説明

磁気テープ分別装置

【課題】 使用済みの磁気テープカセットに対して、カセットを分解することなく、データを消去すると共にテープとカセットとを短時間で分別することができる磁気テープ分別装置を提供する。
【解決手段】 カセットを保持するカセットホルダ48と、カセットホルダ48に保持されたカセット内から磁気テープを引き出して、磁気テープの巻取りを行なう巻取り部56と、巻取り部56によって引き出された磁気テープの記録を消去する消去部52と、巻取り部56を、カセット内の磁気テープをつかむ位置と、カセット201から引き出した磁気テープ206を巻取る位置とに、上下に移動させる巻取りリール上下移動機構と、カセットホルダを、処理前の磁気テープカセットを受け取る位置と、分別したカセットを排出する位置と、カセットからの磁気テープの引き出し・巻取りを行なう位置とに、前後に移動させるホルダ前後移動機構と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用済み磁気テープカセットの処分を行う際に、磁気テープとカセットとを分別して、その後の廃棄またはリサイクル処理を簡単にすることができるようにする磁気テープ分別装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、磁気テープカセットが使用済みになると、カセットを分解してテープ部分とカセット部分とを手作業で切り離す作業を行っており、その作業が大変であり時間がかかるという問題があった。
【0003】
また、磁気テープを巻き込む装置を応用し、磁気テープの走行を反対にして、引き出す装置もあったが、高価であるという問題があった。
【0004】
また、磁気テープに記録されたデータは、セキュリティ、著作権等の観点から消去することが望まれており、その消去作業が大変であるという問題があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、かかる課題に鑑みなされたもので、カセットを分解することなく、データを消去すると共にテープとカセットとを短時間で分別することができる磁気テープ分別装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述した目的を達成するために、請求項1記載の発明は、磁気テープカセットのカセットと該カセット内でリールに巻き取られている磁気テープとを分別する磁気テープ分別装置であって、カセットを保持するカセットホルダと、カセットホルダに保持されたカセット内から磁気テープを引き出して、磁気テープの巻取りを行なう巻取り部と、巻取り部によって引き出された磁気テープの記録を消去する消去部と、巻取り部を、カセット内の磁気テープをつかむ位置と、カセットから引き出された磁気テープを巻取る位置とに、上下に移動させる巻取りリール上下移動機構と、カセットホルダを、処理前の磁気テープカセットを受け取りまたは分別したカセットを排出する位置と、カセットからの磁気テープの引き出し・巻取りを行なう位置とに、前後に移動させるホルダ前後移動機構と、を備えることを特徴とする。
【0007】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の前記巻取り部が、前記カセット内の全てのリールに巻き取られている磁気テープを同時に巻取ることを特徴とする。
【0008】
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載のものにおいて、前記巻取り部で巻取り中の磁気テープに所定以上の張力が作用したときに、前記磁気テープの切断を行なうカッターをさらに備えることを特徴とする。
【0009】
請求項4記載の発明は、請求項3記載のものにおいて、前記カッターの切断動作を不能にするように切り替える切替手段をさらに備えることを特徴とする。
【0010】
請求項5記載の発明は、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の前記巻取り部が、磁気テープがその外周面に巻き取られる巻取り・解除シャフトを有しており、該巻取り・解除シャフトは、縮径可能であり、前記巻取りが終了した後に縮径して、その外周側に巻き取られた磁気テープを解放することを特徴とする。
【0011】
請求項6記載の発明は、請求項5記載の前記巻取り部が、さらに、巻取り・解除シャフトの外周側かつ後方側に配設された解除ホルダと、巻取り・解除シャフトの内周側に配設されて巻取り・解除シャフトを拡径状態に支持するロックピンと、を有しており、さらに、解除ホルダとロックピンとを前進させる巻取りリールリリース機構をさらに備え、ロックピンが前進したときに、巻取り・解除シャフトが縮径されることを特徴とする。
【0012】
請求項7記載の発明は、請求項1ないし6のいずれか1項に記載のものにおいて、前記巻取り部が磁気テープを引き出す前に、カセット内のリール内に進入して該リールに嵌合するプレ巻取りシャフトと、該プレ巻取りシャフトを回転させるプレ巻取りモータと、を有するプレ巻取り部をさらに備えることを特徴とする。
【0013】
請求項8記載の発明は、請求項7記載の前記プレ巻取り部が、プレ巻取りモータの出力軸に連結される駆動ギヤと、駆動ギヤと噛み合いプレ巻取りシャフトに連結される従動ギヤと、を有しており、該プレ巻取り部は、常時、カセットホルダによって保持されたカセットの方向へと付勢されており、カセットホルダがカセットからの磁気テープの引き出し・巻取りを行なう位置にあるときに、駆動ギヤと従動ギヤとの噛み合いが外れることを特徴とする。
【0014】
請求項9記載の発明は、請求項1ないし8のいずれか1項に記載の前記ホルダ前後移動機構が、カセットホルダを、処理前の磁気テープカセットを受け取る位置から、カセットからの磁気テープの引き出し・巻取りを行なう位置へと移動させる間に、カセットホルダに保持されたカセットの蓋を開放することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、巻取り部が磁気テープをカセット内から引き出し、引き出した磁気テープを巻き取っていくために、磁気テープをカセットと分離することができる。こうして、磁気テープとカセットとを分別してその後の廃棄またはリサイクル処理を簡単に行なうことができるようになる。
【0016】
巻取りリール上下移動機構が、巻取り部を上下に移動させるために、巻取り部の磁気テープの引き出しを確実に行なうことができる。
【0017】
また、ホルダ前後移動機構が、カセットホルダを前後に移動させるために、磁気テープカセットの受け取りまたは排出と磁気テープ処理とを確実に行なうことができて、順次自動的に複数の磁気テープカセットの分別処理を行なうことができる。
【0018】
磁気テープを巻取り部で巻き取ってしまうので、コンパクトに処理することができ、また、巻取る際に、消去部が記録を消去するために、消去処理を迅速に行なうことができる。
【0019】
請求項2記載の発明によれば、巻取り部が、同時にカセット内の全てのリールに巻き取られていた磁気テープを巻取るために、処理を迅速に行なうことができる。
【0020】
請求項3記載の発明によれば、カセット内のリールに巻き取られていた磁気テープがすべて巻き解かれた場合に、それ以上に磁気テープを引き出すことができないので、張力が上昇するが、所定以上の張力で作用するカッターが磁気テープを切断することで、巻取りを自動的に終了し、カセットと磁気テープを分離することができる。
【0021】
請求項4記載の発明によれば、カセット内のリールに巻き取られていた磁気テープがすべて巻き解かれた場合に、所定以上の張力で引っ張ると、磁気テープがリールから自動的に外れるようになっている磁気テープカセットを処理するときには、カッターで磁気テープを切断する必要がなく、巻取りを自動的に終了し、磁気テープとカセットとを分離することができる。磁気テープの最後の部分がリールに残らないので、完全に磁気テープとカセットとを分別することができる。
【0022】
請求項5記載の発明によれば、巻取り部による磁気テープの巻取りが終了したときに、その磁気テープを外周面に巻き取った巻取り・解除シャフトが縮径することで、巻き取った磁気テープを解放して、自動的に処分することができる。
【0023】
請求項6記載の発明によれば、巻取りリールリリース機構が、ロックピンと解除ホルダとを前進させることで、解除ホルダが巻取り・解除シャフトに巻き取られた磁気テープを押し出し、さらに、巻取り・解除シャフトが縮径することで、巻き取った磁気テープを解放して、自動的に処分することができる。
【0024】
請求項7記載の発明によれば、巻取り部が磁気テープを引き出す前に、プレ巻取りシャフトが回転するので、カセット内のリールに巻き取られている磁気テープの弛みを除去した後に巻取り部による磁気テープの引き出しを行なうことができ、巻取り部が確実に磁気テープをつかむことができるようになる。
【0025】
請求項8記載の発明によれば、プレ巻取り部は、巻取り部が磁気テープを巻取る際には、駆動ギヤと従動ギヤとが分離しているために、カセット内のリールが回転してプレ巻取りシャフトが回転することによるプレ巻取りモータへ負荷を与えることを防ぐことができる。
【0026】
請求項9記載の発明によれば、ホルダ前後移動機構がカセットホルダを、処理前の磁気テープカセットを受け取る位置から、カセットからの磁気テープの引き出し・巻取りを行なう位置へと移動させる間で、カセットホルダに保持されたカセットの蓋を開放するので、カセットホルダがカセットからの磁気テープの引き出し・巻取りを行なう位置に在るときには、蓋が開いた状態において、磁気テープをカセット内から引き出すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、図面を用いて本発明の実施の形態を説明する。尚、以下の実施形態は本発明を限定するものではない。
【0028】
図1ないし図14は、本発明の磁気テープ分別装置の実施形態を表す図である。磁気テープ分別装置10は、主として、装置上部にあって、処理するべき複数の磁気テープカセットを待機させると共に搬送を行なうコンベアを有するマガジン部12と、マガジン部12からの磁気テープカセットが1つずつ落下されて、処理されるメイン処理部14と、装置下部にあって、カセットと磁気テープとを分別して排出する排出部16と、図示しない制御部とを備えている。
【0029】
処理する磁気テープカセット200は、図15に示すように、カセット本体202とスライド蓋203とからなるカセット201と、カセット201内のリール204,204に巻き取られた磁気テープ206とを有する。スライド蓋203は、カセット本体202に対して軸着され、カセット本体202の開口を開閉可能となっており、内蔵するスプリングによって常時、開口を閉鎖する方向に付勢されている。また、スライド蓋203を閉状態に維持するべく、スライド蓋203の開方向の移動を阻止するストッパー208が側面に設けられており、ストッパー208を押圧すると、スライド蓋203が開方向に回転可能となる。また、カセット201内には通常はリール204,204の磁気テープ206が弛む方向への回転を阻止するための回転阻止機構が内蔵されており、カセット本体202の背面にはリール回転阻止機構を解除するためのピンが挿入可能な孔210が形成されている。
【0030】
磁気テープカセット200は、2つのリールを有するタイプが一般的であるため、2つのリールに適した磁気テープ分別装置10について説明するが、1つしかリールがないものであっても同様に適用できることは勿論である。
【0031】
メイン処理部14は、大別して、マガジン部12からのカセットの受け取り、保持、排出を行なうカセットホルダ部22と、カセット内からの磁気テープの引き出し、記録消去、巻取りカセットからの分離を行なうテープ処理部24と、テープ処理部24の巻取り部56の上下移動を行なわせる巻取りリール上下移動機構26と、カセットホルダ部22の前後移動を行なわせるホルダ前後移動機構28と、巻取り部56に巻き取られる磁気テープの保持を解除させる巻取りリールリリース機構30と、初期のテープの弛みを解除するプレ巻取り部32と、を有している。
【0032】
また、排出部16は、装置下部にある一対のシュート20,20を有している。
【0033】
以下、メイン処理部14について、その構成を詳細に説明する。
【0034】
カセットホルダ部22は、図5に示すように、装置のフロントパネル40に固定された左右のカセットガイド42、42と、フロントパネル40に固定されたガイドピン44、リリースピン45と、フロントパネル40に軸支されたシャフト46と、カセットホルダ48と、を備えている。
【0035】
カセットホルダ48は、図6に示すように、カセット201の前後を挟むことができる形状をなしており、その上方及び下方は開放されており、上方のマガジン部12からの磁気テープカセット200を円滑に受けることができるように、上部には漏斗状のガイド48aが設けられている。さらに、カセットホルダ48には、前記磁気テープカセット200のストッパー208に対応する位置にリリースプレート49が取り付けられている。
【0036】
カセットホルダ48の背面には、フロントパネル40を貫通して装置内部へと延びるレール50が取り付けられており、レール50は、固定のガイドベース51によって前後方向に移動可能に案内されると共に、後述のホルダ前後移動機構28に連結される。こうして、カセットホルダ48は、フロントパネル40に対して接離方向に前後移動可能となっている。ガイドピン44、リリースピン45、シャフト46等は、カセットホルダ48がフロントパネル40に接近すると、カセットホルダ48に形成された孔を貫通して、カセットホルダ48に保持される磁気テープカセット200に対して作用することができるようになっており、リリースピン45は、カセット201に設けられた孔210内に挿入されて、前述のリール回転阻止機構を解除することができ、シャフト46は、一方のリール204内に進入可能となっている。
【0037】
次に、テープ処理部24は、図1及び図7A〜7Cに示すように、主に、消去部52と、カッター54と、下部フロントパネル57に対して上下移動可能及び自転可能となった巻取り部56と、を有している。
【0038】
消去部52は、図8に示すように、アーム60と、アーム60にそれぞれ支持されたガイドローラ62及びマグネット64と、アーム60を付勢するスプリング66と、を有しており、アーム60は、ピン67を支点として下部フロントパネル57に揺動可能に取り付けられている。ガイドローラ62は、カセット201から引き出された磁気テープ206を案内するものであり、マグネット64は引き出されつつある磁気テープ206に接近して、その記録データを消去するためのものである。アーム60は、スプリング66によって、そのガイドローラ62が、走行中の磁気テープ206の張力に対抗する揺動方向へと付勢されている。
【0039】
カッター54は、その基部が下部フロントパネル57に対し固定され、その刃先部分が消去部52のガイドローラ62とマグネット64との間に位置づけられている。前述のようにアーム60がスプリング66によって磁気テープ206の張力に抗しているときには、刃先は磁気テープ206に対して離反しているが、アーム60が磁気テープ206の張力に負けて揺動すると、磁気テープ206に接触して、磁気テープ206を切断することができるようになっている。
【0040】
巻取り部56は、図9A〜Bに示したように、磁気テープ206の巻取りを行なう巻取り・解除シャフト70と、巻取り・解除シャフト70に連結される連結シャフト72と、その出力軸が連結シャフト72に連結される巻取りモータ74と、連結シャフト72の内周側に配設されるロックピン76と、巻取り・解除シャフト70の外周側且つ後方側に配設されてロックピン76にピン77により結合される解除ホルダ78と、ロックピン76を連結シャフト72内で後方へと付勢するスプリング79と、を有している。
【0041】
巻取り・解除シャフト70は、半円弧状の2つの部材70a、70aからなり、その2つの部材の間にはスリット70bが形成されている。
【0042】
ロックピン76と解除ホルダ78とは、連結シャフト72及び巻取り・解除シャフト70に対して軸方向にスライド可能となっている。ロックピン76の先端は、常時は巻取り・解除シャフト70の基部内に位置づけられており、スプリング79の付勢力により、巻取り・解除シャフト70の内径側から巻取り・解除シャフト70の拡径を維持している。一方で、ロックピン76が前進して、巻取り・解除シャフト70の基部から脱出すると、巻取り・解除シャフト70は縮径可能となる(図9C参照)。
【0043】
次に、巻取りリール上下移動機構26は、フロントパネル40及び下部フロントパネル57の直ぐ後方に位置づけられており、図10A〜図10Cに示したように、上下移動用モータ80と、上下移動用モータ80の出力軸に連結されたウォーム82と、ウォーム82に噛み合うウォームホイール84と、ウォームホイール84と一体回転するクランクディスク86と、クランクディスク86に一端が軸着されたクランクロッド88と、クランクロッド88の他端が軸着され、前記巻取り部56の巻取りモータ74が取り付けられるモータブラケット90と、モータブラケット90が上下にスライド可能に案内される一対のレール92,92と、を主として有している。
【0044】
上下移動用モータ80の回転により、クランクディスク86が回転して、クランクロッド88を介してモータブラケット90が上下動し、これにより、巻取り部56が上下動するようになっている。そして、巻取り部56がカセット201内の磁気テープ206をつかむ上部の位置と、カセット201から磁気テープ206を引き出して、巻取る下部の位置とに移動可能となっている。
【0045】
次に、ホルダ前後移動機構28は、図11A〜図11Cに示したように、前後移動用モータ100と、前後移動用モータ100の出力軸に連結されたウォーム102と、ウォーム102に噛み合うウォームホイール104と、ウォームホイール104と一体回転するシャフト106と、シャフト106の上部に取り付けられたカムプレート108と、一端が固定部に軸着されてカムプレート108と関わり合うリンクアーム110と、リンクアーム110に一端が枢着された第2リンクアーム112と、第2リンクアーム112の他端に枢着されたジョイント114と、ジョイント114を後方へと付勢するスプリング115とを主として有している。ジョイント114は、前記カセットホルダ48のレール50に連結される。
【0046】
前後移動用モータ100の回転により、カムプレート108が回転して、リンクアーム110、第2リンクアーム112を介してジョイント114が前後に移動して、これにより、カセットホルダ48が前後動するようになっている。
【0047】
カムプレート108の周面に形成されたカム面は、カセットホルダ48の、最も前進して処理済み磁気テープカセット200を排出する位置(図2の48A)と、該排出する位置よりも若干、後退して未処理磁気テープカセット200を受け取る位置(図2の48B)と、さらに後退してテープの引き出し及び巻取りを行なう位置(図2の48C)と、の3つの異なる前後位置に対応した形状となっている。但し、これらの3つの位置の少なくとも2つの位置は、共通にすることも可能であり、また相対的に周囲の部品が前後運動してもよい。
【0048】
次に、巻取りリールリリース機構30は、図11A〜図11Cに示したように、ホルダ前後移動機構28の前後移動用モータ100と、前後移動用モータ100の出力軸に連結されたウォーム102と、ウォーム102に噛み合うウォームホイール104と、ウォームホイール104と一体回転するシャフト106の部品を共有すると共に、シャフト106の下部に取り付けられたカムプレート128と、一端が固定部に軸着されてカムプレート128と関わり合うリンクアーム130と、リンクアーム130に一端が枢着された第2リンクアーム132と、第2リンクアーム132の他端に枢着されたジョイント134と、ジョイント134を後方へと付勢するスプリング135と、ジョイント134に連結されて、前記巻取りリール上下移動機構26の一対のレール92、92の間に配置されるプッシュプレート136(図10A、図10B参照)と、プッシュプレート136を前後動可能に案内するレール138(図10A、図10B参照)と、を主として有している。プッシュプレート136は、図10B示のように、その上部にU字形状をなした切欠136aが形成されており、該切欠136aに前記巻取り部56が下降した時に、その解除ホルダ78の溝78a(図9A,B参照)が嵌合するようになっている。
【0049】
前後移動用モータ100の回転により、カムプレート128が回転して、リンクアーム130、第2リンクアーム132を介してジョイント134が前後に移動して、これにより、プッシュプレート136が前後動し、解除ホルダ78が追従して前後動する。
【0050】
カムプレート128の周面に形成されたカム面は、解除ホルダ78及びこれに連結されたロックピン76を前進させた位置と、解除ホルダ78及びこれに連結されたロックピン76を後退させた位置と、の2つの異なる前後位置に対応した形状となっている。
【0051】
さらに、プッシュプレート136には、下部フロントパネル57よりも前方に位置づけられるフロントカバー140(図7参照)の基部が連結される。フロントカバー140は、巻取り部56が巻取り中のときに、巻取り・解除シャフト70の前方にあって、磁気テープ206の落下等を防ぐものである。フロントカバー140は、プッシュプレート136の前進により、一緒に前進する。
【0052】
次に、プレ巻取り部32は、図12に示すように、プレ巻取りモータ150と、プレ巻取りモータ150の出力軸に連結された駆動ギヤ152と、該駆動ギヤ152と噛み合う従動ギヤ154と、従動ギヤ154に連結されたプレ巻取りシャフト156と、プレ巻取りシャフト156及び従動ギヤ154を支持するベースプレート158と、ベースプレート158に取り付けられたレール160と、レール160を前後方向に案内する固定のガイドベース162と、ベースプレート158を前方へと付勢するスプリング161と、該ベースプレート158に対して軸着されて、プレ巻取りモータ150を支持するアーム164と、アーム164とベースプレート158との間に設けられて、アーム164を付勢して駆動ギヤ152を従動ギヤ154に噛み合う方向へと付勢するスプリング166と、固定部に固定されて、アーム164に軸着されたローラ167と接触するカムプレート168と、を主として有している。
【0053】
プレ巻取りシャフト156は、カセットホルダ部22のシャフト46と対になっており、これらのシャフト46、156が、それぞれ磁気テープカセット200の一対のリール204のうち対応するリール204内に進入して、嵌合する。
【0054】
但し、ベースプレート158は、スプリング161によって前方へと付勢されているために、プレ巻取りシャフト156は、ホルダ前後移動機構28によって磁気テープカセット200が完全に後退するまでは、前方へと突出しており、磁気テープカセット200がカセットホルダ48に保持されて後退したときに、シャフト46及び巻取り・解除シャフト70よりも先に磁気テープカセット200の対応するリール204内に進入する。そして、プレ巻取りモータ150が回転すると、駆動ギヤ152及び従動ギヤ154がプレ巻取りシャフト156にその回転を伝達するので、磁気テープカセット200の弛みを巻取る。
【0055】
その後、ホルダ前後移動機構28によって磁気テープカセット200が完全に後退すると、ベースプレート158は後方へと押圧され、このときに、アーム164のローラ167がカムプレート168の前後方向に対して傾斜する傾斜面168a(図12(a)参照)によって誘導されるので、アーム164は揺動し、駆動ギヤ152と従動ギヤ154は、離反して噛み合いが外れるようになる。
【0056】
このように、磁気テープカセット200が後退してテープの引き出しを行なう位置にあるときには、駆動ギヤ152と従動ギヤ154との噛み合いは解除されており、よって、プレ巻取りシャフト156は自由に回動可能となる。
【0057】
以上のように構成される磁気テープ分別装置10の作用を説明する。
【0058】
図1に示すパワーボタン,スイッチボタンが作動されると、マガジン部12のコンベアが駆動され、該コンベアによって順次搬送されて最前位置にある磁気テープカセット200が、メイン処理部14のカセットホルダ部22のカセットホルダ48内へと落下する。このとき、カセットホルダ48は、ホルダ前後移動機構28により未処理磁気テープカセット200を受け取る位置(図2の48B)に位置づけられている。
【0059】
カセットホルダ48内に落下した磁気テープカセット200は、カセットガイド42、42によってその底面が受け止められる。この状態で、カセットホルダ48に取り付けられたリリースプレート49が磁気テープカセット200のストッパー208を押圧するので、磁気テープカセット200のスライド蓋203は、開閉可能となる。
【0060】
この状態から、ホルダ前後移動機構28の作動により、カセットホルダ48は後退していく。これに伴って、スライド蓋203は、カセットガイド42によって開かれていく。
【0061】
そして、ホルダ前進移動機構28は、完全にカセットホルダ48を後退させる前に一旦停止させる。このときに、プレ巻取り部32のプレ巻取りモータ150により、プレ巻取りシャフト156が、磁気テープカセット200の一つのリール204内に進入して回転するので、磁気テープ206の弛みが解消されて、カセット本体202の開口端にある磁気テープ206は直線状になる。
【0062】
こうして、カセットホルダ48に保持された磁気テープカセット200が、そのスライド蓋203の開いた状態で後退していくと(図2の48C)、巻取りリール上下移動機構26により上部位置で待機中の巻取り・解除シャフト70のスリット70b内に、磁気テープ206が挿入される(図13(a))。
【0063】
次いで、巻取りリール上下移動機構26が作動して巻取り部56を下降させていくので、磁気テープ206はカセット201から引き出されていく(図13(b))。
【0064】
次いで、巻取り部56は、その巻取りモータ74の作動により、所定の方向に回転を開始する。これによって、カセット201内の2つのリール204、204のそれぞれに分配されて巻き取られていた磁気テープ206は、いずれも巻取り部56の巻取り・解除シャフト70に巻き取られていく。この巻き取り時に、磁気テープ206は、消去部52の近傍を走行して、消去部52のマグネット64に接近するために、磁気テープ206に記録されたデータは消去されていく。
【0065】
巻き取られていた磁気テープ206の巻取り量が初めに少なかった方のリール204において、磁気テープ206がすべて巻き解かれると、それ以上の磁気テープ206の引き出しが不可能となるため、磁気テープ206の張力が大きくなる。すると、消去部52のアーム60が揺動するので、カッター54が磁気テープ206を切断する(図13(c))。一方のリール204の磁気テープ206の巻き取りが終了した後は、他方のリール204の磁気テープ206のみが巻取り・解除シャフト70に巻き取られる。そして、そのリール204から磁気テープ206がすべて巻き解かれると、同様に、磁気テープ206の巻取りが切断される(図13(d))。
【0066】
この時点で、磁気テープカセット200のカセット201と、磁気テープ206とは完全に分離される。
【0067】
両方のリール204の磁気テープ206がなくなったことがセンサにより検出されると、ホルダ前後移動機構28が、カセットホルダ部22のカセットホルダ48を最も前進させてカセットガイド42、42よりもカセット201をさらに前進させると(図2の48A)、カセット201は、カセットホルダ48から落下して、シュート20,20から排出される。同時に、巻取りリールリリース機構30が、プッシュプレート136を前進させるので、ロックピン76が前進して、巻取り・解除シャフト70の拡径状態を解除し、且つ、解除ホルダ78が前進して巻取り・解除シャフト70に巻き取られた磁気テープ206を前方へと押し出し、さらに、フロントカバー140も前方へと退避するので、磁気テープ206は、巻取り・解除シャフト70から落下して排出される。
【0068】
そして、巻取りリール上下移動機構26により、巻取り部56を上昇させて、同時に、巻取りモータ74が巻取り部56を回転させて、巻取り・解除シャフト70のスリット70bを水平になるようにして、次の磁気テープカセット200の磁気テープを待機する状態へと戻る。
【0069】
また、ホルダ前後移動機構28がカセットホルダ48を、未処理磁気テープカセット200を受け取る位置(図2の48B)へと移動させる。
【0070】
以上の手順を繰り返すことにより、順次、マガジン部12に溜められた複数の磁気テープカセット200の分別及び記録消去処理を行なっていくことができる。
【0071】
尚、以上の実施形態では、カセット201内のリール204の磁気テープ206がすべて巻き解かれると、消去部52が揺動して、カッター54が磁気テープ206を切断するようになっていたが、これに限るものではなく、カセット201内のリール204への磁気テープ206の連結が、所定以上の張力により解除されるようになっている場合には、消去部52が揺動せずに、巻取り部56による巻取り力によって、磁気テープ206とリール204との連結を解除させた方が、磁気テープ206を完全にカセット201と分離できるので、好ましい。このような磁気テープカセットの処理を行なう場合には、消去部52が揺動しないように、切断阻止切替機構170を設けるとよい。
【0072】
切断阻止切替機構170は、図14に示したように、ソレノイド172と、フロントパネル40にピン173によって軸着されるストッパーアーム174と、ストッパーアーム174の回転方向を付勢するスプリング176と、を主として有している。ソレノイド172の励磁を解除すると、スプリング176の付勢力によって、ストッパーアーム174が回転してその先端のストッパー部174aが消去部52のアーム60に係止し、他方、ソレノイド172を励磁すると係止が解除される。ストッパー部174aが消去部52のアーム60に係止すると、アーム60が揺動不能となるので、前述のような、カッター54による磁気テープ206の切断は行なわれない。上述のようにカッター54を使用しないで磁気テープ206とカセット201を分離するとき及び電源がオフになったときには、切断阻止切替機構170によってカッター54の使用を不可とすることができる。
【0073】
以上のように、本実施形態によれば、磁気テープカセット200を順次処理して、カセットと磁気テープに分離することができるので、それぞれをリサイクルするか、または廃棄することができる。
【0074】
磁気テープカセット200の一対のリール204、204に磁気テープ206がどのように分配されて処理されようとも関係なく、両方のリール204、204から磁気テープ206を引き出して、巻き取ることができる。
【0075】
また、両方のリール204、204から同時に磁気テープ206を引き出して処理するために、迅速に処理を行なうことができる。
【0076】
引き出す際に、磁気テープ206のデータが消去されるために、消去のための処理も迅速に行なうことができる。
【0077】
また、磁気テープ206は、巻取り部56に巻き取られるために、コンパクトな形で次の処理を行ないやすい形態で、分別することができる。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明の実施形態による磁気テープ分別装置の全体正面図である。
【図2】本発明の実施形態による磁気テープ分別装置の全体側面図である。
【図3】本発明の実施形態による磁気テープ分別装置のメイン処理部を主として表す平面図である。
【図4】本発明の実施形態による磁気テープ分別装置のメイン処理部を主として表す側面図である。
【図5】本発明の実施形態によるカセットホルダ部を表す図であり、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は側面図である。
【図6】本発明の実施形態によるカセットホルダを表す図であり、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は側面図である。
【図7A】本発明の実施形態によるテープ処理部の平面図である。
【図7B】本発明の実施形態によるテープ処理部の正面図である。
【図7C】本発明の実施形態によるテープ処理部の側面図である。
【図8】本発明の実施形態による消去部を表す図であり、(a)は正面図、(b)は部分断面平面図である。
【図9A】本発明の実施形態による巻取り部の部分断面を含む平面図である。
【図9B】本発明の実施形態による巻取り部の部分断面を含む平面図である。
【図9C】本発明の実施形態による巻取り部の一部を示す断面図である。
【図10A】本発明の実施形態による巻取りリール上下移動機構の平面図である。
【図10B】本発明の実施形態による巻取りリール上下移動機構の正面図である。
【図10C】本発明の実施形態による巻取りリール上下移動機構の側面(部分断面を含む)図である。
【図11A】本発明の実施形態によるホルダ前後移動機構及び巻取りリールリリース機構の平面図である。
【図11B】本発明の実施形態によるホルダ前後移動機構及び巻取りリールリリース機構の正面図である。
【図11C】本発明の実施形態によるホルダ前後移動機構及び巻取りリールリリース機構の側面図である。
【図12】本発明の実施形態によるプレ巻き取り部を表す図であり、(a)はその正面図、(b)は平面図、(c)は側面(部分断面を含む)図である。
【図13】本発明の実施形態の作用を説明するための主要部の図である。
【図14】本発明の実施形態による切断阻止切替機構を表す正面図である。
【図15】処理する磁気テープカセットの斜視図であり、(a)はスライド蓋が閉じた状態、(b)はスライド蓋が開いた状態を示す。
【符号の説明】
【0079】
10 磁気テープ分別装置
22 カセットホルダ部
26 巻取りリール上下移動機構
28 ホルダ前後移動機構
30 巻取りリールリリース機構
32 プレ巻取り部
48 カセットホルダ
52 消去部
54 カッター
56 巻取り部
70 巻取り・解除シャフト
76 ロックピン
78 解除ホルダ
150 プレ巻取りモータ
152 駆動ギヤ
154 従動ギヤ
156 プレ巻取りシャフト
170 切断阻止切替機構
200 磁気テープカセット
201 カセット
206 磁気テープ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気テープカセットのカセットと該カセット内でリールに巻き取られている磁気テープとを分別する磁気テープ分別装置であって、
カセットを保持するカセットホルダと、
カセットホルダに保持されたカセット内から磁気テープを引き出して、磁気テープの巻取りを行なう巻取り部と、
巻取り部によって引き出された磁気テープの記録を消去する消去部と、
巻取り部を、カセット内の磁気テープをつかむ位置と、カセットから引き出された磁気テープを巻取る位置とに、上下に移動させる巻取りリール上下移動機構と、
カセットホルダを、処理前の磁気テープカセットを受け取りまたは分別したカセットを排出する位置と、カセットからの磁気テープの引き出し・巻取りを行なう位置とに、前後に移動させるホルダ前後移動機構と、
を備えることを特徴とする磁気テープ分別装置。
【請求項2】
前記巻取り部は、前記カセット内の全てのリールに巻き取られている磁気テープを同時に巻取ることを特徴とする請求項1記載の磁気テープ分別装置。
【請求項3】
前記巻取り部で巻取り中の磁気テープに所定以上の張力が作用したときに、前記磁気テープの切断を行なうカッターをさらに備えることを特徴とする請求項1または2記載の磁気テープ分別装置。
【請求項4】
前記カッターの切断動作を不能にするように切り替える切替手段をさらに備えることを特徴とする請求項3記載の磁気テープ分別装置。
【請求項5】
前記巻取り部は、磁気テープがその外周面に巻き取られる巻取り・解除シャフトを有しており、該巻取り・解除シャフトは、縮径可能であり、前記巻取りが終了した後に縮径して、その外周側に巻き取られた磁気テープを解放することを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の磁気テープ分別装置。
【請求項6】
前記巻取り部は、さらに、巻取り・解除シャフトの外周側かつ後方側に配設された解除ホルダと、巻取り・解除シャフトの内周側に配設されて巻取り・解除シャフトを拡径状態に支持するロックピンと、を有しており、
さらに、解除ホルダとロックピンとを前進させる巻取りリールリリース機構をさらに備え、ロックピンが前進したときに、巻取り・解除シャフトが縮径されることを特徴とする請求項5記載の磁気テープ分別装置。
【請求項7】
前記巻取り部が磁気テープを引き出す前に、カセット内のリール内に進入して該リールに嵌合するプレ巻取りシャフトと、該プレ巻取りシャフトを回転させるプレ巻取りモータと、を有するプレ巻取り部をさらに備えることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載の磁気テープ分別装置。
【請求項8】
前記プレ巻取り部は、プレ巻取りモータの出力軸に連結される駆動ギヤと、駆動ギヤと噛み合いプレ巻取りシャフトに連結される従動ギヤと、を有しており、
該プレ巻取り部は、常時、カセットホルダによって保持されたカセットの方向へと付勢されており、
カセットホルダがカセットからの磁気テープの引き出し・巻取りを行なう位置にあるときに、駆動ギヤと従動ギヤとの噛み合いが外れることを特徴とする請求項7記載の磁気テープ分別装置。
【請求項9】
前記ホルダ前後移動機構が、カセットホルダを、処理前の磁気テープカセットを受け取る位置から、カセットからの磁気テープの引き出し・巻取りを行なう位置へと移動させる間に、カセットホルダに保持されたカセットの蓋を開放することを特徴とする請求項1ないし8のいずれか1項に記載の磁気テープ分別装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【図10A】
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【図10B】
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【図10C】
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【図11A】
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【図11B】
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【図11C】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2006−68707(P2006−68707A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−258516(P2004−258516)
【出願日】平成16年9月6日(2004.9.6)
【出願人】(000185329)オタリ株式会社 (8)
【Fターム(参考)】