説明

磁気ガイド装置および放射線治療装置

【課題】着磁媒体の着磁パターンを離れた距離にある磁気センサーで検出すること。
【解決手段】軟磁性粒子を含む平坦な軟磁性層と軟磁性粒子を含まない平坦な非磁性層を交互に積層し、積層露出断面を磁気センサー48への取り付け面およびリーフとの接触面に適合する形状に切断・加工して磁気ガイド90を作成する。そして、磁気ガイド90を磁気テープ46と磁気センサー48との間に配置する。磁気ガイド90には、柱状の軟磁性領域と非磁性体領域から構成される材料を用いることもできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、磁気テープや磁気シートなどの着磁媒体が発生する磁場パターンを磁気センサーで検出可能な位置まで引き出す技術、および放射線治療装置に関する。
【背景技術】
【0002】
放射線治療装置では、放射線の照射領域を調整するために“マルチリーフコリメータ”(以下MLCと略す)が使用される。直線状にリーフを移動させる直動方式MLCではリーフのエッジ部分で半影を生じる欠点があるため、円弧形リーフを使う方式がある。円弧形リーフでは、リーフ移動のため、その下側面には歯が刻まれ、動力伝達機構を介してモータに繋がっている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
MLCは各リーフを独立に動かして放射線の照射領域を高精度に調整するため、各リーフ位置を全て独立にリアルタイムで、且つ高精度(数10μm)に計測する必要がある。また、非常に強力な放射線が照射されるため、耐放射線性に優れた位置計測技術を使う必要がある。
【0004】
そこで、例えば、動力伝達機構に使われる複数の伝達ギアのいずれかにエンコーダやポテンショメータ等の位置計測手段を設け、伝達ギアの回転を検出することによってリーフの位置計測が行われている。
【0005】
【特許文献1】特開2007−195652号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、動力伝達機構が複数の伝達ギアによって構成される場合には、複数のギアそれぞれにバックラッシュが発生する。複数の伝達ギアのいずれかの回転に基づきリーフの位置を計測する方式によると、計測したリーフの位置と実際の位置とにバックラッシュ分の誤差が生じる。そこで、円弧形をした各リーフの凹形端面部分に、等間隔に着磁した磁気テープを図7のように貼付し、この磁気テープに磁気センサーを密着して磁気パターン情報を検出しようとすると、概ね磁気センサーの形状が平坦であるため、どうしても隙間が生じるため、十分な感度で検出できないといった問題がある。
【0007】
この発明は、上述した従来技術による課題を解消するためになされたものであり、リーフの位置を正確に計測することができる放射線治療装置および放射線治療装置がリーフの位置を正確に計測することを可能とする磁気ガイド装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、請求項1記載の本発明は、軟磁性粒子を含む平坦な軟磁性層と軟磁性粒子を含まない平坦な非磁性層が交互に積層され、着磁媒体に積層露出断面を接触させた際に、該着磁媒体が発生する磁場パターンを前記積層露出断面の反対側の積層露出断面に引き出すことを特徴とする磁気ガイド装置である。
【0009】
また、請求項2記載の本発明は、軟磁性粒子を含み中心軸が全て一定の方向を向き且つ2次元的に等間隔配置された複数本のまっすぐな柱状磁性領域と該柱状磁性領域間の隙間を満たす非磁性領域から構成され、着磁媒体に前記柱状磁性領域の中心軸横断面を接触させた際に、該着磁媒体が発生する磁場パターンを前記中心軸横断面の反対側の中心軸横断面に引き出すことを特徴とする磁気ガイド装置である。
【0010】
また、請求項6記載の本発明は、放射線の照射領域を調整するマルチリーフコリメータと、前記マルチリーフコリメータを構成する円弧状の各リーフの上端部に貼り付けられる着磁媒体と、前記着磁媒体が発生する磁場パターンを検出する磁気センサーと、前記着磁媒体と磁気センサーの間に配置され該着磁媒体が発生する磁場パターンを磁気センサーが検出可能なように引き出す磁気ガイド装置を備え、前記磁気ガイド装置は、軟磁性粒子を含む平坦な軟磁性層と軟磁性粒子を含まない平坦な非磁性層が交互に積層され、前記着磁媒体に積層露出断面を接触させた際に、該着磁媒体が発生する磁場パターンを前記積層露出断面の反対側の積層露出断面に引き出して前記磁気センサーが検出可能とすることを特徴とする放射線治療装置である。
【0011】
また、請求項7記載の本発明は、放射線の照射領域を調整するマルチリーフコリメータと、前記マルチリーフコリメータを構成する円弧状の各リーフの上端部に貼り付けられる着磁媒体と、前記着磁媒体が発生する磁場パターンを検出する磁気センサーと、前記着磁媒体と磁気センサーの間に配置され該着磁媒体が発生する磁場パターンを磁気センサーが検出可能なように引き出す磁気ガイド装置を備え、前記磁気ガイド装置は、軟磁性粒子を含み中心軸が全て一定の方向を向き且つ2次元的に等間隔配置された複数本のまっすぐな柱状磁性領域と該柱状磁性領域間の隙間を満たす非磁性領域から構成され、前記着磁媒体に前記柱状磁性領域の中心軸横断面を接触させた際に、該着磁媒体が発生する磁場パターンを前記中心軸横断面の反対側の中心軸横断面に引き出して前記磁気センサーが検出可能とすることを特徴とする放射線治療装置である。
【発明の効果】
【0012】
請求項1または2記載の本発明によれば、着磁媒体が発生する磁場パターンを離れた位置にある磁場センサーが検出することができる。
【0013】
請求項6または7記載の本発明によれば、磁気センサーを着磁媒体から離して配置することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に添付図面を参照して、この発明に係る磁気ガイド装置および放射線治療装置の好適な実施例を詳細に説明する。
【実施例】
【0015】
まず、本実施例に係る放射線治療装置の構成について説明する。図1は、本実施例に係る放射線治療装置の構成を示す概要図である。放射線治療装置1は、被検体の患部を治療するための装置である。放射線を発生させ、被検体の患部に曝射することで、患部を治療する。
【0016】
この放射線治療装置1は、被検体が載置される治療台2、放射線を曝射する回転架台3、および該回転架台3を回動可能に支持する回転支持台4から構成されている。
【0017】
治療台2は、被検体の体軸方向(図1中矢印Aの方向)に移動可能とされた天板2aが備えられているとともに、上下動(図1中矢印Bの方向)が可能である。また、この治療台2は、天板2aの面が放射線治療装置1の設置面と平行な関係を保つ回転動(図1中矢印C)が可能となっている。
【0018】
回転支持台4は、装置設置面に固定されており、回転架台3を回動軸4aを介して支持している。回転支持台4は、回動軸4aを回転させることで、回転架台3を軸回り(図1中矢印D)の方向に回転可能とする。
【0019】
回転架台3は、その断面が略L字状の立体形状を有している。略L字状の立体形状のうち、片腕3aが回転支持台4に支持されており、他方の片腕3bに照射ヘッド5を備えている。照射ヘッド5は、治療台2と対向して配置される。
【0020】
照射ヘッド5には、放射線源Sが内設されており、放射線を被検体に対して曝射する。放射線源Sは、電子加速器や対電子線ターゲット等で構成されており、電子加速器で電子を加速させ、対電子線ターゲットに衝突させることで放射線を発生させる。発生する放射線は、X線、γ線などであり、この他に加速された電子をターゲットに衝突させずに、直接患者の体表面に照射するといった使われ方もある。
【0021】
この放射線治療装置1は、天板2aに被検体を載置して、放射線が照射される患部が回動軸4aの軸線(図中一点鎖線)と照射ヘッド5の軸線(図中同じく一点鎖線)とが交差するアイソセンタに位置するように、治療台2の被検体の体軸方向への移動や上下動並びに回転動、および回転架台3の軸回り方向への回転を行う。
【0022】
患部がアイソセンタに位置すると、照射野F等を調整して放射線源から放射線を患部へ照射する。照射野Fは、放射線を照射する領域であり、患部形状に合わせて形成される。照射ヘッド5には、原体絞り装置(マルチリーフコリメータ)6が内設され、原体絞り装置6により照射野Fが形成される。
【0023】
図2は、原体絞り装置6と放射線源との位置関係をあらわした側面から見た原理図である。図2に示すように、原体絞り装置6は、放射線源Sから照射される放射線の曝射軸上に設置されている。この原体絞り装置6は、マルチリーフ部分を備え、各リーフは、放射線の曝射方向軸を挟んで対向する板状のリーフ101Aおよび101Bを備える。リーフ101Aおよび101Bは、その断面がテーパ状とされるとともに、その上端面が短周長のアーチ状となっている。
【0024】
このリーフ101Aおよび101Bは、放射線の放射範囲に位置して放射範囲を絞ることで、患部形状に合致した照射野Fを形成して患部以外の組織への無用な照射を防止する。マルチリーフ部分は、リーフ101Aおよび101Bの対からなり、その側面が互いに接する又は近接するように複数対が並置させられた構造となっている。
【0025】
リーフ101Aおよび101Bの対は、それぞれ独立して放射線源Sを中心とした同一円弧軌道に沿って接近又は離反移動する。それぞれのリーフ101Aおよび101Bの対の接近または離反移動により、マルチリーフ部分は全体として適切な照射野Fを形成する。図3に、従来の原体しぼり装置6における各リーフを駆動するための動力伝達系の模式図を示す。同図に示すように、モータ31の回転は、ウォームギア32、ウォームホイール33、アイドラギア34、シャフト35、駆動ギア36を介してリーフ37に伝達される。
【0026】
次に、本実施例に係る放射線治療装置1によるリーフ位置計測方法について説明する。一般的に、光を検出する“光半導体”は放射線があたることで生ずる「光電効果」や「コンプトン散乱」による誤動作、半導体部分の劣化、プラスチックレンズの曇りといった問題を起こす可能性が高く、センサーとして使用できなくなる等といった欠点が考えられる。
【0027】
そこで、本実施例に係る放射線治療装置1では、直接または間接的に放射線が当たった場合でも、誤動作や劣化が生じにくいとされている“磁気センサー”を使用する。即ち、本実施例に係る放射線治療装置1では、リーフ位置を計測するために、“着磁した磁気テープ”とその磁気パターンを高感度に検出できる“磁気センサー”を使うものとする。
【0028】
図4は、本実施例に係る放射線治療装置1によるリーフ位置計測方法を説明するための側面図である。図4において、加速された電子は電子線41に示すようにベンディング・マグネット42により方向が曲げられ、ターゲット43に衝突し、放射線44を放射する。放射線44の照射野を制御するマルチリーフコリメータの円弧状のリーフ37は、下側面に歯が刻まれ、ギヤからなる動力伝達機構45を介してモータに接続される。
【0029】
このように、リーフ37の下部端面は駆動ギアと嵌合するように“歯”が切られており、しかも複数枚あるリーフ37は放射線が極力漏れないように、互いに数十μmの間隙を隔てて摺動する構造になっている。そこで、本実施例に係る放射線治療装置1では、各リーフ37の上端面に一定ピッチで着磁した磁気テープ46を取り付け、リーフ37の移動をガイドするフレーム47に磁気センサー48を取り付けるものとする。そして、リーフ37の移動に合わせて磁気センサー48が出力する電圧パルス数をカウントすることによって各リーフ37の位置を高精度で計測することができる。
【0030】
磁気センサー48としては、感度が高いGMRセンサー(=巨大磁気抵抗センサー)が望ましいが、すだれ形AMRセンサー(=異方向性磁気抵抗センサー)を使用するものであってもよい。図5−1にGMRセンサーの外観斜視図を示す。通常、このGMRセンサー51は、平坦なガラス基板上に作成され、磁気テープ52が発生する磁気パターンを検出するといった動作をする。図5−2に磁気テープ52の外観図、図5−3にGMRセンサー51の上面拡大図、図5−4にGMRセンサー51の底面拡大図を示す。
【0031】
図6にGMRセンサー61と磁気テープ62との典型的な組合せ使用例を示す。図6では、着磁された磁気テープ62が平らな対象物63に貼付され、その上をGMRセンサー61が摺動することでパルス信号を検出する。
【0032】
一方、本実施例に係る放射線治療装置1では、図7に示すように、リーフ37の上部側面は凹形であるため、磁気センサー48と磁気テープ46との間に距離が生じ、この距離が、図8の典型的な磁気センサー(GMRセンサー)の特性図に示す使用ギャップを超えてしまう。図8において、ギャップは磁気センサー48の表面(保護膜面)と磁気テープ46の表面(保護膜面)との距離を示し、使用ギャップは許容できる距離を示す。
【0033】
そこで、本実施例に係る放射線治療装置1では、図9に示すような軟磁性層81と非磁性層82が交互に積層された複合材料部品(以下「磁気ガイド」と呼ぶ)を磁気センサー48と磁気テープ46との間に配置する。
【0034】
図10は、磁気センサー48と磁気テープ46との間に配置された磁気ガイド90を示す図である。構造を分かりやすくするため、磁気ガイド90は誇張して描かれている。図10には、磁気ガイド90と磁気テープ46との接触面の一部を拡大した図も示す。磁気ガイド90は、磁気テープ46が発生する磁場パターンを磁気センサー48へ引き出し、磁気センサー48が磁場パターンを検出することを可能とする。この磁気ガイド90が、磁気テープ46が発生する磁場パターンを磁気センサー48へ引き出すことによって、磁気センサー48を磁気テープ46から離して配置することができる。
【0035】
図10に示すように、磁気ガイド90が磁気テープ46と接触する面はリーフ37の上部凹形側面に対応した凸面であり、磁気ガイド90が磁気センサー48と接触する面は平面である。また、磁気ガイド90は磁気センサー48に取り付けられる。
【0036】
次に、磁気テープ46が発生する磁場パターンの磁気ガイド90による磁気センサー48への引き出しについて説明する。磁気回路に関しても電気回路と類似の法則が成立することが知られている。即ち、マグネットの起磁力をF、全磁束をΦt、回路の磁気抵抗(=リラクタンス)をRとすれば、その相互関係は式(1)で表される。
Φt=F/R (1)
【0037】
この磁気低抗Rは、透磁率をμ、回路の磁路長をL、磁路の断面積をAとすると、式(2)のように表される。ただし、真空の透磁率はμ=4π×10-7〔H/m〕である。
R=L/(μ・A) (2)
【0038】
磁気テープ46と磁気センサー48の位置関係がどのような場合でも、磁気テープ46の着磁パターンが正しく磁気センサー48に伝達されるために、図10に示すように磁気テープ46の着磁ピッチをλ、磁気ガイド90の積層ピッチをλ′とおくとき、λとλ′は式(3)の関係を満たすことが必要とされる。ここで、軟磁性層81の厚みをt1、非磁性層82の厚みをt2としたとき、積層ピッチλ′はt1とt2の和に相当する。
λ/2=n・λ′ (3)
(但し、λ′=t1+t2,nは1以上の自然数)
【0039】
さらに非磁性層の透磁率をμ、軟磁性層の透磁率をμ′とし、式(4)の関係を満たすように材料を選択する。
μ≪μ′ (4)
【0040】
このとき、磁気テープ46から出る磁力線83は、透磁率が大きな層を通過しやすいため、図11に示すように磁気テープ46と接していない側の磁気ガイド端面まで到達し、リターンパスを経由して戻ってくることになる。磁気センサー48は数kHzでの周波数応答があれば十分なので、軟磁性層81を構成する軟磁性材料としては透磁率が数1000のものが使え、且つ非磁性層の比透磁率はほぼ1に近いので、例えば磁気テープ46の着磁ピッチが100μmの場合には、数mm程度までの距離まで着磁パターンを引き出すことが可能となる。
【0041】
なお、図10では、n=1(λ/2=λ′)の場合を示したが、n=2(λ/2=2λ′)の場合とn=3(λ/2=3λ′)の場合をそれぞれ図12と図13に示す。
【0042】
また、磁気ガイド90の製造方法の一例を図14に示す。磁気テープ46の着磁ピッチより十分小さな直径の軟磁性粒子粉末を耐放射線性樹脂、例えばPEEK、ポリイミドなど、と十分混合させ、一様な厚みの軟磁性シートに加工する。同じ耐放射線樹脂を同じ厚みの非磁性シートに加工する。
【0043】
そして、図14に示すように、これら軟磁性シート91と非磁性シート92を必要な枚数だけ交互に積層し、加熱しながら徐々にローラ93で圧延していく。積層ピッチが所望の距離λ′となった時点で圧延をストップし、磁気センサー48とリーフ37に適合する形状に切断・加工することで磁気ガイド90を作成することができる。
【0044】
上述してきたように、本実施例では、軟磁性粒子を含む平坦な軟磁性層81と軟磁性粒子を含まない平坦な非磁性層82を交互に積層し、積層露出断面を磁気センサー48への取り付け面およびリーフ37との接触面に適合する形状に切断・加工して磁気ガイド90を作成する。そして、磁気ガイド90を磁気テープ46と磁気センサー48との間に配置することで、リーフ37の上部側面が凹形であることに起因して磁気テープ46と磁気センサー48との間に生じるギャップによる磁場パターンの検出感度低下を防ぐことができる。また、磁気センサー48と磁気テープ46との直接的な接触をなくすことができ、磁気センサー48自体の磨耗や破損を防ぐことができる。
【0045】
なお、上記実施例では、軟磁性層81と非磁性層82を交互に積層して磁気ガイド90を作成する場合について説明したが、柱状の軟磁性領域を有する材料を用いて磁気ガイド90を作成することもできる。
【0046】
図15は、柱状の軟磁性領域96と非磁性体領域97から構成される材料を示す図である。また、図15には、軟磁性領域96の中心軸98の横断面を磁気テープに接触させた際に、磁気テープが発生する磁場パターンを反対側の中心軸横断面に引き出す磁力線83も示す。
【0047】
図15において、軟磁性領域の柱は、直線状で全てが概平行である。柱の断面形状はどんな形状であっても構わないが、その柱の中心軸間のピッチλ″と、磁気テープの着磁ピッチλとの関係は式(5)を満たすように作成される。ここで軟磁性領域の柱の外径をt1′、隣り合う軟磁性領域の柱間の距離(=非磁性領域の厚み)をt2′としたとき、積層ピッチλ″はt1′とt2′の和に相当する。
λ/2=n′・λ″ (5)
(但し、λ″=t1′+t2′,n′は1以上の自然数)
【0048】
図15に示した材料を用いた磁気ガイド90は例えば以下のようにして作成することができる。まず、耐放射線性樹脂のブロックを作成し、エキシマレーザー等を使って貫通する孔を所望の形状となるように規則的にあける。そして、加工した樹脂ブロックを、軟磁性材料を溶かし込んだ溶液に浸し、“フェライトめっき”として知られている技術等によって、低温(24°C〜100°C)の条件下でこの貫通孔に軟磁性材料をめっきする。こうして出来た樹脂ブロックを所望の仕上がり形状に切断・加工することで、磁気ガイド90を作成することができる。
【0049】
なお、本実施例では、放射線治療装置1においてマルチリーフコリメータの各リーフ37の位置を磁気センサー48および磁気ガイド90を用いて計測する場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、着磁媒体の着磁パターンを離れた位置から磁気センサー48および磁気ガイド90を用いて計測する場合にも同様に適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
以上のように、本発明は、位置計測などで着磁媒体の着磁パターンを離れた位置から磁気センサーを用いて検出する場合に有用であり、特に、放射線が使われる環境下での位置計測に適している。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本実施例に係る放射線治療装置の構成を示す概要図である。
【図2】原体絞り装置と放射線源との位置関係をあらわした側面から見た原理図である。
【図3】リーフを駆動するための動力伝達系の模式図である。
【図4】本実施例に係る放射線治療装置によるリーフ位置計測方法を説明するための側面図である。
【図5−1】GMRセンサーの外観斜視図である。
【図5−2】磁気テープの外観図である。
【図5−3】GMRセンサーの上面拡大図である。
【図5−4】GMRセンサーの底面拡大図である。
【図6】磁気シートと磁気テープとの典型的な組合せ使用例を示す図である。
【図7】磁気センサーと磁気テープとの間に生じるギャップを示す図である。
【図8】磁気センサーの特性図である。
【図9】軟磁性層と非磁性層が交互に積層された複合材料部品を示す図である。
【図10】磁気センサーと磁気テープとの間に配置された磁気ガイドを示す図である。
【図11】磁気ガイドを通過する磁力線を示す図である。
【図12】n=2の磁気ガイドを示す図である。
【図13】n=3の磁気ガイドを示す図である。
【図14】磁気ガイドの製造方法の一例を示す図である。
【図15】磁気ガイド製造に用いられる他の材料を示す図である。
【符号の説明】
【0052】
1 放射線治療装置
2 治療台
2a 天板
3 回転架台
3a 片腕
3b 片腕
4 回転支持台
4a 回動軸
5 照射ヘッド
6 原体絞り装置
31 モータ
32 ウォームギア
33 ウォームホイール
34 アイドラギア
35 シャフト
36 駆動ギア
37,101A,101B リーフ
41 電子線
42 ベンディング・マグネット
43 ターゲット
44 放射線
45 動力伝達機構
46,52,62 磁気テープ
47 フレーム
48 磁気センサー
51,61 GMRセンサー
63 対象物
81 軟磁性層
82 非磁性層
83 磁力線
90 磁気ガイド
91 軟磁性シート
92 非磁性シート
93 ローラ
96 柱状の軟磁性領域
97 非磁性体領域
98 柱状の軟磁性領域の中心軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軟磁性粒子を含む平坦な軟磁性層と軟磁性粒子を含まない平坦な非磁性層が交互に積層され、
着磁媒体に積層露出断面を接触させた際に、該着磁媒体が発生する磁場パターンを前記積層露出断面の反対側の積層露出断面に引き出すことを特徴とする磁気ガイド装置。
【請求項2】
軟磁性粒子を含み中心軸が全て一定の方向を向き且つ互いに接触しない2次元的に等間隔配置された複数本のまっすぐな柱状磁性領域と該柱状磁性領域間の隙間を満たす非磁性領域から構成され、
着磁媒体に前記柱状磁性領域の中心軸横断面を接触させた際に、該着磁媒体が発生する磁場パターンを前記中心軸横断面の反対側の中心軸横断面に引き出すことを特徴とする磁気ガイド装置。
【請求項3】
前記着磁媒体は、一定の着磁ピッチで着磁され、
磁性部分と非磁性部分の繰り返しピッチの自然数倍が、前記着磁媒体の着磁ピッチの半分に等しいことを特徴とする請求項1または2に記載の磁気ガイド装置。
【請求項4】
前記磁性部分は、最大直径が前記着磁ピッチより小さい軟磁性粒子を耐放射線性樹脂に均一に拡散させて固化した部材から構成され、
前記非磁性部分は、耐放射線性樹脂で構成されたことを特徴とする請求項3に記載の磁気ガイド装置。
【請求項5】
着磁媒体との接触面が凸形状であり接触面と反対側の面が平面であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の磁気ガイド装置。
【請求項6】
放射線の照射領域を調整するマルチリーフコリメータと、
前記マルチリーフコリメータを構成する円弧状の各リーフの上端部に貼り付けられる着磁媒体と、
前記着磁媒体が発生する磁場パターンを検出する磁気センサーと、
前記着磁媒体と磁気センサーの間に配置され該着磁媒体が発生する磁場パターンを磁気センサーが検出可能なように引き出す磁気ガイド装置を備え、
前記磁気ガイド装置は、
軟磁性粒子を含む平坦な軟磁性層と軟磁性粒子を含まない平坦な非磁性層が交互に積層され、
前記着磁媒体に積層露出断面を接触させた際に、該着磁媒体が発生する磁場パターンを前記積層露出断面の反対側の積層露出断面に引き出して前記磁気センサーが検出可能とすることを特徴とする放射線治療装置。
【請求項7】
放射線の照射領域を調整するマルチリーフコリメータと、
前記マルチリーフコリメータを構成する円弧状の各リーフの上端部に貼り付けられる着磁媒体と、
前記着磁媒体が発生する磁場パターンを検出する磁気センサーと、
前記着磁媒体と磁気センサーの間に配置され該着磁媒体が発生する磁場パターンを磁気センサーが検出可能なように引き出す磁気ガイド装置を備え、
前記磁気ガイド装置は、
軟磁性粒子を含み中心軸が全て一定の方向を向き且つ2次元的に等間隔配置された複数本のまっすぐな柱状磁性領域と該柱状磁性領域間の隙間を満たす非磁性領域から構成され、
前記着磁媒体に前記柱状磁性領域の中心軸横断面を接触させた際に、該着磁媒体が発生する磁場パターンを前記中心軸横断面の反対側の中心軸横断面に引き出して前記磁気センサーが検出可能とすることを特徴とする放射線治療装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5−1】
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【図5−2】
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【図5−3】
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【図5−4】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2009−261690(P2009−261690A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−115582(P2008−115582)
【出願日】平成20年4月25日(2008.4.25)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】