説明

磁気ギア

【課題】この発明は、少なくとも一方の回転子に、周方向に隣り合う磁極間の漏れ磁束の流れと反対向きに着磁配向された永久磁石を磁極間に配設した界磁突極型回転子を用い、磁極間を流れる漏れ界磁磁束を低減して、出力トルクに寄与する界磁磁束を多くし、小型、かつ高出力トルクの磁気ギアを得る。
【解決手段】第1回転子4と第2回転子12とが、周方向に所定のピッチで配列された複数の固定子磁極片30の内周側に、所定のエアギャップを介して、同軸に、かつ軸方向に並んで配列されている。第1回転子4は、界磁巻線9により界磁される界磁突極型回転子により構成され、極間磁石11が周方向に隣り合う突極頭部8間のそれぞれに配設されている。極間磁石11のそれぞれは、隣り合う突極頭部8のS極の突極頭部8からN極の突極頭部8に向う方向に着磁配向されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば風力などによるブレードが受ける回転トルクを増速して発電機に伝達する際に用いられる磁気ギアに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、起磁力を変調する固定子を高速回転子と低速回転子との間に設け、外部からの回転トルクを非接触で伝達して、回転速度を変えることができる磁気ギアが、多く提案されている。
【0003】
例えば、非特許文献1には、異なる極対数の永久磁石対を有し、同軸に配される一対の回転軸のそれぞれに固定されて、軸方向に並んで配列された高速回転子および低速回転子と、強磁性磁極片が周方向に均一に配列され、非磁性シェル内に挿入されてエアギャップを介して高速回転子と低速回転子を囲繞するように配設された固定子と、を有する、いわゆるタンデム型の従来の磁気ギアが提案されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Li Yong, Xing Jingwei, Peng Kerong and Lu Yongping; "Principle and Simulation Analysis of a Novel Structure Magnetic Gear", Electrical Machine and Systems, 2008. ICEMS 2008. International Conference on Publication (2008), p. 3845-3849
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この種の磁気ギアでは、一方の回転子に入力されるトルクが磁気ギアで発生できるトルクの上限を超えた場合、脱調をおこしてしまう。トルクを大きくするためには、大型化、あるいは両方の回転子の界磁起磁力を増加させる必要がある。従来の磁気ギアでは、両方の回転子を永久磁石により界磁しているため、トルクの上限を制御することができず、入力トルクの一時的な増加などに対しても脱調を防止するためには、発生トルクの上限に余裕を持った設計が必要となり、磁気ギアの大型化、あるいは永久磁石の起磁力の増加をまねき、コストの増加が必要となるという課題があった。
【0006】
このような状況を鑑み、永久磁石により界磁する回転子に代えて界磁巻線により界磁する界磁突極型回転子を用いると、一時的な入力トルクの増加には界磁電流の増加のみで対応が可能であり、安価に安定したギア特性を実現することができると考えられる。
【0007】
この種の界磁突極型回転子では、界磁電流が大きくなるほど発熱量が増大し、回転子温度が過度に上昇してしまうことから、磁極の周方向幅を大きくして磁極面積の大面積化を図り、界磁電流の大電流化を抑えて、出力トルクを高めることができる。しかしながら、磁極の周方向幅を大きくすることは、周方向に隣り合う磁極間の距離が短くなり、界磁磁束の一部が磁極間を流れ、出力トルクに寄与する界磁磁束がその分少なくなってしまうことにつながる。また、従来の磁気ギアでは、長さ方向を軸方向とする強磁性磁極片が、周方向に均一に配列され、非磁性シェル内に挿入されてエアギャップを介して高速回転子と低速回転子を囲繞するように配設されているので、界磁突極型回転子を用いた場合、構造上、界磁磁束が磁極間を流れやすくなり、より多くの界磁磁束が磁極間を流れてしまい、出力トルクが低下するという課題があった。
【0008】
この発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、少なくとも一方の回転子に、周方向に隣り合う磁極間の漏れ界磁磁束の流れと反対向きに着磁配向された永久磁石を磁極間に配設した界磁突極型回転子を用い、磁極間を流れる漏れ界磁磁束を低減して、出力トルクに寄与する界磁磁束を多くし、小型、かつ高出力トルクの磁気ギアを得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明に係る磁気ギアは、それぞれ、長さ方向を軸方向として、周方向に所定のピッチで配列された複数の固定子磁極片と、上記複数の固定子磁極片に対して第1エアギャップを介して、かつ該複数の固定子磁極片と同軸に配設され、多極の起磁力を持つ第1回転子と、上記複数の固定子磁極片に対して第2エアギャップを介して、かつ該複数の固定子磁極片と同軸に配設され、多極の起磁力を持つ第2回転子と、を備えている。上記第1回転子および上記第2回転子の少なくとも一方の回転子が、界磁巻線により界磁される界磁突極型回転子により構成され、上記界磁突極型回転子は、極間磁石が周方向に隣り合う磁極間のそれぞれに配設され、上記極間磁石のそれぞれは、隣り合う上記磁極のS極の磁極からN極の磁極に向う方向に着磁配向されている。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、少なくとも一方の回転子に、界磁巻線により界磁される界磁突極型回転子を用いているので、小型化が図られる。また、周方向に隣り合う磁極間に配設された極間磁石が、隣り合う磁極のS極の磁極からN極の磁極に向う方向に着磁配向されているので、隣り合う磁極間をN極の磁極からS極の磁極に流れる漏れ界磁磁束が低減され、出力トルクに寄与する界磁磁束が多くなり、出力トルクを高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】この発明の実施の形態1に係る磁気ギアの構成を模式的に示す断面図である。
【図2】この発明の実施の形態1に係る磁気ギアを示す分解斜視図である。
【図3】この発明の実施の形態1に係る磁気ギアの第1回転子を示す斜視図である。
【図4】この発明の実施の形態1に係る磁気ギアにおける固定子磁極片の支持構造を説明する斜視図である。
【図5】この発明の実施の形態1に係る磁気ギアにおける固定子磁極片の取り付け方法を説明する図である。
【図6】この発明の実施の形態1に係る磁気ギアの第1回転子における極間磁石の作用を説明する要部模式図である。
【図7】この発明の実施の形態1に係る磁気ギアにおける界磁磁束の流れを説明する要部模式図である。
【図8】比較例の同期機における界磁磁束の流れを説明する要部模式図である。
【図9】この発明の実施の形態2に係る磁気ギアの第1回転子の構成を説明する要部模式図である。
【図10】この発明の実施の形態3に係る磁気ギアを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の磁気ギアの好適な実施の形態につき図面を用いて説明する。
【0013】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1に係る磁気ギアの構成を模式的に示す断面図、図2はこの発明の実施の形態1に係る磁気ギアを示す分解斜視図、図3はこの発明の実施の形態1に係る磁気ギアの第1回転子を示す斜視図、図4はこの発明の実施の形態1に係る磁気ギアにおける固定子磁極片の支持構造を説明する斜視図、図5はこの発明の実施の形態1に係る磁気ギアにおける固定子磁極片の取り付け方法を説明する図、図6はこの発明の実施の形態1に係る磁気ギアの第1回転子における極間磁石の作用を説明する要部模式図、図7はこの発明の実施の形態1に係る磁気ギアにおける界磁磁束の流れを説明する要部模式図、図8は比較例の同期機における界磁磁束の流れを説明する要部模式図である。
【0014】
図1乃至図5において、磁気ギア1は、第1回転軸2に固着された第1回転子4と、第1回転軸2と同軸の第2回転軸3に固着され、第1回転子4と軸方向に並んで配設される第2回転子12と、軸方向に並設された第1回転子4と第2回転子12との外周側に所定のエアギャップを有するように配設された固定子15と、を備えたタンデム型の磁気ギアである。
【0015】
第1回転軸2は、円柱状の第1ボス部2aと、第1ボス部2aの一端に同軸に一体成形された円筒状の軸受収納部2bと、第1ボス部2aの他端に同軸に一体成形された円柱状の第1軸部2cと、を備えている。第2回転軸3は、円柱状の第2ボス部3aと、第2ボス部3aの他端に同軸に一体成形された円柱状の第2軸部3bと、を備えている。
【0016】
第1回転子4は、第1軸挿通穴5aが軸心位置に形成された円環状の基部6、それぞれ基部6の外周面から径方向外方に突設されて、周方向に等角ピッチで8つ配列された突極胴部7、および突極胴部7の先端に突極胴部7より幅広に形成され、磁極を構成する突極頭部8からなる第1ヨーク部5と、それぞれ導体線を突極胴部7に巻回して作製された集中巻コイル10からなる界磁巻線9と、周方向に隣り合う突極頭部8間のそれぞれに突極頭部8に接するように配設された極間磁石11と、を備えている。
【0017】
界磁巻線9の各集中巻コイル10には、図3中矢印で示されるように、突極頭部8の極性がN極とS極とが交互になるように通電され、4極対の磁極が第1ヨーク部5の外周面に周方向に配列される。極間磁石11は、図3中矢印で示されるように、隣り合う突極頭部8のS極の突極頭部8からN極の突極頭部8に向う方向に着磁配向されている。すなわち、極間磁石11は、界磁された突極頭部8の極性と同じ極性が向き合うように突極頭部8間に配設される。この第1回転子4は、第1軸挿通穴5aに圧入された第1ボス部2aに固着されて高速回転子として動作する。
【0018】
第2回転子12は、第2軸挿通穴13aが軸心位置に形成された円環状の第2ヨーク部13と、それぞれ第2ヨーク部13の外周面に固着されて等角ピッチで配列された90個の永久磁石14と、を備えている。周方向に配列された永久磁石14は、その外周面の極性がN極とS極とが交互になるように着磁配向され、45極対の永久磁石14が第2ヨーク部13の外周面に周方向に配列されている。この第2回転子12は、第2軸挿通穴13aに圧入された第2ボス部3aに固着されて低速回転子として動作する。
【0019】
固定子15は、それぞれアルミニウム、ステンレスなどの非磁性材料を用いて円板状に作製され、軸方向に所定距離離れて同軸に配設される一対の磁極片支持板16と、それぞれ電磁鋼板などの磁性薄板を積層して直方体に作製され、長さ方向を軸方向に揃えて一対の磁極片支持板16間に渡され、その両端側を一対の磁極片支持板16に保持されて、同心円上に等角ピッチで配列された49本の固定子磁極片30と、を備えている。
【0020】
磁極片支持板16の外周面には、固定子磁極片30の断面形状に略等しい長方形断面の溝形状を有する磁極片収納溝17が、それぞれ外径側に開口して、等角ピッチで周方向に49個形成されている。そして、ねじ穴18が、磁極片支持板16の各磁極片収納溝17の周方向両側に、径方向に離間して2個ずつ形成されている。架台19が、磁極片支持板16の各磁極片収納溝17の径方向内側から軸方向に延設されている。さらに、エアギャップ調整ボルト20が、軸方向を径方向として架台19に回転可能に装着されている。
【0021】
磁極片取付板21は、穴形状を固定子磁極片30の断面形状に略等しい長方形とする磁極片挿通穴22を有する長方形の枠状に作製され、細長穴23が、磁極片挿通穴22の短辺方向の両側に、長辺方向に離間して、穴の長軸方向を長辺方向として、2個ずつ形成されている。また、支持腕24が、磁極片取付板21の長方形枠状の一方の短辺側から磁極片挿通穴22の断面と直交する方向に延設されている。さらに、ねじ穴25が、穴方向を細長穴23の長軸方向として支持腕24に形成されている。そして、第2軸受28が磁極片支持板16の軸心位置に形成された軸受保持穴26に圧入保持されている。なお、磁極片収納溝17の底面の内接円の直径は、第1および第2回転子4,12の外径より僅かに大径となっている。
【0022】
そして、第1回転子4が、第1回転軸2の第1軸部2cを一方の磁極片支持板16の軸受保持穴26内に保持された第2軸受28内に圧入して、一方の磁極片支持板16に回転可能に支持されている。同様に、第2回転子12が、第2回転軸3の第2軸部3bを他方の磁極片支持板16の軸受保持穴26内に保持された第2軸受28内に圧入して、他方の磁極片支持板16に回転可能に支持されている。そして、一対の磁極片支持板16が、同軸に、かつ軸方向に離間して配設され、第1回転子4および第2回転子12が、同軸に、かつ軸方向に並んで、互いに回転可能に配設される。さらに、第2ボス部3aの一端側が軸受収納部2bに第1軸受27を介して回転可能に連結され、軸方向に並設される第1回転子4および第2回転子12の組立体の剛性を高めている。
【0023】
固定子磁極片30は、その両端側を磁極片収納溝17内に挿入されて一対の磁極片支持板16間に渡されている。そして、磁極片取付板21が磁極片挿通穴22内に固定子磁極片30を挿入して磁極片支持板16から延出する固定子磁極片30の両端部に装着されている。さらに、取付ボルト29を細長穴23に差し込んでねじ穴18に締着し、固定子磁極片30の両端が一対の磁極片支持板16に固定されている。また、架台19に回転可能に装着されているエアギャップ調整ボルト20が、磁極片取付板21の支持腕24に形成されたねじ穴25に螺合されている。そこで、取付ボルト29を締着するに先だって、エアギャップ調整ボルト20を回転させて、磁極片取付板21を細長穴23の長軸方向に移動させ、固定子磁極片30と第1回転子4および第2回転子12の間のエアギャップが調整される。
【0024】
このように構成された磁気ギア1は、例えば風力などによるブレード(図示せず)が受ける回転トルクが第2軸部3bに伝達され、第2回転子12が回転駆動される。そして、第2回転子12の永久磁石14が発生する多極の起磁力が、第2回転子12の外周側にエアギャップを介して周方向に配列された固定子磁極片30により第1回転子4の極成分を同じくする起磁力に変換される。これにより、固定子磁極片30の内周側にエアギャップを介して配設された第1回転子4が回転駆動される。
【0025】
ここで、この種の磁気ギアにおいては、第1回転子4の極対数をN、第2回転子12の極対数をNとしたとき、固定子磁極片30の数Nが式(1)を満たしていれば、第1回転子4の速度は第2回転子12の速度のN/N倍となる。
=N±N・・・式(1)
なお、式(1)において、+は第1回転子4と第2回転子12の回転方向が逆方向の場合であり、−は第1回転子4と第2回転子12の回転方向が同方向の場合である。
【0026】
この磁気ギア1では、第1回転子4が4極対であり、第2回転子12が45極対であり、固定子磁極片30の数が49個(=45+4)であるので、式(1)を満たし、第1回転子4は11.25(=45/4)倍に増速されて、第2回転子12と逆の回転方向に回転駆動される。
【0027】
ここで、磁気ギア1と突極形の同期機100(比較例)との構造上の差異について図7および図8を参照しつつ説明する。
【0028】
同期機100は、図8に示されるように、固定子101と、界磁巻線106がヨーク部107の突極胴部108に巻回されてなり、固定子101の内周側に配設される界磁突極型回転子105と、を備えている。固定子101は、ティース部103がそれぞれ円筒状のコアバック部102の内周面から径方向内方に延設されて周方向に等角ピッチに配列されて構成されている。このように構成された同期機100では、突極頭部109と固定子101との間のエアギャップが周方向に隣り合う突極頭部109間の隙間より小さく、かつ周方向の磁路を構成するコアバック部102が存在している。
【0029】
そこで、同期機100では、界磁磁束が、図8中実線の矢印で示されるように、N極に界磁された突極頭部109からエアギャップを介してティース部103に入り、ティース部103内を径方向外方に流れてコアバック部102に入り、コアバック部102内を周方向に流れ、S極に界磁された突極頭部109に対向するティース部103内を径方向内方に流れ、エアギャップを介してS極に界磁された突極頭部109に戻るように流れ、出力トルクに寄与する。そして、図8中点線の矢印で示されるN極に界磁された突極頭部109からS極に界磁された突極頭部109に直接流れる界磁磁束は、極めて少ない。すなわち、界磁アンペアターンに対して磁路の磁気抵抗が小さく、大きな磁束を発生するため、突極頭部109および突極胴部108などで磁気飽和が発生しやすく、出力トルクに寄与する界磁磁束を少なくする。
【0030】
磁気ギア1では、比較例の同期機100におけるコアバック部102に相当する構成がないので、図7中点線の矢印で示される界磁磁束の流れはない。そこで、界磁磁束の一部が、図7中実線の矢印で示されるように、N極に界磁された突極頭部8からS極に界磁された突極頭部8に流れる。すなわち、界磁アンペアターンに対して磁路の磁気抵抗が大きく、突極胴部7での磁気飽和は小さくなるが、漏れ界磁磁束が周方向に隣り合う突極頭部8間に流れる割合が大きく、出力トルクに寄与する界磁磁束が少なくなる。
【0031】
このように、磁気ギア1と突極形の同期機100は、類似の界磁突極型回転子を用いているが、界磁磁束が周方向に隣り合う突極頭部8間を流れて、高出力トルク化が図れなくなるという課題は、磁気ギア1固有の課題である。
【0032】
つぎに、突極頭部8間に配設された極間磁石11の作用について図6を参照しつつ説明する。
極間磁石11は、N極がN極に界磁された突極頭部8に接し、S極がS極に界磁された突極頭部8に接するように突極頭部8間に配設されている。そこで、極間磁石11は、S極に界磁された突極頭部8からN極に界磁された突極頭部8に向う方向、すなわち漏れ界磁磁束Aと逆向きの磁束Bを発生し、突極頭部8間を流れる漏れ界磁磁束Aを低減させるように作用する。
【0033】
この実施の形態1によれば、第1回転子4が界磁巻線9により界磁される界磁突極型回転子であり、極間磁石11がN極をN極に界磁された突極頭部8に対向させ、S極をS極に界磁された突極頭部8に対向させるように突極頭部8間に配設されているので、突極頭部8の周方向幅を広くしても、突極頭部8間を流れる漏れ界磁磁束を低減できる。そこで、界磁電流を過度に大きくすることなく、高出力トルク化に寄与する界磁磁束を多くでき、小型、かつ高出力トルクの磁気ギア1を実現できる。
【0034】
第1回転子4および第2回転子12が、周方向に所定のピッチで配列された固定子磁極片30の内周側に同軸に、かつ軸方向に並設されているので、周方向に所定のピッチで配列される固定子磁極片30の固定が容易となる。
【0035】
磁極片支持板16に対する磁極片取付板21の径方向位置が調整可能になっているので、各固定子磁極片30と第1回転子4および第2回転子12との間のエアギャップを高精度に調整できる。そこで、エアギャップの周方向における均一性を確保できるので、固定子磁極片30と第1回転子4および第2回転子12との間に発生する磁気吸引力が周方向に関して均一となる。これにより、偏荷重が第1回転子4および第2回転子12に作用することがなく、磁気ギア1の機械的信頼性が高められる。
【0036】
なお、上記実施の形態1では、第1回転軸を出力軸とし、第2回転軸を入力軸として説明しているが、第1回転軸を入力軸とし、第2回転軸を出力軸としてもよい。
また、上記実施の形態1では、第1回転子と第2回転子とが等しいエアギャップを介して周方向に所定のピッチで配列された磁極片の内周側に配設されているものとしているが、第1回転子と第2回転子とは異なるエアギャップを介して周方向に所定のピッチで配列された磁極片の内周側に配設されてもよい。
【0037】
実施の形態2.
図9はこの発明の実施の形態2に係る磁気ギアの第1回転子の構成を説明する要部模式図である。
図9において、突起31が、突極頭部8の先端側部から周方向の両側に突設され、突極頭部8間に配設されている極間磁石11の外周側に延在している。
なお、他の構成は、上記実施の形態1と同様に構成されている。
【0038】
この第1回転子4Aでは、突起31が極間磁石11の外周側に延在しているので、磁気ギアの動作時に極間磁石11に作用する遠心力は極間磁石11を介して突起31で受けられ、極間磁石11の飛散が阻止される。
【0039】
実施の形態3.
図10はこの発明の実施の形態3に係る磁気ギアを示す断面図である。
【0040】
図10において、磁気ギア40は、長さ方向を軸方向とする固定子磁極片30を周方向に所定のピッチで14個配列して構成された固定子15と、固定子15の固定子磁極片30の内周側に所定のエアギャップを介して固定子15と同軸に配設される第1回転子41と、固定子15の固定子磁極片30の外周側に所定のエアギャップを介して固定子15と同軸に配設される第2回転子50と、を備えたラジアル型の磁気ギアである。ここで、固定子15の固定子磁極片30と第1回転子41との間のエアギャップと、固定子15の固定子磁極片30と第2回転子50との間のエアギャップとは、必ずしも一致させる必要はない。
【0041】
第1回転子41は、例えば、電磁鋼板などの磁性薄板を積層して作製され、第1軸挿通穴42aが軸心位置に形成された円環状の基部43、それぞれ基部43の外周面から径方向外方に突設されて、周方向に等角ピッチで4つ配列された突極胴部44、および突極胴部44の先端に形成された突極胴部44より幅広の突極頭部45からなる第1ヨーク部42と、それぞれ導体線を突極胴部44に巻回して作製された集中巻コイル47からなる界磁巻線46と、周方向に隣り合う突極頭部45間のそれぞれに突極頭部45に接するように配設された極間磁石48と、を備えている。界磁巻線46の各集中巻コイル47には、突極頭部45の極性がN極とS極とが交互になるように通電され、2極対の磁極が第1ヨーク部42の外周面に周方向に配列される。極間磁石48は、隣り合う突極頭部45のS極の突極頭部45からN極の突極頭部45に向う方向に着磁配向されている。すなわち、極間磁石48は、界磁された突極頭部45の極性と同じ極性が向き合うように突極頭部45間に配設される。この第1回転子41は、第1軸挿通穴42aに圧入された第1回転軸49に固着されて高速回転子として動作する。
【0042】
第2回転子50は、例えば、電磁鋼板などの磁性薄板を積層して作製され、円環状の第2ヨーク部51と、それぞれ第2ヨーク部51の内周面に固着されて等角ピッチで配列された24個の永久磁石52と、を備えている。周方向に配列された永久磁石52は、その内周面の極性がN極とS極とが交互になるように着磁配向され、12極対の永久磁石52が第2ヨーク部51の内周面に周方向に配列されている。この第2回転子50は、低速回転子として動作する。
【0043】
この磁気ギア40では、第1回転子41が2極対であり、第2回転子50が12極対であり、固定子磁極片30の数が14個(=12+2)であるので、式(1)を満たし、第1回転子41は6(=12/2)倍に増速されて、第2回転子50と逆方向に回転駆動される。
【0044】
この実施の形態3においても、極間磁石48がN極をN極に界磁された突極頭部45に対向させ、S極をS極に界磁された突極頭部45に対向させるように突極頭部45間に配設されているので、上記実施の形態1と同様に、小型、かつ高出力トルクの磁気ギア40を実現できる。
【0045】
なお、上記各実施の形態では、高速回転子に相当する第1回転子を界磁巻線により界磁する界磁突極型回転子で構成するものとしているが、低速回転子に相当する第2回転子を界磁巻線により界磁する界磁突極型回転子で構成してもよく、高速および低速回転子に相当する第1および第2回転子を界磁巻線により界磁する界磁突極型回転子で構成してもよい。
【符号の説明】
【0046】
1,40 磁気ギア、4、4A,41 第1回転子、8,45 突極頭部(磁極)、9,46 界磁巻線、11,48 極間磁石、12,50 第2回転子、30 固定子磁極片、31 突起。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ、長さ方向を軸方向として、周方向に所定のピッチで配列された複数の固定子磁極片と、
上記複数の固定子磁極片に対して第1エアギャップを介して、かつ該複数の固定子磁極片と同軸に配設され、多極の起磁力を持つ第1回転子と、
上記複数の固定子磁極片に対して第2エアギャップを介して、かつ該複数の固定子磁極片と同軸に配設され、多極の起磁力を持つ第2回転子と、を備え、
上記第1回転子および上記第2回転子の少なくとも一方の回転子が、界磁巻線により界磁される界磁突極型回転子により構成され、
上記界磁突極型回転子は、極間磁石が周方向に隣り合う磁極間のそれぞれに配設され、上記極間磁石のそれぞれは、隣り合う上記磁極のS極の磁極からN極の磁極に向う方向に着磁配向されていることを特徴とする磁気ギア。
【請求項2】
上記第1回転子が、上記複数の固定子磁極片の外周側に上記第1エアギャップを介して該複数の固定子磁極片と同軸に配設され、
上記第2回転子が、上記複数の固定子磁極片の内周側に上記第2エアギャップを介して該複数の固定子磁極片と同軸に配設されていることを特徴とする請求項1記載の磁気ギア。
【請求項3】
上記第1回転子が、上記複数の固定子磁極片の内周側に上記第1エアギャップを介して該複数の固定子磁極片と同軸に配設され、
上記第2回転子が、上記複数の固定子磁極片の内周側に上記第2エアギャップを介して、上記第1回転子と軸方向に並んで、該複数の固定子磁極片と同軸に配設されていることを特徴とする請求項1記載の磁気ギア。
【請求項4】
突起が、上記磁極のそれぞれから上記極間磁石の外周側に突設されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の磁気ギア。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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