説明

磁気式水処理装置

【課題】 簡単な構造で磁気処理の効率が高く、磁石の溶出等が生じない磁気式水処理装置を実現する。
【解決手段】 磁気式水処理装置10によれば、配管20内を流れる被処理水を配管20より径が小さい複数12のパイプに分岐して通水し、各パイプ12により貫通して設けられ、被処理水の通水方向に隙間をあけて並んで配置されている複数個の磁石14により発生する磁場の磁力線の方向に交差させて被処理水を通水させることにより被処理水を磁気処理することができる。磁石14を被処理水に近づけることができるので、被処理水に作用する磁場を強くすることができ、磁気処理の効率を向上させることができる。また、磁石は被処理水と接触しないため、磁石が配管を流れる水により腐食劣化したり、磁石の成分が溶出することを防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼製配管内を流れる水に磁化処理を行い、配管の赤錆発生防止等に使用される磁気式水処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、給水、給湯、空調、プラント設備などで用いられる鋼製配管における赤錆発生防止、スケール付着対策として、磁気式水処理装置が用いられている。
磁気式水処理装置は、磁石により磁場を発生させ、配管を流れる水が磁力線を横切るように構成されており、水が磁力線を横切ると誘導電流が生じ、磁化処理された水となる。
磁気処理された水は、赤錆(Fe)を安定な黒錆(Fe)に変化させるため、配管内の赤錆発生による赤水を防止することができるとともに、更なる配管の腐食を抑制することができる。また、磁気処理された水は配管へのスケールの付着の防止、スケールの除去という効果を奏することもできる。
配管内を流れる水が磁力線を横切るように磁場をかける方法として、配管の周囲に磁石を配置する方法や配管の途中に内部に磁石を備えた磁気式水処理装置を設置し、磁気式水処理装置内部を流れる水に直接磁石を接触させる方法などがある。
例えば、特許文献1には、水が流通する筒状ケーシングに、磁性金属板を挟んで多数個の磁石を積層した積層柱が並列的に組み込まれた磁気式水処理装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第2909891号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、水の磁気処理を効率よく行うためには、通水方向と垂直な磁場が強く、水の流速が早いことが必要である。
配管の周囲に磁石を配置する方法では、配管の中央部を流れる水は磁石との距離が大きくなるため、磁場を強くすることができず、磁気処理の効率を向上することが困難であるという問題があった。
また、特許文献1に記載の発明のように磁気式水処理装置内部を流れる水に直接磁石を接触させる方法では、磁石が配管を流れる水により腐食劣化したり、磁石の成分が溶出するなどの問題があった。また、通水経路に複雑な構造の積層した積層柱が配置されているため、筒状ケーシング内における通水抵抗が増大し、流速が低下するので、磁気処理の効率を向上することが困難であるという問題もあった。また、構造が複雑であるため、コストがかかるという問題もあった。
【0005】
そこで、本発明では、簡単な構造で磁気処理の効率が高く、磁石の溶出等が生じない磁気式水処理装置を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、上記目的を達成するための研磨ブラシであって、請求項1に記載の発明では、磁気式水処理装置において、配管内を流れる被処理水が分岐して通水される前記配管より径が小さい複数のパイプと、一端が前記複数のパイプの一端に接続され、他端が配管に接続されており、配管から導入された被処理水を、前記複数のパイプに分岐して導入する第1のヘッダー部と、一端が前記複数のパイプの他端に接続され、他端が配管に接続されており、前記複数のパイプから排出された被処理水を、配管へ導入する第2のヘッダー部と、前記各パイプにより貫通して設けられ、被処理水の通水方向に隙間をあけて並んで配置されている複数個の磁石と、を備え、前記複数の磁石は、前記磁石の発生する磁場の磁力線の方向と前記被処理水の通水方向とが交差するように配置されている、という技術的手段を用いる。
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、配管内を流れる被処理水を配管より径が小さい複数のパイプに分岐して通水し、各パイプにより貫通して設けられ、被処理水の通水方向に隙間をあけて並んで配置されている複数個の磁石により発生する磁場の磁力線の方向に交差させて被処理水を通水させることにより被処理水を磁気処理することができる。
これにより、磁石を被処理水に近づけることができるので、被処理水に作用する磁場を強くすることができ、磁気処理の効率を向上させることができる。
また、磁石は被処理水と接触しないため、磁石が配管を流れる水により腐食劣化したり、磁石の成分が溶出することを防止することができる。
本発明の磁気式水処理装置において、通水経路はパイプであり、通水抵抗を小さくすることができるため、被処理水の流速を速くすることができるので、磁気処理の効率を向上させることができる。
また、磁気処理は、磁力線を被処理水にパルス的に照射することが効率向上に有効であることが知られているが、本発明の磁気式水処理装置において、複数個の磁石は隙間をあけて並んで配置されているため、通水方向に隣接する1組の磁石を通過する度に被処理水は磁力線を横切ることになる。これにより、被処理水は、通水方向に交差する磁力線がパルス的に作用して磁気処理されることになり、磁気処理の効率を向上させることができる。
更に、構造が簡単であるため、コストが低減することができる。
【0008】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の磁気式水処理装置において、前記複数の磁石は、通水方向に略並行な方向に磁化されている、という技術的手段を用いる。
【0009】
請求項2に記載の発明にように、磁石は、通水方向に略並行な方向に磁化されているものを用いることができる。これによれば、通水方向の磁場を強くすることができ、隣接する磁石との相互作用により、通水方向と交差する方向の磁場も強くすることができる。
【0010】
請求項3に記載の発明では、請求項1に記載の磁気式水処理装置において、前記複数の磁石は、通水方向に略直角な方向に磁化されている、という技術的手段を用いる。
【0011】
請求項3に記載の発明のように、磁石は、通水方向に略垂直な方向に磁化されているものを用いることができる。これによれば、通水方向に略垂直な方向の磁場を強くすることができるので、磁気処理の効率を向上させることができる。
【0012】
請求項4に記載の発明では、請求項1ないし請求項3のいずれか1つに記載の磁気式水処理装置において、前記複数の磁石は、通水方向に隣接する磁石の対向する極面が同極になるように配置されている、という技術的手段を用いる。
【0013】
請求項4に記載の発明のように、複数の磁石を通水方向に隣接する磁石の対向する極面が同極になるように配置することにより、磁力線の方向を通水方向の垂直方向に偏向させることができるため、通水方向と交差する方向の磁場を強くすることができるので、磁気処理の効率を向上させることができる。
【0014】
請求項5に記載の発明では、請求項3に記載の磁気式水処理装置において、前記複数の磁石は、通水方向の垂直方向に隣接する磁石の対向する極面が同極になるように配置されている、という技術的手段を用いる。
【0015】
請求項5に記載の発明のように、通水方向に略直角な方向に磁化されている複数の磁石を、通水方向の垂直方向に隣接する磁石の対向する極面が同極になるように配置することにより、通水方向と交差する方向の磁場を強くすることができるので、磁気処理の効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】磁気式水処理装置の説明図である。図1(A)は、磁気式水処理装置の一部断面説明図であり、図1(B)は、図1(A)のA−A矢視断面説明図である。
【図2】磁石の配置を示す断面説明図である。
【図3】磁石の配置の変更例を示す断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の磁気式水処理装置について、図を参照して説明する。図1(A)及び(B)に示すように、磁気式水処理装置10は、給水、給湯、空調、プラント設備等の配管20の途中に配設され、配管20から導入された被処理水を、複数のパイプ12に分岐して導入する第1ヘッダー部11と、被処理水が分岐して通水されるパイプ12と、パイプ12から排出された被処理水を配管20へ導入する第2ヘッダー部13と、各パイプにより貫通して設けられた複数の磁石14と、を備えている。パイプ12及び磁石14は、円筒状のケース15の内部に収容されている。
【0018】
第1ヘッダー部11及び第2ヘッダー部13は、一端が配管20に、他端がパイプ12に接続された被処理水が通水される中空部材であり、第1ヘッダー部11は上流側の配管20と、第2ヘッダー部13は下流側の配管20と、それぞれ接続されている。
【0019】
パイプ12は、ステンレス鋼や、非磁性材料、例えばポリエチレン、などからなる、配管20より径が小さい円管部材であり、一端が第1ヘッダー部11に、他端が第2ヘッダー部13にそれぞれ接続され、並列して設けられている。上述の構成により、配管20を流れる被処理水は、第1ヘッダー部11から磁気式水処理装置10に導入され、パイプ12に分岐して通水され、第2ヘッダー部13を介して磁気式水処理装置10から配管20に排出される。ここで、パイプ12は、配管20と同方向に設けられているので、通水性が良好であり、被処理水の流速を速くすることができる
【0020】
磁石14は、本実施形態では、貫通孔を有する円板状に形成され、磁化方向が通水方向と平行な磁石を用いた。貫通孔の内径は、パイプ12の外径と略同一であり、各パイプ12により貫通し、はめ込んで固定されている。磁石14は、被処理水の通水方向に隙間をあけて並んで配置されている。これによれば、通水方向の磁場を強くすることができ、隣接する磁石との相互作用により、通水方向と交差する方向の磁場を強くすることができる。ここで、磁石14は、磁石14の発生する磁場の磁力線の方向と被処理水の通水方向とが交差するように配置されている。
【0021】
本実施形態では、磁石14は、図2に示すように、長手方向に隣接する磁石14同士で、対向する磁極面が同極となるように配置されている。これにより、磁力線の方向を通水方向の垂直方向に偏向させることができるため、通水方向と交差する方向の磁場を強くすることができるので、磁気処理の効率を向上させることができる。磁石14は、被処理水の通水方向に隙間をあけて並んで配置されているため、隣接する1組の磁石14により通水方向と交差する磁力線を生じさせることができ、通水方向と交差する磁力線を複数生じさせることができる。
【0022】
また、隣接するパイプ12に設けられた磁石14との関係において、通水方向の垂直方向に磁石14が隣接しており、この隣接する磁石14の対向する極面が同極になるように配置されている。この構成によっても、通水方向と交差する方向の磁場を強くすることができるので、磁気処理の効率を向上させることができる。但し、磁石14が薄い場合には異極になるように配置した場合と大きな差異はないため、この配置に限定されるものではない。
【0023】
磁石14の形状は、円板状に限定されるものではなく、例えば、ブロック状、角板状の磁石を用いることもできる。また、磁石14の固定方法は、はめ込みに限定されるものではなく、例えば、接着剤により固定することもできる。
【0024】
上述の構成の磁気式水処理装置10に被処理水を通水すると、第1ヘッダー部11からパイプ12に分岐して通水される。パイプ12内には、磁石14により通水方向に交差する磁力線が生じているので、隣接する1組の磁石を通過する度に被処理水は磁力線を横切ることになる。これにより、被処理水は、通水方向に交差する磁力線がパルス的に作用して磁気処理されることになる。
【0025】
磁気処理された水は、赤錆(Fe)を安定な黒錆(Fe)に変化させるため、配管内の赤錆発生による赤水を防止することができるとともに、更なる配管の腐食を抑制することができる。また、磁気処理された水は配管へのスケールの付着の防止、スケールの除去という効果を奏する。このように、磁気式水処理装置10は、給水、給湯、空調、プラント設備等の配管20の赤錆発生防止、スケール付着防止に好適に用いることができる。
【0026】
(変更例)
磁石14として、通水方向に垂直方向に磁化されている磁石を用いることもできる。これによれば、通水方向に垂直な方向の磁場を強くすることができるので、磁気処理の効率を向上させることができる。例えば、図3(A)に示すように、通水方向に隣接する磁石14の対向する極面が同極になるように、また、通水方向の垂直方向に隣接する磁石の対向する極面が同極になるように配置することができる。これによれば、通水方向と交差する方向の磁場を強くすることができるので、磁気処理の効率を向上させることができる。
また、図3(B)に示すように、磁化方向で隣接する磁石14の対向する極面が異極になるように配置としてもよいし、正対させずに磁化方向を傾斜させることもできる。
【0027】
磁石14の配置は、磁石14の発生する磁場の磁力線の方向と被処理水の通水方向とが交差するように配置されていれば、個数を含め適宜選択可能である。
また、図1において、パイプ12を12本備えた構成が開示されているが、パイプ12の本数、径、配置間隔などは設計事項であり、解析的または実験的手法を用いて適宜設定することができる。
【0028】
[発明を実施するための形態の効果]
本発明の磁気式水処理装置10によれば、配管20内を流れる被処理水を配管20より径が小さい複数12のパイプに分岐して通水し、各パイプ12により貫通して設けられ、被処理水の通水方向に隙間をあけて並んで配置されている複数個の磁石14により発生する磁場の磁力線の方向に交差させて被処理水を通水させることにより被処理水を磁気処理することができる。
これにより、磁石14を被処理水に近づけることができるので、被処理水に作用する磁場を強くすることができ、磁気処理の効率を向上させることができる。
また、磁石は被処理水と接触しないため、磁石が配管を流れる水により腐食劣化したり、磁石の成分が溶出することを防止することができる。
本発明の磁気式水処理装置10において、通水経路はパイプ12であり、通水抵抗を小さくすることができるため、被処理水の流速を速くすることができるので、磁気処理の効率を向上させることができる。
複数個の磁石14は隙間をあけて並んで配置されているため、通水方向に隣接する1組の磁石14を通過する度に被処理水は磁力線を横切ることになる。これにより、被処理水は、通水方向に交差する磁力線がパルス的に作用して磁気処理されることになり、磁気処理の効率を向上させることができる。
更に、構造が簡単であるため、コストが低減することができる。
磁石14の磁化方向、配置などを好ましい条件に設定することにより、更に優れた効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0029】
10 磁気式水処理装置
11 第1ヘッダー部(第1のヘッダー部)
12 パイプ
13 第2ヘッダー部(第2のヘッダー部)
14 磁石
20 配管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配管内を流れる被処理水が分岐して通水される前記配管より径が小さい複数のパイプと、
一端が前記複数のパイプの一端に接続され、他端が配管に接続されており、配管から導入された被処理水を、前記複数のパイプに分岐して導入する第1のヘッダー部と、
一端が前記複数のパイプの他端に接続され、他端が配管に接続されており、前記複数のパイプから排出された被処理水を、配管へ導入する第2のヘッダー部と、
前記各パイプにより貫通して設けられ、被処理水の通水方向に隙間をあけて並んで配置されている複数個の磁石と、を備え、
前記複数の磁石は、前記磁石の発生する磁場の磁力線の方向と前記被処理水の通水方向とが交差するように配置されていることを特徴とする磁気式水処理装置。
【請求項2】
前記複数の磁石は、通水方向に略並行な方向に磁化されていることを特徴とする請求項1に記載の磁気式水処理装置。
【請求項3】
前記複数の磁石は、通水方向に略直角な方向に磁化されていることを特徴とする請求項1に記載の磁気式水処理装置。
【請求項4】
前記複数の磁石は、通水方向に隣接する磁石の対向する極面が同極になるように配置されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1つに記載の磁気式水処理装置。
【請求項5】
前記複数の磁石は、通水方向の垂直方向に隣接する磁石の対向する極面が同極になるように配置されていることを特徴とする請求項3に記載の磁気式水処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−5434(P2011−5434A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−152295(P2009−152295)
【出願日】平成21年6月26日(2009.6.26)
【特許番号】特許第4480788号(P4480788)
【特許公報発行日】平成22年6月16日(2010.6.16)
【出願人】(509168944)有限会社ベストネット (2)
【Fターム(参考)】