説明

磁気共鳴装置用ガントリおよび磁気共鳴装置

【課題】 支持ユニットの軸方向への張り出し量を小さくし、ガントリの軸長の短縮を効果的に図る。
【解決手段】 静磁場筐体1aは、静磁場磁石を収容するためのもので、内部に空間を形成する。傾斜磁場筐体2aは、傾斜磁場コイルを収容するためのもので、静磁場筐体1aよりも軸方向の長さが短い筒状をなすとともに静磁場筐体1aの内部の空間内に配置される。支持ユニット11は、静磁場筐体1aの端部近傍にて静磁場筐体1aの内部の空間に面する静磁場筐体1aの壁面に沿って配置され、静磁場筐体1aに対して傾斜磁場筐体2aを支持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部に例えば円筒状の空間(開口部)を形成する静磁場筐体に静磁場磁石を収容するとともに、傾斜磁場コイルを収容した傾斜磁場筐体を静磁場筐体が形成する空間内に配置する磁気共鳴装置用ガントリおよび磁気共鳴装置に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気共鳴イメージング(magnetic resonance imaging:MRI)装置に代表される磁気共鳴装置は、非常に強い静磁場を発生できることが要求される。また静磁場には、傾斜磁場を重畳できる必要がある。このため磁気共鳴装置では一般に、内部に例えば円筒状の空間を形成する静磁場筐体に静磁場磁石を収容するとともに、傾斜磁場コイルを収容した傾斜磁場筐体を静磁場筐体が形成する空間内に配置している。そして、傾斜磁場筐体は筒状であり、この傾斜磁場筐体の内部に形成される空間に静磁場および傾斜磁場が形成される。
【0003】
傾斜磁場筐体の支持方法の1つとして、傾斜磁場筐体を静磁場筐体にて支持する方法がある。これは、傾斜磁場筐体の側端に取り付けた支持部材と静磁場磁石の側端に取り付けた支持部材とからなる支持ユニットを用いることにより実現される。静磁場筐体と傾斜磁場筐体との相対的な位置関係は、静磁場筐体の端面よりも外側に取り付けた支持用ブロックを位置調整用のボルトで押すことにより調整していた。
【特許文献1】特開2007−190200
【特許文献2】特開2004−237125
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
磁気共鳴装置のガントリは、静磁場筐体、傾斜磁場筐体、あるいは支持ユニットの全てをガントリ筐体により覆うことにより形成される。そして、ガントリ筐体に設けられた空間が診断用空間となり、ここに被検体が載置されることになる。
【0005】
さて近年においては、診断用空間における被検体の居住性改善のために、ガントリの軸長を短縮する要求が強まってきている。しかしながら、従来は支持ユニットが静磁場筐体および傾斜磁場筐体の側方に張り出しているために、これがガントリの軸長の短縮への妨げとなっていた。
【0006】
本発明はこのような事情を考慮してなされたものであり、その目的とするところは、支持ユニットの軸方向への張り出し量を小さくし、ガントリの軸長の短縮を効果的に図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様による磁気共鳴装置用ガントリは、磁場磁石を収容するとともに開口部を形成した筒状の静磁場筐体と、傾斜磁場コイルを収容するためのものであって、前記開口部内に配置され、前記静磁場筐体と比して軸方向の長さが短い筒状の傾斜磁場筐体と、前記傾斜磁場筐体を前記静磁場筐体に支持するものであって、前記静磁場筐体に取り付けられる第1の支持部材と、前記傾斜磁場筐体に取り付けられかつ前記第1の支持部材により支持される第2の支持部材と、前記軸方向において前記静磁場筐体の内側に配置され、前記第1の支持部材および前記第2の支持部材の相対的位置関係を変化させることで前記静磁場筐体と前記傾斜磁場筐体との相対的位置関係を調整する調整手段とを含んだ支持手段とを備える。
【0008】
本発明の第2の態様による磁気共鳴装置用ガントリは、静磁場磁石を収容するとともに開口部を形成した静磁場筐体と、前記開口部内に配置され、傾斜磁場コイルを収容する傾斜磁場筐体と、前記傾斜磁場筐体を前記静磁場筐体に支持するものであって、前記静磁場筐体に取り付けられる第1の支持部材と、前記傾斜磁場筐体に取り付けられる第2の支持部材と、前記開口部に面する前記静磁場筐体の壁面にほぼ沿った第1の方向への調整部材の移動に伴って前記前記第1の方向に交差する第2の方向についての前記第1の支持部材と前記第2の支持部材との相対的位置関係を変化させることで前記第2の方向についての前記静磁場筐体と前記傾斜磁場筐体との相対的位置関係を調整する調整手段とを含んだ支持手段とを備える。
【0009】
本発明の第3の態様による磁気共鳴装置は、静磁場磁石を収容するためのもので、内部に空間を形成する静磁場筐体と、傾斜磁場コイルを収容するためのもので、前記静磁場筐体よりも軸方向の長さが短い筒状をなすとともに前記空間内に配置される傾斜磁場筐体と、前記静磁場筐体の端部近傍にて前記空間に面する前記静磁場筐体の壁面に沿って配置され、前記静磁場筐体に対して前記傾斜磁場筐体を支持する支持ユニットとを備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、支持ユニットの軸方向への張り出し量を小さくし、ガントリの軸長の短縮を効果的に図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態につき説明する。
【0012】
図1は本実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置(MRI装置)の構成を示す図である。この図1に示すMRI装置は、静磁場磁石ユニット1、傾斜磁場コイルユニット2、傾斜磁場電源3、寝台4、寝台制御部5、送信RFコイル6、送信部7、受信RFコイル8、受信部9および計算機システム10を具備する。
【0013】
静磁場磁石ユニット1は、中空の円筒形をなし、内部の空間に一様な静磁場を発生する。この静磁場磁石ユニット1としては、例えば永久磁石、超伝導磁石等が使用される。
【0014】
傾斜磁場コイルユニット2は、中空の円筒形をなし、静磁場磁石ユニット1の内側に配置される。傾斜磁場コイルユニット2は、互いに直交するX,Y,Zの各軸に対応する3種類のコイルが組み合わされている。傾斜磁場コイルユニット2は、上記の3つのコイルが傾斜磁場電源3から個別に電流供給を受けて、磁場強度がX,Y,Zの各軸に沿って変化する傾斜磁場を発生する。なお、Z軸方向は、例えば静磁場と同方向とする。X,Y,Z各軸の傾斜磁場は、例えば、スライス選択用傾斜磁場Gs、位相エンコード用傾斜磁場Geおよびリードアウト用傾斜磁場Grにそれぞれ対応する。スライス選択用傾斜磁場Gsは、任意に撮像断面を決めるために利用される。位相エンコード用傾斜磁場Geは、空間的位置に応じて磁気共鳴信号の位相を変化させるために利用される。リードアウト用傾斜磁場Grは、空間的位置に応じて磁気共鳴信号の周波数を変化させるために利用される。なお、傾斜磁場コイルユニット2は、その中心軸に沿った方向についての長さが、静磁場磁石ユニット1のそれよりも短くなっている。
【0015】
静磁場磁石ユニット1および傾斜磁場コイルユニット2が、図示しないガントリ筐体により覆われてガントリが形成される。ガントリ筐体には、傾斜磁場コイルユニット2の内部に円筒状の開口部が形成されていて、この開口部の内部が撮像空間となる。
【0016】
被検体200は、寝台4の天板41に載置された状態で撮像空間内に挿入される。なお撮像空間の形状は円筒状には限らず、多角柱状などの別の形状であっても構わない。寝台4の天板41は寝台制御部5により駆動され、その長手方向および上下方向に移動する。通常、この長手方向が静磁場磁石ユニット1の中心軸と平行になるように寝台4が設置される。
【0017】
送信RFコイル6は、傾斜磁場コイルユニット2の内側に配置される。送信RFコイル6は、送信部7から高周波パルスの供給を受けて、高周波磁場を発生する。
【0018】
送信部7は、ラーモア周波数に対応する高周波パルスを送信RFコイル6に送信する。
【0019】
受信RFコイル8は、傾斜磁場コイルユニット2の内側に配置される。受信RFコイル8は、上記の高周波磁場の影響により被検体200から放射される磁気共鳴信号を受信する。受信RFコイル8からの出信号は、受信部9に入力される。
【0020】
受信部9は、受信RFコイル8からの出力信号に基づいて磁気共鳴信号データを生成する。
【0021】
計算機システム10は、インタフェース部101、データ収集部102、再構成部103、記憶部104、表示部105、入力部106および主制御部107を有している。
【0022】
インタフェース部101には、傾斜磁場電源3、寝台制御部5、送信部7、受信RFコイル8および受信部9等が接続される。インタフェース部101は、これらの接続された各部と計算機システム10との間で授受される信号の入出力を行う。
【0023】
データ収集部102は、受信部9から出力されるデジタル信号をインタフェース部101を介して収集する。データ収集部102は、収集したデジタル信号、すなわち磁気共鳴信号データを、記憶部104に格納する。
【0024】
再構成部103は、記憶部104に記憶された磁気共鳴信号データに対して、後処理、すなわちフーリエ変換等の再構成を実行し、被検体200内の所望核スピンのスペクトラムデータあるいは画像データを求める。
【0025】
記憶部104は、磁気共鳴信号データと、スペクトラムデータあるいは画像データとを、患者毎に記憶する。
【0026】
表示部105は、スペクトラムデータあるいは画像データ等の各種の情報を主制御部107の制御の下に表示する。表示部105としては、液晶表示器などの表示デバイスを利用可能である。
【0027】
入力部106は、オペレータからの各種指令や情報入力を受け付ける。入力部106としては、マウスやトラックボールなどのポインティングデバイス、モード切替スイッチ等の選択デバイス、あるいはキーボード等の入力デバイスを適宜に利用可能である。
【0028】
主制御部107は、図示していないCPUやメモリ等を有しており、本実施形態のMRI装置を総括的に制御する。主制御部107は、MRI装置における周知の機能を実現するための種々の制御機能を持つ。
【0029】
図2は静磁場磁石ユニット1および傾斜磁場コイルユニット2を図1の左方から見た様子を示す図である。
【0030】
静磁場筐体1aおよび傾斜磁場筐体2aは、それぞれ静磁場磁石ユニット1および傾斜磁場コイルユニット2の筐体である。
【0031】
静磁場筐体1aは、その内部に円筒状の空間(開口部)を形成しており、この空間内に傾斜磁場筐体2aが配置されている。静磁場筐体1aの内径は、傾斜磁場筐体2aの外径よりも若干大きい。すなわち傾斜磁場筐体2aは、静磁場筐体1aの内部の空間中に若干の遊びを有する状態で配置されている。そして傾斜磁場筐体2aは、支持ユニット11,12によって支持されている。支持ユニット11,12は、支持ユニット11,12は、静磁場磁石ユニット1および傾斜磁場コイルユニット2の図2に示されるのとは反対側の側端にも設けられている。かくして傾斜磁場筐体2aは、2つずつの支持ユニット11,12によって支持されている。
【0032】
支持ユニット11,12は、構造および装着状態に関して互いに対称である。そこで以下では、支持ユニット11に着目してその構造および装着状態について詳細に説明する。
【0033】
図3は支持ユニット11の斜視図である。
【0034】
図3に示すように支持ユニット11は、第1の支持部材11a、第2の支持部材11b、第1乃至第3の移動部材11c,11d,11e、防振部材11fおよび調整部材11gを含む。
【0035】
第1の支持部材11aは、静磁場筐体1aに固定される。第2の支持部材11bは、傾斜磁場筐体2aに固定される。第1および第2の移動部材11c,11dは、第1の支持部材11aによって移動可能に支持される。第3の移動部材11eは、第1の支持部材11aと第2の支持部材11bとの間に配置される。防振部材11fとしては、ゴムなどの弾性のある材質が使用される。防振部材11fは、第2の支持部材11bと第1の移動部材11cとによって挟持される。調整部材11gは、第1の支持部材11aに設けられた貫通孔にガイドされて移動可能に配置される。 図4は静磁場筐体1aに第1の支持部材11aが固定される様子を示す斜視図である。
【0036】
第1の支持部材11aは、互いにほぼ直交した2つの面を有している。第1の支持部材11aは、この2つの面を静磁場筐体1aの内周面および側端面にそれぞれ当接させて配置される。そして第1の支持部材11aは、ボルト14,15を用いて静磁場筐体1aに固定される。
【0037】
図5は傾斜磁場筐体2aに第2の支持部材11bが固定される様子を示す斜視図である。
【0038】
第2の支持部材11bは、その一面を傾斜磁場筐体2aの側端面に当接させて、傾斜磁場筐体2aの側方に突出する状態で配置される。そして第2の支持部材11bは、ボルト16,17,18,19を用いて傾斜磁場筐体2aに固定される。
【0039】
図6は第1および第2の移動部材11c,11dが第1の支持部材11aに取り付けられる様子を示す分解斜視図である。
【0040】
第1の移動部材11cは、ボルト20,21を用いて第1の支持部材11aに取り付けられる。ボルト20,21は、傾斜磁場筐体2aの位置の調整時には第1の移動部材11cを固定するほどには締め付けられない。この状態では第1の移動部材11cは、ボルト20,21に案内されてボルト20,21の軸方向に沿って移動可能とされる。傾斜磁場筐体2aの位置の調整が終了した後には、ボルト20,21は、締め付けられることによって移動部材11cを固定する。
【0041】
第2の移動部材11dは、第1の支持部材11aに形成された案内溝11aaに嵌め込まれた上で、第1の移動部材11cによって緩やかに押さえられる。案内溝11aaは、第1の支持部材11aのうちで静磁場筐体1aの内部の空間内に入り込んでいる部分に設けられている。また案内溝11aaは、静磁場筐体1aの内周面にほぼ沿った方向に前記第2の移動部材11dをスライド可能に案内するように形成されている。第2の移動部材11dは、くさび状の形状を持つ。つまり第2の移動部材11dは、案内溝11aaに嵌め込まれた状態で、露出する側の面が傾斜面となる。第2の移動部材11dは、この傾斜面がスライド可能方向に沿って傾斜するように配置される。
【0042】
調整部材11gは、ボルト22およびナット23を含む。ボルト22は、ナット23および第1の支持部材11aに設けられた貫通孔11abをそれぞれ通して配置され、その先端が第2の移動部材11dに当接する。ボルト22は、貫通孔11aに案内されて静磁場筐体1aの内周面にほぼ沿うとともに静磁場筐体1aの内部の空間の開口方向に交差した方向に移動可能である。すなわちボルト22は、静磁場筐体1aの周方向に沿って移動可能である。
【0043】
なお、静磁場筐体1aと第1の支持部材11aとの間には、クッション24が配置される。
【0044】
組み立て時においては図7に示すように、まず第2の支持部材11bが取り付けられた傾斜磁場筐体2aが静磁場筐体1aの内部の空間に配置される。この後、図6に示すように第1および第2の移動部材11c,11dが取り付けられた第1の支持部材11aが、静磁場筐体1aの内周面と第2の支持部材11bとの間に差し込まれる。このときに防振部材11fは、第1の移動部材11cの上面に載置しておくことにより、防振部材11fを第2の支持部材11bと第1の移動部材11cとの間に位置させる。また第1の支持部材11aに静磁場磁石ユニット1の軸心方向にほぼ沿って形成された貫通孔11acおよびナット26を通してボルト25が取り付けられる。そして第2の支持部材11bの先端面とボルト25との間に第3の移動部材11eが挟み込まれる。なお移動部材11eは、防振部材とその防振部材を支持する部材とから構成されている。
【0045】
このような構造であるから支持ユニット11では、ボルト22のねじ込み量を大きくすると、第2の移動部材11dが静磁場筐体1aの内周面に沿ってスライドする。そうすると、第2の移動部材11dの傾斜面により第1の移動部材11cが押し上げられる。この結果、第1の支持部材11aと第2の支持部材11bとの離間距離が拡大する。
【0046】
ところで、第1の移動部材11cには傾斜磁場コイルユニット2の重みが掛かっている。このため、ボルト22のねじ込み量を小さくすると、第1の移動部材11cが第2の移動部材11dの傾斜面を押すこととなり、第2の移動部材11dはボルト22によって係止されるまでスライドする。そうすると、第1の移動部材11cが沈み込む。この結果、第1の支持部材11aと第2の支持部材11bとの離間距離が縮小する。
【0047】
さて、第1の支持部材11aは静磁場筐体1aに固定されており、第2の支持部材11bは傾斜磁場筐体2aに固定されている。従って、第1の支持部材11aと第2の支持部材11bとの離間距離が変化すれば、静磁場筐体1aと傾斜磁場筐体2aとの相対的な位置関係が変化することになる。つまり支持ユニット11によれば、ボルト22のねじ込み量の調整により、静磁場筐体1aと傾斜磁場筐体2aとの相対的な位置関係を調整することが可能である。そして支持ユニット11においてこのように静磁場筐体1aと傾斜磁場筐体2aとの相対的な位置関係を調整するための機構は、静磁場筐体1aの内部空間の内側に位置している。このため、支持ユニット11が静磁場筐体1aの側端から突出する量は少なく、ガントリの軸長の支持ユニット11による増大量は小さく抑えられる。さらに、ボルト22を静磁場筐体1aの周方向に沿って移動させる構造であるので、ボルト22は静磁場筐体1aの内部の空間から外に突出することがない。この点においても支持ユニット11が静磁場筐体1aの側端から突出する量を少なくでき、ガントリの軸長の支持ユニット11による増大量を小さく抑えられる。なお、第1の支持部材11aは、静磁場筐体1aの内周面に固定しても良い。このようにする場合には、第1の支持部材11aの静磁場筐体1aの側端から突出している部分は省略でき、支持ユニット11を静磁場筐体1aの側端から突出させないことも可能である。
【0048】
一方、ナット26を回すことによりボルト25のねじ込み量を、ひいては第3の移動部材11eの位置を変化させることができる。支持ユニット11における第3の移動部材11eの位置と、支持部材12における第3の移動部材の位置とを、静磁場筐体1aの一端側と他端側とでそれぞれ適宜に調整することによって、傾斜磁場筐体2aの軸方向の位置を調整できる。
【0049】
また本実施形態によれば、防振部材11fを設けているので、静磁場筐体1aと傾斜磁場筐体2aとの間での振動の伝達を小さく抑えることが可能である。この結果、ガントリの低振動化および低騒音化を達成できる。さらには、移動部材11eにも防振部材を使用しているため、静磁場筐体1aと傾斜磁場筐体2aとの間でのボルト25を介した振動の伝達をも小さく抑えることが可能であり、さらなるガントリの低振動化および低騒音化を達成できる。
【0050】
ところで、本実施形態では支持ユニット11,12を備えているから、これらの支持ユニット11,12をそれぞれ適切に設定することにより、静磁場筐体1aと傾斜磁場筐体2aとの相対的な位置を任意に調整することが可能である。しかしながらこの調整は、支持ユニット11,12の設定を相対的に調整することにより成り立つものであるから、静磁場筐体1aと傾斜磁場筐体2aとの相対的な位置を微調整する作業は面倒になる。
【0051】
そこで本実施形態では、複数の調整ユニット13をさらに備えている。図8は調整ユニット13の構成を示す斜視図である。
【0052】
調整ユニット13は、ベース部13a、調整ボルト13bおよびナット13cを含む。ベース部13aは、ボルト27,28によって傾斜磁場筐体2aの側端面に固定される。ベース部13aには、図8に示すように傾斜磁場筐体2aに固定された状態にて傾斜磁場筐体2aの軸心に垂直な方向をほぼ向く貫通孔が形成されている。そしてこの貫通孔およびナット13cを通して先端がベース部13aから突出する状態で調整ボルト13bが配置される。調整ボルト13bの先端は、静磁場筐体1aの内周面と調整ユニット13との間に配置された防振部材29に当接することができる。なお防振部材29としては、ゴムなどの弾性のある材質が使用される。
【0053】
かくして調整ユニット13は、調整ボルト13bのねじ込み量により先端の突出量を調整することにより、調整ボルト13bの当接位置における静磁場筐体1aと傾斜磁場筐体2aとの離間距離を調整することができる。これにより、支持ユニット11,12によって設定されている静磁場筐体1aと傾斜磁場筐体2aとの相対的な位置関係を微調整することが可能である。
【0054】
また本実施形態によれば、防振部材29を設けているので、静磁場筐体1aと傾斜磁場筐体2aとの間での調整ユニット13を介した振動の伝達を小さく抑えることが可能である。この結果、ガントリの低振動化および低騒音化を達成できる。
【0055】
この実施形態は、次のような種々の変形実施が可能である。
【0056】
支持ユニット11,12のいずれか一方を省略することも可能である。あるいは支持ユニット11,12の少なくともいずれか一方の数を増やすことも可能である。
【0057】
第1の支持部材11aは、第2の移動部材11dを案内する部位とボルト25を保持する部分とを別体とするように2分することが可能である。
【0058】
第1の支持部材11aのうちでボルト25を保持する部分、第3の移動部材11e、ボルト25およびナット26は省略することも可能である。
【0059】
調整ユニット13の数は任意であって良い。調整ユニット13は、省略することも可能である。
【0060】
第2の移動部材11dおよび調整部材11gの移動方向は、例えば静磁場筐体1aの軸方向にほぼ沿った方向とするなどのように任意に変更が可能である。この場合、調整部材11gが静磁場筐体1aの内部の空間の外に突出する可能性があるが、第1の支持部材11aが静磁場筐体1aの内部の空間の外に突出する量が前記実施形態と変わらないならば、調整部材11gの突出にともなうガントリの軸長の増大は小さい。
【0061】
第1の支持部材11aの大部分および第2の支持部材11bの一部または全部を静磁場筐体1aの内部の空間の外に突出させても良い。この場合でも、調整部材11gが静磁場筐体1aの軸方向に沿って突出することがないので、ガントリの軸長の短縮を図ることが可能である。
【0062】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の一実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置(MRI装置)の構成を示す図。
【図2】静磁場磁石ユニット1および傾斜磁場コイルユニット2を図1の左方から見た様子を示す図。
【図3】支持ユニット11の斜視図。
【図4】静磁場筐体1aに第1の支持部材11aが固定される様子を示す斜視図。
【図5】傾斜磁場筐体2aに第2の支持部材11bが固定される様子を示す斜視図。
【図6】第1および第2の移動部材11c,11dが第1の支持部材11aに取り付けられる様子を示す分解斜視図。
【図7】支持ユニット11の組み立て時における一状態を示す斜視図。
【図8】調整ユニット13の構成を示す斜視図。
【符号の説明】
【0064】
1…静磁場磁石ユニット、1a…静磁場筐体、2…傾斜磁場コイルユニット、2a…傾斜磁場筐体、3…傾斜磁場電源、4…寝台、5…寝台制御部、6…コイル、7…送信部、8…コイル、9…受信部、10…計算機システム、11a…第1の支持部材、11b…第2の支持部材、11c…第1の移動部材、11d…第2の移動部材、11e…第3の移動部材、11f…防振部材、11g…調整部材、12…支持部材、13…調整ユニット、13a…ベース部、13b…調整ボルト、13c…ナット、14〜22,25,27,28…ボルト、23,26…ナット、24…クッション。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
静磁場磁石を収容するとともに開口部を形成した筒状の静磁場筐体と、
傾斜磁場コイルを収容するためのものであって、前記開口部内に配置され、前記静磁場筐体と比して軸方向の長さが短い筒状の傾斜磁場筐体と、
前記傾斜磁場筐体を前記静磁場筐体に支持するものであって、前記静磁場筐体に取り付けられる第1の支持部材と、前記傾斜磁場筐体に取り付けられかつ前記第1の支持部材により支持される第2の支持部材と、前記軸方向において前記静磁場筐体の内側に配置され、前記第1の支持部材および前記第2の支持部材の相対的位置関係を変化させることで前記静磁場筐体と前記傾斜磁場筐体との相対的位置関係を調整する調整手段とを含んだ支持手段とを具備したことを特徴とする磁気共鳴装置用ガントリ。
【請求項2】
前記第1の支持部材と前記第2の支持部材との間に配置され、前記第1の支持部材と前記第2の支持部材との間で伝達される振動を減衰する防振部材をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の磁気共鳴装置用ガントリ。
【請求項3】
前記調整手段は、
前記開口部に面する前記静磁場筐体の壁面にほぼ沿った第1の方向に交差する第2の方向に移動可能で、この移動に伴って前記第1の支持部材および前記第2の支持部材の相対的位置関係を変化させる第1の移動部材と、
前記第1の方向に移動可能で、その移動方向に対して傾斜するとともに前記第1の移動部材に当接する傾斜面を有した第2の移動部材とを具備することを特徴とする請求項1に記載の磁気共鳴イメージング用ガントリ。
【請求項4】
前記調整手段は、前記静磁場筐体に固定されて、前記第2の移動部材を前記第1の方向に移動可能にガイドする第1のガイド部材をさらに備えることを特徴とする請求項3に記載の磁気共鳴装置用ガントリ。
【請求項5】
前記調整手段は、前記傾斜磁場筐体の軸方向にほぼ沿った方向に移動可能で、この移動に伴って前記軸方向に関する前記第1の支持部材および前記第2の支持部材の相対的位置関係を変化させる第3の移動部材をさらに備えることを特徴とする請求項3に記載の磁気共鳴装置用ガントリ。
【請求項6】
前記磁気共鳴装置用ガントリは、前記傾斜磁場筐体に固定された微調整ユニットをさらに備え、
前記微調整ユニットは、
前記傾斜磁場筐体の端部にその端部から側方に突出する状態で固定された案内部材と、
前記微調整ユニットの配置位置において前記開口部に面する前記静磁場筐体の壁面に交差する方向へ前記案内部材により案内されて移動可能で、この移動に伴って前記壁面と前記傾斜磁場筐体との離間距離を変化させる移動部材と、
前記静磁場筐体と前記移動部材との間に配置され、前記静磁場筐体と前記移動部材との間で伝達される振動を減衰する防振部材とを具備したことを特徴とする請求項1に記載の磁気共鳴装置用ガントリ。
【請求項7】
静磁場磁石を収容するとともに開口部を形成した静磁場筐体と、
前記開口部内に配置され、傾斜磁場コイルを収容する傾斜磁場筐体と、
前記傾斜磁場筐体を前記静磁場筐体に支持するものであって、前記静磁場筐体に取り付けられる第1の支持部材と、前記傾斜磁場筐体に取り付けられる第2の支持部材と、前記開口部に面する前記静磁場筐体の壁面にほぼ沿うとともに前記開口部の開口方向に交差した第1の方向への調整部材の移動に伴って前記前記第1の方向に交差する第2の方向についての前記第1の支持部材と前記第2の支持部材との相対的位置関係を変化させることで前記第2の方向についての前記静磁場筐体と前記傾斜磁場筐体との相対的位置関係を調整する調整手段とを含んだ支持手段とを具備したことを特徴とする磁気共鳴装置用ガントリ。
【請求項8】
静磁場磁石を収容するためのもので、内部に空間を形成する静磁場筐体と、
傾斜磁場コイルを収容するためのもので、前記静磁場筐体よりも軸方向の長さが短い筒状をなすとともに前記空間内に配置される傾斜磁場筐体と、
前記静磁場筐体の端部近傍にて前記空間に面する前記静磁場筐体の壁面に沿って配置され、前記静磁場筐体に対して前記傾斜磁場筐体を支持する支持ユニットとを具備したことを特徴とする磁気共鳴装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−90101(P2009−90101A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−235621(P2008−235621)
【出願日】平成20年9月12日(2008.9.12)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】