説明

磁気共鳴イメージング装置

【課題】受信コイルを容易に、かつ、正確に磁場中心位置に配置可能な磁気共鳴イメージング装置を実現する。
【解決手段】受信コイル14に、受信コイル14の種別、受信コイル14の中心位置とバーコード25の距離を示す情報を有するバーコード25が表示され、バーコードリーダー23により、受信コイル14の種別が読み取られると共に、バーコード25を読み取った時点における受信コイル14の中心位置と、磁場中心との距離がバーコード情報判断部により判断される。読み取られた受信コイル14の種別に応じて、ハードウェアの設定が行なわれ、かつ、受信コイル14の中心位置が、磁場中心位置に自動的に移動される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気共鳴イメージング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気共鳴イメージング装置(MRI装置)は、生体組織を構成する原子核に高周波磁場を照射して磁気共鳴を起こさせ、それによって発生する核磁気共鳴信号を受信コイルで受信し、受信された核磁気共鳴信号にフーリエ変換を行って画像に再構成するもので、被検体の任意個所における断層像を得るために広く利用されている。
【0003】
この磁気共鳴信号の受信には、撮影部位に応じて複数種の受信コイルが用意されており、撮影部位に応じた受信コイルを被検体に装着、撮影可能とするために接続された受信コイルを識別し、受信コイルに応じた設定を行い撮影可能状態にする。また、被検体に装着された受信コイルは撮影部位に送り込み磁石内撮影部位にセットされる。
【0004】
受信コイルは受信コイル毎にエレメント数、チャンネル数が異なり、撮影前にコイルを識別、撮影前にハードウェア設定を行う必要がある。
【0005】
この識別は受信コイル本体にROM等を内蔵し、システムに接続したうえで通信により取得したり、ジャンパスイッチなどで設定する。
【0006】
そのため、識別のために電気回路やスイッチが必要であり、ハードウェア設定情報を格納するだけの容量を確保することとなり装置が高価になる。
【0007】
そこで、特許文献1に記載の技術のように、受信コイルの種別を示すバーコードを受信コイルの本体に表示しておき、このバーコードを読み取る構成が記載されている。これにより、受信コイルの種別を記憶するROMや、ジャンパスイッチ等が不要となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平2−257938号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、MRI装置において、受信コイルは天板の広範囲の位置にも任意に配置可能である。このため、任意に配置された受信コイルを磁場中心に移動させるためには、受信コイルに光を照射して、操作者が、それを確認しながら、天板を移動させて調整していた。
【0010】
このため、受信コイルを磁場中心に正確に移動させる作業は、煩雑であって、長時間を要する場合もあり、MR撮影時間短縮化に阻害要因の一因となっていた。
【0011】
本発明の目的は、受信コイルを容易に、かつ、正確に磁場中心位置に配置可能な磁気共鳴イメージング装置を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、本発明は次のように構成される。
【0013】
静磁場発生手段と、傾斜磁場発生手段と、高周波発生手段と、高周波受信手段と、被検体及び上記高周波受信手段が配置される被検体移動手段と、演算制御手段とを有する磁気共鳴イメージング装置において、高周波受信手段上に配置され、高周波受信手段の中心位置に関する情報を表示する受信コイル情報表示手段と、上記受信コイル情報表示手段に表示された情報を読み取る情報読み取り手段と、上記情報読み取り手段により読み取られた高周波受信手段の中心位置に関する情報に基づいて、高周波受信手段の中心位置と静磁場中心位置との距離を算出する受信コイル情報判断手段と、上記受信コイル情報判断手段によって算出された距離に従って、上記被検体移動手段を移動させ、上記高周波受信手段の中心位置を上記静磁場の中心位置に移動させる被検体移動制御手段とを備える。
【発明の効果】
【0014】
受信コイルを容易に、かつ、正確に磁場中心位置に配置可能な磁気共鳴イメージング装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施例1に係るMRI装置の全体構成概略を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施例1におけるバーコードリーダーと受信コイルとの関係を説明する側面図である。
【図3】本発明の実施例1におけるバーコードリーダーと受信コイルとの関係を説明する上面図である。
【図4】本発明の実施例1におけるバーコードの一例を示した図である。
【図5】本発明の実施例1における受信コイルを静磁場発生装置内に配置する過程の説明図である。
【図6】本発明の実施例1におけるバーコード情報判断部の機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の実施例について説明する。
【実施例1】
【0017】
図1は本発明の実施例1に係るMRI装置の全体構成概略を示すブロック図である。
【0018】
図1において、MRI装置は、核磁気共鳴(NMR)現象を利用して被検体7の断層画像を得るものであり、静磁場発生装置(静磁場発生用磁石)4、傾斜磁場コイル13、高周波照射/受信コイル11、14、ディスプレイ18を備える。
【0019】
また、静磁場発生装置4は、被検体7に強く均一な静磁場を発生させるもので、被検体7の周りのある広がりをもった空間に永久磁石方式あるいは超電導方式等の磁場発生手段が配置されている。
【0020】
傾斜磁場コイル13は、X軸、Y軸、Z軸の3軸に3組配置され、シーケンサ2に制御される傾斜磁場電源12の出力電流によって被検体7の周りに必要な傾斜磁場空間を形成し、NMR信号に位置情報を与える。高周波発振器8はシーケンサ2のコントロールに従って、変調器9、高周波アンプ10、照射コイル11により被検体7にスピン励起のための高周波パルスを照射する。
【0021】
この結果生じるNMR信号を受信コイル14で検出し、受信系5の高周波アンプ15、検波回路16、ADC17を介して収集した信号データに中央処理装置(演算装置)1で画像再構成演算等を行ない、得られたMRI画像を信号処理系6の表示装置18に出力するようになっている。この信号処理系6は、光ディスク19、磁気ディスク20を備えている。
【0022】
ここで、本発明の実施例1の要部であるバーコードリーダー23(図1に示さず)、および受信コイル14の概略構成について、図2を参照して説明する。
【0023】
図2は、本発明の実施例1におけるバーコードリーダー23と受信コイル14との関係を説明する図であり側面から見た図である。図2において、受信コイル14は天板21の上に配置されている。天板(被検体移動手段)21は寝台22に固定されており体軸方向に移動可能である。
【0024】
バーコードリーダー23は静磁場発生用磁石4に取り付けられており、下向き、つまり、天板21に向かってレーザーを照射するよう配置されている。
【0025】
図3は、図2に示したバーコードリーダー23と受信コイル14との関係について、上面から見た図である。
【0026】
図2、図3において、バーコードリーダー23はレーザー照射を行い照射野24の範囲を照射する。バーコードリーダー23の照射範囲は体軸方向に短く、概ね数mmの幅をもつ。
【0027】
天板21に配置された受信コイル14の上面にはバーコード(受信コイル情報表示手段)25が配置されており、バーコード25の記載内容はコイル種によって異なる。
【0028】
受信コイル14を被検体7に装着し、被検体7および受信コイル14を移動させ、バーコードリーダー23の照射野24に撮影部位を合わせる。
その後、撮影部位を磁場発生装置4のほぼ中央部に送り込み、撮影を開始する。
【0029】
図4はバーコード25の一例を示す図である。バーコード25には例えば「コイル名称」、「受信チャンネル数」、「ディカップリングバイアス電流値」など設定項目に対応する受信コイル種類情報を任意に記載する。
【0030】
コイル14の上面に貼り付けられたバーコード25は、バーコードリーダー23で読み取られ、バーコード情報判断部(受信コイル情報判断部)26(図6)を介して中央処理装置1にデータが伝送される。
【0031】
中央処理装置1は読み取ったコイル種、電流などのパラメータに基づいて、検波回路16などハードウェアの制御を行いコイルエレメント数などを設定する。
【0032】
図5は受信コイル14を静磁場発生装置4内に配置する過程の説明図である。また、図6はバーコード情報判断部26の機能ブロック図である。
【0033】
図5において、受信コイル14へのバーコード貼り付け位置と受信コイル14の感度中心部の距離(d1)はコイル毎に決められている。
【0034】
寝台22の上面に配置された天板21は寝台22の上を移動し静磁場発生装置4に向かって移動する。寝台22の内部にはロータリーエンコーダーが内蔵されており、寝台22の原点からの距離の検出が可能となっている。
【0035】
寝台22上に配置された受信コイル14が静磁場発生装置4に向かって移動し、バーコードリーダー23によってコイル種などの情報が読み取られ、バーコード情報判断部26の受信コイル種別判断部27及び受信コイル位置判断部28に供給される。そして、受信コイル種別判断部27により、受信コイル種別が判断され、受信コイル位置判断部により、受信コイル14の位置も検出される。
【0036】
つまり、バーコードリーダー23がバーコード25を読み取った時刻における、受信コイル14と静磁場中心との距離(d3)は、次式(1)で表される。
【0037】
d3=d1+d2 ・・・(1)
ただし、d2は、静磁場中心とバーコードリーダー23の取り付け位置との距離である。
【0038】
バーコード25には、バーコード25が位置する箇所と、受信コイル14の中心位置までの距離も情報として含まれており、この情報から受信コイル位置判断部28が受信コイル位置を判断する。そして、天板位置移動距離算出部29が上記式(1)を演算し、演算した距離d3を寝台駆動制御回路30に供給する。
【0039】
寝台駆動制御回路30は、受信コイル14が静磁場中心までの距離d3だけ移動するように、寝台モータ(図示せず)を駆動させる。寝台駆動制御回路30と寝台モータとによって被検体移動制御手段が構成される。
【0040】
この場合、天板21の移動速度が既知の一定速度であれば、バーコード25が検出された時点から天板21が距離d3だけ移動するのに必要な時間を算出し、算出した時間が経過した時点で天板の移動を停止すればよい。
【0041】
また、天板21の移動速度を、目標停止位置に近づくにつれて減速させる制御を行っている場合であっても、天板21を距離d3だけ移動させるに必要な時間を算出することができる。
【0042】
以上のように、本発明の実施例1によれば、受信コイル14に、受信コイル14の種別、受信コイル14の中心位置とバーコード25との距離を示す情報を有するバーコード25が表示され、バーコードリーダー23により、受信コイル14の種別が読み取られると共に、バーコード25を読み取った時点における受信コイル14の中心位置と、磁場中心との距離がバーコード情報判断部26により判断される。そして、読み取られた受信コイルの種別に応じて、測定パラメータやハードウェアの設定が行なわれ、かつ、受信コイル14の中心位置が、磁場中心位置に自動的に移動される。
【0043】
したがって、受信コイル14の種別等を容易に判断可能であると共に、受信コイル14を容易に、かつ、正確に磁場中心位置に配置可能な磁気共鳴イメージング装置を実現することができる。
【0044】
なお、天板21上の受信コイル14は、単一に限らず、複数でも良く、その場合、受信コイル中心と静磁場中心位置との距離(d3)をコイル毎に、記憶手段(光ディスク19、磁気ディスク20)に保存する。そして、コイル毎に静磁場中心位置までの距離に基づいて、受信コイルの移動を制御する。
【0045】
つまり、操作者は複数配置された受信コイル14のうち、最初に静磁場発生装置中心に配置する受信コイル14を選択した後、次に撮影する受信コイル14を選択することで、寝台駆動制御回路30は受信コイル14の感度中心間距離に応じて天板21を移動させ各々の受信コイル14を静磁場発生装置の中心に配置することが可能となる。最初に磁場中心に配置する受信コイル14が磁場中心に位置してから、次の受信コイル14までの感度中心間距離だけ、天板21を移動させる制御を行うこととなる。
【0046】
また、上述した例は、受信コイル14に付されたバーコード(受信コイル情報表示手段)に受信コイルの種別と、受信コイルの中心位置情報(バーコードが配置された位置と受信コイルの中心位置との距離情報)とが含まれる例を示したが、バーコード(受信コイル情報表示手段)には、受信コイルの中心位置情報のみ含まれ、バーコードリーダーにより位置情報のみ読み取られる構成であっても本発明は適用可能である。
【0047】
この場合、バーコードに示された情報により、受信コイルの磁場中心位置への移動が制御されるが、受信コイルの種類情報等は、別個の入力手段(図示せず)により入力されてもよいし、別位置に形成(表示)されたバーコードにより、コイル種別が判断されてもよい。
【0048】
また、受信コイルの種別、位置情報を示すコードは、バーコードに限らず、その他のコードや数字、文字等の情報表示部であってもよい。したがって、バーコードリーダー23に限らず、その他のコードや数字、文字等の情報表示部を読み取る情報読み取り部とすることも可能である。
【符号の説明】
【0049】
1・・・中央処理装置(CPU)、2・・・シーケンサ、4・・・静磁場発生用磁石、5・・・受信系、6・・・信号処理系、7・・・被検体、8・・・高周波発振器、9・・・変調器、10・・・高周波アンプ、11・・・高周波コイル、12・・・傾斜磁場電源、13・・・傾斜磁場コイル、14・・・高周波受信コイル、15・・・高周波アンプ、16・・・検波回路、17・・・ADC、18・・・ディスプレイ、19・・・光ディスク、20・・・磁気ディスク、21・・・天板、22・・・寝台、23・・・バーコードリーダー、26・・・バーコード情報判断部、27・・・受信コイル種別判断部、28・・・受信コイル位置判断部、29・・・天板位置移動距離算出部、30・・・寝台駆動制御回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
静磁場発生手段と、傾斜磁場発生手段と、高周波発生手段と、高周波受信手段と、被検体及び上記高周波受信手段が配置される被検体移動手段と、上記静磁場発生手段、傾斜磁場発生手段、高周波発生手段、高周波受信手段及び被検体移動手段の動作を制御するとともに、高周波受信手段が受信した核磁気共鳴信号に基づいて画像を再構成する演算制御手段とを有する磁気共鳴イメージング装置において、
上記高周波受信手段上に配置され、少なくとも、高周波受信手段の中心位置に関する情報を表示する受信コイル情報表示手段と、
上記受信コイル情報表示手段に表示された情報を読み取る情報読み取り手段と、
上記情報読み取り手段により読み取られた高周波受信手段の中心位置に関する情報に基づいて、高周波受信手段の中心位置と静磁場中心位置との距離を算出する受信コイル情報判断手段と、
上記受信コイル情報判断手段によって算出された距離に従って、上記被検体移動手段を移動させ、上記高周波受信手段の中心位置を上記静磁場の中心位置に移動させる被検体移動制御手段と、
を備えることを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項2】
請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置において、上記受信コイル情報表示手段は、高周波受信手段の中心位置に関する情報及び受信コイル種類情報を表示することを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項3】
請求項2に記載の磁気共鳴イメージング装置において、上記受信コイル情報表示手段はバーコードにより受信コイル情報を表示し、上記情報読み取り手段はバーコードリーダーであることを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項4】
請求項2に記載の磁気共鳴イメージング装置において、上記被検体移動手段には、複数の上記高周波受信手段が配置され、複数の上記高周波受信手段のそれぞれに配置された受信コイル情報表示手段が表示する受信コイル情報が上記情報読み取り手段により読み取られ、記憶手段に記憶させ、記憶された受信コイル情報に従って、上記被検体移動制御手段は、上記移動距離算出手段によって算出された距離に従って、上記被検体移動手段を移動させ、上記高周波受信手段の中心位置を上記静磁場の中心位置に移動させることを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−233618(P2010−233618A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−82167(P2009−82167)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(000153498)株式会社日立メディコ (1,613)
【Fターム(参考)】