説明

磁気シールド補助装置及び磁気シールドシステム

【課題】全方向の磁界に対する磁気シールド効果を有する磁気シールドシステムを、磁気シールド装置の施工後であっても簡便に設置することを可能とする。
【解決手段】一部に開口部3を有する磁気シールド装置2の開口部3近傍に設置される磁気シールド補助装置4であって、環状の磁性材料で形成された第1の磁気シールド補助部材4aと、第1の磁気シールド補助部材4aに隣接して設けられる環状の導電性材料で形成された第2の磁気シールド補助部材4bとを備える。第1の磁気シールド補助部材4aは、磁性材料で形成されているから、水平方向の磁界に対して磁気シールド効果を有する。第2の磁気シールド補助部材4bは、導電性材料で形成されているから、垂直方向の磁界に対して磁気シールド効果を有する。したがって、全方向の磁界に対して高い磁気シールド効果を有する磁気シールドシステムを実現することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気シールド装置の開口部や、磁気シールド効果の弱い位置に設置される磁気シールド補助装置及びこれを用いる磁気シールドシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、外来磁界の影響を受けることにより、正確な測定又は正常な動作等が困難となる装置が多く登場している。この種の装置としては、脳磁計等に代表される生体磁気計測装置があり、高機能電子デバイスの製造等に用いられる電子顕微鏡、マスク検査装置、電子ビームマスク描画装置等がある。これらの装置は、微弱磁界検出や微細加工制御のために外来磁界の影響を受けやすく、高機能デジタル機器等による高強度の高周波電磁界放射の影響に限らず、高圧電線や鉄道架線の電流による低周波磁界や、地磁気の影響が問題となる。
【0003】
これらの装置を利用するときは、外来磁界の影響を排除するために、磁気シールドルームや磁気シールドチャンバといった磁気シールド装置が用いられる。磁気シールド装置は、磁性材料を用いた内壁で装置内面が覆われた装置であり、磁性材料で密閉されることにより、外来磁界の侵入を防止する。
【0004】
たとえば、生体磁気計測装置を用いるときは、診察室又は検査室を磁気シールドルームとする必要がある。しかしながら、完全に密閉された空間に患者や医療関係者が入室するのは心理的抵抗感、圧迫感があるので、一面を開放して風通しをよくして、外光を磁気シールドルーム内部に取り入れたいという要望がある。
【0005】
また、電子顕微鏡等を利用する場合には、磁気シールド装置内部に置かれた電子顕微鏡等の操作や、試料の状態を観察するための観察窓が必要である。その他、磁気シールドルーム内への出入りのためのドアも必要である。
【0006】
特開2002−164686号公報(以下、「特許文献1」という。)には、磁気シールドルームの外部から内部へ採光し、風通しをよくする目的で、短冊形の磁性体片をすだれ状に配列して磁気シールドルームの壁面を構成する技術が開示されている。特開平7−122886号公報(以下、「特許文献2」という。)には、出入口等の開口部に筒状の超電導材料を接続して、開口部における磁気シールド効果の低下を防止する技術が開示されている。また、特開2007−281302号公報(以下、「特許文献3」という。)には、ドアや窓の周縁において磁気シールド効果を向上させるために、壁面を構成する磁性材料の磁気シールドの方向(磁化方向)と異なる方向に磁気シールド効果を有する磁性材料を用いる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−164686号公報
【特許文献2】特開平7−122886号公報
【特許文献3】特開2007−281302号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
磁性体は、より透磁率の高い磁性体に磁束を引き寄せようとする性質を有する。したがって、磁界中に磁性体を置くと、その磁性体内部に磁束が集中する。この性質を利用すると、磁界の方向に沿って磁性体を置くことにより、その磁性体の周囲空間の磁束を減少させることができる。
【0009】
特許文献1においては、磁界の向きに平行に短冊形の磁性体片を並べて、これらをすだれ状に配列した壁面で構成される磁気シールドルームが記載されており、磁気シールド効果を維持しつつ、磁気シールドルーム内への風通しを得て、外部採光を確保することができるとしている。これは磁性体片の間隙に磁気シールド効果が及ぶことを利用したものである。
【0010】
しかしながら、磁気シールド効果は、磁界の方向に依存性があり、異なる方向の磁界に対しては、磁気シールド効果が低下する。このため、短冊形の磁性体片を直交させて配置したり、磁性体片の向きを数種類変えた壁面部材を配置したり、磁化方向の異なる部材を用いる必要があるので壁面の構造が複雑になる。
【0011】
また、磁気シールドルームの風通し、外部の採光を得る程度の隙間を実現できるとしても、被験者等の入室時の圧迫感等を改善できる程度とは言えない場合もある。
【0012】
一方で、人が出入りできる程度の大きさの開口部を設けると、磁気シールド効果がなくなってしまうという問題がある。
【0013】
特許文献2において、磁気シールドルームの開口部に接続される筒状体は、開口部の大きさや形状によっては、強度面等の観点から実現が困難な場合がある。そして、磁気シールドルームの施工時に筒状体を磁気シールドルームの開口部に取り付けなければならず、取り扱いが不便である。また、筒状体を超電導材料で構成しなければならないことから冷却設備等を考慮すると構造が複雑になり設備も大型化するという問題がある。
【0014】
特許文献3は、磁気シールドルームのドア部及び窓部の周辺の磁性材料を、漏洩磁界の方向に合わせて磁化方向を揃えた方向性電磁鋼板とする技術が開示されているが、漏洩磁界の方向に合わせて個々に磁気シールド効果を調整するのは困難である。また、ドアや窓を閉めてしまえば、磁気シールドルームの内部は外部から遮断されてしまい、被験者等の圧迫感等の解消には寄与しない。
【0015】
上述した開口部や隙間の有無とは別に、磁気シールドルーム施工時に生じた磁性体パネルの隙間や施工後の磁性体パネルの劣化等により磁気シールドの弱い箇所が生じる場合がある。このような場合に、壁面の修理を行うのは大規模な工事となる場合もあり容易ではない。
【0016】
そこで、本発明は、磁界の方向によらず高い磁気シールド効果を有し、簡便に設置することができる磁気シールド補助装置及び磁気シールドシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決するため、一部に開口部を有する磁気シールド装置の開口部の近傍に設置される環状の磁気シールド補助装置は、環状の磁性材料で形成された第1の磁気シールド補助部材と、第1の磁気シールド補助部材に隣接して設けられる環状の導電性材料で形成された第2の磁気シールド補助部材とを備える。
【0018】
磁気シールドシステムは、一部に開口部を有する磁気シールド装置と、上述した、開口部の近傍に設置される環状の磁気シールド補助装置とを備える。
【0019】
また、環状の磁気シールド補助装置は、磁気シールド装置の磁気シールド効果の弱い位置の近傍に設置され、環状の磁性材料で形成された第1の磁気シールド補助部材と、第1の磁気シールド補助部材に隣接して設けられる環状の導電性材料で形成された第2の磁気シールド補助部材とを備える。
【0020】
磁気シールドシステムは、磁気シールド装置と、上述した、磁気シールド装置の磁気シールド効果の弱い位置の近傍に設置される環状の磁気シールド補助装置とを備える。
【0021】
さらに、上述した磁気シールド補助装置は、第1の磁気シールド補助部材がパーマロイで形成され、第2の磁気シールド補助部材が銅で形成される。
【0022】
そして、上述した磁気シールド補助装置は、第1の磁気シールド補助部材と第2の磁気シールド補助部材とが互いに重ね合わされる。
【0023】
また、磁気シールドシステムにおいて、磁気シールド補助装置は、1又は複数であり、磁気シールド装置の開口部の外側に、開口部の面と略平行に設置される。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、第1の磁気シールド補助部材は、磁性材料で形成されているから、第1の磁気シールド補助部材の面に水平方向の磁界に対して磁気シールド効果を有する。第2の磁気シールド補助部材は、導電性材料で形成されているから、第2の磁気シールド補助部材の面に垂直方向の磁界変動に対して磁気シールド効果を有する。したがって、本発明のシールド補助装置を磁気シールド装置の開口部の近傍に設置することにより、全方向の磁界に対して高い磁気シールド効果を有する磁気シールドシステムを実現することができる。
【0025】
本発明の磁気シールド補助装置は、磁気シールド装置とは分離されており、磁気シールド装置とは別に設置される。このため、磁気シールド装置の施工当初に、複雑な構造をしたドアを設けることなく、磁気シールド装置を開口したまま高い磁気シールド効果を有する磁気シールドシステムを実現することができる。
【0026】
さらに、本発明の磁気シールド補助装置が、磁気シールド装置から分離されていることにより、磁気シールド装置の開口部の有無にかかわらず、磁気シールド装置の磁気シールドが弱い部分に対して、磁気シールド補助装置を簡便に設置することができる。このため、高い磁気シールド性能を有する磁気シールドシステムを容易に実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明が適用された磁気シールドシステムの構成を示す斜視図である。
【図2】本発明が適用された第1の磁気シールド補助部材の動作原理を説明する斜視図である。
【図3】本発明が適用された第2の磁気シールド補助部材の動作原理を説明する斜視図である。
【図4】本発明が適用された磁気シールド補助装置の磁気シールド可能な領域を説明する図であり、(A)は、正面図、(B)は断面図である。
【図5】本発明が適用された磁気シールドシステムにX軸方向の外部磁界を印加した場合におけるシールド係数の測定結果を示す図である。
【図6】本発明が適用された磁気シールドシステムにY軸方向の外部磁界を印加した場合におけるシールド係数の測定結果を示す図である。
【図7】本発明が適用された磁気シールドシステムにZ軸方向の外部磁界を印加した場合におけるシールド係数の測定結果を示す図である。
【図8】本発明が適用された磁気シールド補助装置を2つ用いた場合の磁気シールドシステムの構成を示す斜視図である。
【図9】壁面の一部に窓状の開口部を有する磁気シールド装置の場合において、本発明が適用された磁気シールドシステムの構成を示す斜視図である。
【図10】本発明が適用された、筒状の磁気シールド補助装置を用いた場合の磁気シールドシステムの構成を示す斜視図である。
【図11】磁気シールドが弱い箇所がある磁気シールド装置の場合において、本発明が適用された磁気シールドシステムの構成を示す斜視図である。
【図12】本発明が適用された磁気シールド補助装置を2つ用いた場合の磁気シールドシステムの他の構成を示す斜視図である。
【図13】本発明が適用された磁気シールド補助装置を2つ用いた場合の磁気シールドシステムの他の構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明が適用された磁気シールドシステムについて、図面を参照して以下の順で説明する。
1.磁気シールドシステム1の構成
(1)磁気シールド装置2
(2)磁気シールド補助装置4
2.磁気シールド補助装置4の動作原理
3.磁気シールド補助装置4の製造方法
4.磁気シールド補助装置4及び磁気シールドシステム1の使用方法
5.磁気シールド補助装置の変形例
(1)変形例1、磁気シールドが弱い箇所を有する磁気シールド装置の場合
(2)変形例2、窓状の開口部を有する磁気シールド装置の場合
(3)変形例3、筒状の磁気シールド補助装置の場合
(4)その他
【0029】
1.磁気シールドシステム1の構成
図1に示すように、本発明が適用された磁気シールドシステム1は、一部に開口部3を有する磁気シールド装置2と、開口部3と略同じ大きさの磁気シールド補助装置4とを備えている。磁気シールド補助装置4は、磁気シールド装置2の開口部3の近傍に設置される。この磁気シールド装置2の内部には、外来磁界の影響を受けやすい脳磁計等に代表される生体磁気計測装置のような微弱磁界測定装置が設置される。その他、超微細加工技術を用いた高機能電子デバイスの製造、検査装置等に用いられる電子顕微鏡、マスク検査装置、又は電子ビームマスク描画装置等も磁気シールドルーム内部に設置される。ここでは、磁気シールド装置2の内部に生体磁気計測装置が設置される場合を例に説明する。
【0030】
(1)磁気シールド装置2
磁気シールド装置2は、たとえば磁性材料からなるパネルを組み合わせた壁面、床面及び天井からなり、全体が略直方体をなしており、内部に生体磁気計測装置を設置する空間部が設けられている。そして、1つの壁面には、生体磁気計測装置を設置した空間部に出入りするための開口部3が形成されている。開口部3は、たとえば被験者等が出入りできるようにするため、1つの壁面すべてを開口するように形成されている。
【0031】
なお、開口部3は、1つの壁面ではなく、壁面の一部を開口し、窓状又はドア状としてドア等によって開閉できるようにしてもよい。また、開口部3は、磁気シールド装置2の用途に応じて、複数の壁面や床面、天井に設けてもよく、また、1つの壁面に複数個設けるようにしてもよい。また、磁気シールド装置2は、直方体に限定されるものではなく、その形状は、磁気シールドシステム1が設置される場所や、磁気シールド装置2の内部に設置される装置の種類又は用途等に応じて変わる。
【0032】
(2)磁気シールド補助装置4
図1に示すように、磁気シールド装置2の開口部3の近傍に設置される磁気シールド補助装置4は、磁気シールド装置2の開口部3の大きさと略同じ大きさに形成されている。磁気シールド補助装置4は、全体が環状をなしており、開口部5を有している。磁気シールド補助装置4は、磁気シールド効果を高めるためには連続的で切れ目等ない連続した環状であることが好ましい。図1においては、磁気シールド補助装置4は、開口部3の形状に合わせて、略正方形に形成されている。
【0033】
なお、磁気シールド補助装置4の形状は、横長若しくは縦長の長方形であってもよく、円形であってもよく、又は多角形その他の形状であってもよい。また、平板状に限らず、図10に示すように、筒状であってもよく、任意の断面を有する棒状であってもよい。
【0034】
また、磁気シールド補助装置4は、開口部3よりも小さくてもよいが、より効果的に磁気シールドするために、開口部3の大きさよりも大きい方が好ましい。
【0035】
このような磁気シールド補助装置4は、磁性材料で形成された第1の磁気シールド補助部材4aと、導電性材料で形成された第2の磁気シールド補助部材4bとを備えている。第1の磁気シールド補助部材4aは、通常は、透磁率及び加工性等の観点からパーマロイで形成されるが、センダスト、純鉄、又はアモルファス等であってもよい。第2の磁気シールド補助部材4bは、通常は、導電率及び加工性等の観点から銅で形成されるが、アルミ、銅、アルミ若しくは銅の合金、又は超電導材料等であってもよい。第1の磁気シールド補助部材4aと第2の磁気シールド補助部材4bとは、図1に示すように、通常は、同一の形状及び大きさとするが、異なる形状及び/又は大きさにしてもよい。
【0036】
磁気シールド補助装置4は、同一形状の第1の磁気シールド補助部材4aと第2の磁気シールド補助部材4bとが一体として構成される。なお、磁気シールド補助装置4は、第1の磁気シールド補助部材4aと第2の磁気シールド補助部材4bとを別部材としたものを隣接させて使用してもよい。この場合には、第1の磁気シールド補助部材4aと第2の磁気シールド補助部材4bとは密着させてもよく、互いに離して設置してもよい。
【0037】
磁気シールド補助装置4は、磁気シールド装置2の開口部3の端面から所定の距離だけ離して設置される。その距離は、磁気シールド装置2内部の磁界環境を測定しながら、磁界の大きさが最低になる位置に設置する。磁気シールド補助装置4は、設置する位置を決定した後、磁気シールド補助装置4の下部に有する支持脚(図示せず)により固定される。
【0038】
2.磁気シールド補助装置の動作原理
図2〜図4は、本発明の磁気シールド補助装置4による磁気シールドの原理を説明した図である。
【0039】
図2に示すように、磁気シールド補助装置4の面に平行な方向であるX軸方向の平行磁界中に第1の磁気シールド補助部材4aを置く。磁束は、より高い透磁率を有する部分を通る性質を有するので、第1の磁気シールド補助部材4aを形成するパーマロイの作用により、第1の磁気シールド補助部材4aの形状に沿って流れる。これにより、第1の磁気シールド補助部材4aの開口部5内における磁束はほとんど消滅する。図2において、X軸方向の磁界について説明したが、同一面内のZ軸方向の磁界についても同様に磁気シールド効果を有する。したがって、第1の磁気シールド補助部材4aは、開口部5のX−Z平面内において磁気シールド効果を有する。
【0040】
図3に示すように、第2の磁気シールド補助部材4bの面に垂直な方向であるY軸方向の磁界中に第2の磁気シールド補助部材4bを置く。第2の磁気シールド補助部材4bは、銅で形成されている。開口部5を貫く垂直磁界があるときは、レンツの法則にしたがって磁束の変化を打ち消す方向の磁束を発生させるように電圧が発生する。その電圧による電流が第2の磁気シールド補助部材4b内を流れて、開口部5の磁束を減少させる。したがって、第2の磁気シールド補助部材4bは、開口部5の面に垂直な方向の磁界に対する磁気シールド効果を有する。
【0041】
第1の磁気シールド補助部材4aと第2の磁気シールド補助部材4bを重ね合わせて磁気シールド補助装置4を構成すると、第1の磁気シールド補助部材4aと第2の磁気シールド補助部材4bのそれぞれの作用により、磁気シールド補助装置4は、X軸、Y軸、Z軸方向すべてに対して磁気シールド効果を有する。図4に示すように、磁気シールド補助装置4の開口部5内において、破線の領域内で磁気シールド効果を得ることができる。
【0042】
図5〜図7は、図1の磁気シールドシステム1の縮小模型を用いた、磁気シールド効果の測定例を示している。
【0043】
磁気シールド装置2は、パーマロイと銅の複合材料からなる壁面で構成されており、一面が開口している。大きさは、開口部3が400mm×460mm(X×Z)であり、奥行きが520mm(Y)である。
【0044】
磁気シールド補助装置4は、パーマロイと銅の複合材料からなるものと銅材からなるものを用意して、それぞれの場合について測定した。磁気シールド補助装置4の大きさは、いずれも、内径が610mm×610mmで、外径が740mm×740mmの正方形である。
【0045】
図1において、X軸とZ軸とからなる平面は、磁気シールド装置2の開口部3の面と同一平面であり、Y軸は開口部3の面に垂直である。Y軸方向において、開口部3の開口端を0とし、開口部3から離れる方向を正とした。磁気シールド補助装置4の面と磁気シールド装置2の開口部3の面とを平行に配置して測定した。開口部3の開口端から+50mmの位置に配置した場合と、開口端の位置(0mm)に配置した場合と、開口端から−50mmの位置に配置した場合について、磁気シールド装置2内部の磁界を測定し、測定周波数に対するシールド係数をプロットした。ここで、シールド係数=外部印加磁界/内部測定磁界である。外部印加磁界(磁束)を、5μTp-p の微弱磁界(磁束)とし、X、Y、Zの各方向に印加した場合のそれぞれについて測定した。外部磁界の印加方向として、X軸方向の場合の結果を図5、Y軸方向の場合の結果を図6、Z軸方向の場合の結果を図7に示す。
【0046】
図5〜図7における磁気シールド補助装置4の構成と配置は以下の通りである。なお、実験7は、磁気シールド補助装置4を用いない場合の測定結果であり、この値との差が、磁気シールド補助装置4による磁気シールドの効果である。
・実験1:パーマロイと銅の複合材料からなる磁気シールド補助装置4を+50mmの位置に置いた場合。
・実験2:パーマロイと銅の複合材料からなる磁気シールド補助装置4を0mmの位置に置いた場合。
・実験3:パーマロイと銅の複合材料からなる磁気シールド補助装置4を−50mmの位置に置いた場合。
・実験4:銅材からなる磁気シールド補助装置4を+50mmの位置に置いた場合。
・実験5:銅材からなる磁気シールド補助装置4を+0mmの位置に置いた場合。
・実験6:銅材からなる磁気シールド補助装置4を−50mmの位置に置いた場合。
【0047】
図5及び図7より、X軸方向及びZ軸方向について、パーマロイと銅の複合材料からなる磁気シールド補助装置4の磁気シールド効果がより高く、特に+50mmの位置の場合に顕著な効果が認められ、図6より、Y軸方向については、銅材からなる磁気シールド補助装置4の磁気シールド効果が高いことが認められる。
【0048】
3.磁気シールド補助装置4の製造方法
磁気シールド補助装置4は、環状の磁性材料で形成された第1の磁気シールド補助部材4aと、上記第1の磁気シールド補助部材4aに隣接して設けられる環状の導電性材料で形成された第2の磁気シールド補助部材4bとを備えている。第1の磁気シールド補助部材4aは、パーマロイで形成され、第2の磁気シールド補助部材4bは、銅で形成されている。それぞれ、打ち抜き加工やプレス加工のような板金加工又は金属加工技術により、略正方形に形成し、必要に応じて熱処理等を加えて、直接互いにぴったりと貼り合わせて磁気シールド補助装置4を形成する。貼り合わせた後に熱処理を行ってもよい。
【0049】
なお、第1の磁気シールド補助部材4aの形成には、パーマロイのほか、センダスト、純鉄、又はアモルファス等の磁性材料を用いることができ、第2の磁気シールド補助部材4bの形成には、銅以外に、アルミ、アルミ若しくは銅の合金、又は超電導材料等の導電性材料を用いることができる。
【0050】
また、基材を介してその両面に第1の磁気シールド補助部材4aと第2の磁気シールド補助部材とをそれぞれ貼り付けて、磁気シールド補助装置4を構成することもできる。周知の薄膜形成技術を用いて形成したアモルファス磁性薄膜を基材上に積層し、その上に銅又はアルミの薄膜を積層してもよく、さらにこれらを多層に積層してもよい。銅又はアルミを基材として加工を施し、その基材上にアモルファス磁性薄膜を積層してもよい。
【0051】
図1に示すように、磁気シールド補助装置4の大きさは、磁気シールド装置2の開口部3と略同じ大きさであるが、開口部3よりも小さくてもよく、より効果的に磁気シールドをするためには、開口部3の大きさよりも大きい方が好ましい。
【0052】
磁気シールド補助装置4の形状は、図1に示すような正方形に限らず、縦長若しくは横長の長方形であっても、その他の多角形であっても、又は円形であってもよい。また、平板状に限らず、図10に示すような筒状であってもよく、任意の断面を有する棒状であってもよい。いずれの形状であっても、周知の板金の打ち抜き工法や、これら様々な形状に成型された基材上に他の金属材料を積層する技術を用いることにより、本発明の磁気シールド補助装置4を製造することができる。
【0053】
磁気シールド補助装置4の形状は、磁気シールド装置2の開口部3の形状や、磁気シールド装置2の磁気シールド効果の弱い位置の形状に合わせた形状とすることができる。
【0054】
4.磁気シールド補助装置4及び磁気シールドシステム1の使用方法
図1に示すように、磁気シールド装置2は、一面が開放された開口部3以外の壁面、床面及び天井が磁性材料により密閉されている磁気シールドルームである。磁気シールド装置2の内部には、生体磁気計測装置(図示せず)が設置されており、被験者や装置の操作者は、開口部3により磁気シールド装置2との出入りをする。
【0055】
磁気シールド補助装置4は、磁気シールド装置2の開口部3の近傍に設置される。ここで、磁気シールド補助装置4は、同一形状の第1の磁気シールド補助部材4aと第2の磁気シールド補助部材4bとが一体として構成されている。磁気シールド補助装置4の開口部5の大きさは、磁気シールド装置2の開口部3の大きさと略同じである。このため、磁気シールド補助装置4の設置後であっても、風通しはよく及び外光を取り入れることでき、被験者等は、開口部3、5を通って磁気シールド装置2の出入りを自由にすることができる。磁気シールド補助装置4は、磁気シールド補助装置4の下部に設けた支持脚(図示せず)により、磁気シールド装置2の開口部3近傍に設置する。
【0056】
磁気シールド補助装置4を設置する場合には、磁界環境測定装置により磁界環境を測定しながら、最適な磁界環境となるように、磁気シールド補助装置4と磁気シールド装置2との位置を調整する。通常の場合には、磁気シールド補助装置4の位置を調整して、磁気シールド補助装置4の外縁の投影面が、開口部3全体を覆うように設置するのが望ましく、開口部3の面に対して、磁気シールド補助装置4の面を略平行に設置するのが望ましい。
【0057】
磁界環境測定後、磁気シールド補助装置4の支持脚により周知の方法で磁気シールドシステム1の床面に固定する。磁気シールド補助装置4の下部に取り付けた、移動可能なキャスタのついた支持脚により一時的に固定することもできる。その他の方法により、床面でなく磁気シールド装置2に接続し、固定することもできる。
【0058】
なお、磁気シールド補助装置4は、第1の磁気シールド補助部材4aと第2の磁気シールド補助部材4bとを別部材としたものを隣接させて使用してもよい。この場合には、第1の磁気シールド補助部材4aと第2の磁気シールド補助部材4bとは密着させて設置してもよく、互いに離して設置してもよい。この場合には、磁界環境に応じて、第1の磁気シールド補助部材4aと第2の磁気シールド補助部材4bの設置位置を個別に調整することができる。
【0059】
図4に示すように、磁気シールド補助装置4の磁気シールド効果は、磁気シールド補助装置4の面内からふくらみをもつように垂直方向にも及ぶ。したがって、図8に示すように、複数の磁気シールド補助装置4及び6を所定の間隔をあけて設置することで、磁気シールド効果を高めることができる。図1の場合と同様にして、それぞれの磁気シールド補助装置4、6は、一面が開口した磁気シールド装置2の開口部3の近傍に設置される。そして、磁界環境測定を行いながら、それぞれの位置を調整する。磁気シールド補助装置4、6のそれぞれの外縁の投影面が、開口部3全体を覆うように設置し、互いに略平行に設置されるのが望ましい。
【0060】
磁界環境測定により磁気シールド補助装置4、6を設置する位置を決定した後は、図1の場合と同様の周知の方法により、それぞれを固定する。
【0061】
なお、図8に示すような2つの磁気シールド補助装置4、6に限らず、3つ以上の磁気シールド補助装置を設置することもできる。
【0062】
このようにして、被験者等は、磁気シールド補助装置4(及び6)の開口部5(及び7)から磁気シールド装置2の開口部3を通って、磁気シールド装置2内部へ入り、内部に設置された生体磁気計測装置により検査を受ける。そして、磁気シールド装置2内は、磁気シールドシステム1の磁気シールド効果により外部磁界が有効にシールドされ、たとえば脳の神経活動によって発生する微弱磁界を正確に測定することができるようになる。
【0063】
なお、上述においては、磁気シールド装置2の一面のみが開口している場合について説明したが、一面のみの開口に限らず、2以上の面が開口していても、開口した面にそれぞれ磁気シールド補助装置4を所定の位置に設置して、高い磁気シールド効果を有する磁気シールドシステム1を構築することができる。
【0064】
5.磁気シールド補助装置の変形例
(1)変形例1、磁気シールドが弱い箇所を有する磁気シールド装置の場合
磁気シールド装置の開口部の有無にかかわらず、磁気シールド装置の形状及び/又は磁気シールド装置が置かれる磁界環境等により、部分的に磁気シールド効果の弱い箇所が生ずる場合がある。たとえば、既設の磁気シールドルームにおいて、そのような箇所が判明した場合、その箇所の形状及び大きさを考慮した磁気シールド補助装置を設置して、その位置に周知の方法で固定することにより、既設の磁気シールドルームの磁気シールド性能を向上させることができる。
【0065】
図11は、このような場合の磁気シールド補助装置及び磁気シールドシステムの使用方法を説明した図である。
【0066】
図11に示すように、磁気シールドシステム41は、磁気シールド装置42と、磁気シールド装置42の磁気シールドの弱い位置の近傍に設置される磁気シールド補助装置44とを備える。
【0067】
磁気シールド装置42は、すべての壁面、床面及び天井が磁性材料からなるパネルにより覆われて密閉された磁気シールドルームである。1つの壁面に被験者等の出入りのためのドア49が設けられている。磁気シールド装置42の内部には、生体磁気計測装置(図示せず)が設置されており、被験者や装置の操作者は、ドア49を用いて磁気シールド装置2との出入りをする。
【0068】
磁気シールド装置42の磁気シールドの弱い位置の近傍に設置される磁気シールド補助装置44は、磁気シールド装置42の磁気シールド効果が弱い壁面、たとえばドア49の設置された壁面と略同じ大きさに形成されている。磁気シールド補助装置44は、図1の場合と同様の全体が環状の略正方形をなし、開口部45を有している。切れ目等のない連続した環状であることが望ましいのは、図1の場合と同様である。磁界環境又は設置環境に合わせて、図11のような正方形に限らず、任意の形状とすることができることも図1の場合と同様である。
【0069】
また、磁気シールド補助装置44は、パーマロイで形成された第1の磁気シールド補助部材と、銅で形成された第2の磁気シールド補助部材とを備え、これらが一体として構成されている。第1の磁気シールド補助部材及び第2の補助部材の材質、製造方法等については、図1の場合と同様である。
【0070】
磁界環境測定により、ドア49を設けている壁面の磁気シールド効果が弱いことが判明した場合、図11に示すように、磁気シールド効果が弱い壁面に近接させて磁気シールド補助装置44を設置することで、磁気シールド効果を改善することができる。磁気シールド補助装置44の開口部45は、ドア49に比べて十分大きいので、磁気シールド補助装置44設置後でも、被験者等は、磁気シールド装置42への出入りをすることができる。
【0071】
磁気シールド補助装置44は、図1の場合と同様の方法で、設置し、固定することができる。
【0072】
このようにして、被験者等は、磁気シールド補助装置44の開口部45から磁気シールド装置42のドア49を通って、磁気シールド装置42内部へ入り、内部に設置された生体磁気計測装置により検査を受ける。そして、磁気シールド装置42内は、本発明の磁気シールドシステム41の改善した磁気シールド効果により、たとえば脳の神経活動によって発生する微弱磁界を正確に測定することができるようになる。
【0073】
(2)変形例2、窓状の開口部を有する磁気シールド装置の場合
図9に示すように、磁気シールドシステム21は、一部に開口部23を有する磁気シールド装置22と、開口部23の近傍に設置される環状の磁気シールド補助装置24とを備える。
【0074】
磁気シールド装置22は、磁性材料からなるパネルを組み合わせた壁面、床面及び天井からなり、全体が略直方体をなしており、内部に生体磁気計測装置を設置する空間部が設けられている。そして、磁気シールド装置22は、1つの壁面の一部であって、壁面の略中央、天井よりに開口部23を有している。開口部23は、たとえば医療関係者が被験者の様子を外部から観察するため、1つの壁面の一部を窓状に開口して形成される。
【0075】
磁気シールド装置22の開口部23の近傍に設置される磁気シールド補助装置24は、磁気シールド装置22の開口部23と略同じ大きさに形成されている。磁気シールド補助装置24は、全体が環状をなしており、開口部25を有している。図1の場合と同様に、磁気シールド補助装置24は、磁気シールド効果を高めるためには連続的で切れ目等ない連続した環状であることが好ましく、開口部23の形状に合わせて、長方形に形成されている。
【0076】
磁気シールド補助装置24は、長方形環状のパーマロイで形成された第1の磁気シールド補助部材と、同一形状及び大きさの長方形環状の銅材で形成された第2の磁気シールド補助部材とを貼り合わせて一体として構成されている。第1の磁気シールド補助部材及び第2の補助部材の材質、製造方法等については、図1の場合と同様である。
【0077】
磁気シールド補助装置24の四隅には、磁気シールド装置22に取り付けるための取付脚28が磁気シールド補助装置24の開口部25の面に対して略垂直方向に延びている。取付脚28は、板金加工技術により、磁気シールド補助装置24と一体として形成される。なお、取付脚28を別部材で形成し、磁気シールド補助装置24の設置の際に取付脚28を介して磁気シールド補助装置24と磁気シールド装置22とを接続してもよい。
【0078】
磁気シールド補助装置24は、磁気シールド装置22の開口部23の端面から所定の距離だけ離して設置される。その距離は、磁気シールド装置22内部の磁界環境を測定しながら、磁界の大きさが最低になる位置である。磁気シールド補助装置24を設置する位置を決定した後、磁気シールド補助装置24の四隅に形成された取付脚28の端を磁気シールド装置22に周知の方法により接続し、磁気シールド補助装置24を固定する。通常の場合には、磁気シールド補助装置24の外縁の投影面が、開口部23全体を覆うように磁気シールド補助装置24を設置するのが望ましく、開口部23の面に対して、磁気シールド補助装置24の面を略平行に設置するのが望ましい。
【0079】
なお、磁気シールド装置22の形状は、直方体に限らず、また、磁気シールド補助装置24の形状も長方形に限られないのは、図1の場合と同様である。
【0080】
(3)変形例3、筒状の磁気シールド補助装置の場合
磁気シールド補助装置は、図1〜図4、図8、図9及び図11に示すような平板状の形状に限らず、図10に示すような筒状にすることもできる。
【0081】
磁気シールドシステム31は、一面が開口した磁気シールド装置32と、開口部33の近傍に設置される環状の磁気シールド補助装置34とを備えている。
【0082】
磁気シールド装置32は、図1の場合と同様であり、磁性材料からなるパネルを組み合わせた壁面、床面及び天井からなり、全体が略直方体をなしており、内部に生体磁気計測装置を設置する空間部が設けられている。そして、1つの壁面には、生体磁気計測装置を設置した空間部に出入りするための開口部33が形成されている。開口部33は、被験者等が出入りできるようにするため、1つの壁面すべてを開口するように形成されている。
【0083】
磁気シールド装置32の開口部33の近傍に設置される磁気シールド補助装置34は、磁気シールド装置32の開口部33の大きさと略同じ大きさに形成されている。磁気シールド補助装置34は、全体が環状をなしており、断面が正方形の筒状であり、開口部35を有している。磁気シールド補助装置34は、磁気シールド効果を高めるためには連続的で切れ目等ない連続した環状であることが好ましい。
【0084】
磁気シールド補助装置34は、パーマロイで形成される環状の第1の磁気シールド補助部材と、銅で形成される環状の第2の磁気シールド補助部材とを備える。磁気シールド補助装置34を筒状とした場合であっても、図1等に示す平板状に形成された場合と同様に、第1の磁気シールド補助部材と第2の磁気シールド補助部材とを周知の方法で重ね合わせ、貼り合わせ、又は積層等することにより一体として磁気シールド補助装置34を形成することができる。なお、第1の磁気シールド補助部材と第2の磁気シールド補助部材とを別々に形成して、それぞれ離して設置することができることも図1等の場合と同様である。
【0085】
磁気シールド補助装置34を設置する位置は、磁気シールド装置32内部の磁界環境を測定しながら、磁気シールド装置32の置かれる磁界環境に応じて、調整して設置する。通常の場合には、磁気シールド補助装置34の投影面が、開口部33全体を覆うように設置するのが望ましく、開口部33の面に対して、磁気シールド補助装置34の面を略平行に設置するのが望ましいことも図1等の場合と同様である。図1等に示すような平板状の形状の磁気シールド補助装置と同等の磁気シールド効果を有する。開口部の形状等を含む全体のデザインや、設置場所等により図10に示す磁気シールド補助装置やその他の形状の磁気シールド補助装置を選択して用いることができる。
【0086】
なお、磁気シールド装置32の形状は、直方体に限らず、また、磁気シールド補助装置34の形状も正方形に限られないのは、図1の場合と同様である。
【0087】
上述のいずれの例においても、磁気シールド装置内は、高い磁気シールド効果を発揮し、たとえば生体磁気計測装置によって脳の神経活動で発生する微弱磁界を正確に測定することができるようになる。
【0088】
(4)その他
上述したように、磁気シールド補助装置は、磁界環境に応じて磁気シールド装置の開口部との位置を調整され、設置される。磁界環境によっては、磁気シールド補助装置と開口面とを必ずしも平行にせず、垂直や斜めに設置したときに磁気シールド効果が高くなる場合がある。また、磁気シールドシステムの設置状況によっては、磁気シールド補助装置を、磁気シールド装置の開口面に対して、垂直や斜めに設置しなければならない場合もある。
【0089】
図12に示すように、磁気シールド補助装置55、56は、磁気シールド装置52の開口部53の面に対して、略垂直に設置される。
【0090】
磁気シールド補助装置55、56は、それぞれ磁性材料で形成された第1の磁気シールド補助部材及び導電材料で形成された第2の磁気シールド補助部材を備えていることは、上述と同様である。また、磁気シールド補助装置の形状については正方形に限らず、円形、多角形その他の形状、筒状、任意の断面を有する棒状等であってもよいのも上述と同様である。さらに、図12の変形例においては、2つの磁気シールド補助装置55、56を備えているが、磁気シールド補助装置は、1つであってもよく、3つ以上であってもよい。開口部53は、図12のように一面が開口している場合に限らず、窓状に開口された場合もあり、磁気シールド補助装置を窓状開口部に近接させて垂直に設置することができる。
【0091】
また、図13に示すように、磁気シールド補助装置64、65は、磁気シールド装置62の開口部63の面に対して、斜めに設置される。
【0092】
磁気シールド補助装置64、65は、それぞれ磁性材料で形成された第1の磁気シールド補助部材及び導電材料で形成された第2の磁気シールド補助部材を備えており、磁気シールド補助装置の形状については正方形に限らず、円形、多角形その他の形状、筒状、任意の断面を有する棒状等であってもよい。さらに、図13の変形例においては、2つの磁気シールド補助装置64、65を備えているが、磁気シールド補助装置は、1つであってもよく、3つ以上であってもよい。開口部63は、図13のように一面が開口している場合に限らず、窓状に開口された場合もあり、磁気シールド補助装置を窓状開口部に近接させて斜めに設置することができる。
【0093】
なお、開口部の面に対して垂直の配置、斜めの配置又は平行な配置を任意に組合わせることもできる。
【0094】
上述した図12、13に示す例のように、磁気シールド装置52、62の開口面に対して、磁気シールド補助装置55、56、64、65を、略垂直、斜め、又はこれらの組合せた配置にすることにより、すべての方向について磁気シールド効果を生じ、高い磁気シールド効果を有する磁気シールドシステム51、61を実現することができる。
【0095】
以上、生体磁気計測装置について、本発明の磁気シールド補助装置及び磁気シールドシステムを使用する場合について述べたが、生体磁気計測装置には、脳磁計、心磁計、筋磁計等が含まれる。また、生体磁気計測装置のほか、電子顕微鏡、電子ビームマスク描画装置、マスク検査装置、質量分析装置又は収束イオンビーム等高機能電子デバイスの微細加工向け製造装置、検査装置等を、磁気シールド装置内に設置することができる。この場合において、本発明の磁気シールド補助装置を上述の方法で用いることにより、高い磁気シールド効果を有する磁気シールドシステムが、高精度なデバイス製造を可能にする。
【0096】
なお、本発明は上述した実施の形態のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能であることはもちろんである。
【符号の説明】
【0097】
1 磁気シールドシステム、2 磁気シールド装置、3 開口部、4 磁気シールド補助装置、4a 第1の磁気シールド補助部材、4b 第2の磁気シールド補助部材、5 開口部、6 磁気シールド補助装置、7 開口部、21 磁気シールドシステム、22 磁気シールド装置、23 開口部、24 磁気シールド補助装置、25 開口部、28 取付脚、31 磁気シールドシステム、32 磁気シールド装置、33 開口部、34 磁気シールド補助装置、35 開口部、41 磁気シールドシステム、42 磁気シールド装置、44、磁気シールド補助装置、45 開口部、49 ドア、51 磁気シールドシステム、52 磁気シールド装置、53 開口部、54 開口部、55 磁気シールド補助装置、56 磁気シールド補助装置、57 開口部、61 磁気シールドシステム、62 磁気シールド装置、63 開口部、64 磁気シールド補助装置、65 磁気シールド補助装置、67 開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一部に開口部を有する磁気シールド装置の該開口部近傍に設置される環状の磁気シールド補助装置において、
環状の磁性材料で形成された第1の磁気シールド補助部材と、
上記第1の磁気シールド補助部材に隣接して設けられる環状の導電性材料で形成された第2の磁気シールド補助部材とを有する磁気シールド補助装置。
【請求項2】
上記第1の磁気シールド補助部材は、パーマロイで形成され、
上記第2の磁気シールド補助部材は、銅で形成されている請求項1記載の磁気シールド補助装置。
【請求項3】
上記第1の磁気シールド補助部材と上記第2の磁気シールド補助部材とは、互いに重ね合わされている請求項1又は請求項2記載の磁気シールド補助装置。
【請求項4】
一部に開口部を有する磁気シールド装置と、
上記開口部の近傍に設置される環状の磁気シールド補助装置とを備え、
上記磁気シールド補助装置は、
環状の磁性材料で形成された第1の磁気シールド補助部材と、
上記第1の磁気シールド補助部材に隣接して設けられる環状の導電性材料で形成された第2の磁気シールド補助部材とを有する磁気シールドシステム。
【請求項5】
上記磁気シールド補助装置は、1又は複数であり、上記磁気シールド装置の開口部の外側に、該開口部の面と略平行に設置される請求項4記載の磁気シールドシステム。
【請求項6】
磁気シールド装置の磁気シールド効果の弱い位置の近傍に設置される環状の磁気シールド補助装置において、
上記磁気シールド補助装置は、
環状の磁性材料で形成された第1の磁気シールド補助部材と、
上記第1の磁気シールド補助部材に隣接して設けられる環状の導電性材料で形成された第2の磁気シールド補助部材とを有する磁気シールド補助装置。
【請求項7】
磁気シールド装置と、
上記磁気シールド装置の磁気シールド効果の弱い位置の近傍に設置される環状の磁気シールド補助装置とを備え、
上記磁気シールド補助装置は、
環状の磁性材料で形成された第1の磁気シールド補助部材と、
上記第1の磁気シールド補助部材に隣接して設けられる環状の導電性材料で形成された第2の磁気シールド補助部材とを有する磁気シールドシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−74457(P2012−74457A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−216795(P2010−216795)
【出願日】平成22年9月28日(2010.9.28)
【出願人】(510258348)
【出願人】(510258555)
【Fターム(参考)】