説明

磁気テープおよびこれを用いた磁気テープカートリッジ

【課題】 記録トラック幅が狭い磁気記録システムにおいても、オフトラックが少なく、走行によるエラーレートの劣化が少ない磁気テープおよび磁気テープカートリッジを提供すること。
【解決手段】 非磁性支持体上に少なくとも磁性層を設けた磁気テープにおいて、前記磁気テープの25mmあたりの蛇行部の変位量が0.05mm以下であり、かつ前記磁性層のAl23/TiC部材に対する摩擦係数が0.30以下であることを特徴とする磁気テープと、カートリッジケースに磁気テープを巻装した単一若しくは複数のリールを回転可能に収容してなる磁気テープカートリッジにおいて、前記磁気テープとして、上記の磁気テープを用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気テープ、及びカートリッジケース内に該磁気テープが巻装されたリールを回転可能に収容してなる磁気テープカートリッジに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、コンピュータ等の外部記憶装置に用いられる記録媒体として使用されている磁気テープカートリッジには、単一若しくは複数のリールに磁気テープを巻装し、このリールをカートリッジケース内に回転可能に収容したタイプのものが知られている。この磁気テープはコンピュータ等のデータ保存用として用いられ、重要な情報が記憶されているため、テープジャミング等のトラブルが発生しないように、また不用意に磁気テープが引き出されないように構成されている。
昨今の高度情報化・ネット社会において、取り扱われるデータ量は飛躍的に伸びている。そこで、磁気テープカートリッジ1巻当たりの記録容量を増やす手段として、記録トラック幅を狭くしてテープ幅方向の記録密度を高くしたり、記録波長を短波長化することが検討されている。しかし、記録トラック幅を狭くすると、オフトラックによる再生出力の低下の問題がある。これは、図12に示すように、磁気テープ103の長手方向に対して蛇行部103a,103b,103cが生じていると、巻き取り時の磁気テープ103の直進性が損なわれることによって磁気テープ103の巻姿が劣化することが原因の一つである(例えば、特許文献1参照)。
また、記録波長を短波長化するためには、ヘッドにダメージを与えない磁気テープが必要となる。
【0003】
【特許文献1】特開2002−245745号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、記録トラック幅が狭い磁気記録システムにおいても、オフトラックが少なく、走行によるエラーレートの劣化が少ない磁気テープおよび磁気テープカートリッジを提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の課題は、以下の手段により解決することができる。
1)非磁性支持体上に少なくとも磁性層を設けた磁気テープにおいて、前記磁気テープの25mmあたりの蛇行部の変位量が0.05mm以下であり、かつ前記磁性層のAl23/TiC部材に対する摩擦係数が0.30以下であることを特徴とする磁気テープ。
2)下記の測定条件によって測定された蛇行部の変位量によって特定される上記1)に記載の磁気テープ。
(蛇行部の変位量の測定条件)前記磁気テープを支持面上に支持させ、前記支持面上の前記磁気テープに光を照射するとともに、前記光を前記磁気テープを介して受光部によって検出する場合に、前記受光部を保持する駆動手段を、前記支持面に支持された前記磁気テープの一方の端部から他方の端部へ至る直線上を移動させて、前記駆動手段の移動方向に対して垂直方向に配列された複数の受光素子によって前記光源から発せられた光を検出して蛇行部の変位量を測定する。
3)前記非磁性支持体上に、実質的に非磁性である下層と強磁性粉末を結合剤中に分散してなる磁性層とをこの順に設けたことを特徴とする上記1)または2)に記載の磁気テープ。
4)前記非磁性支持体の一方の面に、実質的に非磁性である下層と強磁性粉末を結合剤中に分散してなる磁性層とをこの順に設け、かつ前記非磁性支持体の他方の面にバック層を設けたことを特徴とする上記3)に記載の磁気テープ。
5)カートリッジケースに磁気テープを巻装した単一若しくは複数のリールを回転可能に収容してなる磁気テープカートリッジにおいて、前記磁気テープが、上記1)〜4)のいずれかに記載の磁気テープであることを特徴とする磁気テープカートリッジ。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、磁気テープの25mmあたりの蛇行部の変位量と、磁性層のAl23/TiC部材に対する摩擦係数を特定範囲としたことによって、記録トラック幅が狭い磁気記録システムにおいても、オフトラックが少なく、走行によるエラーレートの劣化が少ない磁気テープおよび磁気テープカートリッジを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の磁気テープは、線記録密度が100kfci以上、記録トラック幅と再生トラック幅の差が0〜16μmである磁気記録再生装置で使用されるのが好ましい。すなわち、記録トラック幅と再生トラック幅の差が16μmを超えるシステムの場合は、記録トラック幅が再生トラック幅に比べて充分に広いため、テープに前記蛇行部が生じても、ヘッドが記録トラック上を走行するのでドロップアウト増加にはつながらない。しかし、記録トラック幅と再生トラック幅の差が16μm以下の線記録密度が大きい磁気記録再生装置では、テープの蛇行によるトラックずれが顕在化し、オフトラックの問題が発生し易い。したがって、本発明の磁気テープの効果は、線記録密度が大きい磁気記録再生装置を使用したときに顕著となる。
磁気記録再生は、本発明の磁気テープを備えた磁気テープカートリッジを磁気記録再生装置に用いればよい。磁気テープに対し100kfci以上(好ましくは120kfci以上、更に好ましくは140kfci以上)の線記録密度、かつ記録トラック幅(好ましくは25μm以下、更に好ましくは15μm以下)と再生トラック幅(好ましくは15μm以下、更に好ましくは10μm以下)の差を0〜16μm(好ましくは0〜12μm、更に好ましくは0〜8μm)として記録再生が可能である。
【0008】
本発明の磁気テープおよび磁気テープカートリッジを用いた磁気記録再生は、このように記録トラック幅が狭く、再生トラック幅との差が小さくても、オフトラックを抑え、安定した記録再生が得られるものである。
上記トラック幅で記録再生を行う記録再生装置については、特に限定されず、記録・再生ヘッドを有した公知の態様の磁気記録再生装置を用いることができる。
本発明に用いられる磁気ヘッドは記録用としてはインダクティブヘッドが、再生用としてはMRヘッドが好ましく使用できる。
以下、本発明を更に詳細に説明する。
【0009】
本発明の磁気テープは、単位長さ(25mm)あたりの蛇行部の変位量が0.05mm以下であることを特徴としている。好ましくは、0.03mm以下、さらに好ましくは0.02mm以下である。ここで単位長さ(25mm)あたりの蛇行部の変位量とは、詳しくは後述するが、磁気テープを巻き取った後、磁気テープ25mmあたり、磁気テープが幅方向に変位する(ずれる)長さである。
【0010】
前記の本発明の要件である、0.05mm以下の蛇行部の変位量を達成するためには、磁気テープの長手方向において蛇行部の位置を測定し、磁気テープをテープ巻取部にテープガイド部で案内するとともに、測定された蛇行部の位置でテープガイド部を磁気テープの幅方向に駆動し、テープ巻取部に巻き取られる前記磁気テープの位置が一定になるように制御する方法によって可能となる。
この方法は、磁気テープを巻き取り可能なテープ巻取部と、磁気テープの巻き取り時に、該磁気テープを前記テープ巻取部へ案内するテープガイド部とを備え、予め測定された磁気テープの長手方向における蛇行部の位置で、テープガイド部を磁気テープの幅方向に駆動し、テープ巻取部に巻き取られる磁気テープの位置が一定になるように制御する制御部が設けられている磁気テープの巻取装置によって実施することができる。
以下、該方法および装置について詳述する。
【0011】
図1は、磁気テープの巻取装置の一実施形態を説明する構成図である。図1に示すように、巻取装置10は、磁気テープTが巻装されてなるテープ巻体11と、磁気テープTを巻き取るテープ巻取部13とを備え、磁気テープTが、テープ巻体11から送り出されて図1に矢印で示す方向に沿って搬送され、テープ巻取部13に巻き取られる構成である。
【0012】
磁気テープTをテープ巻取部13へ案内するテープガイド部12が該テープ巻取部の直前に設けられている。テープガイド部12は、円筒形状のローラ部を備え、その周面の一部に磁気テープTが接触するように配置され、磁気テープTが搬送経路に沿って走行する際に周方向に回転可能な状態で支持されている。
【0013】
テープガイド部12は、ローラ部の回転軸方向端部に取り付けられたアクチュエータ14を備えている。アクチュエータ14は、後述する制御部20に電気的に接続され、この制御部20からの信号に応じてテープガイド部12を回転軸方向に駆動し、テープガイド部12に摺動しつつ走行する磁気テープTの幅方向位置を調整することができる。
【0014】
また、搬送経路には、通過した磁気テープTの長手方向の距離を計測する検尺機25が設けられている。検尺機25は、磁気テープTの走行時に通過した磁気テープTの長手方向の距離を測定し、この距離の情報を出力することができる。
【0015】
巻取装置10には、アクチュエータ14を制御してテープガイド部12を駆動する制御部20が設けられている。制御部20には、予め測定された磁気テープTの長手方向における蛇行部の位置に関するデータが入力され、これらデータを保存するメモリ24と、このメモリ24から磁気テープTの蛇行部に関する情報と、検尺機25から通過した磁気テープTの長手方向の距離に関する情報を読み出し、アクチュエータ14を駆動させる時間と駆動させる量と駆動信号として出力する処理部23とが設けられている。また、制御部20には、処理部23から出力された駆動信号をデジタル値からアナログ値に変換するD/A変換部22と、D/A変換部22から出力されたアナログ信号を増幅してアクチュエータ14に出力する増幅器21とが設けられている。
【0016】
次に、磁気テープの蛇行部を測定する手段について説明する。
図2は、磁気テープの蛇行部を測定する測定装置を示す構成図である。磁気テープの測定装置30は、磁気テープTを従動軸38aに回動可能に支持されたパンケーキ31から主軸38bに回動可能に支持されたリール32に巻き取りつつ、測定領域に磁気テープTを走行させて蛇行部を測定する構成である。
【0017】
測定装置30には、パンケーキ31とリール32との間において搬送される磁気テープTを案内する複数のガイドローラ36と、搬送される磁気テープTを支持する吸着ステージ39とが設けられている。吸着ステージ39は、磁気テープTと摺接する支持面39aを有し、磁気テープTと支持面39aとの間の空気を吸引し、磁気テープTを支持面39aに吸着保持することができる。
【0018】
測定装置30は光学式位置検出手段33を備え、光学式位置検出手段33が吸着ステージ39の支持面39aに支持された磁気テープTの長手方向の湾曲を測定する構成である。具体的に、光学式位置検出手段33は、リニアステージ34と、該リニアステージ34を所定の直線方向(矢印Lで示す方向)に可動自在な状態で保持する駆動軸35とを備えている。駆動軸35は、リニアステージ34が支持面39a上に支持された磁気テープTの一端から他端までを結ぶ直線上を移動するように配置されている。
【0019】
また、リニアステージ34の下方には光源37が設けられ、光源37が吸着ステージ39の支持面39aに対して反対側の面に光を照射し、吸着ステージ39を介して光学式位置検出手段33へ光を照射する。
【0020】
図3は、リニアステージを下方側(図2において吸着ステージ側)から見た状態を示す図である。図3に示すように、リニアステージ34の吸着ステージ39側の面(以下、下面という。)には、リニアステージ34の駆動方向Lに対して垂直方向に、且つ、吸着ステージ39の支持面39aに平行に配列された受光部34aが設けられている。
【0021】
図2及び図3に示すように、測定装置30は、磁気テープTの測定時にリニアステージ34を駆動軸35に対して相対移動させるとともに、受光部34aが吸着ステージ39(テープ支持部材)に支持された磁気テープTに沿って上方を移動する。そして、光源37から発せられた光の一部が磁気テープTにさえぎられ、該磁気テープTにさえぎられることなく受光部34aに到達した光が検出される。磁気テープTが長手方向に対して蛇行するのに伴い、光源37から発せられた光のさえぎられる位置が変わるとともに、受光部34aに到達する受光領域も幅方向に変位するようになる。すると、磁気テープTの一部が変形して幅方向へ蛇行しているときには、蛇行している箇所において受光部34aが検出する光源37からの光が増加又は減少する。このとき、受光部34aによって検出される光量によって磁気テープTの蛇行部の周期を測定することができる。
【0022】
図4は、磁気テープの一部に生じている蛇行部の測定を説明する図である。本実施形態においては、図2に示した測定装置30を用いて磁気テープの蛇行部を測定した。図4において、磁気テープTに複数(本図では2個の蛇行部を示している。)の蛇行部Ta,Tbが設けられ、それぞれの蛇行部Ta,Tbの周期をM1,M2とした。
【0023】
測定装置30で磁気テープTの測定を行う場合には、任意に決められた基準線Bに対して磁気テープTの幅方向における一方の端部(図4中)の位置を光源37から発せられてリニアステージ34の受光部34aに照射された光に基づいて図中両矢印で示すように測定点毎に検出する。ここで、測定点は、図2に示す吸着ステージ39上の駆動軸L方向において等間隔に設定され、本実施形態では一回で行う測定を磁気テープTの長手方向に対して100cmの領域とし、40個とした。このとき、測定点同士の間隔は2.5cmである。測定点の個数は特に限定されず、測定点同士の間隔が1cmから100cmの範囲であれば変更することができる。
本発明において、単位長さあたりの蛇行部の変位量とは、巻き取られている磁気テープ(製品)を上記測定装置にて測定される、任意位置の磁気テープ25mmにおける上記測定点のpeak値の最大値とvalley値の最小値の差を意味する。本発明では、その差が0.05mm以下に制御される。ただし、磁気テープ600m当たり(2.4×104回の測定当たり)該変位量が0.05mmより超える場合が2回以下測定される場合は許容の範囲である。
【0024】
次に、本実施形態の磁気テープの巻取方法の手順を説明する。
先ず、図2で示す測定装置30によって磁気テープTの蛇行部Ta,Tbを測定し、図1に示す巻取装置10のメモリ24に入力する。その後、磁気テープTをテープ巻取部13によって磁気テープTの巻き取りを開始する。
【0025】
磁気テープTを搬送している状態で、検尺機25によってテープ巻体11からテープ巻取部13に向って通過する磁気テープTの長手方向の距離を測定する。制御部20の処理部23は、検尺機25から読み込んだ磁気テープTの長手方向の距離に基づいて、予めメモリ24から読み込んだ蛇行部Ta,Tbがテープガイド部12近傍に到達していることを判別し、アクチュエータ14に駆動信号を出力する。このとき、アクチュエータ14を駆動させる量は、磁気テープTが蛇行部Ta,Tbにおいて蛇行している度合に応じて決定される。
【0026】
アクチュエータ14を駆動させることで、テープガイド部12に摺接しつつ走行する磁気テープTの幅方向における位置を調整することができる。そして、制御部20は、磁気テープTの幅方向における位置を調整しつつテープ巻取部13に巻き取ることで、該テープ巻取部13に巻き取られる磁気テープTの位置が一定になるように制御することができる。
【0027】
本実施形態の磁気テープの巻取方法によれば、磁気テープTに生じている蛇行部Ta,Tbの位置を測定し、磁気テープTの巻き取り時に測定された蛇行部Ta,Tbの位置でテープガイド部12を該磁気テープTの幅方向に駆動することでテープ巻取部13に巻き取られる磁気テープTの位置が一定になるように制御している。また、蛇行部Ta,Tbはテープ巻取部13に巻き取られるときのテンションによって矯正され、上記巻取方法によって巻き取られた後における磁気テープTの送り出し時及び巻き取り時に、該磁気テープTを長手方向の直進性を向上させることができる。
【0028】
また、本実施形態の磁気テープの巻取装置10は、制御部20が予め測定された磁気テープTにおける蛇行部Ta,Tbの位置に基づいて磁気テープTの巻き取り時に測定された蛇行部Ta,Tbの位置でテープガイド部12を駆動することによって、テープ巻取部13に巻き取られる磁気テープTの位置を一定にすることができる。このため、磁気テープTの巻姿を良好にすることができる。また、巻取装置10によって巻き取られた磁気テープTは巻き取られたときのテンションによって蛇行部Ta,Tbが矯正されているため、2回目以降の巻き取り時に該磁気テープTを長手方向の直進性を向上させることができる。
【0029】
前記のようにして磁気テープは、巻き取り時に、該磁気テープの蛇行部において幅方向に変位させることで蛇行が矯正されつつ巻き取られる。このため、磁気テープが蛇行部において磁気テープ幅方向に変位する量(以下、蛇行部の変位量)が小さくなる。このようにして本発明の磁気テープは、単位長さ(25mm)あたりの蛇行部の変位量が0.05mm以下となる。このような磁気テープによれば、オフトラックの問題を解決することができるとともに、磁気テープドライブで走行させた際に、ドライブの内部を走行する磁気テープが上下に振動することや、磁気テープの幅方向端部のエッジが折れて損傷することを防止することができる。
【0030】
図5,6及び7は、磁気テープの長手方向位置(テープ長)に対する蛇行量の関係を示すグラフであり、縦軸は磁気テープの蛇行量(mm)を示し、横軸はテープ長(m)を示している。図5は、磁気テープの巻取工程前の状態を示すグラフである。図6は、図5に示す磁気テープに対して前記の巻取方法を実施した場合の、磁気テープの状態を示すグラフである。図7は、図5に示す磁気テープに対して前記の巻取方法を実施しなかった場合の、磁気テープの状態を示すグラフである。
【0031】
図6に示すように、磁気テープの巻き取り時に、該磁気テープを幅方向に変位して巻き取る巻取制御を行ったことにより、蛇行量の変位が抑制され、磁気テープの長手方向における単位長さ(25mm)あたりの蛇行量の変位量を0.05mm以下に抑えることができる。これに対して、図7に示す磁気テープは、巻き取り時において、磁気テープを幅方向に変位して巻き取る巻取制御が行われないため、図5に示す巻き取り前の磁気テープの蛇行量が巻き取り時に矯正されず、蛇行量の変位量は単位長さ(25mm)あたりの蛇行量の変位量が0.05mmより大きくなる。
【0032】
図8は、磁気テープの巻き姿を定量的に測定する測定器を模式的に示した図である。この測定器は、レーザ光線を測定物に走査させるレーザスキャン式の変位センサを使用している。
【0033】
図8に示すように、テープリールRは、ハブ周面上に前記巻取方法によって巻き取られた磁気テープMTを巻回させた状態で保持している。図8は、テープリールRは上リールを取り付けていない状態である。そして、磁気テープの変位の測定時には、レーザ照射部41に電圧供給部42から電圧を加圧して該レーザ照射部41からレーザ光線LBを照射しつつ、照射されたレーザ光線LBを巻回された磁気テープMTの幅方向端部(図8の磁気テープMTの上部)に、テープリールRの径方向内側から外側に向って走査する。同時に、走査したレーザ光線LBを図示しない受光レンズで集光し、集光したレーザ光線を電気信号に変換する。このとき、集光したレーザ光線が、磁気テープの幅方向位置の変位に起因して生じる光の明暗によって変化するのに応じて、変換する電気信号も変化する。こうして、変換された電気信号に基づいて、磁気テープの巻き径方向位置に対する磁気テープ幅方向位置(高さ)の関係を確認し、磁気テープ巻き姿を定量的に測定することができる。
【0034】
また、本発明の磁気テープにおいて、磁性層のAl23/TiC部材に対する摩擦係数は、0.30以下であることが必要である。好ましくは0.27以下、さらに好ましくは0.18〜0.25の範囲である。
磁気テープの磁性層の摩擦係数を下げることで、オフトラックおよび走行によるエラーレートの劣化の問題を解決することができるとともに、ロード/アンロードによる出力低下を抑制することができる。磁性層の摩擦係数を支配する要因としては、磁性層の表面粗さ、表面潤滑剤量、表面硬さ等が挙げられる。したがって、磁性層または非磁性層に添加されるカーボンブラックや研磨剤等の添加剤、結合剤、潤滑剤の量を調整する;支持体の表面粗さ、もしくはカレンダー・熱処理の条件等を調整することなどによって、所望の摩擦係数を達成することができる。
上記摩擦係数は、温度23±2℃、湿度50±5%の環境下において、直径7.0mmのAl23/TiC製シリンダー(Ra=50±10nm)に、テープを全巻き角度が170°から180°で磁気面を内側にして巻きつけ、外側のテープの一端にF1=1.0Nの力を加え、もう片方の端に直線スライドに載せたフォースゲージを付ける。スライドを速度1mm/秒で動かすのに必要な力F2を測定して得た値を意味する。摩擦係数γは以下の式で求められる。
γ=ln(F2/F1)(1/θ) θ:ラジアン単位の巻き付け角度
【0035】
以下、上記磁気テープの各層について、詳述する。
【0036】
(磁性層)
<磁性層および非磁性層の結合剤等>
磁性層(上層)、非磁性層(下層)に使用される結合剤としては従来公知の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、反応型樹脂やこれらの混合物が使用される。熱可塑性樹脂としては、ガラス転移温度が−100〜150℃、数平均分子量が1000〜200000、好ましくは10000〜100000、重合度が約50〜1000程度のものが使用される。
【0037】
このような例としては、塩化ビニル、酢酸ビニル、ビニルアルコール、マレイン酸、アクリル酸、アクリル酸エステル、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、メタクリル酸、メタクリル酸エステル、スチレン、ブタジエン、エチレン、ビニルブチラール、ビニルアセタール、ビニルエーテル、等を構成単位として含む重合体または共重合体、ポリウレタン樹脂、各種ゴム系樹脂がある。また、熱硬化性樹脂または反応型樹脂としてはフェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン硬化型樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、アクリル系反応樹脂、ホルムアルデヒド樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ−ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂とイソシアネートプレポリマーの混合物、ポリエステルポリオールとポリイソシアネートの混合物、ポリウレタンとポリイソシアネートの混合物等があげられる。これらの樹脂については朝倉書店発行の「プラスチックハンドブック」に詳細に記載されている。また、公知の電子線硬化型樹脂を各層に使用することも可能である。これらの例とその製造方法については特開昭62−256219に詳細に記載されている。
【0038】
以上の樹脂は単独または組合せで使用できるが、本発明において好ましいものとして、塩化ビニル樹脂、塩化ビニル酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル酢酸ビニルビニルアルコール共重合体、塩化ビニル酢酸ビニル無水マレイン酸共重合体、から選ばれる少なくとも1種とポリウレタン樹脂およびポリイソシアネートを組み合わせたものがあげられる。
【0039】
ポリウレタン樹脂の構造はポリエステルポリウレタン、ポリエーテルポリウレタン、ポリエーテルポリエステルポリウレタン、ポリカーボネートポリウレタン、ポリエステルポリカーボネートポリウレタン、ポリカプロラクトンポリウレタンなど公知のものが使用できる。ここに示したすべての結合剤について、より優れた分散性と耐久性を得るためには必要に応じ、COOM、SO3 M、OSO3M、P=O(OM)2 、O−P=O(OM)2、(以上につきMは水素原子、またはアルカリ金属塩基)、OH、N(R)2、N+(R)3 (Rは炭化水素基)、エポキシ基、SH、CN、などから選ばれる少なくともひとつ以上の極性基を共重合または付加反応で導入したものをもちいることが好ましい。このような極性基の量は10-1〜10-8モル/gであり、好ましくは10-2〜10-6モル/gである。
ポリウレタン樹脂中の水酸基の含有量は、1分子あたり3〜20個であるのが好ましく、より好ましくは1分子あたり4〜5個である。1分子あたり3個未満であるとポリイソシアネート硬化剤との反応性が低下するために、塗膜強度と耐久性が低下しやすい。また、20個より多いと、溶剤への溶解性と分散性が低下しやすい。ポリウレタン樹脂中の水酸基の含有量を調整するために、ポリウレタン樹脂の合成に際し、水酸基が3官能以上の化合物を用いることができる。具体的には、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、無水トリメリット酸、グリセリン、ペンタエリスリトール、ヘキサントリオール、特公平6−64726号に記載されるポリエステルポリオールを原料とする2塩基酸と該化合物をグリコール成分として得られる3官能以上水酸基を有する分岐ポリエステル、ポリエーテルエステル等が挙げられる。好ましいのは3官能のものであり、4官能以上になると反応過程においてゲル化しやすくなる。
【0040】
本発明に用いられるこれらの結合剤の具体的な例としてはユニオンカーバイト社製VAGH、VYHH、VMCH、VAGF、VAGD、VROH、VYES、VYNC、VMCC、XYHL、XYSG、PKHH、PKHJ、PKHC、PKFE、日信化学工業社製MPR−TA、MPR−TA5、MPR−TAL、MPR−TSN、MPR−TMF、MPR−TS、MPR−TM、MPR−TAO、電気化学社製1000W、DX80、DX81、DX82、DX83、100FD、日本ゼオン社製MR−104、MR−105、MR110、MR100、MR555、400X−110A、日本ポリウレタン社製ニッポランN2301、N2302、N2304、大日本インキ社製パンデックスT−5105、T−R3080、T−5201、バーノックD−400、D−210−80、クリスボン6109、7209、東洋紡社製バイロンUR8200、UR8300、UR−8700、RV530、RV280、大日精化社製ダイフェラミン4020、5020、5100、5300、9020、9022、7020、三菱化成社製、MX5004、三洋化成社製サンプレンSP−150、旭化成社製サランF310、F210などがあげられる。
【0041】
ポリイソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート、4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ナフチレン−1,5−ジイソシアネート、o−トルイジンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート等のイソシアネート類、また、これらのイソシアネート類とポリアルコールとの生成物、また、イソシアネート類の縮合によって生成したポリイソシアネート等を使用することができる。
【0042】
磁性層に用いられる結合剤は強磁性粉末に対し、また非磁性層に用いられる結合剤は非磁性無機粉末に対し、各々通常、5〜50質量%の範囲、好ましくは10〜30質量%の範囲で用いられる。塩化ビニル系樹脂を用いる場合は5〜30質量%、ポリウレタン樹脂を用いる場合は2〜20質量%、ポリイソシアネートは2〜20質量%の範囲でこれらを組み合わせて用いることが好ましいが、例えば、微量の脱塩素によりヘッド腐食が起こる場合は、ポリウレタンとイソシアネートのみを使用することも可能である。
【0043】
このような磁気テープでは、結合剤量、結合剤中に占める塩化ビニル系樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイソシアネート、あるいはそれら以外の樹脂の量、磁性層を形成する各樹脂の分子量、極性基量、あるいは先に述べた樹脂の物理特性などを必要に応じ非磁性層、各磁性層とで変えることはもちろん可能であり、むしろ各層で最適化すべきであり、多層磁性層に関する公知技術を適用できる。例えば、各層でバインダー量を変更する場合、磁性層表面の擦傷を減らすためには磁性層のバインダー量を増量することが有効であり、ヘッドに対するヘッドタッチを良好にするためには、非磁性層のバインダー量を多くして柔軟性を持たせることができる。
【0044】
<強磁性粉末>
磁性層に使用する強磁性粉末としては、α−Feを主成分とする強磁性合金粉末が好ましい。これらの強磁性粉末には所定の原子以外にAl、Si、S、Sc、Ca、Ti、V、Cr、Cu、Y、Mo、Rh、Pd、Ag、Sn、Sb、Te、Ba、Ta、W、Re、Au、Hg、Pb、Bi、La、Ce、Pr、Nd、P、Co、Mn、Zn、Ni、Sr、Bなどの原子を含んでもかまわない。特に、Al、Si、Ca、Y、Ba、La、Nd、Co、Ni、Bの少なくとも1つをα−Fe以外に含むことが好ましく、Co、Y、Alの少なくとも一つを含むことがさらに好ましい。
【0045】
強磁性合金微粉末には少量の水酸化物、または酸化物が含まれてもよい。強磁性合金微粉末の公知の製造方法により得られたものを用いることができ、下記の方法を挙げることができる。複合有機酸塩(主としてシュウ酸塩)と水素などの還元性気体で還元する方法、酸化鉄を水素などの還元性気体で還元してFeあるいはFe−Co粒子などを得る方法、金属カルボニル化合物を熱分解する方法、強磁性金属の水溶液に水素化ホウ素ナトリウム、次亜リン酸塩あるいはヒドラジンなどの還元剤を添加して還元する方法、金属を低圧の不活性気体中で蒸発させて微粉末を得る方法などである。このようにして得られた強磁性合金粉末は公知の徐酸化処理、すなわち有機溶剤に浸漬したのち乾燥させる方法、有機溶剤に浸漬したのち酸素含有ガスを送り込んで表面に酸化膜を形成したのち乾燥させる方法、有機溶剤を用いず酸素ガスと不活性ガスの分圧を調整して表面に酸化皮膜を形成する方法のいずれを施したものでも用いることができる。
【0046】
磁性層に使用する強磁性粉末としては六方晶フェライト微粉末も使用できる。六方晶フェライトとしてバリウムフェライト、ストロンチウムフェライト、鉛フェライト、カルシウムフェライト、これらの各置換体、例えば、Co置換体等がある。具体的にはマグネトプランバイト型のバリウムフェライト及びストロンチウムフェライト、スピネルで粒子表面を被覆したマグネトプランバイト型フェライト、更に一部スピネル相を含有したマグネトプランバイト型のバリウムフェライト及びストロンチウムフェライト等が挙げられ、その他所定の原子以外にAl、Si、S、Sc、Ti、V、Cr、Cu、Y、Mo、Rh、Pd、Ag、Sn、Sb、Te、Ba、Ta、W、Re、Au、Hg、Pb、Bi、La、Ce、Pr、Nd、P、Co、Mn、Zn、Ni、Sr、B、Ge、Nbなどの原子を含んでもかまわない。一般にはCo−Ti、Co−Ti−Zr、Co−Ti−Zn、Ni−Ti−Zn、Nb−Zn−Co、Sb−Zn−Co、Nb−Zn等の元素を添加した物を使用することができる。
磁性層の厚みは、50〜200nmが好ましく、50〜150nmが更に好ましい。
【0047】
また、磁性層の中心線平均粗さ(Ra)は、2.0〜7.0nmが好ましい。さらに好ましくは2.0〜5.0nmである。
このRaは、光干渉式表面粗さ計(WYKO社製HD−2000)にて以下の条件で測定されるものを意味する。
対物レンズ:50倍、中間レンズ:0.5倍、測定範囲:242μm×184μmで円筒補正、傾き補正後にRaを算出する。
表面粗さは種々の方法で制御可能である。例えば、支持体の粗さ、塗布層の厚み、塗布層に用いる無機粒子の粒子サイズ、カレンダー処理などの表面成形処理の線圧、ロール表面性などを選定すること等が挙げられる。
【0048】
(非磁性層)
非磁性層に用いられる無機粉末は、非磁性粉末であり、例えば、金属酸化物、金属炭酸塩、金属硫酸塩、金属窒化物、金属炭化物、金属硫化物、等の無機質化合物から選択することができる。非磁性層にカーボンブラックを混合させて公知の効果である表面電気抵抗Rsを下げること、光透過率を小さくすることができるとともに、所望のマイクロビッカース硬度を得る事ができる。また、下層にカーボンブラックを含ませることで潤滑剤貯蔵の効果をもたらすことも可能である。カーボンブラックの種類はゴム用ファーネス、ゴム用サーマル、カラー用ブラック、アセチレンブラック、等を用いることができる。下層のカーボンブラックは所望する効果によって、以下のような特性を最適化すべきであり、併用することでより効果が得られることがある。また非磁性層には有機質粉末を目的に応じて、添加することもできる。非磁性層の潤滑剤、分散剤、添加剤、溶剤、分散方法その他は磁性層に関する公知技術が適用できる。
非磁性層の厚みは、1.0〜3.0μmが好ましく、1.0〜2.0μmが更に好ましい。
【0049】
〔添加剤〕
磁性層、非磁性層等に使用される添加剤としては、ヘッド研磨効果、潤滑効果、帯電防止効果、分散効果、可塑効果などをもつものが使用される。具体的にはWO98/35345号等に記載のものが挙げられる。
潤滑剤としては、例えば、炭素数10〜24の一塩基性脂肪酸、およびこれらの金属塩(Li、Na、K、Cuなど)または炭素数10〜24の一塩基性脂肪酸と炭素数2〜12の一価、二価、三価、四価、五価、六価アルコールのいずれか一つとからなるモノ脂肪酸エステルまたはジ脂肪酸エステルまたはトリ脂肪酸エステル、アルキレンオキシド重合物のモノアルキルエーテルの脂肪酸エステル、炭素数8〜22の脂肪酸アミドなどが使用できる。上記脂肪酸及びアルコールは、不飽和結合を含んでも、また分岐していてもかまわない。
これらの具体例としては脂肪酸では、カプリン酸、カプリル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、リノレン酸、イソステアリン酸、などが挙げられる。エステル類ではブチルステアレート、オクチルステアレート、アミルステアレート、イソオクチルステアレート、ブチルミリステート、オクチルミリステート、ブトキシエチルステアレート、ブトキシジエチルステアレート、2−エチルヘキシルステアレート、2−オクチルドデシルパルミテート、2−ヘキシルドデシルパルミテート、イソヘキサデシルステアレート、オレイルオレエート、ドデシルステアレート、トリデシルステアレート、エルカ酸オレイル、ネオペンチルグリコールジデカノエート、エチレングリコールジオレイル等が挙げられる。
【0050】
(バック層)
バック層には、カーボンブラックと無機粉末が含有されていることが好ましい。結合剤、各種添加剤は、磁性層や非磁性層の処方が適用される。バック層の厚みは、0.1〜1.0μmが好ましく、0.4〜0.6μmが更に好ましい。
【0051】
(非磁性支持体)
磁気テープに用いられる支持体は、非磁性可撓性支持体であることが好ましく、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル類、ポリオレフィン類、セルローストリアセテート、ポリカーボネート、芳香族又は脂肪族ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリスルフォン、ポリアラミド、ポリベンゾオキサゾールなどの公知のフィルムが使用できる。中でもポリエチレンテレフタレートフィルム又はポリイミドフィルムを用いるのが好ましい。これらの支持体にはあらかじめコロナ放電処理、プラズマ処理、易接着処理、熱処理、除塵処理などを行ってもよい。
支持体は、長さ方向の弾性率が3.5〜20GPa、好ましくは6.2GPa以下、幅方向の弾性率が3.5〜20GPa、好ましくは5.7GPa以下、さらに好ましくは長さ方向及び幅方向共に弾性率が4〜15GPa、好ましくは5.4GPa以下とするのがよい。
非磁性支持体の厚みは、4.0〜8.0μmが好ましく、5.0〜7.0μmが更に好ましい。
【0052】
(製造法)
磁性層と非磁性層は、上記成分を溶媒に溶解乃至分散して各々の塗料を作製し、支持体(ウェブ)上に順じ塗布することにより作製できる。非磁性層が湿潤状態にあるうち磁性層を塗布するウエット・オン・ウエット方式でも非磁性層が乾燥した上に塗布するウエット・オン・ドライ方式でもよい。塗布乾燥されたウェブは適宜配向処理、カレンダ処理、スリットが施される。
【0053】
[磁気テープカートリッジ]
本発明の磁気テープカートリッジは、カートリッジケースに磁気テープを巻装した単一若しくは複数のリールを回転可能に収容してなり、前記磁気テープとして、本発明の磁気テープを用いることを特徴とする。
【0054】
[磁気記録再生装置]
本発明の磁気テープは線記録密度100kfci以上で、記録トラック幅と再生トラック幅の差が16μm以下の磁気記録再生装置で使用された場合にとくに顕著な効果が奏され、記録トラック幅と再生トラック幅の差が10μm以下の磁気記録再生装置では、更に顕著な効果がえられる。
【0055】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る磁気記録再生装置の詳細について説明する。参照する図面において、図9は、本発明の一実施の形態に係る磁気記録再生装置を概念的に示す構成図、図10は、同じくこの磁気記録再生装置に使用される磁気テープカートリッジを示す分解斜視図、図11(a)は、同じく磁気記録再生装置に使用されるドライブリール(巻取リール)を示した斜視図、図11(b)は、図11(a)のb−b線部分拡大断面図である。本実施形態では、テープ状記録媒体が1つのカートリッジリール(送出リール)に巻装された磁気テープカートリッジと、この磁気テープカートリッジが装填される磁気テープドライブ(テープドライブ)とで構成される磁気記録再生装置について説明する。
【0056】
図9に示すように、磁気記録再生装置51は、磁気テープカートリッジ60と、磁気テープドライブ70とで構成されている。このような磁気記録再生装置51は、磁気テープカートリッジ60に巻かれた本発明の磁気テープとしての磁気テープMTを、受け側となる磁気テープドライブ70のドライブリール71に巻き取りつつ、磁気テープMTへの情報の記録または、磁気テープMTに記録された情報の再生を行うものである。
【0057】
図10に示すように、磁気テープカートリッジ60は、LTO規格に準拠しており、下ハーフ52Bと上ハーフ52Aとに分割構成されたカートリッジケース52を有している。そして、このカートリッジケース52の内部に、予め本発明の磁気テープMTが巻装された単一のカートリッジリール61、このカートリッジリール61の回転をロック状態に保つためのリールロック54及び圧縮コイルばね55、カートリッジリール11のロック状態を解除するためのリリースパッド56、下ハーフ52B及び上ハーフ52Aに跨ってカートリッジケース52の一側面に形成された磁気テープ引出口52Cを開閉するスライドドア52D、このスライドドア52Dを磁気テープ引出口52Cの閉位置に付勢するねじりコイルばね57、誤消去防止爪58、磁気テープ引出口2Cの近傍に形成されたリーダピン格納部59などで構成されている。そして、磁気テープMTの先端部にはリーダーテープLTが接合されている。図2に示した磁気テープMTは、リーダーテープLTを表している。
【0058】
このような磁気テープカートリッジ60は、図9に示すように、磁気テープドライブ70に装填されて、リーダーブロック81によりリーダーテープLTが引き出され、磁気テープドライブ70のドライブリール71のコア部72に設けられた凹部73に、前記リーダーブロック81が嵌入される。これにより、磁気テープカートリッジ60のリーダーテープLTがドライブリール71のコア部72に巻き取り可能となる。
【0059】
リーダーテープLTは長尺に形成されており、本実施の形態では、磁気テープドライブ70のドライブリール71のコア部72に対して、少なくとも3巻き分だけ巻き付け可能な長さを有している。リーダーテープLTは、好ましくは0.5〜5.0m、好ましくは、0.9mの長さを有するものが用いられる。
【0060】
次に、磁気テープドライブ70について説明する。
磁気テープドライブ70は、図9に示すように、スピンドル74と、このスピンドル74を駆動するためのスピンドル駆動装置75と、磁気ヘッドHと、ドライブリール71と、このドライブリール71を駆動するための巻取リール駆動装置76と、制御装置77とを備えている。
また、磁気テープドライブ70は、前記磁気テープカートリッジ60のリーダーテープLT先端に設けられたリーダピン80(図10参照)に係合可能なリーダーブロック81を有しており、このリーダーブロック81は、引出ガイド82等を含む図示しない引出機構により、磁気テープカートリッジ60側に移送されるようになっている。
【0061】
磁気テープMTに対し、データの記録/再生を行う際は、スピンドル駆動装置75と巻取リール駆動装置76とが、スピンドル74とドライブリール71とを回転駆動させることによって、磁気テープMTを搬送する。
【0062】
ドライブリール71は、図11(a)(b)に示すように、下側のフランジ部71aの上面に等間隔で放射状の溝部21bが形成されている。このような溝部71bは、ドライブリール71に磁気テープMTが巻き取られる際に同伴されるエアーを排出するための排出路として機能するようになっている。
【0063】
このような磁気テープドライブ70の動作について説明する。
磁気テープカートリッジ60が図9に示すように磁気テープドライブ70に装着されると、引出ガイド82(図10参照)がリーダピン80を引き出して、磁気ヘッドHを介してドライブリール71まで移送し、リーダーブロック81をドライブリール71のコア部72の凹部73へ嵌入させる。なお、凹部73には、リーダーブロック81に係合し、リーダーブロック81が凹部23から飛び出すのを防止する図示しない係止部が設けられている。
【0064】
そして、スピンドル駆動装置75と巻取リール駆動装置76とが制御装置77の制御により駆動され、カートリッジリール61からドライブリール71へ向けてリーダーテープLTおよび磁気テープMTが搬送されるように、スピンドル74とドライブリール71とが同方向に回転される。これにより、ドライブリール71にリーダーテープLTが巻き取られ、その後、磁気テープMTがドライブリール71に巻き取られつつ、磁気ヘッドHによって、磁気テープMTへの情報の記録または磁気テープMTに記録された情報の再生が行われる。
【実施例】
【0065】
以下に本発明を具体的実施例で詳細に説明するが、本発明はこの実施例に限定されるべきものではない。なお実施例中の「部」の表示は「質量部」を示す。
【0066】
[実施例1]
1.磁性層用塗料液の調製
強磁性針状金属粉末 100部
組成(at%):Fe/Co/Al/Y=67/20/8/5
表面処理層:Al23,Y23
抗磁力(Hc):183kA/m
結晶子サイズ:12.5nm
長軸径:45nm
針状比:6
BET比表面積(SBET):60m2/g
飽和磁化(σs):140A・m2/kg(140emu/g)
ポリウレタン樹脂 12部
分岐側鎖含有ポリエステルポリオール/ジフェニルメタンジイソシアネート系、親水性極性基:−SO3Na=70eq/ton含有
フェニルホスホン酸 3部
α−Al23(粒子サイズ0.06μm) 2部
カーボンブラック(粒子サイズ 20nm) 2部
シクロヘキサノン 110部
メチルエチルケトン 100部
トルエン 100部
ブチルステアレート 2部
ステアリン酸 1部
【0067】
2.非磁性層用塗料液の調製
非磁性無機質粉末 85部
α−酸化鉄
表面処理層:Al23,SiO2
長軸径:0.15μm
タップ密度:0.8g/ml
針状比:7
BET比表面積(SBET):52m2/g
pH8
DBP吸油量:33g/100g
カーボンブラック 20部
DBP吸油量:120ml/100g
pH:8
BET比表面積(SBET):250m2/g
揮発分:1.5%
ポリウレタン樹脂 12部
分岐側鎖含有ポリエステルポリオール/ジフェニルメタンジイソシアネート系、親水性極性基:−SO3Na=70eq/ton含有
アクリル樹脂 6部
ベンジルメタクリレート/ダイアセトンアクリルアミド系、
親水性極性基:−SO3Na=60eq/ton含有
フェニルホスホン酸 3部
α−Al23(平均粒径0.2μm) 1部
シクロヘキサノン 140部
メチルエチルケトン 170部
ブチルステアレート 2部
ステアリン酸 1部
【0068】
上記磁性層、非磁性層を形成する各成分をそれぞれオープンニーダで混練したのち、サンドミルを用いて分散させた。得られたそれぞれの分散液に3官能性低分子量ポリイソシアネート化合物(日本ポリウレタン製 コロネート3041)を6部、メチルエチルケトン40部を加え、さらに20分間撹拌混合した後、1μmの平均孔径を有するフィルターを用いて濾過し、磁性塗料および非磁性塗料を調製した。
【0069】
3.バック層用塗料液の調製
混練物1
カーボンブラックA 粒径 40nm 100部
ニトロセルロース RS1/2 50部
ポリウレタン樹脂 40部
(ガラス転移温度: 50℃)
分散剤 オレイン酸銅 5部
銅フタロシアニン 5部
沈降性硫酸バリウム 5部
メチルエチルケトン 500部
トルエン 500部
上記をロールミルで予備混練した後、
混練物2
カーボンブラック B SSA 8.5m2/g 100部
平均粒径 270nm、DBP吸油量 36ml/100g、pH10
ニトロセルロース RS1/2 40部
ポリウレタン樹脂 10部
メチルエチルケトン 300部
トルエン 300部
上記混練物1と2とをサンドグラインダーで分散し、完成後、以下を添加した。
ポリエステル樹脂 5部
ポリイソシアネート 5部
以上を加えて、バック層用塗料液を調整した。
【0070】
4.磁気テープの作製
得られた磁性層用塗料液、非磁性層用塗料液を、ポリエチレンナフタレート(PEN)支持体(厚さ:6.0μm、長さ(MD)方向のヤング率:800Kg/mm2(7.84GPa)、巾(TD)方法のヤング率:750Kg/mm2(7.35GPa)、磁性層塗布側の中心線平均表面粗さRa(カットオフ値:0.25mm):2nm)上に非磁性層、磁性層の順に乾燥後の厚みがそれぞれ1.5μm、0.1μmとなるよう同時重層塗布した。次いで、磁性層がまだ湿潤状態にあるうちに300mTの磁力をもつコバルト磁石と150mTの磁力をもつソレノイドを用いて配向処理を行った。その後、乾燥させることにより磁性層を形成した。
その後、支持体の他方の側(磁性層とは反対側)に、上記バック層用塗料を乾燥後の厚さが、0.5μmとなるように塗布し、乾燥してバック層を形成した。支持体の一方の面に磁性層そして他方の面にバック層がそれぞれ設けられた磁気テープ用のロールを得た。
上記ロールを、金属ロールのみから構成される7段のカレンダーで線圧:300Kg/cm(294kN/m)、温度90℃で表面平滑化処理を行った後、70℃48時間、加熱処理を行い、1/2インチ巾にスリットし、磁気テープを作製した。
得られた磁気テープを、前記実施形態で説明した磁気テープの巻取り装置に装着し、巻き取った。
【0071】
巻き取った磁気テープを用い、図9〜11に示すような磁気テープカートリッジに巻き込んだ。磁気テープは580m巻き込んだ。
【0072】
[実施例2]
実施例1の磁気テープの作製において、磁性層用塗料液に添加するカーボンブラックの量を1.5部に変更した以外は同様にして本発明に従う磁気テープを作製した。
【0073】
[比較例1]
実施例1の磁気テープの作製において、前記実施形態で説明した巻取り装置を使わないこと以外は同様にして磁気テープを作製した。
【0074】
[比較例2]
実施例1の磁気テープの作製において、磁性層塗料液に添加するカーボンブラックの量を1部に変更した以外は同様にして磁気テープを作製した。
【0075】
[比較例3]
実施例1の磁気テープの作製において、磁性層塗料液に添加するカーボンブラックの量を0.8部に変更し、前記実施形態で説明した巻き取り装置を使わないこと以外は同様にして磁気テープを作製した。
【0076】
[磁気記録再生システムの組み立て]
(1)薄膜磁気ヘッド
記録ヘッド:
構造:2ターン薄膜コイルをCo系アモルファス磁性薄膜ヨークで挟持したインダクティブヘッドである。トラック幅は24μm、ギャップ長は1.0μmである。
再生ヘッド:
構造:両シールド型シャントバイアスMR(磁気抵抗型)ヘッドである。MR素子は、Fe/Ni(パーマロイ)合金薄膜である。ショルダー部の部材はAl23/TiCである。トラック幅は12μm、シールド間隔は0.45μmである。
(2)磁気記録再生システムの組み立て
記録再生ヘッドをIBM社製LTOドライブ(1/2インチカートリッジ磁気テープ記録装置)に装着し、テープスピード4m/秒の磁気記録再生システムを作成した。
【0077】
[磁気テープカートリッジの評価]
実施例1、比較例1〜3の磁気テープカートリッジを用いて以下の評価を行った。
(1)磁気テープの単位長さあたりの蛇行部の変位量
測定点同士の間隔を2.5cmとして、前記方法に準じて測定した。
(2)磁性層の摩擦係数
温度23±2℃、湿度50±5%の環境下において、直径7.0mmのAl23/TiC製シリンダー(Ra=50±10nm)に、テープを全巻き角度が170°から180°で磁気面を内側にして巻きつける。外側のテープの一端にF1=1.0Nの力を加え、もう片方の端に直線スライドに載せたフォースゲージを付ける。スライドを速度1mm/秒で動かすのに必要な力F2を測定する。摩擦係数γは以下の式で求められる。
γ=ln(F2/F1)(1/θ) θ:ラジアン単位の巻き付け角度
(3)巻き姿
リールに巻かれたテープの巻き姿を目視で観察し、以下の5段階でランク分けした。
A・・・飛び出し部が全く見られない。
B・・・飛び出し部が数箇所ある。
C・・・飛び出し部が約1/3を占める。
D・・・飛び出し部が半数以上を占める。
E・・・全体に渡り飛び出しが発生している。
(4)走行特性
a)上記の磁気記録再生システムに実施例及び比較例の磁気テープを装着してテープ全長を5000の繰り返し走行を行った。そして磁気テープの全長に渡って再生出力を測定し、走行前後における出力低下率を求めた。
b)上記の磁気記録再生システムに実施例及び比較例の磁気テープを装着して繰り返し走行を行ない(完走:50000回)、エラーが発生した時のパス回数を測定し、磁気テープの走行特性を評価した。
なお、上記a)及びb)のいずれの場合にも磁気テープのシステム内(ドライブ内)の走行時のテンションは1.0Nであるとする。
以上の評価の結果を表1に示す。
【0078】
【表1】

【0079】
実施例1および2は、磁気テープの巻き取り時に、該磁気テープを幅方向に変位して巻き取る巻取制御を行ったことにより、蛇行量の変位が抑制され、磁気テープの長手方向における25mmあたりの蛇行部の変位量を0.05mm以下に抑えることができた。また実施例1および2は、磁性層のAl23/TiC部材に対する摩擦係数が本発明で規定する範囲にあるので、巻き姿が良好であり、ドライブ走行による出力低下もなく、エラー発生もない優れた磁気テープであることが分かる。
一方、比較例1の磁気テープは、巻き取り時において、磁気テープを幅方向に変位して巻き取る巻取制御が行われなかったため、巻き取り前の磁気テープの蛇行量が巻き取り時に矯正されず、蛇行部の変位量が0.05mmより大きくなってしまった。したがって比較例1の磁気テープは、巻き姿が劣るため、ドライブで繰り返し走行させるとオフトラックによる出力低下及びエラー劣化が発生する。比較例2は、蛇行部の変位量が0.05mm以下であり、巻き姿は良好であるが、摩擦係数が高いため走行特性が不十分であり、出力低下及びエラー発生は比較例1より更に劣る。また、比較例3は、蛇行部の変位量が0.05mmを超え、摩擦係数が更に高いため、巻き姿は悪く、走行特性も最も劣る。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】磁気テープの巻取装置の一実施形態を説明する構成図である。
【図2】磁気テープの蛇行部を測定する測定装置を示す構成図である。
【図3】リニアステージを下方側から見た状態を示す図である。
【図4】磁気テープの一部に生じている蛇行部の測定を説明する図である。
【図5】巻取工程前の磁気テープにおける蛇行の状態を示すグラフである。
【図6】図5の磁気テープに本発明における磁気テープの巻取方法を実施して巻き取った磁気テープの状態を示すグラフである。
【図7】図5の磁気テープに本発明における磁気テープの巻取方法を実施しないで巻き取った磁気テープの状態を示すグラフである。
【図8】磁気テープの変位を測定する測定器を模式的に示した図である。
【図9】本発明の一実施の形態に係る磁気記録再生装置を概念的に示す構成図である。
【図10】同じくこの磁気記録再生装置に使用される磁気テープカートリッジを示す分解斜視図である。
【図11】(a)は、同じく磁気記録再生装置に使用されるドライブリールを示した斜視図、(b)は、図3(a)のb−b線部分拡大断面図である。
【図12】磁気テープの長手方向に対して発生した蛇行部を説明するための図である。
【符号の説明】
【0081】
10 磁気テープの巻取装置
11 テープ巻体
12 テープガイド部
13 テープ巻取部
14 アクチュエータ
20 制御部
25 検尺機
51 磁気記録再生装置
60 磁気テープカートリッジ
61 カートリッジリール(送出リール)
70 磁気テープドライブ
71 ドライブリール(巻取リール)
H 磁気ヘッド
LT リーダーテープ
MT 磁気テープ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非磁性支持体上に少なくとも磁性層を設けた磁気テープにおいて、前記磁気テープの25mmあたりの蛇行部の変位量が0.05mm以下であり、かつ前記磁性層のAl23/TiC部材に対する摩擦係数が0.30以下であることを特徴とする磁気テープ。
【請求項2】
下記の測定条件によって測定された蛇行部の変位量によって特定される請求項1に記載の磁気テープ。
(蛇行部の変位量の測定条件)前記磁気テープを支持面上に支持させ、前記支持面上の前記磁気テープに光を照射するとともに、前記光を前記磁気テープを介して受光部によって検出する場合に、前記受光部を保持する駆動手段を、前記支持面に支持された前記磁気テープの一方の端部から他方の端部へ至る直線上を移動させて、前記駆動手段の移動方向に対して垂直方向に配列された複数の受光素子によって前記光源から発せられた光を検出して蛇行部の変位量を測定する。
【請求項3】
前記非磁性支持体上に、実質的に非磁性である下層と強磁性粉末を結合剤中に分散してなる磁性層とをこの順に設けたことを特徴とする請求項1または2に記載の磁気テープ。
【請求項4】
前記非磁性支持体の一方の面に、実質的に非磁性である下層と強磁性粉末を結合剤中に分散してなる磁性層とをこの順に設け、かつ前記非磁性支持体の他方の面にバック層を設けたことを特徴とする請求項3に記載の磁気テープ。
【請求項5】
カートリッジケースに磁気テープを巻装した単一若しくは複数のリールを回転可能に収容してなる磁気テープカートリッジにおいて、前記磁気テープが、請求項1〜4のいずれかに記載の磁気テープであることを特徴とする磁気テープカートリッジ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−59393(P2006−59393A)
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−237403(P2004−237403)
【出願日】平成16年8月17日(2004.8.17)
【出願人】(000005201)富士写真フイルム株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】