説明

磁気ディスク装置の製造方法

【課題】筐体内の低密度気体の濃度を簡便に評価することが可能な磁気ディスク装置の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の磁気ディスク装置の製造方法では、ガス注入口11iから筐体10内に置換用の気体を注入し、ガス排出口11eから排出される気体をチャンバ57内に導入し、チャンバ57内に音を発生させ、チャンバ57内を伝わる音の音圧を検出し、当該音の音圧に基づいて筐体10内の置換用の気体の濃度を評価する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気ディスク装置の製造方法に関し、特には、筐体内の気体の濃度を評価する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気ディスク装置に備えられる磁気ディスクには、同心円状に配列する複数のトラックが形成されており、各トラックには、磁気ヘッドの位置制御に利用されるサーボデータが書き込まれている。
【0003】
こうしたサーボデータを磁気ディスクに書き込む方法の一つとして、筐体内に収納された磁気ヘッド及びアクチュエータを制御することで磁気ディスクにサーボデータを書き込む、セルフサーボライト(SSW:Self Servo Write)が知られている。
【0004】
特許文献1には、サーボデータ書き込み中の磁気ヘッドの揺れを抑制するため、筐体内にHe(ヘリウム)等の低密度気体が充填された状態でセルフサーボライトを行う技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−129529号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記従来技術では、筐体内の低密度気体の濃度を評価するために音速計測器や酸素センサが用いられている。しかしながら、音速計測器では構成が複雑で高価という問題があり、酸素センサでは寿命が短いという問題があった。
【0007】
本発明は、上記実情に鑑みて為されたものであり、筐体内の低密度気体の濃度を簡便に評価することが可能な磁気ディスク装置の製造方法を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明の磁気ディスク装置の製造方法は、ガス注入口及びガス排出口が形成された筐体を有する磁気ディスク装置の製造方法であって、前記ガス注入口から前記筐体内に置換用の気体を注入し、前記ガス排出口から排出される気体をチャンバ内に導入し、前記チャンバ内に音を発生させ、前記チャンバ内を伝わる前記音の音圧を検出し、前記音の音圧に基づいて、前記筐体内の前記置換用の気体の濃度を評価する、ことを特徴とする。
【0009】
また、本発明の磁気ディスク装置の製造方法は、ガス注入口及びガス排出口が形成された筐体を有する磁気ディスク装置の製造方法であって、前記ガス注入口から前記筐体内に置換用の気体を注入し、前記筐体内に音を発生させ、前記筐体内を伝わる前記音の音圧を検出し、前記音の音圧に基づいて、前記筐体内の前記置換用の気体の濃度を評価する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明者らが研究を重ねた結果、空気中を伝わる音とHe中を伝わる音とでは、比較的高音域での音圧の減衰の度合いが異なることが判明した。このことは、Heの密度や動粘性が空気と異なることに依ると考えられる。そこで、チャンバ内または筐体内を伝わる音の音圧を検出することによって、筐体内の置換用の気体の濃度を評価することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】磁気ディスク装置の構成例を表す分解斜視図である。
【図2】カバーの構成例を表す分解斜視図である。
【図3】磁気ディスク装置の製造方法の流れを表すフローチャートである。
【図4】S3の説明図である。
【図5】S5の説明図である。
【図6】S8の説明図である。
【図7】本発明の第1実施形態に係る磁気ディスク装置の製造方法の説明図である。
【図8A】スピーカーの取付例を表す図である。
【図8B】マイクの取付例を表す図である。
【図9】効果を説明する図である。
【図10】効果を説明する図である。
【図11】本発明の第2実施形態に係る磁気ディスク装置の製造方法の説明図である。
【図12】S9及びS10の説明図である。
【図13】S16の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の磁気ディスク装置の製造方法の実施形態を、図面を参照しながら説明する。
【0013】
図1に、本発明の一実施形態に係る磁気ディスク装置1の分解斜視図を示す。磁気ディスク装置1の筐体10(DE:Disk Enclosure)は、上方に開口した矩形箱状のベース12と、これを覆う板状のカバー11とで構成されており、ベース12にカバー11が取り付けられることで密閉される。
【0014】
筐体10内には、磁気ディスク2及びヘッドアッセンブリ6などが収納されている。磁気ディスク2は、ベース12の底部に設けられたスピンドルモータ3に取り付けられている。この磁気ディスク2には、同心円状に配列する複数のトラック(不図示)が形成されており、各トラックには、所定の周期でサーボデータが書き込まれている。サーボデータは、アドレスデータ及びバースト信号を含む。
【0015】
ヘッドアッセンブリ6は、磁気ディスク2の隣に支承されている。このヘッドアッセンブリ6の先端部には、磁気ヘッド4が支持されている。磁気ヘッド4は、回転する磁気ディスク2上に近接浮上し、データの書き込み及び読み出しを行う。他方、ヘッドアッセンブリ6の後端部には、ボイスコイルモータ7が設けられている。ボイスコイルモータ7は、ヘッドアッセンブリ6を旋回駆動し、磁気ヘッド4を磁気ディスク2の略半径方向に移動させる。
【0016】
また、ヘッドアッセンブリ6には、FPC(Flexible Printed Circuits)8が取り付けられている。このFPC8は、ベース12の底部に設けられたコネクタ9から延出しており、ベース12の裏側に設けられた回路基板(不図示)と、磁気ヘッド4及びボイスコイルモータ7とを電気的に接続する。
【0017】
図2に、筐体10を構成するカバー11の分解斜視図を示す。図2(a)は、カバー11の表面11a側を示し、図2(b)は、カバー11の裏面11b側を示す。
【0018】
カバー11には、筐体10の内外を連通させるガス注入口11i、ガス排出口11e、テスト口11t及びネジ穴11sが形成されている。なお、これらガス注入口11i及びガス排出口11eは、ベース12に形成されていてもよい。
【0019】
ガス注入口11iは、いわゆる呼吸口であり、筐体10の内外の気圧差を抑制するために設けられる。また、ガス注入口11iは、後述するように、製造時において筐体10内に気体を充填する際に利用される。
【0020】
このガス注入口11iには、カバー11の裏面11b側に、扁平円柱状の呼吸フィルタ22が配設されている。詳しくは、呼吸フィルタ22は、ガス注入口11iを塞ぐようにカバー11の裏面11bに取り付けられている。この呼吸フィルタ22は、筐体10内に流れ込む気体を濾過して、気体に含まれるパーティクル(粒子)が筐体10内に進入することを抑制する。
【0021】
また、ガス注入口11iは、カバー11の裏面11b側に取り付けられる呼吸フィルタ22が上記ヘッドアッセンブリ6とコネクタ9との間(図1参照)に収まるような位置に形成されている。
【0022】
ガス排出口11eは、後述するように、製造時において筐体10内に気体を充填する際に利用される。このガス排出口11eには、カバー11の裏面11b側に、不織布からなるシート状のフィルタ24が配設されている。また、ガス排出口11eは、カバー11の表面11a側にリークシール34が貼付されて、閉塞されている。
【0023】
テスト口11tは、後述するように、製造時のテストにおいて利用される。このテスト口11tは、カバー11の表面11a側にリークシール36が貼付されて、閉塞されている。なお、このテスト口11tには、フィルタは配設されていない。
【0024】
ネジ穴11sは、上記ヘッドアッセンブリ6の軸受部6bに締結されるネジが挿通される穴である。このネジ穴11sは、カバー11の表面11a側にリークシール38が貼付されて、閉塞されている。
【0025】
ここで、ガス注入口11iに配設される呼吸フィルタ22は、ガス排出口11eに配設されるフィルタ24よりも、気体に含まれるパーティクルに対する濾過能力が高い。気体に含まれるパーティクルには、塵埃のパーティクルだけでなく、水分のパーティクルや化学物質のパーティクルなど、様々な種類がある。呼吸フィルタ22は、フィルタ24と同様の不織布からなるシート状のフィルタの他に、流路長を確保するための螺旋状の流路部、水分を吸着するための活性炭、及び化学物質を吸着するケミカル吸着フィルタなどを含んでいる。このため、呼吸フィルタ22は、フィルタ24と比して、様々なパーティクルを濾過することができ、こうした濾過を維持できる期間も長いことから、濾過能力が高いということができる。
【0026】
なお、本実施形態では、ガス排出口11eにシート状のフィルタ24を配設しているが、これに限らず、ガス排出口11eにも呼吸フィルタ22と同様の呼吸フィルタを配設して、ガス排出口11eを呼吸口としてもよい。この場合、ガス排出口11eにリークシール38を貼付せずともよい。
【0027】
図3に、本発明の一実施形態に係る磁気ディスク装置の製造方法の工程例を示す。この製造方法は、筐体10内にHe(ヘリウム)を充填した状態でセルフサーボライト(SSW:Self Servo Write)を行うことを主な目的としている。
【0028】
まず、S1ないしS5の工程は、クリーンルーム内で行われる。S1では、呼吸フィルタ22及びフィルタ24をカバー11の裏面11bに貼付する。すなわち、図2(b)に示したように、カバー11の裏面11bに、ガス注入口11iを塞ぐように呼吸フィルタ22を取り付け、ガス排出口11eを塞ぐようにフィルタ24を取り付ける。そして、呼吸フィルタ22及びフィルタ24を取り付けたカバー11を、磁気ディスク2及びヘッドアッセンブリ6等を収納したベース12に取り付けて、筐体10を密閉する。
【0029】
S2では、密閉された筐体10内のパーティクルテストを行う。具体的には、パーティクルの数を検出する検出器をテスト口11tから筐体10内に挿入して測定を行う。なお、テスト口11tには、このように検出器が挿入されることから、ガス注入口11i及びガス排出口11eのようにフィルタを配設することができない。また、テスト口11tは、検出器が挿入されるため、ガス注入口11i及びガス排出口11eと比して口径が大きい。
【0030】
S3では、図4に示すように、テンポラリーシール44を貼付して、ガス排出口11eを一時的に閉塞する。このテンポラリーシール44は、ガス排出口11eを塞ぐ閉塞部44aと、この閉塞部44aから一方向に延出した把手部44bとを有しており、把手部44bがあることによって剥がし易くなっている。
【0031】
このようにテンポラリーシール44を貼付するのは、後述するHe注入工程(S8)が開始されるまでの間に、パーティクルがガス排出口11eからフィルタ24を通過して筐体10内に進入することを極力防ぐためである。なお、フィルタ24の濾過能力が十分であれば、テンポラリーシール44を貼付せずともよい。
【0032】
ここでは、ガス排出口11eに配設されたフィルタ24が、ガス注入口11iに配設された呼吸フィルタ22よりも濾過能力が低いために、ガス排出口11eを閉塞している。また、これに限らず、ガス排出口11eとともにガス注入口11iを一時的に閉塞してもよい。
【0033】
S4では、テスト口11tから空気を注入して、空気リークテストを行う。これにより、筐体10内から空気が漏れ出ないこと、すなわち筐体10が十分に密閉されていることを確認する。
【0034】
ここで、製品としての磁気ディスク装置1では、ガス排出口11eがリークシール34により閉塞されることから(図1参照)、空気リークテストの前にガス排出口11eをテンポラリーシール44により閉塞することで、製品としての磁気ディスク装置1と同じ条件で空気リークテストを行うことができる。
【0035】
S5では、図5に示すように、リークシール36を貼付してテスト口11tを閉塞する。更には、カバー11に形成されたネジ穴11sをリークシール38により閉塞し、ベース12の裏面側に形成された同様のネジ穴(不図示)もリークシール39により閉塞する。
【0036】
ここで、ネジ穴11sを閉塞するのは、後述するHe注入工程(S8)において筐体10内に注入されたHeが筐体10内から漏れ出ることを抑制するためである。すなわち、前の空気リークテスト(S4)では筐体10内から空気が漏れ出ないことを確認しているが、後の工程S8で注入されるHeは、空気よりも小さく、空気が漏れ出さないような隙間からでも漏れ出す虞がある。このため、本工程では、ネジ穴11s等の、Heが漏れ出す虞がある隙間を閉塞する。他にも、カバー11とベース12とを接合した隙間などを閉塞するようにしてもよい。
【0037】
なお、テスト口11tは、上記のように筐体10を密閉した後にパーティクルテスト及び空気リークテストに利用されるため、フィルタを配設することができない。このため、本実施形態では、テスト口11tを後述するような気体注入用または気体排出用の開口として用いることはできない。
【0038】
以上のS1ないしS5の工程が完了したら、筐体10をクリーンルームから出して、ノーマルエリア(空気清浄度を制御していないエリア)に移す。以降のS6ないしS19の工程は、このノーマルエリアで行われる。
【0039】
S6では、筐体10内に収納されている磁気ディスク2の全体をACイレースするイレース処理を行う。このイレース処理は、例えば、専用のイレース処理装置により行われる。
【0040】
S7では、次のHe注入工程(S8)を行うため、ガス排出口11eを閉塞しているテンポラリーシール44(図4参照)を剥がす。ここで、He注入工程(S8)はノーマルエリアで行われるので、Heの注入が開始されるまでの間、ガス排出口11eを一時的に閉塞しておくことで、パーティクルがガス排出口11eからフィルタ24を通過して筐体10内に進入することを極力防ぐことができる。
【0041】
S8では、ガス注入口11i及びガス排出口11eを利用して、密閉された筐体10内にHeを注入する。これは、筐体10内にHeを充填した状態でセルフサーボライトを行うためである。なお、本実施形態では、空気よりも密度が低い低密度気体としてHeを用いているが、これに限らず、水素などを用いてもよい。
【0042】
Heの注入は、例えば、気体注入装置を用いて行うことができる。具体的には、図6に示すように、気体注入装置のノズル50をガス注入口11iに配し、このノズル50からHeを送り込むことで、ガス注入口11iから筐体10内にHeを注入する。そして、筐体10内にHeが注入されると、ガス排出口11eから筐体10内の気体(主に空気)が押し出される。このようにして、筐体10内の空気がHeに置換される。
【0043】
ここで、筐体10のガス注入口11i及びガス排出口11eには、呼吸フィルタ22及びフィルタ24がそれぞれ配設されているので、Heの注入をノーマルエリアで行うことができる。すなわち、Heの注入を、クリーンルームなどの空気清浄度を高めた環境で行わなくてもよいため、製造を簡易化することができる。
【0044】
また、ガス注入口11iに配設された呼吸フィルタ22は、ガス排出口11eに配設されたフィルタ24よりも濾過能力が高いため、ガス注入口11iからHeを注入することにより、気体注入装置から送り込まれるHeにパーティクルが含まれる場合であっても、パーティクルが筐体10内に進入することをより効果的に抑制することができる。
【0045】
なお、Heの注入は、筐体10内のHe濃度を評価しながら行われる。以下、筐体10内のHe濃度を評価する方法の2つの実施形態について説明する。
【0046】
[第1実施形態]
本実施形態では、図6及び図7に示すように、ガス排出口11eから排出される気体がチャンバ57内に導入され、チャンバ57内のHe濃度が評価される。チャンバ57内のHe濃度は、筐体10内のHe濃度と同視できる。具体的には、ガス排出口11eに導入管55が配置され、ガス排出口11eから排出される気体は導入管55を通じてチャンバ57内に導入される。チャンバ57は、上下方向に延びる筒状に構成されている。チャンバ57の下端部には導入管55が接続されており、チャンバ57の上端部には排出管59が接続されている。チャンバ57内の気体は、排出管59を通じて外部に排出される。
【0047】
チャンバ57の下端部には、チャンバ57内に音を発生させるスピーカー61が配置されている。具体的には、図8に示すように、チャンバ57の下端部に貫通口57aが形成されており、さらに、この貫通口57aを閉塞するシート部材70が設けられている。シート部材70は、チャンバ57の壁厚よりも薄く、可撓性を有している。シート部材70は、例えば、上記テスト口11tに配置されたリークシール36と同様の部材で構成される。スピーカー61は、ゴム等からなる中空円筒状の振動緩衝部材71を介してシート部材70に取り付けられている。スピーカー61から発せられた音は、振動緩衝部材71の内側を通ってシート部材70に至り、そこからチャンバ57内に伝わる。
【0048】
チャンバ57の上端部には、チャンバ57内を伝わる音の音圧を検出するマイク63が配置されている。すなわち、図9に示すように、マイク63は、ゴム等からなる中空円筒状の振動緩衝部材73を介してチャンバ57の上端部に取り付けられている。チャンバ57内を伝わる音は、チャンバ57の壁から外部に漏れ出し、振動緩衝部材73の内側を通ってマイク63に至る。
【0049】
He濃度の評価は、マイク63により検出されたチャンバ57内を伝わる音の音圧に基づいて行われる。図9は、スピーカー61から同じ音を発した場合の、空気中を伝わる音の音圧と、He中を伝わる音の音圧との違いを表すグラフである。横軸は周波数を表し、縦軸は音圧を表す。同図に示されるように、例えば2kHz以上(更には4kHz以上)の比較的高音域では、He中を伝わる音の音圧が、空気中を伝わる音の音圧よりも減衰している。このことは、Heの密度や動粘性が空気と異なることに依ると考えられる。図10は、Heを注入し続けたときの音圧合計の変化を表すグラフである。横軸はHe注入時間を表し、縦軸は音圧合計を表す。音圧合計は、4〜16kHzの各周波数での音圧を合計したものである。同図に示されるように、Heを注入し続けてHe濃度が高まると、比較的高音域での音圧合計が低下する。
【0050】
このように、空気中を伝わる音とHe中を伝わる音とでは、比較的高音域での音圧の減衰の度合いが異なることから、マイク63により検出されたチャンバ57内を伝わる音の音圧のうち、比較的高音域中の所定周波数の成分を抽出することによって、または、比較的高音域中の所定範囲の合計を求めることによって、チャンバ57内のHe濃度を評価することが可能である。所定周波数の成分もしくは所定範囲の合計が高いほど、チャンバ57内のHe濃度は低く、これに対し、所定周波数の成分もしくは所定範囲の合計が低いほど、チャンバ57内のHe濃度は高い。
【0051】
また、本実施形態では、マイク63がスピーカー61よりも導入管55から離れて配置されているので、導入管55からチャンバ57内に導入される気体の音がマイク63に拾われることを抑制できる。
【0052】
また、本実施形態では、チャンバ57に形成された貫通口57aを塞ぐシート部材70にスピーカー61が配置されているので、スピーカー61の振動がチャンバ57自体を介してマイク63まで伝わることを抑制できる。
【0053】
また、本実施形態では、スピーカー61やマイク63が振動緩衝部材71,73を介してチャンバ57に配置されているので、スピーカー61の振動がチャンバ57自体を介してマイク63まで伝わることを抑制できる。
【0054】
また、本実施形態では、ガス排出口11eに上記フィルタ24が配置されているので、導入管55からチャンバ57内に導入される気体の音を低減し、こうした音がマイク63に拾われることを抑制できる。
【0055】
[第2実施形態]
本実施形態では、図11に示すように、筐体10にスピーカー61とマイク63とが取り付けられて、筐体10内のHe濃度が評価される。具体的には、スピーカー61は、振動緩衝部材71を介して、カバー11に形成されたテスト口11tを閉塞するリークシール36に取り付けられている。スピーカー61から発せられた音は、振動緩衝部材71の内側を通ってリークシール36に至り、そこから筐体10内に伝わる。他方、マイク63は、振動緩衝部材71を介してカバー11に取り付けられている。筐体10内を伝わる音は、カバー11から外部に漏れ出し、振動緩衝部材73の内側を通ってマイク63に至る。これにより、マイク63により検出される筐体10内を伝わる音の音圧に基づいて、筐体10内のHe濃度を評価することが可能である。
【0056】
また、本実施形態では、カバー11に形成されたテスト口11tを閉塞するリークシール36にスピーカー61が配置されているので、スピーカー61の振動が筐体10自体を介してマイク63まで伝わることを抑制できる。
【0057】
また、本実施形態では、ベース12よりも薄いカバー11にマイク63が取り付けられているので、筐体10内を伝わる音の検出感度を向上させることが可能である。
【0058】
S8及び図6の説明に戻り、ガス排出口11eに配設されたフィルタ24は、ガス注入口11iに配設された呼吸フィルタ22よりも圧力損失が大きい方が好適である。また、ガス排出口11eは、ガス注入口11iよりも口径が小さい方が好適である。これらの場合、ガス注入口11iよりもガス排出口11eの方が気体を通し難くなることから、Heを注入する際に筐体10内の気圧を高めやすい。従って、これらの場合も、Heの注入後すぐに筐体10内に空気が流れ込むことを抑制することができ、次の工程(S9,S10)でテンポラリーシール42,44を貼付するまでの時間を確保することができる。
【0059】
さらに、S8におけるHeの注入は、外部からスピンドルモータ3を駆動して、筐体10内に収納されている磁気ディスク2を回転させながら行われてもよい。これにより、ガス注入口11iから注入したHeを筐体10内で拡散させ易くなり、効率的にHeを充填することができる。
【0060】
このように磁気ディスク2を回転させながらHeの注入を行う場合、筐体10内の気体が磁気ディスク2の周囲を回転方向に沿って流れるので、ガス注入口11i及びガス排出口11eを、磁気ディスク2の縁に沿って設けることが望ましい。また、ガス注入口11iから注入されたHeを筐体10内で十分に拡散させるため、ガス注入口11i及びガス排出口11eを、磁気ディスク2の回転方向に沿って一定以上離して設けることが望ましい。このため、本実施形態のように、ガス注入口11i及びガス排出口11eを、磁気ディスク2に対して互いに反対側に設けることが好適である。
【0061】
また、磁気ディスク2を回転させながらHeの注入を行う場合、スピンドルモータ3に対して出力される駆動電流の大きさに基づいて、筐体10内のHe濃度を評価することができる。すなわち、筐体10内のHe濃度が増加するのに伴い、回転する磁気ディスク2に働く抵抗の大きさが減少することから、これにより、スピンドルモータ3を所定の回転速度で回転させるために必要となる駆動電流の大きさが減少することになる。このように、スピンドルモータ3に対して出力される駆動電流の大きさは、筐体10内のHe濃度を表す指標ということができる。
【0062】
以上のHe注入工程(S8)が終了したら、セルフサーボライト(S12)を開始する前に、図12に示すように、テンポラリーシール42,44を貼付して、ガス注入口11i及びガス排出口11eを一時的に閉塞する(S9,S10)。これは、セルフサーボライト(S12)が行われている間に筐体10内からHeが漏れ出ることを抑制するためである。
【0063】
また、ガス排出口11eを閉塞するテンポラリーシール44は、ガス注入口11iを閉塞するテンポラリーシール42よりも先に貼付される(すなわち、Tb<Ta)。これは、ガス排出口11eに配設されたフィルタ24が、ガス注入口11iに配設された呼吸フィルタ22よりも漏洩抵抗が低いためである。
【0064】
また、筐体10内にHeを注入後、ガス注入口11i及びガス排出口11eを閉塞しない場合に筐体10内のHe濃度が低下して許容範囲を下回ってしまうまでの時間を、規定時間Teとするとき、筐体10内にHeを注入後、テンポラリーシール42,44が貼付されるまでの時間(Ta,Tb)が規定時間Teを越えないようにする。この規定時間Teを超えた場合には、S8に戻り、再度Heを注入する(S11)。
【0065】
S12では、密閉された筐体10内に収納されている磁気ヘッド4及びボイスコイルモータ7を外部から制御して、磁気ディスク2にサーボデータを書き込む、いわゆるセルフサーボライト(SSW)を行う。
【0066】
これら磁気ヘッド4及びボイスコイルモータ7の制御は、外部のサーボデータ記録装置により、筐体10内のコネクタ9及びFPC8を介して行われる。具体的には、サーボデータ記録装置は、磁気ディスク2に書き込むべきサーボデータを磁気ヘッド4に出力する。また、磁気ヘッド4が磁気ディスク2から読み出したサーボデータを取得する。更に、取得したサーボデータに応じてボイスコイルモータ7の駆動信号を生成し、出力する。
【0067】
また、サーボデータの書き込みは、磁気ヘッド4に含まれる記録素子と再生素子とが磁気ディスク2の径方向にずれていることを利用し、既に形成されたトラックに磁気ヘッド4を追従させた状態でサーボデータを書き込むことにより、新たなトラックを形成する。すなわち、既に形成されたトラックから再生素子によりサーボデータを読み出し、読み出したサーボデータに基づいて磁気ヘッド4をトラックに追従させる。そして、この状態で、記録素子によりサーボデータを書き込むことで新たなトラックを形成する。そして、こうしたトラックの形成を、磁気ディスク2の半径方向に進めていく。
【0068】
ここで、筐体10内には上記He注入工程(S8)によりHeが充填されているので、磁気ディスク2に歪みの少ない真円に近いトラックを形成することができる。
【0069】
また、筐体10のガス注入口11i及びガス排出口11eには、呼吸フィルタ22及びフィルタ24が配設され、更にはテンポラリーシール42,44がそれぞれ貼付されているので、筐体10内からのHeの漏れ出しを抑制でき、この結果、筐体10をノーマルエリアに配置した状態でセルフサーボライトを行うことができる。
【0070】
また、上述したようにHe注入工程(S8)もノーマルエリアで行われるので、Heの注入後からセルフサーボライトを開始するまでの時間を短縮することができ、この結果、筐体10内のHe濃度が高水準に維持されているうちにセルフサーボライトを行うことができる。
【0071】
また、筐体10内にHeを注入後、ガス注入口11i及びガス排出口11eを閉塞した場合に筐体10内のHe濃度が低下して許容範囲を下回ってしまうまでの時間を、規定時間Tfとするとき、筐体10内にHeを注入後、セルフサーボライトが終了するまでの時間(Tc+Td)が規定時間Tfを越えないようにする。
【0072】
以上のセルフサーボライト(S12)が終了したら、ガス注入口11i及びガス排出口11eを閉塞しているテンポラリーシール42,44を剥がす(S13,S14)。
【0073】
また、筐体10内にHeを注入後、筐体10内からHeが漏れ出して部品に変化が現れるまでの時間を、規定時間Thとするとき、筐体10内にHeを注入後、セルフサーボライトが終了し、テンポラリーシール42,44を剥がすまでの時間(Tc+Td+Tg)が規定時間Thを越えないようにする。筐体10内からHeが漏れ出すことによる部品の変化は、例えば、筐体10内の気圧の低下によるカバー11の変形や、摺動部分に付されたグリースの変質などがある。
【0074】
S15では、ガス注入口11i及びガス排出口11eを利用して、密閉された筐体10内に空気を注入する。このS15は、上記S8と同様に行うことができる。このようにセルフサーボライト(S12)後に筐体10内に空気を充填するのは、後の前工程検査(S18)及びテスト工程(S19)を、製品としての磁気ディスク装置1と同じ条件で行うためである。
【0075】
また、ガス注入口11iから筐体10内に空気を注入する際、ガス排出口11eから筐体10外へHeが排出されるため、ガス排出口11eから排出されるHeを集めて、再利用に供することが好適である。
【0076】
S16では、図13に示すように、リークシール34を貼付して、ガス排出口11eを閉塞する。これにより、製品としての磁気ディスク装置1において、パーティクルがガス排出口11eから筐体10内に進入することを防ぐことができる。ここでは、ガス排出口11eに配設されたフィルタ24が、ガス注入口11iに配設された呼吸フィルタ22よりも濾過能力が低いために、ガス排出口11eを閉塞している。
【0077】
その後、筐体10の裏側に回路基板を取り付け(S17)、所定の前工程検査(S18)及びテスト工程(S19)を行う。以上の工程により、磁気ディスク装置1が完成する。
【0078】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、種々の変形実施が当業者にとって可能であるのはもちろんである。
【符号の説明】
【0079】
1 磁気ディスク装置、2 磁気ディスク、3 スピンドルモータ、4 磁気ヘッド、6 ヘッドアッセンブリ、7 ボイスコイルモータ、8 FPC、9 コネクタ、10 筐体、11 カバー、11i ガス注入口(呼吸口)、11e ガス排出口、11t テスト口、11s ネジ穴、12 ベース、22 呼吸フィルタ、24 フィルタ、34,36,38,39 リークシール、42,44 テンポラリーシール、50 ノズル、55 導入管、57 チャンバ、57a 貫通口、59 排出管、61 スピーカー、63 マイク、70 シート部材、71,73 振動緩衝部材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス注入口及びガス排出口が形成された筐体を有する磁気ディスク装置の製造方法であって、
前記ガス注入口から前記筐体内に置換用の気体を注入し、
前記ガス排出口から排出される気体をチャンバ内に導入し、
前記チャンバ内に音を発生させ、
前記チャンバ内を伝わる前記音の音圧を検出し、
前記音の音圧に基づいて、前記筐体内の前記置換用の気体の濃度を評価する、
ことを特徴とする磁気ディスク装置の製造方法。
【請求項2】
前記チャンバに、前記音を発生させるスピーカーと、前記音の音圧を検出するマイクとが設けられ、前記マイクが、前記スピーカーより前記チャンバの気体導入口から離される、
請求項1に記載の磁気ディスク装置の製造方法。
【請求項3】
前記チャンバに形成された貫通口を塞ぐシート部材に、前記音を発生させるスピーカーが配置される、
請求項1に記載の磁気ディスク装置の製造方法。
【請求項4】
前記音を発生させるスピーカーが、振動緩衝部材を介して前記チャンバに配置される、
請求項1に記載の磁気ディスク装置の製造方法。
【請求項5】
前記音の音圧を検出するマイクが、振動緩衝部材を介して前記チャンバに配置される、
請求項1に記載の磁気ディスク装置の製造方法。
【請求項6】
前記ガス排出口にフィルタが配置される、
請求項1に記載の磁気ディスク装置の製造方法。
【請求項7】
ガス注入口及びガス排出口が形成された筐体を有する磁気ディスク装置の製造方法であって、
前記ガス注入口から前記筐体内に置換用の気体を注入し、
前記筐体内に音を発生させ、
前記筐体内を伝わる前記音の音圧を検出し、
前記音の音圧に基づいて、前記筐体内の前記置換用の気体の濃度を評価する、
ことを特徴とする磁気ディスク装置の製造方法。
【請求項8】
前記筐体に形成された貫通口を塞ぐリークシールに、前記音を発生させるスピーカーが配置される、
請求項7に記載の磁気ディスク装置の製造方法。
【請求項9】
前記筐体は、凹部が形成されるベースと、前記凹部の開口を塞ぐカバーとを有し、前記カバーに、前記音の音圧を検出するマイクが取り付けられる、
請求項7に記載の磁気ディスク装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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