磁気ヘッドの位置決め方法及び磁気記憶装置
【課題】磁気ヘッドの位置決めを高精度に行う。
【解決手段】複数組のサーボパターンの転写品質を評価し(ステップS11)、その結果に基づいて、磁気ディスクのゾーンごとに位置決めに使用するサーボパターン組(最良サーボパターン)を選択する(ステップS12)ことから、サーボパターンの歩留まりを高くすることができる。このため、当該サーボパターンを用いて磁気ヘッドの位置決めを行うことにより、磁気ヘッドの位置決め精度を向上することが可能となる。
【解決手段】複数組のサーボパターンの転写品質を評価し(ステップS11)、その結果に基づいて、磁気ディスクのゾーンごとに位置決めに使用するサーボパターン組(最良サーボパターン)を選択する(ステップS12)ことから、サーボパターンの歩留まりを高くすることができる。このため、当該サーボパターンを用いて磁気ヘッドの位置決めを行うことにより、磁気ヘッドの位置決め精度を向上することが可能となる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気ヘッドの位置決め方法及び磁気記憶装置に関し、特に磁気記憶媒体に対する磁気ヘッドの位置決め方法及び当該磁気ヘッドの位置決め方法の実施に好適な磁気記憶装置に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気ディスク装置(ハードディスク装置(HDD))は、主として、情報を磁気的に記録する磁気ディスク(磁気記憶媒体)と、スピンドルモータによって回転駆動される磁気ディスクに対して情報を記録または再生する磁気ヘッドとを備えている。磁気ヘッドは、一定角度の範囲内を回転するヘッド・スタック・アッセンブリの先端部分に設けられている。
【0003】
磁気ディスクには、磁気ヘッドと磁気ディスク上のトラックとの相対位置を検出するための位置情報(サーボ情報)が磁気的に記録されている。このサーボ情報を用いて位置決めされた磁気ヘッドは、磁気ディスクに対して情報(ユーザデータ)の記録を行う。サーボ情報は、媒体の半径方向に延伸したパターンで形成され、例えば、サーボクロックパターン、セクタマーク(SM)、トラッキング用パターン領域を含んでいる。
【0004】
このサーボ情報の磁気ディスクに対する記録は、従来、サーボトラックライタ(STW)と呼ばれる装置を用いて行われていた。しかるに、STWを用いると、例えば60Gバイトの記録容量の磁気ディスクにサーボ情報を記録するのに30分/枚程度の時間がかかってしまう。また、将来的には、トラック記録密度の増加に伴ってサーボ情報の記録処理に要する時間はさらに増大すると考えられる。
【0005】
これに対し、最近では、サーボ情報の記録時間を短縮するための技術として、サーボ情報を磁気ディスクに磁気転写する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
この磁気転写方法では、クリーンルーム中で、サーボ情報に対応する凹凸が形成された転写マスタと磁気ディスクとを1枚1枚密着させてサーボ情報の転写を行う。このため、密着、解除を何度も繰り返すと、転写マスタと磁気ディスクとの間に塵埃(コンタミ)を巻き込み、磁気的なサーボ情報が正確に転写されない部分が生じ、いわゆる転写欠陥が生じる場合がある。また、このほかにも転写マスタ作製時のパターン欠陥、転写マスタと磁気ディスクとの密着不良による信号振幅の低下やパターンの欠陥、媒体の磁気特性ばらつきなど、磁気転写における不良要因が存在する場合がある。そこで、最近では、転写欠陥をできるだけなくし、歩留りを向上させるために、さまざまな欠陥検査方法が提案されている(例えば、特許文献2〜6等参照)。
【0007】
【特許文献1】特開平10−40544号公報
【特許文献2】特開2001−249080号公報
【特許文献3】特開2001−176001号公報
【特許文献4】特開2002−74601号公報
【特許文献5】特開2001−283432号公報
【特許文献6】特開2001−167434号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記方法を用いても、不良セクタを皆無にすることは困難である。このため、1トラックに数個の不良セクタが存在する場合には、そのトラック全体の使用ができなくなり、当該不良トラックに代えて代替トラックが用意されることになる。
【0009】
最近では、高TPI化に伴って代替トラックを利用するケースが増えているが、予め用意されている代替トラックリストが一杯になると、その転写した媒体自体が不良品となり、磁気ヘッドの高精度な位置決めができなくなる。
【0010】
そこで本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、磁気ヘッドの位置決めを高精度に行うことが可能な磁気ヘッドの位置決め方法を提供することを目的とする。また、本発明は、磁気ヘッドによる情報記録及び再生を高精度に行うことが可能な磁気記憶装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本明細書に記載の磁気ヘッドの位置決め方法は、磁気記憶媒体に設けられた複数組のサーボパターンの品質を、磁気ヘッドによる前記サーボパターンの検出結果を用いて評価する評価工程と、前記評価結果から、前記磁気記憶媒体を半径方向に分割した領域ごとに、前記磁気ヘッドの位置決めに使用するサーボパターンの組を選択する選択工程と、を含んでおり、前記磁気ヘッドの位置決めには、前記選択工程で選択されたサーボパターンの組を用いる磁気ヘッドの位置決め方法である。
【0012】
これによれば、複数組のサーボパターンの品質を評価した結果に基づいて、位置決めに使用するサーボパターンの組を、磁気記憶媒体を半径方向に分割した領域ごとに選択し、当該選択されたサーボパターンの組を用いて磁気ヘッドの位置決めを行うので、領域ごとに品質の良い(歩留まりの高い)サーボパターンを用いて磁気ヘッドの位置決めを行うことができる。これにより、磁気ヘッドの位置決めを高精度に行うことが可能となる。
【0013】
本明細書に記載の第1の磁気記憶装置は、磁気ヘッドと、前記磁気ヘッドの位置決めに用いられる複数組のサーボパターンが設けられた磁気記憶媒体と、前記磁気記憶媒体のサーボパターンの品質を評価し、前記磁気記憶媒体を半径方向に分割した領域ごとに、前記磁気ヘッドの位置決めに使用するサーボパターンの組を選択する品質評価・選択部と、前記品質評価・選択部により選択されたサーボパターンを用いて、前記磁気ヘッドの位置決めを行う位置決め部と、を備えている。
【0014】
これによれば、品質評価・選択部が、複数組のサーボパターンの品質を評価した結果に基づいて、位置決めに使用するサーボパターンの組を、磁気記憶媒体を半径方向に分割した領域ごとに選択し、位置決め部が、当該選択されたサーボパターンの組を用いて磁気ヘッドの位置決めを行うので、領域ごとに品質の良い(歩留まりの高い)サーボパターンを用いて磁気ヘッドの位置決めを行うことができる。これにより、磁気ヘッドによる情報記録及び再生を高精度に行うことが可能となる。
【0015】
本明細書に記載の第2の磁気記憶装置は、磁気ヘッドと、前記磁気ヘッドの位置決めに用いられる複数組のサーボパターンが設けられた磁気記憶媒体と、前記磁気記憶媒体のサーボパターンの品質を評価した結果から選択される、前記磁気記憶媒体を半径方向に分割した領域ごとに前記磁気ヘッドの位置決めに使用するサーボパターンの組の情報を保持する情報保持部と、前記情報保持部に保持されている情報に基づいて、前記磁気ヘッドの位置決めを行う位置決め部と、を備えている。
【0016】
これによれば、情報保持部が保持する、磁気記憶媒体を半径方向に分割した領域ごとに選択されたサーボパターンの組の情報に基づいて、位置決め部が磁気ヘッドの位置決めを行うので、領域ごとに品質の良い(歩留まりの高い)サーボパターンを用いて磁気ヘッドの位置決めを行うことができる。これにより、磁気ヘッドによる情報記録及び再生を高精度に行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0017】
本明細書に記載の磁気ヘッドの位置決め方法は、磁気ヘッドの位置決めを高精度に行うことができるという効果を奏する。また、本明細書に記載の磁気記憶装置は、磁気ヘッドによる情報記録及び再生を高精度に行うことができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の磁気記憶装置の一実施形態について、図1〜図15に基づいて詳細に説明する。
【0019】
図1は、本実施形態に係る磁気記憶装置としてのハードディスクドライブ(HDD)100の内部構成を示している。この図1に示すように、HDD100は、箱型の筺体11、筺体11内部の空間(収容空間)に収容された磁気記憶媒体としての磁気ディスク20、スピンドルモータ15、ヘッド・スタック・アッセンブリ(HSA)16、ボイスコイルモータ(VCM)17及びヘッド位置決め回路、各種の制御用LSI等が実装された制御基板(図示せず)等を備える。なお、筺体11は、実際には、ベースと上蓋(トップ・カバー)とにより構成されているが、図1では、上蓋の図示を省略している。ヘッド・スタック・アッセンブリ16は、磁気ヘッド161を有している。このヘッド・スタック・アッセンブリ16は、磁気ヘッド161とは反対側に設けられたボイスコイルモータ17により、支軸14を中心に駆動(揺動)されるようになっている。
【0020】
磁気ディスク20は、ガラスやアルミナ製の非磁性の基板を有し、スピンドルモータ15によって高速度で回転駆動される。なお、本実施形態では、磁気ディスク20の表側の面のみが記録面であるものとする。ただし、磁気ディスク20は、表側の面と裏側の面の両面が記録面であっても良い。また、磁気ディスク20は、回転軸に沿って(図1の紙面直交方向に沿って)複数枚設けられていても良い。
【0021】
磁気ディスク20の記録面には、図2(a)に模式的に示すように、4組のサーボパターン群SP1、SP2,SP3,SP4が等間隔で設けられている。これら4組のサーボパターン群SP1〜SP4のそれぞれは、磁気ディスク20上のセクタ数と同一数のサーボパターンを有しており、各サーボパターン間の角度は等角度に設定されている。また、本実施形態では、各サーボパターンの種類(位相パターン、面積パターンなどの種類)は同一とされている。ただし、これに限らず、それぞれが異なる種類のサーボパターンであっても良い。
【0022】
なお、以下の説明では、サーボパターン群SP1〜SP4を構成するサーボパターンがどのサーボパターン群に属しているかを明確にする必要がある場合には、単独のサーボパターンに対しても、サーボパターン群と同一の符号SP1〜SP4を付すものとする。
【0023】
本実施形態では、サーボパターンの一部を拡大して示す図2(b)から分かるように、サーボパターンとして振幅パターンを採用している。これらサーボパターンは、図2(b)に示すように、プリアンブル部と、アドレス部と、バースト部とを有している。また、アドレス部は、サーボパターン組番号、トラック番号、セクタ番号を含んでいる。サーボパターン組番号は、サーボパターン群の組SP1〜SP4の番号「1」〜「4」を意味する。
【0024】
図3には、磁気ヘッド161の位置決めを実行するための位置決め部としての位置決め制御系50の基本構成のブロック図が示されている。この図3に示すように、位置決め制御系50は、フィードバック制御器(FB制御器)21、制御対象であるVCM17、演算ブロック23a、23b、23c、23d、サンプラ25a、25bを備えている。サンプラ25aは、A/D変換器を含み、サンプラ25bは、D/A変換器を含んでいる。位置決め制御系50によれば、加速度外乱、位置外乱及びスピンドルモータのRRO(Repeatable Run Out)の影響を考慮した、VCM17(磁気ヘッド161)の正確なフィードバック制御が可能である。なお、図3のブロック図は、位置決め制御系50の基本構成を示すものであり、実際には、その他の構成(図8に示す品質評価選択演算部31、最良サーボパターン記憶部33など)も含んでいるが、この点については後で詳述する。
【0025】
次に、図4〜図6のフローチャートに基づいて、磁気ディスク20へのサーボパターン(サーボパターン群SP1〜SP4)の記録(作成)、及びサーボパターンが記録された磁気ディスク20をHDD100に搭載した後に行う出荷前試験の詳細について説明する。なお、本出荷前試験は、出荷前のHDD100の全てに対して実行するものであるとする。
【0026】
まず、図4のステップS10では、磁気ディスク20に対し、所要セクタ数を有するn組(本実施形態では4組)のサーボパターン群(SP1〜SPn(SP4))を磁気転写法により記録(作製)する。図7(a)〜図7(d)には、このステップS10の処理の手順が簡略化して示されている。なお、図7(a)〜図7(d)は、磁気ディスク20が水平磁気記録用の磁気ディスクである場合の手順を示している。
【0027】
この磁気転写法では、まず、図7(a)に示すような、磁気ディスク20に記録されるべきサーボ情報に対応した凹凸パターンを持つ転写マスタディスク(以下、単に「転写マスタ」と呼ぶ)302を用意する。この転写マスタ302の凹凸パターンは、EB描画装置により描画されており、当該凹凸パターン部分には磁性層が形成されている。
【0028】
次いで、図7(b)に示すように、サーボ情報を記録する磁気ディスク20の近傍に、外部磁界A(磁気ヘッド303)を近接させ、磁気ディスク20の磁性層を、一方向(A1)に磁化(初期磁化)させる。
【0029】
次いで、図7(c)に示すように、転写マスタ302と磁気ディスク20とを密着させた状態で、転写マスタ302側から、初期磁化と逆向きの磁界Bを加える。
【0030】
このとき、転写マスタ302と接した磁気ディスク20の部分は、初期磁化の方向(A1)とは逆の方向(B1)に磁化反転する。しかし、磁気ディスク20の転写マスタ302と接していない部分は、図7(c)のように、初期磁化の方向(A1)の磁化がそのまま保たれる。
【0031】
次いで、図7(d)に示すように、転写マスタ302と磁気ディスク20との密着を解除することにより、磁気ディスク20にサーボ情報(サーボパターン)が磁気的情報として転写される。なお、磁気ディスク20が垂直磁気記録用の磁気ディスクである場合には、図7(b)、図7(c)の磁化方向を水平方向から垂直方向に変更すれば良い。
【0032】
本実施形態では、上記のような磁気転写法を用いるため、複数種類のサーボパターン群(SP1〜SP4)を磁気ディスク20に転写することとしても、1種類のサーボパターンを転写する場合と同程度の転写時間で足りる。
【0033】
上記のようにして、磁気ディスク20に対するサーボパターン群の転写が完了すると、次のステップS11(図4)では、サーボパターンの転写品質の評価(取得)に関するサブルーチンを実行する。なお、ステップS11のサブルーチンの処理は、位置決め制御系50に含まれる品質評価・選択部としての品質評価選択演算部31(図8参照)が実行する。ただし、以下の説明では、特に必要な場合を除いて、処理の主体についての記載を省略するものとする。
【0034】
このステップS11のサブルーチンでは、まず、図5のステップS20において、サーボパターン群の組を示す変数k(k=1〜n(ここではn=4))を1に設定する。次いで、ステップS22では、位置決め制御系50により磁気ヘッド161をサーボパターン群SPk(ここではSP1)にオントラックし、次のステップS24において、転写品質QEk(ここではQE1)を、磁気ディスク20のゾーンごとに取得する。
【0035】
転写品質QEkは、複数の転写品質指標qk(i)(i=1〜m)を用いて、次式(1)により算出(取得)する。なお、ρ(i)は、重み係数である。
【0036】
【数1】
【0037】
ここで、転写品質指標qk(i)(i=1〜m)としては、サーボパターン情報から求めることが可能な指標、例えば、以下の4つの指標を用いることができる。
qk(1):1次偏心補正後のRPE(repeatable position error)
qk(2):隣接トラックのRPE差分
qk(3):トラック変動の周期成分
qk(4):トラック中心でのプリアンブル部、アドレス部、バースト部のエラーレート
【0038】
上式(1)を用いて、サーボパターン群SP1の転写品質(QE1)がゾーンごとに取得されると、次のステップS26では、変数kが、総組数n(ここではn=4)であるか否かを判断する。この段階では、k=1であるので、判断は否定され、次のステップS28において、kを1インクリメントした後、ステップS22に戻る。
【0039】
その後は、ステップS22〜S28を繰り返すことにより、サーボパターン群SP2〜SP4それぞれの転写品質QE2〜QE4をゾーンごとに取得する。そして、ステップS26の判断が肯定された段階で、図4のステップS12に移行する。
【0040】
次のステップS12では、品質評価選択演算部31が、ステップS11で取得した各サーボパターン群の転写品質をゾーンごとに判断して、各ゾーンにおいて、最も品質の良いサーボパターン(サーボパターン群)を決定する。そして、それら最も品質の良いサーボパターン群を「最良サーボパターン群SPopt」とし、情報保持部としての最良サーボパターン記憶部33(図8参照)に登録する。
【0041】
図9には、ゾーンごとに選択された最良サーボパターン群が、太線にて示されている。なお、図9では、磁気ディスク20上にゾーンが3つ存在している場合を示しており、最も外側のゾーン1の最良サーボパターン群がSP1であり、真ん中のゾーン2の最良サーボパターン群がSP3であり、最も内側のゾーン3の最良サーボパターン群がSP4である場合を図示している。また、図10には、ゾーン番号と、そのゾーンにおいて選択された最良サーボパターン群の組番号の関係が表にて示されている。なお、図10の表では、図9の場合と異なり、ゾーンが3以上(r個(実際のrは10〜20前後))ある場合について図示している。
【0042】
次いで、図4のステップS13では、位置決め制御系50においてRRO電流補正テーブルを作成する。この場合、図11に示す位置決め制御系50(遅延回路36を含む)が、最良サーボパターン記憶部33に登録されている最良サーボパターン組SPoptの情報に基づいて、磁気ヘッド161を最良サーボパターン組に位置決めする。そして、そのときの位置ずれ量(サーボパターン情報などから求められる)からRRO電流補正値を取得して、RRO電流補正テーブル35を作成する。位置決め制御系50では、RRO電流補正テーブル35を用いた位置制御(例えば、図12参照)を行うことで、サーボパターンへの位置決め精度を向上することができる。
【0043】
次いで、図4のステップS14では、最良サーボパターン組において、トラック毎に不良のサーボパターン(不良セクタ)の検出及び代替パターンの設定に関するサブルーチン(図6)を実行する。なお、図6のサブルーチンの処理は、主に、図12に示す不良検出部及び代替部としての不良検出・代替パターン判定部37が実行する。ただし、以下の説明では、特に必要な場合を除いて、処理の主体についての記載を省略するものとする。
【0044】
まず、図6のステップS30では、最良サーボパターン組において、位置決め制御系50が、不良セクタ検出のための最初の対象トラックに磁気ヘッド161をオントラックする。なお、最初の対象トラックとしては、磁気ディスク20上のどのトラックを設定しても構わないが、ここでは、例えば、磁気ディスクの最外周に位置するトラックが最初の対象トラックに設定されたものとする。
【0045】
次のステップS32では、最初の対象トラックに磁気ヘッド161をオントラックした状態で、最良パターンの検出を行う。次いで、ステップS34では、不良検出・代替パターン判定部37が、対象トラック上に不良セクタが存在したか否かを判断する。この不良セクタの検出は、不良セクタ検出指標Df(j)に基づいて行われる。
【0046】
ここで、不良セクタ検出指標Df(j)としては、例えば、以下の指標を用いることができ、これら指標のいずれかが、それぞれの指標に設定された規定値(閾値)を超えた場合にそのセクタを不良セクタと判定するものとする。
Df(1):プリアンブル部、アドレス部、バースト部などの信号振幅やSN
Df(2):サーボ評価で取得されるRPE、NRPE
Df(3):データのライト/リード評価で取得されるエラーレート
【0047】
このステップS34における判断が否定された場合には、ステップS50に移行するが、肯定された場合にはステップS36に移行する。ここでは、例えば、図13に符号「BSP」で示すサーボパターンが不良(不良セクタ)であったものとして、以下説明する。
【0048】
次いで、ステップS36では、不良検出・代替パターン判定部37が、不良のサーボパターンBSPに隣接するサーボパターン(別の組のサーボパターン)の品質をステップS11と同様にして検出(評価)する。ここでは、例えば、最良サーボパターン組として登録されているサーボパターン(SP1)に隣接するサーボパターンには、優先順位がある。最適サーボパターン組がSP1であるとして、セクタ#3(セクタは反時計回りで数値が増加するとする)で不良サーボパターンBSPが発生したとすると、優先順位は、サーボパターンSP1の不良セクタ#3(BSP)に反時計回り方向に近いもの、時計回り方向に近いものという順番で、SP2(セクタ#3)→SP4(セクタ#2)→SP3(セクタ#3)の順となっている。このため、ステップS36では、最も優先順位の高いサーボパターンSP2(セクタ#3)の評価を行う。
【0049】
なお、最良サーボパターン組として登録されているサーボパターンがサーボパターンSP2であり、不良セクタがセクタ#3である場合には、隣接するサーボパターンの優先順位は、反時計回り方向に近いもの、時計回り方向に近いものという順番で、SP3(セクタ#3)→SP1(セクタ#3)→SP4(セクタ#3)となる。すなわち、一般的には、優先順位は、最良サーボパターン組として登録されているサーボパターンSPsに対し、反時計回りに最も近いサーボパターン→時計回りに最も近いサーボパターン→反時計回りに2番目に近いサーボパターン→時計回りに2番目に近いサーボパターン…の順となる。この場合、サーボパターンの組が1〜nまである場合には、反時計回りにn/2番目に近いサーボパターンまでを評価対象にするとともに、時計回りにn/2番目に近いサーボパターンまでを評価対象にすれば良い。
【0050】
次のステップS38では、不良検出・代替パターン判定部37が、ステップS36の結果、隣接するサーボパターン(SP2(セクタ#3))が良好か否かを判断する。ここでの判断が否定された場合(不良であった場合)は、ステップS40において、同一セクタ内および一つ前のセクタに別の組の隣接するサーボパターンがあるか否かを判断する。ここでは、まだ、サーボパターンSP2の評価を行ったのみなので、ステップS36に戻り、次の優先順位のサーボパターン(SP4(セクタ#2))の評価を行う。このようにして、良好なサーボパターンが発見された場合には、ステップS38の判断が肯定されて、ステップS44に移行する。一方、ステップS40で同一セクタ内および一つ前のセクタの全ての組のサーボパターンが不良であった場合には、ステップS40の判断が否定され、ステップS42に移行する。このステップS42では、不良検出・代替パターン判定部37が、図13において符号BSPで示されるサーボパターンを含むセクタを不良セクタと判定し、当該判定結果を、情報保持部としての不良セクタ・代替パターン記憶部39に登録する。
【0051】
これに対し、ステップS38の判断が肯定され、ステップS44に移行すると、不良検出・代替パターン判定部37は、ステップS38で良好と判定されたサーボパターンと、同一トラック上で隣接する最良サーボパターンとの間の間隔が所定値(基準値)以下か否かを判断する。この場合の所定値(基準値)とは、サーボ演算に必要な時間が確保できるだけの間隔を意味し、より具体的には、あるサーボパターン検出後、そのサーボ演算が完了するまでに次のサーボパターンの検出が開始されない程度の間隔を意味する。
【0052】
例えば、図13に示す不良のサーボパターンBSPに対して、サーボパターン(SP2)が良好と判断されたものとする(図6のステップS38)。この場合、サーボパターンSP1(セクタ#2)と隣接するサーボパターンSP2(セクタ#3)との演算時間D12が所定の演算時間D(基準値)以下か否かを判断する。また、同様に、図6のステップS38においてサーボパターンSP4、SP3が良好と判断された場合には、サーボパターンSP1(セクタ#2)と隣接サーボパターンSP4(セクタ#2)との演算時間D14が、あるいは,サーボパターンSP1(セクタ#2)と隣接パターンSP3(セクタ#3)との演算時間D13が、所定演算時間D(基準値)以下か否かを判断する。この場合、演算時間が所定演算時間Dより長い場合には、このステップS44の判断が否定される場合がある。
【0053】
このステップS44の判断が否定された場合には、ステップS40に移行する。
【0054】
一方、ステップS44の判断が肯定された場合には、次のステップS46において、不良検出・代替パターン判定部37が、良好なサーボパターンを、代替サーボパターンに設定し、不良セクタ・代替パターン記憶部39に登録する。
【0055】
次いで、ステップS50では、不良検出・代替パターン判定部37が、同一トラック上ですべてのセクタを終了したか否かを判断し、判断が否定された場合には、ステップS51において次のセクタに移動した後、ステップS34に戻り、上記と同様の処理を実行する。一方、同一トラック上のすべてのセクタを終了した場合には、ステップS52に移行する。なお、前述したステップS34の判断が否定された場合にもステップS50に移行する。ステップS50の判断が肯定された場合には、ステップS52に移り、全トラック終了判断が行われ、判断が否定された場合には、ステップS53にて次のトラックへ移動した後、ステップS30に戻って次のトラックに対する上記と同様の処理を実行する。また、全トラックに対する上記と同様の処理が終了し、ステップS52の判断が肯定された場合には、図6のサブルーチンを終了して、図4のステップS15に移行する。
【0056】
ここで、図14には、図6のサブルーチンが完了した際に、不良セクタ・代替パターン記憶部39に登録されている代替サーボパターンのリスト(表)の一例が示されている。この図14のリストによると、ゾーン2の不良セクタのトラック番号が「T−20000」、セクタ番号が「S−50」及び「S−130」であり、これらのセクタにおいて設定されている最良サーボパターン(SP3)に代えて、代替サーボパターンSP2及びSP1がそれぞれ設定されたことが分かる。
【0057】
図4に戻り、次のステップS15では、位置決め制御系50(遅延回路41を含む)が、RRO目標値補正テーブルを作成する。この場合、図15に示すように、最良サーボパターン記憶部33に登録されている最良サーボパターン群SPoptの情報、及び不良セクタ・代替パターン記憶部39に登録されている代替サーボパターンの情報に基づいて、実際に磁気ヘッド161を位置決めする。そして、そのときのサーボパターン情報からRRO目標値の補正値を取得して、RRO目標値補正テーブル42を作成する。なお、RRO目標値補正テーブルは、実際には、磁気ディスク20の各セクタ直後に書き込まれるようになっている。
【0058】
以上のようにして、図4の全ての処理が完了すると、HDD100の出荷前試験が終了する。
【0059】
ここで、HDD100の出荷後は、図16に示すように、位置決め制御系50が、最良サーボパターン記憶部33に登録されている最良サーボパターン情報、不良セクタ・代替パターン記憶部39に登録されている代替パターン情報、RRO電流補正テーブル35及びRRO目標値補正テーブル42の情報を用いて、磁気ヘッド161の位置決め制御を実行する。
【0060】
なお、HDD100では、磁気ディスク20への情報(ユーザ情報)の記録(書き込み)が進むにつれ、磁気ディスク20上に転写されているサーボパターンのうち、制御に用いられないサーボパターンは次第に消去される(ユーザ情報の上書きがされる)ようになっている。
【0061】
以上詳細に説明したように、本実施形態によると、複数組のサーボパターン群の転写品質を評価した結果に基づいて、位置決めに使用するサーボパターン組(最良サーボパターン組SPopt)を磁気ディスク20のゾーンごとに選択するので、位置決めに使用するサーボパターンの歩留まりを向上することができる。したがって、上記のようにして選択されたサーボパターンを用いて磁気ヘッド161の位置決めを行うことにより、磁気ヘッド161の位置決めを高精度に行うことができる。
【0062】
また、本実施形態では、最良サーボパターン組を選択した後、再度最良サーボパターン組を評価して、不良サーボパターンを検出し、その不良サーボパターンごとに、最良サーボパターン組以外のサーボパターンのいずれかを代替サーボパターンに設定するので、最良サーボパターンの中に不良サーボパターンが含まれるような場合であっても、磁気ヘッド161の位置決めを高精度に行うことが可能である。
【0063】
また、本実施形態では、同一トラック上で位置制御に用いられる隣接サーボパターン間の間隔(狭いほうの間隔)が、基準値(サーボ演算を考慮した値)以下となるように、代替サーボパターンを決定するので、位置決め制御に支障の無い代替サーボパターンを選択することができる。
【0064】
なお、上記実施形態では、サーボパターン群の転写品質の評価及び最良サーボパターン組の選択を、ゾーンごとに行う場合について説明したが、本発明はこれに限られるものではない。例えば、1トラック毎に転写品質の評価及び最良サーボパターン組の選択を行うこととしても良いし、数トラック毎に転写品質の評価及び最良サーボパターン組の選択を行うこととしても良い。
【0065】
なお、上記実施形態では、出荷前試験においてRRO目標値補正テーブルを作成する場合(ステップS15)について説明したが、これに限られるものではなく、RRO目標値補正テーブルは、出荷後(例えば、出荷後最初に電源が投入されたとき)に作成することとしても良い。
【0066】
なお、上記実施形態では、磁気転写方式のサーボトラックライタを用いた場合について説明したが、これに限られるものではなく、その他のサーボトラックライタ、例えば、プッシュピン方式、スタックSTW方式、リライトSTW方式、コピーSTW方式を用いて複数組のサーボパターンを作製した場合にも、上記実施形態と同様の位置決め制御を行うことが可能である。
【0067】
なお、上記実施形態では、位置決め制御系50に含まれる品質評価選択演算部31を用いて、最良サーボパターン組SPoptを決定するとともに、位置決め制御系50に含まれる不良検出・代替パターン判定部37を用いて、代替サーボパターンを決定することとした。しかしながら、これに限られるものではなく、図17に示すように、HDD100を、外部の試験装置200(品質評価選択演算部31と同様の機能を有する品質評価選択演算器231と、不良検出・代替パターン判定部37と同様の機能を有する不良検出・代替パターン判定器237を含む)に接続して、上記実施形態と同様の処理を実行しても良い。この場合、HDD100の位置決め制御系50は、試験装置200により取得される情報を利用可能な構成が少なくとも存在していれば良いので、図16の構成(情報保持部としての、最良サーボパターン記憶部33及び不良セクタ・代替パターン記憶部39を有する構成)のみを有していれば良い。このような構成を採用することとしても、上記実施形態と同様の効果を得ることができるとともに、出荷前試験終了後にはほとんど使用することがない構成をHDD100内に設けておく必要が無いので、装置の低コスト化を図ることができる。
【0068】
なお、上記実施形態では、出荷前試験を、出荷前のHDD100の全てに対して実行する場合を想定しているが、これに限られるものではない。例えば、同一ロットの磁気ディスクを搭載するHDDの中から1台又は複数台を抽出し、当該抽出されたHDDに対してのみ出荷前試験を行うこととしても良い。この場合、1台又は複数台で行われた試験の結果を、同一ロットの磁気ディスクを搭載するHDDにおいて用いるようにすることができる。このようにしても、転写マスタ作製時のパターン欠陥や、転写マスタと磁気ディスクとの密着不良による信号振幅の低下やパターンの欠陥など、同一ロットの磁気ディスクであれば、ほぼ一律に生じるであろう不良要因を排除することは可能であり、従来よりも高精度な磁気ヘッドの位置決めが可能である。
【0069】
上述した実施形態は本発明の好適な実施の例である。但し、これに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変形実施可能である。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】一実施形態に係るHDDの構成を概略的に示す平面図である。
【図2】図2(a)は、磁気ディスク上に記録された複数組のサーボパターン群を概略的に示す図であり、図2(b)は、サーボパターンの具体的な構成を示す図である。
【図3】位置決め制御系を示す図である。
【図4】磁気ディスクへのサーボパターンの記録、及び出荷前試験における処理を示すフローチャートである。
【図5】ステップS11のサブルーチンを示すフローチャートである。
【図6】ステップS14のサブルーチンを示すフローチャートである。
【図7】図4のステップS10の処理を概略的に示す図である。
【図8】図4のステップS11の制御系を示す図である。
【図9】図4のステップS12により選択された最適サーボパターンの一例を示す図である。
【図10】図4のステップS12により選択された最適サーボパターンをゾーン番号ごとに示す表である。
【図11】図4のステップS13の制御系を示す図である。
【図12】図4のステップS14の制御系を示す図である。
【図13】図6の処理を説明するための図である。
【図14】図6の処理により設定された代替サーボパターンを示す表である。
【図15】図4のステップS15の制御系を示す図である。
【図16】出荷後に、磁気ヘッドの位置決めに用いる位置決め制御系を示す図である。
【図17】変形例に係るHDD、及び当該HDDが出荷前試験において接続される試験装置を示す図である。
【符号の説明】
【0071】
20 磁気ディスク(磁気記憶媒体)
31 品質評価選択演算部(品質評価・選択部)
33 最良サーボパターン記憶部(情報保持部の一部)
37 不良検出・代替パターン判定部(不良検出部、代替部)
39 不良セクタ・代替パターン記憶部(情報保持部の一部)
50 位置決め制御系(位置決め部)
100 HDD(磁気記憶装置)
161 磁気ヘッド
BSP 不良サーボパターン
SP1〜SP4 サーボパターン群(サーボパターン)
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気ヘッドの位置決め方法及び磁気記憶装置に関し、特に磁気記憶媒体に対する磁気ヘッドの位置決め方法及び当該磁気ヘッドの位置決め方法の実施に好適な磁気記憶装置に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気ディスク装置(ハードディスク装置(HDD))は、主として、情報を磁気的に記録する磁気ディスク(磁気記憶媒体)と、スピンドルモータによって回転駆動される磁気ディスクに対して情報を記録または再生する磁気ヘッドとを備えている。磁気ヘッドは、一定角度の範囲内を回転するヘッド・スタック・アッセンブリの先端部分に設けられている。
【0003】
磁気ディスクには、磁気ヘッドと磁気ディスク上のトラックとの相対位置を検出するための位置情報(サーボ情報)が磁気的に記録されている。このサーボ情報を用いて位置決めされた磁気ヘッドは、磁気ディスクに対して情報(ユーザデータ)の記録を行う。サーボ情報は、媒体の半径方向に延伸したパターンで形成され、例えば、サーボクロックパターン、セクタマーク(SM)、トラッキング用パターン領域を含んでいる。
【0004】
このサーボ情報の磁気ディスクに対する記録は、従来、サーボトラックライタ(STW)と呼ばれる装置を用いて行われていた。しかるに、STWを用いると、例えば60Gバイトの記録容量の磁気ディスクにサーボ情報を記録するのに30分/枚程度の時間がかかってしまう。また、将来的には、トラック記録密度の増加に伴ってサーボ情報の記録処理に要する時間はさらに増大すると考えられる。
【0005】
これに対し、最近では、サーボ情報の記録時間を短縮するための技術として、サーボ情報を磁気ディスクに磁気転写する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
この磁気転写方法では、クリーンルーム中で、サーボ情報に対応する凹凸が形成された転写マスタと磁気ディスクとを1枚1枚密着させてサーボ情報の転写を行う。このため、密着、解除を何度も繰り返すと、転写マスタと磁気ディスクとの間に塵埃(コンタミ)を巻き込み、磁気的なサーボ情報が正確に転写されない部分が生じ、いわゆる転写欠陥が生じる場合がある。また、このほかにも転写マスタ作製時のパターン欠陥、転写マスタと磁気ディスクとの密着不良による信号振幅の低下やパターンの欠陥、媒体の磁気特性ばらつきなど、磁気転写における不良要因が存在する場合がある。そこで、最近では、転写欠陥をできるだけなくし、歩留りを向上させるために、さまざまな欠陥検査方法が提案されている(例えば、特許文献2〜6等参照)。
【0007】
【特許文献1】特開平10−40544号公報
【特許文献2】特開2001−249080号公報
【特許文献3】特開2001−176001号公報
【特許文献4】特開2002−74601号公報
【特許文献5】特開2001−283432号公報
【特許文献6】特開2001−167434号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記方法を用いても、不良セクタを皆無にすることは困難である。このため、1トラックに数個の不良セクタが存在する場合には、そのトラック全体の使用ができなくなり、当該不良トラックに代えて代替トラックが用意されることになる。
【0009】
最近では、高TPI化に伴って代替トラックを利用するケースが増えているが、予め用意されている代替トラックリストが一杯になると、その転写した媒体自体が不良品となり、磁気ヘッドの高精度な位置決めができなくなる。
【0010】
そこで本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、磁気ヘッドの位置決めを高精度に行うことが可能な磁気ヘッドの位置決め方法を提供することを目的とする。また、本発明は、磁気ヘッドによる情報記録及び再生を高精度に行うことが可能な磁気記憶装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本明細書に記載の磁気ヘッドの位置決め方法は、磁気記憶媒体に設けられた複数組のサーボパターンの品質を、磁気ヘッドによる前記サーボパターンの検出結果を用いて評価する評価工程と、前記評価結果から、前記磁気記憶媒体を半径方向に分割した領域ごとに、前記磁気ヘッドの位置決めに使用するサーボパターンの組を選択する選択工程と、を含んでおり、前記磁気ヘッドの位置決めには、前記選択工程で選択されたサーボパターンの組を用いる磁気ヘッドの位置決め方法である。
【0012】
これによれば、複数組のサーボパターンの品質を評価した結果に基づいて、位置決めに使用するサーボパターンの組を、磁気記憶媒体を半径方向に分割した領域ごとに選択し、当該選択されたサーボパターンの組を用いて磁気ヘッドの位置決めを行うので、領域ごとに品質の良い(歩留まりの高い)サーボパターンを用いて磁気ヘッドの位置決めを行うことができる。これにより、磁気ヘッドの位置決めを高精度に行うことが可能となる。
【0013】
本明細書に記載の第1の磁気記憶装置は、磁気ヘッドと、前記磁気ヘッドの位置決めに用いられる複数組のサーボパターンが設けられた磁気記憶媒体と、前記磁気記憶媒体のサーボパターンの品質を評価し、前記磁気記憶媒体を半径方向に分割した領域ごとに、前記磁気ヘッドの位置決めに使用するサーボパターンの組を選択する品質評価・選択部と、前記品質評価・選択部により選択されたサーボパターンを用いて、前記磁気ヘッドの位置決めを行う位置決め部と、を備えている。
【0014】
これによれば、品質評価・選択部が、複数組のサーボパターンの品質を評価した結果に基づいて、位置決めに使用するサーボパターンの組を、磁気記憶媒体を半径方向に分割した領域ごとに選択し、位置決め部が、当該選択されたサーボパターンの組を用いて磁気ヘッドの位置決めを行うので、領域ごとに品質の良い(歩留まりの高い)サーボパターンを用いて磁気ヘッドの位置決めを行うことができる。これにより、磁気ヘッドによる情報記録及び再生を高精度に行うことが可能となる。
【0015】
本明細書に記載の第2の磁気記憶装置は、磁気ヘッドと、前記磁気ヘッドの位置決めに用いられる複数組のサーボパターンが設けられた磁気記憶媒体と、前記磁気記憶媒体のサーボパターンの品質を評価した結果から選択される、前記磁気記憶媒体を半径方向に分割した領域ごとに前記磁気ヘッドの位置決めに使用するサーボパターンの組の情報を保持する情報保持部と、前記情報保持部に保持されている情報に基づいて、前記磁気ヘッドの位置決めを行う位置決め部と、を備えている。
【0016】
これによれば、情報保持部が保持する、磁気記憶媒体を半径方向に分割した領域ごとに選択されたサーボパターンの組の情報に基づいて、位置決め部が磁気ヘッドの位置決めを行うので、領域ごとに品質の良い(歩留まりの高い)サーボパターンを用いて磁気ヘッドの位置決めを行うことができる。これにより、磁気ヘッドによる情報記録及び再生を高精度に行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0017】
本明細書に記載の磁気ヘッドの位置決め方法は、磁気ヘッドの位置決めを高精度に行うことができるという効果を奏する。また、本明細書に記載の磁気記憶装置は、磁気ヘッドによる情報記録及び再生を高精度に行うことができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の磁気記憶装置の一実施形態について、図1〜図15に基づいて詳細に説明する。
【0019】
図1は、本実施形態に係る磁気記憶装置としてのハードディスクドライブ(HDD)100の内部構成を示している。この図1に示すように、HDD100は、箱型の筺体11、筺体11内部の空間(収容空間)に収容された磁気記憶媒体としての磁気ディスク20、スピンドルモータ15、ヘッド・スタック・アッセンブリ(HSA)16、ボイスコイルモータ(VCM)17及びヘッド位置決め回路、各種の制御用LSI等が実装された制御基板(図示せず)等を備える。なお、筺体11は、実際には、ベースと上蓋(トップ・カバー)とにより構成されているが、図1では、上蓋の図示を省略している。ヘッド・スタック・アッセンブリ16は、磁気ヘッド161を有している。このヘッド・スタック・アッセンブリ16は、磁気ヘッド161とは反対側に設けられたボイスコイルモータ17により、支軸14を中心に駆動(揺動)されるようになっている。
【0020】
磁気ディスク20は、ガラスやアルミナ製の非磁性の基板を有し、スピンドルモータ15によって高速度で回転駆動される。なお、本実施形態では、磁気ディスク20の表側の面のみが記録面であるものとする。ただし、磁気ディスク20は、表側の面と裏側の面の両面が記録面であっても良い。また、磁気ディスク20は、回転軸に沿って(図1の紙面直交方向に沿って)複数枚設けられていても良い。
【0021】
磁気ディスク20の記録面には、図2(a)に模式的に示すように、4組のサーボパターン群SP1、SP2,SP3,SP4が等間隔で設けられている。これら4組のサーボパターン群SP1〜SP4のそれぞれは、磁気ディスク20上のセクタ数と同一数のサーボパターンを有しており、各サーボパターン間の角度は等角度に設定されている。また、本実施形態では、各サーボパターンの種類(位相パターン、面積パターンなどの種類)は同一とされている。ただし、これに限らず、それぞれが異なる種類のサーボパターンであっても良い。
【0022】
なお、以下の説明では、サーボパターン群SP1〜SP4を構成するサーボパターンがどのサーボパターン群に属しているかを明確にする必要がある場合には、単独のサーボパターンに対しても、サーボパターン群と同一の符号SP1〜SP4を付すものとする。
【0023】
本実施形態では、サーボパターンの一部を拡大して示す図2(b)から分かるように、サーボパターンとして振幅パターンを採用している。これらサーボパターンは、図2(b)に示すように、プリアンブル部と、アドレス部と、バースト部とを有している。また、アドレス部は、サーボパターン組番号、トラック番号、セクタ番号を含んでいる。サーボパターン組番号は、サーボパターン群の組SP1〜SP4の番号「1」〜「4」を意味する。
【0024】
図3には、磁気ヘッド161の位置決めを実行するための位置決め部としての位置決め制御系50の基本構成のブロック図が示されている。この図3に示すように、位置決め制御系50は、フィードバック制御器(FB制御器)21、制御対象であるVCM17、演算ブロック23a、23b、23c、23d、サンプラ25a、25bを備えている。サンプラ25aは、A/D変換器を含み、サンプラ25bは、D/A変換器を含んでいる。位置決め制御系50によれば、加速度外乱、位置外乱及びスピンドルモータのRRO(Repeatable Run Out)の影響を考慮した、VCM17(磁気ヘッド161)の正確なフィードバック制御が可能である。なお、図3のブロック図は、位置決め制御系50の基本構成を示すものであり、実際には、その他の構成(図8に示す品質評価選択演算部31、最良サーボパターン記憶部33など)も含んでいるが、この点については後で詳述する。
【0025】
次に、図4〜図6のフローチャートに基づいて、磁気ディスク20へのサーボパターン(サーボパターン群SP1〜SP4)の記録(作成)、及びサーボパターンが記録された磁気ディスク20をHDD100に搭載した後に行う出荷前試験の詳細について説明する。なお、本出荷前試験は、出荷前のHDD100の全てに対して実行するものであるとする。
【0026】
まず、図4のステップS10では、磁気ディスク20に対し、所要セクタ数を有するn組(本実施形態では4組)のサーボパターン群(SP1〜SPn(SP4))を磁気転写法により記録(作製)する。図7(a)〜図7(d)には、このステップS10の処理の手順が簡略化して示されている。なお、図7(a)〜図7(d)は、磁気ディスク20が水平磁気記録用の磁気ディスクである場合の手順を示している。
【0027】
この磁気転写法では、まず、図7(a)に示すような、磁気ディスク20に記録されるべきサーボ情報に対応した凹凸パターンを持つ転写マスタディスク(以下、単に「転写マスタ」と呼ぶ)302を用意する。この転写マスタ302の凹凸パターンは、EB描画装置により描画されており、当該凹凸パターン部分には磁性層が形成されている。
【0028】
次いで、図7(b)に示すように、サーボ情報を記録する磁気ディスク20の近傍に、外部磁界A(磁気ヘッド303)を近接させ、磁気ディスク20の磁性層を、一方向(A1)に磁化(初期磁化)させる。
【0029】
次いで、図7(c)に示すように、転写マスタ302と磁気ディスク20とを密着させた状態で、転写マスタ302側から、初期磁化と逆向きの磁界Bを加える。
【0030】
このとき、転写マスタ302と接した磁気ディスク20の部分は、初期磁化の方向(A1)とは逆の方向(B1)に磁化反転する。しかし、磁気ディスク20の転写マスタ302と接していない部分は、図7(c)のように、初期磁化の方向(A1)の磁化がそのまま保たれる。
【0031】
次いで、図7(d)に示すように、転写マスタ302と磁気ディスク20との密着を解除することにより、磁気ディスク20にサーボ情報(サーボパターン)が磁気的情報として転写される。なお、磁気ディスク20が垂直磁気記録用の磁気ディスクである場合には、図7(b)、図7(c)の磁化方向を水平方向から垂直方向に変更すれば良い。
【0032】
本実施形態では、上記のような磁気転写法を用いるため、複数種類のサーボパターン群(SP1〜SP4)を磁気ディスク20に転写することとしても、1種類のサーボパターンを転写する場合と同程度の転写時間で足りる。
【0033】
上記のようにして、磁気ディスク20に対するサーボパターン群の転写が完了すると、次のステップS11(図4)では、サーボパターンの転写品質の評価(取得)に関するサブルーチンを実行する。なお、ステップS11のサブルーチンの処理は、位置決め制御系50に含まれる品質評価・選択部としての品質評価選択演算部31(図8参照)が実行する。ただし、以下の説明では、特に必要な場合を除いて、処理の主体についての記載を省略するものとする。
【0034】
このステップS11のサブルーチンでは、まず、図5のステップS20において、サーボパターン群の組を示す変数k(k=1〜n(ここではn=4))を1に設定する。次いで、ステップS22では、位置決め制御系50により磁気ヘッド161をサーボパターン群SPk(ここではSP1)にオントラックし、次のステップS24において、転写品質QEk(ここではQE1)を、磁気ディスク20のゾーンごとに取得する。
【0035】
転写品質QEkは、複数の転写品質指標qk(i)(i=1〜m)を用いて、次式(1)により算出(取得)する。なお、ρ(i)は、重み係数である。
【0036】
【数1】
【0037】
ここで、転写品質指標qk(i)(i=1〜m)としては、サーボパターン情報から求めることが可能な指標、例えば、以下の4つの指標を用いることができる。
qk(1):1次偏心補正後のRPE(repeatable position error)
qk(2):隣接トラックのRPE差分
qk(3):トラック変動の周期成分
qk(4):トラック中心でのプリアンブル部、アドレス部、バースト部のエラーレート
【0038】
上式(1)を用いて、サーボパターン群SP1の転写品質(QE1)がゾーンごとに取得されると、次のステップS26では、変数kが、総組数n(ここではn=4)であるか否かを判断する。この段階では、k=1であるので、判断は否定され、次のステップS28において、kを1インクリメントした後、ステップS22に戻る。
【0039】
その後は、ステップS22〜S28を繰り返すことにより、サーボパターン群SP2〜SP4それぞれの転写品質QE2〜QE4をゾーンごとに取得する。そして、ステップS26の判断が肯定された段階で、図4のステップS12に移行する。
【0040】
次のステップS12では、品質評価選択演算部31が、ステップS11で取得した各サーボパターン群の転写品質をゾーンごとに判断して、各ゾーンにおいて、最も品質の良いサーボパターン(サーボパターン群)を決定する。そして、それら最も品質の良いサーボパターン群を「最良サーボパターン群SPopt」とし、情報保持部としての最良サーボパターン記憶部33(図8参照)に登録する。
【0041】
図9には、ゾーンごとに選択された最良サーボパターン群が、太線にて示されている。なお、図9では、磁気ディスク20上にゾーンが3つ存在している場合を示しており、最も外側のゾーン1の最良サーボパターン群がSP1であり、真ん中のゾーン2の最良サーボパターン群がSP3であり、最も内側のゾーン3の最良サーボパターン群がSP4である場合を図示している。また、図10には、ゾーン番号と、そのゾーンにおいて選択された最良サーボパターン群の組番号の関係が表にて示されている。なお、図10の表では、図9の場合と異なり、ゾーンが3以上(r個(実際のrは10〜20前後))ある場合について図示している。
【0042】
次いで、図4のステップS13では、位置決め制御系50においてRRO電流補正テーブルを作成する。この場合、図11に示す位置決め制御系50(遅延回路36を含む)が、最良サーボパターン記憶部33に登録されている最良サーボパターン組SPoptの情報に基づいて、磁気ヘッド161を最良サーボパターン組に位置決めする。そして、そのときの位置ずれ量(サーボパターン情報などから求められる)からRRO電流補正値を取得して、RRO電流補正テーブル35を作成する。位置決め制御系50では、RRO電流補正テーブル35を用いた位置制御(例えば、図12参照)を行うことで、サーボパターンへの位置決め精度を向上することができる。
【0043】
次いで、図4のステップS14では、最良サーボパターン組において、トラック毎に不良のサーボパターン(不良セクタ)の検出及び代替パターンの設定に関するサブルーチン(図6)を実行する。なお、図6のサブルーチンの処理は、主に、図12に示す不良検出部及び代替部としての不良検出・代替パターン判定部37が実行する。ただし、以下の説明では、特に必要な場合を除いて、処理の主体についての記載を省略するものとする。
【0044】
まず、図6のステップS30では、最良サーボパターン組において、位置決め制御系50が、不良セクタ検出のための最初の対象トラックに磁気ヘッド161をオントラックする。なお、最初の対象トラックとしては、磁気ディスク20上のどのトラックを設定しても構わないが、ここでは、例えば、磁気ディスクの最外周に位置するトラックが最初の対象トラックに設定されたものとする。
【0045】
次のステップS32では、最初の対象トラックに磁気ヘッド161をオントラックした状態で、最良パターンの検出を行う。次いで、ステップS34では、不良検出・代替パターン判定部37が、対象トラック上に不良セクタが存在したか否かを判断する。この不良セクタの検出は、不良セクタ検出指標Df(j)に基づいて行われる。
【0046】
ここで、不良セクタ検出指標Df(j)としては、例えば、以下の指標を用いることができ、これら指標のいずれかが、それぞれの指標に設定された規定値(閾値)を超えた場合にそのセクタを不良セクタと判定するものとする。
Df(1):プリアンブル部、アドレス部、バースト部などの信号振幅やSN
Df(2):サーボ評価で取得されるRPE、NRPE
Df(3):データのライト/リード評価で取得されるエラーレート
【0047】
このステップS34における判断が否定された場合には、ステップS50に移行するが、肯定された場合にはステップS36に移行する。ここでは、例えば、図13に符号「BSP」で示すサーボパターンが不良(不良セクタ)であったものとして、以下説明する。
【0048】
次いで、ステップS36では、不良検出・代替パターン判定部37が、不良のサーボパターンBSPに隣接するサーボパターン(別の組のサーボパターン)の品質をステップS11と同様にして検出(評価)する。ここでは、例えば、最良サーボパターン組として登録されているサーボパターン(SP1)に隣接するサーボパターンには、優先順位がある。最適サーボパターン組がSP1であるとして、セクタ#3(セクタは反時計回りで数値が増加するとする)で不良サーボパターンBSPが発生したとすると、優先順位は、サーボパターンSP1の不良セクタ#3(BSP)に反時計回り方向に近いもの、時計回り方向に近いものという順番で、SP2(セクタ#3)→SP4(セクタ#2)→SP3(セクタ#3)の順となっている。このため、ステップS36では、最も優先順位の高いサーボパターンSP2(セクタ#3)の評価を行う。
【0049】
なお、最良サーボパターン組として登録されているサーボパターンがサーボパターンSP2であり、不良セクタがセクタ#3である場合には、隣接するサーボパターンの優先順位は、反時計回り方向に近いもの、時計回り方向に近いものという順番で、SP3(セクタ#3)→SP1(セクタ#3)→SP4(セクタ#3)となる。すなわち、一般的には、優先順位は、最良サーボパターン組として登録されているサーボパターンSPsに対し、反時計回りに最も近いサーボパターン→時計回りに最も近いサーボパターン→反時計回りに2番目に近いサーボパターン→時計回りに2番目に近いサーボパターン…の順となる。この場合、サーボパターンの組が1〜nまである場合には、反時計回りにn/2番目に近いサーボパターンまでを評価対象にするとともに、時計回りにn/2番目に近いサーボパターンまでを評価対象にすれば良い。
【0050】
次のステップS38では、不良検出・代替パターン判定部37が、ステップS36の結果、隣接するサーボパターン(SP2(セクタ#3))が良好か否かを判断する。ここでの判断が否定された場合(不良であった場合)は、ステップS40において、同一セクタ内および一つ前のセクタに別の組の隣接するサーボパターンがあるか否かを判断する。ここでは、まだ、サーボパターンSP2の評価を行ったのみなので、ステップS36に戻り、次の優先順位のサーボパターン(SP4(セクタ#2))の評価を行う。このようにして、良好なサーボパターンが発見された場合には、ステップS38の判断が肯定されて、ステップS44に移行する。一方、ステップS40で同一セクタ内および一つ前のセクタの全ての組のサーボパターンが不良であった場合には、ステップS40の判断が否定され、ステップS42に移行する。このステップS42では、不良検出・代替パターン判定部37が、図13において符号BSPで示されるサーボパターンを含むセクタを不良セクタと判定し、当該判定結果を、情報保持部としての不良セクタ・代替パターン記憶部39に登録する。
【0051】
これに対し、ステップS38の判断が肯定され、ステップS44に移行すると、不良検出・代替パターン判定部37は、ステップS38で良好と判定されたサーボパターンと、同一トラック上で隣接する最良サーボパターンとの間の間隔が所定値(基準値)以下か否かを判断する。この場合の所定値(基準値)とは、サーボ演算に必要な時間が確保できるだけの間隔を意味し、より具体的には、あるサーボパターン検出後、そのサーボ演算が完了するまでに次のサーボパターンの検出が開始されない程度の間隔を意味する。
【0052】
例えば、図13に示す不良のサーボパターンBSPに対して、サーボパターン(SP2)が良好と判断されたものとする(図6のステップS38)。この場合、サーボパターンSP1(セクタ#2)と隣接するサーボパターンSP2(セクタ#3)との演算時間D12が所定の演算時間D(基準値)以下か否かを判断する。また、同様に、図6のステップS38においてサーボパターンSP4、SP3が良好と判断された場合には、サーボパターンSP1(セクタ#2)と隣接サーボパターンSP4(セクタ#2)との演算時間D14が、あるいは,サーボパターンSP1(セクタ#2)と隣接パターンSP3(セクタ#3)との演算時間D13が、所定演算時間D(基準値)以下か否かを判断する。この場合、演算時間が所定演算時間Dより長い場合には、このステップS44の判断が否定される場合がある。
【0053】
このステップS44の判断が否定された場合には、ステップS40に移行する。
【0054】
一方、ステップS44の判断が肯定された場合には、次のステップS46において、不良検出・代替パターン判定部37が、良好なサーボパターンを、代替サーボパターンに設定し、不良セクタ・代替パターン記憶部39に登録する。
【0055】
次いで、ステップS50では、不良検出・代替パターン判定部37が、同一トラック上ですべてのセクタを終了したか否かを判断し、判断が否定された場合には、ステップS51において次のセクタに移動した後、ステップS34に戻り、上記と同様の処理を実行する。一方、同一トラック上のすべてのセクタを終了した場合には、ステップS52に移行する。なお、前述したステップS34の判断が否定された場合にもステップS50に移行する。ステップS50の判断が肯定された場合には、ステップS52に移り、全トラック終了判断が行われ、判断が否定された場合には、ステップS53にて次のトラックへ移動した後、ステップS30に戻って次のトラックに対する上記と同様の処理を実行する。また、全トラックに対する上記と同様の処理が終了し、ステップS52の判断が肯定された場合には、図6のサブルーチンを終了して、図4のステップS15に移行する。
【0056】
ここで、図14には、図6のサブルーチンが完了した際に、不良セクタ・代替パターン記憶部39に登録されている代替サーボパターンのリスト(表)の一例が示されている。この図14のリストによると、ゾーン2の不良セクタのトラック番号が「T−20000」、セクタ番号が「S−50」及び「S−130」であり、これらのセクタにおいて設定されている最良サーボパターン(SP3)に代えて、代替サーボパターンSP2及びSP1がそれぞれ設定されたことが分かる。
【0057】
図4に戻り、次のステップS15では、位置決め制御系50(遅延回路41を含む)が、RRO目標値補正テーブルを作成する。この場合、図15に示すように、最良サーボパターン記憶部33に登録されている最良サーボパターン群SPoptの情報、及び不良セクタ・代替パターン記憶部39に登録されている代替サーボパターンの情報に基づいて、実際に磁気ヘッド161を位置決めする。そして、そのときのサーボパターン情報からRRO目標値の補正値を取得して、RRO目標値補正テーブル42を作成する。なお、RRO目標値補正テーブルは、実際には、磁気ディスク20の各セクタ直後に書き込まれるようになっている。
【0058】
以上のようにして、図4の全ての処理が完了すると、HDD100の出荷前試験が終了する。
【0059】
ここで、HDD100の出荷後は、図16に示すように、位置決め制御系50が、最良サーボパターン記憶部33に登録されている最良サーボパターン情報、不良セクタ・代替パターン記憶部39に登録されている代替パターン情報、RRO電流補正テーブル35及びRRO目標値補正テーブル42の情報を用いて、磁気ヘッド161の位置決め制御を実行する。
【0060】
なお、HDD100では、磁気ディスク20への情報(ユーザ情報)の記録(書き込み)が進むにつれ、磁気ディスク20上に転写されているサーボパターンのうち、制御に用いられないサーボパターンは次第に消去される(ユーザ情報の上書きがされる)ようになっている。
【0061】
以上詳細に説明したように、本実施形態によると、複数組のサーボパターン群の転写品質を評価した結果に基づいて、位置決めに使用するサーボパターン組(最良サーボパターン組SPopt)を磁気ディスク20のゾーンごとに選択するので、位置決めに使用するサーボパターンの歩留まりを向上することができる。したがって、上記のようにして選択されたサーボパターンを用いて磁気ヘッド161の位置決めを行うことにより、磁気ヘッド161の位置決めを高精度に行うことができる。
【0062】
また、本実施形態では、最良サーボパターン組を選択した後、再度最良サーボパターン組を評価して、不良サーボパターンを検出し、その不良サーボパターンごとに、最良サーボパターン組以外のサーボパターンのいずれかを代替サーボパターンに設定するので、最良サーボパターンの中に不良サーボパターンが含まれるような場合であっても、磁気ヘッド161の位置決めを高精度に行うことが可能である。
【0063】
また、本実施形態では、同一トラック上で位置制御に用いられる隣接サーボパターン間の間隔(狭いほうの間隔)が、基準値(サーボ演算を考慮した値)以下となるように、代替サーボパターンを決定するので、位置決め制御に支障の無い代替サーボパターンを選択することができる。
【0064】
なお、上記実施形態では、サーボパターン群の転写品質の評価及び最良サーボパターン組の選択を、ゾーンごとに行う場合について説明したが、本発明はこれに限られるものではない。例えば、1トラック毎に転写品質の評価及び最良サーボパターン組の選択を行うこととしても良いし、数トラック毎に転写品質の評価及び最良サーボパターン組の選択を行うこととしても良い。
【0065】
なお、上記実施形態では、出荷前試験においてRRO目標値補正テーブルを作成する場合(ステップS15)について説明したが、これに限られるものではなく、RRO目標値補正テーブルは、出荷後(例えば、出荷後最初に電源が投入されたとき)に作成することとしても良い。
【0066】
なお、上記実施形態では、磁気転写方式のサーボトラックライタを用いた場合について説明したが、これに限られるものではなく、その他のサーボトラックライタ、例えば、プッシュピン方式、スタックSTW方式、リライトSTW方式、コピーSTW方式を用いて複数組のサーボパターンを作製した場合にも、上記実施形態と同様の位置決め制御を行うことが可能である。
【0067】
なお、上記実施形態では、位置決め制御系50に含まれる品質評価選択演算部31を用いて、最良サーボパターン組SPoptを決定するとともに、位置決め制御系50に含まれる不良検出・代替パターン判定部37を用いて、代替サーボパターンを決定することとした。しかしながら、これに限られるものではなく、図17に示すように、HDD100を、外部の試験装置200(品質評価選択演算部31と同様の機能を有する品質評価選択演算器231と、不良検出・代替パターン判定部37と同様の機能を有する不良検出・代替パターン判定器237を含む)に接続して、上記実施形態と同様の処理を実行しても良い。この場合、HDD100の位置決め制御系50は、試験装置200により取得される情報を利用可能な構成が少なくとも存在していれば良いので、図16の構成(情報保持部としての、最良サーボパターン記憶部33及び不良セクタ・代替パターン記憶部39を有する構成)のみを有していれば良い。このような構成を採用することとしても、上記実施形態と同様の効果を得ることができるとともに、出荷前試験終了後にはほとんど使用することがない構成をHDD100内に設けておく必要が無いので、装置の低コスト化を図ることができる。
【0068】
なお、上記実施形態では、出荷前試験を、出荷前のHDD100の全てに対して実行する場合を想定しているが、これに限られるものではない。例えば、同一ロットの磁気ディスクを搭載するHDDの中から1台又は複数台を抽出し、当該抽出されたHDDに対してのみ出荷前試験を行うこととしても良い。この場合、1台又は複数台で行われた試験の結果を、同一ロットの磁気ディスクを搭載するHDDにおいて用いるようにすることができる。このようにしても、転写マスタ作製時のパターン欠陥や、転写マスタと磁気ディスクとの密着不良による信号振幅の低下やパターンの欠陥など、同一ロットの磁気ディスクであれば、ほぼ一律に生じるであろう不良要因を排除することは可能であり、従来よりも高精度な磁気ヘッドの位置決めが可能である。
【0069】
上述した実施形態は本発明の好適な実施の例である。但し、これに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変形実施可能である。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】一実施形態に係るHDDの構成を概略的に示す平面図である。
【図2】図2(a)は、磁気ディスク上に記録された複数組のサーボパターン群を概略的に示す図であり、図2(b)は、サーボパターンの具体的な構成を示す図である。
【図3】位置決め制御系を示す図である。
【図4】磁気ディスクへのサーボパターンの記録、及び出荷前試験における処理を示すフローチャートである。
【図5】ステップS11のサブルーチンを示すフローチャートである。
【図6】ステップS14のサブルーチンを示すフローチャートである。
【図7】図4のステップS10の処理を概略的に示す図である。
【図8】図4のステップS11の制御系を示す図である。
【図9】図4のステップS12により選択された最適サーボパターンの一例を示す図である。
【図10】図4のステップS12により選択された最適サーボパターンをゾーン番号ごとに示す表である。
【図11】図4のステップS13の制御系を示す図である。
【図12】図4のステップS14の制御系を示す図である。
【図13】図6の処理を説明するための図である。
【図14】図6の処理により設定された代替サーボパターンを示す表である。
【図15】図4のステップS15の制御系を示す図である。
【図16】出荷後に、磁気ヘッドの位置決めに用いる位置決め制御系を示す図である。
【図17】変形例に係るHDD、及び当該HDDが出荷前試験において接続される試験装置を示す図である。
【符号の説明】
【0071】
20 磁気ディスク(磁気記憶媒体)
31 品質評価選択演算部(品質評価・選択部)
33 最良サーボパターン記憶部(情報保持部の一部)
37 不良検出・代替パターン判定部(不良検出部、代替部)
39 不良セクタ・代替パターン記憶部(情報保持部の一部)
50 位置決め制御系(位置決め部)
100 HDD(磁気記憶装置)
161 磁気ヘッド
BSP 不良サーボパターン
SP1〜SP4 サーボパターン群(サーボパターン)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気記憶媒体に設けられた複数組のサーボパターンの品質を、磁気ヘッドによる前記サーボパターンの検出結果を用いて評価する評価工程と、
前記評価結果から、前記磁気記憶媒体を半径方向に分割した領域ごとに、前記磁気ヘッドの位置決めに使用するサーボパターンの組を選択する選択工程と、を含み、
前記磁気ヘッドの位置決めには、前記選択工程で選択されたサーボパターンの組を用いることを特徴とする磁気ヘッドの位置決め方法。
【請求項2】
前記選択工程では、前記磁気記憶媒体のトラックごと、又はゾーンごとに前記サーボパターンの組を選択することを特徴とする請求項1に記載の磁気ヘッドの位置決め方法。
【請求項3】
前記選択工程の後、前記選択されたサーボパターンの組を再度評価して、不良サーボパターンを検出する不良検出工程と、
前記不良サーボパターンごとに、前記選択工程で選択されなかったサーボパターン組のいずれかを代替サーボパターンに設定する代替工程と、を更に含み、
前記磁気ヘッドの位置決めには、前記不良サーボパターンに代えて、前記代替サーボパターンを用いることを特徴とする請求項1又は2に記載の磁気ヘッドの位置決め方法。
【請求項4】
前記代替工程では、同一トラック上で隣接する前記磁気ヘッドの位置決めに用いるサーボパターン間の間隔が、基準値以下となるように、前記代替サーボパターンを決定することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の磁気ヘッドの位置決め方法。
【請求項5】
磁気ヘッドと、
前記磁気ヘッドの位置決めに用いられる複数組のサーボパターンが設けられた磁気記憶媒体と、
前記磁気記憶媒体のサーボパターンの品質を評価し、前記磁気記憶媒体を半径方向に分割した領域ごとに、前記磁気ヘッドの位置決めに使用するサーボパターンの組を選択する品質評価・選択部と、
前記品質評価・選択部により選択されたサーボパターンの組を用いて、前記磁気ヘッドの位置決めを行う位置決め部と、を備える磁気記憶装置。
【請求項6】
前記品質評価・選択部は、前記磁気記憶媒体のトラックごと、又はゾーンごとに前記サーボパターンの組を選択することを特徴とする請求項5に記載の磁気記憶装置。
【請求項7】
前記品質評価・選択部による選択後、前記選択されたサーボパターンの組を評価して、不良サーボパターンを検出する不良検出部と、
前記検出された不良サーボパターンごとに、前記品質評価・選択部にて選択されなかったサーボパターンの組のいずれかを代替サーボパターンに設定する代替部と、を更に含み、
前記位置決め部は、前記不良サーボパターンと前記代替サーボパターンとを交換して、前記磁気ヘッドの位置決めを行うことを特徴とする請求項5又は6に記載の磁気記憶装置。
【請求項8】
前記代替部では、同一トラック上で隣接する前記磁気ヘッドの位置決めに用いるサーボパターン間の間隔が、基準値以下となるように、前記代替サーボパターンを決定することを特徴とする請求項5〜7のいずれか一項に記載の磁気記憶装置。
【請求項9】
磁気ヘッドと、
前記磁気ヘッドの位置決めに用いられる複数組のサーボパターンが設けられた磁気記憶媒体と、
前記磁気記憶媒体のサーボパターンの品質を評価した結果から選択される、前記磁気記憶媒体を半径方向に分割した領域ごとに前記磁気ヘッドの位置決めに使用するサーボパターンの組の情報を保持する情報保持部と、
前記情報保持部に保持されている情報に基づいて、前記磁気ヘッドの位置決めを行う位置決め部と、を備える磁気記憶装置。
【請求項1】
磁気記憶媒体に設けられた複数組のサーボパターンの品質を、磁気ヘッドによる前記サーボパターンの検出結果を用いて評価する評価工程と、
前記評価結果から、前記磁気記憶媒体を半径方向に分割した領域ごとに、前記磁気ヘッドの位置決めに使用するサーボパターンの組を選択する選択工程と、を含み、
前記磁気ヘッドの位置決めには、前記選択工程で選択されたサーボパターンの組を用いることを特徴とする磁気ヘッドの位置決め方法。
【請求項2】
前記選択工程では、前記磁気記憶媒体のトラックごと、又はゾーンごとに前記サーボパターンの組を選択することを特徴とする請求項1に記載の磁気ヘッドの位置決め方法。
【請求項3】
前記選択工程の後、前記選択されたサーボパターンの組を再度評価して、不良サーボパターンを検出する不良検出工程と、
前記不良サーボパターンごとに、前記選択工程で選択されなかったサーボパターン組のいずれかを代替サーボパターンに設定する代替工程と、を更に含み、
前記磁気ヘッドの位置決めには、前記不良サーボパターンに代えて、前記代替サーボパターンを用いることを特徴とする請求項1又は2に記載の磁気ヘッドの位置決め方法。
【請求項4】
前記代替工程では、同一トラック上で隣接する前記磁気ヘッドの位置決めに用いるサーボパターン間の間隔が、基準値以下となるように、前記代替サーボパターンを決定することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の磁気ヘッドの位置決め方法。
【請求項5】
磁気ヘッドと、
前記磁気ヘッドの位置決めに用いられる複数組のサーボパターンが設けられた磁気記憶媒体と、
前記磁気記憶媒体のサーボパターンの品質を評価し、前記磁気記憶媒体を半径方向に分割した領域ごとに、前記磁気ヘッドの位置決めに使用するサーボパターンの組を選択する品質評価・選択部と、
前記品質評価・選択部により選択されたサーボパターンの組を用いて、前記磁気ヘッドの位置決めを行う位置決め部と、を備える磁気記憶装置。
【請求項6】
前記品質評価・選択部は、前記磁気記憶媒体のトラックごと、又はゾーンごとに前記サーボパターンの組を選択することを特徴とする請求項5に記載の磁気記憶装置。
【請求項7】
前記品質評価・選択部による選択後、前記選択されたサーボパターンの組を評価して、不良サーボパターンを検出する不良検出部と、
前記検出された不良サーボパターンごとに、前記品質評価・選択部にて選択されなかったサーボパターンの組のいずれかを代替サーボパターンに設定する代替部と、を更に含み、
前記位置決め部は、前記不良サーボパターンと前記代替サーボパターンとを交換して、前記磁気ヘッドの位置決めを行うことを特徴とする請求項5又は6に記載の磁気記憶装置。
【請求項8】
前記代替部では、同一トラック上で隣接する前記磁気ヘッドの位置決めに用いるサーボパターン間の間隔が、基準値以下となるように、前記代替サーボパターンを決定することを特徴とする請求項5〜7のいずれか一項に記載の磁気記憶装置。
【請求項9】
磁気ヘッドと、
前記磁気ヘッドの位置決めに用いられる複数組のサーボパターンが設けられた磁気記憶媒体と、
前記磁気記憶媒体のサーボパターンの品質を評価した結果から選択される、前記磁気記憶媒体を半径方向に分割した領域ごとに前記磁気ヘッドの位置決めに使用するサーボパターンの組の情報を保持する情報保持部と、
前記情報保持部に保持されている情報に基づいて、前記磁気ヘッドの位置決めを行う位置決め部と、を備える磁気記憶装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2010−108557(P2010−108557A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−280422(P2008−280422)
【出願日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【出願人】(309033264)東芝ストレージデバイス株式会社 (255)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【出願人】(309033264)東芝ストレージデバイス株式会社 (255)
【Fターム(参考)】
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