説明

磁気カードリーダ

【課題】磁気カードリーダの耐環境性を高めるとともに、上位装置とのシステムの安定性を高める。
【解決手段】カード4に記録された磁気データを磁気ヘッド5で読み取る磁気カードリーダ1において、磁気ヘッド5で読み取って得た磁気データを記憶する記憶部(RAM104の一部)と、磁気データの総データ数と所定の閾値を比較する比較部と、比較部で磁気データの総データ数が所定の閾値以下である場合に有効データとして判定する判定部と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙やプラスチックなどのカード状媒体に記録されている磁気データの読み取り又は書き込みを行う磁気カードリーダに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、クレジットカード,プリペイドカード又はキャッシュカード等のカード状媒体に形成された磁気ストライプには、例えば固有情報等の磁気データが記録されている。磁気データをカード状媒体に記録する際には、例えば、2種類の周波数の組み合わせからなるFM変調方式(F2F方式)が用いられる。FM変調方式で記録された磁気データを再生するにあたって、カード状媒体の磁気ストライプに対して相対的に磁気ヘッドを摺動させ、磁気データをアナログ信号として取得した後、デジタル信号に変換(復調)したものがCPU(デコード部)に取り込まれる(例えば特許文献1参照)。特許文献1に開示された磁気カードリーダは、磁気ヘッドから出力され、増幅部で増幅されたアナログ信号を、F2F復調部で復調し、カード走行信号、クロック信号及びデータ信号を出力する。
【0003】
ここで、一般に、磁気カードリーダのうち手動式(スワイプ式)の磁気カードリーダは、廉価な構成となるようにメモリ等のリソースを制限することが多い(メモリ容量が少ないものが使われる)。そのため、磁気データを格納するバッファサイズ(容量)に十分な余裕(マージン)をもたせることができない場合がある。仮に、磁気リードデータがバッファサイズを超えた場合には、その超えた磁気リードデータは読み捨てられる一方、バッファに格納されたデータは、無条件に上位装置に送信される。
【0004】
【特許文献1】特開2007−250142号公報(段落番号[0015])
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、バッファに格納されたデータが無条件に上位装置に送信される磁気カードリーダでは、耐環境性の問題がある。具体的には、ある範囲をもった特定の周波数の電波を送信し続ける電波試験(イミュニティ試験)において、回路定数に共振した放射を受けた磁気カードリーダは、磁気データを受信したと誤認して、データをバッファに格納し始める。そして、データ自体は意味のないものであるが、バッファに格納された分だけ、無条件に磁気カードリーダから上位装置へ送信されてしまう。その結果、上位装置においてエラー処理がなされる。このような電波試験と同様の環境に磁気カードリーダが設置された場合には、上位装置において頻繁にエラー処理を行う必要があるため、結果的に、耐電波や耐ノイズ等の耐環境性の低下に繋がる。また、上位装置にエラー処理を頻繁に要求するとなると、システムの安定性を低下させる虞もある。
【0006】
本発明は、このような点に鑑みてなされたものであり、その目的は、磁気カードリーダの耐環境性を高めることが可能な磁気カードリーダを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上のような課題を解決するために、本発明は、以下のものを提供する。
【0008】
(1) カード状媒体に記録された磁気データを磁気ヘッドで読み取る磁気カードリーダにおいて、前記磁気ヘッドで読み取って得た磁気データを記憶する記憶部と、前記磁気データの総データ数と所定の閾値を比較する比較部と、前記比較部で前記磁気データの総データ数が前記所定の閾値以下である場合に有効データとして判定する判定部と、を備える磁気カードリーダ。
【0009】
本発明によれば、磁気カードリーダに、磁気ヘッドで読み取って得た磁気データを記憶する記憶部と、磁気データの総データ数と所定の閾値を比較する比較部と、比較部で磁気データの総データ数が所定の閾値以下である場合に有効データとして判定する判定部と、を設けることとしたので、磁気ヘッドで読み取って得た磁気データの"総データ数"が所定の閾値以下である場合に有効データとして扱われる。したがって、有効データとして扱われたものを上位装置に送信するようにすれば、上位装置において頻繁にエラー処理を行う必要がなくなり、ひいては電波によるデータ受信の誤認を排除して耐環境性を向上させることができる。
【0010】
(2) 前記比較部は、前記磁気データの総データ数が、前記記憶部に記憶された磁気データのデータ数より大きい場合に、前記磁気データの総データ数と所定の閾値を比較することを特徴とする磁気カードリーダ。
【0011】
本発明によれば、上述した比較部によって、磁気データの総データ数が、上述した記憶部に記憶された磁気データのデータ数より大きい場合に、磁気データの総データ数と所定の閾値とが比較されることとしたので、比較部は、記憶部の記憶容量を超える磁気データが磁気ヘッドで読み取られた場合に、機能することになる。したがって、比較部の機能を常時発揮させる必要がなくなり、ソフトウェアによる処理負荷の軽減を図ることができる。
【0012】
(3) 前記磁気データの総データ数及び前記記憶部に記憶された磁気データのデータ数を検出するカウンタを備えることを特徴とする磁気カードリーダ。
【0013】
本発明によれば、磁気カードリーダに、上述した磁気データの総データ数及び記憶部に記憶された磁気データのデータ数を検出するカウンタが設けられることとしたので、このカウンタの機能によって、磁気データの"総データ数"を容易に検出することができ、ひいては上述同様、耐電波や耐ノイズ等の耐環境性を向上させることができる。
【0014】
特に、本発明では、単に記憶部に記憶された磁気データのデータ数を検出するだけでなく、磁気データの総データ数をも検出するカウンタを設けている。詳細に説明すると、従来の磁気カードリーダでは、記憶部の記憶容量(バッファ上限)を超える磁気リードを行うと、リードデータ数のカウントは中止されていた。また、磁気データを検出すると、一旦記憶部に格納されるが、記憶容量以上のデータを検出すると読み捨てる構成となっているため、データ数のカウント上限は記憶容量と等しかった。したがって、この場合、記憶部に記憶された磁気データのデータ数の検出はできても、実際にどの位の磁気データのデータ数が検出されたのか(磁気データの総データ数)は分からなかった。しかし、本発明に係る磁気カードリーダに設けられたカウンタは、磁気データの総データ数と記憶部に記憶された磁気データのデータ数の双方を検出することができる。
【0015】
なお、本発明でいう「カウンタ」については、物理的に複数のカウンタを設けてもよいし、一のカウンタで変数を複数にしたものを設けてもよいし、一のカウンタかつ一の変数で変数の変域を別々に確保したものを設けてもよいし、その態様の如何は問わない。
【0016】
(4) 前記所定の閾値は、ISO規格によって定められた磁気カードに記録された磁気データのデータ数に、所定のデータ数を加えた値であることを特徴とする磁気カードリーダ。
【0017】
本発明によれば、上述した所定の閾値は、ISO規格によって定められた磁気カードに記録された磁気データのデータ数に、所定のデータ数を加えた値であることとしたので、ISO規格を満たす磁気カードがスワイプ又は挿入された場合に、磁気ヘッドで得られた磁気データが有効データか否かを精度良く判定することができる。なお、本発明でいう「所定のデータ数」は、実験的・経験的に定められる数値であって、例えば、ISO規格によって定められた磁気カードに記録された磁気データのデータ数の、10%とすることができる。
【0018】
(5) 前記判定部によって有効データと判定されたデータは上位装置に送信され、前記判定部によって有効データと判定されなかったデータは廃棄されることを特徴とする磁気カードリーダ。
【0019】
本発明によれば、上述した判定部によって有効データと判定されたデータは上位装置に送信され、判定部によって有効データと判定されなかったデータは廃棄されることとしたので、磁気カードリーダから上位装置へのエラーとなるデータを送信する回数を減らすことができ、その結果、上位装置においてエラー処理が行われる回数を減らすことができ、ひいては耐電波や耐ノイズ等の耐環境性を高めることができる。
【0020】
なお、ここでいう「廃棄」とは、データを削除することは勿論、データを削除することなくソフトウェア的に無視する(有効なデータとして扱わない)ことも含むものとする。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように、本発明によれば、磁気ヘッドで読み取って得た磁気データの総データ数が、所定の閾値以下である場合に、有効データとして扱うこととしているので、上位装置において、磁気カードリーダが設置された環境に起因したエラー処理が行われる回数を減らすことができ、磁気カードリーダの耐電波や耐ノイズ等の耐環境性を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0023】
図1は、本発明の実施の形態に係る磁気カードリーダ1の概要を示す模式図である。
【0024】
図1において、磁気カードリーダ1は、スワイプ方向と直交する面の断面形状がほぼコ字形状をなし、カード走行路を形成するフレーム2と、このフレーム2の一部(底部)として形成される走行基準面3と、カード4(カード状媒体の一例)上の磁気ストライプ41に記録されている磁気データの読み取り又は書き込みを行う磁気ヘッド5と、を有している。図中の両方向矢印で示すように、磁気カードリーダ1では、カード4を走行基準面3に沿って手動走行(スワイプ)させることで、磁気データの読み取りを行う。なお、本実施形態では、読取専用の磁気ヘッド5を用いているが、読取機能及び書込機能をもった磁気ヘッドを用いても構わない。また、本明細書でいう「スワイプ」とは、カード状記録媒体を磁気カードリーダ1のガイド(カード走行路)に沿って手動でさっと走らせる動作をいう。
【0025】
磁気ヘッド5は、カード走行路に臨むように配置されている。そして、カード4上の磁気データに係る信号を再生する。具体的には、磁気ヘッド5は、カード4表面上の磁気ストライプ41に接触・摺動することによって、その磁気ストライプ41に記録された磁気データを読み取り、その磁気データに係る再生信号を生成する。
【0026】
図2は、本発明の実施の形態に係る磁気カードリーダ1の電気的構成を示すブロック図である。
【0027】
図2において、本発明の実施の形態に係る磁気カードリーダ1は、主として、磁気ヘッド5と、CPU101と、AMP回路102と、復調回路103と、RAM104と、ROM105と、を備えている。なお、RAM104及びROM105は、CPU101内に組み込まれていてもよい(内蔵ROM等)。一般に、ROM105には、磁気カードリーダ1の基本機能を支える基本プログラムが格納されており、RAM104は、CPU101のワーキングエリアとして機能する。
【0028】
CPU101は、磁気カードリーダ1の制御中枢を司るものであって、磁気カードリーダ1の統合的な制御を行う。磁気ヘッド5による再生信号は、AMP(増幅)回路102において増幅・波形整形され、復調回路103において復調された後(読み取り信号の2値化などを行った後)、CPU101に送られる。
【0029】
また、CPU101は、上位装置10と、I/F回路(図示せず)を介して通信する。上位装置10において、CPU110は、デコーダ106を利用して2値のデジタルデータに対して復号処理を行う。その結果、上位装置10は、磁気データの内容を取得することができる。
【0030】
ここで、本実施形態に係る磁気カードリーダ1では、CPU101,RAM104,及びROM105等の電気要素によって、「比較部」及び「判定部」が構成されている。より具体的に説明すると、ROM105には、磁気ヘッド5で読み取って得た磁気データの総データ数と所定の閾値を比較する比較プログラムと、磁気データの総データ数が所定の閾値以下である場合に有効データとして判定する判定プログラムとが格納されており、CPU101は、RAM104をワーキングエリアとしつつ、これらのプログラムを実行することで、「比較部」及び「判定部」の機能を実現する。なお、本実施形態では、所定の閾値は、RAM104に記憶されているが、例えば別途設けられたEEPROMなどのメモリに記憶させてもよい。また、本実施形態では、所定の閾値として、ISO規格によって定められたカード4に記録された磁気データのデータ数の10%を加えた値とする。
【0031】
また、ROM105には、「判定部」によって有効データと判定されたデータを上位装置10に送信する送信プログラムや、「判定部」によって有効データと判定されなかったデータを廃棄する廃棄プログラム等も格納されており、CPU101は、RAM104をワーキングエリアとしつつ、これらのプログラムを実行する。
【0032】
また、RAM104は、磁気ヘッド5で読み取って得た磁気データを記憶する書換え可能な「記憶部」として機能する。なお、本実施形態では、RAM104は書換え可能な記憶部であり、また、RAM104の一部の記憶領域を「データ格納用バッファ」として用いることとするが、例えばRAM104の全領域を「データ格納用バッファ」として用いてもよい。
【0033】
さらに、CPU101やRAM104等は、磁気ヘッド5で読み取って得た磁気データの総データ数及びデータ格納用バッファに記憶された磁気データのデータ数を検出するカウンタとしても機能する。なお、CPU101とは別にカウンタを設けても構わない。以下、このような電気的構成に基づいて、磁気データ読取方法の流れについて詳述する。
【0034】
図3は、本発明の実施の形態に係る磁気データ読取方法の流れを示すフローチャートである。
【0035】
図3において、まず、磁気リードが終了したか否かが判断される(ステップS1)。具体的には、磁気カードリーダ1のCPU101は、磁気ヘッド5による磁気データの読み取りが終了したか否かを判断する。磁気リードが未だ終了していない場合には(ステップS1:NO)、CPU101は、検出総数カウンタを更新する(ステップS2)。なお、「検出総数カウンタ」については、図4に示すように、検出した磁気データ数(総データ数)をデータ格納用バッファのサイズとは無関係にカウントアップするものである。
【0036】
次に、CPU101は、データ格納用バッファに空きがあるか否かを判断し(ステップS3)、空きがあると判定した場合には(ステップS3:YES)、データ格納用バッファに磁気データを格納する(ステップS4)。それと同時に、格納データカウンタを更新する(ステップS4)。なお、「格納データカウンタ」については、図4に示すように、データ格納用バッファが一杯になるまでカウントアップするものであり、図4の例で言えば、データ格納用バッファのサイズNが最大値となる。本実施形態では、Nは、カード4の長手方向に一列に記録可能な磁気データのデータ数を示している。
【0037】
カード4の磁気データは、上述したとおり、磁気カードリーダ1により読み込まれ、データ格納用バッファに格納される。この磁気データは1ビット単位のシリアルデータで構成されているので、磁気カードリーダ1が1ビット単位のシリアルデータを順次読み込みながら1ビットごとに割り込み信号を検出している。すなわち、磁気カードリーダ1のデータ格納用バッファには、カード4の磁気データ、すなわち、1ビット毎のシリアルデータを読み込む毎に割り込み信号を発生して、0ビット目、1ビット目、・・・・・(N−1)ビット目に対応して格納されている。そして、磁気データはデータ格納用バッファに格納される際、格納データカウンタは、ビット毎に発生する割り込み信号に基づいてカウントアップされる。そして、データ格納用バッファが一杯になるまで、格納データカウンタはカウントアップされる。
【0038】
一方、検出総数カウンタは、上記した割り込み信号に基づいて、検出した磁気データ数(総データ数)をデータ格納用バッファのサイズとは無関係にカウントアップされる。すなわち、磁気データがデータ格納用バッファに格納されているときは格納データカウンタとともに、検出総数カウンタも同様に、割り込み信号に基づいてカウントアップされる。さらに、データ格納バッファが磁気データで一杯になった後、すなわち、格納データカウンタがカウントアップを停止した後でも、磁気カードリーダ1により読み込まれる割り込み信号に基づいてカウントアップされる。なお、この際、読み込まれた磁気データは格納されることなく、廃棄される。
【0039】
次に、ステップS4の処理が終了した後は、処理はステップS1に戻され、磁気リード終了までステップS1〜ステップS4の処理が繰り返される。なお、ステップS3の処理においてデータ格納用バッファに空きがなかった場合にも(ステップS3:NO)、同様に、処理がステップS1に戻される。したがって、この場合には、格納データカウンタは更新されないことになる(すなわち、データ格納用バッファを越える分については、格納データカウンタではカウントされない)。
【0040】
ステップS1の処理において、磁気リードが終了した場合には(ステップS1:YES)、CPU101は、検出総数が所定の閾値を超えているか否かを判断する(ステップS5)。より具体的には、CPU101は、上述した比較プログラム,判定プログラム,及び送信プログラムを適宜実行することによって、検出総数カウンタが示す値(磁気データの総データ数)が所定の閾値以下の場合には(ステップS5:NO)、有効データであるとして上位装置10へデータ送信を行う(ステップS6)。
【0041】
一方で、検出総数カウンタが示す値(磁気データの総データ数)が所定の閾値よりも大きい場合には(ステップS5:YES)、CPU101は、上述した廃棄プログラムを実行し、データ廃棄を行って(ステップS6の処理は行われず)、ステップS7の処理(バッファクリア)を行う。なお、バッファクリアの処理において、適宜カウンタクリアの処理を行ってもよい。
【0042】
このようにして、磁気データの総データ数と所定の閾値を比較することで(ステップS5)、有効データとして扱われたものだけを上位装置10に送信することができ、ひいては電波によるデータ受信の誤認を排除して、耐電波や耐ノイズ等の耐環境性を向上させることができる。また、本実施形態では、磁気リード終了後は必ずステップS5の処理を行うこととしたが、例えば図5に示すように、ステップS5の処理を行うための設定条件を定めてもよい。
【0043】
図5は、本発明の他の実施の形態に係る磁気データ読取方法の流れを示すフローチャートである。
【0044】
図5において、ステップS11〜ステップS14の処理は、図3に示すステップS1〜ステップS4の処理と同じ処理である。また、ステップS16〜ステップS18の処理は、図3に示すステップS5〜ステップS7の処理と同じ処理である。したがって、異なるのはステップS15の処理である。
【0045】
具体的には、ステップS15の存在により、「比較部」によるステップS16の処理は、磁気データの総データ数(検出総数カウンタのカウンタ値=検出総数)が、データ格納用バッファに記憶された磁気データのデータ数(格納データカウンタのカウンタ値=格納データ)より大きい場合にのみ(ステップS15:YES)、行われるようにしている。これは、電波障害の影響により、有効データでないデータ(無効データ)を検出した可能性が高いので、閾値との比較処理(ステップS16)を行う必要があるからである。
【0046】
逆に、磁気データの総データ数が、データ格納用バッファに記憶された磁気データのデータ数以下の場合には(ステップS15:NO)、正常データが格納されているとして、上位装置10に対してデータ送信を行う(ステップS17)。なお、磁気データの総データ数が、データ格納用バッファに記憶された磁気データのデータ数以下となる場合は、一般に、「磁気データの総データ数=データ格納用バッファに記憶された磁気データのデータ数」の関係が成立する。
【0047】
このように、データ格納用バッファがオーバーフローしている場合にのみ比較処理を行うようにすれば、比較部の機能を常時発揮させる必要がなくなり、ソフトウェアによる処理負荷の軽減を図ることができる。
【0048】
[実施形態の主な効果]
以上説明したように、本実施形態に係る磁気カードリーダ1によれば、最終的に検出したデータ数(磁気データの総データ数)をカウントする機能を設けている、すなわち、データ格納用バッファに格納したデータ数をカウントするカウンタと磁気データの検出総数をカウントするカウンタとを設けているので、ソフトウェアで閾値判断を行って、上位装置10へエラー通知を行う頻度を小さくすることができる。例えば、電波障害の影響を受ける場合であっても、エラー通知を上位装置10へ送信する割合を低下させることができる。その結果、磁気カードリーダ1の耐電波や耐ノイズ等の耐環境性を向上させることができる。
【0049】
また、本実施形態に係る磁気カードリーダ1が設置された環境に起因して(例えば、ある範囲を持った特定の周波数の電波が継続的に送信されるような悪環境の中に磁気カードリーダ1が設置されたことに起因して)、意味のないデータが頻繁に上位装置10に送られ、上位装置10でエラー処理が頻繁に行われることを防ぐことができれば、システムの安定性を高めることができる。
【0050】
また、図5を用いて説明したように、一定の条件が満たされた場合(図5のステップS15:YES)のみ比較処理(図5のステップS16)が行われるようにすることで、比較部の機能を常時発揮させる必要がなくなり、ソフトウェアによる処理負荷の軽減を図ることができる。
【0051】
また、所定の閾値として、ISO規格によって定められた磁気カードに記録された磁気データのデータ数に、所定のデータ数(本実施形態では10%)を加えた値を用いることによって、ISO規格を満たすカード4がスワイプされた場合に、磁気ヘッド5で得られた磁気データが有効データか否かを精度良く判定することができる。
【0052】
なお、磁気ヘッド5で得られた磁気データが有効データか否かを精度良く判定する際、ソフトウェアによる閾値判断が行われる。したがって、閾値自体を任意のタイミングで変更することによって、環境変化に柔軟に対応することができ、柔軟性を向上させることができる。
【0053】
この点、磁気カードリーダ1に学習機能を設けることによって、自律的に閾値を最適化することもできる。より具体的に説明すると、磁気カードリーダ1を所定の場所へ設置した当初は、設定された初期値で閾値判断を行うが、設置環境は様々で、必ずしもその設置場所に対して初期値が最適とはいえない場合がある。そこで、エラー検出した際に、対象データ数を記憶し、現在設定されている閾値と比較し、差が少ない場合は閾値を段階的に大きくする。閾値には上限を設けており、上限に達した場合は、何らかの通知機能、たとえば、LED等を発光させる、または指令コマンドを上位装置に発信する等の機能を磁気カードリーダに持たせ、磁気カードリーダの設置環境の改善を促す仕組みを持たせるようにしてもよい。
【0054】
また、閾値の変更方法については、静的なものでも動的なものでもよい。例えば、磁気カードリーダ初期設定時にディップスイッチ等を用いて閾値を設定する、静的な設定でもよいし、磁気カードリーダ稼動中でも閾値を変更することができるように、コマンド等による動的な設定でもよい。これらによって、環境状態の急変に柔軟な対応をすることができる。さらに、本実施形態では、スワイプ式磁気カードリーダであるが、これに限定されるものではなく、他の手動式カードリーダであってもよいし、手動式以外のモータ駆動式カードリーダであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明に係る磁気カードリーダは、磁気カードリーダの耐電波や耐ノイズ等の耐環境性を高めるものとして有用である。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の実施の形態に係る磁気カードリーダの概要を示す模式図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る磁気カードリーダの電気的構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る磁気データ読取方法の流れを示すフローチャートである。
【図4】検出総数カウンタと格納データカウンタの概念を説明するための説明図である。
【図5】本発明の他の実施の形態に係る磁気データ読取方法の流れを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0057】
1 磁気カードリーダ
2 フレーム
3 走行基準面
4 カード
5 磁気ヘッド
101 CPU
102 増幅(AMP)回路
103 復調回路
104 RAM
105 ROM
106 デコーダ
110 CPU

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カード状媒体に記録された磁気データを磁気ヘッドで読み取る磁気カードリーダにおいて、
前記磁気ヘッドで読み取って得た磁気データを記憶する記憶部と、前記磁気データの総データ数と所定の閾値を比較する比較部と、前記比較部で前記磁気データの総データ数が前記所定の閾値以下である場合に有効データとして判定する判定部と、を備える磁気カードリーダ。
【請求項2】
前記比較部は、前記磁気データの総データ数が、前記記憶部に記憶された磁気データのデータ数より大きい場合に、前記磁気データの総データ数と所定の閾値を比較することを特徴とする請求項1記載の磁気カードリーダ。
【請求項3】
前記磁気データの総データ数及び前記記憶部に記憶された磁気データのデータ数を検出するカウンタを備えることを特徴とする請求項1又は2記載の磁気カードリーダ。
【請求項4】
前記所定の閾値は、ISO規格によって定められた磁気カードに記録された磁気データのデータ数に、所定のデータ数を加えた値であることを特徴とする請求項1から3のいずれか記載の磁気カードリーダ。
【請求項5】
前記判定部によって有効データと判定されたデータは上位装置に送信され、前記判定部によって有効データと判定されなかったデータは廃棄されることを特徴とする請求項1から4のいずれか記載の磁気カードリーダ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−86126(P2010−86126A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−252196(P2008−252196)
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(000002233)日本電産サンキョー株式会社 (1,337)
【Fターム(参考)】