説明

磁気共鳴イメージング装置

【課題】より広領域についてダイナミック撮像や同期撮像等のシネ撮像を行うことが可能な磁気共鳴イメージング装置を提供することである。
【解決手段】磁気共鳴イメージング装置は、データ収集手段、画像再構成手段及び画像処理手段を備える。データ収集手段は、互いに異なる複数の位置に寝台を移動させて前記寝台にセットされた被検体から前記寝台の位置ごとに複数の磁気共鳴信号を収集する。画像再構成手段は、前記複数の磁気共鳴信号に対する画像再構成処理によって前記寝台の位置ごとに複数の画像データを生成する。画像処理手段は、前記複数の位置に対応する複数の画像データを前記複数の位置間において繋ぎ合せるスティッチング処理によってシネ画像データを生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、磁気共鳴イメージング(MRI: Magnetic Resonance Imaging)装置に関する。
【背景技術】
【0002】
MRIは、静磁場中に置かれた被検体の原子核スピンをラーモア周波数の高周波(RF: radio frequency)信号で磁気的に励起し、この励起に伴って発生する核磁気共鳴(NMR: nuclear magnetic resonance)信号から画像を再構成する撮像法である。
【0003】
従来、MRIでは、時系列のNMRデータを順次収集してイメージングするダイナミック撮像や心電(ECG electro cardiogram)信号等の生体信号に同期させてNMRデータを収集する同期撮像が行われている。ダイナミック撮像や同期撮像を行えば、血管内における血液の流れなどを可視化することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−253256号公報
【特許文献2】特開2005−270213号公報
【特許文献3】特開2007−117669号公報
【特許文献4】特開2008−246006号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
心臓から離れた末梢血管内の血液をイメージングする場合には、被検体の全身又は少なくとも広い部位を撮像部位とする画像収集が望まれる。すなわち、より広領域についてダイナミック撮像や同期撮像を行うことが望ましい。
【0006】
本発明は、より広領域についてダイナミック撮像や同期撮像等のシネ撮像を行うことが可能な磁気共鳴イメージング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置は、データ収集手段、画像再構成手段及び画像処理手段を備える。データ収集手段は、互いに異なる複数の位置に寝台を移動させて前記寝台にセットされた被検体から前記寝台の位置ごとに複数の磁気共鳴信号を収集する。画像再構成手段は、前記複数の磁気共鳴信号に対する画像再構成処理によって前記寝台の位置ごとに複数の画像データを生成する。画像処理手段は、前記複数の位置に対応する複数の画像データを前記複数の位置間において繋ぎ合せるスティッチング処理によってシネ画像データを生成する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置の構成図。
【図2】図1に示すコンピュータの機能ブロック図。
【図3】図1に示す磁気共鳴イメージング装置により被検体のstepping-table法による同期イメージングを行う際の流れを示すフローチャート。
【図4】図3に示す同期イメージングの撮像条件として寝台のstationごとにECG信に同期して複数の時相においてNMRデータの収集を行う撮像条件を設定した例を示す図。
【図5】図3に示すスティッチング処理の元画像データと処理画像データの一例を示す図。
【図6】図3に示すスティッチング処理の詳細な流れの一例を示すフローチャート。
【図7】図1に示す磁気共鳴イメージング装置により被検体のstepping-table法によるダイナミックイメージングを行う際の流れを示すフローチャート。
【図8】図7に示すダイナミックイメージングの撮像条件の設定例を示す図。
【図9】図3に示すスティッチング処理の元画像データと処理画像データの一例を示す図。
【図10】図3に示すスティッチング処理の詳細な流れの一例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置について添付図面を参照して説明する。
【0010】
図1は本発明の実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置の構成図である。
【0011】
磁気共鳴イメージング装置20は、静磁場を形成する筒状の静磁場用磁石21、この静磁場用磁石21の内部に設けられたシムコイル22、傾斜磁場コイル23及びRFコイル24を備えている。
【0012】
また、磁気共鳴イメージング装置20には、制御系25が備えられる。制御系25は、静磁場電源26、傾斜磁場電源27、シムコイル電源28、送信器29、受信器30、シーケンスコントローラ31及びコンピュータ32を具備している。制御系25の傾斜磁場電源27は、X軸傾斜磁場電源27x、Y軸傾斜磁場電源27y及びZ軸傾斜磁場電源27zで構成される。また、コンピュータ32には、入力装置33、表示装置34、演算装置35及び記憶装置36が備えられる。
【0013】
静磁場用磁石21は静磁場電源26と接続され、静磁場電源26から供給された電流により撮像領域に静磁場を形成させる機能を有する。尚、静磁場用磁石21は超伝導コイルで構成される場合が多く、励磁の際に静磁場電源26と接続されて電流が供給されるが、一旦励磁された後は非接続状態とされるのが一般的である。また、静磁場用磁石21を永久磁石で構成し、静磁場電源26が設けられない場合もある。
【0014】
また、静磁場用磁石21の内側には、同軸上に筒状のシムコイル22が設けられる。シムコイル22はシムコイル電源28と接続され、シムコイル電源28からシムコイル22に電流が供給されて静磁場が均一化されるように構成される。
【0015】
傾斜磁場コイル23は、X軸傾斜磁場コイル23x、Y軸傾斜磁場コイル23y及びZ軸傾斜磁場コイル23zで構成され、静磁場用磁石21の内部において筒状に形成される。傾斜磁場コイル23の内側には寝台37が設けられて撮像領域とされ、寝台37には被検体Pがセットされる。RFコイル24にはガントリに内蔵されたRF信号の送受信用の全身用コイル(WBC: whole body coil)や寝台37や被検体P近傍に設けられるRF信号の受信用の局所コイルなどがある。
【0016】
また、傾斜磁場コイル23は、傾斜磁場電源27と接続される。傾斜磁場コイル23のX軸傾斜磁場コイル23x、Y軸傾斜磁場コイル23y及びZ軸傾斜磁場コイル23zはそれぞれ、傾斜磁場電源27のX軸傾斜磁場電源27x、Y軸傾斜磁場電源27y及びZ軸傾斜磁場電源27zと接続される。
【0017】
そして、X軸傾斜磁場電源27x、Y軸傾斜磁場電源27y及びZ軸傾斜磁場電源27zからそれぞれX軸傾斜磁場コイル23x、Y軸傾斜磁場コイル23y及びZ軸傾斜磁場コイル23zに供給された電流により、撮像領域にそれぞれX軸方向の傾斜磁場Gx、Y軸方向の傾斜磁場Gy、Z軸方向の傾斜磁場Gzを形成することができるように構成される。
【0018】
RFコイル24は、送信器29及び受信器30の少なくとも一方と接続される。送信用のRFコイル24は、送信器29からRF信号を受けて被検体Pに送信する機能を有し、受信用のRFコイル24は、被検体P内部の原子核スピンのRF信号による励起に伴って発生したNMR信号を受信して受信器30に与える機能を有する。
【0019】
一方、制御系25のシーケンスコントローラ31は、傾斜磁場電源27、送信器29及び受信器30と接続される。シーケンスコントローラ31は傾斜磁場電源27、送信器29及び受信器30を駆動させるために必要な制御情報、例えば傾斜磁場電源27に印加すべきパルス電流の強度や印加時間、印加タイミング等の動作制御情報を記述したシーケンス情報を記憶する機能と、記憶した所定のシーケンスに従って傾斜磁場電源27、送信器29及び受信器30を駆動させることによりX軸傾斜磁場Gx、Y軸傾斜磁場Gy,Z軸傾斜磁場Gz及びRF信号を発生させる機能を有する。
【0020】
また、シーケンスコントローラ31は、受信器30におけるNMR信号の検波及びA/D (analog to digital)変換により得られた複素データである生データ(raw data)を受けてコンピュータ32に与えるように構成される。
【0021】
このため、送信器29には、シーケンスコントローラ31から受けた制御情報に基づいてRF信号をRFコイル24に与える機能が備えられる一方、受信器30には、RFコイル24から受けたNMR信号を検波して所要の信号処理を実行するとともにA/D変換することにより、デジタル化された複素データである生データを生成する機能と生成した生データをシーケンスコントローラ31に与える機能とが備えられる。
【0022】
さらに、磁気共鳴イメージング装置20には、被検体PのECG信号を取得するECGユニット38が備えられる。ECGユニット38により取得されたECG信号はシーケンスコントローラ31を介してコンピュータ32に出力されるように構成される。
【0023】
尚、拍動を心拍情報として表すECG信号の代わりに拍動を脈波情報として表す脈波同期(PPG: peripheral pulse gating)信号又は呼吸信号を取得することもできる。PPG信号は、例えば指先の脈波を光信号として検出した信号である。PPG信号又はを取得する場合には、PPG信号検出ユニットが設けられる。以下、ECG信号を取得する場合について述べる。
【0024】
また、寝台37は、寝台駆動装置39を備えている。寝台駆動装置39は、コンピュータ32と接続され、コンピュータ32からの制御によって寝台37の天板(table)を移動させてstepping-table法による撮像を行うことができるように構成される。stepping-table法は、stationごとに寝台37の天板をステップ移動させて撮像する技術である。この技術は、全身撮像のように一度に撮像できないような広領域の撮像を行う場合に用いられる。寝台37を移動して収集された複数の画像は、コンピュータ32におけるスティッチング処理によって互いに繋ぎ合わせることができる。
【0025】
また、コンピュータ32の記憶装置36に保存されたプログラムを演算装置35で実行することにより、コンピュータ32には各種機能が備えられる。ただし、プログラムの少なくとも一部に代えて、各種機能を有する特定の回路を磁気共鳴イメージング装置20に設けてもよい。
【0026】
図2は、図1に示すコンピュータ32の機能ブロック図である。
【0027】
コンピュータ32の演算装置35は、記憶装置36に保存されたプログラムを実行することにより撮像条件設定部40、画像再構成部41及び画像処理部42として機能する。また、記憶装置36は、k空間データ記憶部43及び画像データ記憶部44として機能する。
【0028】
撮像条件設定部40は、入力装置33からの指示情報に基づいてパルスシーケンスを含む撮像条件を設定し、設定した撮像条件をシーケンスコントローラ31に与えることにより駆動制御させる機能を有する。特に、撮像条件設定部40は、寝台37を互いに異なる複数の位置にステップ移動させてイメージングするstepping-table法による撮像条件を設定する機能を備えている。
【0029】
また、撮像条件設定部40には、stepping-table法における同期イメージング用の撮像条件又はstepping-table法におけるダイナミックイメージング用の撮像条件を設定する機能が備えられる。stepping-table法における同期イメージングは、ECG信号等の生体信号に同期させて寝台37の位置ごとに互いに異なる複数の時相に対応する複数のNMR信号を収集するイメージングである。また、stepping-table法におけるダイナミックイメージングは、同一又は異なる寝台37の位置において互いに異なる複数の時相に対応する複数のNMR信号をダイナミック収集するイメージングである。従って、同期イメージングの場合には、時相が同期信号のトリガからの遅延時間に相当し、ダイナミックイメージングの場合には、時相がデータ収集タイミングに相当する。
【0030】
更に、撮像条件設定部40には、被検体Pへの造影剤の注入を伴う造影イメージング用の撮像条件を設定する機能も備えられる。
【0031】
画像再構成部41は、シーケンスコントローラ31から生データを受けてk空間データ記憶部43に形成されたk空間にk空間データとして配置する機能、k空間データ記憶部43からk空間データを取り込んでフーリエ変換(FT: Fourier transform)を含む画像再構成処理を施すことにより画像データを再構成する機能及び画像データを画像データ記憶部44に書き込む機能を有する。
【0032】
NMR信号がstepping-table法により生体信号に同期して収集された場合には、寝台37の位置ごとに複数の時相に対応する複数の画像データが生成される。また、NMR信号がstepping-table法によりダイナミック収集された場合には、寝台37の位置ごとに互いに異なる複数の時相に対応する時系列の複数の画像データが生成される。
【0033】
画像処理部42は、画像データ記憶部44から寝台37の複数の位置に対応する複数の画像データを取得する機能、取得した複数の画像データを複数の位置間において繋ぎ合せるスティッチング処理を含む画像処理によってシネ画像データを生成する機能、生成したシネ画像データを画像データ記憶部44に書き込む機能及びシネ画像データを表示装置34に表示させる機能を有する。
【0034】
stepping-table法による同期イメージングの場合には、対応する時相の複数の画像データを寝台37の複数の位置間において繋ぎ合せるスティッチング処理によってシネ画像データを生成することができる。望ましくは、同一の時相に対応する複数の画像データを繋ぎ合せるスティッチング処理が実行される。但し、同一の時相に対応する画像データが収集されなかった場合には、最も近い時相に対応する画像データを用いてスティッチング処理が実行される。従って、単一の画像データが複数回スティッチング処理に用いられる場合がある。
【0035】
一方、stepping-table法によるダイナミックイメージングの場合には、より近いNMR信号の時相に対応する複数の画像データを寝台37の複数の位置間において繋ぎ合せるスティッチング処理によってダイナミック画像データとしてシネ画像データを生成することができる。従って、stepping-table法によるダイナミックイメージングの場合においても、単一の画像データが複数回スティッチング処理に用いられる場合がある。
【0036】
尚、画像データが3次元(3D: three dimensional)画像データである場合には、スティッチング処理の前処理又は後処理としてMPR (multi planar reconstructions)処理や最大値投影(MIP: maximum intensity projection)処理等の3Dデータの2次元(2D: two dimensional)化処理が施される。
【0037】
次に磁気共鳴イメージング装置20の動作及び作用について説明する。
【0038】
まず磁気共鳴イメージング装置20によりstepping-table法による同期イメージングを行う場合について説明する。
【0039】
図3は、図1に示す磁気共鳴イメージング装置20により被検体Pのstepping-table法による同期イメージングを行う際の流れを示すフローチャートである。
【0040】
まず予め寝台37に被検体P及び撮像部位に応じたNMR信号の受信用のRFコイル24がセットされ、静磁場電源26により励磁された静磁場用磁石21(超伝導磁石)の撮像領域に静磁場が形成される。また、シムコイル電源28からシムコイル22に電流が供給されて撮像領域に形成された静磁場が均一化される。
【0041】
そして、ステップS1において、撮像条件設定部40は、入力装置33からの指示情報に基づいてstepping-table法による同期イメージングの撮像条件を設定する。例えば、寝台37の天板の複数のstation位置、画像データの時相及び数、画像データのスライス位置及びスライス枚数等の撮像条件が設定される。
【0042】
図4は、図3に示す同期イメージングの撮像条件として寝台37のstationごとにECG信に同期して複数の時相においてNMRデータの収集を行う撮像条件を設定した例を示す図である。
【0043】
図4において横軸は時間を示す。図4に示すようにECG信号のR波から所定の遅延時間経過後の異なる心時相T1, T2, T3, ...においてNMRデータの収集を行う同期イメージング条件を設定することができる。stepping-table法によるイメージングであるため各心時相T1, T2, T3, ...に対応するNMRデータは、寝台37のstationごとに収集される。
【0044】
図4は、2つのstation位置(STATION1, STATION2)においてNMRデータの収集を行う場合の例を示している。すなわち、寝台37の天板がSTATION1に位置決めされた状態で、あるR波から遅延時間後の心時相T1, T2, T3, ...においてNMRデータDS1TI, DS1T2, DS1T3, ...が順次収集される。更に、寝台37の天板がSTATION2に位置決めされた状態で、あるR波から遅延時間後の心時相T1, T2, T3, ...においてNMRデータDS2TI, DS2T2, DS2T3, ...が順次収集される。station位置が3つ以上の場合も同様である。
【0045】
次に、ステップS2において、シーケンスコントローラ31や静磁場用磁石21等のスキャンを実行するための磁気共鳴イメージング装置20の構成要素は、設定された撮像条件に従ってデータ収集を行う。
【0046】
すなわち、入力装置33から撮像条件設定部40にイメージングスキャンの開始指示が与えられると、撮像条件設定部40はパルスシーケンスを含む撮像条件をシーケンスコントローラ31に与える。シーケンスコントローラ31は、パルスシーケンスに従ってECGユニット38から取得したECG信号に同期して、傾斜磁場電源27、送信器29及び受信器30を駆動させることにより被検体Pがセットされた撮像領域に傾斜磁場を形成させるとともに、RFコイル24からRF信号を発生させる。
【0047】
このため、被検体Pの内部における核磁気共鳴により生じたNMR信号が、RFコイル24により受信されて受信器30に与えられる。受信器30は、RFコイル24からNMR信号を受けて、所要の信号処理を実行した後、A/D変換することにより、デジタルデータのNMR信号である生データを生成する。受信器30は、生成した生データをシーケンスコントローラ31に与える。シーケンスコントローラ31は、生データを画像再構成部41に与え、画像再構成部41はk空間データ記憶部43に形成されたk空間に生データをk空間データとして配置する。
【0048】
次に、ステップS3において、画像再構成部41は、k空間データ記憶部43からk空間データを取り込んで画像再構成処理を施すことにより画像データを再構成する。画像データは、必要に応じて画像データ記憶部44に書き込まれる。
【0049】
次に、ステップS4において、画像処理部42は、画像再構成部41又は画像データ記憶部44から寝台37の位置ごとの複数の心時相に対応する複数フレーム分の画像データを取得して、スティッチング処理を含む画像処理を施す。
【0050】
図5は、図3に示すスティッチング処理の元画像データと処理画像データの一例を示す図である。
【0051】
図5(A)は、寝台37にセットされた被検体Pの撮像部位と寝台37のstation位置(STATION1, STATION2)との相対的な位置関係を示す図である。図5(A)に示すように、被検体Pの広領域の撮像部位がカバーできるように例えば2つのstation位置(STATION1, STATION2)が設定される。2つのstation位置(STATION1, STATION2)には、スティッチング処理によってスムーズな画像データが生成できるようにオーバーラップ部分が設けられる。
【0052】
図5(B)は、スティッチング処理の元画像データを示す。元画像データは、図5(A)の各station位置(STATION1, STATION2)においてそれぞれ収集された複数の時相(T1, T2, T3, ...)におけるNMRデータ(DS1TI, DS1T2, DS1T3, ..., DS2TI, DS2T2, DS2T3, ...)から生成された画像データ(IS1TI, IS1T2, IS1T3, ..., IS2TI, IS2T2, IS2T3, ...)である。尚、図5(B)において横軸方向はstation方向であり、縦軸方向は時相方向である。
【0053】
図5(C)は、スティッチング処理の処理画像データを示す。処理画像データは、図5(B)の画像データを元画像データとするスティッチング処理によって生成されるシネ画像データである。尚、図5(C)において縦軸方向は時相方向である。図5(B)に示す複数の画像データ(IS1TI, IS1T2, IS1T3, ..., IS2TI, IS2T2, IS2T3, ...)から時相が同じ画像データを抽出し、時相ごとにスティッチング処理を行うと、図5(C)に示すように複数の時相(T1, T2, T3, ...)に対応する複数フレーム分の広領域のシネ画像データ(ITI, IT2, IT3, ...)が生成される。
【0054】
尚、図5は、スライス枚数が1枚の場合の例を示しているが、複数のスライス画像データがそれぞれ複数のstation位置及び複数の時相について収集された場合には、時相及びスライスごとにスティッチング処理を行うことによって複数の時相及び複数のスライスに対応する複数フレーム分の広領域のシネ画像データを生成することができる。
【0055】
図6は、図3に示すスティッチング処理の詳細な流れの一例を示すフローチャートである。
【0056】
まず、ステップS41において、画像処理部42は、スティッチング処理の元画像データとなる複数のstation位置及び複数の時相に対応する複数の画像データを取得する。次にステップS42において、画像処理部42は、時相の順番を示すTに初期値として1を代入する。
【0057】
次にステップS43において、画像処理部42は、時相の順番を示すTの値が収集データの全時相数NT以下であるか否かを判定する。Tの値が時相数NT以下であると判定された場合には、ステップS44において、画像処理部42は、T番目の時相と同一の時相において収集された画像データをstationごとの複数の画像データから検索して取得する。尚、検索対象となる時相の画像データがない場合には、画像処理部42がT番目の時相と最も近い時相において収集された画像データを代用画像データとして取得する。
【0058】
次にステップS45において、画像処理部42は、検索して得られたT番目の時相に対応する複数の画像データ間にスティッチング処理を施す。スティッチング処理は、隣接するstationに対応する複数の画像データを互いに繋ぎ合わせて広領域の画像データを生成する公知の処理である。これにより時相が同一又は同等であり隣接するstationに対応する画像データが互いに繋ぎあわされる。すなわち、1つの時相及びスライスにつき1フレーム分のシネ画像データが生成される。
【0059】
次にステップS46において、画像処理部42は、時相の順番を示すTにT+1を代入する。これにより、次の順番の時相Tが選択される。そして、ステップS43においてTの値が時相数NT以下であると判定されるまで、ステップS44からステップS46の処理が繰り返される。この結果、全ての時相に対応する複数フレーム分の広領域のシネ画像データが生成される。
【0060】
次に、図3のステップS5において、画像処理部42は、複数フレーム分の広領域のシネ画像データを時相順に表示装置34に連続的に出力する。これにより、表示装置34には、時相順に血液等の観察対象が変化する広領域の画像がシネ表示される。そして、ユーザはシネ表示された広領域画像を観察することができる。
【0061】
次に磁気共鳴イメージング装置20によりstepping-table法によるダイナミックイメージングを行う場合について説明する。
【0062】
図7は、図1に示す磁気共鳴イメージング装置20により被検体Pのstepping-table法によるダイナミックイメージングを行う際の流れを示すフローチャートである。
【0063】
まず予め寝台37に被検体P及び撮像部位に応じたNMR信号の受信用のRFコイル24がセットされ、静磁場電源26により励磁された静磁場用磁石21(超伝導磁石)の撮像領域に静磁場が形成される。また、シムコイル電源28からシムコイル22に電流が供給されて撮像領域に形成された静磁場が均一化される。
【0064】
そして、ステップS11において、撮像条件設定部40は、入力装置33からの指示情報に基づいてstepping-table法によるダイナミックイメージングの撮像条件を設定する。例えば、寝台37の天板の複数のstation位置、同一のstation位置において連続収集される画像データのフレーム数、同一のstation位置に寝台37の天板を断続的に移動させる回数、画像データのスライス位置及びスライス枚数等の撮像条件が設定される。
【0065】
図8は、図7に示すダイナミックイメージングの撮像条件の設定例を示す図である。
【0066】
図8において横軸は時間を示す。図8に示すように、寝台37の天板を複数のstation位置に変えながらNMRデータのダイナミック収集を行う撮像条件を設定することができる。ダイナミックイメージングであるため、各NMRデータのデータ収集タイミングが時相T1, T2, T3, ...に対応する。また、同一のstation位置に寝台37の天板を繰り返し配置する回数として任意のセグメント数を設定することができる。各セグメントでは、同一のstation位置において連続して繰り返し収集される画像データのフレーム数を所望の数に設定することができる。
【0067】
図8は、station位置の数がSTATION1, STATION2, STATION3の3、セグメント1における画像データのフレーム数が1、セグメント2における画像データのフレーム数が2、セグメントnにおける画像データのフレーム数がiの場合の例を示している。すなわち、セグメント1では、寝台37の天板のstation位置がSTATION1, STATION2, STATION3に順次移動され、それぞれのstation位置において画像データ1フレーム分のNMRデータが収集される。また、セグメント2では、寝台37の天板のstation位置がSTATION1, STATION2, STATION3に順次移動され、それぞれのstation位置において画像データ2フレーム分のNMRデータが収集される。
【0068】
尚、同一のセグメントにおいて各station位置で収集される画像データのフレーム数を変えてもよい。例えば、被検体Pに注入された造影剤の移動に合わせて各station位置で連続して収集される画像データのフレーム数を設定すれば、造影剤の到達部分をモニターするための画像データを得ることができる。
【0069】
次に、ステップS12において、シーケンスコントローラ31や静磁場用磁石21等のスキャンを実行するための磁気共鳴イメージング装置20の構成要素は、設定された撮像条件に従ってNMRデータのダイナミック収集を行う。すなわち、同期イメージングと同様な流れでk空間データ記憶部43に形成されたk空間に生データが順次配置される。
【0070】
次に、ステップS13において、画像再構成部41は、k空間データ記憶部43からk空間データを取り込んで画像再構成処理を施すことにより順次画像データを再構成する。画像データは、必要に応じて画像データ記憶部44に書き込まれる。この結果、複数のstation位置に対応する時系列の画像データが生成される。
【0071】
次に、ステップS14において、画像処理部42は、画像再構成部41又は画像データ記憶部44から複数のstation位置に対応する時系列の複数フレーム分の画像データを取得して、スティッチング処理を含む画像処理を施す。
【0072】
図9は、図7に示すスティッチング処理の元画像データと処理画像データの一例を示す図である。
【0073】
図9(A)は、寝台37にセットされた被検体Pの撮像部位と寝台37のstation位置(STATION1, STATION2, STATION3)との相対的な位置関係を示す図である。図9(A)に示すように、被検体Pの広領域の撮像部位がカバーできるように例えば3つのstation位置(STATION1, STATION2, STATION3)が設定される。3つのstation位置(STATION1, STATION2, STATION3)には、スティッチング処理によってスムーズな画像データが生成できるようにオーバーラップ部分が設けられる。
【0074】
図9(B)は、スティッチング処理の元画像データを示す。元画像データは、図9(A)の複数のstation位置(STATION1, STATION2, STATION3)のいずれかにおいて収集されたNMRデータ(DS1TI, DS2T2, DS3T3, DS1T4, DS1T5, DS2T6, DS2T7, DS3T8, DS3T9,...)から生成された時系列の時相(T1, T2, T3, ...)における画像データ(IS1TI, IS2T2, IS3T3, IS1T4, IS1T5, IS2T6, IS2T7, IS3T8, IS3T9,...)である。尚、図9(B)において横軸方向はstation方向であり、縦軸方向はセグメント方向である。
【0075】
station位置(STATION1, STATION2, STATION3)ごとに時相の早い順に画像データ(IS1TI, IS2T2, IS3T3, IS1T4, IS1T5, IS2T6, IS2T7, IS3T8, IS3T9,...)を整列させると図9(B)の実線で示すデータのようになる。画像データ(IS1TI, IS2T2, IS3T3, IS1T4, IS1T5, IS2T6, IS2T7, IS3T8, IS3T9,...)は、それぞれ異なるデータ収集タイミングにおいてダイナミック収集されているため、互いに異なる時相に対応している。
【0076】
そこで、各画像データ(IS1TI, IS2T2, IS3T3, IS1T4, IS1T5, IS2T6, IS2T7, IS3T8, IS3T9,...)の時相以前の最も近い時相において別のstation位置にて収集された画像データが代用画像データとして用いられる。図9(B)において点線で示す画像データは、代用画像データとして繰り返しスティッチング処理の元画像データとして用いられるデータである。すなわち、各画像データ(IS1TI, IS2T2, IS3T3, IS1T4, IS1T5, IS2T6, IS2T7, IS3T8, IS3T9,...)と、それぞれ過去の最も近い時相において別のstation位置にて収集された画像データとがスティッチング処理の対象とされる。これにより、station間において画像データの時間的な順序が逆になることを回避しつつ時間分解能を維持することができる。
【0077】
図9(C)は、スティッチング処理の処理画像データを示す。処理画像データは、図9(B)の画像データを元画像データとするスティッチング処理によって生成されるシネ画像データである。尚、図9(C)において縦軸方向は時相方向である。図9(B)に示す複数の画像データ(IS1TI, IS2T2, IS3T3, IS1T4, IS1T5, IS2T6, IS2T7, IS3T8, IS3T9,...)からstationごとに時相が近い画像データを抽出し、対応する時相ごとにスティッチング処理を行うと、図9(C)に示すようにダイナミック時相(T1, T2, T3, ...)順の複数フレーム分の広領域のシネ画像データ(IT3, IT4, IT5, ...)が生成される。
【0078】
尚、図9は、スライス枚数が1枚の場合の例を示しているが、時系列の複数のスライス画像データが複数のstation位置のいずれかにおいてダイナミック収集された場合には、時相及びスライスごとにスティッチング処理を行うことによって複数のスライスに対応する時系列の複数フレーム分の広領域のシネ画像データを生成することができる。
【0079】
図10は、図7に示すスティッチング処理の詳細な流れの一例を示すフローチャートである。
【0080】
まず、ステップS51において、画像処理部42は、スティッチング処理の元画像データとなる複数のstation位置のいずれかにおいてそれぞれダイナミック収集された時系列の複数の画像データを取得する。
【0081】
次にステップS52において、画像処理部42は、時相の順番を示すTに初期値としてT0を代入する。T0は、全てのstation位置において少なくとも1フレーム分の画像データの収集が完了した最も早い時相とすればよい。図8及び図9に示す例では、3番目の時相T3において3つのstation位置(STATION1, STATION2, STATION3)における画像データ(IS1TI, IS2T2, IS3T3)の収集が完了するため、T0=3となる。
【0082】
次にステップS53において、画像処理部42は、時相の順番を示すTの値が収集データの全時相数NT以下であるか否かを判定する。Tの値が時相数NT以下であると判定された場合には、ステップS54において、画像処理部42は、T番目の時相以前の最も近い時相において収集された画像データをstationごとの複数の画像データから検索して取得する。
【0083】
次にステップS55において、画像処理部42は、検索して得られたT番目の時相に対応する複数の画像データ間にスティッチング処理を施す。これにより時相が近くかつ隣接するstationに対応する画像データが互いに繋ぎあわされる。すなわち、1つの時相及びスライスにつき1フレーム分のシネ画像データが生成される。
【0084】
次にステップS56において、画像処理部42は、時相の順番を示すTにT+1を代入する。これにより、次の順番の時相Tが選択される。そして、ステップS53においてTの値が時相数NT以下であると判定されるまで、ステップS54からステップS56の処理が繰り返される。この結果、時系列の複数フレーム分の広領域のシネ画像データが生成される。
【0085】
次に、図7のステップS15において、画像処理部42は、複数フレーム分の広領域のシネ画像データをダイナミック時相順に表示装置34に連続的に出力する。これにより、表示装置34には、ダイナミック時相順に血液等の観察対象が変化する広領域の画像がシネ表示される。そして、ユーザはシネ表示された広領域画像を観察することができる。
【0086】
つまり以上のような磁気共鳴イメージング装置20は、寝台37を移動させて寝台37の位置ごとに複数の画像データを収集し、収集した画像データの時相情報に基づいて画像データをスティッチング処理することによって広領域のシネ画像データを生成するようにしたものである。
【0087】
このため、磁気共鳴イメージング装置20によれば、同期イメージングやダイナミックイメージングのように撮像部位の時間変化を描出する場合において、より広領域の撮像部位をシネ表示させることができる。このためユーザは、広領域の撮像部位について動態観察を行うことが可能となる。
【0088】
また、ダイナミックイメージングの場合には、寝台37の各位置において収集された画像データを代用画像データとして繰り返しスティッチング処理に用いることによって、時間的な連続性を良好に維持することができる。
【0089】
以上、特定の実施形態について記載したが、記載された実施形態は一例に過ぎず、発明の範囲を限定するものではない。ここに記載された新規な方法及び装置は、様々な他の様式で具現化することができる。また、ここに記載された方法及び装置の様式において、発明の要旨から逸脱しない範囲で、種々の省略、置換及び変更を行うことができる。添付された請求の範囲及びその均等物は、発明の範囲及び要旨に包含されているものとして、そのような種々の様式及び変形例を含んでいる。
【符号の説明】
【0090】
20 磁気共鳴イメージング装置
21 静磁場用磁石
22 シムコイル
23 傾斜磁場コイル
24 RFコイル
25 制御系
26 静磁場電源
27 傾斜磁場電源
28 シムコイル電源
29 送信器
30 受信器
31 シーケンスコントローラ
32 コンピュータ
33 入力装置
34 表示装置
35 演算装置
36 記憶装置
37 寝台
38 ECGユニット
39 寝台駆動装置
40 撮像条件設定部
41 画像再構成部
42 画像処理部、
43 k空間データ記憶部
44 画像データ記憶部
P 被検体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに異なる複数の位置に寝台を移動させて前記寝台にセットされた被検体から前記寝台の位置ごとに複数の磁気共鳴信号を収集するデータ収集手段と、
前記複数の磁気共鳴信号に対する画像再構成処理によって前記寝台の位置ごとに複数の画像データを生成する画像再構成手段と、
前記複数の位置に対応する複数の画像データを前記複数の位置間において繋ぎ合せるスティッチング処理によってシネ画像データを生成する画像処理手段と、
を備える磁気共鳴イメージング装置。
【請求項2】
前記データ収集手段は、前記被検体の生体信号に同期させて前記寝台の位置ごとに互いに異なる複数の時相に対応する複数の磁気共鳴信号を収集するように構成され、
前記画像処理手段は、対応する時相の複数の画像データを前記複数の位置間において繋ぎ合せるスティッチング処理によって前記シネ画像データを生成するように構成される請求項1記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項3】
前記データ収集手段は、前記複数の磁気共鳴信号をダイナミック収集するように構成され、
前記画像処理手段は、近い時相に対応する複数の画像データを前記複数の位置間において繋ぎ合せるスティッチング処理によってダイナミック画像データとして前記シネ画像データを生成するように構成される請求項1記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項4】
前記画像処理手段は、単一の画像データを複数回前記スティッチング処理に用いるように構成される請求項2又は3記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項5】
前記データ収集手段は、前記被検体に注入された造影剤の移動に合わせて設定された前記寝台の位置ごとに連続して収集される画像データの数に対応する複数の磁気共鳴信号を前記寝台の位置ごとに連続収集するように構成される請求項3記載の磁気共鳴イメージング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−143467(P2012−143467A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−5349(P2011−5349)
【出願日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】