磁気層および交換ブレーク層を含む装置
【課題】磁気記録層へのデータの書込を容易にし、かつ記録層の熱的安定性を上げる。
【解決手段】装置は、第1の磁気層62と、第1の磁気層上に形成される第1の交換ブレーク層64と、第1の交換ブレーク層上に形成される第2の磁気層66と、第2の磁気層上に形成される第2の交換ブレーク層と、第2の交換ブレーク層上に形成される第3の磁気層とを含み得る。第1の磁気層は第1の磁気異方性エネルギHk1を有する。第2の磁気層は第2の磁気異方性エネルギHk2を有する。第3の磁気層は第3の磁気異方性エネルギHk3を有する。一部の実施の形態において、Hk1−Hk2はHk2−Hk3よりも小さい。一部の実施の形態において、装置は垂直磁気記録媒体である。
【解決手段】装置は、第1の磁気層62と、第1の磁気層上に形成される第1の交換ブレーク層64と、第1の交換ブレーク層上に形成される第2の磁気層66と、第2の磁気層上に形成される第2の交換ブレーク層と、第2の交換ブレーク層上に形成される第3の磁気層とを含み得る。第1の磁気層は第1の磁気異方性エネルギHk1を有する。第2の磁気層は第2の磁気異方性エネルギHk2を有する。第3の磁気層は第3の磁気異方性エネルギHk3を有する。一部の実施の形態において、Hk1−Hk2はHk2−Hk3よりも小さい。一部の実施の形態において、装置は垂直磁気記録媒体である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の詳細な説明
技術分野
本発明は磁気層および交換ブレーク層を含む装置に関する。
【図面の簡単な説明】
【0002】
【図1】ハードディスクドライブの概略図である。
【図2】連続する段階的組成を含む磁気記録層における磁気異方性対硬質層からの距離のグラフ図である。
【図3】第1の磁気層、第1の交換ブレーク層、第2の磁気層、第2の交換ブレーク層および第3の磁気層を有する記録層を含む記録媒体スタックの一例を示す概略ブロック図である。
【図4A】本開示に従う複数の記録層における磁気異方性対磁気層の例示的グラフ図である。
【図4B】本開示に従う複数の記録層における磁気異方性対磁気層の例示的グラフ図である。
【図4C】本開示に従う複数の記録層における磁気異方性対磁気層の例示的グラフ図である。
【図4D】本開示に従う複数の記録層における磁気異方性対磁気層の例示的グラフ図である。
【図4E】本開示に従う複数の記録層における磁気異方性対磁気層の例示的グラフ図である。
【図5A】n枚の磁気層とn−1枚の交換ブレーク層とを交互に含む磁気記録層の一例を示す概略ブロック図である。
【図5B】n枚の磁気層とn−1枚の交換ブレーク層とを交互に含む磁気記録層の一例を示す概略ブロック図である。
【図6】磁気記録層を形成するための技術の一例を示すフロー図である。
【図7A】本開示に従い構成された磁気記録層の一例についてのスイッチング保磁力等高線図である。
【図7B】本開示に従い構成された磁気記録層の一例についてのエネルギバリア減少等高線図である。
【図8A】本開示に従い構成された磁気記録層の一例についてのスイッチング保磁力等高線図である。
【図8B】本開示に従い構成された磁気記録層の一例についてのエネルギバリア減少等高線図である。
【図9A】本開示に従い構成された磁気記録層の一例についてのスイッチング保磁力等高線図である。
【図9B】本開示に従い構成された磁気記録層の一例についてのエネルギバリア減少等高線図である。
【図10A】本開示に従い構成された磁気記録層の一例についてのスイッチング保磁力等高線図である。
【図10B】本開示に従い構成された磁気記録層の一例についてのエネルギバリア減少等高線図である。
【発明を実施するための形態】
【0003】
詳細な説明
図1は本開示の一局面に従う、磁気記録媒体を含む磁気ディスクドライブ10の一例を示す。ディスクドライブ10はベース12と、一部が切取られて示されるトップカバー14とを含む。ベース12はトップカバー14と結合して、ディスクドライブ10のハウジング16を形成する。ディスクドライブ10はさらに1つ以上の回転可能磁気記録媒体18を含む。磁気記録媒体18はスピンドル14に接続され、中央軸を中心として媒体18を回転させるよう動作する。磁気記録および読取ヘッド22は、磁気記録媒体18に隣接している。アクチュエータアーム20は磁気記録および読取ヘッド22を磁気記録媒体18と通信するよう運ぶ。
【0004】
磁気記録媒体18は、磁気記録層において磁気的に配向されるビットとして情報を記憶する。磁気読出/書込ヘッド22は、磁気記録媒体18上の磁気記録層の個々のドメインを磁化するのに十分な磁場を生成する記録(書込)ヘッドを含む。磁気記録層のドメインのパターンはデータのビットを表わし、磁化配向の変化は1を表わす。0は、ビット長の約2倍の一定磁化を含む領域によって表わされる。磁気記録および書込ヘッド22はさらに読出ヘッドを含み、読出ヘッドは磁気記録層の個々の磁気ドメインの磁場を検出することができる。
【0005】
垂直磁気記録媒体は、磁気記録層において垂直磁気異方性場(Hk)を有し、磁気記録層の面に対して実質的に垂直な方向で形成される磁化を有する磁気記録媒体18である。垂直磁気記録媒体は磁気記録システムで用いることができる。垂直磁気記録媒体は、多結晶CoCrまたはCoPt酸化物含有磁気記録層で製造され得る。多結晶磁気記録層におけるCoリッチな領域は強磁性であるのに対して、Crまたは酸化物がリッチな領域は、多結晶磁気記録層において近接する粒界を形成し、非磁性である。隣接する強磁性粒子間の横方向の磁気交換結合は、粒子間の非磁性領域によって減衰される。
【0006】
ディスクドライブ10のような磁気データ記憶装置での進歩は、主に装置の記憶容量の増加による、すなわち磁気記録媒体18の面記録密度(平方インチ当りのギガビット(Gb/in2)によって表わされる)による。より小さい平均粒径の磁気記録媒体18は、磁気記録媒体の面記録密度を増加させ得る。
【0007】
高密度垂直磁気記録媒体は、磁気記録層におけるいくつかの磁気特性のバランスによって利益を享受し得る。これは、熱的安定のための高い磁気異方性、磁気記録ヘッドによる記録層を書込みやすくするための低いスイッチング磁場、磁性粒子または塊間で小さい相関長を維持するための、磁性粒子間での十分に低い横磁気交換結合、狭スイッチング場分布(SFD)を維持するための、磁性粒子間の十分に高い横磁気交換結合、および熱的安定性を維持しかつSFDを最小化するための、粒子間の十分に均一な磁気特性を含む。
【0008】
面記録密度が増加するにつれ、より小さい平均径の磁性粒子を用いて、記録されるビットでの同じ値の磁性粒子数を維持できる。しかし、平均粒径が減少するにつれ、磁気記録媒体の磁気的安定性がより大きな関心事となる。
【0009】
磁性粒子は磁気異方性エネルギによりその磁気配向を維持し、これは粒子体積(KuVであって、Kuは単位体積当りの磁気異方性エネルギであり、Vは体積である)に比例する。磁気異方性エネルギは熱エネルギ変動と競合し、粒子の磁化を任意に再配向させることになる。熱エネルギ変動は磁気記録層の温度に依存する(kBT、ここでkBはボルツマン定数であり、Tは温度である)。磁気異方性エネルギ対熱エネルギの比(KuV/kT)はエネルギバリアと呼ばれ、粒子の磁気的安定性の度合いを示すものであり、それぞれの粒子の体積に比例する。したがって、粒径(粒子の体積)を減少させると面密度は増加するが、単位体積当り同じ磁気異方性エネルギKuを有する粒子については熱安定性が減少する。Kuは単位体積当りの磁気異方性エネルギを表わすが、以降Kuは簡単にするために磁気異方性エネルギと呼ぶことにする。
【0010】
平均粒径の減少による熱的安定性の減少を克服する1つの方法は、磁性粒子の平均異方性磁場Hkを増加させることである(Hk=2Ku/Ms、ここでMsは材料の飽和磁化である)。より高い磁気異方性場を有する磁性粒子は、一般により高い磁気異方性エネルギKuを有し、より低い磁気異方性場を有する同様のサイズの粒子よりも熱的に安定している。しかし、粒子の平均磁気異方性場を増加させることは、粒子の磁気配向を変えるために用いられる磁場をも増加させ得るので、データを記録するために用いられる磁場を増加させることになる。
【0011】
ここで記載されるのは磁気記録層用の交換結合複合(ECC)構造であり、磁気記録層へのデータの書込を容易にしながら受入可能な値以上で磁気記録層の熱的安定性(すなわち、エネルギバリア)を維持する。一部の実施の形態において、ここに記載されるECC構造は、他の磁気記録層と比較して、磁気記録層へのデータの書込を容易にし、かつ記録層の熱的安定性を上げる。
【0012】
提案している一部のECC構造では、磁気記録層は連続する段階的な材料からなる(たとえば、磁気記録層の組成は実質的に連続して変わり、別個の副層には分けられない)。このような連続する段階的ECC構造では、磁気記録層の磁気異方性が、最も高い異方性部分からの距離の二乗に比例して減少するような(Hkal/x2;xは最も高い異方性部分からの距離)、組成勾配を選択することが提案されている。すなわち、磁気記録層の磁気異方性は、磁気記録層の高い異方性部分内および近くではより迅速に減少し、高い異方性部分からの距離が増加するにつれより遅く減少するべきである。これは図2に示されるように、磁気異方性対磁気記録層での位置のグラフでは凹形状をもたらす。このようなHkal/x2磁気異方性勾配が提案されている例では、磁気記録層の最も高い異方性部分は、記録層の残りのより低い異方性部分の働きがなくても熱的に安定している。
【0013】
図1に示される磁気記録媒体18は、本開示に従うECC記録層構造を含む。本開示に従うECC記録層の一実施の形態の概略ブロック図は図3に示される。図3に示される磁気記録媒体18は、基板32、軟質下地層(SUL)34、第1の中間層36、第2の中間層38、垂直記録層40、および保護オーバコート54を含む。
【0014】
基板32は磁気記録媒体で用いるのに適するどのような材料をも含むことができ、たとえばAl、NiP被覆Al、ガラス、またはセラミックガラスを含む。
【0015】
図2には示されていないが、一部の実施の形態において、さらなる下地層が基板32のすぐ上にあってもよい。このさらなる下地層は非晶質であって、基板に接着性を与え、表面粗さを小さくする。
【0016】
軟質下地層(SUL)34は基板32(または、ある場合はさらなる下地層)上に形成される。SUL34は十分な飽和磁化(Ms)および低い磁気異方性場(Hk)を有するいずれかの軟質磁性材料であり得る。たとえば、SUL34はNi、Co、Feのような非晶質の軟質磁性材料、NiFe(パーマロイ)、FeSiAlもしくはFeSiAlNのようなFe含有合金、CoZr,CoZrCr、もしくはCoZrNbのようなCo含有合金、またはCoFeZrNb,CoFe、FeCoBもしくはFeCoCのようなCoFe含有合金であり得る。
【0017】
第1の中間層36および第2の中間層38を用いてHCP(六方稠密構造)結晶配向をもたらすことができ、これは第1の磁気層42のHCP(0002)成長を引起し、膜面に対して垂直の磁化容易軸を有する。
【0018】
たとえばダイヤモンド状炭素のような保護オーバコート54を、垂直記録層40上に形成することができる。別の例として、保護オーバコート54は水素または窒素をさらに含む非晶質の炭素層を含み得る。図3には示されていないが、一部の実施の形態において、潤滑層を保護オーバコート54上に形成することができる。
【0019】
垂直記録層40は第2の中間層38上に形成でき、第1の磁気層42、第1の交換ブレーク層44、第2の磁気層46、第2の交換ブレーク層48、第3の磁気層50、および任意にCGC層52を含むことができる。第1の磁気層42は第1の磁気異方性場Hk1を有する。第2の磁気層46は第2の磁気異方性場Hk2を有する。第3の磁気層50は第3の磁気異方性場Hk3を有する。第1の磁気層42、第2の磁気層46および第3の磁気層50の各々の磁気異方性は、記録層40の面に対して実質的に垂直な方法で配向される(たとえば、第1の磁気層42、第2の磁気層46および第3の磁気層50の各々の磁化容易軸は、記録層40の面に対して実質的に垂直であり得る)。第1の交換ブレーク層44を用いて、第1の磁気層42と第2の磁気層46との間の縦交換結合を調整することができる。第2の交換ブレーク層48を用いて、第2の磁気層46と第3の磁気層50との間の縦交換結合を調整することができる。一部の例において、磁気記録層40はさらなる交換ブレーク層および磁気層(たとえば、n枚の磁気層およびn−1枚の交換ブレーク層)を含むことができる。
【0020】
第1の磁気層42、第2の磁気層46および第3の磁気層50の各々は粒状であってもよく、非磁性材によって隣接する磁性粒子と実質的に分離される磁性粒子を含み得る。一部の実施の形態において、第1の磁気層42、第2の磁気層46および第3の磁気層50の少なくとも1つは、Co合金、たとえば、Coと、Cr、Ni、Pt、Ta、B、Nb、O、Ti、Si、Mo、Cu、Ag、Ge、またはFeの少なくとも1つとの組合せを含み得る。一部の実施の形態において、第1の磁気層42、第2の磁気層46および第3の磁気層50の少なくとも1つは、たとえばFe−Pt合金またはSm−Co合金を含み得る。一部の実施の形態において、第1の磁気層42、第2の磁気層46および第3の磁気層50の少なくとも1つは、Co合金およびPt合金の薄膜層を交互に、またはCo合金およびPd合金の薄膜層を交互に含み得る。一部の実施の形態において、第1の磁気層42、第2の磁気層46および第3の磁気層50の少なくとも1つにおいて粒子を分離している非磁性材は、磁性粒子を分離する酸化物、たとえばSiO2、TiO2CoO、Cr2O3、Ta2O5の酸化物を含み得る。別の実施の形態において、第1の磁気層42、第2の磁気層46および第3の磁気層50の少なくとも1つにおいて粒子を分離している非磁性材は、Cr、B、Cまたは他の非強磁性体を含み得る。
【0021】
一部の例において、第1の磁気層42、第2の磁気層46および第3の磁気層50の少なくとも1つは、Co−Pt合金を含んでもよい。層42、46および50の磁気異方性場を制御する1つの方法は、それぞれの層のPt含有量を制御することである。たとえば、より大きいPt含有量を有する磁気層は、より低いPt含有量を含む磁気層よりも高い磁気異方性場を有し得る。一部の例において、高い磁気異方性場の層は約18at.%を超えるPtを含み得る。本開示の一部の例に従い、Hk勾配は第1の磁気層42、第2の磁気層46および第3の磁気層50のPt含有量によって規定され得る。すなわち、一部の例においてPt1−Pt2<Pt2−Pt3であり、Pt1は第1の磁気層42のPt含有量、Pt2は第2の磁気層46のPt含有量、Pt3は第3の磁気層50のPt含有量である。一部の実施の形態においてPt1は約18at.%および約22at.%の間にあり、Pt2は約14at.%および約18at.%の間にあり、Pt3は約14at.%未満であり、Pt1−Pt2<Pt2−Pt3である。
【0022】
第1の交換ブレーク層44および第2の交換ブレーク層48の各々は相対的に低い飽和磁化(Ms)の材料を含む。たとえば、第1の交換ブレーク層44および第2の交換ブレーク層48の少なくとも一方はCoxRu1-x合金を含み得る。別の例として、第1の交換ブレーク層44および第2の交換ブレーク層48の少なくとも一方は、ルチウムを含むまたは本質的にルチウムからなる。ここで用いられる「本質的に〜からなる」は、層がその指定された材料からなるが、その指定された材料で生成された不純物、または隣接する層からその層に拡散された他の素子もしくは材料をも含み得ることを意味する。第1の交換ブレーク層44または第2の交換ブレーク層48がCoxRu1-x合金を含む例では、ブレーク層44または48は約3nm未満の厚さを有し得る。第1の交換ブレーク層44および第2の交換ブレーク層48が本質的にRuからなる例では、ブレーク層44または48はより薄く、たとえば約3Å未満であり得る。
【0023】
RuまたはCoxRu1-x合金に加えて、第1の交換ブレーク層44および/または第2の交換ブレーク層48は非磁性酸化物、たとえばSiO2、TiO2、CoO2,Cr2O3、Ta2O5を任意に含むことができる。この非磁性酸化物は、後で行なわれる第1の交換ブレーク層44上の粒状の第2の磁気層44の生成、または第2の交換ブレーク層48上の粒状の第3の磁気層50の生成を促進させる役割を果たし得る。一部の実施の形態において、第1の交換ブレーク層44および第2の交換ブレーク層48は実質的に同様の組成を含むことができるが、別の実施の形態では、異なる組成を含み得る。
【0024】
磁気記録層40はさらにCGC層52を任意に含むことができる。CGC層52は、たとえばCoCrPtB合金を含み得る。一部の実施の形態において、このCoCrPtB合金は金属または希土類元素、たとえばRu、WまたはNbでドーピングされてもよい。一部の実施の形態において、CGC層52は酸化物、たとえばSiOx、TiOx、TaOx、WOx、NbOx、CrOx、CoOxを少量含んでもよい。別の実施の形態において、CGC層52は酸化物を含まない(たとえば、どの酸化物をも含まない)。
【0025】
第1の磁気層42、第2の磁気層46および第3の磁気層50の特定の組成は、それぞれの層42、46、50の各々に対して所定の磁気異方性場Hkを与えるよう選択され得る。特に、第1の磁気層42の組成は第1の磁気異方性場Hk1を与えるよう選択することができる。第2の磁気層46の組成は第2の磁気異方性場Hk2を与えるよう選択することができる。第3の磁気層50の組成は第3の磁気異方性場Hk3を与えるよう選択することができる。一部の実施の形態において、第1の磁気層42であり得る最も硬い磁気層の磁気異方性場は、約30kOeに限定され得る(たとえば、Co合金で形成されている場合)。このため、磁気記録層40の平均粒径が十分に小さい場合、最も硬い磁気層は十分に安定しないかも知れない。これを解消するために、第1の磁気層42、第2の磁気層46および第3の磁気層50の平均異方性を相対的に高くして、3つの磁気層42、46および50の少なくとも2つが、磁気記録層40の磁気配向について熱的安定性をもたらすよう働くようにする。
【0026】
第1の磁気層42、第2の磁気層46および第3の磁気層50に対して相対的に高い平均磁気異方性場を達成しながらECC構造によって与えられる利点をも得る1つの方法は、Hk1およびHk2の差(すなわち、Hk1−Hk2)がHk2およびHk3の差(すなわち、Hk3−Hk3)よりも小さいよう、第1の磁気層42、第2の磁気層46および第3の磁気層50の組成を選択することである。すなわち、磁気記録層40の個々の層42、46および50の磁気異方性は、第1の磁気層42の近くではより遅く減少、または増加し、第1の磁気層42からの距離が大きくなるにつれより速く減少する。磁気記録層40におけるこのような磁気異方性場の分布は、凸状磁気異方性場分布と呼ぶ。凸状磁気異方性場分布は、磁気記録層40の磁気配向の熱的安定性および記録層40の書込容易性を与え得る。一部の例において、凸状磁気異方性分布は、相対的に高い磁気異方性場の材料からなる磁気記録層40のより大きい割合をもたらし得る。
【0027】
Hk1、Hk2およびHk3の特定の値は、たとえば、データを磁気記録層40に書込むのに用いられる記録ヘッド、それぞれの層42、46および50における個々の粒子の大きさ、他の2層のそれぞれの磁気異方性場、それぞれの層の厚さ、それぞれの層の飽和磁化などに依存し得る。一部の実施の形態において、それぞれの層42、46および50のHk値の範囲は、各層42、46および50のKuV磁気異方性エネルギの働きによって影響され得る。たとえば、より低いKuV値を有する第1の磁気層42は、より高いKuV値を有する第1の磁気層42よりも書込みやすい(すなわち、より低いKuVの値を有する層42における粒子の磁気配向をスイッチングするのにより低い磁場が与えられてもよい)。したがって、より低いKuV値を有する第1の磁気層42は、ECCによる書込処理を駆動させるのに、より低いHk2値を有する第2の磁気層46およびより低いHk3を有する第3の磁気層30を用いることができる。しかし、より低いKuV値は、全体として、垂直磁気層40の熱的安定性を維持するために、第2の磁気層46および第3の磁気層50からより大きい磁気異方性エネルギ寄与(KuV)を使用し得る。所与のHk値を有するある層、たとえば第2の磁気層46では、KuV異方性エネルギ寄与は、材料の飽和磁化Msを変更することによって影響され得る、すなわち、KuV=2HkV/Msである。さらに、または代替的に、有効量Vは、磁気層内の粒子間での横磁気交換を変更することによって変えることができ、これは有効磁気クラスタサイズ(実質的に同様の条件下で磁気配向を変える粒子のクラスタ)を変え得る。
【0028】
Hk1、Hk2、Hk3のとり得る値の範囲は、簡潔にするために個々で規定することもできるが、互いに組合せて規定された場合、よりよく理解され得る。なぜなら、Hk1、Hk2、Hk3間の差は、所定の磁気記録層構造を規定する1つの方法だからである。他の層のHk値に関連せずに単独で考慮されると、Hk1は約16kOe、一部の実施の形態では約24である。別の実施の形態において、Hk1は約24kOeまたは16kOe未満である。Hk1の例示的値は、約20kOeまたは約24kOeを含み得る。
【0029】
一部の実施の形態において、Hk2は約12kOeおよび約24kOeの間であり、別の実施の形態においてHk2は24kOeよりも大きくまたは12kOekよりも小さい。Hk2の例示的値は約12kOeおよび約15kOeの間、約16kOe、約19kOe、または約24kOeをとり得る。
【0030】
一部の実施の形態においてHk3は約15kOeよりも小さく、他の実施の形態では、Hk3は15kOeを超える。Hk3の例示的値は、約3kOeおよび約9kOeの間、約9kOe、約6kOe、または約1kOeである。
【0031】
一部の実施の形態において共に考慮されると、Hk1、Hk2、およびHk3がHk1−Hk2<Hk2−Hk3の関係を満たすよう、Hk1は約16kOeから約24kOeの間であり、Hk2は約12kOeから約24kOeの間であり、Hk3はHk2未満であり得る。一部の実施の形態において、Hk1は約20kOeから約22kOeの間であり、Hk2は約17kOeから約20kOeの間であり、Hk3は約9kOeから約14kOeの間であり得る。他の実施の形態において、層1のPt濃度は約18〜12at%である。層2のPt濃度は約14〜18at%であり、層3のPt濃度は約14at%よりも小さく、Hk2は約17−20kOeであり、Hk3は約9−14kOeである。
【0032】
一部の実施の形態において、Hk1、Hk2、およびHk3間の関係は、さらにHk2およびHk1の間の比率、および/またはHk3およびHk2の間の比率によって規定される。たとえば、Hk2/Hk1の比はHk3/Hk2の比よりも大きい。一部の実施の形態において、Hk2/Hk1は約0.6より大きく、Hk3/Hk2は約0.6未満であり得る。一部の実施の形態において、Hk2/Hk1は約0.7より大きく、Hk3/Hk2は約0.7未満であり得る。一部の実施の形態において、Hk2/Hk1は約0.9より大きく、Hk3/Hk2は約0.9未満であり得る。一部の実施の形態において、Hk2/Hk1は約1.0より大きく、Hk3/Hk2は約1.0未満であり得る。一実施の形態において、Hk2/Hk1の比は約1.2である。
【0033】
一部の実施の形態において、Hk2/Hk1の値と無関係に、Hk3/Hk2は約0.6未満である。一部の実施の形態において、Hk3/Hk2は約0.1未満である。
【0034】
第1の磁気層42、第2の磁気層46および第3の磁気層50の飽和磁化は同じまたは異なってもよい。一部の実施の形態において、第1の磁気層42、第2の磁気層46および第3の磁気層50の各々の飽和磁化Msは約350emu/cm3および約700emu/cm3の間にある。一部の実施の形態において、第1の磁気層42、第2の磁気層46および第3の磁気層50の少なくとも1つの飽和磁化は約450emu/cm3から約700emu/cm3の間にある。たとえば、第1の磁気層42、第2の磁気層46および第3の磁気層50の少なくとも1つの飽和磁化は約550emu/cm3である。
【0035】
第1の磁気層42の厚さは約5nmおよび約10nmの間にある。第2の磁気層46の厚さは約3nmおよび約7nmの間にある。第3の磁気層50の厚さは約10未満である。上記のように、それぞれの磁気層42、46および50の厚さは、それぞれの層42、46および50のHk値および/またはMsの選択に影響し得る。ある実施の形態において、第2の磁気層46の厚さは約4nm未満であり、Hk1/Hk2は約0.8より大きく、Hk2/Hk3は約0.8未満である。
【0036】
図4A−図4Eは第1の磁気層42、第2の磁気層46および第3の磁気層50の磁気異方性場構成の例を示す図である。図4A−図4Eは磁気記録層40の構成の例を示し、第1の磁気層42、第2の磁気層46および第3の磁気層50の組成は、差Hk1−Hk2が差Hk2−Hk3よりも小さいよう選択される。上記のように、Hk1、Hk2、およびHk3間の関係は、さらに第1の比Hk2/Hk1および/または第2の比Hk3/Hk2によってさらに規定される。
【0037】
たとえば、図4Aは、Hk1−Hk2がHk2−Hk3より小さい磁気記録層40を示す。さらに、Hk2/Hk1は約0.6よりも大きく、一部の実施の形態において約0.9よりも大きい。図4Aに示される磁気記録層40の構成の比Hk3/Hk2は、約0.6未満であり、0.1よりも小さくてもよい。たとえば、Hk1は約16kOeおよび約24kOeの間であり、Hk2は約12kOeおよび約24kOeの間であり、Hk3は約15kOe未満である。一実施の形態において、Hk1は約20kOeであり、Hk2は約16kOeであり、Hk3は約9kOeである。別の実施の形態において、Hk1は約20kOeであり、Hk2は約19kOeであり、Hk3は約6kOeである。さらなる実施の形態において、Hk1は約24kOeであり、Hk2は約16kOeであり、Hk3は約1kOeである。
【0038】
別の実施の形態として、図4Bは、Hk1−Hk2がHk2−Hk3より小さい磁気記録層40を示す。さらに、Hk1−Hk2は0よりも小さく、Hk2/Hk1は約1.0より大きい、たとえば約1.2である。図4Bに示される実施の形態では、比Hk3/Hk2は約0.6未満であり、一部の実施の形態では約0.1未満である。一実施の形態では、Hk1は約20kOe、Hk2は約24kOe、Hk3は約1kOeである。
【0039】
図4C−図4Eは、第3の磁気層52上に形成されるCGC層52を含む磁気記録層40の実施の形態を示す。CGC層52が直接第3の磁気層50上に形成される実施の形態では、第2の磁気層46および第1の磁気層42に対する第3の磁気層50およびCGC層52のECC効果のために、CGC層52および第3の磁気層50は単一の複合層として働く。すなわち、厚さ重み付きの平均磁気異方性場Hk34は、Hk3の厚さ重み付きの平均とCGC層52の磁気異方性場Hk4とによって概算することができる。複合層(第3の磁気層50およびCGC層52)は、磁気異方性エネルギKuVの寄与のために共に考慮することができ、複合層のKuVの計算は、第3の磁気層50およびCGC層52の結合された厚さおよび磁気モーメントに基づいて行なうことができる。第3の磁気層50およびCGC層52を含む複合層は、磁気異方性場Hk34を有する単一の層と実質的に同様に、ECC効果を第2の磁気層46および第1の磁気層42に与えることができる。CGC層52内の粒子間の横交換結合は、同じHkを有するが横交換結合がより低い層と比べて、CGC層52内の粒子の磁気配向をスイッチングするのに用いられる印加磁場を減少させ得る。したがって、一部の実施の形態において、有効Hk34はHk3およびHk4の厚さ重み付きの平均よりも低くてもよい。したがって、一部の実施の形態において、凸状磁気異方性勾配を規定するのに、Hk4ではなく、Hk3のみが考慮される。
【0040】
一部の実施の形態において、図4Cおよび図4Dで示されるように、CGC層52はHk3よりも小さいまたは実質的に等しい磁気異方性場Hk4を含み得る。一部の実施の形態において、図4Cに示されるように、CGC層52と第3の磁気層50との間の磁気異方性場の差Hk4−Hk3は、差Hk3−Hk2よりも大きくてもよい。すなわち、凸状磁気異方性場勾配はCGC層52に延び得る。
【0041】
別の実施の形態において、図4Dに示されるように、Hk4−Hk3は差Hk3−Hk2よりも大きくない。このような実施の形態において、凸状磁気異方性場勾配はCGC層52に延在するのではなく、第1の磁気層42、第2の磁気層46および第3の磁気層50を通って実質的に延在し得る。
【0042】
別の実施の形態において、図4Eに示されるように、CGC層52はある磁気異方性場Hk4を有し、これはHk3よりも大きい。Hk4−Hk3が差Hk3−Hk2よりも大きくない実施の形態と同様に、Hk4がHk3よりも大きい場合、凸状磁気異方性場勾配はCGC層52に延在するのではなく、第1の磁気層42、第2の磁気層46および第3の磁気層50を通って実質的に延在する。
【0043】
上記の実施の形態は3つの磁気層を含み、任意にCGC層を含む磁気記録層に向けられているが、一部の実施の形態において、磁気記録層は4枚以上の磁気層を含んでもよい。一般に、凸状磁気異方性勾配を含む磁気記録層の概念は、任意の数の磁気層に適応することができる。たとえば、図5Aに示されるように、磁気記録層60は2n−l層を含むことができ、これはn枚の磁気層とn−1枚の交換ブレーク層とを交互に含み、nは3以上の整数である。さらに、かつ任意に、磁気記録層61は図5Bに示されるように、磁気層n上に形成されるCGC層71を含むことができる。特に、図5Aは相対的に高い磁気異方性場をもたらす組成を有する粒状磁気層であり得る第1の磁気層62を示す。第1の磁気層62の磁気異方性場は、記録層60の面に対して実質的に垂直な方向に配向される(すなわち、第1の磁気層62の粒子の磁化容易軸は、記録層60の面に対して実質的に垂直であり得る)。第1の磁気層62はCo合金、たとえば、Coと、Cr、Ni、Pt、Ta、B、Nb、O、Ti、Si、Mo、Cu、Ag、Ge、またはFeの少なくとも1つとの組合せを含み得る。一部の実施の形態において、第1の磁気層62は、たとえばFe−Pt合金またはSm−Co合金を含み得る。一部の実施の形態において、第1の磁気層62は、Co合金およびPt合金またはPd合金の薄膜層を交互に含み得る。一部の実施の形態において、第1の磁気層62の粒子を分離する非磁性材は、酸化物、たとえばSiO2、TiO2CoO、Cr2O3、Ta2O5を含み得る。別の実施の形態において、第1の磁気層62の粒子を分離している非磁性材は、Cr、B、Cまたは他の非強磁性体を含み得る。
【0044】
第1の交換ブレーク層64は第1の磁気層62上に形成される。第1の交換ブレーク層42はCOxRu1-x合金を含み得る。別の実施の形態として、第1の交換ブレーク層64はルチウムを含む、または本質的にルチウムからなることができる。第1の交換ブレーク層64がCoxRu1-x合金を含む例では、ブレーク層64は約3nm未満の厚さを有し得る。第1の交換ブレーク層64が本質的にRuからなる例では、ブレーク層64はより薄く、たとえば約3Å未満であり得る。
【0045】
第2の磁気層66は第1の交換ブレーク層64上に形成され、相対的に高い磁気異方性場をもたらす組成の粒状磁気層であり得る。上記のように、第2の磁気層66は第1の磁気層62の磁化異方性よりも小さい、または実質的に等しい、または大きい磁気異方性を有し得る。第2の磁気層66の磁気異方性は、記録層60の面に対して実質的に垂直な方向に配向される(すなわち第2の磁気層66の粒子の容易軸は、記録層60の面に対して実質的に垂直であり得る)。第2の磁気層66はCo合金、たとえば、Coと、Cr、Ni、Pt、Ta、B、Nb、O、Ti、Si、Mo、Cu、Ag、Ge、またはFeの少なくとも1つとの組合せを含み得る。一部の実施の形態において、第2の磁気層66は、たとえばFe−Pt合金またはSm−Co合金を含み得る。一部の実施の形態において、第2の磁気層66は、Co合金およびPt合金またはPd合金の薄膜層を交互に含み得る。一部の実施の形態において、第2の磁気層66の粒子を分離する非磁性材は、酸化物、たとえばSiO2、TiO2CoO、Cr2O3、Ta2O5を含み得る。別の実施の形態において、第2の磁気層66の粒子を分離している非磁性材は、Cr、B、Cまたは他の非強磁性体を含み得る。
【0046】
磁気層60は、交互のパターンをなす任意の数の磁気層および交換ブレーク層を含むことができる。各後続の磁気層は、磁気記録層60がその複数の磁気層間で凸状磁気異方性場勾配を含むよう、組成が選択される。すなわち、それぞれの磁気層の組成は、Hk(n−2)−Hk(n−1)がHk(n−1)−Hk(n)よりも小さいよう選択され、Hkiは層iの磁気異方性場である。たとえば、第1の磁気層62、第2の磁気層66および第3の磁気層(図示されていない)の組成は、Hk1−Hk2がHk2−Hk3よりも小さいよう選択される。交換ブレーク層n−1 68は磁気層n−1上に形成される(図示されていない)。交換ブレーク層n−1 68はルチウムまたはルチウム合金を含み、第1の交換ブレーク層64に対して同様の組成または異なる組成を含み得る。一部の実施の形態において、交換ブレーク層n−1 68は本質的にルチウムからなる、またはルチウムを含み、別の実施の形態において、交換ブレーク層n−1 68はルチウム合金、たとえばCOxRu1-xを含み得る。RuまたはCOxRu1-xに加えて、交換ブレーク層n−1 68は非磁気酸化物、たとえばSiO2、TiO2CoO、Cr2O3、またはTa2O5を含み得る。
【0047】
磁気層n 70は交換ブレーク層n−1 68上に形成され、一部の実施の形態においては、相対的に低い磁気異方性、たとえば記録層60の他の磁気層の磁気異方性よりも低い磁気異方性を有する粒状磁気層であり得る。磁気層nは、記録層60の面に対して実質的に垂直な方向に配向される磁気異方性場を有する。磁気層n 70は、たとえばCo合金、Fe−Pt合金、またはSm−Co合金を含み、たとえば上記のSiO2、TiO2CoO、Cr2O3、またはTa2O5の非磁性酸化物を含んでも、含ななくてもよい。磁気層n 70の組成は、第1の磁気層62および/または第2の磁気層66の組成と異なり、それにより磁気層n 70の磁気異方性場は、磁気記録層60の他の磁気層の磁気異方性場とともに、凸状磁場勾配をもたらす。たとえば、磁気層n 70は第1の磁気層62および/または第2の磁気層66と同様の組成を含み得るが、その割合は異なり得る。
【0048】
一部の実施の形態において、CGC層71(図5Bに示される)は、図3を参照して説明したCGC層52と同様であってもよい。
【0049】
垂直磁気記録層を形成する方法は図6に示される。この方法は、磁気異方性場Hk2を有する第1の磁気層を形成し(72)、第1の磁気層上に第1の交換ブレーク層を形成し(74)、第1の交換ブレーク層上に第2の磁気層を形成する(76)。第2の磁気層は、第2の磁気異方性場Hk2を有する。一部の実施の形態において、本方法はさらに第2の磁気層上に第2の交換ブレーク層を形成し(78)、第2の交換ブレーク層上に第3の磁気層を形成する(80)ことを含む。第3の磁気層は第3の磁気異方性場Hk3を有する。一部の実施の形態において、Hk1−Hk2はHk2−Hk3よりも小さい。
【0050】
ここに記載される磁気記録層は磁気層とブレーク層とを交互に有するが、一部の実施の形態において、磁気記録層は各隣接する磁気層対間にブレーク層を含まなくてもよい。たとえば、磁気記録層は、互いにすぐ隣接して形成される第2の磁気層46および第3の磁気層50(図3)を含むが、その間に介在する第2のブレーク層48はない。この概念は他の磁気層の対にも、たとえば第1の磁気層42および第2の磁気層46に拡張することができる。さらに、4枚以上の磁気層を含む実施の形態(たとえば、図5Aおよび図5Bを参照して記載されている実施の形態)では、磁気記録層60は2n−l枚の層を有することができ、nの磁気層およびn−1の磁気層を有する。このような実施の形態において、一部の隣接する磁気層対は介在するブレーク層を含み、他の隣接する磁気層対は介在するブレーク層を含まない。
【0051】
上記は磁気記録媒体を含む装置に主に立脚しているが、ここに記載される磁気層構造は他でも応用することができる。たとえば、ここに記載される磁気層構造は、磁気センサまたは磁気抵抗ランダムアクセスメモリ(MRAM)に用いることができる。
【0052】
実施例
以下の実施例は開示の実施の形態を示すものであるが、本開示の範囲を限定するものではない。実施例は理想的な磁気層を用いた理論的計算に基づいている。各々の磁気層は同じMsおよびHexの値を有する。実施例の磁気記録層はCGC層を含んでいない。以下の実施例において、パラメータは以下のように定義されている。式1は層iの有効磁気厚さΔiを定義する。
【0053】
【数1】
【0054】
ここでMsiは層iの飽和磁化であり、δiは層iの厚さであり、Ms1は層1(すなわち、第1の磁気層)の飽和磁化であり、δ1は層1の厚さである。
【0055】
式2は層iの有効異方性kiを定義する。
【0056】
【数2】
【0057】
ここでMsiは層iの飽和磁化であり、HAiは層iの磁気保磁力であり、δiは層iの厚さであり、Ms1は層1の飽和磁化であり、HA1は層1の磁気保磁力であり、δ1は層1の厚さである。
【0058】
式3は層iおよび層j間の有効結合χijを定義する:
【0059】
【数3】
【0060】
ここでJijは層iと層jとの間の量子機械結合であり、K1は層1の磁気異方性エネルギであり、δ1は層1の厚さである。
【0061】
以下の実施例において、特定のパラメータは固定されている。たとえば、Δ2=Δ3=0.5Δ1。すなわち、層2および層3の有効厚さは等しく設定され、その各々は層1の有効厚さの半分である。
【0062】
以下の実施例1−3を検討するに当り、コヒーレントにスイッチングされる3層磁気記録層と比較され、これら3つの磁気層はHA1、HA2=0.75HA1およびHA3=0.5HA1の磁気異方性を有する。このような磁気異方性分布は0.8125HA1の平均磁気異方性<HA>をもたらした。実施例を行なうに当り、<HA>は一定に保たれ、κ2の値が選択され、これにより、κ3値が設定される。χ12およびχ23は自由パラメータである。
【0063】
実施例1
図6Aおよび図6Bは、磁気層1の磁気異方性値HA1が20kOeであり、磁気層2の磁気異方性値HA2が16kOeであり、磁気層3の磁気異方性値HA3が9kOeである例を示す。このような磁気異方性分布は、本開示に従い凸状磁気異方性勾配である。HA1−HA2は4kOeであり、これは7kOeであるHA2−HA3よりも小さい。さらに、HA2/HA1は0.8であり、これはHA3/HA2(0.5625)よりも大きい。実施例1において、Δ2=Δ3=0.5、κ2=0.4、κ3=0.225である。
【0064】
実施例1の磁気配向スイッチング性能は、コヒーレントにスイッチングした基準3層磁気記録層と比較された。たとえば、3つの磁気層は結合され、単一の磁気層として働き、その有効異方性はそれぞれの層の異方性の有効厚さ重み付きの平均として計算された。第1の磁気層はHA1=20kOeの異方性を有し、相対有効厚さは1であった。第2の磁気層はHA2=0.8HA1=16kOeの異方性を有し、相対有効厚さは0.5であった。第3の磁気層はHA3=0.45HA1=9kOeの異方性を有し、相対有効厚さは0.5であった。このような磁気異方性分布は0.8125HA1=16.25kOeの有効厚さ重み付きの平均磁気異方性<HA>、および1.625のエネルギバリア変化ΔE/ΔE1をもたらした。エネルギバリア変化は、第1の磁気層のみを有する磁気記録層と比べて、第2および第3の磁気層が磁気記録層の熱的安定性に与える影響を示す。
【0065】
実施例1の磁気配向スイッチング性能を基準コヒーレントスイッチング磁気記録層と比べると、最小正規化Hsw値(磁気記録層の有効保磁力;磁気記録層の配向が切換わった適用磁場に等しく、第1の磁気層の保磁力によって正規化される)は、基準磁気記録層のエネルギバリア(1.625)と実質的に等しいエネルギバリアで見出された。図6Aおよび図6Bを参照すると、円82の近似座標はχ12=0.45およびχ23=0.45である。図6Aを参照すると、χ12=0.45およびχ23=0.45での正規化Hsw値は、円84によって示されるように約0.73である。これを基準膜の正規化Hsw値0.8125と比較すると、実施例1の磁気異方性勾配は、約11%減少した正規Hswをもたらした。すなわち、凸状磁気異方性勾配を与えるよう選択された3つの磁気層を有する磁気記録層は、線形の磁気異方性勾配を与えるよう選択された3つの磁気層を有する磁気記録層と比べて、より容易に切換わり、匹敵する熱安定性を有する。
【0066】
実施例2
図7Aおよび図7Bは、磁気層1の磁気異方性値HA1が20kOeであり、磁気層2の磁気異方性値HA2が19kOeであり、磁気層3の磁気異方性値HA3が6kOeである例を示す。このような磁気異方性分布は、本開示に従い凸状磁気異方性勾配である。HA1−HA2は1kOeであり、これは13kOeであるHA2−HA3よりも小さい。さらに、HA2/HA1は0.95であり、これはHA3/HA2(0.3158)よりも大きい。実施例1において、Δ2=Δ3=0.5、κ2=0.475、κ3=0.15である。
【0067】
実施例2の磁気配向スイッチング性能は、コヒーレントにスイッチングした基準3層磁気記録層と比較された。たとえば、3つの磁気層は結合され、単一の磁気層として働き、その有効異方性はそれぞれの層の異方性の有効厚さ重み付きの平均として計算された。第1の磁気層はHA1=20kOeの異方性を有し、相対有効厚さは1であった。第2の磁気層はHA2=0.95HA1=19kOeの異方性を有し、相対有効厚さは0.5であった。第3の磁気層はHA3=0.3HA1=6kOeの異方性を有し、相対有効厚さは0.5であった。このような磁気異方性分布は0.8125HA1=16.25kOeの平均磁気異方性<HA>、および1.625のエネルギバリア変化ΔE/ΔE1をもたらした。エネルギバリア変化は、第1の磁気層のみを有する磁気記録層と比べて、第2および第3の磁気層が磁気記録層の熱的安定性に与える影響を示す。
【0068】
実施例2の磁気配向スイッチング性能を基準コヒーレントスイッチング磁気記録層と比べると、最小正規化Hsw値は、基準磁気記録層のエネルギバリア(1.625)と実質的に等しいエネルギバリアで見出された。図7Aおよび図7Bを参照すると、円86の近似座標はχ12=0.45およびχ23=0.45である。図7Aを参照すると、χ12=0.45およびχ23=0.45での正規化Hsw値は、円88によって示されるように約0.68である。これを基準膜の正規化Hsw値0.8125と比較すると、実施例1の磁気異方性勾配は、約20%減少した正規Hswをもたらした。ここでも、凸状磁気異方性勾配を与えるよう選択された3つの磁気層を有する磁気記録層は、線形の磁気異方性勾配を与えるよう選択された3つの磁気層を有する磁気記録層と比べて、より容易に切換わり、匹敵する熱安定性を有する。
【0069】
実施例3
図8Aおよび図8Bは、磁気層1の磁気異方性値HA1が20kOeであり、磁気層2の磁気異方性値HA2が24kOeであり、磁気層3の磁気異方性値HA3が1kOeである例を示す。このような磁気異方性分布は、本開示に従い凸状磁気異方性勾配である。HA1−HA2は−4kOeであり、これは23kOeであるHA2−HA3よりも小さい。さらに、HA2/HA1は1.2であり、これはHA3/HA2(0.0417)よりも大きい。実施例1において、Δ2=Δ3=0.5、κ2=0.6、κ3=0.025である。
【0070】
実施例3の磁気配向スイッチング性能は、コヒーレントにスイッチングした基準3層磁気記録層と比較された。たとえば、3つの磁気層は結合され、単一の磁気層として働き、その有効異方性はそれぞれの層の異方性の有効厚さ重み付きの平均として計算された。第1の磁気層はHA1=20kOeの異方性を有し、相対有効厚さは1であった。第2の磁気層はHA2=1.2HA1=24kOeの異方性を有し、相対有効厚さは0.5であった。第3の磁気層はHA3=0.05HA1=1kOeの異方性を有し、相対有効厚さは0.5であった。このような磁気異方性分布は0.8125HA1=16.25kOeの平均磁気異方性<HA>、および1.625のエネルギバリア変化ΔE/ΔE1をもたらした。エネルギバリア変化は、第1の磁気層のみを有する磁気記録層と比べて、第2および第3の磁気層が磁気記録層の熱的安定性に与える影響を示す。
【0071】
実施例1の磁気配向スイッチング性能を基準コヒーレントスイッチング磁気記録層と比べると、最小正規化Hsw値(磁気記録層の有効保磁力;磁気記録層の配向が切換わった適用磁場に等しく、第1の磁気層の保磁力によって正規化される)は、基準磁気記録層のエネルギバリア(1.625)と実質的に等しいエネルギバリアで見出された。図8Aおよび図8Bを参照すると、円90の近似座標はχ12=0.45およびχ23=0.45である。図8Aを参照すると、χ12=0.45およびχ23=0.45での正規化Hsw値は、円92によって示されるように約0.55である。これを基準膜の正規化Hsw値0.8125と比較すると、実施例1の磁気異方性勾配は、約48%減少した正規Hswをもたらした。ここでも、凸状磁気異方性勾配を与えるよう選択された3つの磁気層を有する磁気記録層は、線形の磁気異方性勾配を与えるよう選択された3つの磁気層を有する磁気記録層と比べて、より容易に切換わり、匹敵する熱安定性を有することを示す。
実施例4
図9Aおよび図9Bは、磁気層1の磁気異方性値HA1が24kOeであり、磁気層2の磁気異方性値HA2が16kOeであり、磁気層3の磁気異方性値HA3が1kOeである例を示す。このような磁気異方性分布は、本開示に従い凸状磁気異方性勾配である。HA1−HA2は4kOeであり、これは15kOeであるHA2−HA3よりも小さい。さらに、HA2/HA1は0.667であり、これはHA3/HA2(0.0625)よりも大きい。実施例1において、Δ2=Δ3=0.5、κ2=1/3、κ3=1/48である。
【0072】
実施例4の磁気配向スイッチング性能は、コヒーレントにスイッチングした基準3層磁気記録層と比較された。たとえば、3つの磁気層は結合され、単一の磁気層として働き、その有効異方性はそれぞれの層の異方性の有効厚さ重み付きの平均として計算された。第1の磁気層はHA1=24kOeの異方性を有し、相対有効厚さは1であった。第2の磁気層はHA2=(2/3)HA1=16kOeの異方性を有し、相対有効厚さは0.5であった。第3の磁気層はHA3=(1/24)HA1=1kOeの異方性を有し、相対有効厚さは0.5であった。このような磁気異方性分布は0.677HA1=16.25kOeの平均磁気異方性<HA>、および1.354のエネルギバリア変化ΔE/ΔE1をもたらした。エネルギバリア変化は、第1の磁気層のみを有する磁気記録層と比べて、第2および第3の磁気層が磁気記録層の熱的安定性に与える影響を示す。
【0073】
実施例4の磁気配向スイッチング性能を基準コヒーレントスイッチング磁気記録層と比べると、最小正規化Hsw値は、基準磁気記録層のエネルギバリア(1.354)と実質的に等しいエネルギバリアで見出された。図9Aおよび図9Bを参照すると、円94の近似座標はχ12=0.35およびχ23=0.4である。図9Aを参照すると、χ12=0.35およびχ23=0.4での正規化Hsw値は、円96によって示されるように約0.42である。これを基準膜の正規化Hsw値0.677と比較すると、実施例4の磁気異方性勾配は、約61%減少した正規Hswをもたらした。これは、凸状磁気異方性勾配を与えるよう選択された3つの磁気層を有する磁気記録層は、線形の磁気異方性勾配を与えるよう選択された3つの磁気層を有する磁気記録層と比べて、より容易に切換わり、匹敵する熱安定性を有することを示す。
【0074】
本開示のさまざまな実施の形態が記載された。上記の実施および他の実施は、添付の請求項の範囲内にある。
【技術分野】
【0001】
発明の詳細な説明
技術分野
本発明は磁気層および交換ブレーク層を含む装置に関する。
【図面の簡単な説明】
【0002】
【図1】ハードディスクドライブの概略図である。
【図2】連続する段階的組成を含む磁気記録層における磁気異方性対硬質層からの距離のグラフ図である。
【図3】第1の磁気層、第1の交換ブレーク層、第2の磁気層、第2の交換ブレーク層および第3の磁気層を有する記録層を含む記録媒体スタックの一例を示す概略ブロック図である。
【図4A】本開示に従う複数の記録層における磁気異方性対磁気層の例示的グラフ図である。
【図4B】本開示に従う複数の記録層における磁気異方性対磁気層の例示的グラフ図である。
【図4C】本開示に従う複数の記録層における磁気異方性対磁気層の例示的グラフ図である。
【図4D】本開示に従う複数の記録層における磁気異方性対磁気層の例示的グラフ図である。
【図4E】本開示に従う複数の記録層における磁気異方性対磁気層の例示的グラフ図である。
【図5A】n枚の磁気層とn−1枚の交換ブレーク層とを交互に含む磁気記録層の一例を示す概略ブロック図である。
【図5B】n枚の磁気層とn−1枚の交換ブレーク層とを交互に含む磁気記録層の一例を示す概略ブロック図である。
【図6】磁気記録層を形成するための技術の一例を示すフロー図である。
【図7A】本開示に従い構成された磁気記録層の一例についてのスイッチング保磁力等高線図である。
【図7B】本開示に従い構成された磁気記録層の一例についてのエネルギバリア減少等高線図である。
【図8A】本開示に従い構成された磁気記録層の一例についてのスイッチング保磁力等高線図である。
【図8B】本開示に従い構成された磁気記録層の一例についてのエネルギバリア減少等高線図である。
【図9A】本開示に従い構成された磁気記録層の一例についてのスイッチング保磁力等高線図である。
【図9B】本開示に従い構成された磁気記録層の一例についてのエネルギバリア減少等高線図である。
【図10A】本開示に従い構成された磁気記録層の一例についてのスイッチング保磁力等高線図である。
【図10B】本開示に従い構成された磁気記録層の一例についてのエネルギバリア減少等高線図である。
【発明を実施するための形態】
【0003】
詳細な説明
図1は本開示の一局面に従う、磁気記録媒体を含む磁気ディスクドライブ10の一例を示す。ディスクドライブ10はベース12と、一部が切取られて示されるトップカバー14とを含む。ベース12はトップカバー14と結合して、ディスクドライブ10のハウジング16を形成する。ディスクドライブ10はさらに1つ以上の回転可能磁気記録媒体18を含む。磁気記録媒体18はスピンドル14に接続され、中央軸を中心として媒体18を回転させるよう動作する。磁気記録および読取ヘッド22は、磁気記録媒体18に隣接している。アクチュエータアーム20は磁気記録および読取ヘッド22を磁気記録媒体18と通信するよう運ぶ。
【0004】
磁気記録媒体18は、磁気記録層において磁気的に配向されるビットとして情報を記憶する。磁気読出/書込ヘッド22は、磁気記録媒体18上の磁気記録層の個々のドメインを磁化するのに十分な磁場を生成する記録(書込)ヘッドを含む。磁気記録層のドメインのパターンはデータのビットを表わし、磁化配向の変化は1を表わす。0は、ビット長の約2倍の一定磁化を含む領域によって表わされる。磁気記録および書込ヘッド22はさらに読出ヘッドを含み、読出ヘッドは磁気記録層の個々の磁気ドメインの磁場を検出することができる。
【0005】
垂直磁気記録媒体は、磁気記録層において垂直磁気異方性場(Hk)を有し、磁気記録層の面に対して実質的に垂直な方向で形成される磁化を有する磁気記録媒体18である。垂直磁気記録媒体は磁気記録システムで用いることができる。垂直磁気記録媒体は、多結晶CoCrまたはCoPt酸化物含有磁気記録層で製造され得る。多結晶磁気記録層におけるCoリッチな領域は強磁性であるのに対して、Crまたは酸化物がリッチな領域は、多結晶磁気記録層において近接する粒界を形成し、非磁性である。隣接する強磁性粒子間の横方向の磁気交換結合は、粒子間の非磁性領域によって減衰される。
【0006】
ディスクドライブ10のような磁気データ記憶装置での進歩は、主に装置の記憶容量の増加による、すなわち磁気記録媒体18の面記録密度(平方インチ当りのギガビット(Gb/in2)によって表わされる)による。より小さい平均粒径の磁気記録媒体18は、磁気記録媒体の面記録密度を増加させ得る。
【0007】
高密度垂直磁気記録媒体は、磁気記録層におけるいくつかの磁気特性のバランスによって利益を享受し得る。これは、熱的安定のための高い磁気異方性、磁気記録ヘッドによる記録層を書込みやすくするための低いスイッチング磁場、磁性粒子または塊間で小さい相関長を維持するための、磁性粒子間での十分に低い横磁気交換結合、狭スイッチング場分布(SFD)を維持するための、磁性粒子間の十分に高い横磁気交換結合、および熱的安定性を維持しかつSFDを最小化するための、粒子間の十分に均一な磁気特性を含む。
【0008】
面記録密度が増加するにつれ、より小さい平均径の磁性粒子を用いて、記録されるビットでの同じ値の磁性粒子数を維持できる。しかし、平均粒径が減少するにつれ、磁気記録媒体の磁気的安定性がより大きな関心事となる。
【0009】
磁性粒子は磁気異方性エネルギによりその磁気配向を維持し、これは粒子体積(KuVであって、Kuは単位体積当りの磁気異方性エネルギであり、Vは体積である)に比例する。磁気異方性エネルギは熱エネルギ変動と競合し、粒子の磁化を任意に再配向させることになる。熱エネルギ変動は磁気記録層の温度に依存する(kBT、ここでkBはボルツマン定数であり、Tは温度である)。磁気異方性エネルギ対熱エネルギの比(KuV/kT)はエネルギバリアと呼ばれ、粒子の磁気的安定性の度合いを示すものであり、それぞれの粒子の体積に比例する。したがって、粒径(粒子の体積)を減少させると面密度は増加するが、単位体積当り同じ磁気異方性エネルギKuを有する粒子については熱安定性が減少する。Kuは単位体積当りの磁気異方性エネルギを表わすが、以降Kuは簡単にするために磁気異方性エネルギと呼ぶことにする。
【0010】
平均粒径の減少による熱的安定性の減少を克服する1つの方法は、磁性粒子の平均異方性磁場Hkを増加させることである(Hk=2Ku/Ms、ここでMsは材料の飽和磁化である)。より高い磁気異方性場を有する磁性粒子は、一般により高い磁気異方性エネルギKuを有し、より低い磁気異方性場を有する同様のサイズの粒子よりも熱的に安定している。しかし、粒子の平均磁気異方性場を増加させることは、粒子の磁気配向を変えるために用いられる磁場をも増加させ得るので、データを記録するために用いられる磁場を増加させることになる。
【0011】
ここで記載されるのは磁気記録層用の交換結合複合(ECC)構造であり、磁気記録層へのデータの書込を容易にしながら受入可能な値以上で磁気記録層の熱的安定性(すなわち、エネルギバリア)を維持する。一部の実施の形態において、ここに記載されるECC構造は、他の磁気記録層と比較して、磁気記録層へのデータの書込を容易にし、かつ記録層の熱的安定性を上げる。
【0012】
提案している一部のECC構造では、磁気記録層は連続する段階的な材料からなる(たとえば、磁気記録層の組成は実質的に連続して変わり、別個の副層には分けられない)。このような連続する段階的ECC構造では、磁気記録層の磁気異方性が、最も高い異方性部分からの距離の二乗に比例して減少するような(Hkal/x2;xは最も高い異方性部分からの距離)、組成勾配を選択することが提案されている。すなわち、磁気記録層の磁気異方性は、磁気記録層の高い異方性部分内および近くではより迅速に減少し、高い異方性部分からの距離が増加するにつれより遅く減少するべきである。これは図2に示されるように、磁気異方性対磁気記録層での位置のグラフでは凹形状をもたらす。このようなHkal/x2磁気異方性勾配が提案されている例では、磁気記録層の最も高い異方性部分は、記録層の残りのより低い異方性部分の働きがなくても熱的に安定している。
【0013】
図1に示される磁気記録媒体18は、本開示に従うECC記録層構造を含む。本開示に従うECC記録層の一実施の形態の概略ブロック図は図3に示される。図3に示される磁気記録媒体18は、基板32、軟質下地層(SUL)34、第1の中間層36、第2の中間層38、垂直記録層40、および保護オーバコート54を含む。
【0014】
基板32は磁気記録媒体で用いるのに適するどのような材料をも含むことができ、たとえばAl、NiP被覆Al、ガラス、またはセラミックガラスを含む。
【0015】
図2には示されていないが、一部の実施の形態において、さらなる下地層が基板32のすぐ上にあってもよい。このさらなる下地層は非晶質であって、基板に接着性を与え、表面粗さを小さくする。
【0016】
軟質下地層(SUL)34は基板32(または、ある場合はさらなる下地層)上に形成される。SUL34は十分な飽和磁化(Ms)および低い磁気異方性場(Hk)を有するいずれかの軟質磁性材料であり得る。たとえば、SUL34はNi、Co、Feのような非晶質の軟質磁性材料、NiFe(パーマロイ)、FeSiAlもしくはFeSiAlNのようなFe含有合金、CoZr,CoZrCr、もしくはCoZrNbのようなCo含有合金、またはCoFeZrNb,CoFe、FeCoBもしくはFeCoCのようなCoFe含有合金であり得る。
【0017】
第1の中間層36および第2の中間層38を用いてHCP(六方稠密構造)結晶配向をもたらすことができ、これは第1の磁気層42のHCP(0002)成長を引起し、膜面に対して垂直の磁化容易軸を有する。
【0018】
たとえばダイヤモンド状炭素のような保護オーバコート54を、垂直記録層40上に形成することができる。別の例として、保護オーバコート54は水素または窒素をさらに含む非晶質の炭素層を含み得る。図3には示されていないが、一部の実施の形態において、潤滑層を保護オーバコート54上に形成することができる。
【0019】
垂直記録層40は第2の中間層38上に形成でき、第1の磁気層42、第1の交換ブレーク層44、第2の磁気層46、第2の交換ブレーク層48、第3の磁気層50、および任意にCGC層52を含むことができる。第1の磁気層42は第1の磁気異方性場Hk1を有する。第2の磁気層46は第2の磁気異方性場Hk2を有する。第3の磁気層50は第3の磁気異方性場Hk3を有する。第1の磁気層42、第2の磁気層46および第3の磁気層50の各々の磁気異方性は、記録層40の面に対して実質的に垂直な方法で配向される(たとえば、第1の磁気層42、第2の磁気層46および第3の磁気層50の各々の磁化容易軸は、記録層40の面に対して実質的に垂直であり得る)。第1の交換ブレーク層44を用いて、第1の磁気層42と第2の磁気層46との間の縦交換結合を調整することができる。第2の交換ブレーク層48を用いて、第2の磁気層46と第3の磁気層50との間の縦交換結合を調整することができる。一部の例において、磁気記録層40はさらなる交換ブレーク層および磁気層(たとえば、n枚の磁気層およびn−1枚の交換ブレーク層)を含むことができる。
【0020】
第1の磁気層42、第2の磁気層46および第3の磁気層50の各々は粒状であってもよく、非磁性材によって隣接する磁性粒子と実質的に分離される磁性粒子を含み得る。一部の実施の形態において、第1の磁気層42、第2の磁気層46および第3の磁気層50の少なくとも1つは、Co合金、たとえば、Coと、Cr、Ni、Pt、Ta、B、Nb、O、Ti、Si、Mo、Cu、Ag、Ge、またはFeの少なくとも1つとの組合せを含み得る。一部の実施の形態において、第1の磁気層42、第2の磁気層46および第3の磁気層50の少なくとも1つは、たとえばFe−Pt合金またはSm−Co合金を含み得る。一部の実施の形態において、第1の磁気層42、第2の磁気層46および第3の磁気層50の少なくとも1つは、Co合金およびPt合金の薄膜層を交互に、またはCo合金およびPd合金の薄膜層を交互に含み得る。一部の実施の形態において、第1の磁気層42、第2の磁気層46および第3の磁気層50の少なくとも1つにおいて粒子を分離している非磁性材は、磁性粒子を分離する酸化物、たとえばSiO2、TiO2CoO、Cr2O3、Ta2O5の酸化物を含み得る。別の実施の形態において、第1の磁気層42、第2の磁気層46および第3の磁気層50の少なくとも1つにおいて粒子を分離している非磁性材は、Cr、B、Cまたは他の非強磁性体を含み得る。
【0021】
一部の例において、第1の磁気層42、第2の磁気層46および第3の磁気層50の少なくとも1つは、Co−Pt合金を含んでもよい。層42、46および50の磁気異方性場を制御する1つの方法は、それぞれの層のPt含有量を制御することである。たとえば、より大きいPt含有量を有する磁気層は、より低いPt含有量を含む磁気層よりも高い磁気異方性場を有し得る。一部の例において、高い磁気異方性場の層は約18at.%を超えるPtを含み得る。本開示の一部の例に従い、Hk勾配は第1の磁気層42、第2の磁気層46および第3の磁気層50のPt含有量によって規定され得る。すなわち、一部の例においてPt1−Pt2<Pt2−Pt3であり、Pt1は第1の磁気層42のPt含有量、Pt2は第2の磁気層46のPt含有量、Pt3は第3の磁気層50のPt含有量である。一部の実施の形態においてPt1は約18at.%および約22at.%の間にあり、Pt2は約14at.%および約18at.%の間にあり、Pt3は約14at.%未満であり、Pt1−Pt2<Pt2−Pt3である。
【0022】
第1の交換ブレーク層44および第2の交換ブレーク層48の各々は相対的に低い飽和磁化(Ms)の材料を含む。たとえば、第1の交換ブレーク層44および第2の交換ブレーク層48の少なくとも一方はCoxRu1-x合金を含み得る。別の例として、第1の交換ブレーク層44および第2の交換ブレーク層48の少なくとも一方は、ルチウムを含むまたは本質的にルチウムからなる。ここで用いられる「本質的に〜からなる」は、層がその指定された材料からなるが、その指定された材料で生成された不純物、または隣接する層からその層に拡散された他の素子もしくは材料をも含み得ることを意味する。第1の交換ブレーク層44または第2の交換ブレーク層48がCoxRu1-x合金を含む例では、ブレーク層44または48は約3nm未満の厚さを有し得る。第1の交換ブレーク層44および第2の交換ブレーク層48が本質的にRuからなる例では、ブレーク層44または48はより薄く、たとえば約3Å未満であり得る。
【0023】
RuまたはCoxRu1-x合金に加えて、第1の交換ブレーク層44および/または第2の交換ブレーク層48は非磁性酸化物、たとえばSiO2、TiO2、CoO2,Cr2O3、Ta2O5を任意に含むことができる。この非磁性酸化物は、後で行なわれる第1の交換ブレーク層44上の粒状の第2の磁気層44の生成、または第2の交換ブレーク層48上の粒状の第3の磁気層50の生成を促進させる役割を果たし得る。一部の実施の形態において、第1の交換ブレーク層44および第2の交換ブレーク層48は実質的に同様の組成を含むことができるが、別の実施の形態では、異なる組成を含み得る。
【0024】
磁気記録層40はさらにCGC層52を任意に含むことができる。CGC層52は、たとえばCoCrPtB合金を含み得る。一部の実施の形態において、このCoCrPtB合金は金属または希土類元素、たとえばRu、WまたはNbでドーピングされてもよい。一部の実施の形態において、CGC層52は酸化物、たとえばSiOx、TiOx、TaOx、WOx、NbOx、CrOx、CoOxを少量含んでもよい。別の実施の形態において、CGC層52は酸化物を含まない(たとえば、どの酸化物をも含まない)。
【0025】
第1の磁気層42、第2の磁気層46および第3の磁気層50の特定の組成は、それぞれの層42、46、50の各々に対して所定の磁気異方性場Hkを与えるよう選択され得る。特に、第1の磁気層42の組成は第1の磁気異方性場Hk1を与えるよう選択することができる。第2の磁気層46の組成は第2の磁気異方性場Hk2を与えるよう選択することができる。第3の磁気層50の組成は第3の磁気異方性場Hk3を与えるよう選択することができる。一部の実施の形態において、第1の磁気層42であり得る最も硬い磁気層の磁気異方性場は、約30kOeに限定され得る(たとえば、Co合金で形成されている場合)。このため、磁気記録層40の平均粒径が十分に小さい場合、最も硬い磁気層は十分に安定しないかも知れない。これを解消するために、第1の磁気層42、第2の磁気層46および第3の磁気層50の平均異方性を相対的に高くして、3つの磁気層42、46および50の少なくとも2つが、磁気記録層40の磁気配向について熱的安定性をもたらすよう働くようにする。
【0026】
第1の磁気層42、第2の磁気層46および第3の磁気層50に対して相対的に高い平均磁気異方性場を達成しながらECC構造によって与えられる利点をも得る1つの方法は、Hk1およびHk2の差(すなわち、Hk1−Hk2)がHk2およびHk3の差(すなわち、Hk3−Hk3)よりも小さいよう、第1の磁気層42、第2の磁気層46および第3の磁気層50の組成を選択することである。すなわち、磁気記録層40の個々の層42、46および50の磁気異方性は、第1の磁気層42の近くではより遅く減少、または増加し、第1の磁気層42からの距離が大きくなるにつれより速く減少する。磁気記録層40におけるこのような磁気異方性場の分布は、凸状磁気異方性場分布と呼ぶ。凸状磁気異方性場分布は、磁気記録層40の磁気配向の熱的安定性および記録層40の書込容易性を与え得る。一部の例において、凸状磁気異方性分布は、相対的に高い磁気異方性場の材料からなる磁気記録層40のより大きい割合をもたらし得る。
【0027】
Hk1、Hk2およびHk3の特定の値は、たとえば、データを磁気記録層40に書込むのに用いられる記録ヘッド、それぞれの層42、46および50における個々の粒子の大きさ、他の2層のそれぞれの磁気異方性場、それぞれの層の厚さ、それぞれの層の飽和磁化などに依存し得る。一部の実施の形態において、それぞれの層42、46および50のHk値の範囲は、各層42、46および50のKuV磁気異方性エネルギの働きによって影響され得る。たとえば、より低いKuV値を有する第1の磁気層42は、より高いKuV値を有する第1の磁気層42よりも書込みやすい(すなわち、より低いKuVの値を有する層42における粒子の磁気配向をスイッチングするのにより低い磁場が与えられてもよい)。したがって、より低いKuV値を有する第1の磁気層42は、ECCによる書込処理を駆動させるのに、より低いHk2値を有する第2の磁気層46およびより低いHk3を有する第3の磁気層30を用いることができる。しかし、より低いKuV値は、全体として、垂直磁気層40の熱的安定性を維持するために、第2の磁気層46および第3の磁気層50からより大きい磁気異方性エネルギ寄与(KuV)を使用し得る。所与のHk値を有するある層、たとえば第2の磁気層46では、KuV異方性エネルギ寄与は、材料の飽和磁化Msを変更することによって影響され得る、すなわち、KuV=2HkV/Msである。さらに、または代替的に、有効量Vは、磁気層内の粒子間での横磁気交換を変更することによって変えることができ、これは有効磁気クラスタサイズ(実質的に同様の条件下で磁気配向を変える粒子のクラスタ)を変え得る。
【0028】
Hk1、Hk2、Hk3のとり得る値の範囲は、簡潔にするために個々で規定することもできるが、互いに組合せて規定された場合、よりよく理解され得る。なぜなら、Hk1、Hk2、Hk3間の差は、所定の磁気記録層構造を規定する1つの方法だからである。他の層のHk値に関連せずに単独で考慮されると、Hk1は約16kOe、一部の実施の形態では約24である。別の実施の形態において、Hk1は約24kOeまたは16kOe未満である。Hk1の例示的値は、約20kOeまたは約24kOeを含み得る。
【0029】
一部の実施の形態において、Hk2は約12kOeおよび約24kOeの間であり、別の実施の形態においてHk2は24kOeよりも大きくまたは12kOekよりも小さい。Hk2の例示的値は約12kOeおよび約15kOeの間、約16kOe、約19kOe、または約24kOeをとり得る。
【0030】
一部の実施の形態においてHk3は約15kOeよりも小さく、他の実施の形態では、Hk3は15kOeを超える。Hk3の例示的値は、約3kOeおよび約9kOeの間、約9kOe、約6kOe、または約1kOeである。
【0031】
一部の実施の形態において共に考慮されると、Hk1、Hk2、およびHk3がHk1−Hk2<Hk2−Hk3の関係を満たすよう、Hk1は約16kOeから約24kOeの間であり、Hk2は約12kOeから約24kOeの間であり、Hk3はHk2未満であり得る。一部の実施の形態において、Hk1は約20kOeから約22kOeの間であり、Hk2は約17kOeから約20kOeの間であり、Hk3は約9kOeから約14kOeの間であり得る。他の実施の形態において、層1のPt濃度は約18〜12at%である。層2のPt濃度は約14〜18at%であり、層3のPt濃度は約14at%よりも小さく、Hk2は約17−20kOeであり、Hk3は約9−14kOeである。
【0032】
一部の実施の形態において、Hk1、Hk2、およびHk3間の関係は、さらにHk2およびHk1の間の比率、および/またはHk3およびHk2の間の比率によって規定される。たとえば、Hk2/Hk1の比はHk3/Hk2の比よりも大きい。一部の実施の形態において、Hk2/Hk1は約0.6より大きく、Hk3/Hk2は約0.6未満であり得る。一部の実施の形態において、Hk2/Hk1は約0.7より大きく、Hk3/Hk2は約0.7未満であり得る。一部の実施の形態において、Hk2/Hk1は約0.9より大きく、Hk3/Hk2は約0.9未満であり得る。一部の実施の形態において、Hk2/Hk1は約1.0より大きく、Hk3/Hk2は約1.0未満であり得る。一実施の形態において、Hk2/Hk1の比は約1.2である。
【0033】
一部の実施の形態において、Hk2/Hk1の値と無関係に、Hk3/Hk2は約0.6未満である。一部の実施の形態において、Hk3/Hk2は約0.1未満である。
【0034】
第1の磁気層42、第2の磁気層46および第3の磁気層50の飽和磁化は同じまたは異なってもよい。一部の実施の形態において、第1の磁気層42、第2の磁気層46および第3の磁気層50の各々の飽和磁化Msは約350emu/cm3および約700emu/cm3の間にある。一部の実施の形態において、第1の磁気層42、第2の磁気層46および第3の磁気層50の少なくとも1つの飽和磁化は約450emu/cm3から約700emu/cm3の間にある。たとえば、第1の磁気層42、第2の磁気層46および第3の磁気層50の少なくとも1つの飽和磁化は約550emu/cm3である。
【0035】
第1の磁気層42の厚さは約5nmおよび約10nmの間にある。第2の磁気層46の厚さは約3nmおよび約7nmの間にある。第3の磁気層50の厚さは約10未満である。上記のように、それぞれの磁気層42、46および50の厚さは、それぞれの層42、46および50のHk値および/またはMsの選択に影響し得る。ある実施の形態において、第2の磁気層46の厚さは約4nm未満であり、Hk1/Hk2は約0.8より大きく、Hk2/Hk3は約0.8未満である。
【0036】
図4A−図4Eは第1の磁気層42、第2の磁気層46および第3の磁気層50の磁気異方性場構成の例を示す図である。図4A−図4Eは磁気記録層40の構成の例を示し、第1の磁気層42、第2の磁気層46および第3の磁気層50の組成は、差Hk1−Hk2が差Hk2−Hk3よりも小さいよう選択される。上記のように、Hk1、Hk2、およびHk3間の関係は、さらに第1の比Hk2/Hk1および/または第2の比Hk3/Hk2によってさらに規定される。
【0037】
たとえば、図4Aは、Hk1−Hk2がHk2−Hk3より小さい磁気記録層40を示す。さらに、Hk2/Hk1は約0.6よりも大きく、一部の実施の形態において約0.9よりも大きい。図4Aに示される磁気記録層40の構成の比Hk3/Hk2は、約0.6未満であり、0.1よりも小さくてもよい。たとえば、Hk1は約16kOeおよび約24kOeの間であり、Hk2は約12kOeおよび約24kOeの間であり、Hk3は約15kOe未満である。一実施の形態において、Hk1は約20kOeであり、Hk2は約16kOeであり、Hk3は約9kOeである。別の実施の形態において、Hk1は約20kOeであり、Hk2は約19kOeであり、Hk3は約6kOeである。さらなる実施の形態において、Hk1は約24kOeであり、Hk2は約16kOeであり、Hk3は約1kOeである。
【0038】
別の実施の形態として、図4Bは、Hk1−Hk2がHk2−Hk3より小さい磁気記録層40を示す。さらに、Hk1−Hk2は0よりも小さく、Hk2/Hk1は約1.0より大きい、たとえば約1.2である。図4Bに示される実施の形態では、比Hk3/Hk2は約0.6未満であり、一部の実施の形態では約0.1未満である。一実施の形態では、Hk1は約20kOe、Hk2は約24kOe、Hk3は約1kOeである。
【0039】
図4C−図4Eは、第3の磁気層52上に形成されるCGC層52を含む磁気記録層40の実施の形態を示す。CGC層52が直接第3の磁気層50上に形成される実施の形態では、第2の磁気層46および第1の磁気層42に対する第3の磁気層50およびCGC層52のECC効果のために、CGC層52および第3の磁気層50は単一の複合層として働く。すなわち、厚さ重み付きの平均磁気異方性場Hk34は、Hk3の厚さ重み付きの平均とCGC層52の磁気異方性場Hk4とによって概算することができる。複合層(第3の磁気層50およびCGC層52)は、磁気異方性エネルギKuVの寄与のために共に考慮することができ、複合層のKuVの計算は、第3の磁気層50およびCGC層52の結合された厚さおよび磁気モーメントに基づいて行なうことができる。第3の磁気層50およびCGC層52を含む複合層は、磁気異方性場Hk34を有する単一の層と実質的に同様に、ECC効果を第2の磁気層46および第1の磁気層42に与えることができる。CGC層52内の粒子間の横交換結合は、同じHkを有するが横交換結合がより低い層と比べて、CGC層52内の粒子の磁気配向をスイッチングするのに用いられる印加磁場を減少させ得る。したがって、一部の実施の形態において、有効Hk34はHk3およびHk4の厚さ重み付きの平均よりも低くてもよい。したがって、一部の実施の形態において、凸状磁気異方性勾配を規定するのに、Hk4ではなく、Hk3のみが考慮される。
【0040】
一部の実施の形態において、図4Cおよび図4Dで示されるように、CGC層52はHk3よりも小さいまたは実質的に等しい磁気異方性場Hk4を含み得る。一部の実施の形態において、図4Cに示されるように、CGC層52と第3の磁気層50との間の磁気異方性場の差Hk4−Hk3は、差Hk3−Hk2よりも大きくてもよい。すなわち、凸状磁気異方性場勾配はCGC層52に延び得る。
【0041】
別の実施の形態において、図4Dに示されるように、Hk4−Hk3は差Hk3−Hk2よりも大きくない。このような実施の形態において、凸状磁気異方性場勾配はCGC層52に延在するのではなく、第1の磁気層42、第2の磁気層46および第3の磁気層50を通って実質的に延在し得る。
【0042】
別の実施の形態において、図4Eに示されるように、CGC層52はある磁気異方性場Hk4を有し、これはHk3よりも大きい。Hk4−Hk3が差Hk3−Hk2よりも大きくない実施の形態と同様に、Hk4がHk3よりも大きい場合、凸状磁気異方性場勾配はCGC層52に延在するのではなく、第1の磁気層42、第2の磁気層46および第3の磁気層50を通って実質的に延在する。
【0043】
上記の実施の形態は3つの磁気層を含み、任意にCGC層を含む磁気記録層に向けられているが、一部の実施の形態において、磁気記録層は4枚以上の磁気層を含んでもよい。一般に、凸状磁気異方性勾配を含む磁気記録層の概念は、任意の数の磁気層に適応することができる。たとえば、図5Aに示されるように、磁気記録層60は2n−l層を含むことができ、これはn枚の磁気層とn−1枚の交換ブレーク層とを交互に含み、nは3以上の整数である。さらに、かつ任意に、磁気記録層61は図5Bに示されるように、磁気層n上に形成されるCGC層71を含むことができる。特に、図5Aは相対的に高い磁気異方性場をもたらす組成を有する粒状磁気層であり得る第1の磁気層62を示す。第1の磁気層62の磁気異方性場は、記録層60の面に対して実質的に垂直な方向に配向される(すなわち、第1の磁気層62の粒子の磁化容易軸は、記録層60の面に対して実質的に垂直であり得る)。第1の磁気層62はCo合金、たとえば、Coと、Cr、Ni、Pt、Ta、B、Nb、O、Ti、Si、Mo、Cu、Ag、Ge、またはFeの少なくとも1つとの組合せを含み得る。一部の実施の形態において、第1の磁気層62は、たとえばFe−Pt合金またはSm−Co合金を含み得る。一部の実施の形態において、第1の磁気層62は、Co合金およびPt合金またはPd合金の薄膜層を交互に含み得る。一部の実施の形態において、第1の磁気層62の粒子を分離する非磁性材は、酸化物、たとえばSiO2、TiO2CoO、Cr2O3、Ta2O5を含み得る。別の実施の形態において、第1の磁気層62の粒子を分離している非磁性材は、Cr、B、Cまたは他の非強磁性体を含み得る。
【0044】
第1の交換ブレーク層64は第1の磁気層62上に形成される。第1の交換ブレーク層42はCOxRu1-x合金を含み得る。別の実施の形態として、第1の交換ブレーク層64はルチウムを含む、または本質的にルチウムからなることができる。第1の交換ブレーク層64がCoxRu1-x合金を含む例では、ブレーク層64は約3nm未満の厚さを有し得る。第1の交換ブレーク層64が本質的にRuからなる例では、ブレーク層64はより薄く、たとえば約3Å未満であり得る。
【0045】
第2の磁気層66は第1の交換ブレーク層64上に形成され、相対的に高い磁気異方性場をもたらす組成の粒状磁気層であり得る。上記のように、第2の磁気層66は第1の磁気層62の磁化異方性よりも小さい、または実質的に等しい、または大きい磁気異方性を有し得る。第2の磁気層66の磁気異方性は、記録層60の面に対して実質的に垂直な方向に配向される(すなわち第2の磁気層66の粒子の容易軸は、記録層60の面に対して実質的に垂直であり得る)。第2の磁気層66はCo合金、たとえば、Coと、Cr、Ni、Pt、Ta、B、Nb、O、Ti、Si、Mo、Cu、Ag、Ge、またはFeの少なくとも1つとの組合せを含み得る。一部の実施の形態において、第2の磁気層66は、たとえばFe−Pt合金またはSm−Co合金を含み得る。一部の実施の形態において、第2の磁気層66は、Co合金およびPt合金またはPd合金の薄膜層を交互に含み得る。一部の実施の形態において、第2の磁気層66の粒子を分離する非磁性材は、酸化物、たとえばSiO2、TiO2CoO、Cr2O3、Ta2O5を含み得る。別の実施の形態において、第2の磁気層66の粒子を分離している非磁性材は、Cr、B、Cまたは他の非強磁性体を含み得る。
【0046】
磁気層60は、交互のパターンをなす任意の数の磁気層および交換ブレーク層を含むことができる。各後続の磁気層は、磁気記録層60がその複数の磁気層間で凸状磁気異方性場勾配を含むよう、組成が選択される。すなわち、それぞれの磁気層の組成は、Hk(n−2)−Hk(n−1)がHk(n−1)−Hk(n)よりも小さいよう選択され、Hkiは層iの磁気異方性場である。たとえば、第1の磁気層62、第2の磁気層66および第3の磁気層(図示されていない)の組成は、Hk1−Hk2がHk2−Hk3よりも小さいよう選択される。交換ブレーク層n−1 68は磁気層n−1上に形成される(図示されていない)。交換ブレーク層n−1 68はルチウムまたはルチウム合金を含み、第1の交換ブレーク層64に対して同様の組成または異なる組成を含み得る。一部の実施の形態において、交換ブレーク層n−1 68は本質的にルチウムからなる、またはルチウムを含み、別の実施の形態において、交換ブレーク層n−1 68はルチウム合金、たとえばCOxRu1-xを含み得る。RuまたはCOxRu1-xに加えて、交換ブレーク層n−1 68は非磁気酸化物、たとえばSiO2、TiO2CoO、Cr2O3、またはTa2O5を含み得る。
【0047】
磁気層n 70は交換ブレーク層n−1 68上に形成され、一部の実施の形態においては、相対的に低い磁気異方性、たとえば記録層60の他の磁気層の磁気異方性よりも低い磁気異方性を有する粒状磁気層であり得る。磁気層nは、記録層60の面に対して実質的に垂直な方向に配向される磁気異方性場を有する。磁気層n 70は、たとえばCo合金、Fe−Pt合金、またはSm−Co合金を含み、たとえば上記のSiO2、TiO2CoO、Cr2O3、またはTa2O5の非磁性酸化物を含んでも、含ななくてもよい。磁気層n 70の組成は、第1の磁気層62および/または第2の磁気層66の組成と異なり、それにより磁気層n 70の磁気異方性場は、磁気記録層60の他の磁気層の磁気異方性場とともに、凸状磁場勾配をもたらす。たとえば、磁気層n 70は第1の磁気層62および/または第2の磁気層66と同様の組成を含み得るが、その割合は異なり得る。
【0048】
一部の実施の形態において、CGC層71(図5Bに示される)は、図3を参照して説明したCGC層52と同様であってもよい。
【0049】
垂直磁気記録層を形成する方法は図6に示される。この方法は、磁気異方性場Hk2を有する第1の磁気層を形成し(72)、第1の磁気層上に第1の交換ブレーク層を形成し(74)、第1の交換ブレーク層上に第2の磁気層を形成する(76)。第2の磁気層は、第2の磁気異方性場Hk2を有する。一部の実施の形態において、本方法はさらに第2の磁気層上に第2の交換ブレーク層を形成し(78)、第2の交換ブレーク層上に第3の磁気層を形成する(80)ことを含む。第3の磁気層は第3の磁気異方性場Hk3を有する。一部の実施の形態において、Hk1−Hk2はHk2−Hk3よりも小さい。
【0050】
ここに記載される磁気記録層は磁気層とブレーク層とを交互に有するが、一部の実施の形態において、磁気記録層は各隣接する磁気層対間にブレーク層を含まなくてもよい。たとえば、磁気記録層は、互いにすぐ隣接して形成される第2の磁気層46および第3の磁気層50(図3)を含むが、その間に介在する第2のブレーク層48はない。この概念は他の磁気層の対にも、たとえば第1の磁気層42および第2の磁気層46に拡張することができる。さらに、4枚以上の磁気層を含む実施の形態(たとえば、図5Aおよび図5Bを参照して記載されている実施の形態)では、磁気記録層60は2n−l枚の層を有することができ、nの磁気層およびn−1の磁気層を有する。このような実施の形態において、一部の隣接する磁気層対は介在するブレーク層を含み、他の隣接する磁気層対は介在するブレーク層を含まない。
【0051】
上記は磁気記録媒体を含む装置に主に立脚しているが、ここに記載される磁気層構造は他でも応用することができる。たとえば、ここに記載される磁気層構造は、磁気センサまたは磁気抵抗ランダムアクセスメモリ(MRAM)に用いることができる。
【0052】
実施例
以下の実施例は開示の実施の形態を示すものであるが、本開示の範囲を限定するものではない。実施例は理想的な磁気層を用いた理論的計算に基づいている。各々の磁気層は同じMsおよびHexの値を有する。実施例の磁気記録層はCGC層を含んでいない。以下の実施例において、パラメータは以下のように定義されている。式1は層iの有効磁気厚さΔiを定義する。
【0053】
【数1】
【0054】
ここでMsiは層iの飽和磁化であり、δiは層iの厚さであり、Ms1は層1(すなわち、第1の磁気層)の飽和磁化であり、δ1は層1の厚さである。
【0055】
式2は層iの有効異方性kiを定義する。
【0056】
【数2】
【0057】
ここでMsiは層iの飽和磁化であり、HAiは層iの磁気保磁力であり、δiは層iの厚さであり、Ms1は層1の飽和磁化であり、HA1は層1の磁気保磁力であり、δ1は層1の厚さである。
【0058】
式3は層iおよび層j間の有効結合χijを定義する:
【0059】
【数3】
【0060】
ここでJijは層iと層jとの間の量子機械結合であり、K1は層1の磁気異方性エネルギであり、δ1は層1の厚さである。
【0061】
以下の実施例において、特定のパラメータは固定されている。たとえば、Δ2=Δ3=0.5Δ1。すなわち、層2および層3の有効厚さは等しく設定され、その各々は層1の有効厚さの半分である。
【0062】
以下の実施例1−3を検討するに当り、コヒーレントにスイッチングされる3層磁気記録層と比較され、これら3つの磁気層はHA1、HA2=0.75HA1およびHA3=0.5HA1の磁気異方性を有する。このような磁気異方性分布は0.8125HA1の平均磁気異方性<HA>をもたらした。実施例を行なうに当り、<HA>は一定に保たれ、κ2の値が選択され、これにより、κ3値が設定される。χ12およびχ23は自由パラメータである。
【0063】
実施例1
図6Aおよび図6Bは、磁気層1の磁気異方性値HA1が20kOeであり、磁気層2の磁気異方性値HA2が16kOeであり、磁気層3の磁気異方性値HA3が9kOeである例を示す。このような磁気異方性分布は、本開示に従い凸状磁気異方性勾配である。HA1−HA2は4kOeであり、これは7kOeであるHA2−HA3よりも小さい。さらに、HA2/HA1は0.8であり、これはHA3/HA2(0.5625)よりも大きい。実施例1において、Δ2=Δ3=0.5、κ2=0.4、κ3=0.225である。
【0064】
実施例1の磁気配向スイッチング性能は、コヒーレントにスイッチングした基準3層磁気記録層と比較された。たとえば、3つの磁気層は結合され、単一の磁気層として働き、その有効異方性はそれぞれの層の異方性の有効厚さ重み付きの平均として計算された。第1の磁気層はHA1=20kOeの異方性を有し、相対有効厚さは1であった。第2の磁気層はHA2=0.8HA1=16kOeの異方性を有し、相対有効厚さは0.5であった。第3の磁気層はHA3=0.45HA1=9kOeの異方性を有し、相対有効厚さは0.5であった。このような磁気異方性分布は0.8125HA1=16.25kOeの有効厚さ重み付きの平均磁気異方性<HA>、および1.625のエネルギバリア変化ΔE/ΔE1をもたらした。エネルギバリア変化は、第1の磁気層のみを有する磁気記録層と比べて、第2および第3の磁気層が磁気記録層の熱的安定性に与える影響を示す。
【0065】
実施例1の磁気配向スイッチング性能を基準コヒーレントスイッチング磁気記録層と比べると、最小正規化Hsw値(磁気記録層の有効保磁力;磁気記録層の配向が切換わった適用磁場に等しく、第1の磁気層の保磁力によって正規化される)は、基準磁気記録層のエネルギバリア(1.625)と実質的に等しいエネルギバリアで見出された。図6Aおよび図6Bを参照すると、円82の近似座標はχ12=0.45およびχ23=0.45である。図6Aを参照すると、χ12=0.45およびχ23=0.45での正規化Hsw値は、円84によって示されるように約0.73である。これを基準膜の正規化Hsw値0.8125と比較すると、実施例1の磁気異方性勾配は、約11%減少した正規Hswをもたらした。すなわち、凸状磁気異方性勾配を与えるよう選択された3つの磁気層を有する磁気記録層は、線形の磁気異方性勾配を与えるよう選択された3つの磁気層を有する磁気記録層と比べて、より容易に切換わり、匹敵する熱安定性を有する。
【0066】
実施例2
図7Aおよび図7Bは、磁気層1の磁気異方性値HA1が20kOeであり、磁気層2の磁気異方性値HA2が19kOeであり、磁気層3の磁気異方性値HA3が6kOeである例を示す。このような磁気異方性分布は、本開示に従い凸状磁気異方性勾配である。HA1−HA2は1kOeであり、これは13kOeであるHA2−HA3よりも小さい。さらに、HA2/HA1は0.95であり、これはHA3/HA2(0.3158)よりも大きい。実施例1において、Δ2=Δ3=0.5、κ2=0.475、κ3=0.15である。
【0067】
実施例2の磁気配向スイッチング性能は、コヒーレントにスイッチングした基準3層磁気記録層と比較された。たとえば、3つの磁気層は結合され、単一の磁気層として働き、その有効異方性はそれぞれの層の異方性の有効厚さ重み付きの平均として計算された。第1の磁気層はHA1=20kOeの異方性を有し、相対有効厚さは1であった。第2の磁気層はHA2=0.95HA1=19kOeの異方性を有し、相対有効厚さは0.5であった。第3の磁気層はHA3=0.3HA1=6kOeの異方性を有し、相対有効厚さは0.5であった。このような磁気異方性分布は0.8125HA1=16.25kOeの平均磁気異方性<HA>、および1.625のエネルギバリア変化ΔE/ΔE1をもたらした。エネルギバリア変化は、第1の磁気層のみを有する磁気記録層と比べて、第2および第3の磁気層が磁気記録層の熱的安定性に与える影響を示す。
【0068】
実施例2の磁気配向スイッチング性能を基準コヒーレントスイッチング磁気記録層と比べると、最小正規化Hsw値は、基準磁気記録層のエネルギバリア(1.625)と実質的に等しいエネルギバリアで見出された。図7Aおよび図7Bを参照すると、円86の近似座標はχ12=0.45およびχ23=0.45である。図7Aを参照すると、χ12=0.45およびχ23=0.45での正規化Hsw値は、円88によって示されるように約0.68である。これを基準膜の正規化Hsw値0.8125と比較すると、実施例1の磁気異方性勾配は、約20%減少した正規Hswをもたらした。ここでも、凸状磁気異方性勾配を与えるよう選択された3つの磁気層を有する磁気記録層は、線形の磁気異方性勾配を与えるよう選択された3つの磁気層を有する磁気記録層と比べて、より容易に切換わり、匹敵する熱安定性を有する。
【0069】
実施例3
図8Aおよび図8Bは、磁気層1の磁気異方性値HA1が20kOeであり、磁気層2の磁気異方性値HA2が24kOeであり、磁気層3の磁気異方性値HA3が1kOeである例を示す。このような磁気異方性分布は、本開示に従い凸状磁気異方性勾配である。HA1−HA2は−4kOeであり、これは23kOeであるHA2−HA3よりも小さい。さらに、HA2/HA1は1.2であり、これはHA3/HA2(0.0417)よりも大きい。実施例1において、Δ2=Δ3=0.5、κ2=0.6、κ3=0.025である。
【0070】
実施例3の磁気配向スイッチング性能は、コヒーレントにスイッチングした基準3層磁気記録層と比較された。たとえば、3つの磁気層は結合され、単一の磁気層として働き、その有効異方性はそれぞれの層の異方性の有効厚さ重み付きの平均として計算された。第1の磁気層はHA1=20kOeの異方性を有し、相対有効厚さは1であった。第2の磁気層はHA2=1.2HA1=24kOeの異方性を有し、相対有効厚さは0.5であった。第3の磁気層はHA3=0.05HA1=1kOeの異方性を有し、相対有効厚さは0.5であった。このような磁気異方性分布は0.8125HA1=16.25kOeの平均磁気異方性<HA>、および1.625のエネルギバリア変化ΔE/ΔE1をもたらした。エネルギバリア変化は、第1の磁気層のみを有する磁気記録層と比べて、第2および第3の磁気層が磁気記録層の熱的安定性に与える影響を示す。
【0071】
実施例1の磁気配向スイッチング性能を基準コヒーレントスイッチング磁気記録層と比べると、最小正規化Hsw値(磁気記録層の有効保磁力;磁気記録層の配向が切換わった適用磁場に等しく、第1の磁気層の保磁力によって正規化される)は、基準磁気記録層のエネルギバリア(1.625)と実質的に等しいエネルギバリアで見出された。図8Aおよび図8Bを参照すると、円90の近似座標はχ12=0.45およびχ23=0.45である。図8Aを参照すると、χ12=0.45およびχ23=0.45での正規化Hsw値は、円92によって示されるように約0.55である。これを基準膜の正規化Hsw値0.8125と比較すると、実施例1の磁気異方性勾配は、約48%減少した正規Hswをもたらした。ここでも、凸状磁気異方性勾配を与えるよう選択された3つの磁気層を有する磁気記録層は、線形の磁気異方性勾配を与えるよう選択された3つの磁気層を有する磁気記録層と比べて、より容易に切換わり、匹敵する熱安定性を有することを示す。
実施例4
図9Aおよび図9Bは、磁気層1の磁気異方性値HA1が24kOeであり、磁気層2の磁気異方性値HA2が16kOeであり、磁気層3の磁気異方性値HA3が1kOeである例を示す。このような磁気異方性分布は、本開示に従い凸状磁気異方性勾配である。HA1−HA2は4kOeであり、これは15kOeであるHA2−HA3よりも小さい。さらに、HA2/HA1は0.667であり、これはHA3/HA2(0.0625)よりも大きい。実施例1において、Δ2=Δ3=0.5、κ2=1/3、κ3=1/48である。
【0072】
実施例4の磁気配向スイッチング性能は、コヒーレントにスイッチングした基準3層磁気記録層と比較された。たとえば、3つの磁気層は結合され、単一の磁気層として働き、その有効異方性はそれぞれの層の異方性の有効厚さ重み付きの平均として計算された。第1の磁気層はHA1=24kOeの異方性を有し、相対有効厚さは1であった。第2の磁気層はHA2=(2/3)HA1=16kOeの異方性を有し、相対有効厚さは0.5であった。第3の磁気層はHA3=(1/24)HA1=1kOeの異方性を有し、相対有効厚さは0.5であった。このような磁気異方性分布は0.677HA1=16.25kOeの平均磁気異方性<HA>、および1.354のエネルギバリア変化ΔE/ΔE1をもたらした。エネルギバリア変化は、第1の磁気層のみを有する磁気記録層と比べて、第2および第3の磁気層が磁気記録層の熱的安定性に与える影響を示す。
【0073】
実施例4の磁気配向スイッチング性能を基準コヒーレントスイッチング磁気記録層と比べると、最小正規化Hsw値は、基準磁気記録層のエネルギバリア(1.354)と実質的に等しいエネルギバリアで見出された。図9Aおよび図9Bを参照すると、円94の近似座標はχ12=0.35およびχ23=0.4である。図9Aを参照すると、χ12=0.35およびχ23=0.4での正規化Hsw値は、円96によって示されるように約0.42である。これを基準膜の正規化Hsw値0.677と比較すると、実施例4の磁気異方性勾配は、約61%減少した正規Hswをもたらした。これは、凸状磁気異方性勾配を与えるよう選択された3つの磁気層を有する磁気記録層は、線形の磁気異方性勾配を与えるよう選択された3つの磁気層を有する磁気記録層と比べて、より容易に切換わり、匹敵する熱安定性を有することを示す。
【0074】
本開示のさまざまな実施の形態が記載された。上記の実施および他の実施は、添付の請求項の範囲内にある。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置であって、
n枚の磁気層と、
n−1枚の交換ブレーク層とを備え、nは3以上であり、n−1枚の交換ブレーク層は、装置においてn枚の磁気層と交互にあり、n枚の磁気層は凸状磁気異方性場勾配を有するよう、それぞれ磁気異方性場を含む、装置。
【請求項2】
第1の磁気異方性場Hk1を有する第1の磁気層と、
第1の磁気層上に形成される第1の交換ブレーク層と、
第1の交換ブレーク層上に形成される第2の磁気層とを備え、第2の磁気層は第2の磁気異方性場Hk2を有し、さらに
第2の磁気層上に形成される第2の交換ブレーク層と、
第2の交換ブレーク層上に形成される第3の磁気層とを備え、第3の磁気層は第3の磁気異方性場Hk3を有し、Hk1−Hk2はHk2−Hk3よりも小さい、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
第1の比Hk2/Hk1は第2の比Hk3/Hk2よりも大きい、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
第1の磁気層はあるPt含有量Pt1を有し、これは約18at.%および約22at.%の間にあり、第2の磁気層はあるPt含有量Pt2を有し、これは約14at.%および約18at.%の間にあり、第3の磁気層はあるPt含有量Pt3を有し、これは約14at.%未満であり、Pt1−Pt2はPt2−Pt3よりも小さい、請求項2に記載の装置。
【請求項5】
第3の磁気層上に形成される連続する粒状複合(CGC)層をさらに備え、連続する粒状複合(CGC)層は層磁気異方性場Hk4を有する、請求項2に記載の装置。
【請求項6】
第1の磁気層、第2の磁気層、および第3の磁気層の少なくとも1つは、Co合金、Co合金およびPt合金の交互に重なった層、またはCo合金およびPd合金の交互に重なった層の少なくとも1つを有する、請求項2に記載の装置。
【請求項7】
nは4であり、第1の磁気層は第1の磁気異方性場Hk1を有し、第2の磁気層は第2の磁気異方性場Hk2を有し、第3の磁気層は第3の磁気異方性場Hk3を有し、第4の磁気層は第4の磁気異方性場Hk4を有し、Hk1−Hk2はHk2−Hk3よりも小さく、Hk2−Hk3はHk3−Hk4よりも小さい、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
第1の比Hk2/Hk1は第2の比Hk3/Hk2よりも大きく、第2の比は第3の比Hk4/Hk3よりも大きい、請求項7に記載の装置。
【請求項1】
装置であって、
n枚の磁気層と、
n−1枚の交換ブレーク層とを備え、nは3以上であり、n−1枚の交換ブレーク層は、装置においてn枚の磁気層と交互にあり、n枚の磁気層は凸状磁気異方性場勾配を有するよう、それぞれ磁気異方性場を含む、装置。
【請求項2】
第1の磁気異方性場Hk1を有する第1の磁気層と、
第1の磁気層上に形成される第1の交換ブレーク層と、
第1の交換ブレーク層上に形成される第2の磁気層とを備え、第2の磁気層は第2の磁気異方性場Hk2を有し、さらに
第2の磁気層上に形成される第2の交換ブレーク層と、
第2の交換ブレーク層上に形成される第3の磁気層とを備え、第3の磁気層は第3の磁気異方性場Hk3を有し、Hk1−Hk2はHk2−Hk3よりも小さい、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
第1の比Hk2/Hk1は第2の比Hk3/Hk2よりも大きい、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
第1の磁気層はあるPt含有量Pt1を有し、これは約18at.%および約22at.%の間にあり、第2の磁気層はあるPt含有量Pt2を有し、これは約14at.%および約18at.%の間にあり、第3の磁気層はあるPt含有量Pt3を有し、これは約14at.%未満であり、Pt1−Pt2はPt2−Pt3よりも小さい、請求項2に記載の装置。
【請求項5】
第3の磁気層上に形成される連続する粒状複合(CGC)層をさらに備え、連続する粒状複合(CGC)層は層磁気異方性場Hk4を有する、請求項2に記載の装置。
【請求項6】
第1の磁気層、第2の磁気層、および第3の磁気層の少なくとも1つは、Co合金、Co合金およびPt合金の交互に重なった層、またはCo合金およびPd合金の交互に重なった層の少なくとも1つを有する、請求項2に記載の装置。
【請求項7】
nは4であり、第1の磁気層は第1の磁気異方性場Hk1を有し、第2の磁気層は第2の磁気異方性場Hk2を有し、第3の磁気層は第3の磁気異方性場Hk3を有し、第4の磁気層は第4の磁気異方性場Hk4を有し、Hk1−Hk2はHk2−Hk3よりも小さく、Hk2−Hk3はHk3−Hk4よりも小さい、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
第1の比Hk2/Hk1は第2の比Hk3/Hk2よりも大きく、第2の比は第3の比Hk4/Hk3よりも大きい、請求項7に記載の装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図4E】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8A】
【図8B】
【図9A】
【図9B】
【図10A】
【図10B】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図4E】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8A】
【図8B】
【図9A】
【図9B】
【図10A】
【図10B】
【公開番号】特開2012−33257(P2012−33257A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−164098(P2011−164098)
【出願日】平成23年7月27日(2011.7.27)
【出願人】(500373758)シーゲイト テクノロジー エルエルシー (278)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−164098(P2011−164098)
【出願日】平成23年7月27日(2011.7.27)
【出願人】(500373758)シーゲイト テクノロジー エルエルシー (278)
【Fターム(参考)】
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