〜20重量%含むことを特徴とする。
【0023】
前記他の目的を達成するための本発明に係る電極形成方法は、(a)ガラス基板上に磁性黒色顔料を含むペースト組成物を塗布または印刷する段階と、(b)前記ガラス基板を磁性基板上に定着させ、前記ペースト組成物を乾燥する段階とを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係る磁性黒色顔料を含むペースト組成物を用いて製造されたプラズマディスプレイパネル用電極においては、優秀な黒色度(L)、外光反射輝度及び電子伝導性を有するという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係る電極形成方法を概略的に示したフローチャートである。
【図2】乾燥工程において磁性黒色顔料がガラス基板の表面に移動する過程を概略的に示した図である。
【図3】フォトリソグラフィ法によって電極を形成する方法の例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照しつつ説明する。
【0027】
[電極形成用ペースト組成物]
本発明の一実施形態に係る電極形成用ペースト組成物は、導電性物質、黒色顔料、ガラスフリット、有機バインダー及び溶剤を含んで構成される。そして、黒色顔料として、磁性黒色顔料を組成物の全体重量の0.1〜20重量%含む。以下、組成物の構成成分について、詳細に説明する。
【0028】
[導電性物質]
本発明の組成物に用いられる導電性物質としては、導電性(電子伝導性)を有する有機物または無機物のいずれも使用可能である。特に、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、アルミニウム(Al)などの金属から選択される1種もしくは2種以上の金属またはこれらの合金からなる金属粉末を使用することが好ましい。この際、金属粉末の平均粒子直径は、形成される膜の厚さを考慮して約0.1〜3μm程度である。
【0029】
組成物中の上述した導電性物質の含量は、組成物の全体重量を基準として、好ましくは30〜90重量%であり、より好ましくは50〜80重量%であり、さらに好ましくは55〜70重量%である。
【0030】
導電性物質の含量が30重量%未満であると、抵抗の増加によって放電電圧が高くなり、輝度低下をもたらすおそれがある。一方、導電性物質の含量が90重量%を超えると、ガラスフリット及び有機バインダーの量が相対的に少なくなり、ペースト化を行うことが困難となり、電極とガラス基板との接着性が低下するおそれがある。
【0031】
[黒色顔料]
本発明の組成物に用いられる黒色顔料は、黒色度の向上のために添加される。本発明においては、この黒色顔料として、磁性黒色顔料が必須に含まれる。磁性黒色顔料としては、鉄(Fe)、ホウ素(B)、サマリウム(Sm)及びネオジム(Nd)などを含む磁性金属酸化物またはこれらの複合磁性金属酸化物から選択された1種以上を使用することができる。ただし、これらの材料に限定されるわけではない。
【0032】
本発明においては、磁性黒色顔料の含量が組成物の全体重量を基準として0.1〜20重量%であることが黒色度及び抵抗の観点から必須である。具体的には、磁性黒色顔料の含量が0.1重量%未満であると、磁性黒色顔料を添加した効果が充分に発揮されないおそれがある。一方、磁性黒色顔料の含量が20重量%を越えると、抵抗が上昇するという問題が発生するおそれがある。なお、磁性黒色顔料の含量は、組成物の全体重量を基準として、好ましくは1〜10重量%であり、より好ましくは1.5〜5重量%である。
【0033】
上述の磁性黒色顔料を必須に含むことで、プラズマディスプレイパネル用電極を形成するためのペースト組成物を乾燥させる工程においてガラス基板を磁性基板に定着させると、磁性黒色顔料が磁性基板側に移動するようになる。そして、乾燥工程が終了すると、ほとんどの磁性黒色顔料がガラス基板の表面側に位置するようになり、電極の下部が高い黒色度を表すようになるのである。
【0034】
したがって、少量の黒色顔料を使用した場合であっても高い黒色度を具現することができる。また、ほとんどの黒色顔料が電極の下部に移動するため、上述した銀(Ag)などの導電性物質の焼成の阻害が抑制される。したがって、焼成後にも、優れた抵抗特性を有する電極が形成されうるのである。
【0035】
なお、必要に応じて、磁性黒色顔料以外の従来公知の黒色顔料(すなわち、非磁性黒色顔料)を、上述した磁性黒色顔料と併用してもよい。かような非磁性黒色顔料としては、例えば、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、クロム(Cr)、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、亜鉛(Zn)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)から選択される金属を含む金属酸化物またはこれらの複合金属酸化物が挙げられる。ただし、これらの材料のみに限定されるわけではない。本発明の組成物における磁性黒色顔料の含量については上述したが、非磁性黒色顔料も併用される場合の、すべての黒色顔料の含量の合計は、組成物の全体重量を基準として、好ましくは0.1〜30重量%であり、より好ましくは1〜15重量%であり、さらに好ましくは1.5〜8重量%である。
【0036】
[ガラスフリット]
本発明の組成物に用いられるガラスフリットは、導電性物質と基板との密着性を増加させる機能を有する。ガラスフリットとして好ましくは、軟化温度が300〜600℃であり、400〜700℃の温度で焼成されうるものが用いられる。例えば、酸化鉛系ガラスフリット、酸化ビスマス系ガラスフリット、酸化亜鉛系ガラスフリットなどが用いられうる。
【0037】
本発明の組成物において、ガラスフリットの含量は、組成物の全体重量の1〜20重量%であることが好ましく、3〜15重量%であることがより好ましい。ガラスフリットの含量が1重量%未満であると、導電性物質と基板との密着性が低下してしまうという問題がある。一方、ガラスフリットの含量が20重量%を超えると、焼成後に過剰のガラスフリッとが残存して膜内に分布し、抵抗を上昇させるおそれがある。
【0038】
[有機バインダー]
本発明において、有機バインダーは、電極を形成するための組成物中で導電性物質及びガラスフリットを分散させて結合する機能と、印刷・乾燥後、焼成前まで電極とガラス基板との密着性を保持する機能とを有する。
【0039】
かような有機バインダーとしては、アルカリ現像性を付与するためのカルボキシル基などの親水性基を有するアクリルモノマーを(共)重合させたアクリル系高分子や、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースまたはヒドロキシエチルヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロース系高分子を単独で、または2種以上混合して用いることができる。
【0040】
本発明の組成物において、有機バインダーの含量は、組成物の全体重量の1〜20重量%であることが好ましく、3〜15重量%であることがより好ましい。有機バインダーの含量が1重量%未満であると、ペースト製造後に粘度が非常に低くなるか、印刷・乾燥後に電極とガラス基板との接着力が低下するおそれがある。一方、有機バインダーの含量が20重量%を超えると、有機バインダーが過剰に存在することで、焼成時に有機バインダーの分解がスムーズに行われず、抵抗が高くなるおそれがある。
【0041】
[溶剤]
本発明の組成物において、溶剤としては、電極形成用ペースト組成物において一般的に用いられている、120℃以上の沸点を有するものが同様に用いられうる。かような溶剤としては、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、脂肪族アルコール(メタノール、エタノールなど)、α−テルピネオール、β−テルピネオール、ジヒドロテルピネオール、エチレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、ブチルセロソルブアセテート、テキサノールなどを単独で、または2種以上混合して用いることができる。
【0042】
本発明の組成物において、溶剤の含量は、特に限定されないが、組成物の全体重量の1〜65重量%であることが好ましく、5〜40重量%であることがより好ましく、10〜30重量%であることがさらに好ましい。なお、他の好ましい形態としては、溶剤が、組成物中の上述した成分の残部である(つまり、組成物が、導電性物質、黒色顔料、ガラスフリット、有機バインダー及び溶剤のみからなる)形態が挙げられる。
【0043】
[その他]
本発明に係る電極形成用ペースト組成物は、光重合性化合物及び光重合開始剤をさらに含んでもよい。特に、これらの物質は、電極形成方法としてフォトリソグラフィ法を用いる場合に好適に添加されうる。
【0044】
光重合性化合物は、感光性樹脂組成物に用いられる多官能性モノマーまたはオリゴマーであり、例えば、エチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールジアクリレート、ジペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ビスフェノールAジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ノボラックエポキシアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、及び1,6−ヘキサンジオールジメタクリレートからなる群から選択される1種または2種以上が挙げられる。
【0045】
本発明の組成物が光重合性化合物を含む場合、組成物中の光重合性化合物の含量は、組成物の全体重量を基準として、1〜20重量部であることが好ましい。光重合性化合物の含量が1重量部未満であると、光硬化が完全に行われない場合があり、現像時にパターン脱落の問題が発生するおそれがある。また、光重合性化合物の含量が20重量部を超えると、多官能性モノマーまたはオリゴマーの量が多くなり、焼成時に有機分解物が残存してしまい、抵抗が上昇するという問題が発生するおそれがある。
【0046】
光重合開始剤としては、200〜400nmの紫外線波長帯での光反応の誘発能に優れたものであればよく、通常、ベンゾフェノン系化合物、アセトフェノン系化合物、トリアジン系化合物からなる群から選択された1種または2種以上が用いられうる。
【0047】
本発明の組成物が光重合開始剤を含む場合、組成物中の光重合開始剤の含量は、組成物の全体重量を基準として、0.1〜10重量部であることが好ましい。光重合開始剤の含量が0.1重量部未満であると、光硬化が完全に行われない場合があり、現像時にパターン脱落の問題が発生するおそれがある。また、光重合開始剤の含量が10重量部を超えると、印刷性が悪化し、未反応有機物による抵抗上昇が発生するおそれがある。
【0048】
この他にも、電極形成用ペースト組成物の流動特性、工程特性及び安定性を向上させるために、必要に応じて、紫外線安定剤、粘度安定剤、消泡剤、分散剤、レベリング剤、酸化防止剤及び熱重合禁止剤から選択される1種または2種以上の添加剤をさらに含んでもよい。これらの添加剤は全て、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する技術者が商用的に購入して使用可能な程度に知られているので、ここではその具体例及びこれに対する説明を省略する。
【0049】
[電極形成方法]
図1は、本発明に係る電極形成方法を概略的に示したフローチャートである。また、図2は、乾燥工程において磁性黒色顔料がガラス基板の表面に移動する過程を概略的に示した図である。
【0050】
図1を参照すると、本発明に係る電極形成方法は、ガラス基板上へのペースト組成物形成段階(S110)及びペースト組成物乾燥段階(S120)を含んで構成される。
【0051】
ガラス基板上へのペースト組成物形成段階(S110)では、電極として用いられるガラス基板210上に、磁性黒色顔料221を含むペースト組成物220の塗膜を形成する。この際、ペースト組成物220としては、上述した本発明の実施形態に係るペースト組成物が用いられる。
【0052】
電極形成方法としてスクリーン印刷法及びオフセット印刷法などの印刷法が用いられる場合、本段階(S110)は印刷によって行われ、電極形成方法としてフォトリソグラフィ法が用いられる場合、本段階(S110)は塗布によって行われる。
【0053】
ペースト組成物乾燥段階(S120)では、表面に磁性黒色顔料221を含むペースト組成物220が印刷または塗布されたガラス基板210を磁性基板230上に定着させ、前記ペースト組成物220を乾燥させる。
【0054】
この際、ペースト組成物220の乾燥過程で、ペースト組成物220に含まれる磁性黒色顔料221は、磁性基板230の磁力によって磁性基板230側に移動するようになる。ペースト組成物乾燥段階(S120)が終了すると、ほとんどの磁性黒色顔料221は、図2に示すように、磁性基板230側、すなわち、ガラス基板210の表面に位置するようになる。
【0055】
したがって、電極の下部は、少量の黒色顔料によっても高い黒色度を示すようになり、ほとんどの黒色顔料はガラス基板の下側に移動することから、導電性物質の焼成の阻害が抑制されうる。このため、焼成後、優れた抵抗特性を有する電極が形成されうる。
【0056】
電極は、スクリーン印刷法、オフセット印刷法及びフォトリソグラフィ法などの方法で形成される。
【0057】
図3は、上述した電極形成方法のうちフォトリソグラフィ法によって電極を形成する方法の例を示した図である。図3を参照すると、フォトリソグラフィ法によって電極を形成する方法は、次のような順序で行なわれる。
【0058】
まず、磁性黒色顔料を含むペースト組成物(上述した本発明の実施形態に係る組成物)をガラス基板上に5〜40μmの厚さで塗布する(S310)。その後、ガラス基板を磁性基板上に定着させ、塗布されたペースト組成物を80〜150℃の温度で20〜60分間乾燥する(S320)。その後、乾燥された前記ペースト組成物上に、フォトマスクを使用して紫外線露光工程を実施する(S330)。その後、現像工程を通して前記ペースト組成物膜の露光領域または未露光領域を選択的に除去する(S340)。最後に、残留したペースト組成物の塗膜を500〜600℃の温度で乾燥及び焼成する(S350)。
【0059】
上述したフォトリソグラフィ法、スクリーン印刷法及びオフセット印刷法などで製造された電極は、導電性物質、磁性黒色顔料及びガラスフリットからなり(つまり、有機バインダー及び溶剤は消失しており)、バス電極及びアドレス電極のようなプラズマディスプレイパネル(PDP)用電極として用いられる。なお、この電極は、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、クロム(Cr)、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、亜鉛(Zn)、ルテニウム(Ru)及びロジウム(Rh)から選択される少なくとも一つの成分を有する金属酸化物をさらに含んでもよい。上記電極をPDP用電極に適用する際の具体的な形態については、本技術分野における従来公知の知見が適宜参照されうる。
【実施例】
【0060】
1.ペースト組成物の製造
<実施例1>
導電性物質として銀(Ag)粉末(平均粒径:1.5μm、Dowa Hightech Co.Ltd AG−2−11)を60g使用し、ガラスフリットとして酸化ビスマス系ガラスフリットである韓国particlogy社製のLF7001を5g使用し、磁性黒色顔料としてフェライト磁性粉末(Dowa社、OP−56)を3g使用し、有機バインダーとしてポリ(メタクリル酸メチル−co−メタクリル酸)(日本合成化学工業株式会社製、P−118)を7g使用し、溶剤として米国Eastman chemical社製のテキサノール(Texanol)を25g使用し、これらを混合・攪拌した後、3本ロールミル(3−Roll−Mill)を使用して充分に分散させることで、ペースト組成物を製造した。
【0061】
<実施例2>
磁性黒色顔料として、OP−56に代えてフェライト磁性粉末(Dowa社、UZ−94)を使用したことを除き、上記の実施例1と同様の手法により、ペースト組成物を製造した。
【0062】
<実施例3>
黒色顔料として、OP−56の量を2gとし、さらに非磁性黒色顔料であるSeido社のCoを1g用いたことを除き、上記の実施例1と同様の手法により、ペースト組成物を製造した。
【0063】
<実施例4>
導電性物質として銀(Ag)粉末(平均粒径:1.5μm、Dowa Hightech Co.Ltd AG−2−11)を60g使用し、ガラスフリットとして酸化ビスマス系ガラスフリットである韓国particlogy社製のLF7001を5g使用し、磁性黒色顔料としてDowa社製のフェライト磁性粉末を3g使用し、有機バインダーとしてポリ(メタクリル酸メチル−co−メタクリル酸)(日本合成化学工業株式会社製、P−118)を6.5g使用し、光重合性化合物として官能性モノマーであるトリメチロールプロパンエトキシトリアクリレート(ミウォン商事株式会社製)を4.5g使用し、光重合開始剤として2−メチル−4'−(メチルチオ)−2−モルホリノ−プロピオフェノン(Satomer社製)を2g使用し、溶剤として米国のEastman chemical社製のテキサノールを19g使用し、これらを混合・攪拌した後、3本ロールミルを使用して充分に分散させることで、ペースト組成物を製造した。
【0064】
<比較例1>
黒色顔料として、非磁性粉末であるSeido社のCoを単独で3g使用したことを除き、上記の実施例1と同様の手法により、ペースト組成物を製造した。
【0065】
上記の実施例及び比較例で製造した組成物の組成比を、下記の表1に示す。
【0066】
【表1】

【0067】
注)単位は組成物の全体重量を基準とした「重量%」である。
【0068】
2.物性評価
上記の実施例1〜4及び比較例1で製造した組成物をガラス基板上にスクリーンプリンターを用いて印刷し、前記ガラス基板を磁性基板上に定着させた後、130℃で30分間乾燥して電極を形成した。形成した電極について、以下のように比抵抗及び黒色度を評価した。これらの結果を下記の表2に示す。
【0069】
(1)比抵抗の測定
形成された電極パターンに対して線抵抗測定器(2000 Multimeter、Keithley)を用いて抵抗を測定した。その後、プロファイラー(Profiler、P−10、Tencor)を使用して線幅及び厚さを測定し、下記式に従って比抵抗を算出した。
【0070】
【数1】

【0071】
ここで、比抵抗値が低いほどパネルでの線抵抗が低くなり、結果的に放電電圧を低下させることで、輝度向上が可能になる。
【0072】
(2)黒色度(L)の測定
黒色度(L)は、色度測定器(CM−508i、Minolta)を用いて測定した。
【0073】
黒色度(L)は、その値が低いほど黒色に近いことを示すもので、電極の黒色度は、パネルのパターン形成時に外光反射輝度及び明度を決定する非常に重要な因子である。
【0074】
【表2】

【0075】
上記の表2に示すように、本発明に係る実施例1〜4の場合、磁性黒色顔料を使用することで、非磁性黒色顔料のみを使用した比較例1に比べて低い比抵抗及び優れた黒色度(L)を示すことが分かる。
【0076】
この結果を通して、磁性黒色顔料を使用し、磁性基板上で乾燥して電極を製造すると、、より優れた伝導度及び黒色度を具現できることが分かる。
【0077】
本発明に係る磁性黒色顔料を含むペースト組成物を用いて製造されたプラズマディスプレイパネル用電極においては、優れた黒色度(L)、外光反射輝度及び導電性(電子伝導性)を有するという利点が得られる。
【符号の説明】
【0078】
210 ガラス基板、
220 ペースト組成物、
221 磁性黒色顔料、
230 磁性基板。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性物質、黒色顔料、ガラスフリット、有機バインダー及び溶剤を含む電極形成用ペースト組成物において、
前記黒色顔料として、磁性黒色顔料を組成物の全体重量を基準として0.1〜20重量%含むことを特徴とする、電極形成用ペースト組成物。
【請求項2】
前記磁性黒色顔料は、
鉄(Fe)、ホウ素(B)、サマリウム(Sm)及びネオジム(Nd)からなる群から選択される少なくとも一つの成分を含む金属酸化物を含むことを特徴とする、請求項1に記載の電極形成用ペースト組成物。
【請求項3】
前記黒色顔料は、
鉄(Fe)、ホウ素(B)、サマリウム(Sm)及びネオジム(Nd)からなる群から選択される少なくとも一つの成分を含む金属酸化物と、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、クロム(Cr)、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、亜鉛(Zn)、ルテニウム(Ru)及びロジウム(Rh)から選択される少なくとも一つの成分を含む金属酸化物との混合物であることを特徴とする、請求項1または2に記載の電極形成用ペースト組成物。
【請求項4】
組成物の全体重量を基準として、導電性物質30〜90重量%、ガラスフリット1〜20重量%、有機バインダー1〜20重量%、及び溶剤1〜65重量%を含むことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の電極形成用ペースト組成物。
【請求項5】
前記導電性物質は、
金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)及びアルミニウム(Al)から選択される1種もしくは2種以上の金属またはこれらの合金からなり、
前記有機バインダーは、
アクリル系高分子及びセルロース系高分子から選択される1種または2種以上からなることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の電極形成用ペースト組成物。
【請求項6】
組成物の全体重量を基準として、光重合性化合物1〜20重量部及び光重合開始剤0.1〜10重量部をさらに含むことを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の電極形成用ペースト組成物。
【請求項7】
紫外線安定剤、粘度安定剤、消泡剤、分散剤、レベリング剤、酸化防止剤及び熱重合禁止剤から選択される1種または2種以上の添加剤をさらに含むことを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の電極形成用ペースト組成物。
【請求項8】
(a)ガラス基板上に請求項1〜7のいずれか1項に記載のペースト組成物を塗布または印刷する段階と、
(b)前記ガラス基板を磁性基板上に定着させ、前記ペースト組成物を乾燥する段階と、
を含むことを特徴とする、電極形成方法。
【請求項9】
請求項8に記載の電極形成方法により製造された電極を含むプラズマディスプレイパネル。
【請求項10】
導電性物質、磁性黒色顔料及びガラスフリットからなる電極を含むプラズマディスプレイパネル。
【請求項11】
前記電極は、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、クロム(Cr)、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、亜鉛(Zn)、ルテニウム(Ru)及びロジウム(Rh)から選択される少なくとも一つの成分を有する金属酸化物をさらに含むことを特徴とする請求項10に記載のプラズマディスプレイパネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−153366(P2010−153366A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−261142(P2009−261142)
【出願日】平成21年11月16日(2009.11.16)
【出願人】(500005066)チェイル インダストリーズ インコーポレイテッド (263)
【Fターム(参考)】