説明

磁気ヘッドサスペンション

【課題】圧電素子の伸縮動作時に前記圧電素子がディスク面に直交する方向に撓み変形することを防止又は低減して、前記圧電素子による磁気ヘッドスライダの移動時における位置決め精度を向上させる。
【解決手段】圧電素子は、上側電極層及び下側電極層の双方が支持部及び前記支持部に固着される剛性部材と対向しない状態で、先端側端面の少なくとも一部が前記支持部の先端領域における先端壁面と先端側隙間を存しつつ対向し且つ基端側端面の少なくとも一部が前記支持部の基端領域における基端壁面と基端側隙間を存しつつ対向するように、前記支持部の開口領域内に配置されて、前記先端側隙間及び前記基端側隙間に充填された先端側絶縁性接着剤及び基端側絶縁性接着剤によって前記支持部に固着されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハードディスク等の記憶媒体に対してデータをリード及び/又はライトする磁気ヘッドスライダを支持する為の磁気ヘッドサスペンションに関する。
【背景技術】
【0002】
磁気ディスク装置の大容量化に伴って磁気ヘッドスライダの目的トラックに対する位置決め精度の向上が求められており、その為、ボイスコイルモータ等のメインアクチュエータによる磁気ヘッドスライダのシーク方向への粗動に加えて、サブアクチュエータとして作用する一対の圧電素子を備え、前記一対の圧電素子による前記磁気ヘッドスライダのシーク方向の微動を可能とした磁気ヘッドサスペンションが提案されている(例えば下記特許文献1〜3参照)。
【0003】
詳しくは、前記磁気ヘッドサスペンションは、前記磁気ヘッドスライダをディスク面へ向けて押し付ける為の荷重を発生する荷重曲げ部と、前記荷重を磁気ヘッドスライダに伝達するためのロードビーム部と、前記荷重曲げ部を介して前記ロードビーム部を支持し且つメインアクチュエータによって直接又は間接的に揺動中心回りに揺動される支持部と、前記磁気ヘッドスライダを支持した状態で前記ロードビーム部及び前記支持部に支持されるフレクシャ部と、前記支持部に装着された前記一対の圧電素子とを備えている。
【0004】
前記支持部は、前記メインアクチュエータに直接又は間接的に連結される基端領域と、前記荷重曲げ部が連結される先端領域と、サスペンション長手方向に関し前記基端領域及び前記先端領域の間に位置する開口領域と、前記開口領域よりサスペンション幅方向外方向側において前記基端領域及び前記先端領域の間を連結する左右一対の連結梁とを有している。
【0005】
前記一対の圧電素子の各々は、圧電体と、前記圧電体の厚み方向両側に配設された一対の電極層とを有し、前記一対の電極層間への電圧印可に応じて前記厚み方向とは直交する方向に伸長又は短縮する。
【0006】
前記磁気ヘッドサスペンションにおいては、前記一対の圧電素子は、サスペンション長手方向中心線を基準にして互いに対して対称で且つ互いに対して伸縮方向が異なった状態で、先端部が前記先端領域に固着され且つ基端部が前記基端領域に固着されている。
【0007】
斯かる構成を備えた前記磁気ヘッドサスペンションにおいては、前記一対の圧電素子の一方を伸長させ且つ他方を短縮させることにより、前記一対の連結梁を弾性変形させつつ前記先端領域を前記基端領域に対してシーク方向へ揺動させることができ、これにより、前記先端領域に前記荷重曲げ部,前記ロードビーム部及び前記フレクシャ部を介して支持される前記磁気ヘッドスライダをシーク方向へ微動させ得るようになっている。
【0008】
しかしながら、前記特許文献1〜3に記載の磁気ヘッドサスペンションにおいては、前記一対の圧電素子の伸縮動作時に前記一対の圧電素子が厚み方向に撓み変形を起こすという問題があった。
前記一対の圧電素子が伸縮動作に伴って厚み方向に撓み変形すると、前記先端領域が前記基端領域に対して捩れてしまい、その結果、シーク方向移動時の前記磁気ヘッドスライダの浮上が不安定になる。
【0009】
前記問題点について、まず、前記特許文献1及び2に記載の磁気ヘッドサスペンションについて説明する。
前記特許文献1及び2に記載の磁気ヘッドサスペンションにおいては、前記支持部の前記先端領域に前記開口領域及び上方(ディスク面とは反対側)に開く先端側切り欠き部が形成され、前記基端領域に前記開口領域及び上方に開く基端側切り欠き部が形成されている。
【0010】
前記先端側切り欠き部は、サスペンション長手方向基端側を向く先端側垂直面と、前記先端側垂直面の下端部からサスペンション長手方向基端側へ延びて前記開口領域に開く先端側水平面とを有している。
前記基端側切り欠き部は、サスペンション長手方向先端側を向く基端側垂直面と、前記基端側垂直面の下端部からサスペンション長手方向先端側へ延びて前記開口領域に開く基端側水平面とを有している。
【0011】
そして、前記一対の圧電素子の各々は、先端側端面と前記先端側垂直面との間、下方に位置する下側電極層の先端側と前記先端側水平面との間、基端側端面と前記基端側垂直面との間、及び、前記下側電極層の基端側と前記基端側水平面との間にそれぞれ介挿された絶縁性接着剤によって、前記支持部に固着されている。
【0012】
つまり、前記特許文献1及び2に記載の磁気ヘッドサスペンションにおいては、前記一対の圧電素子の前記下側電極層は、先端側及び基端側が前記先端側水平面及び前記基端側水平面にそれぞれ対向した状態で絶縁性接着剤を介して前記先端側水平面及び前記基端側水平面にそれぞれ固着されて拘束されており、一方、前記一対の圧電素子における上方(前記ディスク面とは反対側)に位置する上側電極層は前記支持部に対して実質的にフリーな状態とされている。
【0013】
従って、前記圧電素子の前記一対の電極層(前記上側電極層及び前記下側電極層)の間に電圧を印可して前記圧電素子をサスペンション長手方向に伸長又は短縮させる際に、前記上側電極層は自由に伸長又は短縮するものの、先端側及び基端側が前記先端側水平面及び前記基端側水平面に対向状態で固着されている前記下側電極層は伸長動作又は短縮動作が制限されることになる。
その結果、前記圧電素子は、伸縮動作時に前記ディスク面に直交する方向に撓み変形し、これにより、前記圧電素子による前記磁気ヘッドスライダのシーク方向への移動時に前記磁気ヘッドスライダの浮上が不安定になる。
【0014】
次に、前記特許文献3に記載の磁気ヘッドサスペンションについて説明する。
前記特許文献3に記載の磁気ヘッドサスペンションにおいては、前記支持部に、平面視において少なくとも一部が前記開口領域内に位置するように前記先端領域の下面(前記ディスク面と対向する面)に固着された先端側プレートと、平面視において少なくとも一部が前記開口領域内に位置するように前記基端領域の下面に固着された基端側支持プレートとが設けられている。
【0015】
そして、前記一対の圧電素子の各々は、先端側端面と前記先端領域の壁面との間、前記下側電極層の先端側と前記先端側プレートとの間、基端側端面と前記基端領域の壁面との間、及び、前記下側電極層の基端側と前記基端側プレートとの間にそれぞれ介挿された絶縁性接着剤によって、前記支持部に固着されている。
【0016】
つまり、前記特許文献3に記載の磁気ヘッドサスペンションにおいては、前記下側電極層は、先端側及び基端側が前記先端側プレート及び前記基端側プレートにそれぞれ対向した状態で固着されることで前記支持部に拘束されており、一方、前記上側電極層は前記支持部に対して実質的にフリーな状態とされている。
【0017】
従って、前記特許文献1及び2に記載の磁気ヘッドサスペンションにおけると同様、前記特許文献3においても、前記圧電素子は、伸長動作時に前記ディスク面に直交する方向に撓み変形し、これにより、前記圧電素子による前記磁気ヘッドスライダのシーク方向への移動時に前記磁気ヘッドスライダの浮上が不安定になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】特開2002−251854号公報
【特許文献2】特開2009−080915号公報
【特許文献3】特開2002−050140号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明は、前記従来技術に鑑みなされたものであり、メインアクチュエータによる磁気ヘッドスライダの粗動に加えて、圧電素子の伸縮動作による前記磁気ヘッドスライダの微動を行える磁気ヘッドサスペンションであって、前記圧電素子の伸縮動作時に前記圧電素子が前記ディスク面に直交する方向に撓み変形することを有効に防止又は低減でき、これにより、前記圧電素子による前記磁気ヘッドスライダのシーク方向への移動時における前記磁気ヘッドスライダの浮上を安定化させ得る磁気ヘッドサスペンションの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は、前記目的を達成する為に、磁気ヘッドスライダをディスク面へ向けて押し付ける為の荷重を発生する荷重曲げ部と、前記荷重を磁気ヘッドスライダに伝達するためのロードビーム部と、前記荷重曲げ部を介して前記ロードビーム部を支持し且つメインアクチュエータによって直接又は間接的に揺動中心回りにシーク方向へ揺動される支持部と、前記磁気ヘッドスライダを支持した状態で前記ロードビーム部及び前記支持部に支持されるフレクシャ部と、圧電体並びに前記圧電体の前記ディスク面と対向する側及び前記ディスク面とは反対側にそれぞれ配設された下側電極層及び上側電極層を有する一対の圧電素子であって、前記磁気ヘッドスライダをシーク方向に微動させる為にサスペンション長手方向中心線を基準にして互いに対して対称で且つ互いに対して伸縮方向が異なるように前記支持部に装着された左右一対の圧電素子とを備えた磁気ヘッドサスペンションであって、下記構成を備えた磁気ヘッドサスペンションを提供する。
前記支持部は、前記メインアクチュエータに直接又は間接的に連結される基端領域と、前記荷重曲げ部が連結される先端領域と、サスペンション長手方向に関し前記基端領域及び前記先端領域の間に位置する開口領域と、前記開口領域よりサスペンション幅方向外方向側において前記基端領域及び前記先端領域の間を連結する左右一対の連結梁とを有する。
前記一対の圧電素子は、前記上側電極層及び前記下側電極層の双方が前記支持部及び前記支持部に固着される剛性部材の何れとも対向しない状態で、先端側の端面の少なくとも一部が前記先端領域におけるサスペンション長手方向基端側を向く先端壁面と先端側隙間を存しつつ対向し且つ基端側の端面の少なくとも一部が前記基端領域におけるサスペンション長手方向先端側を向く基端壁面と基端側隙間を存しつつ対向するように、前記開口領域内に配置されており、前記先端側隙間及び前記基端側隙間に充填された先端側絶縁性接着剤及び基端側絶縁性接着剤によって前記支持部に固着されている。
【0021】
好ましくは、前記一対の圧電素子の各々は、サスペンション幅方向外側面及び内側面が外側絶縁性接着剤及び内側絶縁性接着剤で被覆される。
【0022】
より好ましくは、前記一対の連結梁の各々は、前記基端領域に連結された基端部から先端部へ略直線状に延びる基端側梁と、前記基端側梁に連結された基端部から前記先端領域に連結された先端部へ略直線状に延びる先端側梁とを有し得る。前記基端側梁及び前記先端側梁の連結点が前記基端側梁の基端部及び前記先端側梁の先端部を結ぶ仮想線よりサスペンション長手方向中心線に近接するように、前記先端側梁が前記基端側梁に対して前記ディスク面と直交する平面視において傾斜される。
斯かる構成において、前記外側絶縁性接着剤は、対応する前記連結梁の少なくとも一部に固着され、前記内側絶縁性接着剤は、前記平面視において前記一対の圧電素子の間に存する中央隙間の全体を埋めるように充填される。
【0023】
前記種々の構成において、前記フレクシャ部は、前記ロードビーム部及び前記支持部に溶接によって固着されるフレクシャ金属基板と、前記フレクシャ金属基板とは別体とされた左右一対の補強金属板であって、少なくとも一部が前記一対の圧電素子の前記下側電極層とそれぞれ対向するように配置され且つ前記一対の圧電素子の伸縮方向に弾性変形可能とされた左右一対の補強金属板と、前記フレクシャ金属基板及び前記一対の補強金属板を保持するようにこれらにおける前記ディスク面に対向する側の面に積層される絶縁層と、前記絶縁層における前記ディスク面と対向する側の面に積層される信号配線とを含み得る。
斯かる構成において、前記一対の圧電素子は、前記一対の補強金属板を囲繞するように前記絶縁層における前記ディスク面とは反対側に塗布された補強用絶縁性接着剤を介して前記フレクシャ部に支持される。
【0024】
好ましくは、前記フレクシャ部は、前記絶縁層における前記ディスク面と対向する側の面に電圧供給配線を有し、前記電圧供給配線は、前記絶縁層に形成された開口を介して下側導電性接着剤によって前記下側電極層に電気的に接続される。
前記補強用絶縁性接着剤と共働して前記下側導電性接着剤を囲繞する他の絶縁性接着剤が設けられ、前記下側導電性接着剤は前記下側電極層、前記絶縁層、前記補強用絶縁性接着剤及び前記他の絶縁性接着剤によって画される密閉空間内に収容される。
【0025】
前記種々の構成において、前記先端領域のうちサスペンション幅方向に関し前記一対の圧電素子に対応した部位には、サスペンション厚み方向一方側の端面からサスペンション厚み方向他方側へ所定距離だけ延びる垂直面及び前記垂直面のサスペンション厚み方向他端部から前記先端壁面へ延びる水平面によって画される一対の先端側ポケット部が設けられ、前記基端領域のうちサスペンション幅方向に関し前記一対の圧電素子に対応した部位に、サスペンション厚み方向一方側の端面からサスペンション厚み方向他方側へ所定距離だけ延びる垂直面及び前記垂直面のサスペンション厚み方向他端部から前記基端壁面へ延びる水平面によって画される一対の基端側ポケット部が設けられる。
【0026】
これに代えて、前記先端領域のうちサスペンション幅方向に関し前記一対の圧電素子に対応した部位には、サスペンション厚み方向一方側の端面から前記先端壁面へ至るように設けられたテーパ面であって、前記端面からサスペンション厚み方向他方側へ行くに従って前記先端壁面に近づき且つ前記端面からサスペンション厚み方向所定距離の位置において前記先端壁面に到達するテーパ面によって画される一対の先端側ポケット部が設けられ、前記基端領域のうちサスペンション幅方向に関し前記一対の圧電素子に対応した部位には、サスペンション厚み方向一方側の端面から前記基端壁面へ至るように設けられたテーパ面であって、前記端面からサスペンション厚み方向他方側へ行くに従って前記基端壁面に近づき且つ前記端面からサスペンション厚み方向所定距離の位置において前記基端壁面に到達するテーパ面によって画される一対の基端側ポケット部が設けられ得る。
【発明の効果】
【0027】
本発明に係る磁気ヘッドサスペンションによれば、一対の圧電素子は、上側電極層及び下側電極層の双方共に支持部及び前記支持部に固着される剛性部材の何れとも対向しない状態で、先端側の端面の少なくとも一部が前記支持部の先端領域における先端壁面と先端側隙間を存しつつ対向し且つ基端側の端面の少なくとも一部が前記支持部の基端領域における基端壁面と基端側隙間を存しつつ対向するように、前記開口領域内に配置され、さらに、前記一対の圧電素子の各々は、前記先端側隙間及び前記基端側隙間に充填された先端側絶縁性接着剤及び基端側絶縁性接着剤によって前記支持部に固着されているので、前記一対の圧電素子の伸縮動作時に前記一対の圧電素子がディスク面に直交する方向に撓み変形することを有効に防止又は低減でき、これにより、前記一対の圧電素子による前記磁気ヘッドスライダのシーク方向への移動時に前記磁気ヘッドスライダの浮上を安定化させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】図1(a)及び(b)は、それぞれ、本発明の実施の形態1に係る磁気ヘッドサスペンションの上面図及び下面図である。
【図2】図2は、図1におけるII-II線に沿った断面図である。
【図3】図3は、図1(a)におけるIII部拡大図である。
【図4】図4(a)〜(d)は、前記実施の形態1に係る磁気ヘッドサスペンションにおける圧電素子の支持部への実装方法の一例を示す工程図である。
【図5】図5(a)及び(b)は、前記実施の形態1の変形例に係る磁気ヘッドサスペンションの上面図及び下面図である。
【図6】図6は、図5(a)におけるVI-VI線に沿った断面図である。
【図7】図7(a)及び(b)は、それぞれ、本発明の実施の形態2に係る磁気ヘッドサスペンションの上面図及び下面図である。
【図8】図8(a)及び(b)は、それぞれ、図7(a)におけるVIII(a)-VIII(a)線及びVIII(b)-VIII(b)線に沿った断面図である。
【図9】図9(a)は、前記実施の形態2に係る磁気ヘッドサスペンションの一対の圧電素子及び絶縁性接着剤を取り除いた状態の上面図であり、図9(b)は、前記磁気ヘッドサスペンションにおけるフレクシャ部の上面図である。
【図10】図10(a)及び(b)は、それぞれ、前記実施の形態2に係る磁気ヘッドサスペンションにおけるフレクシャ部の変形例の上面図である。
【図11】図11(a)〜(c)は、それぞれ、前記実施の形態2の第1変形例に係る磁気ヘッドサスペンションの上面図,前記磁気ヘッドサスペンションにおける支持部の上面図及び図11(a)におけるXI-XI線に沿った断面図である。
【図12】図12は、前記実施の形態2の第2変形例に係る磁気ヘッドサスペンションにおける部分縦断側面図であり、図11(c)に対応した断面図である。
【図13】図13は、本発明の実施の形態3に係る磁気ヘッドサスペンションの上面図である。
【図14】図14(a)及び(b)は、それぞれ、図13におけるXIV(a)-XIV(a)線及びXIV(b)-XIV(b)線に沿った断面図である。
【図15】図15は、前記実施の形態3に係る磁気ヘッドサスペンションにおける支持部の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
実施の形態1
以下、本発明に係る磁気ヘッドサスペンションの好ましい実施の形態について、添付図面を参照しつつ説明する。
図1(a)及び(b)に、それぞれ、本実施の形態に係る磁気ヘッドサスペンション1Aの上面図(ディスク面とは反対側から見た平面図)及び下面図(ディスク面側から見た底面図)を示す。なお、図1(b)における○印は溶接点を示している。
又、図2に、図1におけるII-II線に沿った断面図を示す。
【0030】
図1に示すように、前記磁気ヘッドサスペンション1Aは、磁気ヘッドスライダ50をディスク面へ向けて押し付ける為の荷重を発生する荷重曲げ部20と、前記荷重を磁気ヘッドスライダ50に伝達するためのロードビーム部30と、前記荷重曲げ部20を介して前記ロードビーム部30を支持し且つメインアクチュエータによって直接又は間接的に揺動中心回りに前記ディスク面と平行なシーク方向へ揺動される支持部10と、前記磁気ヘッドスライダ50を支持した状態で前記ロードビーム部30及び前記支持部10に支持されるフレクシャ部40と、前記磁気ヘッドスライダ50をシーク方向に微動させる為にサスペンション長手方向中心線CLを基準にして互いに対して対称で且つ互いに対して伸縮方向が異なるように前記支持部10に装着された左右一対の圧電素子60とを備えている。
【0031】
前記支持部10は、ボイスコイルモータ等の前記メインアクチュエータに直接又は間接的に連結された状態で、前記荷重曲げ部20を介して前記ロードビーム部30を支持する部材であり、比較的高剛性を有するものとされる。
【0032】
本実施の形態においては、前記支持部10は、前記メインアクチュエータに連結されるキャリッジアーム(図示せず)の先端にかしめ加工によって接合されるボス部15を備えたベースプレートとされている。
前記支持部10は、例えば、厚さ0.1mm〜0.8mmのステンレス板によって好適に形成される。
【0033】
図1に示すように、前記支持部10は、前記メインアクチュエータに直接又は間接的に連結される基端領域11と、前記荷重曲げ部20が連結される先端領域12と、サスペンション長手方向に関し前記基端領域11及び前記先端領域12の間に位置する開口領域13と、前記開口領域13のサスペンション幅方向両側において前記基端領域11及び前記先端領域12の間を連結する左右一対の連結梁14であって、サスペンション長手方向中心線CLを基準にして互いに対して対称な形状を有している左右一対の連結梁14とを有している。
なお、前記一対の連結梁14の詳細構造については後述する。
【0034】
前記ロードビーム部30は、前述の通り、前記荷重曲げ部20によって発生される荷重を前記磁気ヘッドスライダ50に伝達する為の部材であり、従って、所定の剛性が要求される。
本実施の形態においては、図1及び図2に示すように、前記ロードビーム部30は、平板状の本体部31と、前記本体部31の幅方向両端部からディスク面とは反対側に曲げ形成されたフランジ部32とを有しており、前記フランジ部32によって剛性を確保している。
前記ロードビーム部30は、例えば、厚さ0.02mm〜0.1mmのステンレス板によって好適に形成される。
【0035】
詳しくは、前記ロードビーム部30は、先端部に、所謂ディンプルと呼ばれる突起33を有している。
前記突起33は、ディスク面に近接する方向に、例えば、0.05mm〜0.1mm程度突出されている。この突起33は、前記フレクシャ部40におけるヘッド搭載領域43の裏面(ディスク面とは反対側の面)に接触しており、前記荷重はこの突起33を介して前記フレクシャ部40のヘッド搭載領域43に伝達される。
【0036】
本実施の形態においては、前記ロードビーム部30は、さらに、前記本体部31の先端からサスペンション長手方向先端側へ延びるリフトタブ34を一体的に有している。前記リフトタブ34は、前記磁気ヘッドスライダ50がディスク面の径方向外方へ位置するように前記磁気ヘッドサスペンション1Aが前記メインアクチュエータによって揺動された際に、磁気ディスク装置に備えられたランプと係合して前記磁気ヘッドスライダ50をz方向(前記ディスク面と直交する方向)に沿って前記ディスク面から離間させる為の部材である。
【0037】
前記荷重曲げ部20は、基端部が前記支持部10に連結され且つ先端部が前記ロードビーム部30に連結されており、自己の弾性変形に基づいて前記磁気ヘッドスライダ50を前記ディスク面へ向けて押し付ける押し付け荷重を発生する。
【0038】
図1及び図2に示すように、本実施の形態においては、前記荷重曲げ部20は、板面が前記ディスク面と対向するように配置された左右一対の板バネ21を有している。
好ましくは、前記一対の板バネ21は、前記磁気ヘッドサスペンション1Aが前記磁気ディスク装置へ実装される前の段階において前記磁気ヘッドスライダ50が前記ディスク面に近づく方向に予め折り曲げられ、且つ、前記磁気ヘッドサスペンション1Aの前記磁気ディスク装置への実装時には曲げ戻されることで前記押し付け荷重を発生するように、構成される。
【0039】
前記荷重曲げ部20は、例えば、厚さ0.02mm〜0.1mmのステンレス板によって形成される。
なお、本実施の形態においては、図1及び図2に示すように、前記荷重曲げ部20は前記ロードビーム部30と一体形成されている。
【0040】
即ち、本実施の形態に係る磁気ヘッドサスペンション1Aは、前記ロードビーム部30及び前記荷重曲げ部20を一体形成するロードビーム部/荷重曲げ部形成部材を有しており、前記ロードビーム部/荷重曲げ部形成部材における前記ディスク面とは反対側の上面が前記支持部10の前記先端領域12における前記ディスク面と対向する下面に当接された状態で、前記ロードビーム部形成部材が前記支持部10に溶接されている。
【0041】
前記フレクシャ部40は、前記磁気ヘッド50を支持した状態で前記ロードビーム部30及び前記支持部10に接合される。
詳しくは、前記フレクシャ部40は、図1(b)に示すように、前記ロードビーム部30及び前記支持部10における前記ディスク面との対向面に溶接等によって接合される本体領域41と、前記本体領域41から先端側へ延びる一対の支持片42と、前記支持片42によって支持された前記ヘッド搭載領域43とを有している。
【0042】
前記ヘッド搭載領域43は、ディスク面と対向する対向面において前記磁気ヘッド50を支持している。
前述の通り、前記ヘッド搭載領域43の裏面には前記突起33が接触しており、従って、前記ヘッド搭載領域43は前記突起33を支点としてロール方向及びピッチ方向に柔軟に揺動し得るようになっている。
前記フレクシャ部40は、前記ヘッド搭載領域43がロール方向及びピッチ方向に揺動し得るように、前記ロードビーム部30よりも低剛性とされる。
前記フレクシャ部40は、例えば、厚さ0.01mm〜0.025mm程度のステンレス板によって好適に形成される。
【0043】
なお、本実施の形態においては、前記フレクシャ部40には、前記磁気ヘッド50に書き込み信号及び/又は読み取り信号を伝達する為の信号配線がプリント回路として一体的に備えられている。
即ち、前記フレクシャ部40は、前記本体領域41,前記一対の支持片42及び前記ヘッド搭載領域43を一体的に有するフレクシャ金属基板400と、前記フレクシャ金属基板400に積層されたフレクシャ配線体410とを有している。
前記フレクシャ配線体410は、前記フレクシャ金属基板400におけるディスク面との対向面に積層された絶縁層411(下記図3参照)と、前記絶縁層411におけるディスク面との対向面に積層された信号配線412と、前記信号配線412を囲繞する保護層(図示せず)とを有し得る。
【0044】
本実施の形態においては、前記フレクシャ金属基板400は、図1(b)に示すように、前記ロードビーム部40の前記本体領域41,前記支持部10の前記先端領域12及び前記支持部10の前記基端領域11にそれぞれ溶接によって接合されている。
【0045】
前記圧電素子60は、図2に示すように、PZT(チタン酸ジリコン酸鉛)からなる圧電体61と、前記圧電体61の前記ディスク面と対向する側に配設された下側電極層62と、前記圧電体61の前記ディスク面とは反対側に配設された上側電極層63とを有している。
前記圧電体61は、例えば厚さ0.05mm〜0.3mmとされ、前記電極層62,63は、例えば厚さ0.05μm〜数μmのAgやAuによって形成される。
【0046】
前記一対の圧電素子60は、先端部及び基端部が前記支持部10の前記先端領域12及び前記基端領域11にそれぞれ連結された状態で、サスペンション長手方向中心線CLを基準にして互いに対して対称で且つ互いに対して伸縮方向が異なるように配置されている。
【0047】
即ち、前記一対の圧電素子60は、前記上側電極層63及び前記下側電極層62の間への電圧印可に応じて一方が伸長し且つ他方が短縮し、これにより、前記先端領域12を前記基端領域11に対してシーク方向へ移動させて、前記磁気ヘッドスライダ50をシーク方向に微動させ得るようになっている。
【0048】
本実施の形態においては、前記上側電極層63は上側ワイヤーボンディング67を介して前記フレクシャ金属基板400に電気的に接続されることで接地され、前記下側電極層62は前記絶縁層411におけるディスク面との対向面に積層された電圧供給配線413(下記図6参照)に下側ワイヤボンディング66を介して電気的に接続されている。
【0049】
詳しくは、前記フレクシャ金属基板400の前記本体領域41は、図1(a)及び(b)に示すように、前記ロードビーム部に接合されるロードビーム部接合領域401と、前記支持部10の前記先端領域12に接合される支持部先端接合領域403と、前記支持部10の前記基端領域11に接合される支持部基端接合領域405と、サスペンション幅方向に関し前記一対の板バネ21の間において前記ロードビーム部接合領域401及び前記支持部先端接合領域403の間を連結する先端側ブリッジ領域402と、前記支持部先端接合領域403及び前記支持部基端接合領域405の間を連結するようにサスペンション幅方向に関し前記一対の圧電素子60の間において前記開口領域13を通過する基端側ブリッジ領域404とを有している。
そして、前記上側電極層63は、図1(a)に示すように、前記上側ワイヤーボンディング67を介して前記基端側ブリッジ領域404におけるディスク面とは反対側の面に電気的に接続されている。
なお、前記基端側ブリッジ領域404を設けることにより、前記フレクシャ部40の剛性を高めることができる。
【0050】
又、前記フレクシャ配線体410は、前記絶縁層411におけるディスク面との対向面に前記電圧供給配線413を有しており、前記保護層は前記信号配線412及び前記電圧供給配線413を囲繞するように構成されている。
斯かる構成において、前記保護層のうち平面視において前記開口領域13内に位置する部分に前記電圧供給配線413を露出させる開口が形成されており、前記下側ワイヤーボンディング66は一端部が前記開口を介して前記電圧供給配線413に接続され且つ他端部が前記下側電極層62に接続されている。
【0051】
本実施の形態においては、前記一対の圧電素子60の伸縮動作に応じて前記先端領域12が前記基端領域11に対してシーク方向へ無理なく移動することを可能とする為に、前記一対の連結梁14は下記構成を備えている。
【0052】
図3に、図1(a)におけるIII部拡大図を示す。
即ち、図3に示すように、前記一対の連結梁14の各々は、前記基端領域11に連結された基端部から先端部へ略直線状に延びる基端側梁141と、前記基端側梁141に連結された基端部から前記先端領域12に連結された先端部へ略直線状に延びる先端側梁142とを有している。
【0053】
そして、前記一対の連結梁14の各々は、前記基端側梁141及び前記先端側梁142の連結点143が前記基端側梁141の基端部及び前記先端側梁142の先端部を結ぶ仮想線ILよりサスペンション長手方向中心線CLに近接するように、前記先端側梁142が前記基端側梁141に対して平面視において傾斜されている。
【0054】
さらに、本実施の形態においては、前記圧電素子60の伸縮動作時に該圧電素子60が前記ディスク面に直交するz方向に撓み変形することを有効に防止又は低減させ、これにより、前記圧電素子60による前記磁気ヘッドスライダ50のシーク方向への移動時における前記磁気ヘッドスライダ50の浮上を安定化させる為に下記構成を備えている。
【0055】
即ち、圧電素子付き磁気ヘッドサスペンションの第1の従来例においては、支持部の先端領域及び基端領域にそれぞれ先端側切り欠き部及び基端側切り欠き部が設けられている。
そして、圧電素子は、下側電極層の先端側及び基端側が絶縁性接着剤によって前記先端側切り欠き部の水平面及び前記基端側切り欠き部の水平面に固着され、先端側の端面及び基端側の端面が前記先端側切り欠き部及び前記基端側切り欠き部の垂直面に絶縁性接着剤によって固着される一方で、上側電極層は前記支持部に対して実質的にフリーな状態とされている。
【0056】
又、圧電素子付きの磁気ヘッドサスペンションの第2の従来例においては、支持部の先端領域に高剛性の先端側支持プレートが固着され且つ前記支持部の基端領域に高剛性の基端側支持プレートが固着されている。
そして、圧電素子は、下側電極層の先端側及び基端側が絶縁性接着剤によって前記先端側支持プレート及び前記基端側支持プレートに固着され、先端側の端面及び基端側の端面が前記先端側領域の壁面及び前記基端側領域の壁面に絶縁性接着剤によって固着される一方で、上側電極層は前記支持部に対して実質的にフリーな状態とされている。
【0057】
このように、従来の圧電素子付き磁気ヘッドサスペンションにおいては、前記下側電極層の先端側及び基端側が前記支持部又は前記支持部に固着される剛性部材に固着されており、前記下側電極層だけが伸縮動作に対して制限を受けるようになっている。
つまり、前記上側電極層は自由に伸縮し得る一方で前記下側電極層の先端側及び基端側が固定された状態で前記圧電素子が伸縮動作を行うことになり、前記圧電素子の伸縮動作時に該圧電素子が前記ディスク面に直交する方向に撓み変形し、これにより、前記圧電素子による前記磁気ヘッドスライダのシーク方向へ移動時における前記磁気ヘッドスライダの浮上が不安定になるという問題が生じる。
【0058】
これに対し、本実施の形態に係る前記磁気ヘッドサスペンション1Aにおいては、図1及び図2に示すように、前記一対の圧電素子60は、前記上側電極層63及び前記下側電極層62の双方共に前記支持部10及び前記支持部10に固着される剛性部材とは対向しない状態で、先端側端面の少なくとも一部が前記先端領域12におけるサスペンション長手方向基端側を向く先端壁面と先端側隙間を存しつつ対向し且つ基端側端面の少なくとも一部が前記基端領域11におけるサスペンション長手方向先端側を向く基端壁面と基端側隙間を存しつつ対向するように前記開口領域13内に配置されており、そして、前記先端側隙間及び前記基端側隙間に充填された先端側絶縁性接着剤72及び基端側絶縁性接着剤71によって前記支持部10に固着されている。
【0059】
斯かる構成によれば、従来の圧電素子付き磁気ヘッドサスペンションにおいては前記一対の圧電素子の伸縮動作時に生じていた該一対の圧電素子の前記ディスク面と直交する方向への撓み変形を有効に防止又は低減できる。
従って、前記一対の圧電素子60の伸縮動作によって前記先端領域12をシーク方向へ効率的に変位させることができ、前記一対の圧電素子60による前記磁気ヘッドスライダ50のシーク方向への移動時における前記磁気ヘッドスライダ50の浮上安定化を図ることができる。
【0060】
又、本実施の形態に係る磁気ヘッドサスペンション1Aは、前記第1の従来例に比して、前記支持部10の厚み低減及び軽量化を図ることができる。
【0061】
即ち、前記第1の従来例における前記先端側切り欠き部及び前記基端側切り欠き部は前記圧電素子の大部分が埋まるような深さを必要とする。
一方、前記支持部がベースプレートの形態をなす場合には、前記支持部にはキャリッジアームの先端にかしめ加工によって接合されるボス部を備える必要もある。
この場合、前記ボス部を有する部材にプレス加工によって前述のような深さの前記切り欠き部を形成することは困難である。
【0062】
従って、前記第1の従来例においては、前記先端側切り欠き部及び前記基端側切り欠き部を有する第1部材と前記ボス部を有する第2部材とを別体で形成し、両者を積層して前記支持部を形成する必要があり、前記支持部の厚み増大及び質量増加を招くという問題も生じる。
【0063】
これに対し、本実施の形態に係る磁気ヘッドサスペンション1Aにおいては、前記ボス部15を有する前記基端領域11と前記先端領域12,前記開口領域13及び前記一対の連結梁14とを単一部材によって一体形成することができる。
従って、前記第1の従来例に比して、前記支持部10の厚み低減及び軽量化を図ることができる。
【0064】
ここで、本実施の形態に係る前記磁気ヘッドサスペンション1Aの製造方法の一例について説明する。
図4(a)〜(d)に、前記圧電素子60の前記支持部10への実装方法の一例の工程図を示す。
なお、図4(a)〜(d)は、図1におけるII-II線に沿った断面に対応している。
【0065】
図4(a)に示すように、ツール100上に前記支持部10を載置させる。前記ツール100は、前記先端領域12及び前記基端領域11をそれぞれ支持する先端支持領域102及び基端支持領域101と、前記開口領域13内に位置するように設けられ且つ前記圧電素子60が載置される圧電素子支持領域105とを含んでいる。
即ち、前記圧電素子支持領域105が前記開口領域13内に位置するように前記先端領域12及び前記基端領域11を前記先端支持領域102及び前記基端支持領域101の上面(載置面)に載置させる。
【0066】
次に、図4(b)に示すように、前記圧電素子60を、先端側の端面と前記先端領域12の前記先端壁面12aとの間に前記先端側隙間が存在し且つ基端側の端面と前記基端領域11の前記基端壁面11aとの間に前記基端側隙間が存在するように、前記圧電素子支持領域105の上面(載置面)に載置させる。
【0067】
なお、前記圧電素子支持領域105の上面(載置面)の高さは、前記圧電素子60の前記支持部10に対する厚み方向位置に応じて、前記先端支持領域102及び前記基端支持領域101の上面(載置面)に対して設定されている。
好ましくは、前記ツール100に載置される前記圧電素子60及び/又は前記支持部10を対応する載置面に吸着させる為の吸着機構を設けることができる。
【0068】
次に、図4(c)に示すように、前記先端側隙間及び前記基端側隙間に上方から熱硬化型の絶縁性接着剤70を供給する。
前記接着剤70は前記先端側隙間及び前記基端側隙間を下方へ進み、表面張力によって前記隙間内に充填状態で保持される(図4(d)参照)。
その後、前記接着剤70を硬化させて前記圧電素子60を所定姿勢で前記支持部10に固着する。
即ち、前記先端側隙間に充填され且つ硬化された絶縁性接着剤70が前記先端側絶縁性接着剤72を形成し、且つ、前記後端側隙間に充填され且つ硬化された絶縁性接着剤が前記基端側絶縁性接着剤71を形成する。
【0069】
なお、前記接着剤70の硬化は、例えば、図4(d)に示す状態において前記接着剤70にUV(紫外線)照射又は熱風照射を行い、これにより、前記接着剤70の表面を硬化させて前記圧電素子60の仮止めを行ってから、その後に、前記圧電素子60付きの前記支持部10を加熱炉で加熱することによって行うことができる。
【0070】
前記加熱炉での前記接着剤70の硬化工程は、前記圧電素子60が仮止めされた状態の前記支持部10を前記ツール100から取り外して前記圧電素子60付きの前記支持部10のみを前記加熱炉内に挿入することによって行うことも可能であるし、前記圧電素子60が仮止めされた状態の前記支持部10を前記ツール100と共に前記加熱路内に挿入することによって行うことも可能である。
【0071】
なお、本実施の形態においては、図1に示すように、前記一対の圧電素子60は、長手方向(即ち、伸縮方向)がサスペンション長手方向に沿うように配置されているが、本発明は斯かる形態に限定されるものではない。
即ち、前記一対の圧電素子60がサスペンション長手方向中心線CLを基準にして互いに対して対称であり、且つ、前記一対の圧電素子60の長手方向がサスペンション長手方向に沿った成分を有する範囲内であれば、前記一対の圧電素子60の長手方向をサスペンション長手方向に対して傾斜させることも可能である。
【0072】
図5(a)及び(b)に、本実施の形態の変形例に係る磁気ヘッドサスペンション1Bの上面図及び下面図を示す。なお、図5(b)における○印は溶接点を示している。
又、図6に、図5(a)におけるVI-VI線に沿った断面図を示す。
なお、図中、本実施の形態におけると同一部材には同一符号を付している。
【0073】
前記磁気ヘッドサスペンション1Aにおいては、図1(a)及び(b)に示すように、前記圧電素子60におけるサスペンション幅方向外側面及び内側面は外方へ露出されている。
これに対し、前記変形例に係る磁気ヘッドサスペンション1Bにおいては、図5及び図6に示すように、前記圧電素子60の前記外側面及び内側面が外側絶縁性接着剤73及び内側絶縁性接着剤74によってそれぞれ被覆されている。
斯かる構成によれば、前記圧電素子60をウエハーから切り出す際に生じ得る前記上側電極層63及び前記下側電極層62のバリや前記圧電体61の粒子が前記圧電素子60の伸縮動作時に落下することを有効に防止できる。
【0074】
実施の形態2
以下、本発明に係る磁気ヘッドサスペンションの他の実施の形態について、添付図面を参照しつつ説明する。
図7(a)及び(b)に、それぞれ、本実施の形態に係る磁気ヘッドサスペンション2Aの上面図及び下面図を示す。なお、図7(b)における○印は溶接点を示している。
又、図8(a)及び(b)に、それぞれ、図7(a)におけるVIII(a)-VIII(a)線及びVIII(b)-VIII(b)線に沿った断面図を示す。
なお、図中、前記実施の形態1におけると同一部材には同一符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0075】
さらに、図9(a)に前記一対の圧電素子60及び前記絶縁性接着剤70を取り除いた状態の前記磁気ヘッドサスペンション2Aの上面図を、図9(b)に前記磁気ヘッドサスペンション2Aにおけるフレクシャ部40Bの上面図を示す。なお、図9(a)において、前記一対の圧電素子60を一点鎖線で示している。
【0076】
図8及び図9に示すように、本実施の形態に係る前記磁気ヘッドサスペンション2Aは、前記一対の圧電素子60が前記フレクシャ部40Bに支持されることで前記一対の圧電素子60の前記支持部10に対するz方向位置(前記ディスク面と直交する方向に関する位置)の安定化を図り得るようになっている。
【0077】
詳しくは、図9(a)及び(b)に示すように、前記フレクシャ部40Bは、前記フレクシャ金属基板400,前記絶縁層411,前記信号配線412及び前記保護層に加えて、前記フレクシャ金属基板400を形成する金属部材と同一金属部材によって形成された左右一対の補強金属板420を有している。
【0078】
前記補強金属板420は、図9(a)及び(b)に示すように、前記フレクシャ金属基板400とは別体とされており、少なくとも一部が前記一対の圧電素子60の前記下側電極層62とそれぞれ対向するように前記絶縁層411における前記ディスク面とは反対側に配置され且つ前記一対の圧電素子60の伸縮方向に弾性変形可能とされている。
【0079】
そして、前記一対の圧電素子60は、図8に示すように、前記一対の補強金属板420を囲繞するように前記絶縁層411における前記ディスク面とは反対側に塗布された補強用絶縁性接着剤75を介して前記フレクシャ部40Bに支持されている。
【0080】
斯かる構成によれば、前記ツール100を使用することなく前記一対の圧電素子60を前記支持部10に安定して装着させることができる。
即ち、前記フレクシャ部40Bの前記フレクシャ基板400を前記ロードビーム部30及び前記支持部10に溶接によって固着させ、次に、前記一対の補強金属板420を囲繞するように前記絶縁層411における前記ディスク面とは反対側に補強用絶縁性接着剤75を塗布させてから前記一対の圧電素子60を前記開口領域13内に配置させ、その後に、前記先端側隙間及び前記基端側隙間に先端側絶縁性接着剤72及び基端側絶縁性接着剤71を充填させることにより、前記ツール100を使用することなく前記一対の圧電素子60を前記支持部10に安定して装着させることができる。
【0081】
さらに、前記一対の補強金属板420は前記一対の圧電素子60の伸縮方向に弾性変形可能とされている為、前記一対の補強金属板420の存在に起因して前記一対の圧電素子60の伸縮動作時に該一対の圧電素子60がz方向(前記ディスク面と直交する方向)に撓み変形することを有効に防止又は低減できる。
【0082】
本実施の形態においては、図9に示すように、前記一対の補強金属板420の各々は、凸部がサスペンション幅方向一方側(図示の形態においては外方側)を向いたU字状とされているが、当然ながら本発明は斯かる形態に限定されるものではない。
【0083】
例えば、図10(a)に示すように、前記一対の補強金属板420の各々が、凸部がサスペンション幅方向一方側(例えば外方側)を向くU字状とされ、さらに、前記凸部においてサスペンション長手方向先端側及び基端側に分断されるように構成することも可能である。
【0084】
又、図10(b)に示すように、前記一対の補強金属板420の各々が、サスペンション長手方向先端側においてサスペンション幅方向に延びる先端辺421と、サスペンション長手方向基端側においてサスペンション幅方向に延びる基端辺423と、前記先端片421及び前記基端辺423を連結するようにサスペンション長手方向に沿って延びる長手方向辺422とを有し、前記長手方向辺422が平面視において蛇腹状を有するように構成することも可能である。
前記フレクシャ部40Bに前記補強金属板420を形成する構成においては、好ましくは、図9(a),図9(b),図10(a)及び図10(b)に示すように、前記フレクシャ部40Bに前記基端側ブリッジ領域404を設けることができ、これにより、前記フレクシャ部40Bの剛性を高めて、前記圧電素子60の実装プロセスの容易化を図ることができる。
【0085】
さらに、本実施の形態においては、図7及び図8(a)に示すように、前記一対の圧電素子60の前記上側電極層63は上側導電性接着剤69を介して前記支持部10に電気的に接合されており、前記上側導電性接着剤69は上側絶縁性接着剤76によって囲繞されている。
このように、前記上側導電性接着剤69を前記上側絶縁性接着剤76によって囲繞することにより、前記上側導電性接着剤69に含まれるフィラーが前記ディスク面上に脱落することを有効に防止できる。
なお、前記上側絶縁性接着剤76の代わりに樹脂封止材を用いても良い。
【0086】
一方、前記下側電極層62は、図8(a)及び(b)に示すように、下側導電性接着剤68を介して前記フレクシャ部40Bに設けられた前記電圧供給配線413に電気的に接合されている。
【0087】
詳しくは、前記フレクシャ部40Bには、少なくとも一部が平面視において前記圧電素子60とオーバーラップするように前記絶縁層411における前記ディスク面と対向する側に前記電圧供給配線413が設けられている。
そして、前記絶縁層411には、図8及び図9に示すように、前記電圧供給配線413のうち前記圧電素子60とオーバーラップする部分を外部へ開放させる為の開口411aが設けられており、前記電圧供給配線413は、図8(a)及び(b)に示すように、前記開口411aを介して前記下側導電性接着剤68によって前記下側電極層62に電気的に接続されている。
【0088】
前記下側導電性接着剤68は、図8(a)及び(b)に示すように、前記圧電素子60の前記下側電極層62,前記補強用絶縁性接着剤75,前記絶縁層411及び前記内側絶縁性接着剤74によって囲まれる密閉空間内に収容されており、これにより、前記下側導電性接着剤68に含まれるフィラーが前記ディスク面上に脱落することを有効に防止している。
【0089】
本実施の形態においては、前述の通り、前記補強金属板420はサスペンション幅方向外方側が凸状とされ且つサスペンション幅方向内方側が開放されたU字状とされている。
斯かる構成において、前記開口411aは、図9(a)及び(b)に示すように、サスペンション長手方向に関し対応する前記補強金属板420の先端部及び基端部の間に位置し且つサスペンション幅方向に関し対応する前記補強金属板420よりも内方側(サスペンション長手方向中心線CLに近接する側)に位置している。
【0090】
そして、前記開口411aを介して前記電圧供給配線413を前記下側電極層62に電気的に接続する前記下側導電性接着剤68は、対応する前記補強金属板420を囲繞するように前記絶縁層411の前記ディスク面とは反対側に配設された前記補強用絶縁性接着剤75と前記圧電素子60のサスペンション幅方向内側面を覆うように設けられた前記内側絶縁性接着剤74とによって囲まれている。
【0091】
なお、本実施の形態においては、図7(a)に示すように、前記内側絶縁性接着剤74は、平面視において前記一対の圧電素子60の間に存する中央隙間の全体を埋めるように充填されている。
【0092】
好ましくは、前記圧電素子60の外側面を覆う前記外側絶縁性接着剤73は、対応する前記連結梁14の内側面の少なくとも一部に固着されるように前記圧電素子60及び前記連結梁14の間の外側隙間に充填され得る。
【0093】
本実施の形態においては、図7に示すように、前記外側絶縁性接着剤73は、前記先端側梁142の内側面に固着されている。
即ち、前記外側隙間のうち前記基端側梁141の内側を除く領域が前記外側絶縁性接着剤73によって充填されている。
【0094】
このように、前記一対の圧電素子60の先端側端面と前記先端領域12との間を前記先端側絶縁性接着剤72によって連結し且つ前記一対の圧電素子60の基端側端面と前記基端領域11との間を前記基端側絶縁性接着剤71によって連結することに加えて、前記一対の圧電素子60と対応する前記連結梁14との間を前記外側絶縁性接着剤73で連結し且つ前記一対の圧電素子60の間を前記内側絶縁性接着剤74に連結することにより、前記一対の圧電素子60が装着される前記支持部10の剛性(前記支持部10の捩れや曲げに対する剛性)を高めることができ、これにより、前記磁気ヘッドサスペンション全体としての共振周波数の向上、及び、耐衝撃性の向上(板厚方向に衝撃力を受けた際に前記圧電素子60に付加される応力の低減)を図ることができる。
【0095】
図11(a)〜(c)に、それぞれ、本実施の形態の第1変形例に係る磁気ヘッドサスペンション2Bの上面図,前記磁気ヘッドサスペンション2Bにおける支持部10Bの上面図及び図11(a)におけるXI-XI線に沿った断面図を示す。
なお、図中、本実施の形態及び前記実施の形態1におけると同一部材には同一符号を付している。
【0096】
図11に示すように、前記第1変形例に係る磁気ヘッドサスペンション2Bの前記支持部10Bにおいては、前記先端領域12のうちサスペンション幅方向に関し前記一対の圧電素子60に対応した部位に、サスペンション厚み方向一方側の端面からサスペンション厚み方向他方側へ所定距離だけ延びる垂直面121及び前記垂直面121のサスペンション厚み方向他端部から前記先端壁面12aへ延びる水平面122によって画される一対の先端側ポケット部120が設けられている。
【0097】
同様に、前記基端領域11のうちサスペンション幅方向に関し前記一対の圧電素子60に対応した部位に、サスペンション厚み方向一方側の端面からサスペンション厚み方向他方側へ所定距離だけ延びる垂直面111及び前記垂直面111のサスペンション厚み方向他端部から前記基端壁面11aへ延びる水平面112によって画される一対の基端側ポケット部110が設けられている。
【0098】
斯かる構成を備えた前記第1変形例2Bにおいては、前記一対の先端側ポケット部120を介して前記先端側絶縁性接着剤72を前記先端側隙間にスムースに充填させることができ、且つ、前記一対の基端側ポケット部110を介して前記基端側絶縁性接着剤71を前記基端側隙間にスムースに充填させることができる。
従って、前記先端側絶縁性接着剤72及び前記基端側絶縁性接着剤71の充填作業効率を向上させることができる。
【0099】
図12に、第2変形例に係る磁気ヘッドサスペンション2B’の部分縦断側面図であって、図11(c)に対応した断面図を示す。
なお、図中、前記第1変形例を含む本実施の形態及び前記実施の形態1におけると同一部材には同一符号を付している。
【0100】
図12に示すように、前記第2変形例に係る磁気ヘッドサスペンション2B’の支持部10B’においては、前記先端領域12のうちサスペンション幅方向に関し前記一対の圧電素子60に対応した部位には、サスペンション厚み方向一方側の端面から前記先端壁面12aへ至るように設けられたテーパ面であって、前記端面からサスペンション厚み方向他方側へ行くに従って前記先端壁面12aに近づき且つ前記端面からサスペンション厚み方向所定距離の位置において前記先端壁面12aに到達するテーパ面によって画される一対の先端側ポケット部120’が設けられている。
【0101】
そして、前記基端領域11のうちサスペンション幅方向に関し前記一対の圧電素子60に対応した部位には、サスペンション厚み方向一方側の端面から前記基端壁面11aへ至るように設けられたテーパ面であって、前記端面からサスペンション厚み方向他方側へ行くに従って前記基端壁面11aに近づき且つ前記端面からサスペンション厚み方向所定距離の位置において前記基端壁面11aに到達するテーパ面によって画される一対の基端側ポケット部110’が設けられている。
【0102】
斯かる構成の前記第2変形例においても前記第1変形例と同様の効果を得ることができる。
なお、前記第1及び第2変形例においては、本実施の形態に係る前記磁気ヘッドサスペンション2Aにおいて前記一対の先端側ポケット部120(120’)及び前記一対の基端側ポケット部110(110’)を設けた場合を例に説明したが、当然ながら、前記一対の先端側ポケット部120(120’)及び前記一対の基端側ポケット部110(110’)を前記実施の形態1に係る磁気ヘッドサスペンション1Aに設けることも可能である。
【0103】
実施の形態3
以下、本発明に係る磁気ヘッドサスペンションのさらに他の実施の形態について、添付図面を参照しつつ説明する。
図13に、本実施の形態に係る磁気ヘッドサスペンション3Aの上面図を示す。
又、図14(a)及び(b)に、それぞれ、図13におけるXIV(a)-XIV(a)線及びXIV(b)-XIV(b)線に沿った断面図を示す。
なお、図中、前記実施の形態1及び2におけると同一部材には同一符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0104】
図13,図14(a)及び(b)に示すように、本実施の形態に係る前記磁気ヘッドサスペンション3Aは、前記支持部10が支持部10Cに変更されている点において主として前記磁気ヘッドサスペンション2Aと相違している。
【0105】
図15に、前記支持部10Cの上面図を示す。
図13及び図15に示すように、前記支持部10Cは、前記支持部10,10Bの構成に加えて、サスペンション長手方向中心線CL上において前記先端領域12及び前記基端領域11の間を連結する中央連結梁19を有している。
即ち、本実施の形態における前記支持部10Cにおいては、前記開口領域13は前記中央連結梁19によって左右一対の開口領域13aに分割されている。
【0106】
このように前記一対の連結梁14に加えて、サスペンション幅方向中央において前記先端領域12及び前記基端領域11を連結する前記中央連結梁19を備えた前記支持部10Cを採用することにより、前記一対の圧電素子60による前記磁気ヘッドスライダ50のシーク方向への移動容易性を阻害することなく、前記支持部10Cの剛性(前記支持部10Cの捩れや曲げに対する剛性)を高めることができ、これにより、前記磁気ヘッドサスペンション3A全体としての共振周波数の向上、及び、耐衝撃性の向上(板厚方向に衝撃力を受けた際に前記圧電素子60に付加される応力の低減)を図ることができる。
【0107】
又、本実施の形態においては、前記支持部10Cには、図15に示すように、前記基端側ポケット部110及び前記先端側ポケット部120に加えて、前記内側絶縁性接着剤74の充填容易化を図る為の内側ポケット部140と、前記外側絶縁性接着剤73の充填容易化を図る為の外側ポケット部130とが形成されている。
【0108】
前記内側ポケット部140は、前記中央連結梁19のサスペンション幅方向両側に形成されている。
前記外側ポケット部130は、前記連結梁14のサスペンション幅方向内方側に形成されている。
本実施の形態においては、前記外側ポケット部130は、前記先端側梁142のサスペンション幅方向内方側において該先端側梁142の長手方向略全域に亘って形成されている。
【0109】
なお、本実施の形態においては、図14に示すように、前記先端側ポケット部120,前記基端側ポケット部110,前記内側ポケット部140及び前記外側ポケット部130は、図11に示す構成と同様に、垂直面及び水平面によって形成されたステップ状とされているが、これに代えて、図12に示す構成におけるようにテーパ状に形成されることも可能である。
【0110】
さらに、本実施の形態においては、図14(b)に示すように、前記上側導電性接着剤69は、前記上側電極層63を前記中央連結梁19に電気的に接続するように構成されている。
【0111】
好ましくは、図13及び図14に示すように、前記上側導電性接着剤69は、前記中央連結梁19に電気的に接続された状態で該中央連結梁19を挟んでサスペンション幅方向両側に延び、一端側が前記一対の圧電素子60の一方の前記上側電極層63に電気的に接続され且つ他端側が前記一対の圧電素子60の他方の前記上側電極層63に電気的に接続されるように構成される。
斯かる構成によれば、前記一対の圧電素子60における前記上側電極層63の接地構造の簡略化を図ることができる。
【符号の説明】
【0112】
1A,1B,2A,2B,2B’ 磁気ヘッドサスペンション
10,10B,10B’ 支持部
11 基端領域
11a 基端壁面
12 先端領域
12a 先端壁面
13 開口領域
14 連結梁
20 荷重曲げ部
30 ロードビーム部
40,40B フレクシャ部
50 磁気ヘッドスライダ
60 圧電素子
61 圧電体
62 下側電極層
63 上側電極層
68 下側導電性接着剤
71 基端側絶縁性接着剤
72 先端側絶縁性接着剤
73 外側絶縁性接着剤
74 内側絶縁性接着剤
75 補強用絶縁性接着剤
110,110’ 基端側ポケット部
111 垂直面
112 水平面
120,120’ 先端側ポケット部
121 垂直面
122 水平面
141 基端側梁
142 先端側梁
143 基端側梁及び先端側梁の連結点
400 フレクシャ金属基板
411 絶縁層
412 信号配線
413 電圧供給配線
420 補強金属板
CL サスペンション長手方向中心線
IP 仮想線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気ヘッドスライダをディスク面へ向けて押し付ける為の荷重を発生する荷重曲げ部と、前記荷重を磁気ヘッドスライダに伝達するためのロードビーム部と、前記荷重曲げ部を介して前記ロードビーム部を支持し且つメインアクチュエータによって直接又は間接的に揺動中心回りにシーク方向へ揺動される支持部と、前記磁気ヘッドスライダを支持した状態で前記ロードビーム部及び前記支持部に支持されるフレクシャ部と、圧電体並びに前記圧電体の前記ディスク面と対向する側及び前記ディスク面とは反対側にそれぞれ配設された下側電極層及び上側電極層を有する一対の圧電素子であって、前記磁気ヘッドスライダをシーク方向に微動させる為にサスペンション長手方向中心線を基準にして互いに対して対称で且つ互いに対して伸縮方向が異なるように前記支持部に装着された左右一対の圧電素子とを備えた磁気ヘッドサスペンションであって、
前記支持部は、前記メインアクチュエータに直接又は間接的に連結される基端領域と、前記荷重曲げ部が連結される先端領域と、サスペンション長手方向に関し前記基端領域及び前記先端領域の間に位置する開口領域と、前記開口領域よりサスペンション幅方向外方向側において前記基端領域及び前記先端領域の間を連結する左右一対の連結梁とを有し、
前記一対の圧電素子は、前記上側電極層及び前記下側電極層の双方が前記支持部及び前記支持部に固着される剛性部材の何れとも対向しない状態で、先端側の端面の少なくとも一部が前記先端領域におけるサスペンション長手方向基端側を向く先端壁面と先端側隙間を存しつつ対向し且つ基端側の端面の少なくとも一部が前記基端領域におけるサスペンション長手方向先端側を向く基端壁面と基端側隙間を存しつつ対向するように、前記開口領域内に配置され、
前記一対の圧電素子の各々は、前記先端側隙間及び前記基端側隙間に充填された先端側絶縁性接着剤及び基端側絶縁性接着剤によって前記支持部に固着されていることを特徴とする磁気ヘッドサスペンション。
【請求項2】
前記一対の圧電素子の各々は、サスペンション幅方向外側面及び内側面が外側絶縁性接着剤及び内側絶縁性接着剤で被覆されていることを特徴とする請求項1に記載の磁気ヘッドサスペンション。
【請求項3】
前記一対の連結梁の各々は、前記基端領域に連結された基端部から先端部へ略直線状に延びる基端側梁と、前記基端側梁に連結された基端部から前記先端領域に連結された先端部へ略直線状に延びる先端側梁とを有し、
前記基端側梁及び前記先端側梁の連結点が前記基端側梁の基端部及び前記先端側梁の先端部を結ぶ仮想線よりサスペンション長手方向中心線に近接するように、前記先端側梁が前記基端側梁に対して前記ディスク面と直交する平面視において傾斜されており、
前記外側絶縁性接着剤は、対応する前記連結梁の少なくとも一部に固着され、
前記内側絶縁性接着剤は、前記平面視において前記一対の圧電素子の間に存する中央隙間の全体を埋めるように充填されていることを特徴とする請求項2に記載の磁気ヘッドサスペンション。
【請求項4】
前記フレクシャ部は、前記ロードビーム部及び前記支持部に溶接によって固着されるフレクシャ金属基板と、前記フレクシャ金属基板とは別体とされた左右一対の補強金属板であって、少なくとも一部が前記一対の圧電素子の前記下側電極層とそれぞれ対向するように配置され且つ前記一対の圧電素子の伸縮方向に弾性変形可能とされた左右一対の補強金属板と、前記フレクシャ金属基板及び前記一対の補強金属板を保持するようにこれらにおける前記ディスク面に対向する側の面に積層される絶縁層と、前記絶縁層における前記ディスク面と対向する側の面に積層される信号配線とを含み、
前記一対の圧電素子は、前記一対の補強金属板を囲繞するように前記絶縁層における前記ディスク面とは反対側に塗布された補強用絶縁性接着剤を介して前記フレクシャ部に支持されていることを特徴とする請求項1から3の何れかに記載の磁気ヘッドサスペンション。
【請求項5】
前記フレクシャ部は、前記絶縁層における前記ディスク面と対向する側の面に電圧供給配線を有し、
前記電圧供給配線は、前記絶縁層に形成された開口を介して下側導電性接着剤によって前記下側電極層に電気的に接続されており、
前記補強用絶縁性接着剤と共働して前記下側導電性接着剤を囲繞する他の絶縁性接着剤が設けられ、前記下側導電性接着剤は前記下側電極層、前記絶縁層、前記補強用絶縁性接着剤及び前記他の絶縁性接着剤によって画される密閉空間内に収容されていることを特徴とする請求項4に記載の磁気ヘッドサスペンション。
【請求項6】
前記先端領域のうちサスペンション幅方向に関し前記一対の圧電素子に対応した部位には、サスペンション厚み方向一方側の端面からサスペンション厚み方向他方側へ所定距離だけ延びる垂直面及び前記垂直面のサスペンション厚み方向他端部から前記先端壁面へ延びる水平面によって画される一対の先端側ポケット部が設けられ、
前記基端領域のうちサスペンション幅方向に関し前記一対の圧電素子に対応した部位に、サスペンション厚み方向一方側の端面からサスペンション厚み方向他方側へ所定距離だけ延びる垂直面及び前記垂直面のサスペンション厚み方向他端部から前記基端壁面へ延びる水平面によって画される一対の基端側ポケット部が設けられていることを特徴とする請求項1から5の何れかに記載の磁気ヘッドサスペンション。
【請求項7】
前記先端領域のうちサスペンション幅方向に関し前記一対の圧電素子に対応した部位には、サスペンション厚み方向一方側の端面から前記先端壁面へ至るように設けられたテーパ面であって、前記端面からサスペンション厚み方向他方側へ行くに従って前記先端壁面に近づき且つ前記端面からサスペンション厚み方向所定距離の位置において前記先端壁面に到達するテーパ面によって画される一対の先端側ポケット部が設けられ、
前記基端領域のうちサスペンション幅方向に関し前記一対の圧電素子に対応した部位には、サスペンション厚み方向一方側の端面から前記基端壁面へ至るように設けられたテーパ面であって、前記端面からサスペンション厚み方向他方側へ行くに従って前記基端壁面に近づき且つ前記端面からサスペンション厚み方向所定距離の位置において前記基端壁面に到達するテーパ面によって画される一対の基端側ポケット部が設けられていることを特徴とする請求項1から5の何れかに記載の磁気ヘッドサスペンション。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−54256(P2011−54256A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−204350(P2009−204350)
【出願日】平成21年9月4日(2009.9.4)
【出願人】(000175722)サンコール株式会社 (96)
【Fターム(参考)】