磁気共鳴イメージング装置
【課題】簡易かつ的確に遅延時間を設定可能とする。
【解決手段】磁気共鳴イメージング装置は、プレップスキャン部、プレップ画像生成部、心時相決定部、イメージングスキャン部およびイメージング画像生成部を備える。プレップ画像生成部は、プレップスキャン部が、同一スライスについて互いに異なる複数の心時相のそれぞれにおいて収集した複数セットのエコー信号のそれぞれに基づいて、複数の心時相のそれぞれに関する複数のプレップ画像を生成する。心時相決定部は、複数のプレップ画像に基づいて、第1及び第2の心時相を決定する。イメージング画像生成部は、イメージングスキャン部が第1および第2の心時相のそれぞれにおいてイメージングスキャンを実行してそれぞれ得たイメージング用エコー信号に基づいて第1および第2の画像をそれぞれ生成し、当該第1の画像と第2の画像を差分して差分画像を得る。
【解決手段】磁気共鳴イメージング装置は、プレップスキャン部、プレップ画像生成部、心時相決定部、イメージングスキャン部およびイメージング画像生成部を備える。プレップ画像生成部は、プレップスキャン部が、同一スライスについて互いに異なる複数の心時相のそれぞれにおいて収集した複数セットのエコー信号のそれぞれに基づいて、複数の心時相のそれぞれに関する複数のプレップ画像を生成する。心時相決定部は、複数のプレップ画像に基づいて、第1及び第2の心時相を決定する。イメージング画像生成部は、イメージングスキャン部が第1および第2の心時相のそれぞれにおいてイメージングスキャンを実行してそれぞれ得たイメージング用エコー信号に基づいて第1および第2の画像をそれぞれ生成し、当該第1の画像と第2の画像を差分して差分画像を得る。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、FBI(fresh blood imaging)法、特にFlow-Spoiled FBI法のような心電同期撮像法を用いた撮像を行う磁気共鳴イメージング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気共鳴イメージング(MRI)におけるアンギオグラフィの一手法であるFBIおよびFlow-Spoiled FBI(FS−FBI)は、例えば特許文献1および特許文献2によってそれぞれ知られている。
【0003】
FBIは、造影剤を投与しないが、あたかも造影剤を投与したかの如く血流像を擬似的に表示できる非造影MRA法である。このFBIでは、ECG(electrocardiogram)またはPPG等に基づいて被検体の心時相に同期させてスキャンすることにより、心臓から拍出された速い流速の血流を捕捉し、良好に血管を描出する。具体的には、FBIは、心電同期によるトリガー信号(例えばR波)からデータ収集開始時刻までの遅延時間を異ならせて、拡張期および収縮期において3次元スキャンを行い、得られた2つのデータを差分することにより動脈血流画像を生成する。そして必要に応じて、拡張期画像(動静脈血流画像)から動脈血流画像を差分することにより静脈血流画像を得ることができる。データ差分処理は、実空間に変換された画像同士を差分演算することが典型的だが、マトリクスサイズが同じk空間上のエコーデータを差分演算し、その差分エコーデータに基づいて画像を再構成しても良い。
【0004】
一方、下肢MRAでは動静脈いずれも流速が遅く、FBIでは動静脈分離をすることが難しいことがある。そこでFS−FBIでは、収縮期においてspoilerパルス(flow spoiledパルス)が付加された傾斜磁場によりイメージングを行う。これにより、収縮期における動脈信号が抑制されることになり、動静脈分離を行うことができる。spoilerパルスは読み出し傾斜磁場波形の前後に付加されるのが典型的だが、位相エンコード傾斜磁場の波形に付加しても良い。また血管走行方向に読み出しエンコード方向を設定すれば、flow-dephasing効果による動脈信号を更に抑制することができるが、読み出しエンコードはその他の方向に設定されても良い。要は、位相エンコード方向を血流方向(血管走行方向)と同方向に設定した場合はアーチファクトが血管と重なり、flow voidが得られなくなるため位相エンコード方向が血流方向以外に設定されることで、動脈信号の信号抑制効果は得られる。
【0005】
これらのイメージング法では、撮像条件の一パラメータとして遅延時間がある。この遅延時間は、操作者によって設定される。具体的には操作者は、ECG−prepスキャンによって得られた複数の時相の画像を見比べて、最も状態の良い画像が得られた時相と基準時相(例えばR波が発生する時相)との時間差を上記の遅延時間として設定する。なおECG−prepスキャンとは、予め同期タイミングを決めるための準備用のパルスシーケンスを実行する準備用のスキャンである。そしてECG−prepスキャンでは、ECG信号の基準時相からの遅延時間がそれぞれ異なる複数の時相のそれぞれにおいて被検体を撮像する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−5144号公報
【特許文献2】特開2002−200054号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
以上のように従来は、ECG−prepスキャンにより得られた画像に基づいて、操作者が適切な遅延時間を判断しなければならなかった。このため、操作者の負担が大きい上に、必ずしも適切な遅延時間が撮像条件として設定されるとは限らなかった。
【0008】
本発明はこのような事情を考慮してなされたものであり、その目的とするところは、簡易かつ的確に遅延時間を設定可能とする磁気共鳴イメージング装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様による磁気共鳴イメージング装置は、同一スライスについて互いに異なる複数の心時相のそれぞれにおける複数セットのエコー信号を収集するプレップスキャンを実行するプレップスキャン部と、前記複数セットのエコー信号のそれぞれに基づいて、前記複数の心時相のそれぞれに関する複数のプレップ画像を生成するプレップ画像生成部と、前記複数のプレップ画像に基づいて、第1の心時相及び第2の心時相を決定する心時相決定部と、前記心時相決定部により決定された前記第1の心時相及び前記第2の心時相のそれぞれにおいてイメージングスキャンを実行して、イメージング用エコー信号を得るイメージングスキャン部と、前記イメージングスキャン部により得られた前記第1の心時相のエコー信号に基づいて第1の画像を生成し、前記第2の心時相のエコー信号に基づいて第2の画像を生成し、当該第1の画像と第2の画像を差分して差分画像を得るイメージング画像生成部とを備えた。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】第1の実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置(MRI装置)100の概略構成を示す図。
【図2】遅延時間TDL1,TDL2を判定するための第1の実施形態におけるホスト計算機6の処理のフローチャート。
【図3】第1の実施形態にてECG−prep画像とともに表示するGUIの一例を示す図。
【図4】単一のROIの設定例を示す図。
【図5】複数のROIの設定例を示す図。
【図6】遅延時間TDL1,TDL2を判定するための第2の実施形態におけるホスト計算機6の処理のフローチャート
【図7】第2の実施形態にてECG−prep画像とともに表示するGUIの一例を示す図。
【図8】図7中の第1のマスク生成処理でのホスト計算機6の処理手順を示すフローチャート
【図9】図7中の第2のマスク生成処理でのホスト計算機6の処理手順を示すフローチャート。
【図10】マスク画像の一例を示す図。
【図11】Flow-Spoiled FBI法による撮像を行う場合の第3の実施形態におけるホスト計算機6の処理のフローチャート
【図12】平均値を対応する時相の遅延時間と対応付けて表す画像の一例を示す図。
【図13】平均値を対応する時相の遅延時間と対応付けて表す画像の一例を示す図。
【図14】複数の閾値を使用して求めた複数の平均値のそれぞれの経時変化を表す画像の一例を示す図。
【図15】処理結果を表示するための画面の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して実施形態について説明する。
【0012】
(第1の実施形態)
図1はこの第1の実施形態にかかる磁気共鳴イメージング装置(MRI装置)100の概略構成を示す図である。
【0013】
このMRI装置100は、被検体200を載せる寝台部と、静磁場を発生させる静磁場発生部と、静磁場に位置情報を付加するための傾斜磁場発生部と、高周波信号を送受信する送受信部と、システム全体のコントロールおよび画像再構成を担う制御・演算部とを備えている。そしてMRI装置100はこれらの各部の構成要素として、磁石1、静磁場電源2、傾斜磁場コイルユニット3、傾斜磁場電源4、シーケンサ(シーケンスコントローラ)5、ホスト計算機6、RFコイル7、送信器8T、受信器8R、演算ユニット10、記憶ユニット11、表示器12、入力器13、シムコイル14、シムコイル電源15および音声発生器16を有する。またMRI装置100には、被検体200の心時相を表す信号としてのECG信号を計測する心電計測部が接続されている。
【0014】
静磁場発生部は、磁石1と静磁場電源2とを含む。磁石1としては、例えば超電導磁石や常電導磁石が利用可能である。静磁場電源2は、磁石1に電流を供給する。かくして静磁場発生部は、被検体200が送り込まれる円筒状の空間(診断用空間)の軸方向(Z軸方向)に静磁場H0を発生させる。なお、この静磁場発生部にはシムコイル14が設けられている。このシムコイル14には、ホスト計算機6の制御下でのシムコイル電源15からの電流供給によって静磁場均一化のための補正磁場を発生する。
【0015】
寝台部は、被検体200を載せた天板を、診断用空間に送り込んだり、診断用空間から抜き出したりできる。
【0016】
傾斜磁場発生部は、傾斜磁場コイルユニット3および傾斜磁場電源4を含む。傾斜磁場コイルユニット3は、磁石1に組み込まれる。傾斜磁場コイルユニット3は、互いに直交するX軸方向、Y軸方向およびZ軸方向のそれぞれの傾斜磁場を発生させるための3組のコイル3x,3y,3zを備える。傾斜磁場電源4は、シーケンサ5の制御の下で、コイル3x、コイル3yおよびコイル3zに傾斜磁場を発生させるためのパルス電流を供給する。傾斜磁場発生部は、傾斜磁場電源4からコイル3x,3y,3zに供給するパルス電流を制御することにより、物理軸である3軸(X軸,Y軸,Z軸)方向のそれぞれの傾斜磁場を合成して、互いに直交するスライス方向傾斜磁場GS、位相エンコード方向傾斜磁場GE、および読出し方向(周波数エンコード方向)傾斜磁場GRから成る論理軸方向を任意に設定する。スライス方向、位相エンコード方向および読出し方向の各傾斜磁場は静磁場H0に重畳される。
【0017】
送受信部は、RFコイル7、送信器8Tおよび受信器8Rを含む。RFコイル7は、磁石1内の診断用空間にて被検体200の近傍に配設される。送信器8Tおよび受信器8Rは、コイル7に接続さる。送信器8Tおよび受信器8Rは、シーケンサ5の制御の下で動作する。送信器8Tは、核磁気共鳴(NMR)を励起させるためのラーモア周波数のRF電流パルスをRFコイル7に供給する。受信器8Rは、RFコイル7が受信したエコー信号などのMR信号(高周波信号)を取り込み、これに前置増幅、中間周波変換、位相検波、低周波増幅、あるいはフィルタリングなどの各種の信号処理を施した後、A/D変換してデジタルデータ(原データ)を生成する。
【0018】
制御・演算部は、シーケンサ5、ホスト計算機6、演算ユニット10、記憶ユニット11、表示器12、入力器13および音声発生器16を含む。
【0019】
ホスト計算機6は、予め定められたソフトウエア手順を実行することにより実現される各種の制御機能を有している。この制御機能の1つは、シーケンサ5にパルスシーケンス情報を指令するとともに、装置全体の動作を統括する機能である。上記の制御機能の1つは、Flow-Spoiled FBI法によるMRスキャンを実現するように各部を制御する機能である。上記の制御機能の1つは、Flow-Spoiled FBI法によるMRスキャンにおける撮像条件のパラメータである遅延時間TDL1,TDL2を自動判定する機能である。
【0020】
シーケンサ5は、CPUおよびメモリを備えている。シーケンサ5は、ホスト計算機6から送られてきたパルスシーケンス情報をメモリに記憶する。シーケンサ5のCPUは、メモリに記憶したシーケンス情報にしたがって、傾斜磁場電源4、送信器8Tおよび受信器8Rの動作を制御するとともに、受信器8Rが出力した原データを一旦入力し、これを演算ユニット10に転送する。ここで、パルスシーケンス情報とは、一連のパルスシーケンスにしたがって傾斜磁場電源4、送信器8Tおよび受信器8Rを動作させるために必要な全ての情報であり、例えばコイル3x,3y,3zに印加するパルス電流の強度、印加時間および印加タイミングなどに関する情報を含む。
【0021】
このパルスシーケンスとしては、フーリエ変換法を適用したものであれば、2次元(2D)スキャンまたは3次元(3D)スキャンのいずれであってもよい。また、そのパルス列の形態としては、SE(spin echo)法、FSE(fast spin echo)法、EPI(echo planar imaging)法、あるいはFASE(fast asymmetric SE)法など、SE系のパルス列が好適である。
【0022】
演算ユニット10は、受信器8Rが出力した原データを、シーケンサ5を通して入力する。演算ユニット10は、入力した原データを、内部メモリによるk空間(フーリエ空間または周波数空間とも呼ばれる)に配置し、このデータを1組毎に2次元または3次元のフーリエ変換に付して実空間の画像データに再構成する。また演算ユニット10は、必要に応じて、画像に関するデータの合成処理や差分演算処理(重付け差分処理も含む)も実行可能になっている。この合成処理には、画素毎に加算する処理や、最大値投影(MIP)処理などが含まれる。また、上記合成処理の別の例として、フーリエ空間上で複数フレームの軸の整合をとった上で、原データのまま1フレームの原データに合成するようにしてもよい。なお、加算処理には、単純加算処理、加算平均処理、あるいは重み付け加算処理などが含まれる。
【0023】
記憶ユニット11は、再構成された画像データや、上述の合成処理や差分処理が施された画像データを保管する。
【0024】
表示器12は、ユーザに提示するべき各種の画像をホスト計算機6の制御の下に表示する。
【0025】
入力器13は、操作者が希望する同期タイミング選択用のパラメータ情報、スキャン条件、パルスシーケンス、画像合成や差分の演算に関する情報などの各種の情報を入力する。入力器13は、入力した情報をホスト計算機6に送る。
【0026】
音声発生器16は、ホスト計算機6から指令があったときに、息止め開始および息止め終了のメッセージを音声として発する。
【0027】
心電計測部は、ECGセンサ17およびECGユニット18を含む。ECGセンサ17は、被検体200の体表に付着されており、被検体200のECG信号を電気信号(以下、センサ信号と称する)として検出する。ECGユニット18は、センサ信号にデジタル化処理を含む各種の処理を施した上で、ホスト計算機6およびシーケンサ5に出力する。この心電計測部としては、例えばベクトル心電計を用いることができる。この心電計測部によるセンサ信号は、ECG−prepスキャンと心電同期のイメージングスキャンとのそれぞれを実行するときにシーケンサ5にて必要に応じて用いられる。これにより、心電同期法の同期タイミングを適切に設定でき、この同期タイミングに基づく心電同期のイメージングスキャンを行ってデータ収集できるようになっている。
【0028】
次に以上のように構成されたMRI装置100の動作について説明する。
【0029】
MRI装置100は、Flow-Spoiled FBI法によるMRスキャンを行うことができる。このMRスキャンを実現するための動作としては、例えば特許文献2に記載されている動作を利用できる。ただしこのMRスキャンに先立ってホスト計算機6は、遅延時間TDL1,TDL2を判定するために以下のような処理を実行する。
【0030】
図2は遅延時間TDL1,TDL2を判定するためのホスト計算機6の処理のフローチャートである。
【0031】
ステップSa1においてホスト計算機6は、ECG−prepスキャンの実行をシーケンサ5に指示する。この指示に応じてシーケンサ5は、ECG−prepスキャンを例えば特許文献2に記載されている手順で実行する。このECG−prepスキャンにより、それぞれ異なる時相にそれぞれ関する複数の画像(以下、ECG−prep画像と称する)が得られる。例えば基準時相からの遅延時間が0〜900msecまでの100msec間隔の10時相にそれぞれ関する10枚のECG−prep画像が得られる。
【0032】
ステップSa2においてホスト計算機6は、上記のECG−prepスキャンにより得られた複数のECG−prep画像のうちの操作者により選択されたものを表示器12に表示させる。なおホスト計算機6は、このECG−prep画像を表示させる画面には、図3に示すようなGUI(graphical user interface)を併せて表示させる。
【0033】
ステップSa3およびステップSa4においてホスト計算機6は、ROI(region of interest)が指定されるか、あるいは図3に示すGUIに設けられたRunボタンB1が押下されるのを待ち受ける。
【0034】
ここで、ROIを指定する操作が入力器13を使用して操作者によりなされた場合には、ホスト計算機6はステップSa3からステップSa5へ進む。ステップSa5においてホスト計算機6は、操作者の操作に応じてROIを設定する。図4はROIの設定例を示す図である。1つのROIを設定し終えたならば、ホスト計算機6はステップSa3およびステップSa4の待ち受け状態に戻る。ROIを指定する操作が繰り返し行われるならば、ホスト計算機6はステップSa5を繰り返し実行し、複数のROIを設定する。図5は複数のROIの設定例を示す図である。図5では、円形のROIが5つ設定されている。
【0035】
一方、RunボタンB1を押下する操作がなされたならば、ホスト計算機6はステップSa4からステップSa6へ進む。ステップSa6においてホスト計算機6は、ROIを設定済みであるか否かを確認する。ROIを1つも設定していない場合、ホスト計算機6はステップSa6からステップSa7へ進む。そしてステップSa7においてホスト計算機6は、ECG−prep画像の全領域をROIとして設定する。こののちにホスト計算機6は、ステップSa8へ進む。なお、ROIが1つでも設定されていたならば、ホスト計算機6はステップSa7をパスしてステップSa6からステップSa8へ進む。
【0036】
ステップSa8においてホスト計算機6は、ECG−prep画像の1つを基準画像として決定する。具体的には、ホスト計算機6は、既定時間よりも小さな遅延時間の時相のうちで最も遅い時相に関するECG−prep画像を基準画像とする。例えば、規定時間が250msecであるならば、遅延時間が200msecである時相に関するECG−prep画像が基準画像に決定される。
【0037】
ところで、これまで遅延時間を操作者が設定する場合には、収縮期に最も近い時相に関するECG−prep画像を基準画像として用いることが一般的であった。しかしながらこの第1の実施形態で用いる基準画像は、収縮期に最も近い時相に関するECG−prep画像である必要がない。このため、上記の規定時間は撮像の毎に設定する必要がなく、固定的な値を適用できる。そして規定時間を固定的な値とすることにより、基準画像の決定を自動で行うことが可能であり、操作者の負担を軽減できる。なお規定時間は、デフォルト値としてMRI装置100の製造時に設定されても良いし、操作者により任意に設定されても良い。また規定時間は、撮像の毎に操作者により指定させるようにしても良い。あるいは、規定時間として初期値を定めておき、これの変更指定が操作者により行われた場合にはそれにより指定された値を規定時間とし、変更指定が操作者により行われなかった場合には初期値を規定時間としても良い。
【0038】
ステップSa9においてホスト計算機6は、基準画像と基準画像以外のECG−prep画像のそれぞれとの差分画像を生成する。前述した10枚のECG−prep画像があり、遅延時間が200msecである時相に関するECG−prep画像が基準画像に決定されているとするならば、遅延時間が200msecである時相に関するECG−prep画像と、遅延時間が0msec、100msecおよび300〜900msecである各時相に関するECG−prep画像との差分をそれぞれ取って9枚の差分画像が生成される。なおホスト計算機6は、ROIのみに関して差分画像を生成する。この差分画像は、基準画像に対する血流の変化分に応じた画素値を持った画像となる。
【0039】
ステップSa10においてホスト計算機6は、ステップSa9で生成した全ての差分画像を対象として最大値投影処理を行うことによって、1枚の最大値画像を生成する。この最大値画像は、最も血流の変化の大きいものだけを差分画像から拾い集めた画像となる。
【0040】
ステップSa11においてホスト計算機6は、最大値画像を二値化することによってマスク画像を生成する。ホスト計算機6は、上記の二値化のための閾値として、予め定められた値を用いても良いし、最大値画像における最大信号の大きさに係数を乗じることにより求める値としても良い。なお、上記の係数は1未満である。この係数についても予め定められた値を用いても良いし、操作者により指定された値としても良い。あるいは、例えば0.7といった初期値を定めておき、これの変更指定が操作者により行われた場合にはそれにより指定された値を係数とし、変更指定が操作者により行われなかった場合には初期値を係数としても良い。マスク画像は、最大値画像において閾値以上の信号強度を持つ画素の画素値を1とし、それ以外の画素の画素値を0とした画像となる。すなわちマスク画像は、血管であり得る部分の画素値を1とし、血管の可能性が低い部分の画素値を0とした画像であって、血管の特徴を抽出した画像である。
【0041】
ステップSa12においてホスト計算機6は、全てのECG−prep画像におけるROI内の画像のそれぞれとマスク画像とを画素毎に乗算することによって、複数の被マスク画像を生成する。前述した10枚のECG−prep画像があるならば、10枚の被マスク画像が生成されることになる。被マスク画像は、ECG−prep画像のROI内の画像から血管であり得る部分を抽出した画像となる。
【0042】
ステップSa13においてホスト計算機6は、被マスク画像のそれぞれに関して、被マスク画像内の全ての画素についての画素値の平均値を求める。これにより、被マスク画像の元になった複数のECG−prep画像のそれぞれの時相に対応して1つずつの平均値が求まることになる。前述した10枚のECG−prep画像があるならば、10個の時相のそれぞれに対応して1つずつ、すなわち全部で10個の平均値が求まることになる。
【0043】
ステップSa14においてホスト計算機6は、上記の複数の平均値に基づいて、遅延時間TDLa,TDLbをそれぞれ判定する。具体的には、ホスト計算機6は、ステップSa13で求めた複数の平均値のうちの最小値に対応する時相の基準時相からの遅延時間を遅延時間TDLbとする。またホスト計算機6は、ステップSa13で求めた平均値のうちの最大値に対応する時相の基準時相からの遅延時間TDLaとする。なお、一般に血流は、最小となった後に最大となる。このため、上記の最大値の検索は、上記の最小値に対応する時相よりも後の時相に関する平均値のみに関して行えば良い。
【0044】
なお、複数のROIが設定されている場合には、ROIのそれぞれに対応した複数組の平均値が求められることになる。この場合には、平均値の最小値と最大値との差が最大となる組における最大値および最小値を、遅延時間TDLa,TDLbを判定するために利用すれば良い。
【0045】
このようにして判定される遅延時間TDLa,TDLbは、特許文献2に記載されるFlow-Spoiled FBI法によるMRスキャンにおける遅延時間TDL1,TDL2としてそのまま利用できる。なおホスト計算機6は、遅延時間TDLa,TDLbを、そのまま遅延時間TDL1,TDL2として自動的に設定しても良いし、遅延時間TDLa,TDLbを遅延時間TDL1,TDL2の候補として操作者に提示して、操作者の修正,承認を受けて遅延時間TDL1,TDL2として設定しても良い。
【0046】
従って、操作者は、遅延時間TDL1,TDL2を判断する必要がなく、操作者の負担が軽減される。また、ECG−prep画像の性質に基づいて遅延時間TDL1,TDL2の候補値が自動的に求められるので、操作者が判断する場合に比べて確実に適切な遅延時間TDL1,TDL2としての値を判断することができる。
【0047】
なお、ECG−prep画像における血流部分を操作者が判断可能であるならば、その部分にROIを設定することによって、遅延時間TDL1,TDL2として利用するのにより適切な遅延時間TDL1,TDL2を判定することができる。しかしながら、操作者がROIを設定しないようにすれば、操作者の負担はさらに軽減される。
【0048】
(第2の実施形態)
第2の実施形態に係るMRI装置の概略構成はMRI装置100と同様である。
【0049】
第2の実施形態と第1の実施形態との相違は、遅延時間TDL1,TDL2を判定するためのホスト計算機6における処理にある。
【0050】
そこで以下に、遅延時間TDL1,TDL2を判定するためのホスト計算機6における第2の実施形態での処理について詳細に説明する。
【0051】
図6は遅延時間TDL1,TDL2を判定するためのホスト計算機6の処理のフローチャートである。なお、図2と同一のステップには同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0052】
ホスト計算機6は、第1の実施形態と同様にステップSa1およびステップSa2を処理した後に待ち受け状態となる。この待ち受け状態においてホスト計算機6は、ステップSa3およびステップSa4における確認に加えて、ステップSb1における確認を行う。このステップSb1においてホスト計算機6は、マスク生成モードの変更指示がなされるか否かを確認する。なおこのマスク生成モードの変更指示のために第2の実施形態にてホスト計算機6は、ステップSa2にてECG−prep画像を表示させる画面に合わせて表示するGUIを図7に示すようなものとする。図7に示すGUIには、オプションボタンB2,B3が配置されている。オプションボタンB2,B3は、一方が選択状態、他方が選択解除状態である。オプションボタンB2,B3は、第1および第2のモードにそれぞれ対応付けられている。
【0053】
オプションボタンB2,B3のうちの選択解除状態であるボタンがクリックされた場合にホスト計算機6は、マスク生成モードの変更が指示されたと判断し、ステップSb1からステップSb2へ進む。そしてステップSb2においてホスト計算機6は、クリックされたオプションボタンに対応付けられたモードを有効とするようにマスク生成モードを変更する。こののちにホスト計算機6は、ステップSa3、ステップSa4およびステップSb1の待ち受け状態に戻る。
【0054】
RunボタンB1を押下する操作がなされたならば、ホスト計算機6は第1の実施形態と同様にステップSa6およびステップSa7を処理したのちにステップSb3へ進む。ステップSb3においてホスト計算機6は、マスク生成モードが第1のモードおよび第2のモードのいずれであるかを確認する。
【0055】
マスク生成モードが第1のモードであるならば、ホスト計算機6はステップSb3からステップSa8へ進む。そしてホスト計算機6は、ステップSa8において第1の実施形態と同様にして基準画像を決定した上で、ステップSb4において第1のマスク生成処理を実行する。
【0056】
図8は第1のマスク生成処理におけるホスト計算機6の処理手順を示すフローチャートである。
【0057】
ステップSc1乃至ステップSc4の処理ループにおいてホスト計算機6は、変数Pを1からnまで1つづつ増加させながら、ステップSc2およびステップSc3の処理を繰り返す。なおnは、ステップSa1において得られるECG−prep画像の数である。
【0058】
ステップSc2においてホスト計算機6は、P番目のECG−prep画像とステップSa9で決定した基準画像との差分画像を生成する。つぎにステップSc3においてホスト計算機6は、今回の第1のマスク生成処理において既に生成された最大値画像とステップSc2で生成した差分画像とを対象として最大値投影処理を行うことによって、1枚の最大値画像を生成する。変数Pが「1」であるときには、今回の第1のマスク生成処理における最大値投影が初めて行われるのであって、最大値画像はまだ生成されていないから、1番目のECG−prep画像と基準画像との差分画像がそのまま最大値画像とされる。
【0059】
かくして、ステップSc1乃至ステップSc4の処理ループが完了したとき、1枚の最大値画像が得られる。つまり、このステップSc1乃至ステップSc4の処理ループにおける処理は、詳細な処理手順は異なっているものの、第1の実施形態におけるステップSa9およびステップSa10の処理と同様な結果が得られる。
【0060】
こののちにステップSc5乃至ステップSc9の処理ループにおいてホスト計算機6は、最大値画像の全画素のそれぞれを順次に処理対象としながら、ステップSc6乃至ステップSc8の処理を繰り返す。
【0061】
ステップSc6においてホスト計算機6は、処理対象となっている画素の画素値が閾値よりも大きいか否かを確認する。ここで用いる閾値は、第1の実施形態におけるステップSa11にて利用する閾値と同じものである。そしてホスト計算機6は、画素値が閾値よりも大きいと判断したならばステップSc6からステップSc7へ進み、処理対象となっている画素に対応するマスク値を「1」とする。これに対してホスト計算機6は、画素値が閾値以下であると判断したならばステップSc6からステップSc8へ進み、処理対象となっている画素に対応するマスク値を「0」とする。
【0062】
かくして、ステップSc5乃至ステップSc9の処理ループが完了したとき、最大値画像の全画素を閾値によりそれぞれ二値化したマスク画像が得られる。つまり、このステップSc5乃至ステップSc9の処理ループにおける処理は、詳細な処理手順は異なっているものの、第1の実施形態におけるステップSa11の処理と同様な結果が得られる。
【0063】
一方、マスク生成モードが第2のモードであるならば、ホスト計算機6は図6におけるステップSb3からステップSb5へ進む。そしてステップSb5においてホスト計算機6は、第2のマスク生成処理を実行する。
【0064】
図9は第2のマスク生成処理におけるホスト計算機6の処理手順を示すフローチャートである。
【0065】
ステップSd1乃至ステップSd6の処理ループにおいてホスト計算機6は、変数P1を「1」から「n−1」まで1つづつ増加させながら、ステップSd2乃至ステップSd5の処理ループを繰り返し実行する。
【0066】
ステップSd2乃至ステップSd5の処理ループにおいてホスト計算機6は、変数P2を「P1+1」から「n」まで1つづつ増加させながら、ステップSd3およびステップSd4の処理を繰り返し実行する。
【0067】
ステップSd3においてホスト計算機6は、P1番目のECG−prep画像とP2番目のECG−prep画像との差分画像を生成する。つぎにステップSd4においてホスト計算機6は、今回の第2のマスク生成処理において既に生成された最大値画像とステップSd3で生成した差分画像とを対象として最大値投影処理を行うことによって、1枚の最大値画像を生成する。変数P1が「1」であるときには、今回の第2のマスク生成処理における最大値投影が初めて行われるのであって、最大値画像はまだ生成されていないから、1番目のECG−prep画像と2番目のECG−prep画像との差分画像がそのまま最大値画像とされる。なおホスト計算機6は、最大値画像の各画素について最大値投影処理で選択した画素値の選択元の差分画像がいずれであるかを記録しておく。
【0068】
かくしてステップSd1乃至ステップSd6の処理ループが完了したとき、1枚の最大値画像が得られる。この最大値画像は、n枚のECG−prep画像のうちの2枚を選択する全ての組み合わせ(nC2通り)のそれぞれについて生成した差分画像の全てを対象として最大値投影処理を行うことによって得られたものである。
【0069】
次にステップSd7乃至ステップSd10の処理ループにおいてホスト計算機6は、最大値画像の全画素のそれぞれを順次に処理対象としながら、ステップSd8およびステップSd9の処理を繰り返す。
【0070】
ステップSd8においてホスト計算機6は、処理対象となっている画素の画素値が閾値よりも大きいか否かを確認する。ここで用いる閾値は、第1の実施形態におけるステップSa11にて利用する閾値と同じものである。そしてホスト計算機6は、画素値が閾値よりも大きいと判断したならばステップSd8からステップSd9へ進み、処理対象となっている画素の画素値の選択元の差分画像についての頻度値F(P1,P2)を1つ増やす。具体的には、例えば処理対象となっている画素の画素値が3番目および8番目のECG−prep画像の差分画像から選択されたものであるならば、頻度値F(3,8)が1つ増やされる。なお頻度値F(P1,P2)の初期値は、例えば「0」などの共通の値に揃えられる。これに対してホスト計算機6は、画素値が閾値以下であると判断したならばステップSd8からステップSd10へ進み、頻度値F(P1,P2)のいずれも変更しない。
【0071】
かくしてステップSd7乃至ステップSd10の処理ループが完了したとき、複数の差分画像のそれぞれについて、当該差分画像から最大値統制処理において画素が選択された頻度を表す頻度値F(P1,P2)が求められる。
【0072】
次にステップSd11乃至ステップSd16の処理ループにおいてホスト計算機6は、最大値画像の全画素のそれぞれを順次に処理対象としながら、ステップSd12およびステップSd15の処理を繰り返す。
【0073】
ステップSd12およびステップSd13においてホスト計算機6は、処理対象となっている画素の画素値が最大頻度画像から選択されたものであり、かつ当該画素値が閾値よりも大きいか否かを確認する。ここで最大頻度画像とは、頻度値F(P1,P2)が最も大きくなった差分画像のことである。また閾値は、ステップSd8にて利用する閾値と同じものである。
【0074】
上記の条件に合致すると判断した場合にホスト計算機6は、ステップSd13からステップSd14へ進み、処理対象となっている画素に対応するマスク値を「1」とする。これに対してホスト計算機6は、上記の条件に合致しないと判断したならばステップSd12またはステップSd13からステップSd15へ進み、処理対象となっている画素に対応するマスク値を「0」とする。
【0075】
かくして、ステップSd11乃至ステップSd16の処理ループが完了したとき、最大頻度画像から選択されているとともに、閾値よりも大きい画素値を持った画素に対応したマスク値のみを「1」とし、その他の画素に対応したマスク値を「0」として二値化したマスク画像が得られる。
【0076】
以上のような第1のマスク生成処理または第2のマスク生成処理が終了したのちにホスト計算機6は、ステップSa12乃至ステップSa14を第1の実施形態と同様に処理する。
【0077】
かくして、マスク生成モードが第1のモードである場合には、実質的に第1の実施形態と同様な手法により遅延時間TDLa,TDLbがそれぞれ判定される。しかしながらマスク生成モードが第2のモードである場合には、n枚のECG−prep画像のうちの2枚を選択するnC2通りの全ての組み合わせのそれぞれについて差分画像を生成し、これらの差分画像の全てを対象として最大値投影処理を行うことによって得られる最大値画像に基づいてマスク画像を生成している。このため、第1の実施形態にて基準画像とされるECG−prep画像以外のECG−prep画像どうしにおいてより大きな信号変化が生じている場合には、それを考慮してマスク画像を生成することができる。第1の実施形態では、基準画像としていずれの時相に関したECG−prep画像が選択されるかによって最大値画像の画素値の大きさが変動するために、マスク画像の精度が変動し易い。しかし第2の実施形態の第2のモードの手法によれば、上記のように大きな信号変化を確実に最大値画像の画素値に反映することができ、精度の良いマスク画像を安定的に生成することができる。
【0078】
なお、腸管の蠕動運動などの影響により血管以外からの信号の大きさが大きく変化することがある。そして第2のモードの手法によれば、このような信号変化が最大値画像の画素値に反映されてしまうことがある。しかしながら腸管の蠕動運動は心臓の動きとは無関係であるために、このような画素値は、収縮期付近の時相に関するECG−prep画像と拡張期付近の時相に関するECG−prep画像との差分画像から選択される確率は低い。一方、血管からの信号は、多くの場合は収縮期と拡張期との間でその差が最大となる。このため、血管からの信号の大きさの大きな変化を表した画素値は、収縮期付近の時相に関するECG−prep画像と拡張期付近の時相に関するECG−prep画像との差分画像から選択される確率が高く、そのような画素値が最大値画像に最も多く含まれる。第2のモードにおいては、画素値が閾値よりも大きくても、その画素値が最大頻度画像から選択されたものでなければ、マスク値としては「0」を設定するようにしているから、腸管の蠕動運動などの影響を排除した高精度なマスク画像を生成することができる。
【0079】
図10はマスク画像の一例を示す図である。図10では、マスク画像におけるマスク値が「1」である画素を白色で表している。マスク画像におけるマスク値が「0」である画素については最大値画像における画素値を適用することによって、最大値画像をマスク画像の背景画像として表している。さらに、最大値画像における画素値は閾値以上であるものの、その画素値が最大頻度画像から選択されたものではないためにマスク値が「0」とされている画素については、明度を低減して表している。かくして、例えば符号50を付して示すようなシミのように見える部分が、腸管の蠕動運動などの影響により信号の大きさが大きく変化していた領域に相当する。
【0080】
(第3の実施形態)
第3の実施形態に係るMRI装置の概略構成はMRI装置100と同様である。
【0081】
第3の実施形態と第1の実施形態との相違は、ホスト計算機6が予め定められたソフトウエア手順を実行することにより実現される各種の制御機能に、位置決めのための参照画像をECG−prep画像に基づいて生成する機能をさらに含む。
【0082】
以下、第3の実施形態によりFlow-Spoiled FBI法による撮像を行う場合の動作について説明する。なおここでは、被検体200の下肢に関するコロナル像をFlow-Spoiled FBI法により撮像する場合の動作について説明することとする。
【0083】
図11はFlow-Spoiled FBI法による撮像を行う場合のホスト計算機6の処理のフローチャートである。
【0084】
ステップSe1乃至ステップSe11の処理ループにおいてホスト計算機6は、変数STを1からNstまで1つづつ増加させながら、ステップSe2乃至ステップSe10の処理を繰り返す。なおNstは、Flow-Spoiled FBI法によるMRスキャンの対象となる領域を複数回に分割してスキャンする場合の分割数、すなわちいわゆるステージ数である。
【0085】
ステップSe2においてホスト計算機6は、ST番目のステージを撮像するのに適する位置まで被検体200を移動するように寝台の天板を移動させる。
【0086】
ステップSe3においてホスト計算機6は、ステージ中心に関するコロナル面についてのパイロットスキャンを実行するようにシーケンサ5に指示する。この指示に応じてシーケンサ5は、パイロット画像を得るためのパイロットスキャンを周知の手順で実行する。
【0087】
ステップSe4においてホスト計算機6は、上記のパイロット画像を参照画像として利用して、サジタル面についてのECG−prepスキャンのための位置決めを行う。なおこの位置決めは、ホスト計算機6が自動的に行っても良いし、操作者が判断して指定した位置の情報を取り込むことによって行っても良い。なお、後者の場合には、パイロット画像を参照画像として表示器12に表示させるなどして操作者に提示する。
【0088】
ステップSe5においてホスト計算機6は、ステップSe4で決定した位置のサジタル面についてのECG−prepを実行するようにシーケンサ5に指示する。この指示に応じてシーケンサ5は、指定されたサジタル面を対象としたECG−prepスキャンを例えば特許文献2に記載されている手順で実行する。
【0089】
ステップSe6においてホスト計算機6は、ステップSe5で得られた複数のECG−prep画像に対して最大差分値投影(MDIP:maximum differential intensity projection)処理を実行する。この最大差分値投影処理としては、例えば図2におけるステップSa8乃至ステップSa11の処理、図6におけるステップSa8およびステップSb4の処理、ならびに図6におけるステップSb5の処理のいずれかを適用できる。すなわちホスト計算機6はこのステップSe6において、ステップSe5で得られた複数のECG−prep画像に基づいて前記第1または第2の実施形態において生成しているようなマスク画像を生成する。
【0090】
ステップSe7においてホスト計算機6は、ステップSe3において生成したパイロット画像と、上記のマスク画像とをそれぞれ参照画像として利用して、コロナル面についてのECG−prepスキャンのための位置決めを行う。上記のマスク画像は、第1の実施形態および第2の実施形態にて述べているように血管の特徴を抽出した画像であるから、これを参照画像として利用することで血管を撮像するのに適した位置決めを容易に行うことが可能である。しかも、上記のマスク画像はサジタル像であるから、被検体が下肢を直線状に伸ばしていない場合には、その下肢の状態を良好に表している。従って、上記のマスク画像を参照画像として利用することで、曲げられている下肢を撮像するのに適した位置決めを容易に行うことが可能である。なおこの位置決めは、ホスト計算機6が自動的に行っても良いし、操作者が判断して指定した位置の情報を取り込むことによって行っても良い。なお、後者の場合には、パイロット画像およびマスク画像を参照画像として表示器12に表示させるなどして操作者に提示する。
【0091】
ステップSe8においてホスト計算機6は、ステップSe7で決定した位置のコロナル面についてのECG−prepを実行するようにシーケンサ5に指示する。この指示に応じてシーケンサ5は、指定されたコロナル面を対象としたECG−prepスキャンを例えば特許文献2に記載されている手順で実行する。
【0092】
ステップSe9においてホスト計算機6は、ステップSe8で得られた複数のECG−prep画像に対して遅延時間決定処理を実行する。この最遅延時間決定処理としては、例えば図2におけるステップSa2乃至ステップSa14の処理を適用できる。すなわちホスト計算機6はこのステップSe9において、ステップSe8で得られた複数のECG−prep画像に基づいて、特許文献2に記載されるFlow-Spoiled FBI法に準拠したMRスキャン(以下、FS−FBIスキャンと称する)における遅延時間TDL1,TDL2としての候補としての遅延時間TDLa,TDLbを決定する。そしてホスト計算機6は、遅延時間TDLa,TDLbを、そのまま遅延時間TDL1,TDL2として自動的に設定するか、あるいは遅延時間TDLa,TDLbを遅延時間TDL1,TDL2の候補として操作者に提示して、操作者の修正,承認を受けて遅延時間TDL1,TDL2として設定する。
【0093】
ステップSe10においてホスト計算機6は、ステップSe3において生成したパイロット画像と、ステップSe6において生成されたマスク画像とをそれぞれ参照画像として利用して、FS−FBIスキャンの対象となる3次元領域の位置決めを行う。この位置決めも、マスク画像を参照することによってステップSe7での位置決めと同様に適切かつ容易に行うことが可能である。なおこの位置決めは、ホスト計算機6が自動的に行っても良いし、操作者が判断して指定した位置の情報を取り込むことによって行っても良い。なお、後者の場合には、パイロット画像およびステップSe6において生成されたマスク画像を参照画像として表示器12にそれぞれ表示させるなどして操作者に提示する。なお、パイロット画像に代えて、ステップSe9において生成されたマスク画像を参照画像として用いることもできる。
【0094】
かくして、ステップSe1乃至ステップSe11の処理ループが完了したとき、NstステージのそれぞれについてのFS−FBIスキャンのための位置決めが完了する。
【0095】
続いてステップSe12においてホスト計算機6は、基準位置まで被検体200を戻すように寝台の天板を移動させる。
【0096】
この後にホスト計算機6は、ステップSe1乃至ステップSe11の処理ループに移行する。ステップSe1乃至ステップSe11の処理ループにおいてホスト計算機6は、変数STを1からNstまで1つづつ増加させながら、ステップSe14およびステップSe15の処理を繰り返す。
【0097】
ステップSe14においてホスト計算機6は、ST番目のステージを撮像するのに適する位置まで被検体200を移動するように寝台の天板を移動させる。
【0098】
ステップSe15のおいてホスト計算機6は、ステップSe10にてST番目のステージに対して決定した位置のコロナル面についてのFS−FBIスキャンを実行するようにシーケンサ5に指示する。このときにホスト計算機6は、ステップSe9にてST番目のステージに対して決定した遅延時間TDL1,TDL2をシーケンサ5に通知する。これに応じてシーケンサ5は、指定された3次元領域を対象としたFS−FBIスキャンを例えば特許文献2に記載されている手順で実行する。
【0099】
かくして、ステップSe13乃至ステップSe16の処理ループが完了したとき、NstステージのそれぞれについてのFS−FBIスキャンが完了する。
【0100】
このように第3の実施形態によれば、最大差分値投影処理により生成されるマスク画像を、コロナル面についてのECG−prepスキャンおよびFS−FBIスキャンの位置決めのための参照画像として利用するので、血管の走行に沿った位置決めを上述したように適切かつ容易に行うことが可能である。
【0101】
この実施形態は、次のような種々の変形実施が可能である。
【0102】
(1) 遅延時間TDLa,TDLbの判定を行わずに、当該判定を操作者に行わせるようにしても良い。この場合、ステップSa13で求めた平均値を、対応する時相の遅延時間と対応付けて表す例えば図12あるいは図13に示すような画像を生成し、この画像を表示器12に表示させて操作者に提示する。そうすれば、操作者は比較的単純な数値の比較によって遅延時間TDLa,TDLbを判断することができる。これは、ECG−prep画像に基づいて遅延時間TDLa,TDLbを判断するのに比べて大幅に簡易である。なお、図12はROIが1つのみである場合の画像の一例を示し、図13はROIが5つである場合の画像の一例を示す。
【0103】
図12に示すようにカーソルCL,CHを表示させておくとともに、このカーソルCL,CHを操作者からの指示に応じて時間方向に移動させることとし、カーソルCLの位置に相当する遅延時間を遅延時間TDLaとし、カーソルCLの位置に相当する遅延時間を遅延時間TDLbとするようにすれば、操作者が判断した遅延時間TDLa,TDLbを数値入力する場合に比べて操作者の負担が軽減される。
【0104】
なお、このように操作者に提示する画像は、表形式などのような図12,図13とは異なる表現形式を使用したものとしても良い。
【0105】
前述の実施形態のように自動的に判定した遅延時間TDLa,TDLbに合わせてカーソルCL,CHを表した図12の様な画像を表示器12にて表示することによって、自動判定の結果を操作者が確認できるようにしても良い。この場合、カーソルCL,CHを操作者からの指示に応じて時間方向に移動させることとし、遅延時間TDLa,TDLbをマニュアルで調整できるようにしても良い。カーソルCL,CHの位置に相当する時相のECG−prep画像と基準画像との差分画像を表示器12にて表示するようにすれば、当該時相が遅延時間TDLa,TDLbを決定するのに適するかどうかを操作者が確認できるようになる。
【0106】
(2) ステップSa11においてそれぞれ異なる複数の閾値を使用して複数のマスク画像を生成し、ステップSa12およびステップSa13の処理をこれら複数のマスク画像をそれぞれ適用して行うことにより、1つの時相につき複数の平均値を得るようにしても良い。この場合、ステップSa14の処理は行わずに、上記の平均値を閾値毎の経時変化として表した図8に示すような画像として操作者に提示する。なお図14において、1番のカーブは閾値を「0.8」とした場合、2番のカーブは閾値を「0.5」とした場合、3番のカーブは閾値を「0.2」とした場合の一例を示している。
【0107】
図14から分かるように、閾値が変化しても平均値が最大になる時相および最小になる時相に大きな変化は生じないが、最大の平均値と最小の平均値との差が閾値が小さくなるにつれて小さくなる。これは、閾値が高いと、最も流量の変化の大きい点のみに、すなわち血流である確率が高い部分のみに着目していることになるのに対して、閾値が小さくなると、血管以外を抽出するエラーが多くなり、結果の信頼性が落ちるためである。しかしながら反面、閾値が小さくなるほど、より広く血管の情報を取得していることになる。
【0108】
このため、図14に示すような画像を操作者に提示することによって、操作者により多くの判断材料を提供することができることになる。例えば、閾値が大きいケースで時相Aを最大信号時相(拡張期)として抽出し、閾値が小さいケースで時相Bを最大信号時相(拡張期)として抽出したケースがあったとする。操作者は、この結果の違いから時相Aと時相Bの画像を見比べてより良い方を選択することができるようになる。
【0109】
(3) Flow-Spoiled FBI法のみならず、FBI法や、その他の心電同期撮像法を利用する場合に本発明を適用可能である。
【0110】
(4) ECG信号に代えて脈波信号を利用しても良い。すなわち例えば、被検体の指先に取り付けた脈波計によって得られる脈波信号に同期してMRスキャンを行うようにしても良い。脈波信号からは、心電信号に基づくのに比べて収縮期を判断することが困難である。しかしながら本願の各実施形態では、ECG信号に代えて脈波信号を利用しても、血管の特徴を良好に抽出した画像を生成することができ、これに基づいて遅延時間の決定や位置決めを良好に行うことが可能である。ただし、血流は前述のように最大となった後に最小になるのに対して、脈波は最小となった後に最大となるので、これを考慮した同期撮像を行う。なお、心電および脈波のいずれも、最初の時相は画像が乱れることがあるので、当該画像を解析から除外するようにしても良い。
【0111】
(5) 処理結果を例えば図15に示すような画面にて表示器12にて表示させるようにしても良い。なお図15に示す画面は、画像61〜64およびGUI65が配列表示されるとともに、画像66が重畳表示されている。画像61は、図4または図5に示される画像と同種の画像であり、ROIを設定するための画像である。画像62は、図10に示される画像と同種の画像であり、マスク画像を表す。画像63,64は、GUI65にて選択されている2つの時相間の差分画像を表す。なお、GUI65にて選択されている2つの時相の画像をそれぞれ第1の画像および第2の画像とするとき、第1の画像から第2の画像を引いて求まる差分画像が画像63であり、第2の画像から第1の画像を引いて求まる差分画像が画像64である。画像66は、図12または図13に示される画像と同種の画像であり、最適な時相を判断するためのグラフである。
【0112】
(6) 第2の実施形態において、ステップSb3、ステップSa8およびステップSb4を省略し、常に第2のマスク生成処理を行うようにしても良い。
【0113】
(7) 第3の実施形態において、ステップSe3におけるパイロットスキャンや、ステップSe5およびステップSe8におけるECG−prepスキャンのスライス面は、FS−FBIスキャンのスライス面に応じて変化する。すなわち、ステップSe8におけるECG−prepスキャンのスライス面は、FS−FBIスキャンのスライス面と同一とする。ステップSe5におけるECG−prepスキャンのスライス面は、FS−FBIスキャンのスライス面に直交する面とする。ステップSe3におけるパイロットスキャンのスライス面は、ステップSe5におけるECG−prepスキャンのスライス面に直交する面とする。
【0114】
(8) 第3の実施形態において、遅延時間決定処理は、従来より行われていたような操作者の指定を受け付ける処理としても良い。
【0115】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0116】
1…磁石、2…静磁場電源、3…傾斜磁場コイルユニット、3x…コイル、3y…コイル、3z…コイル、4…傾斜磁場電源、5…シーケンサ、6…ホスト計算機、7…RFコイル、8R…受信器、8T…送信器、10…演算ユニット、11…記憶ユニット、12…表示器、13…入力器、14…シムコイル、15…シムコイル電源、16…音声発生器、17…ECGセンサ、18…ECGユニット、100…MRI装置。
【技術分野】
【0001】
本発明は、FBI(fresh blood imaging)法、特にFlow-Spoiled FBI法のような心電同期撮像法を用いた撮像を行う磁気共鳴イメージング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気共鳴イメージング(MRI)におけるアンギオグラフィの一手法であるFBIおよびFlow-Spoiled FBI(FS−FBI)は、例えば特許文献1および特許文献2によってそれぞれ知られている。
【0003】
FBIは、造影剤を投与しないが、あたかも造影剤を投与したかの如く血流像を擬似的に表示できる非造影MRA法である。このFBIでは、ECG(electrocardiogram)またはPPG等に基づいて被検体の心時相に同期させてスキャンすることにより、心臓から拍出された速い流速の血流を捕捉し、良好に血管を描出する。具体的には、FBIは、心電同期によるトリガー信号(例えばR波)からデータ収集開始時刻までの遅延時間を異ならせて、拡張期および収縮期において3次元スキャンを行い、得られた2つのデータを差分することにより動脈血流画像を生成する。そして必要に応じて、拡張期画像(動静脈血流画像)から動脈血流画像を差分することにより静脈血流画像を得ることができる。データ差分処理は、実空間に変換された画像同士を差分演算することが典型的だが、マトリクスサイズが同じk空間上のエコーデータを差分演算し、その差分エコーデータに基づいて画像を再構成しても良い。
【0004】
一方、下肢MRAでは動静脈いずれも流速が遅く、FBIでは動静脈分離をすることが難しいことがある。そこでFS−FBIでは、収縮期においてspoilerパルス(flow spoiledパルス)が付加された傾斜磁場によりイメージングを行う。これにより、収縮期における動脈信号が抑制されることになり、動静脈分離を行うことができる。spoilerパルスは読み出し傾斜磁場波形の前後に付加されるのが典型的だが、位相エンコード傾斜磁場の波形に付加しても良い。また血管走行方向に読み出しエンコード方向を設定すれば、flow-dephasing効果による動脈信号を更に抑制することができるが、読み出しエンコードはその他の方向に設定されても良い。要は、位相エンコード方向を血流方向(血管走行方向)と同方向に設定した場合はアーチファクトが血管と重なり、flow voidが得られなくなるため位相エンコード方向が血流方向以外に設定されることで、動脈信号の信号抑制効果は得られる。
【0005】
これらのイメージング法では、撮像条件の一パラメータとして遅延時間がある。この遅延時間は、操作者によって設定される。具体的には操作者は、ECG−prepスキャンによって得られた複数の時相の画像を見比べて、最も状態の良い画像が得られた時相と基準時相(例えばR波が発生する時相)との時間差を上記の遅延時間として設定する。なおECG−prepスキャンとは、予め同期タイミングを決めるための準備用のパルスシーケンスを実行する準備用のスキャンである。そしてECG−prepスキャンでは、ECG信号の基準時相からの遅延時間がそれぞれ異なる複数の時相のそれぞれにおいて被検体を撮像する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−5144号公報
【特許文献2】特開2002−200054号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
以上のように従来は、ECG−prepスキャンにより得られた画像に基づいて、操作者が適切な遅延時間を判断しなければならなかった。このため、操作者の負担が大きい上に、必ずしも適切な遅延時間が撮像条件として設定されるとは限らなかった。
【0008】
本発明はこのような事情を考慮してなされたものであり、その目的とするところは、簡易かつ的確に遅延時間を設定可能とする磁気共鳴イメージング装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様による磁気共鳴イメージング装置は、同一スライスについて互いに異なる複数の心時相のそれぞれにおける複数セットのエコー信号を収集するプレップスキャンを実行するプレップスキャン部と、前記複数セットのエコー信号のそれぞれに基づいて、前記複数の心時相のそれぞれに関する複数のプレップ画像を生成するプレップ画像生成部と、前記複数のプレップ画像に基づいて、第1の心時相及び第2の心時相を決定する心時相決定部と、前記心時相決定部により決定された前記第1の心時相及び前記第2の心時相のそれぞれにおいてイメージングスキャンを実行して、イメージング用エコー信号を得るイメージングスキャン部と、前記イメージングスキャン部により得られた前記第1の心時相のエコー信号に基づいて第1の画像を生成し、前記第2の心時相のエコー信号に基づいて第2の画像を生成し、当該第1の画像と第2の画像を差分して差分画像を得るイメージング画像生成部とを備えた。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】第1の実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置(MRI装置)100の概略構成を示す図。
【図2】遅延時間TDL1,TDL2を判定するための第1の実施形態におけるホスト計算機6の処理のフローチャート。
【図3】第1の実施形態にてECG−prep画像とともに表示するGUIの一例を示す図。
【図4】単一のROIの設定例を示す図。
【図5】複数のROIの設定例を示す図。
【図6】遅延時間TDL1,TDL2を判定するための第2の実施形態におけるホスト計算機6の処理のフローチャート
【図7】第2の実施形態にてECG−prep画像とともに表示するGUIの一例を示す図。
【図8】図7中の第1のマスク生成処理でのホスト計算機6の処理手順を示すフローチャート
【図9】図7中の第2のマスク生成処理でのホスト計算機6の処理手順を示すフローチャート。
【図10】マスク画像の一例を示す図。
【図11】Flow-Spoiled FBI法による撮像を行う場合の第3の実施形態におけるホスト計算機6の処理のフローチャート
【図12】平均値を対応する時相の遅延時間と対応付けて表す画像の一例を示す図。
【図13】平均値を対応する時相の遅延時間と対応付けて表す画像の一例を示す図。
【図14】複数の閾値を使用して求めた複数の平均値のそれぞれの経時変化を表す画像の一例を示す図。
【図15】処理結果を表示するための画面の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して実施形態について説明する。
【0012】
(第1の実施形態)
図1はこの第1の実施形態にかかる磁気共鳴イメージング装置(MRI装置)100の概略構成を示す図である。
【0013】
このMRI装置100は、被検体200を載せる寝台部と、静磁場を発生させる静磁場発生部と、静磁場に位置情報を付加するための傾斜磁場発生部と、高周波信号を送受信する送受信部と、システム全体のコントロールおよび画像再構成を担う制御・演算部とを備えている。そしてMRI装置100はこれらの各部の構成要素として、磁石1、静磁場電源2、傾斜磁場コイルユニット3、傾斜磁場電源4、シーケンサ(シーケンスコントローラ)5、ホスト計算機6、RFコイル7、送信器8T、受信器8R、演算ユニット10、記憶ユニット11、表示器12、入力器13、シムコイル14、シムコイル電源15および音声発生器16を有する。またMRI装置100には、被検体200の心時相を表す信号としてのECG信号を計測する心電計測部が接続されている。
【0014】
静磁場発生部は、磁石1と静磁場電源2とを含む。磁石1としては、例えば超電導磁石や常電導磁石が利用可能である。静磁場電源2は、磁石1に電流を供給する。かくして静磁場発生部は、被検体200が送り込まれる円筒状の空間(診断用空間)の軸方向(Z軸方向)に静磁場H0を発生させる。なお、この静磁場発生部にはシムコイル14が設けられている。このシムコイル14には、ホスト計算機6の制御下でのシムコイル電源15からの電流供給によって静磁場均一化のための補正磁場を発生する。
【0015】
寝台部は、被検体200を載せた天板を、診断用空間に送り込んだり、診断用空間から抜き出したりできる。
【0016】
傾斜磁場発生部は、傾斜磁場コイルユニット3および傾斜磁場電源4を含む。傾斜磁場コイルユニット3は、磁石1に組み込まれる。傾斜磁場コイルユニット3は、互いに直交するX軸方向、Y軸方向およびZ軸方向のそれぞれの傾斜磁場を発生させるための3組のコイル3x,3y,3zを備える。傾斜磁場電源4は、シーケンサ5の制御の下で、コイル3x、コイル3yおよびコイル3zに傾斜磁場を発生させるためのパルス電流を供給する。傾斜磁場発生部は、傾斜磁場電源4からコイル3x,3y,3zに供給するパルス電流を制御することにより、物理軸である3軸(X軸,Y軸,Z軸)方向のそれぞれの傾斜磁場を合成して、互いに直交するスライス方向傾斜磁場GS、位相エンコード方向傾斜磁場GE、および読出し方向(周波数エンコード方向)傾斜磁場GRから成る論理軸方向を任意に設定する。スライス方向、位相エンコード方向および読出し方向の各傾斜磁場は静磁場H0に重畳される。
【0017】
送受信部は、RFコイル7、送信器8Tおよび受信器8Rを含む。RFコイル7は、磁石1内の診断用空間にて被検体200の近傍に配設される。送信器8Tおよび受信器8Rは、コイル7に接続さる。送信器8Tおよび受信器8Rは、シーケンサ5の制御の下で動作する。送信器8Tは、核磁気共鳴(NMR)を励起させるためのラーモア周波数のRF電流パルスをRFコイル7に供給する。受信器8Rは、RFコイル7が受信したエコー信号などのMR信号(高周波信号)を取り込み、これに前置増幅、中間周波変換、位相検波、低周波増幅、あるいはフィルタリングなどの各種の信号処理を施した後、A/D変換してデジタルデータ(原データ)を生成する。
【0018】
制御・演算部は、シーケンサ5、ホスト計算機6、演算ユニット10、記憶ユニット11、表示器12、入力器13および音声発生器16を含む。
【0019】
ホスト計算機6は、予め定められたソフトウエア手順を実行することにより実現される各種の制御機能を有している。この制御機能の1つは、シーケンサ5にパルスシーケンス情報を指令するとともに、装置全体の動作を統括する機能である。上記の制御機能の1つは、Flow-Spoiled FBI法によるMRスキャンを実現するように各部を制御する機能である。上記の制御機能の1つは、Flow-Spoiled FBI法によるMRスキャンにおける撮像条件のパラメータである遅延時間TDL1,TDL2を自動判定する機能である。
【0020】
シーケンサ5は、CPUおよびメモリを備えている。シーケンサ5は、ホスト計算機6から送られてきたパルスシーケンス情報をメモリに記憶する。シーケンサ5のCPUは、メモリに記憶したシーケンス情報にしたがって、傾斜磁場電源4、送信器8Tおよび受信器8Rの動作を制御するとともに、受信器8Rが出力した原データを一旦入力し、これを演算ユニット10に転送する。ここで、パルスシーケンス情報とは、一連のパルスシーケンスにしたがって傾斜磁場電源4、送信器8Tおよび受信器8Rを動作させるために必要な全ての情報であり、例えばコイル3x,3y,3zに印加するパルス電流の強度、印加時間および印加タイミングなどに関する情報を含む。
【0021】
このパルスシーケンスとしては、フーリエ変換法を適用したものであれば、2次元(2D)スキャンまたは3次元(3D)スキャンのいずれであってもよい。また、そのパルス列の形態としては、SE(spin echo)法、FSE(fast spin echo)法、EPI(echo planar imaging)法、あるいはFASE(fast asymmetric SE)法など、SE系のパルス列が好適である。
【0022】
演算ユニット10は、受信器8Rが出力した原データを、シーケンサ5を通して入力する。演算ユニット10は、入力した原データを、内部メモリによるk空間(フーリエ空間または周波数空間とも呼ばれる)に配置し、このデータを1組毎に2次元または3次元のフーリエ変換に付して実空間の画像データに再構成する。また演算ユニット10は、必要に応じて、画像に関するデータの合成処理や差分演算処理(重付け差分処理も含む)も実行可能になっている。この合成処理には、画素毎に加算する処理や、最大値投影(MIP)処理などが含まれる。また、上記合成処理の別の例として、フーリエ空間上で複数フレームの軸の整合をとった上で、原データのまま1フレームの原データに合成するようにしてもよい。なお、加算処理には、単純加算処理、加算平均処理、あるいは重み付け加算処理などが含まれる。
【0023】
記憶ユニット11は、再構成された画像データや、上述の合成処理や差分処理が施された画像データを保管する。
【0024】
表示器12は、ユーザに提示するべき各種の画像をホスト計算機6の制御の下に表示する。
【0025】
入力器13は、操作者が希望する同期タイミング選択用のパラメータ情報、スキャン条件、パルスシーケンス、画像合成や差分の演算に関する情報などの各種の情報を入力する。入力器13は、入力した情報をホスト計算機6に送る。
【0026】
音声発生器16は、ホスト計算機6から指令があったときに、息止め開始および息止め終了のメッセージを音声として発する。
【0027】
心電計測部は、ECGセンサ17およびECGユニット18を含む。ECGセンサ17は、被検体200の体表に付着されており、被検体200のECG信号を電気信号(以下、センサ信号と称する)として検出する。ECGユニット18は、センサ信号にデジタル化処理を含む各種の処理を施した上で、ホスト計算機6およびシーケンサ5に出力する。この心電計測部としては、例えばベクトル心電計を用いることができる。この心電計測部によるセンサ信号は、ECG−prepスキャンと心電同期のイメージングスキャンとのそれぞれを実行するときにシーケンサ5にて必要に応じて用いられる。これにより、心電同期法の同期タイミングを適切に設定でき、この同期タイミングに基づく心電同期のイメージングスキャンを行ってデータ収集できるようになっている。
【0028】
次に以上のように構成されたMRI装置100の動作について説明する。
【0029】
MRI装置100は、Flow-Spoiled FBI法によるMRスキャンを行うことができる。このMRスキャンを実現するための動作としては、例えば特許文献2に記載されている動作を利用できる。ただしこのMRスキャンに先立ってホスト計算機6は、遅延時間TDL1,TDL2を判定するために以下のような処理を実行する。
【0030】
図2は遅延時間TDL1,TDL2を判定するためのホスト計算機6の処理のフローチャートである。
【0031】
ステップSa1においてホスト計算機6は、ECG−prepスキャンの実行をシーケンサ5に指示する。この指示に応じてシーケンサ5は、ECG−prepスキャンを例えば特許文献2に記載されている手順で実行する。このECG−prepスキャンにより、それぞれ異なる時相にそれぞれ関する複数の画像(以下、ECG−prep画像と称する)が得られる。例えば基準時相からの遅延時間が0〜900msecまでの100msec間隔の10時相にそれぞれ関する10枚のECG−prep画像が得られる。
【0032】
ステップSa2においてホスト計算機6は、上記のECG−prepスキャンにより得られた複数のECG−prep画像のうちの操作者により選択されたものを表示器12に表示させる。なおホスト計算機6は、このECG−prep画像を表示させる画面には、図3に示すようなGUI(graphical user interface)を併せて表示させる。
【0033】
ステップSa3およびステップSa4においてホスト計算機6は、ROI(region of interest)が指定されるか、あるいは図3に示すGUIに設けられたRunボタンB1が押下されるのを待ち受ける。
【0034】
ここで、ROIを指定する操作が入力器13を使用して操作者によりなされた場合には、ホスト計算機6はステップSa3からステップSa5へ進む。ステップSa5においてホスト計算機6は、操作者の操作に応じてROIを設定する。図4はROIの設定例を示す図である。1つのROIを設定し終えたならば、ホスト計算機6はステップSa3およびステップSa4の待ち受け状態に戻る。ROIを指定する操作が繰り返し行われるならば、ホスト計算機6はステップSa5を繰り返し実行し、複数のROIを設定する。図5は複数のROIの設定例を示す図である。図5では、円形のROIが5つ設定されている。
【0035】
一方、RunボタンB1を押下する操作がなされたならば、ホスト計算機6はステップSa4からステップSa6へ進む。ステップSa6においてホスト計算機6は、ROIを設定済みであるか否かを確認する。ROIを1つも設定していない場合、ホスト計算機6はステップSa6からステップSa7へ進む。そしてステップSa7においてホスト計算機6は、ECG−prep画像の全領域をROIとして設定する。こののちにホスト計算機6は、ステップSa8へ進む。なお、ROIが1つでも設定されていたならば、ホスト計算機6はステップSa7をパスしてステップSa6からステップSa8へ進む。
【0036】
ステップSa8においてホスト計算機6は、ECG−prep画像の1つを基準画像として決定する。具体的には、ホスト計算機6は、既定時間よりも小さな遅延時間の時相のうちで最も遅い時相に関するECG−prep画像を基準画像とする。例えば、規定時間が250msecであるならば、遅延時間が200msecである時相に関するECG−prep画像が基準画像に決定される。
【0037】
ところで、これまで遅延時間を操作者が設定する場合には、収縮期に最も近い時相に関するECG−prep画像を基準画像として用いることが一般的であった。しかしながらこの第1の実施形態で用いる基準画像は、収縮期に最も近い時相に関するECG−prep画像である必要がない。このため、上記の規定時間は撮像の毎に設定する必要がなく、固定的な値を適用できる。そして規定時間を固定的な値とすることにより、基準画像の決定を自動で行うことが可能であり、操作者の負担を軽減できる。なお規定時間は、デフォルト値としてMRI装置100の製造時に設定されても良いし、操作者により任意に設定されても良い。また規定時間は、撮像の毎に操作者により指定させるようにしても良い。あるいは、規定時間として初期値を定めておき、これの変更指定が操作者により行われた場合にはそれにより指定された値を規定時間とし、変更指定が操作者により行われなかった場合には初期値を規定時間としても良い。
【0038】
ステップSa9においてホスト計算機6は、基準画像と基準画像以外のECG−prep画像のそれぞれとの差分画像を生成する。前述した10枚のECG−prep画像があり、遅延時間が200msecである時相に関するECG−prep画像が基準画像に決定されているとするならば、遅延時間が200msecである時相に関するECG−prep画像と、遅延時間が0msec、100msecおよび300〜900msecである各時相に関するECG−prep画像との差分をそれぞれ取って9枚の差分画像が生成される。なおホスト計算機6は、ROIのみに関して差分画像を生成する。この差分画像は、基準画像に対する血流の変化分に応じた画素値を持った画像となる。
【0039】
ステップSa10においてホスト計算機6は、ステップSa9で生成した全ての差分画像を対象として最大値投影処理を行うことによって、1枚の最大値画像を生成する。この最大値画像は、最も血流の変化の大きいものだけを差分画像から拾い集めた画像となる。
【0040】
ステップSa11においてホスト計算機6は、最大値画像を二値化することによってマスク画像を生成する。ホスト計算機6は、上記の二値化のための閾値として、予め定められた値を用いても良いし、最大値画像における最大信号の大きさに係数を乗じることにより求める値としても良い。なお、上記の係数は1未満である。この係数についても予め定められた値を用いても良いし、操作者により指定された値としても良い。あるいは、例えば0.7といった初期値を定めておき、これの変更指定が操作者により行われた場合にはそれにより指定された値を係数とし、変更指定が操作者により行われなかった場合には初期値を係数としても良い。マスク画像は、最大値画像において閾値以上の信号強度を持つ画素の画素値を1とし、それ以外の画素の画素値を0とした画像となる。すなわちマスク画像は、血管であり得る部分の画素値を1とし、血管の可能性が低い部分の画素値を0とした画像であって、血管の特徴を抽出した画像である。
【0041】
ステップSa12においてホスト計算機6は、全てのECG−prep画像におけるROI内の画像のそれぞれとマスク画像とを画素毎に乗算することによって、複数の被マスク画像を生成する。前述した10枚のECG−prep画像があるならば、10枚の被マスク画像が生成されることになる。被マスク画像は、ECG−prep画像のROI内の画像から血管であり得る部分を抽出した画像となる。
【0042】
ステップSa13においてホスト計算機6は、被マスク画像のそれぞれに関して、被マスク画像内の全ての画素についての画素値の平均値を求める。これにより、被マスク画像の元になった複数のECG−prep画像のそれぞれの時相に対応して1つずつの平均値が求まることになる。前述した10枚のECG−prep画像があるならば、10個の時相のそれぞれに対応して1つずつ、すなわち全部で10個の平均値が求まることになる。
【0043】
ステップSa14においてホスト計算機6は、上記の複数の平均値に基づいて、遅延時間TDLa,TDLbをそれぞれ判定する。具体的には、ホスト計算機6は、ステップSa13で求めた複数の平均値のうちの最小値に対応する時相の基準時相からの遅延時間を遅延時間TDLbとする。またホスト計算機6は、ステップSa13で求めた平均値のうちの最大値に対応する時相の基準時相からの遅延時間TDLaとする。なお、一般に血流は、最小となった後に最大となる。このため、上記の最大値の検索は、上記の最小値に対応する時相よりも後の時相に関する平均値のみに関して行えば良い。
【0044】
なお、複数のROIが設定されている場合には、ROIのそれぞれに対応した複数組の平均値が求められることになる。この場合には、平均値の最小値と最大値との差が最大となる組における最大値および最小値を、遅延時間TDLa,TDLbを判定するために利用すれば良い。
【0045】
このようにして判定される遅延時間TDLa,TDLbは、特許文献2に記載されるFlow-Spoiled FBI法によるMRスキャンにおける遅延時間TDL1,TDL2としてそのまま利用できる。なおホスト計算機6は、遅延時間TDLa,TDLbを、そのまま遅延時間TDL1,TDL2として自動的に設定しても良いし、遅延時間TDLa,TDLbを遅延時間TDL1,TDL2の候補として操作者に提示して、操作者の修正,承認を受けて遅延時間TDL1,TDL2として設定しても良い。
【0046】
従って、操作者は、遅延時間TDL1,TDL2を判断する必要がなく、操作者の負担が軽減される。また、ECG−prep画像の性質に基づいて遅延時間TDL1,TDL2の候補値が自動的に求められるので、操作者が判断する場合に比べて確実に適切な遅延時間TDL1,TDL2としての値を判断することができる。
【0047】
なお、ECG−prep画像における血流部分を操作者が判断可能であるならば、その部分にROIを設定することによって、遅延時間TDL1,TDL2として利用するのにより適切な遅延時間TDL1,TDL2を判定することができる。しかしながら、操作者がROIを設定しないようにすれば、操作者の負担はさらに軽減される。
【0048】
(第2の実施形態)
第2の実施形態に係るMRI装置の概略構成はMRI装置100と同様である。
【0049】
第2の実施形態と第1の実施形態との相違は、遅延時間TDL1,TDL2を判定するためのホスト計算機6における処理にある。
【0050】
そこで以下に、遅延時間TDL1,TDL2を判定するためのホスト計算機6における第2の実施形態での処理について詳細に説明する。
【0051】
図6は遅延時間TDL1,TDL2を判定するためのホスト計算機6の処理のフローチャートである。なお、図2と同一のステップには同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0052】
ホスト計算機6は、第1の実施形態と同様にステップSa1およびステップSa2を処理した後に待ち受け状態となる。この待ち受け状態においてホスト計算機6は、ステップSa3およびステップSa4における確認に加えて、ステップSb1における確認を行う。このステップSb1においてホスト計算機6は、マスク生成モードの変更指示がなされるか否かを確認する。なおこのマスク生成モードの変更指示のために第2の実施形態にてホスト計算機6は、ステップSa2にてECG−prep画像を表示させる画面に合わせて表示するGUIを図7に示すようなものとする。図7に示すGUIには、オプションボタンB2,B3が配置されている。オプションボタンB2,B3は、一方が選択状態、他方が選択解除状態である。オプションボタンB2,B3は、第1および第2のモードにそれぞれ対応付けられている。
【0053】
オプションボタンB2,B3のうちの選択解除状態であるボタンがクリックされた場合にホスト計算機6は、マスク生成モードの変更が指示されたと判断し、ステップSb1からステップSb2へ進む。そしてステップSb2においてホスト計算機6は、クリックされたオプションボタンに対応付けられたモードを有効とするようにマスク生成モードを変更する。こののちにホスト計算機6は、ステップSa3、ステップSa4およびステップSb1の待ち受け状態に戻る。
【0054】
RunボタンB1を押下する操作がなされたならば、ホスト計算機6は第1の実施形態と同様にステップSa6およびステップSa7を処理したのちにステップSb3へ進む。ステップSb3においてホスト計算機6は、マスク生成モードが第1のモードおよび第2のモードのいずれであるかを確認する。
【0055】
マスク生成モードが第1のモードであるならば、ホスト計算機6はステップSb3からステップSa8へ進む。そしてホスト計算機6は、ステップSa8において第1の実施形態と同様にして基準画像を決定した上で、ステップSb4において第1のマスク生成処理を実行する。
【0056】
図8は第1のマスク生成処理におけるホスト計算機6の処理手順を示すフローチャートである。
【0057】
ステップSc1乃至ステップSc4の処理ループにおいてホスト計算機6は、変数Pを1からnまで1つづつ増加させながら、ステップSc2およびステップSc3の処理を繰り返す。なおnは、ステップSa1において得られるECG−prep画像の数である。
【0058】
ステップSc2においてホスト計算機6は、P番目のECG−prep画像とステップSa9で決定した基準画像との差分画像を生成する。つぎにステップSc3においてホスト計算機6は、今回の第1のマスク生成処理において既に生成された最大値画像とステップSc2で生成した差分画像とを対象として最大値投影処理を行うことによって、1枚の最大値画像を生成する。変数Pが「1」であるときには、今回の第1のマスク生成処理における最大値投影が初めて行われるのであって、最大値画像はまだ生成されていないから、1番目のECG−prep画像と基準画像との差分画像がそのまま最大値画像とされる。
【0059】
かくして、ステップSc1乃至ステップSc4の処理ループが完了したとき、1枚の最大値画像が得られる。つまり、このステップSc1乃至ステップSc4の処理ループにおける処理は、詳細な処理手順は異なっているものの、第1の実施形態におけるステップSa9およびステップSa10の処理と同様な結果が得られる。
【0060】
こののちにステップSc5乃至ステップSc9の処理ループにおいてホスト計算機6は、最大値画像の全画素のそれぞれを順次に処理対象としながら、ステップSc6乃至ステップSc8の処理を繰り返す。
【0061】
ステップSc6においてホスト計算機6は、処理対象となっている画素の画素値が閾値よりも大きいか否かを確認する。ここで用いる閾値は、第1の実施形態におけるステップSa11にて利用する閾値と同じものである。そしてホスト計算機6は、画素値が閾値よりも大きいと判断したならばステップSc6からステップSc7へ進み、処理対象となっている画素に対応するマスク値を「1」とする。これに対してホスト計算機6は、画素値が閾値以下であると判断したならばステップSc6からステップSc8へ進み、処理対象となっている画素に対応するマスク値を「0」とする。
【0062】
かくして、ステップSc5乃至ステップSc9の処理ループが完了したとき、最大値画像の全画素を閾値によりそれぞれ二値化したマスク画像が得られる。つまり、このステップSc5乃至ステップSc9の処理ループにおける処理は、詳細な処理手順は異なっているものの、第1の実施形態におけるステップSa11の処理と同様な結果が得られる。
【0063】
一方、マスク生成モードが第2のモードであるならば、ホスト計算機6は図6におけるステップSb3からステップSb5へ進む。そしてステップSb5においてホスト計算機6は、第2のマスク生成処理を実行する。
【0064】
図9は第2のマスク生成処理におけるホスト計算機6の処理手順を示すフローチャートである。
【0065】
ステップSd1乃至ステップSd6の処理ループにおいてホスト計算機6は、変数P1を「1」から「n−1」まで1つづつ増加させながら、ステップSd2乃至ステップSd5の処理ループを繰り返し実行する。
【0066】
ステップSd2乃至ステップSd5の処理ループにおいてホスト計算機6は、変数P2を「P1+1」から「n」まで1つづつ増加させながら、ステップSd3およびステップSd4の処理を繰り返し実行する。
【0067】
ステップSd3においてホスト計算機6は、P1番目のECG−prep画像とP2番目のECG−prep画像との差分画像を生成する。つぎにステップSd4においてホスト計算機6は、今回の第2のマスク生成処理において既に生成された最大値画像とステップSd3で生成した差分画像とを対象として最大値投影処理を行うことによって、1枚の最大値画像を生成する。変数P1が「1」であるときには、今回の第2のマスク生成処理における最大値投影が初めて行われるのであって、最大値画像はまだ生成されていないから、1番目のECG−prep画像と2番目のECG−prep画像との差分画像がそのまま最大値画像とされる。なおホスト計算機6は、最大値画像の各画素について最大値投影処理で選択した画素値の選択元の差分画像がいずれであるかを記録しておく。
【0068】
かくしてステップSd1乃至ステップSd6の処理ループが完了したとき、1枚の最大値画像が得られる。この最大値画像は、n枚のECG−prep画像のうちの2枚を選択する全ての組み合わせ(nC2通り)のそれぞれについて生成した差分画像の全てを対象として最大値投影処理を行うことによって得られたものである。
【0069】
次にステップSd7乃至ステップSd10の処理ループにおいてホスト計算機6は、最大値画像の全画素のそれぞれを順次に処理対象としながら、ステップSd8およびステップSd9の処理を繰り返す。
【0070】
ステップSd8においてホスト計算機6は、処理対象となっている画素の画素値が閾値よりも大きいか否かを確認する。ここで用いる閾値は、第1の実施形態におけるステップSa11にて利用する閾値と同じものである。そしてホスト計算機6は、画素値が閾値よりも大きいと判断したならばステップSd8からステップSd9へ進み、処理対象となっている画素の画素値の選択元の差分画像についての頻度値F(P1,P2)を1つ増やす。具体的には、例えば処理対象となっている画素の画素値が3番目および8番目のECG−prep画像の差分画像から選択されたものであるならば、頻度値F(3,8)が1つ増やされる。なお頻度値F(P1,P2)の初期値は、例えば「0」などの共通の値に揃えられる。これに対してホスト計算機6は、画素値が閾値以下であると判断したならばステップSd8からステップSd10へ進み、頻度値F(P1,P2)のいずれも変更しない。
【0071】
かくしてステップSd7乃至ステップSd10の処理ループが完了したとき、複数の差分画像のそれぞれについて、当該差分画像から最大値統制処理において画素が選択された頻度を表す頻度値F(P1,P2)が求められる。
【0072】
次にステップSd11乃至ステップSd16の処理ループにおいてホスト計算機6は、最大値画像の全画素のそれぞれを順次に処理対象としながら、ステップSd12およびステップSd15の処理を繰り返す。
【0073】
ステップSd12およびステップSd13においてホスト計算機6は、処理対象となっている画素の画素値が最大頻度画像から選択されたものであり、かつ当該画素値が閾値よりも大きいか否かを確認する。ここで最大頻度画像とは、頻度値F(P1,P2)が最も大きくなった差分画像のことである。また閾値は、ステップSd8にて利用する閾値と同じものである。
【0074】
上記の条件に合致すると判断した場合にホスト計算機6は、ステップSd13からステップSd14へ進み、処理対象となっている画素に対応するマスク値を「1」とする。これに対してホスト計算機6は、上記の条件に合致しないと判断したならばステップSd12またはステップSd13からステップSd15へ進み、処理対象となっている画素に対応するマスク値を「0」とする。
【0075】
かくして、ステップSd11乃至ステップSd16の処理ループが完了したとき、最大頻度画像から選択されているとともに、閾値よりも大きい画素値を持った画素に対応したマスク値のみを「1」とし、その他の画素に対応したマスク値を「0」として二値化したマスク画像が得られる。
【0076】
以上のような第1のマスク生成処理または第2のマスク生成処理が終了したのちにホスト計算機6は、ステップSa12乃至ステップSa14を第1の実施形態と同様に処理する。
【0077】
かくして、マスク生成モードが第1のモードである場合には、実質的に第1の実施形態と同様な手法により遅延時間TDLa,TDLbがそれぞれ判定される。しかしながらマスク生成モードが第2のモードである場合には、n枚のECG−prep画像のうちの2枚を選択するnC2通りの全ての組み合わせのそれぞれについて差分画像を生成し、これらの差分画像の全てを対象として最大値投影処理を行うことによって得られる最大値画像に基づいてマスク画像を生成している。このため、第1の実施形態にて基準画像とされるECG−prep画像以外のECG−prep画像どうしにおいてより大きな信号変化が生じている場合には、それを考慮してマスク画像を生成することができる。第1の実施形態では、基準画像としていずれの時相に関したECG−prep画像が選択されるかによって最大値画像の画素値の大きさが変動するために、マスク画像の精度が変動し易い。しかし第2の実施形態の第2のモードの手法によれば、上記のように大きな信号変化を確実に最大値画像の画素値に反映することができ、精度の良いマスク画像を安定的に生成することができる。
【0078】
なお、腸管の蠕動運動などの影響により血管以外からの信号の大きさが大きく変化することがある。そして第2のモードの手法によれば、このような信号変化が最大値画像の画素値に反映されてしまうことがある。しかしながら腸管の蠕動運動は心臓の動きとは無関係であるために、このような画素値は、収縮期付近の時相に関するECG−prep画像と拡張期付近の時相に関するECG−prep画像との差分画像から選択される確率は低い。一方、血管からの信号は、多くの場合は収縮期と拡張期との間でその差が最大となる。このため、血管からの信号の大きさの大きな変化を表した画素値は、収縮期付近の時相に関するECG−prep画像と拡張期付近の時相に関するECG−prep画像との差分画像から選択される確率が高く、そのような画素値が最大値画像に最も多く含まれる。第2のモードにおいては、画素値が閾値よりも大きくても、その画素値が最大頻度画像から選択されたものでなければ、マスク値としては「0」を設定するようにしているから、腸管の蠕動運動などの影響を排除した高精度なマスク画像を生成することができる。
【0079】
図10はマスク画像の一例を示す図である。図10では、マスク画像におけるマスク値が「1」である画素を白色で表している。マスク画像におけるマスク値が「0」である画素については最大値画像における画素値を適用することによって、最大値画像をマスク画像の背景画像として表している。さらに、最大値画像における画素値は閾値以上であるものの、その画素値が最大頻度画像から選択されたものではないためにマスク値が「0」とされている画素については、明度を低減して表している。かくして、例えば符号50を付して示すようなシミのように見える部分が、腸管の蠕動運動などの影響により信号の大きさが大きく変化していた領域に相当する。
【0080】
(第3の実施形態)
第3の実施形態に係るMRI装置の概略構成はMRI装置100と同様である。
【0081】
第3の実施形態と第1の実施形態との相違は、ホスト計算機6が予め定められたソフトウエア手順を実行することにより実現される各種の制御機能に、位置決めのための参照画像をECG−prep画像に基づいて生成する機能をさらに含む。
【0082】
以下、第3の実施形態によりFlow-Spoiled FBI法による撮像を行う場合の動作について説明する。なおここでは、被検体200の下肢に関するコロナル像をFlow-Spoiled FBI法により撮像する場合の動作について説明することとする。
【0083】
図11はFlow-Spoiled FBI法による撮像を行う場合のホスト計算機6の処理のフローチャートである。
【0084】
ステップSe1乃至ステップSe11の処理ループにおいてホスト計算機6は、変数STを1からNstまで1つづつ増加させながら、ステップSe2乃至ステップSe10の処理を繰り返す。なおNstは、Flow-Spoiled FBI法によるMRスキャンの対象となる領域を複数回に分割してスキャンする場合の分割数、すなわちいわゆるステージ数である。
【0085】
ステップSe2においてホスト計算機6は、ST番目のステージを撮像するのに適する位置まで被検体200を移動するように寝台の天板を移動させる。
【0086】
ステップSe3においてホスト計算機6は、ステージ中心に関するコロナル面についてのパイロットスキャンを実行するようにシーケンサ5に指示する。この指示に応じてシーケンサ5は、パイロット画像を得るためのパイロットスキャンを周知の手順で実行する。
【0087】
ステップSe4においてホスト計算機6は、上記のパイロット画像を参照画像として利用して、サジタル面についてのECG−prepスキャンのための位置決めを行う。なおこの位置決めは、ホスト計算機6が自動的に行っても良いし、操作者が判断して指定した位置の情報を取り込むことによって行っても良い。なお、後者の場合には、パイロット画像を参照画像として表示器12に表示させるなどして操作者に提示する。
【0088】
ステップSe5においてホスト計算機6は、ステップSe4で決定した位置のサジタル面についてのECG−prepを実行するようにシーケンサ5に指示する。この指示に応じてシーケンサ5は、指定されたサジタル面を対象としたECG−prepスキャンを例えば特許文献2に記載されている手順で実行する。
【0089】
ステップSe6においてホスト計算機6は、ステップSe5で得られた複数のECG−prep画像に対して最大差分値投影(MDIP:maximum differential intensity projection)処理を実行する。この最大差分値投影処理としては、例えば図2におけるステップSa8乃至ステップSa11の処理、図6におけるステップSa8およびステップSb4の処理、ならびに図6におけるステップSb5の処理のいずれかを適用できる。すなわちホスト計算機6はこのステップSe6において、ステップSe5で得られた複数のECG−prep画像に基づいて前記第1または第2の実施形態において生成しているようなマスク画像を生成する。
【0090】
ステップSe7においてホスト計算機6は、ステップSe3において生成したパイロット画像と、上記のマスク画像とをそれぞれ参照画像として利用して、コロナル面についてのECG−prepスキャンのための位置決めを行う。上記のマスク画像は、第1の実施形態および第2の実施形態にて述べているように血管の特徴を抽出した画像であるから、これを参照画像として利用することで血管を撮像するのに適した位置決めを容易に行うことが可能である。しかも、上記のマスク画像はサジタル像であるから、被検体が下肢を直線状に伸ばしていない場合には、その下肢の状態を良好に表している。従って、上記のマスク画像を参照画像として利用することで、曲げられている下肢を撮像するのに適した位置決めを容易に行うことが可能である。なおこの位置決めは、ホスト計算機6が自動的に行っても良いし、操作者が判断して指定した位置の情報を取り込むことによって行っても良い。なお、後者の場合には、パイロット画像およびマスク画像を参照画像として表示器12に表示させるなどして操作者に提示する。
【0091】
ステップSe8においてホスト計算機6は、ステップSe7で決定した位置のコロナル面についてのECG−prepを実行するようにシーケンサ5に指示する。この指示に応じてシーケンサ5は、指定されたコロナル面を対象としたECG−prepスキャンを例えば特許文献2に記載されている手順で実行する。
【0092】
ステップSe9においてホスト計算機6は、ステップSe8で得られた複数のECG−prep画像に対して遅延時間決定処理を実行する。この最遅延時間決定処理としては、例えば図2におけるステップSa2乃至ステップSa14の処理を適用できる。すなわちホスト計算機6はこのステップSe9において、ステップSe8で得られた複数のECG−prep画像に基づいて、特許文献2に記載されるFlow-Spoiled FBI法に準拠したMRスキャン(以下、FS−FBIスキャンと称する)における遅延時間TDL1,TDL2としての候補としての遅延時間TDLa,TDLbを決定する。そしてホスト計算機6は、遅延時間TDLa,TDLbを、そのまま遅延時間TDL1,TDL2として自動的に設定するか、あるいは遅延時間TDLa,TDLbを遅延時間TDL1,TDL2の候補として操作者に提示して、操作者の修正,承認を受けて遅延時間TDL1,TDL2として設定する。
【0093】
ステップSe10においてホスト計算機6は、ステップSe3において生成したパイロット画像と、ステップSe6において生成されたマスク画像とをそれぞれ参照画像として利用して、FS−FBIスキャンの対象となる3次元領域の位置決めを行う。この位置決めも、マスク画像を参照することによってステップSe7での位置決めと同様に適切かつ容易に行うことが可能である。なおこの位置決めは、ホスト計算機6が自動的に行っても良いし、操作者が判断して指定した位置の情報を取り込むことによって行っても良い。なお、後者の場合には、パイロット画像およびステップSe6において生成されたマスク画像を参照画像として表示器12にそれぞれ表示させるなどして操作者に提示する。なお、パイロット画像に代えて、ステップSe9において生成されたマスク画像を参照画像として用いることもできる。
【0094】
かくして、ステップSe1乃至ステップSe11の処理ループが完了したとき、NstステージのそれぞれについてのFS−FBIスキャンのための位置決めが完了する。
【0095】
続いてステップSe12においてホスト計算機6は、基準位置まで被検体200を戻すように寝台の天板を移動させる。
【0096】
この後にホスト計算機6は、ステップSe1乃至ステップSe11の処理ループに移行する。ステップSe1乃至ステップSe11の処理ループにおいてホスト計算機6は、変数STを1からNstまで1つづつ増加させながら、ステップSe14およびステップSe15の処理を繰り返す。
【0097】
ステップSe14においてホスト計算機6は、ST番目のステージを撮像するのに適する位置まで被検体200を移動するように寝台の天板を移動させる。
【0098】
ステップSe15のおいてホスト計算機6は、ステップSe10にてST番目のステージに対して決定した位置のコロナル面についてのFS−FBIスキャンを実行するようにシーケンサ5に指示する。このときにホスト計算機6は、ステップSe9にてST番目のステージに対して決定した遅延時間TDL1,TDL2をシーケンサ5に通知する。これに応じてシーケンサ5は、指定された3次元領域を対象としたFS−FBIスキャンを例えば特許文献2に記載されている手順で実行する。
【0099】
かくして、ステップSe13乃至ステップSe16の処理ループが完了したとき、NstステージのそれぞれについてのFS−FBIスキャンが完了する。
【0100】
このように第3の実施形態によれば、最大差分値投影処理により生成されるマスク画像を、コロナル面についてのECG−prepスキャンおよびFS−FBIスキャンの位置決めのための参照画像として利用するので、血管の走行に沿った位置決めを上述したように適切かつ容易に行うことが可能である。
【0101】
この実施形態は、次のような種々の変形実施が可能である。
【0102】
(1) 遅延時間TDLa,TDLbの判定を行わずに、当該判定を操作者に行わせるようにしても良い。この場合、ステップSa13で求めた平均値を、対応する時相の遅延時間と対応付けて表す例えば図12あるいは図13に示すような画像を生成し、この画像を表示器12に表示させて操作者に提示する。そうすれば、操作者は比較的単純な数値の比較によって遅延時間TDLa,TDLbを判断することができる。これは、ECG−prep画像に基づいて遅延時間TDLa,TDLbを判断するのに比べて大幅に簡易である。なお、図12はROIが1つのみである場合の画像の一例を示し、図13はROIが5つである場合の画像の一例を示す。
【0103】
図12に示すようにカーソルCL,CHを表示させておくとともに、このカーソルCL,CHを操作者からの指示に応じて時間方向に移動させることとし、カーソルCLの位置に相当する遅延時間を遅延時間TDLaとし、カーソルCLの位置に相当する遅延時間を遅延時間TDLbとするようにすれば、操作者が判断した遅延時間TDLa,TDLbを数値入力する場合に比べて操作者の負担が軽減される。
【0104】
なお、このように操作者に提示する画像は、表形式などのような図12,図13とは異なる表現形式を使用したものとしても良い。
【0105】
前述の実施形態のように自動的に判定した遅延時間TDLa,TDLbに合わせてカーソルCL,CHを表した図12の様な画像を表示器12にて表示することによって、自動判定の結果を操作者が確認できるようにしても良い。この場合、カーソルCL,CHを操作者からの指示に応じて時間方向に移動させることとし、遅延時間TDLa,TDLbをマニュアルで調整できるようにしても良い。カーソルCL,CHの位置に相当する時相のECG−prep画像と基準画像との差分画像を表示器12にて表示するようにすれば、当該時相が遅延時間TDLa,TDLbを決定するのに適するかどうかを操作者が確認できるようになる。
【0106】
(2) ステップSa11においてそれぞれ異なる複数の閾値を使用して複数のマスク画像を生成し、ステップSa12およびステップSa13の処理をこれら複数のマスク画像をそれぞれ適用して行うことにより、1つの時相につき複数の平均値を得るようにしても良い。この場合、ステップSa14の処理は行わずに、上記の平均値を閾値毎の経時変化として表した図8に示すような画像として操作者に提示する。なお図14において、1番のカーブは閾値を「0.8」とした場合、2番のカーブは閾値を「0.5」とした場合、3番のカーブは閾値を「0.2」とした場合の一例を示している。
【0107】
図14から分かるように、閾値が変化しても平均値が最大になる時相および最小になる時相に大きな変化は生じないが、最大の平均値と最小の平均値との差が閾値が小さくなるにつれて小さくなる。これは、閾値が高いと、最も流量の変化の大きい点のみに、すなわち血流である確率が高い部分のみに着目していることになるのに対して、閾値が小さくなると、血管以外を抽出するエラーが多くなり、結果の信頼性が落ちるためである。しかしながら反面、閾値が小さくなるほど、より広く血管の情報を取得していることになる。
【0108】
このため、図14に示すような画像を操作者に提示することによって、操作者により多くの判断材料を提供することができることになる。例えば、閾値が大きいケースで時相Aを最大信号時相(拡張期)として抽出し、閾値が小さいケースで時相Bを最大信号時相(拡張期)として抽出したケースがあったとする。操作者は、この結果の違いから時相Aと時相Bの画像を見比べてより良い方を選択することができるようになる。
【0109】
(3) Flow-Spoiled FBI法のみならず、FBI法や、その他の心電同期撮像法を利用する場合に本発明を適用可能である。
【0110】
(4) ECG信号に代えて脈波信号を利用しても良い。すなわち例えば、被検体の指先に取り付けた脈波計によって得られる脈波信号に同期してMRスキャンを行うようにしても良い。脈波信号からは、心電信号に基づくのに比べて収縮期を判断することが困難である。しかしながら本願の各実施形態では、ECG信号に代えて脈波信号を利用しても、血管の特徴を良好に抽出した画像を生成することができ、これに基づいて遅延時間の決定や位置決めを良好に行うことが可能である。ただし、血流は前述のように最大となった後に最小になるのに対して、脈波は最小となった後に最大となるので、これを考慮した同期撮像を行う。なお、心電および脈波のいずれも、最初の時相は画像が乱れることがあるので、当該画像を解析から除外するようにしても良い。
【0111】
(5) 処理結果を例えば図15に示すような画面にて表示器12にて表示させるようにしても良い。なお図15に示す画面は、画像61〜64およびGUI65が配列表示されるとともに、画像66が重畳表示されている。画像61は、図4または図5に示される画像と同種の画像であり、ROIを設定するための画像である。画像62は、図10に示される画像と同種の画像であり、マスク画像を表す。画像63,64は、GUI65にて選択されている2つの時相間の差分画像を表す。なお、GUI65にて選択されている2つの時相の画像をそれぞれ第1の画像および第2の画像とするとき、第1の画像から第2の画像を引いて求まる差分画像が画像63であり、第2の画像から第1の画像を引いて求まる差分画像が画像64である。画像66は、図12または図13に示される画像と同種の画像であり、最適な時相を判断するためのグラフである。
【0112】
(6) 第2の実施形態において、ステップSb3、ステップSa8およびステップSb4を省略し、常に第2のマスク生成処理を行うようにしても良い。
【0113】
(7) 第3の実施形態において、ステップSe3におけるパイロットスキャンや、ステップSe5およびステップSe8におけるECG−prepスキャンのスライス面は、FS−FBIスキャンのスライス面に応じて変化する。すなわち、ステップSe8におけるECG−prepスキャンのスライス面は、FS−FBIスキャンのスライス面と同一とする。ステップSe5におけるECG−prepスキャンのスライス面は、FS−FBIスキャンのスライス面に直交する面とする。ステップSe3におけるパイロットスキャンのスライス面は、ステップSe5におけるECG−prepスキャンのスライス面に直交する面とする。
【0114】
(8) 第3の実施形態において、遅延時間決定処理は、従来より行われていたような操作者の指定を受け付ける処理としても良い。
【0115】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0116】
1…磁石、2…静磁場電源、3…傾斜磁場コイルユニット、3x…コイル、3y…コイル、3z…コイル、4…傾斜磁場電源、5…シーケンサ、6…ホスト計算機、7…RFコイル、8R…受信器、8T…送信器、10…演算ユニット、11…記憶ユニット、12…表示器、13…入力器、14…シムコイル、15…シムコイル電源、16…音声発生器、17…ECGセンサ、18…ECGユニット、100…MRI装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
同一スライスについて互いに異なる複数の心時相のそれぞれにおける複数セットのエコー信号を収集するプレップスキャンを実行するプレップスキャン部と、
前記複数セットのエコー信号のそれぞれに基づいて、前記複数の心時相のそれぞれに関する複数のプレップ画像を生成するプレップ画像生成部と、
前記複数のプレップ画像に基づいて、第1の心時相及び第2の心時相を決定する心時相決定部と、
前記心時相決定部により決定された前記第1の心時相及び前記第2の心時相のそれぞれにおいてイメージングスキャンを実行して、イメージング用エコー信号を得るイメージングスキャン部と、
前記イメージングスキャン部により得られた前記第1の心時相のエコー信号に基づいて第1の画像を生成し、前記第2の心時相のエコー信号に基づいて第2の画像を生成し、当該第1の画像と第2の画像を差分して差分画像を得るイメージング画像生成部とを具備したこと特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項1】
同一スライスについて互いに異なる複数の心時相のそれぞれにおける複数セットのエコー信号を収集するプレップスキャンを実行するプレップスキャン部と、
前記複数セットのエコー信号のそれぞれに基づいて、前記複数の心時相のそれぞれに関する複数のプレップ画像を生成するプレップ画像生成部と、
前記複数のプレップ画像に基づいて、第1の心時相及び第2の心時相を決定する心時相決定部と、
前記心時相決定部により決定された前記第1の心時相及び前記第2の心時相のそれぞれにおいてイメージングスキャンを実行して、イメージング用エコー信号を得るイメージングスキャン部と、
前記イメージングスキャン部により得られた前記第1の心時相のエコー信号に基づいて第1の画像を生成し、前記第2の心時相のエコー信号に基づいて第2の画像を生成し、当該第1の画像と第2の画像を差分して差分画像を得るイメージング画像生成部とを具備したこと特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2012−66129(P2012−66129A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−1209(P2012−1209)
【出願日】平成24年1月6日(2012.1.6)
【分割の表示】特願2007−30869(P2007−30869)の分割
【原出願日】平成19年2月9日(2007.2.9)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年1月6日(2012.1.6)
【分割の表示】特願2007−30869(P2007−30869)の分割
【原出願日】平成19年2月9日(2007.2.9)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】
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