説明

磁気処理装置

【課題】液体全体に対して万遍無く磁気処理を施すことで、除錆や防蝕、各種スケールの除去・付着防止を図る磁気処理装置を提供する。
【解決手段】各種の液体の流動経路中に配設され、当該液体に対して磁気処理を施す磁気処理装置であって、永久磁石が組み込まれた複数本の磁気発生ユニット2と、これら磁気発生ユニットを囲むように配置された磁性体覆い部材4と、磁気発生ユニットと磁性体覆い部材との間に介挿された少なくとも1本の磁性体シャフト6とを備えており、磁気発生ユニットと磁性体覆い部材及び磁性体シャフトとの間の磁気相互作用により、磁性体覆い部材で囲まれた領域全体に亘って均一の磁力を生じさせて、当該領域に沿って流動する液体全体に対して磁気処理を施す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば給水系、給湯系、各種冷却水系、空調冷温水系など、各種の液体を対象とした全ての配管についての除錆、防蝕、各種スケール(炭酸カルシウム、珪素化合物など)の除去及び付着防止を図るための磁気処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
給水系、給湯系、各種冷却水系、空調冷温水系などの配管内を流動する液体(例えば、水)には、例えば、カルシウムイオン、塩化物イオン、硫酸イオン、二酸化炭素などの各種成分が含まれており、赤錆の発生やスケールの析出付着といった障害の原因となっている。そこで、このような障害を除去するための技術として、例えば特許文献1に示すような装置が提案されている。かかる装置は、給水管の外側に複数の永久磁石が対向配置されるようになっており、これら複数の永久磁石により給水管内を流動する液体(水)に対する磁気処理が施される。
【0003】
ところで、永久磁石の磁力をそのまま効果的に液体(水)に作用させるためには、永久磁石の間に障害物を介在させないことが好ましい。しかし、従来の装置では、永久磁石の間に給水管が介在しているため、永久磁石の磁力は給水管で減ぜられてしまう。この場合、給水管内を流動する液体(水)全体に対して高い磁力を万遍無く均一に作用させることができないため、水全体に対する磁気処理を充分に且つ効果的に施すことが困難になる。
【0004】
また、液体(水)に対して充分に且つ効果的に磁気処理を施すためには、永久磁石を液体(水)に近接及び直接接触させるように配置することが好ましい。しかし、給水管の外側に永久磁石を対向配置する構成では、給水管の中央部分に向うに従って永久磁石からの距離が大きくなるため、それに応じて磁力の大きさ(強さ)が給水管の中央部分に向うに従って小さく(弱く)なる。この場合、液体(水)全体に対して万遍無く均一の磁力を作用させることができないため、磁気処理の程度に差が出てしまう。つまり、給水管内を流動する液体(水)に対して充分に磁気処理を施すことができる部分とそうでない部分とが生じ、その結果、液体(水)全体に対する磁気処理を充分に且つ効果的に施すことが困難になる。
【特許文献1】特開2004−8875号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような問題を解決するためになされており、その目的は、液体全体に対して万遍無く磁気処理を施すことで、除錆や防蝕、各種スケールの除去・付着防止を図る磁気処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような目的を達成するために、本発明は、各種の液体の流動経路中に配設可能であり、当該液体に対して磁気処理を施す磁気処理装置であって、永久磁石が組み込まれた複数本の磁気発生ユニットと、これら磁気発生ユニットを囲むように配置された磁性体覆い部材と、磁気発生ユニットと磁性体覆い部材との間に介挿された少なくとも1本の磁性体シャフトとを備えている。この場合、磁気発生ユニットと磁性体覆い部材及び磁性体シャフトとの間の磁気相互作用により、磁性体覆い部材で囲まれた領域全体に亘って均一の磁力を生じさせて、当該領域に沿って流動する液体全体に対して磁気処理を施す。
【発明の効果】
【0007】
本発明の磁気処理装置によれば、磁気発生ユニットと磁性体覆い部材との間に少なくとも1本の磁性体シャフトを介挿したことで、液体全体に対して均一の磁力を作用させることができるため、当該液体全体に万遍無く磁気処理を施すことができる。これにより、流動経路内における除錆や防蝕、各種スケールの除去・付着防止を図ることができる。
【0008】
また、磁気発生ユニットにおいて、少なくとも隣り合う一対の永久磁石を同極同士で対向させ、そして、これら同極同士が対向する一対の永久磁石の間に磁性体製のヨーク板を介在させたことで、磁束密度を向上させることができる。これに加えて、永久磁石を磁性体カバーで被覆することで、更に磁束密度を向上させることができる。これにより、液体に対する磁気処理能力を飛躍的に高めることができる。
【0009】
更に、磁性体覆い部材で囲まれた領域に磁力作用増大機構を設けたことで、当該領域に沿って流動する液体に対する磁力の作用を増大させることができる。具体的には、磁力作用増大機構として磁性体製の螺旋構造体を適用し、磁力線を螺旋状に発生させることで、磁場の広さ(強さ)を格段に向上させることができる。そして、かかる効果に加えて、螺旋構造体に沿って流動する液体の滞留時間を長引かせることにより、磁性体覆い部材で囲まれた領域に沿って流動する液体が磁力線と接触する回数を増大させることができる。
【0010】
また、磁性体覆い部材に形成された複数の開口により、当該磁性体覆い部材で囲まれた領域に沿って流動する液体に乱流を生じさせることができるため、流動する液体が磁力線と接触する回数を更に増大させることができる。これにより、液体全体に対して効率良く且つ確実に磁気処理を施すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の一実施の形態に係る磁気処理装置について、添付図面を参照して説明する。磁気処理装置の用途としては、例えば住居や集合住宅、医療施設や商業施設、温泉や宿泊施設などに構築された給水系、給湯系、各種冷却水系、空調冷温水系などの各種流動経路(配管)中に配設可能であり、当該配管内を流動する液体(例えば、水、冷却水、温泉水など)の全体に対して万遍無く効率的に且つ確実に磁気処理を施すことができる。
【0012】
図1(a),(b)に示すように、本実施の形態の磁気処理装置は、永久磁石(図2及び図3参照)が組み込まれた複数本の磁気発生ユニット2と、これら磁気発生ユニット2を囲むように配置された磁性体覆い部材4と、磁気発生ユニット2と磁性体覆い部材4との間に介挿された少なくとも1本の磁性体シャフト6とを備えており、磁気発生ユニット2と磁性体覆い部材4及び磁性体シャフト6との間の磁気相互作用により、磁性体覆い部材4で囲まれた領域全体に亘って均一の磁力を生じさせて、当該領域に沿って流動する液体全体に対して磁気処理を施すように構成されている。
【0013】
本実施の形態では一例として、6本の磁気発生ユニット2が中空円筒状の磁性体覆い部材4で囲まれた領域内に配置されており、当該磁性体覆い部材4の両側に設けられた円板状の支持板8により各磁気発生ユニット2が磁性体覆い部材4で囲まれた領域内に位置決め支持されている。なお、支持板8の材料としては、例えば300番系(301,304,316など)のステンレス(SUS)を適用することができるが、特にステンレス304が好ましい。
【0014】
具体的に説明すると、それぞれの磁気発生ユニット2には、磁性体覆い部材4に沿って延出した支持シャフト10が挿通されており、当該支持シャフト10の両端側には、ねじ部(例えば、雄ねじ)10sが形成されている(図2参照)。この場合、6本の磁気発生ユニット2を磁性体覆い部材4で囲まれた領域内にセットした後、各磁気発生ユニット2の両端側のねじ部10sを双方の支持板8に形成された固定用孔(図示しない)から外部に突出させた状態で、各支持板8の外部からねじ部10sにナット12(内径に雌ねじが切られたナット)を螺合させて締め付けることにより、支持シャフト10を支持板8相互間に支持することができる。
【0015】
そして、更にナット12を各ねじ部10sに沿って螺進させて締め付けることで、各支持板8を磁性体覆い部材4の両側に圧接して固定させることができ、これにより、支持板8相互間に支持された6本の磁気発生ユニット2を磁性体覆い部材4で囲まれた領域内に位置決めして支持することができる。なお、これ以外の支持方法としては、支持シャフト10の両端側を支持板8に溶接又は溶着、或いは接着剤で接着させても良い。
【0016】
図1の構成例では、中空円筒状の磁性体覆い部材4に対して円板状の支持板8が同中心に固定されており、6本の磁気発生ユニット2は、その1本が磁性体覆い部材4と同中心となるように支持板8の中心に位置決め支持され、当該1本の磁気発生ユニット2の周りに残りの5本が同心円状に且つ周方向に沿って等間隔に位置決め支持されている。この場合、6本の磁気発生ユニット2の中心間距離(支持シャフト10相互間距離)は、互いに等しくなるように設定されている。なお、支持シャフト10の材料としては、例えば400番系(403,405,410,430,434など)のステンレス(SUS)を適用することができるが、特にステンレス430が好ましい。
【0017】
図2(a)に示すように、磁気発生ユニット2には、複数の永久磁石14が組み込まれており、少なくとも隣り合う一対の永久磁石14は、同極同士が対向するように配列されている。また、同極同士が対向する一対の永久磁石14の間には、磁性体で形成されたヨーク板16が介在されており、各永久磁石14は、磁性体で形成された磁性体カバー18で被覆されている。具体的に説明すると、円板状の永久磁石14を2枚ずつ合わせて配列すると共に、その間に円板状のヨーク板16を同心円状に挟み込んだものを基本ユニット2aとして構成する。そして、ヨーク板16の両側に配列された2枚の永久磁石を中空円筒状の磁性体カバー18で被覆する。
【0018】
この場合、ヨーク板16及び磁性体カバー18の材料としては、例えば400番系(403,405,410,430,434など)のステンレス(SUS)を適用することができるが、特にステンレス430が好ましい。また、ヨーク板16の両側に被覆した磁性体カバー18は防水性を有しており、ヨーク板16に磁性体カバー18を装着(例えば、溶接又は溶着、接着剤で接着)すると、その内部が気密及び液密状態となるため、ヨーク板16の両側の永久磁石14が液体に直接さらされることは無い。
【0019】
図2(a)の構成例では、N極同士を対向させた永久磁石14の間にヨーク板16が介在されており、これによりヨーク板16からN極磁性の磁力線を生じさせるN波基本ユニット2aが構成される。また、N波基本ユニット2aには、その中心に永久磁石14からヨーク板16及び磁性体カバー18に亘って貫通した貫通孔2hが形成されている。この場合、当該貫通孔2hに支持シャフト10を挿通し、複数のN波基本ユニット2aを支持シャフト10に沿って配列させる。そして、支持シャフト10の両側(ねじ部10s)から固定ナット20で締め付けることで、複数のN波基本ユニット2aが支持シャフト10に固定された1本の磁気発生ユニット2を構成することができる。この場合、支持シャフト10に配列させるN波基本ユニット2aの個数に応じて、磁束密度を任意の強さ(ガウス)に設定することができる。
【0020】
例えば、1個の永久磁石14の強さが800ガウスとすると、これが組み込まれたN波基本ユニット2aの磁束密度は約4,200ガウスとなり、更に、ヨーク板16の両側の2枚の永久磁石を磁性体カバー18で被覆すると、その磁束密度は約5,000ガウスに上昇する。そして、このようなN波基本ユニット2aを支持シャフト10に沿って複数配列することで、磁束密度を約7,000ガウス以上に設定することができる。なお、N波基本ユニット2aの配列個数は、使用目的や使用環境に応じて任意に設定されるため、ここでは特に限定しない。
【0021】
ここで、磁気発生ユニット2に適用可能な永久磁石14の一例としては、ネオジウム系磁石を適用することが好ましい。ネオジウム系磁石は、市販されている永久磁石の中では最も強力な磁石であり、その磁力は、通常のフェライト磁石の10倍以上、アルニコ磁石の6〜7倍である。この結果、ネオジウム系磁石を用いた磁気発生ユニット2では、略7000ガウス程度の強力な磁力を発生させることが可能となる。ただし、ネオジウム磁石は熱に弱く、一定の温度を超過すると磁力が低下する場合がある。そのような場合を考慮すると、耐熱ネオジウム磁石を適用しても良い。なお、これ以外の永久磁石14として、例えば、フェライト磁石(Baフェライト、Srフェライト)、アルニコ磁石、サマリウム系磁石を適用しても良い。
【0022】
このような磁気発生ユニット2において、各N波基本ユニット2aの相互間には、環状のスペーサ22が介在されており、当該スペーサ22の幅寸法に応じてN波基本ユニット2a相互間に所定の隙間Wが構成されている。このように隙間Wを構成すると、磁性体覆い部材4で囲まれた領域に沿って流動する液体は、その一部が隙間Wに入り込むことで、磁気発生ユニット2の周りを例えば螺旋状に回転しながら流動する。この場合、当該液体がヨーク板16から生じているN極磁性の磁力線と接触する回数が増大するため、液体に対する磁気処理効率が向上することになる。また、液体の回転流動は、N波基本ユニット2a相互の隙間Wの大きさに応じて変化させることができるが、当該隙間Wは、磁気発生ユニット2の使用目的や使用環境に応じて任意に設定されるため、ここでは特に数値限定はしない。
【0023】
ここで、磁気発生ユニット2の構成としては図2(a)に限定されることは無く、これに代えて例えば図2(b)に示すように、S極同士を対向させた永久磁石14の間にヨーク板16を介在させても良い。この場合、ヨーク板16からS極磁性の磁力線を生じさせるS波基本ユニット2bから成る磁気発生ユニット2が構成される。また、例えば図2(c)に示すように、N波基本ユニット2aとS波基本ユニット2bとを組み合わせて磁気発生ユニット2を構成しても良い。なお、いずれの構成(図2(b),(c))においても、その効果は、図2(a)に示す磁気発生ユニット2と同様であるため、その説明は省略する。
【0024】
また、磁性体覆い部材4には、複数の開口4h(図1参照)が形成されており、これら開口4hにより磁性体覆い部材4で囲まれた領域に沿って流動する液体に乱流を生じさせることができる。具体的に説明すると、支持板8に形成された複数の液体流動口8h(図1参照)を通して磁性体覆い部材4に流動した液体は、その一部が複数の開口4hを循環することで液体全体が撹拌され、その結果、当該液体は乱流となって磁性体覆い部材4で囲まれた領域に沿って流動する。同時に、磁性体覆い部材4で囲まれた領域に沿って流動する液体は、その一部が隙間Wに入り込むことで、磁気発生ユニット2の周りを例えば螺旋状に回転しながら流動する。これにより、液体がヨーク板16から生じているN極磁性の磁力線と接触する回数が増大し、液体に対する磁気処理効率を飛躍的に向上させることができる。
【0025】
なお、各開口4hの大きさや単位面積当りの数については、磁気発生ユニット2の使用目的や使用環境に応じて任意に設定されるため、ここでは特に数値限定はしない。また、液体流動口8hの大きさや数、位置については、液体が磁性体覆い部材4で囲まれた領域に沿ってスムーズに流動できれば、任意に設定することができる。ただし、後述する磁性体シャフト6を介挿させるために、少なくとも磁性体シャフト6の両端側を支持する部分を避けて液体流動口8hを形成することが好ましい。
【0026】
また、図1に示すように、本実施の形態の磁気処理装置において、複数(図面では6本)の磁気発生ユニット2と磁性体覆い部材4との間には、磁性体シャフト6が介挿されている。ここで、1本の磁気発生ユニット2の周りに同心円状に且つ周方向に沿って等間隔に位置決め支持された5本の磁気発生ユニット2と磁性体覆い部材4との位置関係を考察すると、これら5本の磁気発生ユニット2と磁性体覆い部材4との間には、比較的広い5つのスペースが周方向に沿って等間隔に形成されることになる。この場合、5つのスペースは、その中央部分が磁気発生ユニット2及び磁性体覆い部材4から比較的離れた位置となるため、当該中央部分の磁束密度が他の部分よりも低下してしまう。
【0027】
そこで、これら5つのスペースの中央部分にそれぞれ1本の磁性体シャフト6を介挿すると、当該磁性体シャフト6が磁気発生ユニット2の磁力作用を受けることで着磁し、当該磁性体シャフト6周りに磁場が形成され、その結果、これら5つのスペースにおける磁束密度を他の部分と同一の大きさ(強さ)に向上させることができる。これにより、磁気発生ユニット2と磁性体覆い部材4及び磁性体シャフト6との間の磁気相互作用により、磁性体覆い部材4で囲まれた領域全体に亘って均一の磁力を生じさせることが可能となり、当該領域に沿って流動する液体全体に対して万遍無く磁気処理を施すことができる。
【0028】
なお、磁性体シャフト6の介挿方法としては、例えば磁性体シャフト6の両端側にねじ部(例えば、雄ねじ)6sが形成されている場合、まず、当該磁性体シャフト6の両端側のねじ部6sを双方の支持板8に形成された固定用孔(図示しない)から外部に突出させる。そして、この状態で、各支持板8の外部からねじ部6sにナット24(内径に雌ねじが切られたナット)を螺合させて締め付ける。これにより、磁性体シャフト6を磁気発生ユニット2と磁性体覆い部材4との間に介挿した状態で、支持板8相互間に固定することができる。なお、これ以外の方法としては、磁性体シャフト6の両端側を支持板8に溶接又は溶着、或いは接着剤で接着させても良い。また、磁性体シャフト6の材料としては、例えば400番系(403,405,410,430,434など)のステンレス(SUS)を適用することができるが、特にステンレス430が好ましい。
【0029】
ここで、本実施の形態の磁気処理装置を例えば給水系の流動経路(配管)に配設し、当該流動経路(配管)を流動する液体(水)に磁気処理を施すプロセスについて説明する。
給水系の流動経路(配管)を通って流動する液体(水)は、磁気処理装置において、支持板8の複数の液体流動口8hから磁性体覆い部材4に流れ込む。このとき、磁性体覆い部材4に流動した液体(水)は、その一部が複数の開口4hを循環することで液体(水)全体が撹拌され、その結果、当該液体(水)は乱流となって磁性体覆い部材4で囲まれた領域に沿って流動する。同時に、磁性体覆い部材4で囲まれた領域に沿って流動する液体(水)は、その一部が磁気発生ユニット2の隙間Wに入り込むことで、当該磁気発生ユニット2の周りを例えば螺旋状に回転しながら流動する。
【0030】
即ち、磁性体覆い部材4に流れ込んだ液体(水)は、乱流と螺旋状の回転を繰り返すことで、磁性体覆い部材4で囲まれた領域に沿って滞留時間を長引かせながら流動する。このとき、液体(水)は、磁性体覆い部材4で囲まれた領域において、磁気発生ユニット2から生じる磁力線と接触する回数を増大させながら流動し、その間に当該液体(水)全体に対して効率良く且つ確実に磁気処理が施される。また、磁気発生ユニット2と磁性体覆い部材4との間には、磁性体シャフト6が介挿されており、磁性体覆い部材4で囲まれた領域全体に亘って均一の磁力が生じているため、当該領域を流動する液体(水)全体に対して万遍無く磁気処理が施される。
【0031】
ここで、磁気処理とは、磁界の中で導体(水)が動くと、当該導体に電流が流れる現象(電磁誘導現象)を利用した処理方法であり、液体(水)に磁気処理を施す際には、当該液体(水)が磁界(磁場)に対して直角に通過することが条件になる。これはフレミングの左手の法則により、磁界、電流、水流(力)が互いに直角に作用することで磁気処理が成立するからである。かかる磁気処理プロセスによれば、液体(水)に含まれる例えば錆やスケールの原因となり得る各種成分(例えば、鉄イオン、カルシウムイオン、塩化物イオン、硫酸イオン、二酸化炭素など)の結晶構造が変化し、その結晶が大きくならない安定した平衡形になる。
【0032】
具体的に説明すると、スケールの主成分は水中のカルシウムイオンが析出したものであるが、磁気処理された液体(水)では、カルシウムの結晶構造が小さく(安定した平衡形に)なり、その結晶の成長が抑制されて分散(溶解)しやすい状態となる。これにより、給水系の流動経路(配管)にスケールとして付着し難くなり、流動経路(配管)に留まること無く流出される。また、既に流動経路(配管)に固着しているスケールは、その結晶構造(粒子)が丸みを帯びて相互間の付着力が低下し、徐々に剥離して流出される。更に、磁気処理された液体(水)は、自然界に存在する水本来の性質を取り戻す作用があるため、例えばスライムや藻の発生が防止される。
【0033】
また、錆には、「赤錆」と称される三酸化鉄(Fe)と「黒錆」と称される四酸化鉄(Fe)とがあるが、赤錆は不安定であり常に成長し、赤水の原因となり、一方、黒錆は強固な不動態となる。この場合、液体(水)を磁気処理すると、赤錆がマグネタイト(四酸化鉄)化され、当該マグネタイトが不動態保護被膜となることで、赤錆の成長や赤水の発生を防止する。即ち、赤錆の表面にマグネタイトが被膜生成されると、液体(水)中の酸素や腐食因子が遮断されるため、赤錆の成長や赤水の発生が防止される。同時に、マグネタイト化された赤錆は、剥離しやすい状態となるため、剥離とマグネタイト化とが繰り返されることで、流動経路(配管)に固着している赤錆は徐々に剥離して流出される。
【0034】
以上、本実施の形態の磁気処理装置によれば、磁気発生ユニット2と磁性体覆い部材4との間に磁性体シャフト6を介挿したことで、液体全体に対して均一の磁力を作用させることができるため、当該液体全体に万遍無く磁気処理を施すことができる。これにより、流動経路内における除錆や防蝕、各種スケールの除去・付着防止を図ることができる。
【0035】
また、磁気発生ユニット2において、少なくとも隣り合う一対の永久磁石14を同極同士で対向させ、そして、これら同極同士が対向する一対の永久磁石14の間に磁性体製のヨーク板16を介在させたことで、磁束密度を向上させることができる。これに加えて、永久磁石14を磁性体カバー18で被覆することで、更に磁束密度を向上させることができる。これにより、液体に対する磁気処理能力を飛躍的に高めることができる。
【0036】
更に、磁性体覆い部材4に形成された複数の開口4hにより、当該磁性体覆い部材4で囲まれた領域に沿って流動する液体に乱流を生じさせることができるため、流動する液体が磁力線と接触する回数を更に増大させることができる。これにより、液体全体に対して効率良く且つ確実に磁気処理を施すことができる。
【0037】
なお、本発明は、上述した実施の形態に限定されることは無く、以下のように変更することが可能である。
例えば図3(a)〜(d)に示された磁気処理装置において、磁性体覆い部材4(図1参照)で囲まれた領域に、当該領域に沿って流動する液体に対する磁力の作用を増大させる磁力作用増大機構を設けても良い。この場合、磁力作用増大機構は、例えば磁気発生ユニット2及び磁性体シャフト6の一方或いは双方に設けることが可能であり、磁性体覆い部材4で囲まれた領域に沿って螺旋状に延出した磁性体製の螺旋構造体26,28,30,32を備えている。
【0038】
図3(a)には、磁気発生ユニット2に設けられた螺旋構造体26の構成例が示されている。螺旋構造体26は、磁気発生ユニット2とは別体で構成されており、当該磁気発生ユニット2の外周に沿って所定の旋回ピッチPで螺旋状に巻き付けられている。この場合、螺旋構造体26は、所定の径寸法の断面略円形を成しており、その両端側が磁気発生ユニット2に固定されている。なお、螺旋構造体26の材料としては、例えば400番系(403,405,410,430,434など)のステンレス(SUS)を適用することができるが、特にステンレス430が好ましい。
【0039】
かかる構成によれば、螺旋構造体26により磁力線を螺旋状に発生させることで、磁場の広さ(強さ)を格段に向上させることができると共に、当該螺旋構造体26に沿って流動する液体の滞留時間を長引かせることができるため、磁性体覆い部材4で囲まれた領域に沿って流動する液体が磁力線と接触する回数を増大させることができる。これにより、流動経路内における除錆や防蝕、各種スケールの除去・付着防止を更に効率的に且つ確実に図ることができる。なお、螺旋構造体26の旋回ピッチP及び径寸法は、磁気処理装置の使用目的や使用環境に応じて任意に設定されるため、ここでは特に限定しない。
【0040】
図3(b)には、単体の磁性体カバー18で複数の永久磁石14及びヨーク板16の全体が覆われた磁気発生ユニット2が例示されている。この例において、螺旋構造体28は、磁気発生ユニット2と一体的に構成されており、磁性体カバー18の外周面に沿って所定の旋回ピッチPで螺旋状に巻きつけられている。この場合、螺旋構造体28は、所定の幅寸法の断面略矩形の薄板状を成している点を除いて、その効果は、上述した螺旋構造体26(図3(a)参照)と同様であるため、その説明は省略する。
【0041】
ここで、螺旋構造体28を磁性体カバー18と一体化させる方法としては、例えば、螺旋構造体28を磁性体カバー18の外周面に後付け(溶接、溶着、接着)しても良いし、又は、磁性体カバー18の成形と同時に螺旋構造体28を一体的に成形しても良い。また、螺旋構造体28の材料としては、例えば400番系(403,405,410,430,434など)のステンレス(SUS)を適用することができるが、特にステンレス430が好ましい。なお、螺旋構造体28の旋回ピッチP及び幅寸法は、磁気処理装置の使用目的や使用環境に応じて任意に設定されるため、ここでは特に限定しない。
【0042】
また、図3(c)には、磁性体シャフト6に設けられた螺旋構造体30の構成例が示されている。螺旋構造体30は、磁性体シャフト6とは別体で構成されており、当該磁性体シャフト6の外周に沿って所定の旋回ピッチPで螺旋状に巻き付けられている。この場合、螺旋構造体30は、所定の径寸法の断面略円形を成しており、その両端側が磁性体シャフト6に固定されている。なお、螺旋構造体30の材料としては、例えば400番系(403,405,410,430,434など)のステンレス(SUS)を適用することができるが、特にステンレス430が好ましい。
【0043】
かかる構成によれば、螺旋構造体30により磁力線を螺旋状に発生させることで、磁場の広さ(強さ)を格段に向上させることができると共に、当該螺旋構造体30に沿って流動する液体の滞留時間を長引かせることができるため、磁性体覆い部材4で囲まれた領域に沿って流動する液体が磁力線と接触する回数を増大させることができる。これにより、流動経路内における除錆や防蝕、各種スケールの除去・付着防止を更に効率的に且つ確実に図ることができる。なお、螺旋構造体30の旋回ピッチP及び径寸法は、磁気処理装置の使用目的や使用環境に応じて任意に設定されるため、ここでは特に限定しない。
【0044】
図3(d)には、磁性体シャフト6と一体的に構成された螺旋構造体32が例示されている。螺旋構造体32は、磁性体シャフト6と一体的に構成されており、磁性体シャフト6の外周面に沿って所定の旋回ピッチPで螺旋状に巻きつけられている。この場合、螺旋構造体32は、所定の幅寸法の断面略矩形の薄板状を成している点を除いて、その効果は、上述した螺旋構造体30(図3(c)参照)と同様であるため、その説明は省略する。
【0045】
ここで、螺旋構造体32を磁性体シャフト6と一体化させる方法としては、例えば、螺旋構造体32を磁性体シャフト6の外周面に後付け(溶接、溶着、接着)しても良いし、又は、磁性体シャフト6の成形と同時に螺旋構造体32を一体的に成形しても良い。また、螺旋構造体32の材料としては、例えば400番系(403,405,410,430,434など)のステンレス(SUS)を適用することができるが、特にステンレス430が好ましい。なお、螺旋構造体32の旋回ピッチP及び幅寸法は、磁気処理装置の使用目的や使用環境に応じて任意に設定されるため、ここでは特に限定しない。
【0046】
また、上述した実施の形態の磁気発生ユニット2において、スペーサ22(図1及び図2参照)は必ずしも必要な構成品では無く、スペーサ22の代わりにヨーク板16を介在させて、当該ヨーク板16の両側に同極同士の永久磁石14を隣接するように構成しても良い。例えば図4(a)には、図2(a)の磁気発生ユニット2において、スペーサ22の代わりにヨーク板16を介在した構成例が示されている。また、例えば図4(b)には、図2(b)の磁気発生ユニット2において、スペーサ22の代わりにヨーク板16を介在した構成例が示されている。なお、これらの構成例では、ヨーク板16を2枚の永久磁石14ごとに介在させているが、これに限定されることは無く、例えば図4(c),(d)に示すように、永久磁石14の1枚ごとにヨーク板16を介在させても良い。
【0047】
また、上述した実施の形態の磁気処理装置において、液体中に銀イオンを放出する銀含有素材を盛り込んで、当該液体中の塩素を除去するようにしても良い。この場合、銀含有素材としては、例えば銀のほか、各種の銀の化合物でも良いが、銀イオンの放出量は銀の含有量に比例して増減するため、銀の含有量が多い素材を選択することが好ましい。
なお、銀含有素材の盛り込み方法としては、例えば磁気発生ユニット2や磁性体覆い部材4、或いは磁性体シャフト6の表面に塗布したり、埋め込めば良い。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の一実施の形態に係る磁気処理装置の構成を示す図であって、(a)は、支持板側から見た平面図、(b)は、磁気処理装置の内部構成を示す側面図。
【図2】(a)は、磁気発生ユニットに組み込まれた永久磁石の配列構成例を示す図、(b)は、磁気発生ユニットに組み込まれた永久磁石の他の配列構成例を示す図、(c)は、磁気発生ユニットに組み込まれた永久磁石の他の配列構成例を示す図。
【図3】本発明の変形例に係る磁気処理装置を示す図であって、(a)は、磁気発生ユニットの外周に別体で設けられた螺旋構造体の構成を示す図、(b)は、磁気発生ユニットの外周面に一体的に設けられた螺旋構造体の構成を示す図、(c)は、磁性体シャフトの外周に別体で設けられた螺旋構造体の構成を示す図、(d)は、磁性体シャフトの外周面に一体的に設けられた螺旋構造体の構成を示す図。
【図4】本発明の変形例に係る磁気処理装置を示す図であって、(a)〜(d)は、複数の永久磁石の配列の変形例を示す図。
【符号の説明】
【0049】
2 磁気発生ユニット
4 磁性体覆い部材
6 磁性体シャフト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
各種の液体の流動経路中に配設可能であり、当該液体に対して磁気処理を施す磁気処理装置であって、
永久磁石が組み込まれた複数本の磁気発生ユニットと、
これら磁気発生ユニットを囲むように配置された磁性体覆い部材と、
磁気発生ユニットと磁性体覆い部材との間に介挿された少なくとも1本の磁性体シャフトとを備えており、
磁気発生ユニットと磁性体覆い部材及び磁性体シャフトとの間の磁気相互作用により、磁性体覆い部材で囲まれた領域全体に亘って均一の磁力を生じさせて、当該領域に沿って流動する液体全体に対して磁気処理を施すことを特徴とする磁気処理装置。
【請求項2】
磁気発生ユニットには、複数の永久磁石が組み込まれており、少なくとも隣り合う一対の永久磁石は、同極同士が対向するように配列されていることを特徴とする請求項1に記載の磁気処理装置。
【請求項3】
同極同士が対向する一対の永久磁石の間には、磁性体で形成されたヨーク板が介在されていることを特徴とする請求項2に記載の磁気処理装置。
【請求項4】
磁気発生ユニットにおいて、永久磁石は、磁性体で形成された磁性体カバーで被覆されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1に記載の磁気処理装置。
【請求項5】
磁性体覆い部材には、複数の開口が形成されており、これら開口により磁性体覆い部材で囲まれた領域に沿って流動する液体に乱流を生じさせることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1に記載の磁気処理装置。
【請求項6】
磁性体覆い部材で囲まれた領域には、当該領域に沿って流動する液体に対する磁力の作用を増大させる磁力作用増大機構が設けられていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1に記載の磁気処理装置。
【請求項7】
磁力作用増大機構は、磁気発生ユニット及び磁性体シャフトの少なくとも一方に設けられ、磁性体覆い部材で囲まれた領域に沿って螺旋状に延出した磁性体製の螺旋構造体を備えており、
螺旋構造体により磁力線を螺旋状に発生させると共に、当該螺旋構造体に沿って流動する液体の滞留時間を長引かせることにより、磁性体覆い部材で囲まれた領域に沿って流動する液体が磁力線と接触する回数を増大させることを特徴とする請求項6に記載の磁気処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−167751(P2007−167751A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−367870(P2005−367870)
【出願日】平成17年12月21日(2005.12.21)
【出願人】(504186529)株式会社 日本磁化学研究所 (10)
【出願人】(305040363)
【Fターム(参考)】