説明

磁気共鳴装置

【課題】高周波コイルの発熱により撮影空間の温度が上昇することを防止する。
【解決手段】静磁場磁石1は、静磁場を発生する。傾斜磁場コイルユニット2は、静磁場に重畳するための傾斜磁場を発生する。ボアチューブ3は、寝台天板およびこの寝台天板に載置された被検体を挿入するための内部空間を形成する。高周波コイルは、円筒状のベース部41、ならびにこのベース部41に配置された複数の電気素子46および複数の電気素子47を含み、上記の内部空間に配置される。空間44a,44cは、ベース部41とボアチューブ3との間に、電気素子46を空冷するために形成される。空間44bは、ベース部41とボアチューブ3との間に空間44a,44cに連通して、電気素子47を空冷するために形成される。ファン8は、空間44a,44cから空間44bへと向かう冷却用気体の流れを起こすことにより高周波コイルを冷却する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガントリの内部に高周波コイルを配置する磁気共鳴装置に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気共鳴装置には、ガントリの内部にホールボディコイル(以下、WBコイルと称する)などの高周波コイルを配置することが一般的である。
【0003】
高周波コイルは、通電により発熱する。高周波コイルの冷却は、従来は周囲の自然対流に頼っており、特別な冷却処置は講じられていなかった。
【0004】
なお、冷却水を用いて高周波コイルを冷却する構造は、例えば特許文献1によって知られている。
【特許文献1】特開平11−244255号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このため、高周波コイルの発熱は、ガントリ内の撮影空間の温度を上昇させ、この撮影空間に載置される被検者に不快感を与える恐れがあった。
【0006】
そこで高周波コイルとの間にある程度の間隔をあけてカバーを配置することで、高周波コイルの発熱が撮影空間に伝わりにくくなるようにすることが考えられている。しかしながらこの場合には、カバーにより撮影空間が小さくなり、被検者に圧迫感を与える恐れがあった。
【0007】
特許文献1によって知られた構造では、冷却部の構造が大掛かりとなり、その収容空間が大きくなるために、撮影空間が小さくなり、被検者に圧迫感を与える恐れがあった。
【0008】
本発明はこのような事情を考慮してなされたものであり、その目的とするところは、ガントリ内に配置された高周波コイルの発熱により撮影空間の温度が上昇することを防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様による磁気共鳴装置は、静磁場を発生する静磁場磁石と、前記静磁場に重畳するための傾斜磁場を発生する傾斜磁場コイルと、寝台天板およびこの寝台天板に載置された被検体を挿入するための内部空間を前記静磁場磁石および前記傾斜磁場コイルの内側に形成するカバーと、円筒状のベース部、ならびにこのベース部に配置された複数の第1の電気素子および複数の第2の電気素子を含み、前記内部空間に配置された高周波コイルと、前記ベース部と前記カバーとの間に形成され、前記第1の電気素子を空冷するための第1の流路と、前記ベース部と前記カバーとの間に前記第1の流路に連通して形成され、前記第2の電気素子を空冷するための第2の流路と、前記第1の流路から前記第2の流路へと向かう冷却用気体の流れを起こすことにより前記高周波コイルを冷却する冷却手段とを備える。
【0010】
本発明の第2の態様による磁気共鳴装置は、静磁場を発生する静磁場磁石と、前記静磁場に重畳するための傾斜磁場を発生する傾斜磁場コイルと、寝台天板およびこの寝台天板に載置された被検体を挿入するための内部空間を前記静磁場磁石および前記傾斜磁場コイルの内側に形成するカバーと、円筒状のベース部、ならびにこのベース部に配置された複数の第1の電気素子および複数の第2の電気素子を含み、内部空間に配置された高周波コイルと、前記ベース部と前記カバーとの間に前記ベース部の周方向に沿って形成され、前記電気素子を空冷するための流路と、前記流路における冷却用気体の流れとして前記ベース部の周方向に沿ってそれぞれ異なる向きの2種類の流れを起こすことにより前記高周波コイルを冷却する冷却手段とを備える。
【0011】
本発明の第3の態様による磁気共鳴装置は、静磁場を発生する静磁場磁石と、前記静磁場に重畳するための傾斜磁場を発生する傾斜磁場コイルと、寝台天板およびこの寝台天板に載置された被検体を挿入するための内部空間を前記静磁場磁石および前記傾斜磁場コイルの内側に形成するカバーと、円筒状のベース部、ならびにこのベース部にその周方向に沿って並べて配置された複数の電気素子を含み、内部空間に配置された高周波コイルと、前記ベース部の周方向に沿って冷却用気体を導く流路と、前記流路から前記電気素子に向けて前記冷却用気体を吐出する少なくとも1つの吐出口と、前記流路を通って前記吐出口より前記電気素子に向けて吐出されるような前記冷却用気体の流れを起こすことにより前記高周波コイルを冷却する冷却手段とを備える。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ガントリ内に配置された高周波コイルの発熱により撮影空間の温度が上昇することを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態について説明する。
【0014】
図1は本実施形態に係る磁気共鳴装置100のガントリの構造を一部破断して示す図である。
【0015】
磁気共鳴装置100のガントリには、静磁場磁石1、傾斜磁場コイルユニット2、ボアチューブ3、ボディコイルユニット4、カバー5および寝台レール6が設けられている。
【0016】
静磁場磁石1は、中空の円筒形をなし、内部の空間に一様な静磁場を発生する。この静磁場磁石1としては、例えば永久磁石または超伝導磁石等が使用される。
【0017】
傾斜磁場コイルユニット2は、中空の円筒形をなす。傾斜磁場コイルユニット2は、その軸心を静磁場磁石1の軸心とほぼ一致させる状態で静磁場磁石1の内側に配置される。傾斜磁場コイルユニット2は、互いに直交するX,Y,Zの各軸に対応する3種類のコイルが組み合わされている。傾斜磁場コイルユニット2は、上記の3種類のコイルが傾斜磁場電源から個別に電流供給を受けて、磁場強度がX,Y,Zの各軸に沿って傾斜する傾斜磁場を発生する。なお、Z軸方向は、例えば静磁場方向と同方向とする。X,Y,Z各軸の傾斜磁場は、例えば、スライス選択用傾斜磁場Gs、位相エンコード用傾斜磁場Geおよびリードアウト用傾斜磁場Grにそれぞれ対応される。スライス選択用傾斜磁場Gsは、任意に撮像断面を決めるために利用される。位相エンコード用傾斜磁場Geは、空間的位置に応じて磁気共鳴信号の位相をエンコードするために利用される。リードアウト用傾斜磁場Grは、空間的位置に応じて磁気共鳴信号の周波数をエンコードするために利用される。傾斜磁場コイルユニット2としては、いわゆるアクティブシールド型傾斜磁場コイル(actively shielded gradient coil:ASGC)が使用可能である。
【0018】
ボアチューブ3は、中空の円筒形をなす。ボアチューブは、その軸心を傾斜磁場コイルユニットの軸心とほぼ一致させる状態で傾斜磁場コイルユニット2の内側に配置される。ボアチューブ3は、その内部に被検体を載置して撮影を行うための撮影空間を形成する。
【0019】
ボディコイルユニット4は、中空の円筒形をなすとともに、両端に外側に張り出したフランジを有するベース部41および仕切り材42,43を含む。ベース部41は、ボアチューブ3の内側に配置され、フランジの先端がボアチューブ3の内側の表面に取り付けられる。そしてベース部41の外側の表面に、ホールボディ(WB)コイルが実装される。WBコイルは、例えばバードケージコイルである。かくして、ベース部41とボアチューブ3との間には、円形の帯状をなす空間が形成されている。そしてWBコイルは、この空間の内部に配置されている。なお、図1においてはWBコイルの図示は省略している。仕切り材42,43は、例えばウレタンフォームなどを用いてなり、ほぼリング状をなす。仕切り材42,43は、その内径がベース部41の外径にほぼ等しく、かつ幅がベース部41のフランジの張り出し量とほぼ等しい。そして仕切り材42,43は、ベース部41の外側に配置されている。かくして仕切り材42,43は、ベース部41とボアチューブ3との間の空間を3つの空間44a,44b,44cに仕切っている。ただし、仕切り材42,43には、外側の一箇所に切欠を形成してあり、空間44aと空間44bとの間および空間44bと空間44cとの間をそれぞれ連通させる開口42a,43aを形成している。なお、空間44a,44b,44cには後述するように空気が流されるのであり、空間44a,44b,44cはそれぞれダクトとして機能する。
【0020】
カバー5は、撮影空間に載置された被検体がボディコイルユニット4に触れることがないように、ボディコイルユニット4をカバーする。
【0021】
寝台レール6は、ボディコイルユニット4の内側を貫通する状態で配置される。寝台レール6は、図1の右方より送り込まれる図示しない寝台天板を図1の左右方向に案内する。寝台レール6の内部には、後述する複数のダクトが形成されている。これらのダクトは、空間44a,44b,44cのいずれかに連通される。また寝台レール6内のダクトの1つには、延長ダクト7を介してファン8が接続される。
【0022】
図2および図3はボディコイルユニット4の一部および寝台レール6の一部の構造を示す斜視図である。図2は、図1における左斜め上方より見下ろした様子を示し、図3は図1における左斜め下方より見上げた様子を示す。図2および図3では、ボディコイルユニット4のうちのベース部41のフランジと、仕切り材42,43とは図示を省略している。また寝台レール6のうちの下部部材61のみを図示している。図4は下部部材61の平面図である。
【0023】
ベース部41の外側の表面には、ボディコイルを形成する多数の導電パターン45および多数の回路素子46,47が設けられている。なお回路素子46は、例えばコンデンサである。回路素子47は、例えばピンダイオードである。多数の回路素子46は、ベース部41の両側端近傍にベース部41の周方向に沿って配列されている。多数の回路素子47は、ベース部の中央近傍にベース部41の周方向に沿って配列されている。
【0024】
下部部材61には、その長手方向に沿ってU字状の1本の溝61aおよび直線状の4本の溝61b,61c,61d,61eが形成されている。これらの溝61a〜61eは、いずれも上方に向かって開放されている。また下部部材61には、溝61aの両端近傍および湾曲部と、溝61b〜61eのそれぞれの両端近傍のそれぞれにて溝61a〜61eの底面に位置する状態で開口61f,61g,61h,61i,61j,61k,61m,61n,61o,61p,61qが形成されている。
【0025】
ところでベース部41には、図3に示す状態にて開口61hに対向する位置に開口41aが、開口61jに対向する位置に開口41bが、開口61mに対向する位置に開口41cが、開口61oに対向する位置に開口41dが、そして開口61qに対向する位置に開口41eがそれぞれ形成されている。なお、開口41aは回路素子47の配列位置寄りに、開口41b,41eは回路素子46の一方の配列位置寄りに、開口41c,41dは回路素子46の他方の配列位置寄りにそれぞれ位置している。
【0026】
図5は寝台レール6の上部部材62の構造を示す斜視図である。
【0027】
上部部材62は、その上側に長手方向に沿った凹部62aを形成している。この凹部62aにて、寝台天板の移動を上部部材62の長手方向に案内する。上部部材62は、その下側が下部部材61の上側と嵌合する形状をなす。そしてこの上部部材62を下部部材61の上部に取り付けることにより、寝台レール6が構成される。寝台レール6は、溝61a,61b,61c,61d,61eのそれぞれの上方を塞ぐ。これにより、寝台レール6の内部には、図6乃至図9に示すような6本のダクトが形成されている。なおこれら6本のダクトは、図6における左側より順に第1乃至第6のダクトと称する。
【0028】
図6乃至図9は、図1における一点鎖線A〜Dのそれぞれにおける断面を図1における左方から見た様子を表す図である。
【0029】
図6に示すように第1乃至第6のダクトはそれぞれ、開口61i,61k,61f,61g,61n,61pを介してガントリの外部に開放されている。開口61i,61k,61n,61pには、フィルタ9がそれぞれ取り付けられる。開口61f,61gには、図1に示すように延長ダクト7が取り付けられる。
【0030】
図7に示すように第2のダクトは、開口61mおよび開口41cを介して空間44aに連通されている。また第5のダクトは、開口61oおよび開口41dを介して空間44aに連通されている。
【0031】
図8に示すように第3および第4のダクトは、いずれも開口61hおよび開口41aを介して空間44bに連通されている。
【0032】
図9に示すように第1のダクトは、開口61jおよび開口41bを介して空間44cに連通されている。また第6のダクトは、開口61qおよび開口41eを介して空間44cに連通されている。
【0033】
かくして、開口61i−第1のダクト−開口61j−開口41b−空間44c−開口43aという経路、開口61k−第2のダクト−開口61c−開口41c−空間44a−開口42aという経路、開口61n−第5のダクト−開口61o−開口41d−空間44a−開口42aという経路、あるいは開口61p−第6のダクト−開口61q−開口41e−空間44c−開口43aという経路で空間44bにそれぞれ繋がる空気通路が形成され、さらに空間44bから開口41a−開口61h−第3のダクトまたは第4のダクトという経路で開口61fまたは開口61gにそれぞれ繋がる空気通路が形成されている。
【0034】
このため、図10に示すようにファン8により延長ダクト7を介して第3および第4のダクトに負圧を生じさせると、図6および図10に矢印で示すように開口61i,61k,61n,61pから空気が吸入され、図7乃至図9および図10に矢印で示すように上記の経路を通って空気が流れる。このとき、空間44a,44b,44cを流れる空気は、ベース部41の外側の表面に空間44a,44b,44cに面して設けられている回路素子46,47に当たる。これにより回路素子46,47が空冷される。
【0035】
さて、回路素子46は、回路素子47に比べて上記の空気通路の上流側に位置している。このため、回路素子46に当たる空気は回路素子47に当たる空気よりも温度が低く、冷却効率は回路素子46のほうが回路素子47よりも高い。一般的には、温度上昇に対するマージンは、コンデンサのほうがピンダイオードよりも少ない。そして本実施形態では、回路素子46としてコンデンサを、また回路素子47としてピンダイオードを用いることが想定されている。従って、温度上昇に対するマージンがより小さなコンデンサを効率的に冷却できる。
【0036】
また、図7乃至図9から明らかなように、空間44a,44b,44cのそれぞれにおいては、空気は互いに方向が異なる2つの経路で流れる。このため、1方向に1つの経路で空気が流れる場合に比べて、各空間に流入する時と各空間から流出するときとの温度差が小さく、各回路素子を効率良く冷却できる。
【0037】
さらには、空間61cと空間61d、ならびに空間61bと空間61eがそれぞれ、寝台レール6が寝台天板をガイドする方向から見て対称的に形成されているので、上記のような2つの経路での空気の流れを安定して形成することが可能である。 以上のように本実施形態によれば、回路素子46,47で生じる熱を、自然対流によるよりも効率的にガントリの外部に放出することができ、WBコイルユニット4を冷却することができる。この結果、熱による被検者の不快感を軽減することができる。また本実施形態によれば、WBコイルユニット4とカバー5との間隙をWBコイル4での発熱対策のために大きくする必要がない。このため、被検者とカバー5との距離を大きく確保することができ、カバー5による被検者の圧迫感を軽減することができる。
【0038】
また本実施形態によれば、ベース部41とボアチューブ3とにより形成された空間を空気通路の一部として利用し、また寝台レール6の内部に空気通路の一部となるダクトを形成しているため、ダクトを配置するための空間をガントリ内に新たに確保する必要がない。また、寝台レール6の内部に設けたダクトは、ダクトを配置するための空間をガントリ内に新たに確保した上でダクトを配置する場合に比べて断面積を大きく取れる。このため、ダクトにおける圧力損失を小さくでき、気流を効率的に生じさせることができる。
【0039】
また本実施形態によれば、回路素子46,47の配列方向と気流の方向とが一致しているため、各回路素子46,47に確実に気流を当てることができ、効率的に冷却できる。
【0040】
また本実施形態によれば、寝台レール6は、ダクトを内蔵するために中空構造となっており、かつダクトを区切るための壁部がリブとして機能する。具体的には、図6に示すように上部部材62は、開口61bと開口61cとを区切る壁部および開口61dと開口61eとを区切る壁部との上方にそれぞれ水平面を形成する。これらの水平面の寝台天板のローラを載せるようにすれば、寝台天板の荷重を上記の壁部によって支えることができる。このため寝台レール6は、軽量でありながら高剛性となる。
【0041】
さらには、空間61a自体、空間61cと空間61d、ならびに空間61bと空間61eがそれぞれ、寝台レール6が寝台天板をガイドする方向から見て対称的に形成されているので、各空間を仕切る壁が寝台レール6が上記方向から見て対称的に配置されている。このため、寝台レール6の剛性を効率的に高めることが可能となっている。
【0042】
この実施形態は、次のような種々の変形実施が可能である。
【0043】
(1) 図11は変形構成の一例を示す図である。なお図11において図1と同一部分には同一符号を付している。
【0044】
図11では、仕切り材42,43に代えて、仕切り材48,49,50,51を設けるとともに、仕切り材52,53を設ける。仕切り材48,49,50,51は、それぞれ仕切り材42,43と同様な形状を持ち、仕切り材42,43と同様にベース部41の外側に、互いに離間して配置されている。仕切り材52は、仕切り材48の開口と仕切り材49の開口とを連結して1つの空気通路を形成する。仕切り材53は、仕切り材50の開口と仕切り材51の開口とを連結して1つの空気通路を形成する。
【0045】
かくして図11に示す構成では、仕切り材48と仕切り材49との間の空間および仕切り材50と仕切り材51との間の空間は空気通路とはならず、空気通路となる空間44a,44b,44cの断面積が縮小される。これにより、空間44a,44b,44cの位置を回路素子46,47の配置位置に応じて適切に設定することにより、回路素子46,47の近傍を流れる空気の量を増加させ、より効率的に冷却できる。
【0046】
(2) 図12は変形構成の一例を示す図である。なお図12において図1と同一部分には同一符号を付している。
【0047】
図12では、仕切り材42,43に代えて、仕切り材54,55を設けている。仕切り材54,55は、例えばウレタンフォームなどを用いてなり、ほぼリング状をなす。仕切り材54,55は、その内径がベース部41の外径にほぼ等しく、かつ幅がベース部41のフランジの張り出し量とほぼ等しい。そして仕切り材54,55は、ベース部41の外側に、互いに離間して配置されている。かくして仕切り材54,55は、ベース部41とボアチューブ3との間の空間を3つの空間44a,44b,44cに仕切っている。ただし、仕切り材54,55には、多数の開口54a,55aが形成されている。なお、開口54a,55aの数は任意である。そして図示は省略するが、開口61h,61j,61m,61o,61qの位置を変更して、第3および第4のダクトが空間44cに連通させ、その他のダクトが空間44aに連通させる。
【0048】
かくして、空間44aに流れ込んだ空気は、開口54aから空間44bに吹き出し、開口55aを通って空間44cに吸い込まれる。このようにすれば、回路素子46,47がベース部41の軸方向に沿って配列されている場合に、その配列方向に沿った気流を形成可能である。
【0049】
(3) 図13乃至図15は変形構成の一例を示す図である。なお図13乃至図15において図1と同一部分には同一符号を付している。
【0050】
図13では、仕切り材42,43に代えて、仕切り材56,57,58,59を設ける。仕切り材56,57,58,59は、例えばウレタンフォームなどを用いてなり、ほぼリング状をなす。仕切り材56,57,58,59は、その内径がベース部41の外径にほぼ等しく、かつ幅がベース部41のフランジの張り出し量とほぼ等しい。そして仕切り材56,57,58,59は、ベース部41の外側に、互いに離間して配置されている。かくして仕切り材56,57,58,59は、ベース部41とボアチューブ3との間の空間を5つの空間44a,44b,44c,44d,44eに仕切っている。仕切り材56,57,58,59の位置は、図2に示されるように2つ形成されている回路素子46の列が空間44c,44dにそれぞれ位置し、また図2に示されるように1つ形成されている回路素子47の列が空間44bに位置するように定められる。そして仕切り材56,57,58,59には、多数の開口56a,57a,58a,59aが形成されている。
【0051】
開口56a,59aは、図14に示すように回路素子46のそれぞれに対向するように形成されている。また開口57a,58aは、図15に示すように回路素子47のそれぞれに対向するように形成されている。
【0052】
かくして空間44aに流れ込んだ空気は、開口56aから空間44cへと吹き出され、この際に回路素子46を冷却する。また空間44cに流れ込んだ空気は、開口59aから空間44dへと吹き出され、この際に回路素子46を冷却する。空間44cに流れ込んだ空気は開口57aから、また空間44dに流れ込んだ空気は開口58aから、それぞれ空間44bへと吹き出され、この際に回路素子47を冷却する。
【0053】
この構成によれば、開口56a,57a,58a,59aを通過する際に流速が増した空気が回路素子46,47に吹きつけられるので、回路素子46,47を効率的に冷却できる。
【0054】
(4) 寝台レール6内のダクトの数や形状は、任意に変更が可能である。例えば溝61aは、直線状の溝に代えることが可能である。
【0055】
(5) 寝台レール6の外やベース部41とボアチューブ3との間の空間の外に配置したダクトを使用して回路素子46,47まで空気を導いても良い。
【0056】
(6) ファン8により空気を送り込んでも良い。
【0057】
(7) 空気以外の気体をファン8により循環させても良い。
【0058】
(8) ファン8は、磁気共鳴装置の構成要件として備えずに、汎用のファンを適宜に接続して使用するのでも構わない。
【0059】
(9) 冷却対象とする高周波コイルは、WBコイル以外であっても良い。
【0060】
(10) WBコイルの導電パターン45や回路素子46,47を保持する部材(いわゆるボビン)と、このボビンをボアチューブ3に支持する支持部材とは別体であっても良い。そしてこのような構造の場合、ボビンとボアチューブ3との間隙に空気通路となる空間を形成するために、支持部材とは異なる部材を配置しても良い。
【0061】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の一実施形態に係る磁気共鳴装置100のガントリの構造を一部破断して示す図。
【図2】図1中のボディコイルユニット4の一部および寝台レール6の一部の構造を示す斜視図。
【図3】図1中のボディコイルユニット4の一部および寝台レール6の一部の構造を示す斜視図。
【図4】図2および図3中の下部部材61の平面図。
【図5】図1中の寝台レール6の上部部材62の構造を示す斜視図。
【図6】図1における一点鎖線Aにおける断面を図1における左方から見た様子を表す図。
【図7】図1における一点鎖線Bにおける断面を図1における左方から見た様子を表す図。
【図8】図1における一点鎖線Cにおける断面を図1における左方から見た様子を表す図。
【図9】図1における一点鎖線Dにおける断面を図1における左方から見た様子を表す図。
【図10】図1中のファン8を作動させた場合の空気の流れを示す図。
【図11】第1の変形構成例を示す図。
【図12】第2の変形構成例を示す図。
【図13】第3の変形構成例を示す図。
【図14】第3の変形構成例を示す図。
【図15】第3の変形構成例を示す図。
【符号の説明】
【0063】
1…静磁場磁石、2…傾斜磁場コイルユニット、3…ボアチューブ、4…ボディコイルユニット(WBコイルユニット)、5…カバー、6…寝台レール、7…延長ダクト、8…ファン、9…フィルタ、41…ベース部、41a,41b,41c,41d,41e…開口、42,43,48,49,50,51…仕切り材、42a,43a…開口、45…導電パターン、46,47…回路素子、48,49…仕切り材、54,55…仕切り材、54a,55a…開口、56,57,58,59…仕切り剤、56a,57a,58a,59a…開口、61…下部部材、61a,61b,61c,61d,61e…溝、61f,61g,61h,61i,61j,61k,61m,61n,61o,61p,61q…開口、62…上部部材、62a…凹部、100…磁気共鳴装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
静磁場を発生する静磁場磁石と、
前記静磁場に重畳するための傾斜磁場を発生する傾斜磁場コイルと、
寝台天板およびこの寝台天板に載置された被検体を挿入するための内部空間を前記静磁場磁石および前記傾斜磁場コイルの内側に形成するカバーと、
円筒状のベース部、ならびにこのベース部に配置された複数の第1の電気素子および複数の第2の電気素子を含み、前記内部空間に配置された高周波コイルと、
前記ベース部と前記カバーとの間に形成され、前記第1の電気素子を空冷するための第1の流路と、
前記ベース部と前記カバーとの間に前記第1の流路に連通して形成され、前記第2の電気素子を空冷するための第2の流路と、
前記第1の流路から前記第2の流路へと向かう冷却用気体の流れを起こすことにより前記高周波コイルを冷却する冷却手段とを具備したことを特徴とする磁気共鳴装置。
【請求項2】
前記被検体を前記内部空間に挿入するために移動される前記寝台天板をガイドするガイド部材をさらに備え、
前記第1および第2の流路は、それぞれ前記ガイド部材の内部に延在することを特徴とする請求項1に記載の磁気共鳴装置。
【請求項3】
前記第1の素子は、前記第2の素子に比べて温度上昇に関するマージンが小さいことを特徴とする請求項1に記載の磁気共鳴装置。
【請求項4】
前記第1および第2の素子は、コンデンサおよびピンダイオードであることを特徴とする請求項1に記載の磁気共鳴装置。
【請求項5】
前記第1の流路は、前記ベース部と前記カバーとの間に前記ベース部の周方向に沿って形成され、
前記冷却手段は、前記流路における冷却用気体の流れとして前記ベース部の周方向に沿ってそれぞれ異なる向きの2種類の流れを起こすことを特徴とする請求項1に記載の磁気共鳴装置。
【請求項6】
前記第2の流路は、前記ベース部と前記カバーとの間に前記ベース部の周方向に沿って形成され、
前記冷却手段は、前記流路における冷却用気体の流れとして前記ベース部の周方向に沿ってそれぞれ異なる向きの2種類の流れを起こすことを特徴とする請求項1に記載の磁気共鳴装置。
【請求項7】
静磁場を発生する静磁場磁石と、
前記静磁場に重畳するための傾斜磁場を発生する傾斜磁場コイルと、
寝台天板およびこの寝台天板に載置された被検体を挿入するための内部空間を前記静磁場磁石および前記傾斜磁場コイルの内側に形成するカバーと、
円筒状のベース部、ならびにこのベース部に配置された複数の第1の電気素子および複数の第2の電気素子を含み、内部空間に配置された高周波コイルと、
前記ベース部と前記カバーとの間に前記ベース部の周方向に沿って形成され、前記電気素子を空冷するための流路と、
前記流路における冷却用気体の流れとして前記ベース部の周方向に沿ってそれぞれ異なる向きの2種類の流れを起こすことにより前記高周波コイルを冷却する冷却手段とを具備したことを特徴とする磁気共鳴装置。
【請求項8】
前記被検体を前記内部空間に挿入するために移動される前記寝台天板をガイドするガイド部材と、
前記ガイド部の内部に形成され、前記流路へと前記冷却用気体を導入するための複数の導入流路と、
前記ガイド部の内部に形成され、前記流路から前記冷却用気体を排出するための複数の排出経路とをさらに具備することを特徴とする請求項7に記載の磁気共鳴装置。
【請求項9】
前記複数の導入流路は、前記ガイド部が前記寝台天板をガイドする方向から見て互いに対称的に配置されることを特徴とする請求項8に記載の磁気共鳴装置。
【請求項10】
前記複数の排出流路は、前記ガイド部が前記寝台天板をガイドする方向から見て互いに対称的に配置されることを特徴とする請求項8に記載の磁気共鳴装置。
【請求項11】
前記導入流路と前記排気流路との組合せが、前記ガイド部が前記寝台天板をガイドする方向から見て対称的に設けられることを特徴とする請求項8に記載の磁気共鳴装置。
【請求項12】
静磁場を発生する静磁場磁石と、
前記静磁場に重畳するための傾斜磁場を発生する傾斜磁場コイルと、
寝台天板およびこの寝台天板に載置された被検体を挿入するための内部空間を前記静磁場磁石および前記傾斜磁場コイルの内側に形成するカバーと、
円筒状のベース部、ならびにこのベース部にその周方向に沿って並べて配置された複数の電気素子を含み、内部空間に配置された高周波コイルと、
前記ベース部の周方向に沿って冷却用気体を導く流路と、
前記流路から前記電気素子に向けて前記冷却用気体を吐出する少なくとも1つの吐出口と、
前記流路を通って前記吐出口より前記電気素子に向けて吐出されるような前記冷却用気体の流れを起こすことにより前記高周波コイルを冷却する冷却手段とを具備したことを特徴とする磁気共鳴装置。
【請求項13】
前記吐出口は、前記複数の電気素子と同数が、前記複数の電気素子のそれぞれに向けて前記冷却用気体を吐出するように設けられることを特徴とする請求項12に記載の磁気共鳴装置。
【請求項14】
前記複数の電気素子は、それぞれ異なる位置で前記ベース部の周方向に沿って配置された複数の第1の電気素子と複数の第2の電気素子とを含み、
前記流路は、前記ベース部の周方向に沿って冷却用気体を個別に導く第1の流路および第2の流路を含み、
前記少なくとも1つの吐出口は、前記第1の流路から前記第1の電気素子に向けて前記冷却用気体を吐出し、
さらに、前記第1の電気素子に向けて吐出された前記冷却用気体を前記第2の電気素子に吹き付けつつ前記第2の流路へと吸引する少なくとも1つの吸引口を備えることを特徴とする請求項12に記載の磁気共鳴装置。
【請求項15】
前記吸引口は、前記複数の第2の電気素子と同数が、前記複数の第2の電気素子のそれぞれに前記冷却用気体を吹き付けるように設けられることを特徴とする請求項14に記載の磁気共鳴装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2009−142647(P2009−142647A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−289956(P2008−289956)
【出願日】平成20年11月12日(2008.11.12)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【出願人】(594164531)東芝医用システムエンジニアリング株式会社 (892)
【Fターム(参考)】