説明

磁気マーカ検出装置及び磁気マーカ検出用故障認識方法

【課題】本発明は、故障認識の精度を向上させた磁気マーカ検出装置及び磁気マーカ検出用故障認識方法の提供を目的とする。
【解決手段】走行路11上に敷設された磁気マーカMの発する磁界を検出する磁気センサ3内に複数の磁気検出部が車両2の所定方向に並んで配列されており、車両2がどの位置を通過しても全ての磁気検出部が磁気を検出できるように配置された基準磁気マーカ(N極帯磁のMxn若しくはS極帯磁のMxs)を通過する時に、その通過時の基準磁気マーカの磁極を検出していない磁気検出部がないかを判定すると共にその通過時の基準磁気マーカと異なる磁極を検出している磁気検出部がないかを判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体の所定方向に並んで配列された複数の磁気検出部を用いて路上に敷設された磁界を発する磁気マーカの位置を検出する際の故障認識技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、磁気抵抗素子等の磁気検出部を用いて、道路に所定間隔毎に埋設された磁界を発する磁気マーカの位置を検出する磁気センサの故障認識方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図1は、磁気センサを搭載する車両の走行システムを説明するための構成図である。走行路11上に所定間隔毎に磁気マーカMが設置され、所定の磁気マーカMの間には車両2が走行路11上のどの位置を通過しても磁気センサ3が磁気検出を行うように設置された基準マーカMx(N極に帯磁されたN極基準マーカMxnとS極に帯磁されたS極基準マーカMxs)が設置されている。また、磁気センサ3は、車両の車幅方向に向けて一列に複数個並べて配設された複数の磁気検出素子を有しており、磁気マーカMや基準マーカMxを検出すると、それらの磁気を検出した磁気検出素子だけオンする。
【0004】
したがって、車両2が基準マーカMxを通過するときにオンすべき磁気検出素子のうちでオンしない磁気検出素子を「オフ故障素子」として故障認識し、磁気マーカMが無い位置(例えば、図1のマーカ番号526の磁気マーカMと527の磁気マーカMとの間の位置)を通過するときにオフすべき磁気検出素子のうちでオフしない磁気検出素子を「オン故障素子」として故障認識することによって、磁気センサ3のオフ故障とオン故障の認識が可能となる。
【特許文献1】発明協会公開技報2005−500058号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述の従来技術では、オン故障についての故障認識は、磁気マーカMが無い位置を通過するときに行わなければならない。そのため、車輪速センサなどからの車輪パルスを用いて移動体の移動距離を推定し、磁気マーカMを検出した位置などの基準位置にその推定移動距離を加算するなどの何らかの方法によって、磁気マーカMが無い位置を特定する必要がある。
【0006】
しかしながら、磁気マーカMが無い位置を特定するために、車輪パルスのようなノイズがのりやすいものを基準にして推定すると、正しい位置を特定することができないおそれがある。例えば、ノイズなどにより車輪パルスを正しく読み込めなくなることによって、実際には磁気マーカMを通過している時にもかかわらず磁気マーカMが無い位置を通過していると推定してしまい、オフすべき位置でオフしていないとして、オン故障であると誤って故障認識するおそれがある。
【0007】
そこで、本発明は、故障認識の精度を向上させた磁気マーカ検出装置及び磁気マーカ検出用故障認識方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明の一局面によれば、
移動体の所定方向に並んで配列され、路上に敷設された磁気マーカの発する磁界を検出する複数の磁気検出部を備え、
複数の磁気検出部のうち所定の磁界強度条件を満たす磁気検出部を特定することにより該移動体に対する前記磁気マーカの位置を検出する磁気マーカ検出装置において、
前記磁気マーカの磁極を検出する手段を複数の磁気検出部のそれぞれに備え、
N極又はS極のいずれか一方に帯磁した磁気マーカを通過する時にその通過時の磁気マーカと異なる磁極を検出している磁気検出部がないかを判定することを特徴とする磁気マーカ検出装置が提供される。若しくは、
移動体の所定方向に並んで配列され、路上に敷設された磁気マーカの発する磁界の強度を検出する複数の磁気検出部のうち、所定の磁界強度条件を満たす磁気検出部を特定することにより検出された該移動体に対する前記磁気マーカの位置を、故障認識するための磁気マーカ検出用故障認識方法において、
N極又はS極のいずれか一方に帯磁した磁気マーカを通過する時にその通過時の磁気マーカと異なる磁極を検出している磁気検出部がないかを判定するステップを備えることを特徴とする磁気マーカ検出用故障認識方法が提供される。
【0009】
本局面によると、N極に帯磁した磁気マーカを通過する時にはS極を検出している磁気検出部がないかを判定し、S極に帯磁した磁気マーカを通過する時にはN極を検出している磁気検出部がないかを判定することになる。つまり、N極に帯磁した磁気マーカを通過する時に磁気検出部がS極を検出していれば、S極を検出すべきではない場所でS極を検出しているとして、その磁気検出部はS極検出側にオン故障していると故障認識することができる。同様に、S極に帯磁した磁気マーカを通過する時に磁気検出部がN極を検出していれば、N極を検出すべきではない場所でN極を検出しているとして、その磁気検出部はN極検出側にオン故障していると故障認識することができる。すなわち、N極又はS極のいずれか一方に帯磁した磁気マーカを通過することによって、反対極の磁気マーカが確実に存在しない場所でオン故障の故障認識をすることになり、通過時の磁気マーカと反対の磁極側のオン故障を確実に認識することができるようになる。
【0010】
ここで、N極又はS極のいずれか一方に帯磁し、移動体がどの位置を通過しても全ての磁気検出部が前記所定の磁界強度条件を満たすことができるように配置された基準磁気マーカを通過する時に、その通過時の基準磁気マーカの磁極を検出していない磁気検出部がないかを判定すると共にその通過時の基準磁気マーカと異なる磁極を検出している磁気検出部がないかを判定すると好適である。
【0011】
かかる場合によると、N極に帯磁した基準磁気マーカを通過する時にはN極を検出していない磁気検出部がないかを判定すると共にS極を検出している磁気検出部がないかを判定し、S極に帯磁した基準磁気マーカを通過する時にはS極を検出していない磁気検出部がないかを判定すると共にN極を検出している磁気検出部がないかを判定することになる。かかる構成においては、N極に帯磁した基準磁気マーカを通過する時には、全ての磁気検出部は、必ずN極を検出しS極を検出することはないし、S極に帯磁した基準磁気マーカを通過する時には、全ての磁気検出部は、必ずS極を検出しN極を検出することはない。したがって、N極に帯磁した基準磁気マーカを通過する時にN極を検出していない磁気検出部が一つでもあれば、N極を検出すべき場所でN極を検出していないとして、その磁気検出部はN極検出側にオフ故障していると故障認識することができると共に、N極に帯磁した基準磁気マーカを通過する時にS極を検出している磁気検出部が一つでもあれば、S極を検出すべきではない場所でS極を検出しているとして、その磁気検出部はS極検出側にオン故障していると故障認識することができる。同様に、S極に帯磁した基準磁気マーカを通過する時にS極を検出していない磁気検出部が一つでもあれば、S極を検出すべき場所でS極を検出していないとして、その磁気検出部はS極検出側にオフ故障していると故障認識することができると共に、S極に帯磁した基準磁気マーカを通過する時にN極を検出している磁気検出部が一つでもあれば、N極を検出すべきではない場所でN極を検出しているとして、その磁気検出部はN極検出側にオン故障していると故障認識することができる。すなわち、N極とS極に帯磁した基準磁気マーカを通過することによって、N極検出側のオン故障とオフ故障及びS極検出側のオン故障とオフ故障を確実に認識することができるようになる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、故障認識の精度を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための最良の形態の説明を行う。図1に示す如く、本実施例のシステムは、インフラ施設として走行路11を備えており、車両2は走行路11上を走行する。走行路11には、その中央に沿って所定間隔毎に磁気マーカMが敷設されている。本実施例の各磁気マーカMは、それぞれ、上部がN極に下部がS極に帯磁された磁気ネイルにより構成され、その周囲に磁界を発生させている。また、走行路11上の所定の磁気マーカMの間には、基準磁気マーカMx、すなわち、N極基準マーカMxn若しくはS極基準マーカMxsが敷設されている。N極基準マーカMxn及びS極基準マーカMxsは、車両2が走行路11上の図面上下方向の(車幅方向の)どの位置を走行しても磁気センサ3の磁気検出部が磁気検出を行うことができるように設置されている。
【0014】
一方、車両2は、磁気マーカ検出装置を備える。図4は、本実施例の磁気マーカ検出装置10のブロック図の一例を示す。磁気マーカ検出装置10は、磁気センサ3、レベルシフト部5、制御部7を備えている。
【0015】
磁気センサ3は、例えば車体底部に設置されている。図2は、車両2が磁気マーカMを通過した時点における磁気マーカMと磁気センサ3との位置関係を示す図である。図2(a)は、その位置関係を車両上方から見た際の図を示し、図2(b)は、その位置関係を車両後方から見た際の図を示す。磁気センサ3は、車幅方向に向けて一列に例えば59個並んで配設された磁気検出部により構成されている(アレイ式磁気センサともいう)。図2では一列のみしか図示していないが、もちろん、平行に複数列備えてよい。各磁気検出部は、垂直磁界強さを検出し、垂直磁界強さに応じた電圧を出力する。なお、本実施例において、各磁気検出部の符号を、車体左側から順に、#0,#1,・・・,#58とする。
【0016】
図3は、磁気マーカMの発する磁界の垂直磁界強さの分布と磁気センサ3の各磁気検出部の検出状態との関係を説明するための図である。磁気マーカMの発する磁界の垂直磁界強度は、同心円上において同程度であり、その中心位置から遠ざかるに従って小さくなる。図3(a)は、一つの磁気マーカMの発する磁界の垂直磁界強さの分布と磁気センサ3の各磁気検出部の検出状態との関係図である。例えば、磁気の検出/非検出を判定するための閾値を図3(a)に示される位置に設定すると、閾値以上の垂直磁界強度を検出している磁気検出部#2〜5が磁気を検出していると判定されることになる。一方、図3(b)は、N極基準マーカMxn若しくはS極基準マーカMxsの発する磁界の垂直磁界強さの分布と磁気センサ3の各磁気検出部の検出状態との関係図である。例えば、磁気の検出/非検出を判定するための閾値を図3(b)に示される位置に設定すると、閾値以上の垂直磁界強度を検出している全ての磁気検出部#0〜#58が磁気を検出していると判定されることになる。
【0017】
磁気センサ3の各磁気検出部は、自己を垂直方向に流通する磁界の強度に応じた電圧Vaを出力する。本実施例において、各磁気検出部は、流通する垂直磁界の強度が大きくなるほど大きな電圧Vaを出力する。すなわち、磁気検出部の出力電圧Vaは、磁気検出部が磁気マーカMの通過する位置に近いほど大きくなり、また、磁気マーカMの通過する位置から遠いほど小さくなる。従って、車両2が走行路11のどの位置を走行しているのかを認識するためには、各磁気検出部の出力電圧Vaの値を利用することになる。
【0018】
図5は、磁気センサ3の各磁気検出部の出力電圧と垂直磁界強度との関係を説明するための図である。図5(a)は、磁気センサ3の各磁気検出部の出力電圧特性の一例を示す図である。N極側の垂直磁界強度の場合には出力電圧が正となり、S極側の垂直磁界強度の場合には出力電圧が負となり、垂直磁界強度が大きくなるほど出力電圧の絶対値は大きくなっている。
【0019】
磁気センサ3の各磁気検出部の出力電圧に基づいて、制御部7は所定の制御を実施するが、磁気センサ3の各磁気検出部の出力電圧が図5(a)のような出力特性を有する場合、制御部7が負の電圧を取り込まないようにする必要があるため、図4に示されるように、レベルシフト部5が磁気センサ3の磁気検出部と制御部7との間に設けられている。レベルシフト部5は、各磁気検出部の出力電圧Vaをレベルシフトして、図5(b)に示されるような出力特性を有する電圧Vbを制御部7に対し出力する。
【0020】
図4に示される制御部7には、レベルシフト部5〜558にそれぞれ対応したA/Dチャンネル(特に図示しない)を介して電圧Vbが入力される。制御部7は、また、本発明に係るプログラムを記憶するROM、プログラムの作業領域であるRAM、プログラムを演算するCPUなどを備え、電圧Vbに基づいて本発明に係る所定の制御を実行する。
【0021】
制御部7は、閾値Vthsと閾値Vthnを設け、閾値Vths以下の電圧Vbを(レベルシフト部5を介して)出力する磁気検出部はS極を検出している磁気検出部であると判定し、閾値Vthn以上の電圧Vbを(レベルシフト部5を介して)出力する磁気検出部はN極を検出している磁気検出部であると判定し、閾値Vthsより大きく閾値Vthnより小さい電圧Vbを(レベルシフト部5を介して)出力する磁気検出部は磁気を検出していない状態であると判定する。
【0022】
したがって、本実施例の磁気マーカ検出装置10によれば、磁気検出部#0〜#58のうち、電圧Vbが閾値Vthn以上となっている最も磁気検出部#0側に位置する磁気検出部の位置と電圧Vbが閾値Vthn以上となっている最も磁気検出部#58側に位置する磁気検出部の位置との中央位置を、車両12に対して磁気マーカMが通過した位置として検出することができる。若しくは、磁気検出部#0〜#58のうち、電圧Vbが閾値Vths以下となっている最も磁気検出部#0側に位置する磁気検出部の位置と電圧Vbが閾値Vths以下となっている最も磁気検出部#58側に位置する磁気検出部の位置との中央位置を、車両12に対して磁気マーカMが通過した位置として検出することができる。
【0023】
それでは、制御部7が実行する、磁気マーカMの検出故障を判定する制御について説明する。
【0024】
制御部7は、図6(a)に示されるように、車両2がN極基準マーカMxnを通過した時には、各磁気検出部や制御部7までの検出経路などの磁気検出に関わる部位が正常であるならば、全ての磁気検出部#0〜#58はN極を検出していると判定しS極を検出していないと判定する。
【0025】
しかし、図6(b)に示されるように、車両2がN極基準マーカMxnを通過した時に、磁気検出部が閾値Vthn以上の電圧Vbを出力していないことによりN極を検出していると判定されなかったり、閾値Vthn以上の電圧Vbを出力しているにもかかわらずN極を検出していると判定されなかったりした場合には、制御部7は、N極を検出すべき場所でN極を検出していないとして、該当する磁気検出部位(図6(b)の場合、#4)はN極検出側にオフ故障していると故障認識することができる。それと共に、車両2がN極基準マーカMxnを通過した時に、磁気検出部が閾値Vths以下の電圧Vbを出力していることによりS極を検出していると判定されたり、閾値Vths以下の電圧Vbを出力していないにもかかわらずS極を検出していると判定されたりした場合には、制御部7は、S極を検出すべきではない場所でS極を検出しているとして、該当する磁気検出部位(図6(b)の場合、#8)はS極検出側にオン故障していると故障認識することができる。
【0026】
同様に、制御部7は、図6(c)に示されるように、車両2がS極基準マーカMxsを通過した時には、各磁気検出部や制御部7までの検出経路などの磁気検出に関わる部位が正常であるならば、全ての磁気検出部#0〜#58はS極を検出していると判定しN極を検出していないと判定する。
【0027】
しかし、図6(d)に示されるように、車両2がS極基準マーカMxsを通過した時に、磁気検出部が閾値Vths以上の電圧Vbを出力していないことによりS極を検出していると判定されなかったり、閾値Vths以下の電圧Vbを出力しているにもかかわらずS極を検出していると判定されなかったりした場合には、制御部7は、S極を検出すべき場所でS極を検出していないとして、該当する磁気検出部位(図6(d)の場合、#2)はS極検出側にオフ故障していると故障認識することができる。それと共に、車両2がS極基準マーカMxsを通過した時に、磁気検出部が閾値Vthn以上の電圧Vbを出力していることによりN極を検出していると判定されたり、閾値Vthn以上の電圧Vbを出力していないにもかかわらずN極を検出していると判定されたりした場合には、制御部7は、N極を検出すべきではない場所でN極を検出しているとして、該当する磁気検出部位(図6(d)の場合、#7)はN極検出側にオン故障していると故障認識することができる。
【0028】
したがって、N極とS極に帯磁した基準マーカを通過することによって、NS両極のオン/オフ故障を同時に且つ確実に認識することができるようになる。
【0029】
なお、車両2が基準マーカMxを通過したことを制御部7が認識するためには、例えば、N極基準マーカMxn若しくはS極基準マーカMxsが所定の番号の磁気マーカMの次に敷設されていることを予め記憶させておけばよい。すなわち、図7に示されるように、524番目の磁気マーカの次にS極基準マーカMxsが敷設されていると予め記憶させておき、制御部7は、磁気マーカMを検出する毎にカウントアップすることによって、524番目の磁気マーカMの次に検出されたS極がS極基準マーカMxsであると認識することができる。
【0030】
また、制御部7は、ほぼ全ての磁気検出部がN極を検出していると判定した場合若しくはほぼ全ての磁気検出部がS極を検出していると判定した場合に、車両2がその磁極に帯磁した基準マーカMxを通過したと認識してもよい。基準マーカMxは、車両2が基準マーカMxを通過すれば車幅方向のどの位置を走行しても全ての磁気検出部が磁気検出を行うことができるように敷設されているからである。なお、「ほぼ全ての」としたのは、磁気検出部の一部や基準マーカMxの一部が故障している場合が考えられるため、数箇所の故障のために基準マーカMxの通過を認識することができなくなることを防ぐためである。
【0031】
それでは、図8及び図9を参照しながら、本実施例における制御部7の制御動作を説明する。
【0032】
図8は、車両2が走行路11を走行中にN極基準マーカMxnを通過したときの制御部7の制御フローの一例である。車両2が図1のような走行路11を走行している場合、制御部7は、全磁気検出部のうち閾値Vthn以上の電圧Vbを出力している磁気検出部を特定することにより車両2に対するN極に帯磁した磁気マーカMの位置(言い換えれば、N極に帯磁した磁気マーカMに対する車両2の位置)を認識する(ステップ2)。例えば、磁気検出部#0〜#58のうち、電圧Vbが閾値Vthn以上となっている最も磁気検出部#0側に位置する磁気検出部の位置と電圧Vbが閾値Vthn以上となっている最も磁気検出部#58側に位置する磁気検出部の位置との中央位置を、車両12に対して磁気マーカMが通過した位置として認識することができる。
【0033】
また、制御部7は、N極を検出している磁気検出部の個数に応じてN極に帯磁した磁気マーカMを通過したのかN極基準マーカMxnを通過したのかを判別する。制御部7は、N極を検出している磁気検出部の個数が第1閾値(例えば、4個)以上で第1閾値より大きい値の第2閾値(例えば、20個)未満であるときはN極に帯磁した磁気マーカMを通過したと判断し、N極を検出している磁気検出部の個数が第2閾値より大きい値の第3閾値(例えば、50個)以上であるときはN極基準マーカMxnを通過したと判断する(ステップ4;Yes)。制御部7は、N極に帯磁した磁気マーカMを通過したと判断した場合は、N極帯磁の磁気マーカMについての磁気マーカ番号をカウントアップする。
【0034】
N極基準マーカMxnを通過したと判断した制御部7は,磁気検出部位のN極オフ故障の認識を行う(ステップ6)。N極検出側にオフ故障していると故障認識された場合には(ステップ8;Yes)、制御部7は、N極検出側のオフ故障を示すN極オフ故障ダイアグビットに1を立て、その故障に該当する磁気検出部位の番号(#*)を記録する(ステップ10)。N極検出側にオフ故障していると故障認識されない場合(ステップ8;No)若しくはステップ10が完了した場合には、制御部7は、磁気検出部位のS極オン故障の認識を行う(ステップ12)。S極検出側にオン故障していると故障認識された場合には(ステップ14;Yes)、制御部7は、S極検出側のオン故障を示すS極オン故障ダイアグビットに1を立て、その故障に該当する磁気検出部位の番号(#*)を記録する(ステップ16)。S極検出側にオン故障していると故障認識されない場合(ステップ14;No)若しくはステップ16が完了した場合には、本制御フローは終了する。
【0035】
一方、図9は、車両2が走行路11を走行中にS極基準マーカMxsを通過したときの制御部7の制御フローの一例である。図8の場合と同様に、車両2が図1のような走行路11を走行している場合、制御部7は、全磁気検出部のうち閾値Vthn以上の電圧Vbを出力している磁気検出部を特定することにより車両2に対するN極に帯磁した磁気マーカMの位置を認識する(ステップ22)。
【0036】
また、制御部7は、S極を検出している磁気検出部の個数に応じてS極に帯磁した磁気マーカMを通過したのかS極基準マーカMxsを通過したのかを判別する。制御部7は、S極を検出している磁気検出部の個数が第1閾値(例えば、4個)以上で第1閾値より大きい値の第2閾値(例えば、20個)未満であるときはS極に帯磁した磁気マーカMを通過したと判断し、S極を検出している磁気検出部の個数が第2閾値より大きい値の第3閾値(例えば、50個)以上であるときはS極基準マーカMxsを通過したと判断する(ステップ24;Yes)。制御部7は、S極に帯磁した磁気マーカMを通過したと判断した場合は、S極帯磁の磁気マーカMについての磁気マーカ番号をカウントアップする。
【0037】
S極基準マーカMxsを通過したと判断した制御部7は、磁気検出部位のS極オフ故障の認識を行う(ステップ26)。S極検出側にオフ故障していると故障認識された場合には(ステップ28;Yes)、制御部7は、S極検出側のオフ故障を示すS極オフ故障ダイアグビットに1を立て、その故障に該当する磁気検出部位の番号(#*)を記録する(ステップ30)。S極検出側にオフ故障していると故障認識されない場合(ステップ28;No)若しくはステップ30が完了した場合には、制御部7は、磁気検出部位のN極オン故障の認識を行う(ステップ32)。N極検出側にオン故障していると故障認識された場合には(ステップ34;Yes)、制御部7は、N極検出側のオン故障を示すN極オン故障ダイアグビットに1を立て、その故障に該当する磁気検出部位の番号(#*)を記録する(ステップ36)。N極検出側にオン故障していると故障認識されない場合(ステップ34;No)若しくはステップ36が完了した場合には、本制御フローは終了する。
【0038】
以上、本発明の好ましい実施例について詳説したが、本発明は、上述した実施例に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0039】
例えば、上述の実施例では、各磁気検出部はN極もS極も検出可能な構成になっていたが、N極検出専用の磁気検出部とS極検出専用の磁気検出部を備えてもよい。その場合、例えば、図2において、直列に59個並べられた磁気検出部のうち、#0と偶数番号の磁気検出部をN極専用磁気検出部とし、奇数番号の磁気検出部をS極専用磁気検出部とする。若しくは、直列に59個並べられたN極専用磁気検出部と直列に59個並べられたS極専用磁気検出部を平行に車両底部に設置してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】磁気センサを搭載する車両の走行システムを説明するための構成図である。
【図2】車両2が磁気マーカMを通過した時点における磁気マーカMと磁気センサ3との位置関係を示す図である。
【図3】磁気マーカMの発する磁界の垂直磁界強さの分布と磁気センサ3の各磁気検出部の検出状態との関係を説明するための図である。
【図4】本実施例の磁気マーカ検出装置10のブロック図の一例を示す。
【図5】磁気センサ3の各磁気検出部の出力電圧と垂直磁界強度との関係を説明するための図である。
【図6】基準マーカMxを通過した時の磁極の検出状態を表す図である。
【図7】基準マーカMxの通過認識を説明するための図である。
【図8】車両2が走行路11を走行中にN極基準マーカMxnを通過したときの制御部7の制御フローの一例である。
【図9】車両2が走行路11を走行中にS極基準マーカMxsを通過したときの制御部7の制御フローの一例である。
【符号の説明】
【0041】
2 車両
3 磁気センサ
11 走行路
M 磁気マーカ
Mx 基準マーカ
Mxn N極基準マーカ
Mxs S極基準マーカ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体の所定方向に並んで配列され、路上に敷設された磁気マーカの発する磁界を検出する複数の磁気検出部を備え、
複数の磁気検出部のうち所定の磁界強度条件を満たす磁気検出部を特定することにより該移動体に対する前記磁気マーカの位置を検出する磁気マーカ検出装置において、
前記磁気マーカの磁極を検出する手段を複数の磁気検出部のそれぞれに備え、
N極又はS極のいずれか一方に帯磁した磁気マーカを通過する時にその通過時の磁気マーカと異なる磁極を検出している磁気検出部がないかを判定することを特徴とする磁気マーカ検出装置。
【請求項2】
N極又はS極のいずれか一方に帯磁し、移動体がどの位置を通過しても全ての磁気検出部が前記所定の磁界強度条件を満たすことができるように配置された基準磁気マーカを通過する時に、
その通過時の基準磁気マーカの磁極を検出していない磁気検出部がないかを判定すると共にその通過時の基準磁気マーカと異なる磁極を検出している磁気検出部がないかを判定する、請求項1記載の磁気マーカ検出装置。
【請求項3】
移動体の所定方向に並んで配列され、路上に敷設された磁気マーカの発する磁界の強度を検出する複数の磁気検出部のうち、所定の磁界強度条件を満たす磁気検出部を特定することにより検出された該移動体に対する前記磁気マーカの位置を、故障認識するための磁気マーカ検出用故障認識方法において、
N極又はS極のいずれか一方に帯磁した磁気マーカを通過する時にその通過時の磁気マーカと異なる磁極を検出している磁気検出部がないかを判定するステップを備えることを特徴とする磁気マーカ検出用故障認識方法。
【請求項4】
N極又はS極のいずれか一方に帯磁し、移動体がどの位置を通過しても全ての磁気検出部が前記所定の磁界強度条件を満たすことができるように配置された基準磁気マーカを通過する時に、
その通過時の基準磁気マーカの磁極を検出していない磁気検出部がないかを判定すると共にその通過時の基準磁気マーカと異なる磁極を検出している磁気検出部がないかを判定するステップを備える、請求項3記載の磁気マーカ検出用故障認識方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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