説明

磁気共鳴イメージング装置および磁気共鳴イメージング装置の制御信号生成方法

【課題】脂肪抑制用のプリパルスを用いることなく脂肪成分からの信号強度を抑制し、より良好なコントラストで血流像を得ることが可能な磁気共鳴イメージング装置および磁気共鳴イメージング装置の制御信号生成方法である。
【解決手段】磁気共鳴イメージング装置20は、ISCEパルスのパワーが小さい部分に脂肪成分が多い領域が含まれるように、撮影領域およびISCEパルスのパワーを設定する撮影領域設定手段46と、ISCEパルスを印加して磁気共鳴信号を収集するイメージングシーケンスおよびMT効果を得るためのプリパルスを印加するプリパルスシーケンスを有するパルスシーケンスを設定するパルスシーケンス設定手段45と、パルスシーケンスで規定される撮影条件に従って磁気共鳴信号を受信し、デジタル化することにより生データを生成する生データ収集手段と、生データから血流像として3次元画像データを生成する血流像生成手段42、44とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検体の原子核スピンをラーモア周波数のRF信号で磁気的に励起し、この励起に伴って発生する磁気共鳴信号から画像を再構成する磁気共鳴イメージング装置および磁気共鳴イメージング装置の制御信号生成方法に係り、特に脂肪抑制用のプリパルスを用いることなく脂肪成分からの信号強度を抑制し、より良好なコントラストで血流像を得ることが可能な磁気共鳴イメージング装置および磁気共鳴イメージング装置の制御信号生成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気共鳴イメージング(MRI:Magnetic Resonance Imaging)は、静磁場中に置かれた被検体の原子核スピンをラーモア周波数の高周波(RF:radio frequency)信号で磁気的に励起し、この励起に伴って発生する磁気共鳴(MR:magnetic resonance)信号から画像を再構成する撮像法である。
【0003】
この磁気共鳴イメージングの分野において、頭部、肺野あるいは腹部等の所望の部位における血流像を得る手法としてMRA(magnetic resonance angiography)が知られている。MRAには、被検体に造影剤を投与して撮像を行なう造影MRAと造影剤を使用しない非造影MRAとがある。また、代表的なMRAの1つとしては、タイム・オブ・フライト法(TOF:Time of flight)がある。
【0004】
TOFは、血流が撮影領域内に流入することを利用したMRAである。すなわち、TOFは、組織における縦磁化の回復の際の時定数である縦緩和時間(T1)よりも短い繰返し時間(TR:repetition time)で撮影領域を励起することにより、静止組織からのMR信号の強度を低下させる一方、撮影領域内に流入した血流成分からのMR信号を高い信号強度で収集する手法である。
【0005】
このTOFによれば、血流成分からのMR信号が高い信号強度で得られるため、血管部分が光ったMR画像を得ることができる。しかし、静止組織に脂肪が存在すると、脂肪のT1は短いため脂肪からのMR信号と血流成分からのMR信号との区別がつきにくくなるという欠点がある。
【0006】
例えば、被検体の頭部における血流像を得るための3次元のTOF非造影MRA撮影においては、眼窩における脂肪からのMR信号が血流像生成の妨げとなっている。
【0007】
従って、TOFについてはもちろん、TOF以外のMRAにおいても血流像を得るためには、少なくとも脂肪からのMR信号を抑制する一方、血流の成分である水および実質部からのMR信号を励起させることにより、血流部と血流部以外の実質部とのコントラストを十分に得ることが重要となる。
【0008】
そこで、従来から脂肪のプロトンと水のプロトンとの共鳴周波数の差(化学シフト)を利用して脂肪からのMR信号(脂肪信号)を抑制する脂肪抑制法が利用される。この脂肪抑制法の1つとしてプリパルス法がある。プリパルス法による脂肪抑制法は、脂肪信号を抑制するための脂肪抑制パルス(Fat saturation pulse)を血流画像撮像に先立って被検体にプリパルスとして印加し、脂肪のみを周波数選択的に励起して脂肪のプロトンを飽和状態にした後に血流画像の撮像を開始する撮影法である。
【0009】
また、所定の周波数領域をRFパルスで選択的に励起させると、実質部の成分である高分子および水からのMR信号レベルがそれぞれ低下し、高分子が存在する割合に応じたコントラストの画像を撮像できるというMT(magnetization transfer)効果が得られる。そこで、このようなMT効果を得るために、MTC(magnetization transfer contrast)パルスと呼ばれるRFパルスを血流像の撮影用のスキャンに先立って被検体にプリパルスとして印加する技術が提案される。
【0010】
さらに、MTCパルスと実質的に同じタイミングでMTC励起面の選択励起のためのスライス傾斜磁場パルスが印加されるようにしたSORSパルス(slice-selective off-resonance sinc pulse)を血流像の撮影用のスキャンに先立って被検体にプリパルスとして印加する技術が考案される(例えば特許文献1参照)。
【0011】
図10は、従来の被検体の頭部における血流像を得るためのSORSパルスを用いた3次元のTOF非造影MRA撮影における撮影領域を示す図であり、図11は、図10に示す被検体の頭部にSORSパルスとともに脂肪抑制パルスを血流像撮像用のイメージングパルスに先立って印加するためのパルスシーケンスを示す図である。
【0012】
図10に示すように、被検体の頭部における血流像を得る場合には、体軸に垂直な複数のスライス断面で構成される3次元領域が撮影領域A1とされる。そして、図10の中央部付近に存在する多数の細かい血管が含まれるように3次元の撮影領域A1が設定される。しかし、この撮影領域A1では、眼窩に脂肪が存在するために、脂肪からのMR信号を抑制する必要がある。
【0013】
そこで、図11に示すように、血流像を得るためのイメージングシーケンスに先立って、脂肪からのMR信号を抑制するための脂肪抑制パルスを被検体の頭部に印加する脂肪抑制(Fat−Supress)シーケンスが実行されるようにパルスシーケンスが作成される。
【0014】
さらに、脂肪抑制シーケンスに先立って、頭部における血流成分と脳の実質部とのコントラストを調整するためにMTCパルスとMTC励起面の選択励起のためのスライス傾斜磁場パルスで構成されるSORSパルスを印加するためのSORSシーケンスが設けられる。
【0015】
このとき、SORSパルスのスライス傾斜磁場パルスによるMTC励起面は、図10の点線枠で示す領域A2に含まれる面とされる。つまり、MTC励起面は、撮影領域A1よりも心臓から遠方になるように設定される。このようにMTC励起面を設定すれば、心臓側から撮影領域A1に流入する動脈内の血流はMTC励起面を経由しないため、動脈内の血流からは高い信号強度のMR信号を生じる一方、撮影領域A1から流出して心臓に戻る静脈血流は、MTC励起面を経由するため、静脈内の血流からは信号強度が抑制されてMR信号が発生する。
【0016】
このため、SORSパルスを用いたMRAによれば、臨床上有用な動脈内の血流からのMR信号を強調する一方、静脈内の血流からのMR信号を抑制することができる。
【0017】
尚、SORSパルスにより磁化を倒す角度(フリップアングル)が大きい程、脳の実質部からのMR信号の強度が小さくなる一方、脂肪および血流成分からのMR信号の強度には、SORSパルスのフリップアングルは影響しないという性質がある。従って、脂肪からのMR信号の強度が大きい程、SORSパルスのフリップアングルをより大きく設定し、血流成分および脂肪からのMR信号の強度に対して実質部からのMR信号の強度が相対的に小さくなるように、つまり血流成分からのMR信号の強度が血流以外の部分からのMR信号の強度に対して相対的に大きくなるようにして収集することが望ましい。
【0018】
そして、SORSパルスや脂肪抑制パルスの印加といったコントラスト改善技術を伴うスキャンの実行により収集された3次元データから、最大値投影(MIP:maximum intensity projection)処理等の画像処理によりMIP画像等の3次元画像データが作成されて診断に供される。
【0019】
図12は、図10に示す被検体の頭部における撮影領域A1に対して図11に示すようなパルスシーケンスに従うスキャンを実行することにより得られた頭部の体軸方向へのMIP像を示す図である。
【0020】
図10および図11に示す撮影条件でスキャンを実行することにより、図12に示すような頭部の体軸方向(アキシャル断面方向)へのMIP像が診断用に作成される。すなわち、SORSパルスおよび脂肪抑制パルスがプリパルスとして印加された後、イメージングパルスの印加により体軸に垂直な複数のスライス断面からMR信号が収集されてMIP像の作成に供される。
【0021】
尚、図12に示すMIP像を得るためのスキャンにおけるSORSパルスのフリップアングルは350°とした。
【0022】
図12によれば、頭部における実質部とともに血管が画像化されているのが分かるが、眼窩における脂肪が目立つことが確認できる。
【0023】
さらに、このようなSORSパルスや脂肪抑制パルス等のプリパルス法によるコントラスト改善手法の他、イメージングシーケンスにおける励起パルスのパワーを心臓から励起されるスライス断面までの距離に応じて変化させたISCE(inclined slab for contrast enhancement)パルスをコントラスト改善のために用いた技術が考案される(例えば特許文献2参照)。
【0024】
この技術は、イメージングシーケンスの実行において、心臓から近いスライス断面ほど励起パルスのパワーが小さく、心臓から遠いスライス断面ほど励起パワーが大きくなるようなISCEパルスにより撮影領域を励起させれば、心臓から近いスライス断面におけるフリップアングルを小さくする一方、心臓から遠いスライス断面におけるフリップアングルを大きくできるため、心臓から離れた撮影領域からのMR信号の強度低下を補償することができるというものである。
【0025】
尚、図12に示すMIP像は、ISCEパルスではなく、撮影領域の両端のスライス断面における励起パルスのパワーの比を1:1としたイメージングシーケンスの実行によって得られたものである。
【特許文献1】特開平6−319715号公報
【特許文献2】特開平11−104106号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0026】
従来のMRAにおけるコントラスト改善手法では、脂肪からのMR信号を抑制するために脂肪抑制パルスをイメージング用の励起パルスに先立って被検体に印加する必要がある。このため、脂肪抑制パルスを被検体に印加する時間が必要となり、撮影時間の増加に繋がるという問題がある。
【0027】
また、スキャンにより得られた3次元データには、依然脂肪からのMR信号から得られた成分が存在する場合があり、そのような3次元データからMIP像を生成すると血管が十分なコントラストで表示されなくなる恐れがある。
【0028】
例えば、3次元データをアキシャル断面方向へMIP処理したMIP像として被検体の頭部における血流像を生成して得られたのが図12であるが、図12に示すMIP像によれば、眼窩における脂肪が依然目立つことが確認できる。このような3次元データから例えばコロナル断面方向へのMIP像を作成すると、脂肪領域の画素値が大きいことからコロナル断面方向へのMIP像から血管の画像が消滅したり、あるいは脂肪と血管の識別が困難になるといった問題がある。
【0029】
このため、コロナル断面方向や他の方向へのMIP像を作成する場合には、3次元データから閾値処理等の領域抽出処理を行って脂肪成分を除外した3次元データを抽出し、抽出した3次元データを用いてMIP処理を行うというような手法が必要になる。従って、領域抽出処理が新たに必要となり、データ処理の煩雑化に繋がる。
【0030】
本発明はかかる従来の事情に対処するためになされたものであり、脂肪抑制用のプリパルスを用いることなく脂肪成分からの信号強度を抑制し、より良好なコントラストで血流像を得ることが可能な磁気共鳴イメージング装置および磁気共鳴イメージング装置の制御信号生成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0031】
本発明に係る磁気共鳴イメージング装置は、上述の目的を達成するために、請求項1に記載したように、被検体の3次元の血流像を撮像するための撮影領域のうち、パワーを空間的に変化させた励起パルスであるISCEパルスのパワーが小さい部分に脂肪成分が多い領域が含まれるように、前記撮影領域および前記ISCEパルスのパワーを設定する撮影領域設定手段と、前記撮影領域設定手段により設定された前記撮影領域における前記血流像を作成するために前記ISCEパルスを印加して磁気共鳴信号を収集するイメージングシーケンスおよび前記ISCEパルスの印加に先立ってMT効果を得るためのプリパルスを印加するプリパルスシーケンスを有するパルスシーケンスを設定するパルスシーケンス設定手段と、前記パルスシーケンス設定手段により設定された前記パルスシーケンスで規定される撮影条件に従って、静磁場中の前記被検体に対して傾斜磁場の印加および高周波信号の送信を行なう一方、前記被検体内部における前記ISCEパルスによる原子核の核磁気共鳴に伴って発生した前記磁気共鳴信号を受信し、デジタル化することにより生データを生成する生データ収集手段と、前記生データ収集手段により生成された前記生データから前記血流像として3次元画像データを生成する血流像生成手段とを有することを特徴とするものである。
【0032】
また、本発明に係る磁気共鳴イメージング装置は、上述の目的を達成するために、請求項2に記載したように、臨床上画像化が必要な血管部分を被検体の3次元の血流像を撮像するための撮影領域に含みつつ脂肪成分が多い領域をパワーを空間的に変化させた励起パルスであるISCEパルスのパワーが小さい部分とできるように前記撮影領域に含まれる各スライス断面の向きを設定するオブリーク断面設定手段と、前記オブリーク断面設定手段により設定された向きの前記各スライス断面により形成される前記撮影領域のうち、前記ISCEパルスのパワーが小さい部分に前記脂肪成分が多い領域が含まれるように、前記撮影領域および前記ISCEパルスのパワーを設定する撮影領域設定手段と、前記撮影領域設定手段により設定された前記撮影領域における前記血流像を作成するために前記ISCEパルスを印加して磁気共鳴信号を収集するイメージングシーケンスおよび前記ISCEパルスの印加に先立ってMT効果を得るためのプリパルスを印加するプリパルスシーケンスを有するパルスシーケンスを設定するパルスシーケンス設定手段と、前記パルスシーケンス設定手段により設定された前記パルスシーケンスで規定される撮影条件に従って、静磁場中の前記被検体に対して傾斜磁場の印加および高周波信号の送信を行なう一方、前記被検体内部における前記ISCEパルスによる原子核の核磁気共鳴に伴って発生した前記磁気共鳴信号を受信し、デジタル化することにより生データを生成する生データ収集手段と、前記生データ収集手段により生成された前記生データから前記血流像として3次元画像データを生成する血流像生成手段とを有することを特徴とするものである。
【0033】
また、本発明に係る磁気共鳴イメージング装置は、上述の目的を達成するために、請求項3に記載したように、被検体の3次元の血流像を撮像するための撮影領域のうち、パワーを空間的に変化させた励起パルスであるISCEパルスのパワーが小さい部分に脂肪成分が多い領域が含まれるように、前記撮影領域および前記ISCEパルスのパワーを設定する撮影領域設定手段と、前記撮影領域設定手段により設定された前記撮影領域における前記血流像を作成するための前記ISCEパルスの印加に先立ってMT効果を得るために印加されるプリパルスのフリップアングルを前記ISCEパルスではない励起パルスを用いてスキャンを実行する場合に設定されるフリップアングルよりも小さく、かつ前記ISCEパルスを用いて脂肪成分からのMR信号を低下させた場合に血流と実質部とのコントラストが要求されるコントラストとなるときのフリップアングルよりも大きい値に設定するフリップアングル設定手段と、前記フリップアングル設定手段により設定されたフリップアングルとなるようにプリパルスを印加するプリパルスシーケンスおよび前記ISCEパルスを印加して磁気共鳴信号を収集するイメージングシーケンスを有するパルスシーケンスを設定するパルスシーケンス設定手段と、前記パルスシーケンス設定手段により設定された前記パルスシーケンスで規定される撮影条件に従って、静磁場中の前記被検体に対して傾斜磁場の印加および高周波信号の送信を行なう一方、前記被検体内部における前記ISCEパルスによる原子核の核磁気共鳴に伴って発生した前記磁気共鳴信号を受信し、デジタル化することにより生データを生成する生データ収集手段と、前記生データ収集手段により生成された前記生データから前記血流像として3次元画像データを生成する血流像生成手段とを有することを特徴とするものである。
【0034】
また、本発明に係る磁気共鳴イメージング装置は、上述の目的を達成するために、請求項4に記載したように、被検体の頭部の血流像を撮像する磁気共鳴イメージング装置において、前記被検体の眼窩を含む領域に撮影領域を設定すると共に、前記撮影領域より前記被検体の頭頂部側にあり、MT効果を得るためのプリパルスが印加されるプリパルス領域を設定する領域設定手段と、前記プリパルス領域に前記プリパルスを印加するプリパルスシーケンスと、前記プリパルスを印加した後、前記眼窩側よりも前記頭頂部側のパワーが大きいISCEパルスを前記撮影領域に印加するイメージングシーケンスを設定するパルスシーケンス設定手段と、前記プリパルスシーケンスおよび前記イメージングシーケンスを印加することにより得られる磁気共鳴信号を収集する収集手段と、前記収集手段で得られた磁気共鳴信号からMIP画像を生成する画像生成手段とを有することを特徴とするものである。
【0035】
また、本発明に係る磁気共鳴イメージング装置の制御信号生成方法は、上述の目的を達成するために、請求項7に記載したように、被検体の3次元の血流像を撮像するための撮影領域のうち、パワーを空間的に変化させた励起パルスであるISCEパルスのパワーが小さい部分に脂肪成分が多い領域が含まれるように、前記撮影領域および前記ISCEパルスのパワーを設定するステップと、前記撮影領域における前記血流像を作成するために前記ISCEパルスを印加して磁気共鳴信号を収集するイメージングシーケンスおよび前記ISCEパルスの印加に先立ってMT効果を得るためのプリパルスを印加するプリパルスシーケンスを有するパルスシーケンスを設定するステップとを有することを特徴とするものである。
【0036】
また、本発明に係る磁気共鳴イメージング装置の制御信号生成方法は、上述の目的を達成するために、請求項8に記載したように、臨床上画像化が必要な血管部分を被検体の3次元の血流像を撮像するための撮影領域に含みつつ脂肪成分が多い領域をパワーを空間的に変化させた励起パルスであるISCEパルスのパワーが小さい部分とできるように前記撮影領域に含まれる各スライス断面の向きを設定するステップと、前記各スライス断面により形成される前記撮影領域のうち、前記ISCEパルスのパワーが小さい部分に前記脂肪成分が多い領域が含まれるように、前記撮影領域および前記ISCEパルスのパワーを設定するステップと、前記撮影領域における前記血流像を作成するために前記ISCEパルスを印加して磁気共鳴信号を収集するイメージングシーケンスおよび前記ISCEパルスの印加に先立ってMT効果を得るためのプリパルスを印加するプリパルスシーケンスを有するパルスシーケンスを設定するステップとを有することを特徴とするものである。
【0037】
また、本発明に係る磁気共鳴イメージング装置の制御信号生成方法は、上述の目的を達成するために、請求項9に記載したように、被検体の3次元の血流像を撮像するための撮影領域のうち、パワーを空間的に変化させた励起パルスであるISCEパルスのパワーが小さい部分に脂肪成分が多い領域が含まれるように、前記撮影領域および前記ISCEパルスのパワーを設定するステップと、前記撮影領域における前記血流像を作成するための前記ISCEパルスの印加に先立ってMT効果を得るために印加されるプリパルスのフリップアングルを、前記ISCEパルスではない励起パルスを用いてスキャンを実行する場合に設定されるフリップアングルよりも小さく、かつ前記ISCEパルスを用いて脂肪成分からのMR信号を低下させた場合に血流と実質部とのコントラストが要求されるコントラストとなるときのフリップアングルよりも大きい値に設定するステップと、前記設定されたフリップアングルとなるようにプリパルスを印加するプリパルスシーケンスおよび前記ISCEパルスを印加して磁気共鳴信号を収集するイメージングシーケンスを有するパルスシーケンスを設定するステップとを有することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0038】
本発明に係る磁気共鳴イメージング装置および磁気共鳴イメージング装置の制御信号生成方法においては、脂肪抑制用のプリパルスを用いることなく脂肪成分からの信号強度を抑制し、より良好なコントラストで血流像を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
本発明に係る磁気共鳴イメージング装置の実施の形態について添付図面を参照して説明する。
【0040】
図1は本発明に係る磁気共鳴イメージング装置の実施の形態を示す構成図である。
【0041】
磁気共鳴イメージング装置20は、静磁場を形成する筒状の静磁場用磁石21、この静磁場用磁石21の内部に設けられたシムコイル22、傾斜磁場コイルユニット23およびRFコイル24を図示しないガントリに内蔵した構成である。
【0042】
また、磁気共鳴イメージング装置20には、制御系25が備えられる。制御系25は、静磁場電源26、傾斜磁場電源27、シムコイル電源28、送信器29、受信器30、シーケンスコントローラ31およびコンピュータ32を具備している。制御系25の傾斜磁場電源27は、X軸傾斜磁場電源27x、Y軸傾斜磁場電源27yおよびZ軸傾斜磁場電源27zで構成される。また、コンピュータ32には、入力装置33、表示装置34、演算装置35および記憶装置36が備えられる。
【0043】
静磁場用磁石21は静磁場電源26と接続され、静磁場電源26から供給された電流により撮像領域に静磁場を形成させる機能を有する。尚、静磁場用磁石21は超伝導コイルで構成される場合が多く、励磁の際に静磁場電源26と接続されて電流が供給されるが、一旦励磁された後は非接続状態とされるのが一般的である。また、静磁場用磁石21を永久磁石で構成し、静磁場電源26が設けられない場合もある。
【0044】
また、静磁場用磁石21の内側には、同軸上に筒状のシムコイル22が設けられる。シムコイル22はシムコイル電源28と接続され、シムコイル電源28からシムコイル22に電流が供給されて静磁場が均一化されるように構成される。
【0045】
傾斜磁場コイルユニット23は、X軸傾斜磁場コイル23x、Y軸傾斜磁場コイル23yおよびZ軸傾斜磁場コイル23zで構成され、静磁場用磁石21の内部において筒状に形成される。傾斜磁場コイルユニット23の内側には寝台37が設けられて撮像領域とされ、寝台37には被検体Pがセットされる。RFコイル24はガントリに内蔵されず、寝台37や被検体P近傍に設けられる場合もある。
【0046】
また、傾斜磁場コイルユニット23は、傾斜磁場電源27と接続される。傾斜磁場コイルユニット23のX軸傾斜磁場コイル23x、Y軸傾斜磁場コイル23yおよびZ軸傾斜磁場コイル23zはそれぞれ、傾斜磁場電源27のX軸傾斜磁場電源27x、Y軸傾斜磁場電源27yおよびZ軸傾斜磁場電源27zと接続される。
【0047】
そして、X軸傾斜磁場電源27x、Y軸傾斜磁場電源27yおよびZ軸傾斜磁場電源27zからそれぞれX軸傾斜磁場コイル23x、Y軸傾斜磁場コイル23yおよびZ軸傾斜磁場コイル23zに供給された電流により、撮像領域にそれぞれX軸方向の傾斜磁場Gx、Y軸方向の傾斜磁場Gy、Z軸方向の傾斜磁場Gzを形成することができるように構成される。
【0048】
RFコイル24は、送信器29および受信器30と接続される。RFコイル24は、送信器29からRF信号を受けて被検体Pに送信する機能と、被検体P内部の原子核スピンのRF信号による励起に伴って発生したMR信号を受信して受信器30に与える機能を有する。
【0049】
一方、制御系25のシーケンスコントローラ31は、傾斜磁場電源27、送信器29および受信器30と接続される。シーケンスコントローラ31は傾斜磁場電源27、送信器29および受信器30を駆動させるために必要な制御情報、例えば傾斜磁場電源27に印加すべきパルス電流の強度や印加時間、印加タイミング等の動作制御情報を記述したパルスシーケンスを記憶する機能と、記憶した所定のパルスシーケンスで規定される撮影条件に従って傾斜磁場電源27、送信器29および受信器30を駆動させることによりX軸傾斜磁場Gx、Y軸傾斜磁場Gy,Z軸傾斜磁場GzおよびRF信号を発生させる機能を有する。
【0050】
また、シーケンスコントローラ31は、受信器30におけるMR信号の検波およびA/D変換により得られた複素データである生データ(raw data)を受けてコンピュータ32に与えるように構成される。
【0051】
このため、送信器29には、シーケンスコントローラ31から受けた制御情報に基づいてRF信号をRFコイル24に与える機能が備えられる一方、受信器30には、RFコイル24から受けたMR信号を検波して所要の信号処理を実行するとともにA/D変換することにより、デジタル化された複素データである生データを生成する機能と生成した生データをシーケンスコントローラ31に与える機能とが備えられる。
【0052】
すなわち、静磁場用磁石21、シムコイル22、傾斜磁場コイルユニット23、RFコイル24並びに制御系25の各構成要素により、磁気共鳴イメージング装置20には、パルスシーケンスとして設定された各撮影条件に従って、静磁場中の被検体Pに対して傾斜磁場の印加およびRF信号の送信を行なう一方、被検体P内部におけるRF信号による原子核の核磁気共鳴に伴って発生したMR信号を受信し、デジタル化することにより生データを生成する生データ収集手段としての機能が備えられる。
【0053】
また、コンピュータ32の記憶装置36に保存されたプログラムを演算装置35で実行することにより、コンピュータ32には各種機能が備えられる。ただし、プログラムによらず、特定の回路を設けてコンピュータ32を構成してもよい。
【0054】
図2は、図1に示す磁気共鳴イメージング装置20におけるコンピュータ32の機能ブロック図である。
【0055】
コンピュータ32は、プログラムによりシーケンスコントローラ制御手段40、生データデータベース41、画像再構成手段42、画像データデータベース43、投影画像作成手段44、パルスシーケンス設定手段45、撮影領域設定手段46、フリップアングル設定手段47、オブリーク断面設定手段48として機能する。このうち、パルスシーケンス設定手段45、撮影領域設定手段46、フリップアングル設定手段47、オブリーク断面設定手段48は、制御信号生成プログラムをコンピュータ32に読み込ませて構築することができる。
【0056】
シーケンスコントローラ制御手段40は、入力装置33またはその他の構成要素からの情報に基づいてシーケンスコントローラ31に受けた所要のパルスシーケンスを与えることにより駆動制御させる機能と、シーケンスコントローラ31から生データを受けて生データデータベース41に形成されたk空間(フーリエ空間)に配置する機能とを有する。
【0057】
このため、生データデータベース41には、受信器30において生成された各生データが保存され、生データデータベース41に形成されたk空間に生データが配置される。
【0058】
画像再構成手段42は、生データデータベース41から生データを取り込んで3次元(3D)フーリエ変換処理等の所定の画像再構成処理を施すことにより、被検体Pの3次元画像データを再構成して画像データデータベース43に書き込む機能を有する。ただし、2Dフーリエ変換処理等の処理により一旦2D画像データ等の中間的なデータを作成した後、3D画像データを再構成するようにしてもよい。
【0059】
このため、画像データデータベース43には、被検体Pの3D画像データが保存される。
【0060】
投影画像作成手段44は、画像データデータベース43に保存された3D画像データに対してMIP処理を施すことによりMIP画像データを作成する機能と、作成したMIP画像データを表示装置34に与えることにより、MIP画像を表示させる機能を有する。
【0061】
ただし、画像再構成手段42を設けずに、投影画像作成手段44が生データデータベース41から読み込んだ生データから直接MIP画像データを作成するように構成してもよい。また、臨床上有用であれば、MIP画像データに限らず各種画像処理によってSVR(Shaded volume rendering)画像その他の3次元画像を血流像として作成するようにしてもよい。
【0062】
すなわち、磁気共鳴イメージング装置20には、生データから血流像を生成する血流像生成手段としての機能が備えられ、血流像をMIP画像とする場合には、画像再構成手段42や投影画像作成手段44により血流像生成手段が形成される。
【0063】
パルスシーケンス設定手段45は、パルスシーケンスを設定する機能と、設定したパルスシーケンスをシーケンスコントローラ制御手段40に与えてスキャンの実行を可能とする機能とを有する。
【0064】
図3は、図1に示す磁気共鳴イメージング装置20により作成されてスキャンの実行に用いられるパルスシーケンスの一例を示す図である。
【0065】
パルスシーケンス設定手段45により設定されるパルスシーケンスは、図3に示すように血流像の生成のための励起パルスの1つであるISCEパルスの印加により任意の角度を有するスライス断面からMR信号を収集するイメージングシーケンスと、イメージングシーケンスの実行の際におけるISCEパルスの印加に先立ってMT効果を得るためのMTCパルスまたはSORSパルスをプリパルスとして印加するためのプリパルスシーケンスとを設けて構成される。また、パルスシーケンスには、脂肪抑制パルスを印加するための脂肪抑制シーケンスが設けられない。
【0066】
図3は、MTCパルスではなくSORSパルスをプリパルスとして印加するようにプリパルスシーケンスをSORSシーケンスとしてパルスシーケンスを設定した例を示す図である。従って、SORSシーケンスの代わりにMTCパルスをプリパルスとして印加するMTCシーケンスとしてもよい。
【0067】
また、RFは、RFコイル24から被検体Pに送信されるRFパルスを示し、echoは、被検体P内で発生し、血流像の作成のために収集されるMR信号を示す。Gs(GSE)は、スライスエンコード方向(SE)の傾斜磁場を、GPEは、位相エンコード方向の傾斜磁場を、GROは、リードアウト方向の傾斜磁場をそれぞれ示す。
【0068】
そして、スライスエンコード方向の傾斜磁場によりスライス断面が選択され、位相エンコード方向の傾斜磁場GPEおよびリードアウト方向の傾斜磁場GROによりスライス断面内における2次元方向の位置情報が位相および周波数に変換される。
【0069】
尚、イメージングシーケンスは、3次元のMRAによるスキャンに利用可能なシーケンスであればスピンエコー(SE)法やフィールドエコー(FE)法等の任意の手法によるシーケンスとすることができる。
【0070】
ここで、MRAの一例としては、TOFが挙げられる。3次元のTOFによるMRA(3DTOF−MRA)では、組織における縦緩和時間(T1)よりも短い繰返し時間(TR)で撮影領域を励起することにより、静止組織からのMR信号の強度を低下させる一方、撮影領域内に流入した血流成分からのMR信号を高い信号強度で収集するようなシーケンスがイメージングシーケンスとして用いられる。この3DTOF−MRAによれば、血流成分からのMR信号が高い信号強度で得られるため、血管部分が光ったMR画像を得ることができる。
【0071】
一方、MTCパルスは、MT効果を得るために、イメージングシーケンスの実行の際における励起パルスの印加に先立ってプリパルスとして被検体Pに印加されるパルスである。
【0072】
図4は、MT効果の概念を説明する図である。
【0073】
図4において、実線は、MT効果が得られる前における水および高分子に含まれるプロトンのスペクトルであり、一点鎖線は、MT効果が得られた後における水および高分子に含まれるプロトンのスペクトルである。図4に示すように、水のプロトンの共鳴周波数である64MHzから500Hz程度ずれた周波数をMTCパルスで選択的に励起させると、高分子のプロトンからのMR信号レベルおよび水のプロトンからのMR信号レベルがそれぞれ低下するというMT効果が得られる。
【0074】
このような、MTCパルスの印加によるMT効果を利用してMR信号を収集してMR画像を再構成すれば、実質部の成分である高分子が存在する割合に応じたコントラストのMRA像等の画像を撮像することができる。このため、特に細い血管の抽出を伴うようなMRA像を撮像する場合に有効である。
【0075】
また、SORSパルスは、MTCパルスと実質的に同じタイミングでスライス傾斜磁場パルスが印加されるようにしたパルスである。そして、スライス傾斜磁場パルスの印加により、MT効果を得るためのMTC励起面が選択的に励起される。
【0076】
図5は、SORSパルスによるMTC励起面の配置例とSORSパルスの印加による効果を説明する図である。
【0077】
例えば、図5に示すように撮影領域S1が被検体Pの頭部Pに設定され、頭部Pにおける血流Xの血流像を撮像する場合には、MTC励起面S2が撮影領域S1よりも心臓から遠方になるように設定される。
【0078】
尚、図5では、説明簡易化のために撮影領域S1を構成するスライス断面およびMTC励起面S2を体軸に垂直な方向としたが、スライス断面およびMTC励起面S2は、体軸に対して任意の角度を有する向きとすることができる。
【0079】
このようにMTC励起面S2を設定すると、図示しない心臓から頭部Pに向かう動脈内を流れる血流X1は、撮影領域S1に流入して撮影領域S1における動脈内を流れた後、MTC励起面S2に導かれる。さらにMTC励起面S2から末梢血管を経由して静脈内に導かれた血流X2は、MTC励起面S2から流出した後、再び撮影領域S1を経由して心臓に向かって流れる。
【0080】
従って、心臓側から撮影領域S1に流入する動脈内の血流X1はMTC励起面S2を経由しないため、動脈内の血流X1からは高い信号強度のMR信号を生じる。逆に、撮影領域S1から流出して心臓に戻る静脈内の血流X2は、MTC励起面S2を経由するため、静脈内の血流X2からはMT効果により信号強度が抑制されてMR信号が発生する。
【0081】
また、撮影領域S1の近傍にMTC励起面S2を設定してMTCパルスを印加すれば、実質部からのMR信号の強度よりも血流成分からのMR信号の強度を相対的に増大させることができるため、頭部P内の中央部分に多数存在する末梢血管を高精度で画像化することが可能となる。
【0082】
尚、MTCパルスを含め、SORSパルスによるフリップアングルが大きい程、脳の実質部からのMR信号の強度が小さくなり、SORSパルスのフリップアングルが小さい程、脳の実質部からのMR信号の強度が大きくなるという性質がある。また、このとき脂肪および血流成分からのMR信号の強度には、SORSパルスのフリップアングルは影響しない。
【0083】
従って、脂肪からのMR信号の強度が大きい程、SORSパルスのフリップアングルをより大きく設定し、血流成分および脂肪からのMR信号の強度に対して実質部からのMR信号の強度が相対的に小さくなるように、つまり血流成分からのMR信号の強度が血流以外の部分からのMR信号の強度に対して相対的に大きくなるようにして収集することが重要となる。
【0084】
逆に、脂肪からのMR信号の強度が十分に小さい場合には、SORSパルスのフリップアングルを小さく設定し、実質部からのMR信号の強度を大きくした方が、血流成分と実質部との区別を明確にすることができる。
【0085】
そして、このようなMTC励起面S2を選択励起するSORSパルスの印加により臨床上有用な動脈内の血流からのMR信号を強調する一方、静脈内の血流からのMR信号を抑制することができる。
【0086】
一方、ISCEパルスは、撮影領域において励起されるスライス断面の位置に応じてパワーを変化させた励起パルスである。
【0087】
図6は、ISCEパルスのパワープロファイルと一般的な励起パルスのパワープロファイルとを比較した図である。
【0088】
図6(a)は、一般的な励起パルスのパワープロファイルを示す図である。すなわち、例えば、被検体Pの頭部におけるMRAにおいて、撮影領域を構成するスライス断面が体軸Zに垂直に設定される。そして、被検体Pの頭部に印加される励起パルスのパワーは、体軸Z方向の位置に依らず一定とされる。そして、スライス断面の位置に依らずパワーを一定として励起パルスを印加することにより収集されたMR信号から血流像D1が生成される。
【0089】
一方、図6(b)は、ISCEパルスのパワープロファイルを示す図である。すなわち、図6(a)と同様な被検体Pの頭部におけるMRAにおいて、例えば撮影領域を構成するスライス断面が体軸Zに垂直に設定される。そして、被検体Pの頭部に印加されるISCEパルスのパワーは、例えば体軸Z方向の位置に依存して変化される。つまり、心臓から近い位置に設定されたスライス断面ほどパワーが小さく、心臓から遠い位置に設定されたスライス断面ほどパワーが大きくなるようにISCEパルスのパワーが設定される。
【0090】
尚、スライス断面を体軸Zに垂直に設定せずに、体軸Zに対して一定の角度を有するようにスライス断面を設定し、スライス断面の法線方向の位置に依存してISCEパルスのパワーが変化するようにしてもよい。
【0091】
そして、ISCEパルスのパワープロファイルの傾斜は、パワーの最大値PMAXと最小値PMINとの比で表すことができる。例えば、心臓から最も近い位置に設定されたスライス断面におけるパワーの最小値PMINが心臓から最も遠い位置に設定されたスライス断面におけるパワーの最大値PMAXの1/2である場合には、1:2となる。この場合、心臓から最も近い位置に設定されたスライス断面におけるフリップアングルも、心臓から最も遠い位置に設定されたスライス断面におけるフリップアングルの1/2となる。
【0092】
従って、例えば公称フリップアングルが20°であり、パワープロファイルの傾斜が、1:2で表されるISCEパルスを被検体Pに印加すると、心臓から最も近い位置に設定されたスライス断面におけるフリップアングルは約13°となり、心臓から最も遠い位置に設定されたスライス断面におけるフリップアングルは約27°となる。
【0093】
尚、パワープロファイルの傾斜を1:1とした場合には、ISCEパルスではない一般的な励起パルスとなる。
【0094】
そして、このようなISCEパルスにより血流像のイメージング用のスキャンを実行すれば、心臓から離れた撮影領域からのMR信号の強度低下を補償することができる。つまり、血流が撮像領域を通過するとMR信号の強度が低下するが、心臓から近いスライス断面におけるフリップアングルを小さくする一方、心臓から遠いスライス断面におけるフリップアングルを大きくできるため、血流からのMR信号の低下を抑制して、より均一性の高い血流像D2を得ることができる。
【0095】
さらに、ISCEパルスのパワーの相異を利用して、脂肪からのMR信号の強度が小さくなるようにすることができる。すなわち、ISCEパルスのパワーが小さい撮影領域に、脂肪成分が多い部分(他の部分と比較して実質的に脂肪成分が多い部分)が含まれるように、撮影領域およびISCEパルスのパワーを設定すれば、上述のような血流からのMR信号の強度を調整することができる他、脂肪からのMR信号の強度を、脂肪よりも心臓側から遠方にあるISCEパルスのパワーが大きい撮影領域の血流からのMR信号の強度よりも小さくすることができる。
【0096】
そこで、パルスシーケンス設定手段45により作成されるパルスシーケンスは、イメージングシーケンスに用いられるISCEパルスのパワーが小さい撮影領域に脂肪成分の多い領域が含まれるように、撮影領域およびISCEパルスのパワーが設定されたパルスシーケンスとされる。換言すれば、パルスシーケンス設定手段45により作成されるパルスシーケンスは、心臓から近い領域に脂肪成分が多く存在する撮影領域において血流像を生成する場合のスキャンに用いることができる。
【0097】
このような撮影領域の例としては、頭部が挙げられる。すなわち、頭部では、末梢血管の多くが眼窩における脂肪部分よりも心臓から遠方に存在するため、パルスシーケンス設定手段45により作成されるパルスシーケンスを用いた血流像作成のためのスキャンの対象とすることができる。
【0098】
撮影領域設定手段46は、入力装置33から受け取った情報に基づいてISCEパルスのパワーが小さい撮影領域に脂肪成分の多い領域が含まれるように、撮影領域およびISCEパルスのパワーを設定する機能と、設定した撮影領域およびISCEパルスのパワーをパルスシーケンス設定手段45に与える機能とを有する。撮影領域は、各スライス断面の位置および数により設定することができる。
【0099】
また、撮影領域設定手段46は、SORSパルスを用いる場合には、撮影領域の設定とともにMTC励起面を設定して、パルスシーケンス設定手段45に与える機能を有する。MTC励起面の設定は、入力装置33から受け取った情報に基づいて行ってもよいし、予め定められた幾何学的関係により撮影領域から自動的に設定されるようにしてもよい。
【0100】
フリップアングル設定手段47は、入力装置33から受け取った情報に基づいてSORSパルスあるいはMTCパルスのフリップアングルを設定する機能と、設定したSORSパルスあるいはMTCパルスのフリップアングルをパルスシーケンス設定手段45に与える機能とを有する。SORSパルスやMTCパルスのフリップアングルは、前述のように脂肪からのMR信号の強度が小さくなるにつれて、小さく設定して実質部からのMR信号の強度を増加させることが望ましい。
【0101】
ここで、脂肪からのMR信号の強度は、ISCEパルスのパワーが小さい撮影領域に脂肪成分の多い領域が含まれるように、撮影領域およびISCEパルスのパワーが設定されることから、一般的な励起パルスを用いてスキャンを実行した場合に比べて小さくなると考えられる。このため、フリップアングル設定手段47により設定されるSORSパルスあるいはMTCパルスのフリップアングルは、ISCEパルスではない一般的な励起パルスを用いてスキャンを実行する場合に設定されるフリップアングルよりも小さく設定される。
【0102】
ただし、フリップアングルを小さくし過ぎると、実質部からのMR信号の強度が大きくなって血流成分からのMR信号が相対的に小さくなり、血流と実質部とのコントラストが低下する恐れがある。このため、フリップアングル設定手段47により設定されるSORSパルスあるいはMTCパルスのフリップアングルは、ISCEパルスを用いて脂肪からのMR信号を低下させた場合に血流と実質部とのコントラストが要求されるコントラストとなるときのフリップアングルよりも大きく設定される。
【0103】
オブリーク断面設定手段48は、入力装置33から受け取った情報に基づいてスライス断面の向きを設定する機能と、設定したスライス断面の向きをパルスシーケンス設定手段45に与える機能とを有する。すなわち、スライス断面の向きを調整することにより、臨床上画像化が必要な血管部分を撮影領域に含みつつ脂肪成分が多く含まれる領域がISCEパルスのパワーが小さい撮影領域となるようにしたり、あるいは臨床上画像化が不要であり、かつ脂肪成分が多く含まれる領域が撮影領域に含まれないようにすることができる。
【0104】
このためオブリーク断面設定手段48には、臨床上画像化が必要な血管部分を撮影領域に含みつつ脂肪成分が多く含まれる部分がISCEパルスのパワーが小さい撮影領域とできるように、あるいは臨床上画像化が不要であり、かつ脂肪成分が多く含まれる領域が撮影領域に含まれないようにスライス断面の向きを設定する機能が備えられる。
【0105】
次に磁気共鳴イメージング装置20の作用について説明する。
【0106】
図7は、図1に示す磁気共鳴イメージング装置20により、被検体Pの頭部におけるMRA像を撮像する際の流れの一例を示すフローチャートであり、図中Sに数字を付した符号はフローチャートの各ステップを示す。
【0107】
まずステップS1において、ISCEパルスを用いた血流像の撮影領域、スライス断面の向き、SORSパルスやMTCパルスのフリップアングル等の撮影条件が、撮影領域設定手段46、オブリーク断面設定手段48およびフリップアングル設定手段47により設定される。また、併せてSORSパルスが印加されるものとされて、MTC励起面が設定される。
【0108】
血流像の撮影領域は、例えば脂肪成分の多い領域が心臓から近い領域に多く存在する頭部とされる。
【0109】
図8は、図1に示す磁気共鳴イメージング装置20により設定された撮影領域およびMTC励起面の一例を示す図である。
【0110】
図8に示すように、被検体Pの頭部では、末梢血管の多くが眼窩における脂肪部分よりも心臓から遠方に存在する。このため、眼窩における脂肪部分がISCEパルスのパワーが小さい領域となる一方、末梢血管の多くがISCEパルスのパワーが大きい領域となるように、撮影領域S1およびISCEパルスのパワーが撮影領域設定手段46により設定される。
【0111】
また、眼窩における脂肪部分からのMR信号は低下させることが望ましく、逆に頭部の中央部付近の血管部分は臨床上画像化が必要であるため、臨床上画像化が必要な血管部分を撮影領域S1に含みつつ脂肪成分が多く含まれる部分がISCEパルスのパワーが小さい撮影領域となるようにオブリーク断面設定手段48によりスライス断面の向きが設定される。そして、撮影領域設定手段46により、MTC励起面S2が撮影領域S1よりも心臓から遠方になるように設定される。
【0112】
この結果、ISCEパルスのパワープロファイルは、図8に示すように、スライス断面の法線方向Z’の位置に依存して心臓からの距離が遠ざかるにつれてパワーPが増加する傾斜したパワープロファイルとなる。
【0113】
また、フリップアングル設定手段47により、SORSパルスのフリップアングルが設定される。フリップアングルは、ISCEパルスではない一般的な励起パルスを用いてスキャンを実行する場合に設定されるフリップアングルよりも小さく、かつISCEパルスを用いて脂肪からのMR信号を低下させた場合に血流と実質部とのコントラストが要求されるコントラストとなるときのフリップアングルよりも大きい値、例えば300°に設定される。
【0114】
これらの撮影条件を設定するために必要な情報は、入力装置33からそれぞれ撮影領域設定手段46、オブリーク断面設定手段48およびフリップアングル設定手段47に与えられる。そして、撮影領域設定手段46、オブリーク断面設定手段48およびフリップアングル設定手段47により設定された血流像の撮影領域S1、スライス断面の向き、SORSパルスのフリップアングルがパルスシーケンス設定手段45に与えられる。
【0115】
次に、ステップS2において、パルスシーケンス設定手段45は、撮影領域設定手段46、オブリーク断面設定手段48およびフリップアングル設定手段47から受けた撮影条件に従ってスキャンが実行されるようにパルスシーケンスを作成する。パルスシーケンスは、図3に示すようなSORSパルスをプリパルスとして印加するSORSシーケンスと、イメージング用のISCEパルスを印加するイメージングシーケンスで構成されるパルスシーケンスとされる。また、イメージングシーケンスは、例えばTOFによるスキャンを実行するためのシーケンスとされる。
【0116】
そして、パルスシーケンス設定手段45は、作成したパルスシーケンスをシーケンスコントローラ制御手段40に与える。
【0117】
また、このとき寝台37に被検体Pがセットされ、静磁場電源26により励磁された静磁場用磁石21(超伝導磁石)の撮像領域に静磁場が形成される。また、シムコイル電源28からシムコイル22に電流が供給されて撮像領域に形成された静磁場が均一化される。
【0118】
次に、ステップS3において、入力装置33からスキャン開始指令がシーケンスコントローラ制御手段40に与えられると、シーケンスコントローラ制御手段40からパルスシーケンスがシーケンスコントローラに出力される。
【0119】
このため、ステップS4において、パルスシーケンスに従って、被検体Pの頭部におけるTOS−3DMRA撮影が行われて、生データが収集される。
【0120】
すなわち、シーケンスコントローラ31は、シーケンスコントローラ制御手段40から受けたパルスシーケンスに従って傾斜磁場電源27、送信器29および受信器30を駆動させることにより被検体Pがセットされた撮像領域にX軸傾斜磁場Gx、Y軸傾斜磁場Gy,Z軸傾斜磁場Gzを形成させるとともに、RF信号を発生させる。
【0121】
この際、傾斜磁場コイルにより形成されたX軸傾斜磁場Gx、Y軸傾斜磁場Gy,Z軸傾斜磁場Gzにより、パルスシーケンスに従う位相エンコード(PE)用傾斜磁場、読出し(RO)用傾斜磁場、スライス(SL)用傾斜磁場が形成される。
【0122】
このため、被検体P内部における原子核のスピンの回転方向に規則性が現れ、SL用傾斜磁場により体軸方向であるZ軸に対して一定の傾きを有する法線Z’の各スライス断面における二次元的な位置情報は、PE用傾斜磁場およびRO用傾斜磁場によりそれぞれ被検体P内部における原子核のスピンの位相変化量および周波数変化量に変換される。
【0123】
一方、送信器29からは、パルスシーケンスに応じてRFコイル24に順次RF信号が与えられ、RFコイル24から被検体PにRF信号が送信される。すなわち、血流像の作成のためにISCEパルスを送信するイメージングシーケンスに先立って、SORSシーケンスが実行されてSORSパルスが送信される。この結果、SORSパルスの送信により選択励起されたMTC励起面S2においてMT効果が得られる。
【0124】
次に、MT効果が得られた状態で、イメージングシーケンスが実行されてISCEパルスが送信されると、撮影領域S1からは血流像の作成用のMR信号が発生する。ISCEパルスの送信は、TOFによるスキャンの撮影条件に従って、組織におけるT1よりも短いTRで行われるため、静止組織からのMR信号の強度が低下する一方、撮影領域S1内に流入した血流成分からのMR信号の強度が相対的に高くなる。
【0125】
また、MTC励起面S2が撮影領域S1よりも心臓から遠方に設定されているため、心臓側からMTC励起面S2を経由せずに撮影領域S1に流入する動脈内の血流からは高い信号強度のMR信号が発生する一方、撮影領域S1から流出してMTC励起面S2を経由して心臓に戻る静脈内の血流からはMT効果により信号強度が抑制されてMR信号が発生する。
【0126】
加えて、励起パルスが心臓からの距離が長くなるにつれてパワーが大きくなるISCEパルスとされているため、血流が撮像領域を通過してMR信号の強度が低下したとしても、スライス断面が心臓から遠くなるにつれて次第にフリップアングルが大きくなるため、血流からのMR信号の低下が抑制される。
【0127】
さらに、臨床上画像化が必要な頭部の中央部における血管部分が撮影領域S1に含まれ、かつISCEパルスのパワーが小さい撮影領域S1に眼窩における脂肪成分の多い領域が含まれるように、スライス断面の向きが調整されて撮影領域S1およびISCEパルスのパワーが設定されている。このため、臨床上画像化が必要な血管部分からのMR信号を収集しつつ脂肪からのMR信号の強度が抑制される。
【0128】
そして、脂肪からのMR信号の強度を抑制して小さくできるため、SORSパルスのフリップアングルが小さく設定されたことにより、実質部からのMR信号の強度を大きくして血流成分と実質部との区別を明確にできるような強度でMR信号を発生されることができる。
【0129】
このような撮影条件によって発生したMR信号は、RFコイル24によって受信される。RFコイル24により各スライス断面からのMR信号が受信されると、受信器30は、RFコイル24からMR信号を受けて、前置増幅、中間周波変換、位相検波、低周波増幅、フィルタリング等の各種信号処理を実行する。さらに受信器30は、MR信号をA/D変換することにより、デジタルデータのMR信号である生データを生成する。受信器30は、生成した生データをシーケンスコントローラ31に与える。
【0130】
シーケンスコントローラ31は、受信器30から受けた生データをシーケンスコントローラ制御手段40に与え、シーケンスコントローラ制御手段40は生データデータベース41に形成されたk空間に生データを配置する。この結果、生データデータベース41には、被検体Pの頭部における各スライス断面から収集された生データが蓄積される。
【0131】
次に、ステップS5において、生データデータベース41に蓄積された生データを元データとして血流像が生成されて表示される。
【0132】
すなわち、画像再構成手段42は、生データデータベース41から生データを取り込んで3次元フーリエ変換処理等の所定の画像再構成処理を施すことにより、被検体Pの3D画像データを再構成して画像データデータベース43に書き込む。そして、投影画像作成手段44は、画像データデータベース43に保存された3D画像データに対してMIP処理を施すことによりMIP画像データを血流像データとして作成し、作成したMIP画像データを表示装置34に与える。この結果、表示装置34には、被検体Pの頭部における例えばアキシャル方向へのMIP画像が血流像として表示される。
【0133】
図9は、図8に示す撮影条件に従って図3に示すようなパルスシーケンスに従うスキャンを実行することにより、撮影領域S1から収集されたデータに基づいて血流像として作成された被検体Pの頭部におけるアキシャル方向へのMIP画像を示す図である。
【0134】
図9によれば、頭部における実質部とともに血管が画像化されているのが分かるが、眼窩における脂肪からのMR信号が抑制されて、眼窩における脂肪が目立たなくなっていることが確認できる。そして、実質部および血管が良好なコントラストで画像化されている。
【0135】
このように眼窩における脂肪成分からのMR信号が抑制されて再構成された3次元画像データを用いれば、例えばコロナル断面方向や他の方向へのMIP画像を作成したとしても血管および実質部を区別して確認することができる。従って、MIP画像を作成するために3次元画像データから閾値処理等の領域抽出処理を行って脂肪成分を除外するといった煩雑なデータ処理は不要である。
【0136】
つまり以上のような磁気共鳴イメージング装置20は、3DMRA撮影をパワープロファイルに空間的な傾きを有するISCEパルスを用いて行うこととし、かつISCEパルスのパワーが小さい領域に脂肪成分が多い領域が含まれるように撮影領域を設定することにより、脂肪からのMR信号を低下させることができるようにしたものである。
【0137】
さらに、磁気共鳴イメージング装置20は、スライス断面の向きを調整して脂肪成分が多い領域が撮影領域に含まれないように設定したり、血流像の作成のためのスキャンに先立って印加されるSORSパルスやMTCパルスのフリップアングルをできるだけ小さく設定するといった撮影条件の工夫により、血流像を良好なコントラストで得られるようにしたものである。
【0138】
このため、磁気共鳴イメージング装置20によれば、従来必要であった脂肪抑制パルスの印加が不要となり、撮影時間を短縮することができる。また、脂肪抑制パルスを印加することなく脂肪からのMR信号を抑制し、要求されるコントラストで血流像を得ることができる。
【0139】
特に、頭部における血流像を作成する場合には、眼窩における脂肪からのMR信号を抑制し、より観測が容易な血流像を得ることができる。このため、MIP画像を任意方向から作成することが可能となり、MIP画像の作成のために脂肪領域の画像を除外するといった領域抽出処理を不要とすることができる。
【0140】
尚、磁気共鳴イメージング装置20の一部の機能や処理を省略してもよく、処理順序を変更してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0141】
【図1】本発明に係る磁気共鳴イメージング装置の実施の形態を示す構成図。
【図2】図1に示す磁気共鳴イメージング装置におけるコンピュータの機能ブロック図。
【図3】図1に示す磁気共鳴イメージング装置により作成されてスキャンの実行に用いられるパルスシーケンスの一例を示す図。
【図4】MT効果の概念を説明する図。
【図5】SORSパルスによるMTC励起面の配置例とSORSパルスの印加による効果を説明する図。
【図6】ISCEパルスのパワープロファイルと一般的な励起パルスのパワープロファイルとを比較した図。
【図7】図1に示す磁気共鳴イメージング装置により、被検体の頭部におけるMRA像を撮像する際の流れの一例を示すフローチャート。
【図8】図1に示す磁気共鳴イメージング装置により設定された撮影領域およびMTC励起面の一例を示す図。
【図9】図8に示す撮影条件に従って図3に示すようなパルスシーケンスに従うスキャンを実行することにより、撮影領域から収集されたデータに基づいて血流像として作成された被検体の頭部におけるアキシャル方向へのMIP画像を示す図。
【図10】従来の被検体の頭部における血流像を得るためのSORSパルスを用いた3次元のTOF非造影MRA撮影における撮影領域を示す図。
【図11】図10に示す被検体の頭部にSORSパルスとともに脂肪抑制パルスを血流像撮像用のイメージングパルスに先立って印加するためのパルスシーケンスを示す図。
【図12】図10に示す被検体の頭部における撮影領域に対して図11に示すようなパルスシーケンスに従うスキャンを実行することにより得られた頭部の体軸方向へのMIP像を示す図。
【符号の説明】
【0142】
20 磁気共鳴イメージング装置
21 静磁場用磁石
22 シムコイル
23 傾斜磁場コイルユニット
24 RFコイル
25 制御系
26 静磁場電源
27 傾斜磁場電源
28 シムコイル電源
29 送信器
30 受信器
31 シーケンスコントローラ
32 コンピュータ
33 入力装置
34 表示装置
35 演算装置
36 記憶装置
37 寝台
40 シーケンスコントローラ制御手段
41 生データデータベース
42 画像再構成手段
43 画像データデータベース
44 投影画像作成手段
45 パルスシーケンス設定手段
46 撮影領域設定手段
47 フリップアングル設定手段
48 オブリーク断面設定手段
P 被検体
頭部
X、X1、X2 血流
S1 撮影領域
S2 MTC励起面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体の3次元の血流像を撮像するための撮影領域のうち、パワーを空間的に変化させた励起パルスであるISCEパルスのパワーが小さい部分に脂肪成分が多い領域が含まれるように、前記撮影領域および前記ISCEパルスのパワーを設定する撮影領域設定手段と、
前記撮影領域設定手段により設定された前記撮影領域における前記血流像を作成するために前記ISCEパルスを印加して磁気共鳴信号を収集するイメージングシーケンスおよび前記ISCEパルスの印加に先立ってMT効果を得るためのプリパルスを印加するプリパルスシーケンスを有するパルスシーケンスを設定するパルスシーケンス設定手段と、
前記パルスシーケンス設定手段により設定された前記パルスシーケンスで規定される撮影条件に従って、静磁場中の前記被検体に対して傾斜磁場の印加および高周波信号の送信を行なう一方、前記被検体内部における前記ISCEパルスによる原子核の核磁気共鳴に伴って発生した前記磁気共鳴信号を受信し、デジタル化することにより生データを生成する生データ収集手段と、
前記生データ収集手段により生成された前記生データから前記血流像として3次元画像データを生成する血流像生成手段と、
を有することを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項2】
臨床上画像化が必要な血管部分を被検体の3次元の血流像を撮像するための撮影領域に含みつつ脂肪成分が多い領域をパワーを空間的に変化させた励起パルスであるISCEパルスのパワーが小さい部分とできるように前記撮影領域に含まれる各スライス断面の向きを設定するオブリーク断面設定手段と、
前記オブリーク断面設定手段により設定された向きの前記各スライス断面により形成される前記撮影領域のうち、前記ISCEパルスのパワーが小さい部分に前記脂肪成分が多い領域が含まれるように、前記撮影領域および前記ISCEパルスのパワーを設定する撮影領域設定手段と、
前記撮影領域設定手段により設定された前記撮影領域における前記血流像を作成するために前記ISCEパルスを印加して磁気共鳴信号を収集するイメージングシーケンスおよび前記ISCEパルスの印加に先立ってMT効果を得るためのプリパルスを印加するプリパルスシーケンスを有するパルスシーケンスを設定するパルスシーケンス設定手段と、
前記パルスシーケンス設定手段により設定された前記パルスシーケンスで規定される撮影条件に従って、静磁場中の前記被検体に対して傾斜磁場の印加および高周波信号の送信を行なう一方、前記被検体内部における前記ISCEパルスによる原子核の核磁気共鳴に伴って発生した前記磁気共鳴信号を受信し、デジタル化することにより生データを生成する生データ収集手段と、
前記生データ収集手段により生成された前記生データから前記血流像として3次元画像データを生成する血流像生成手段と、
を有することを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項3】
被検体の3次元の血流像を撮像するための撮影領域のうち、パワーを空間的に変化させた励起パルスであるISCEパルスのパワーが小さい部分に脂肪成分が多い領域が含まれるように、前記撮影領域および前記ISCEパルスのパワーを設定する撮影領域設定手段と、
前記撮影領域設定手段により設定された前記撮影領域における前記血流像を作成するための前記ISCEパルスの印加に先立ってMT効果を得るために印加されるプリパルスのフリップアングルを前記ISCEパルスではない励起パルスを用いてスキャンを実行する場合に設定されるフリップアングルよりも小さく、かつ前記ISCEパルスを用いて脂肪成分からのMR信号を低下させた場合に血流と実質部とのコントラストが要求されるコントラストとなるときのフリップアングルよりも大きい値に設定するフリップアングル設定手段と、
前記フリップアングル設定手段により設定されたフリップアングルとなるようにプリパルスを印加するプリパルスシーケンスおよび前記ISCEパルスを印加して磁気共鳴信号を収集するイメージングシーケンスを有するパルスシーケンスを設定するパルスシーケンス設定手段と、
前記パルスシーケンス設定手段により設定された前記パルスシーケンスで規定される撮影条件に従って、静磁場中の前記被検体に対して傾斜磁場の印加および高周波信号の送信を行なう一方、前記被検体内部における前記ISCEパルスによる原子核の核磁気共鳴に伴って発生した前記磁気共鳴信号を受信し、デジタル化することにより生データを生成する生データ収集手段と、
前記生データ収集手段により生成された前記生データから前記血流像として3次元画像データを生成する血流像生成手段と、
を有することを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項4】
被検体の頭部の血流像を撮像する磁気共鳴イメージング装置において、
前記被検体の眼窩を含む領域に撮影領域を設定すると共に、前記撮影領域より前記被検体の頭頂部側にあり、MT効果を得るためのプリパルスが印加されるプリパルス領域を設定する領域設定手段と、
前記プリパルス領域に前記プリパルスを印加するプリパルスシーケンスと、前記プリパルスを印加した後、前記眼窩側よりも前記頭頂部側のパワーが大きいISCEパルスを前記撮影領域に印加するイメージングシーケンスを設定するパルスシーケンス設定手段と、
前記プリパルスシーケンスおよび前記イメージングシーケンスを印加することにより得られる磁気共鳴信号を収集する収集手段と、
前記収集手段で得られた磁気共鳴信号からMIP画像を生成する画像生成手段と、
を有することを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項5】
臨床上画像化が必要な血管部分を前記撮影領域に含みつつ前記脂肪成分が多い領域を前記ISCEパルスのパワーが小さい部分とできるように前記撮影領域に含まれる各スライス断面の向きを設定するオブリーク断面設定手段を設け、前記撮影領域設定手段が前記オブリーク断面設定手段により設定された向きの前記各スライス断面で形成される前記撮影領域を設定するように構成する一方、前記プリパルスのフリップアングルを前記ISCEパルスではない励起パルスを用いてスキャンを実行する場合に設定されるフリップアングルよりも小さく、かつ前記ISCEパルスを用いて脂肪成分からのMR信号を低下させた場合に血流と実質部とのコントラストが要求されるコントラストとなるときのフリップアングルよりも大きい値に設定するフリップアングル設定手段とを設け、前記フリップアングル設定手段により設定されたフリップアングルとなるように前記プリパルスを印加する前記プリパルスシーケンスを前記パルスシーケンス設定手段が設定するように構成したことを特徴とする請求項1記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項6】
前記撮影領域を前記被検体の頭部とし、前記脂肪成分が多い領域を前記被検体の眼窩における脂肪成分の領域としたことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項7】
被検体の3次元の血流像を撮像するための撮影領域のうち、パワーを空間的に変化させた励起パルスであるISCEパルスのパワーが小さい部分に脂肪成分が多い領域が含まれるように、前記撮影領域および前記ISCEパルスのパワーを設定するステップと、
前記撮影領域における前記血流像を作成するために前記ISCEパルスを印加して磁気共鳴信号を収集するイメージングシーケンスおよび前記ISCEパルスの印加に先立ってMT効果を得るためのプリパルスを印加するプリパルスシーケンスを有するパルスシーケンスを設定するステップと、
を有することを特徴とする磁気共鳴イメージング装置の制御信号生成方法。
【請求項8】
臨床上画像化が必要な血管部分を被検体の3次元の血流像を撮像するための撮影領域に含みつつ脂肪成分が多い領域をパワーを空間的に変化させた励起パルスであるISCEパルスのパワーが小さい部分とできるように前記撮影領域に含まれる各スライス断面の向きを設定するステップと、
前記各スライス断面により形成される前記撮影領域のうち、前記ISCEパルスのパワーが小さい部分に前記脂肪成分が多い領域が含まれるように、前記撮影領域および前記ISCEパルスのパワーを設定するステップと、
前記撮影領域における前記血流像を作成するために前記ISCEパルスを印加して磁気共鳴信号を収集するイメージングシーケンスおよび前記ISCEパルスの印加に先立ってMT効果を得るためのプリパルスを印加するプリパルスシーケンスを有するパルスシーケンスを設定するステップと、
を有することを特徴とする磁気共鳴イメージング装置の制御信号生成方法。
【請求項9】
被検体の3次元の血流像を撮像するための撮影領域のうち、パワーを空間的に変化させた励起パルスであるISCEパルスのパワーが小さい部分に脂肪成分が多い領域が含まれるように、前記撮影領域および前記ISCEパルスのパワーを設定するステップと、
前記撮影領域における前記血流像を作成するための前記ISCEパルスの印加に先立ってMT効果を得るために印加されるプリパルスのフリップアングルを、前記ISCEパルスではない励起パルスを用いてスキャンを実行する場合に設定されるフリップアングルよりも小さく、かつ前記ISCEパルスを用いて脂肪成分からのMR信号を低下させた場合に血流と実質部とのコントラストが要求されるコントラストとなるときのフリップアングルよりも大きい値に設定するステップと、
前記設定されたフリップアングルとなるようにプリパルスを印加するプリパルスシーケンスおよび前記ISCEパルスを印加して磁気共鳴信号を収集するイメージングシーケンスを有するパルスシーケンスを設定するステップと、
を有することを特徴とする磁気共鳴イメージング装置の制御信号生成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−87825(P2006−87825A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−280199(P2004−280199)
【出願日】平成16年9月27日(2004.9.27)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【出願人】(594164531)東芝医用システムエンジニアリング株式会社 (892)
【Fターム(参考)】